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寅次郎な日々

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ご注意) このサイトの文章には物語のネタバレが含まれます。
まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。



                 

別れの曲  冬子さんの瞳(2007年9月28日)

『時間ですよ』の中の『寅さん大会』(2007年9月20日)

『なつかしい風来坊』から『遥かなる山の呼び声』へ(2007年9月10日)

第27作「浪花の恋の寅次郎」ダイジェスト版(2007年9月3日)

コンサートに行く菜穂ちゃんと満男(2007年9月2日)

『喧嘩辰』を歌わなかった寅と冬子さん(2007年8月24日)

『寅小僧次郎吉』の夢(2007年8月22日)

木蓮の花と夏子さんの涙(2007年8月19日)

第26作「男はつらいよ.寅次郎かもめ歌」ダイジェスト版(2007年8月16日)


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別れの曲  冬子さんの瞳


2007年9月28日 寅次郎な日々 その332


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



いよいよ日本を離れる日がまた今年も近づいてきた。
まだまだやり残したことはいっぱいあるが、それはまた来年の7月に帰国した際に再開するとしよう。

このまま日本に滞在し続けると、今度は感覚的なものを吸収するばかりで、吐き出す方がお留守になっていくのだ。
吐き出すこととは、この場合、かの地で絵を描くことであり、サイトの本編完全版を進めることであり、
もの作りを進めていくことなのだ。日本ではそれがどうしてもできない。そういう業を私は背負ってしまっている。

キツイ突き放された孤独の環境の中でしか、たくさんの絵は描けないし、このサイトの『本編完全版』のアップも
進まないのである。

泣きたくなるようなバカな気質だと我ながら思うが、こればかりは死ぬまで治らないかもしれない。

だから私は、寅がみんなに止められても、スッと旅に出ていってしまう気持ちが痛いほど分かるのだ。
水は止まると濁り、腐っていく。腐ってしまってはもう遅い。寅はそのことを知っている。

もちろんさくらたちは、止まりながらも腐らない術を体得して生きているので寅とは全く違う。
しかし、寅は腐ってしまうのである。寅とはそういう人間なのだ。




ところで、先日も書いたが、今回の滞在はDVDをいつになくたくさん見た日々だった。
ほとんどが2度目3度目の作品だったが、どれもこれも改めて随所に発見がまたあり、充実した時間だった。

その中でも特に思い出深いのが

あの、幻のテレビ版『男はつらいよ』のビデオだった。

あのビデオは第1話と最終第26話が見れることもさることながら、最初の小林俊一さんと山田洋次さんとのビック2対談や
小林さんと作詞家の星野哲郎さんとの主題歌誕生秘話対談、ラストの当時のフジテレビの美術スタッフさんたちと小林さんの
裏話満載座談会がなんとも面白い。当時の風が私たちの肌に沁み渡る感じがする。

あの臨場感は何度見てもたまらない魅力だった。

実際の作品の中も2話だけとはいえ、映画版とはまた違う魅力に溢れているのだ。

なんといってもまず第1にはあのさくら役の長山藍子さんの魅力。
映画版第5作『望郷篇』ではとても残酷に寅を振ってしまうが、テレビ版のさくらの長山さんは、繊細で兄を深く思いやる優しい妹を
柔らかく演じておられる。彼女の芝居はとてもしっとりしていてなんとも素敵だ。
兄のことを大事に思っていることが伝わるしみじみといい芝居だ。

特に第26話(最終話)での、兄の死という現実を認識したくないさくらの気持ちの揺れの芝居はこれはもう秀逸。

博士が寅は死んだんだと何度言っても、静かな口調で
「どうして分かるの?なにが証拠なの?」と、現実を認めようとしないのだ。
まるで夢を見ているような…そんな表情で…。

(まあもっとも寅のお骨も死亡診断書の写しも、病院からの直接連絡も何も無い状態で
腹違いの弟の雄二郎に帽子だけ持ってこられても信じられないというほうが正しいといえば正しい)

その夜、寅が帰ってきたと気配を感じ、布団から起き上がって玄関で幻覚を見るさくら。
生き返ったような鮮やかな笑顔で寅を玄関で迎えるのだった。
寅も生まれてくるであろう赤ん坊のおもちゃを手に持ち、音を鳴らしながら満面の笑顔で
さくらに優しく語りかけるのだった。

しかし、それはやはり幻覚だったのだ。



             



それでもさくらは、寅の幻影を追い、裸足で外に出て走っていく。

そして「お兄ちゃん!」と叫びながら寅を必死で追いかけるのだった。

このさくらの姿は、まさしく、お能の「道成寺」 に出てくる『安珍と清姫の物語』そのものだ。

さくらは、安珍を慕って、幾山千里越えて、飛ぶように追いかけていくあの清姫だ。

あのシーンにはそのような鬼気迫る怖さがあったのだ。



            



さくらは公園のところで寅に追いついたが、その瞬間、寅の後姿がスッと消えてしまう…。


呆然と立ち尽くすさくら。

その時、はじめてさくらは辛い現実を認識したのだった。




遂には、さくらを追いかけてきた博士の胸で号泣し、
悲しい現実の全てを受け入れていくシーンでこの物語は終わる。







また、同じく、マドンナの冬子さん役の佐藤オリエさんも絶品だった。

あの映画版第12作『私の寅さん』にも使われた寅との別れの場面は、映画版とは違って
冬子さんは寅の目を見つめて涙をこぼし、「寅ちゃんごめんなさい、ほんとうにごめんなさい」と謝るのだ。


あの「別れの曲」のシーン、ちょっと寂しげな声で、寅が桜の花を追って南から北へ旅をする話をしている時、
冬子さんは、寅が別れを言いに来たことをその言葉と気配で気づいたのだった。

目が潤みはじめ、寅を見つめ続ける冬子さん。
本当に目をそらさずずっと見つめる。

このカットは、私にはとても長い時間に感じられた。

そしてついに
「寅ちゃん、ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい」と
涙が頬を伝っていくのだ。



             



寅は、その姿を見、その言葉を聞いて、
「お嬢さんが、あっしに謝ることはありません、あっしは別にどうってことないんです」
と、ひたすら恐縮して冬子さんをかばう。



             



そのあと、冬子さんはもう一度寅をそっと見つめ、

スッとそのまま顔を上げて…

庭の桜を強い瞳で見上げる。


この時の佐藤オリエさんの表情とその瞳は私にとって今滞在中、最も感動したカットとなった。



             



その瞳はもはや、悲しみに泣き暮れる色ではない。

悲しみも切なさも超えたところの彼女の純な生命がほとばしるような強い目だった。
佐藤オリエさんの、若い、とても感覚的で鋭敏なセンスを強く感じてしまった。

そして彼女のビビッドな目と重なるように
哀しげな寅の表情をカメラはアップで捉え続ける。

なんという深い孤独…。



             



そしてまた

桜が映り


最後にカメラは遠くから二人の背中を映すのだった。



             



あの演出にはさすがに私は泣いた。

ぐっと寅の気持ちに寄り添っている。

やはり冬子さんは寅のことを大事に思っているのだ。


私は、テレビ版「男はつらいよ」と言うと、
真っ先に、この、冬子さんが目を潤ませながら寅を見つめる「別れの曲」の夜を思い出す。

寅の気持ちを分かり、とてもいとおしく思ってくれる冬子さんが私には誰よりも魅力的だった。
全26話同一マドンナというのは実にいいもんだ。
それが敬愛する散歩先生のお嬢さんの冬子さんだからなおさら最高だ。

映画版第4作「新.男はつらいよ』でもそうだったが、小林俊一さんは、実にしっとりとした見せ場を
繊細に作られる。映画版ではラスト付近で夜中にそっと出て行く寅の姿とそれに気づいた
おいちゃんたちの表情や柴又界隈の人々の風情が印象的だった。


それにしても、このテレビ版をたった2話見ただけでも、いかに映画版の物語がテレビ版の物語に支えられているか
よくわかる。どちらも山田洋次さんが中心に脚本を書かれてるとはいえ、テレビ版の影響力は多大なものが
あることがわかる。大きな物語の流れからちょっとした会話まで随所にテレビ版の断片が出てくるのだ。


いつの日か、この、フジテレビが制作したテレビドラマ『男はつらいよ』が真に再評価された時、
あの別れの夜の、二人のやり取りの見事さと、それを支えた小林俊一さんの演出、
そして最後の最後に二人の表情を見事にアップで重ねて表現したスタッフの鋭敏な感覚は絶賛されるだろう。



もちろん、そのテレビ版のリメイクである映画版第12作『私の寅さん』のあの別れの曲のシーンも、
スタッフたちは集中し、時間をかけて、上手に上品に撮っている。

りつ子さんも、寅の気持ちは敏感に感じて、自分の気持ちを優しく、しかししっかりと寅に伝えている。
そこはさすがに演出も逃げていない。そして二人ともやり取りに品格すら感じられる。
演出に弛緩した穴はない。さすが山田監督だ。
第12作のクライマックスといってよいと思う。

それでも、私の人生にはあの冬子さんの、
寅を大事に思い、寅に寄り添う気持ちこそが、
そして寅のために流したあの涙がやっぱり大事だ。
そして一番最後に彼女が桜を見つめる命の輝きの目は私には何物にも代えがたい宝物なのだ。







このあともバンコク出発直前の10月9日くらいまで多忙が続きます。

それゆえ、第3作「フーテンの寅」本編完全版第1回は10月4日ごろになります(^^;)ヾ

第28作「寅次郎紙風船」ダイジェスト版は、第3作更新以降に作業いたしますので、
アップはバリに戻った後の10月末日頃になります。

またもやずるずるずるずるずるずる遅れてすみません。

どうしても日本滞在中は最後まで生業優先&充電(DVD映画鑑賞と読書)優先になります。
これがないとサイトアップの馬力が出ないのです。どうかご理解ください。





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『時間ですよ』の中の『寅さん大会』


2007年9月20日 寅次郎な日々 その331


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



ようやく先日金沢郊外での最も大きな展覧会が終わった。もうすっかり秋の気配だ。『今朝の秋』って感じだ。

あとは、10月の初旬に行われる自分の住む八尾町の『アートフェスティバル』の3日間を残すのみとなった。
それが終わったらバンコクへ向い、10日間ほどタイに滞在した後、10月23日ごろにバリに戻る予定だ。
今回の滞在中はいつにもまして深夜に映画やテレビのDVDを見続けた日々だった。

シリーズものだけでも『白い巨塔.田宮版全話』『早春スケッチブック全話』『ふぞろいの林檎たちT全話とU全話』
『北の国から全話+8スペシャル』『優しい時間全11話』『Dr.コトー診療所2003、2004、2006全話』『時間ですよ71年、73年全話』
『寺内貫太郎一家全話』『寺内貫太郎一家2全話』といったところか。それ以外にも「男はつらいよ」以前の山田洋次監督作品を
もう一度全作品見直した。
あとは単品で見たいものを30作品程度ランダムに見た。新作も見れるかぎり見た。どこに掘り出し物があるか分からないからだ。
近年は半額レンタルや100円レンタルの期間があるのでさほどの出費を考えなくても大量にDVDを借りれるようになったのが助かる。

読書は、仕事の美術書以外では、今回は映画関係の本が多かったように思う。キネマ旬報をもう一度数十年分読み返したり、
面白く過ごさせていただいた。おかげでこの数ヶ月間慢性の睡眠不足で何度か体調不良で寝込んだが、現在はすっかり睡眠も
取れているので体調は回復。

そして肝心の生業である絵と染織のそれぞれの展覧会は長年のコレクターさんたちのおかげで、なんとか目標に到達した。
これで来年もなんとかギリギリ生き延びれそうだ。凌いで凌いで、生き延びるしかないのだ。
特に最後の金沢での展覧会では多くの方々に助けていただいた。感謝以外の何ものでもない。
しかし、それでも限界がゆっくりではあるが近づいてきている気もしないでもない。先は依然としてまったく見えない状況だ。

と、いうような状況ゆえに、なかなかこのサイトの更新ははかどらず、第3作『フーテンの寅』の「本編完全版」も
第28作『寅次郎紙風船』の「ダイジェスト版」も作業が大幅に遅れている。

いつも書いているように、大量の充電ができなければエネルギーを吐き出すこともできない。どうかご理解ください。
それでもなんとか9月末には第3作『フーテンの寅』の一回目の更新だけは成し遂げたいと思っている。







『時間ですよ』の中の『寅さん大会』


で、今日は、昨日まで見ていた1971年のテレビドラマ『時間ですよ』の中に「男はつらいよ」のポスターが出てきたので紹介しようと思う。

ある話で、堺正章さん演じるボイラー焚きのケンちゃんがギャグを飛ばすいつもの脱衣場にその時貼ってあったのが
『男はつらいよ』のロードショーの後、多くの松竹系映画館で催される『
寅さん大会3本立て』のポスターだったのである。

おおー!レアもの。出ました『寅さん大会』!作品は「新男はつらいよ」「望郷篇」「純情篇」の3本立て!
この『時間ですよ』カラー版が制作されていたころはだいたい「第7作奮闘篇」のころなので辻褄が合う。

また、違う作品では『純情篇』のポスターが貼ってあった。

なんだかこうなってくると、二つの作品が繋がったようでちょっと嬉しく、思わずキャプチャーしてしまった(^^;)ヾ


『男はつらいよ』と『時間ですよ』

この二つの傑作には共に『情味』があるのだ。





             
『時間ですよ』の脱衣場に貼ってあった『寅さん大会』のポスター

                 




                   
    純情篇のポスター

             









また、そのちょと前に一気に見た寺内貫太郎一家2でも、『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』で出てくる例の『ピアノ騒動』が、
同じように物語の中に出てくるのである。

『男はつらいよ寅次郎忘れな草』ではさくらが満男のために本物のピアノが欲しいって沈んでいるのを見て、てっきりおもちゃだと思った寅が、
幼児用のおもちゃのピアノを買ってきて、本物をほしかったとは言えず、後でバレて大騒ぎになるのだが、『寺内貫太郎一家2』では、
きんばあちゃんが小さいころからの憧れだったピアノが欲しいと駄々をこねるのだ。これは、実は息子の貫太郎の愛情を確かめるためのもの。
貫太郎は最初はあまりにも突拍子がないので相手にしなかったが、母親であるきんさんを喜ばせてやろうと本物のグランドピアノを
思い切って買ってしまうのだが、孫たちはきんさんがおもちゃのピアノを欲しがっていることを察して、おもちゃのほうを買ってくる。
そして家の前でドデカイ本物とちっちゃなおもちゃが鉢合わせするという物語。

もちろんきんばあちゃんは、おもちゃのピアノでいいと照れ笑いしながらも、息子である貫太郎の自分への気持ちに涙するのだった。



『寅次郎忘れな草』が1973年

『寺内貫太郎一家2』が1975年



向田邦子さんはひょっとして「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」を見ていたのかな?
なんて、両方の大ファンである私のようなものにとってはなんだか幸せな気持ちになれてニヤニヤしていたのである。




最後に…

昨日は、同じく向田さんの脚本である『阿修羅のごとく』の映画版を見た。四人姉妹の中で、深津絵里さんが美しく光っていた。
連れ合いだった奥さん(八千草薫さん)に先立たれてしまった浮気亭主(仲代達矢さん)が、三女の滝子(深津絵里さん)の
お膳を拭いている後姿を遠くからしみじみ眺めて、そっと「母さんそっくりだ…」と、なんともいえない穏やかな顔でつぶやくのである。

気配を感じて、お膳を拭きながら、ふと振り返る深津さんの表情は美しかった…。
さすが森田芳光監督。彼はこの『美』を決して逃さない。

あまりに気に入ったので、さっきパソコンの壁紙にしたところだ(^^)ゞ






               










このあともバンコク出発直前の10月9日くらいまで多忙が続きます。

それゆえ、第3作「フーテンの寅」本編完全版第1回は9月30日ごろになります(^^;)ヾ

第28作「寅次郎紙風船」ダイジェスト版は、第3作更新以降に作業いたしますので、
アップは10月8日頃になります。

またもやずるずるずるずる遅れてすみません。

どうしても日本滞在中は生業優先&充電(DVD映画鑑賞と読書)優先になります。
これがないとサイトアップの馬力が出ないのです。どうかご理解ください。





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『なつかしい風来坊』から『遥かなる山の呼び声』へ


2007年9月10日 寅次郎な日々 その330


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
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山田洋次監督の映画といえばラストシーンの鮮やかさがあげられる。

人というものはささやかな幸せを掴むことが充分ありえるということを勇気を持って私たちに指し示してくれるのが山田映画だ。
そんなこと当たり前ではないか、と思われるかもしれないが、古今東西の数々の映画を見るにつけ、山田監督ほど
人間が幸せになることに対して怖気づいていない監督はいない、ときっぱり思うのだ。

もちろん、物語の起承転結の歯車が上手くかみ合わないと肝心のハッピーエンドもそこの浅いものになってしまうことも自明である。
ということは、ラストシーンの鮮やかさは、物語の鮮やかさでもあるわけだ。

昨年公開された「武士の一分」でもそのけれんのないラストシーンには今更ながら驚かされた。
私の好きな山田映画ラストシーンベスト3は、「幸福の黄色いハンカチ」「遥かなる山の呼び声」「寅次郎ハイビスカスの花」
である。この三作品のラストシーンは間違いなく観てよかった、としみじみ思える鮮やかな、そして心が清められるようなそんな大団円だ。

その中でも特に「遥かなる山の呼び声」のラストが飛びっきり好きだ。

朝靄の中、田島耕作が民子や武志のもとから警察に連れて行かれた時に、私たちはこの映画に映画のシェ―ンのような、
「もう会えない別れ」を感じ、残念で無念な気持ちになってしまうのだ。

そして、男手のなくなった民子の小さな牧場は離農せざるをえなくなったことが暗示するようなシーンが続き、
私たちは暗澹たる気分になり心が沈んでゆくのである。

しかし、その最後の最後に、耕作が網走刑務所に護送される列車の中であの鮮やかなどんでん返しが待っているのである。
姑息な演出も、過剰なヒロイズムも何もないこのささやかな物語。
孤独の中で寄り添いあうように暮らす民子、武志、耕作の切ない人生模様。
世間の常識などを遥かに超えた民子の耕作への信頼と愛情。

そして虻田太郎の友情と献身。


この映画のラストに流す私たちの涙は、おそらく、人が流す涙の中でもっとも浄化された清らかな涙だと思う。
こんなに涙を流していてもちっとも恥ずかしくない映画は珍しい。
いや、この映画以外にどんな映画もこのような感覚は存在しない。



              
遥かなる山の呼び声での汽車の中での民子と耕作の再会シーン。

                




しかし、この映画には実は『原型』があるのである。




それはなんとこの遥かなる山の呼び声から遡ること14年前の映画、1966年公開の『なつかしい風来坊』である。


物語はこうだ。

有島一郎さん演ずる衛生局防疫課の課長早乙女良吉がひょんなことから労務者の源五郎と知り合い、意気投合し、
家にまで連れてくる。
家族は嫌がるが、源五郎はお構いなしで、良吉に友情を感じてしまうのである。その後も源五郎は事あるたびに良吉の
家に立ち寄っては、押し売りを追い払ったり、純血種の洋犬を貰ってきたり、家族のニーズに応えるべく、マメに世話を
焼いてやるのだった。

そんなある日、源五郎はなんとずぶ濡れになった娘を良吉の家に担ぎこんでくる。
何事かと聞いてみると、どうやらその娘は入水自殺を図ろうとして、源五郎に助け出されたようなのだ。娘の名は愛子。
気立ての良い愛子は、良吉の家でしばらく養われることになり、その後、お手伝いさんとして働くのだった。

しかし、愛子は過去の辛い思い出からどうしても抜け出ることが出来ないまま日々は過ぎていった。

そして源五郎は世間の荒波に翻弄されながらも純粋な気持ちを持ち続けている愛子に惹かれていくのである。

ある日、良吉の手配で、源五郎は愛子と映画『太陽がいっぱい』を観に行き、その帰りに公園で愛子を励ましその悲しい心に
寄り添おうとするのだが、ちょっとした弾みで愛子が窪みに落ちてしまった瞬間に愛子の服が破れてしまい、源五郎に恐怖を覚え、
良吉の家まで逃げ帰ってしまったのだ。おろおろするばかりの不器用で不運な源五郎。
何度も何度も「違うんだよ」と繰り返すだけの悲しい源五郎だった。

良吉宅に帰ってから、良吉たちに強姦に遭ったと思われるのだが、悲しい過去がトラウマになってしまい、
真実を打ち明けられないで震えている愛子。

誤解が誤解を招き、源五郎も愛子をかばい警察に自白する形になってしまうのである。
そして運悪く源五郎の過去の余罪も芋ずる式に見つかってしまい、源五郎は数ヶ月刑務所に。
そしていたたまれなくなった愛子も良吉の家から姿を消してしまう。

そして良吉自身も二人が姿を消した後は、抜け殻のようになり、結局その後、左遷のような形で八戸行きを命ぜられるのだった。
家族にも距離を置かれているので結局単身赴任になり、残しひとり淋しく東北へ向う。

その汽車の中で最後のドラマはおこる。

なんと愛子に再会するのである。





【本編  ラストシーン 】


東北行きの汽車の中

良吉の目の前に座る愛子。

お互いにまだ気づかない。

愛子を見て驚く良吉。

良吉を見て驚く愛子。

愛子「は!…先生」



            




良吉「愛ちゃん…」

愛子の背中には生まれてまもなくの赤ん坊が負ぶさっている。

良吉「愛ちゃん…、君、結婚したのかい?」

愛子「…はい」



                



良吉「はあ、そうかい。それで、そのお…」

良吉が赤ん坊の父親のことを聞こうとした時だった。


車両の端から懐かしい声が聞こえてきたのだ。


源五郎「おい!母ちゃん!席あったかや!?こっちにもひとつあんぞォ!」

源五郎、遠くの良吉を見つけて

源五郎「おお!!先生!先生じゃねえか!」

良吉立ち上がり源五郎を見つめる。



                




源五郎は感無量で良吉の肩を掴み

源五郎「あっしですよ!源五郎ですよ、先生!」

満面の笑みの源五郎。

なんともえいない顔で源五郎を見つめる良吉。

そして愛子をもう一度見つめる。


恐縮しながら良吉を見ている愛子。


               




源五郎「先生、驚いたでしょう。勘弁してくださいな。ご覧のようなわけでね」

嬉しさがどうしょうもなく滲み出てくる良吉。



               




源五郎「いやあ、ご報告しなきゃ申し訳ないって、いつも愛子と話していたんですがね、
なにしろ、へへへ、恥ずかしいもんで」

良吉、しみじみ二人を見ている。

源五郎「いえー!そのうち手土産でも持って御伺いしようと…、いやあ、フフ、だけど
     驚いたなあ、こんなところで見つかっちまって、なあ!おい」

と、愛子に笑いかける源五郎。

愛子「先生のお宅には散々ご厄介になっておきながら…。この人が、どうしても恥ずかしいって
  言うもんですから。ほんとにすいませんでした」

と深々とお辞儀をする愛子だった。

愛子「お便り一つしないで、あの、な、なんとお詫びしたらいいのか…」

良吉、目を潤ませて

良吉「もういい、よく分かった。謝ることはないよ」

愛子は遂にハンカチを取り出し泣いてしまう。


高まるテーマ曲。


良吉を見つめる源五郎の目も潤んでいく。


良吉「よかった…、これで…ほんとうによかった…。僕は何と言っていいか…うう」

と泣いてしまうのである。



               



そして源五郎と愛子は良吉と一緒に座り、
あのあとの二人の恋の物語を語り始めるのだった。

良吉「愛ちゃん、おめでとう」

お辞儀をする愛子。

源五郎「さあ、積もる話とまいりましょうか」

良吉「ああ」

源五郎「へへへ!それがね」

愛子、源五郎の顔を見て微笑む。




              





源五郎「語るも涙、聞くも涙の物語でしてね!へへへ!」

赤ん坊にオッパイをやる愛子。


なんとも幸せな表情で窓の外をふと眺める良吉。



              



三人を乗せた汽車は一路北へ走っていくのだった。







と、まあ、こういう話である。







もちろん源五郎を演じるのはハナ肇さん。
14年後に「遥かなる山の呼び声」で汽車に乗り込んでくるのも虻田太郎演ずるハナ肇さんだ。

そして『なつかしい風来坊』の良吉の驚きと感動の目はもちろん『遥かなる山の呼び声』の田島耕作の驚きと感動であり
虻田太郎の感動でもあるのだ。

そして良吉の心からの嬉しい涙は田島耕作の心からの涙であり、



        
嬉さのあまり泣いてしまう良吉            民子の心に打たれ涙を流す耕作
                 






源五郎の嬉しい涙もまた田島耕作のあの涙であるのと同時に虻田太郎の涙でもあるのだ。



         
遂に泣き出しそうになる源五郎          感動で顔を伏せ泣いてしまう虻田太郎
                     





そして愛子の笑顔は民子の笑顔なのだ。



           





あの列車がどこまでも走ってゆく雄大な「遥かなる山の呼び声」のラストも、
すでに「なつかしい風来坊」の中でもうもうと煙を立てて走る汽車の姿で終わっているのである。
あの未来へ向って疾走する二つの汽車は、神様がこの人々の未来に幸多からんことを
すでに約束したことを意味する福音なのであろう。



        
  汽車は一路青森へ                  汽車は一路網走へ
                  





このように、あの名作「遥かなる山の呼び声」のラストはその遥か14年前にスタンバイされていたのである。

このような繰り返しは、これに限らず、山田監督の一般的な特徴であるが、
「なつかしい風来坊」のラストから14年。
同じ球根から発したもうひとつの芽が、もう一皮向けた力強い構成に裏打ちされた人間賛歌として
「遥かなる山の呼び声」の中に大きく花開いていたたことだけは疑う余地がないだろう。
山田監督の大きな進化をまざまざと見せつけられた思いがしたものだった。








まだまだ9月も月末まで多忙が続きます。

第3作「フーテンの寅」本編完全版第1回は9月22日ごろになります(^^;)ヾ

第28作「寅次郎紙風船」ダイジェスト版は、第3作更新以降に作業いたしますので、
アップは9月26日頃になります。

またもやずるずるずるずる遅れてすみません。

どうしても日本滞在中は生業優先&充電(DVD映画鑑賞と読書)優先になります。
これがないとサイトアップの馬力が出ないのです。どうかご理解ください。





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第27作「浪花の恋の寅次郎」ダイジェスト版


2007年9月3日 寅次郎な日々 その329


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。
  



ふみさんの涙のわけを辿る長い旅  


浜田ふみさんは、いわゆる素人ではない。ぼたん同様、水商売系に関わって生業をたてている。
そんなふみさんも,根が堅気のせいか、素の時は、質素な堅気に見えるのである。ちょうどおばあさんの墓参りに
故郷に帰ってきた時、フーテンの車寅次郎と瀬戸内の小島で出会う。そして大阪で再会し、ふたりともつかの間の恋を
花開かせていく物語である。

ふみさんは瀬戸内の小島で寅と話をしながらとても優しい目をして寅を見つめる。彼女は寅の名を聞き、
寅も彼女の名を聞く。そしてそのあとふみさんが日傘を持ちながら寅を見送るシーンがあるが、ゆったりと長く、
どこまでも寅を見送っている。この長いシーンはとてもふたりの波長が合っているのである。あれは運命的な
出会いをした女性の輝きだったと私は思うのだ。
まるで網走の波止場での寅とリリーの出会いのようだった。
多くを語らなくても分かり合えるものをお互いが持っている。
なにも大きなエピソードがなくても、ほとんど会っている時間が短くても、人は運命の出逢いをする。

この見事なフィット感は、リリー以外にはお千代さん、光枝さん、朋子さんくらいである。ぼたんの時とは若干ズレがある。
寅は初対面の日ぼたんには恋まで行かなかったが、ふみさんとはごく短い時間の中で男女の出会いになっている。

つまり、寅はリリー同様運命の出逢いをしてしまったのだ。


そしてこれまたリリーの時と同じで、だからと言ってベタベタその小島に滞在しないところがいつものよくある寅とは
違う『本物の恋』の証拠なのだ。

ここが普通の男女と真逆なところ。もう一度の運命のいたずら、運命の赤い糸に賭けるのだ。寅の『本気』というのは
やはりつくづく粋だと思った。

そして大阪で二人は再会し、いろいろな物語を育んでいく。そして例の如く寅は逃げる。

それでもふみさんは、自分の青春の最後を賭けて、もう一度寅に会いに来る。
他の男性に好かれ、その人と結婚を決意した後も、なんとしても今一度寅に会いたかった。
しかし、実際は寅もふみさんに恋をしていたので、結果的に結婚報告のような形になり寅は深く傷ついてしまうのだった。

ふみさんはそのことには気づかないままとらやを後にする。

自分は、好きだった寅に、結婚の報告という隠れ蓑を使って最後の別れを言いに来たのだとしたら、それはあまりにも切ない。

そして、ラスト。

ふみさんは、この物語の最後に対馬まではるばる会いに来た寅を強く見つめ涙を見せる。

普通に考えると弟を一緒に親身になって探してくれ、励まし、寄り添ってくれた恩人の寅が遠くこんなところまで会いに
来てくれたことに対する感動の涙だと思うのだが、私にはやはりそれだけではないような気がしているのである。

        
@寅の帰郷と社長の苦悩

今回も夢から


浦島太郎のハミングが聴こえてくる。


寅が浦島太郎になっている(^^;)

寅のナレーション

昔々、浦島寅次郎は、助けた亀に連れられて竜宮城を訪れ、
夢のように楽しい日々を過ごしたのでありました


SKDの皆様ごくろうさまです(^^)

タコ社長がタコのぬいぐるみをかぶっている。 そのまんまギャグ(^^;)
源ちゃん亀もいる。
彼が浦島寅次郎に陸で助けられたのだろう。

寅「楽しさのあまり、思わぬ長居をいたしました。故郷葛飾柴又村では、わたくしの肉親が
  帰りを待って案じております。乙姫様、これでおいとまいたします

乙姫様「どうしても、行っておしまいになるの?


この作品はマドンナが夢に出演!28作、33作などもマドンナが夢に登場。

タコも泣いている。(^^;)太宰さんご苦労様です(TT)

寅「別れの悲しみは私とて同じこと
乙姫様「初めてお会いしたその日からいつかその日が来るのを覚悟しておりました。
    もはや、お引止めはいたしません。これ、亀吉

乙姫様思い出のよすがに玉手箱を…

と、お決まりの『玉手箱』を渡すのだった。

                     


柴又村 海岸

寅のナレーション

乙姫様に玉手箱をいただいた浦島寅次郎は、再び亀の背に乗って故郷に帰ってまいりましたが…
なんと驚いたことに、あの懐かしい柴又村は跡形もなく荒れ果てた野原があるのみでした

一軒の貧しい民家を見つけ

寅「ものをお尋ねいたします。このあたりにとらやという団子屋はありませんでしたでしょうか
さくらの孫「寅の方を振り向く。
寅「さくら…さくら!オレだよ!
さくらの孫「「あなたはどなたですか?
寅「なにを言ってんだ、おまえの兄さんだよ!
さくらの孫「いいえ、私には兄なんかおりませんけど
夫「誰だ?この男は?
さくらの孫「私のあんちゃんだって言うのよ
夫「頭おかしいんじゃねえか?

源ちゃん亀、干した魚介類を食べている。演出が細かい!(^^;)

                    

寅「博!博だろ?オレだ、寅次郎だよ
さくらの孫「そういえば…、おばあちゃんのお兄さんにそんな名前の人がいたわ…
寅「その寅次郎はオレだよ!
夫「バカこくでねえ!その人だったら50年前に神隠しにあっただ、
 今生きてたら80の老人だべ。こたら奴にかかずりあってねえでさ、めしだめしだ!


戸をバシッ!と閉めてしまう。
尺八の哀しい音色が流れる。

寅のナレーション

竜宮城で過ごした、夢のような数日が実は十数年の長い年月であった
 浦島寅次郎は、悲しみのあまり、さめざめと泣くのでありました

おいおい50年前だから『十数年』じゃなくて『数十年』だろうが??

寅「乙姫様…、私は心の底よりあなたのことをお慕い申しておりました
寅、手に持っている玉手箱を見て
寅「あ、そうだ…、この玉手箱には、いったい何が入っているのだ?

寅次郎、紐を解いてフタを開ける。
ピョ、ヨヨ〜〜〜ン!

白い煙がモアモアモア。。。。と立ち昇る。
寅「ややああ…
一緒に横にいた源ちゃん亀、煙をかぶって
源ちゃん亀ゴッホゴホゴホッホ…

源ちゃん亀、手で煙を扇ぐ。頭もアゴ髭も真っ白になり、老亀に変わってしまう。
ビビッテ寅を睨む源ちゃん亀。

源ちゃん亀「あれ…??ウエエエエエおっと、意外な展開!!(( ̄ ̄0 ̄ ̄;))
                   
寅「あああ!…

源ちゃん亀「助けてくれえ…、お前の代わりにオジンなってしもたんじゃああ、
       助けてくれ…タスケ…


鬼気迫る顔。演技とは思えないリアリティ
蛾次郎さん…、あまりにも凄すぎ…プロ中のプロ(_ _;)

                    




長崎県 対馬  和多都美(わだつみ)神社 (海神神社)

長崎県対馬市豊玉町

ベンチでうなされている寅。

寅「ウ…、ウァ…


寅がなぜかいきなりすでに遥か海の向こう対馬にいる!?
まだオープニングだぞぉ!いきなりラストの場所になるなよぉ…。

                   

起きる寅

寅「あー、…夢か…はあ…
海辺で子供たちが亀で遊んでいる。
寅「こら!坊主!駄目だよそんな、弱いものいじめしちゃあ、そんな、可哀相に
  まだ子供の亀じゃないか


寅はお金を上げて子供たちから亀を買い取ってやる。

寅「あいたたた!あいっ!
 噛み付きやがった
この恩知らず!
 あいたあ!あいたたあ!あいたあ!チキショウ!


乙姫様との出会いを狙ったのだろうが
現実は厳しいねえ寅(^^;)


                  

なんとかふり解いて亀を飛ばす寅でした。


タイトル

いつもより少しゆっくりめの音楽
 


男(赤)はつらいよ(黄)浪花の寅次郎(白)映倫110451


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪



江戸川土手を歩く寅。

サイクリングの3人連れのコント。

もちろん、この作品でもコントの帝王
津嘉山正種さんが大活躍。
ちょっとした誤解から三角関係になってしまい、失恋した方の男が自転車で江戸川に自ら突っ込み、
あとの二人の男女も助けようとして3人とも川に落ちる。

                  

寅はそれを見ながらなにか叫んでいる。

題経寺 山門


スズキのスクーターが止まっている。
荷台に買い物かごと
マスカット色のヘルメット。

源ちゃん「バイクや…

源ちゃん、スクーターに興味持っていじりまくっている。

境内でさくら御前様に挨拶して別れる。

さくら「
こんにちは
と言いながら
玄海ツツジとお重の空を前のカゴに入れる。
源ちゃん「これ、買うたん?
さくら「うん、ウチが遠くなったからねえ」第26作から引っ越したんだよね。
と、さくらノーヘルメット!でエンジンかけて参道を走っていった。

家からとらやまでヘルメット被らないつもりか!?
青山巡査に止められるぞ!注意一秒怪我一生。

源ちゃん「えーなあー…

                 

マジで源ちゃん羨ましそう…。
もう乗りたくてしょうがないって顔(^^;)



とらや 店 


おばちゃん「ほら、社長、きれいでしょう」さくらがもらって来た玄海ツツジを見せる。
社長「春も秋もねえよこっちは、へえぇ…

どうやら社長の工場は今度ばかりはいよいよ危ないらしい。
みんなで励ますが、社長はかなり滅入っている。


そんな時、寅が上機嫌で帰ってくるのだ。

寅、クスクス笑いながら、社長を手招き。


社長「なんだよ、なにが可笑しいんだよ
寅「オレなあ、こないだおまえの夢見たよ
社長「へえ〜、たまにはオレのこと思い出してくれんのかい?
寅「オレがな、竜宮城にいったんだ

寅「おー、そしたらね、そこにタコがいるの。なぜか!
 社長、お前なんだよそのタコが。オレビックリしちゃってさあ


 
あれえ!社長何でこんな所にいるんだよ、
 お前、裏の
工場潰れちゃったのかってオレそういったらさ、
 いや、お前がさ、その目から涙ポロポロこぼしてねえオレに
 真っ黒なスミをブァッと吹っかけやがんじゃないの、


                

 
オレ目ぇさましてもさ、おかしくっておかしくっていつまでも一人で笑ってたよ、うん。
 お前本当に裏の工場潰れちゃったんじゃないのか、おい。え?


社長、かなりムカついて、寅と喧嘩してしまう。

社長「こっちはな、毎晩首くくる夢見てんだぞ!
  それをなんだ!竜宮城で乙姫様にあった夢なんか見やがって!


毎晩首くくってちゃ、いくら夢でも大変だぞ、凄い夢の連続だ(^^;)


いつもの喧嘩と言うより、社長はどことなくやはり元気がない。
しょぼくれて金策に出かけていったのだった。


寅「なんだい、人がせっかく帰ってきたって言うのによくそ面白くもねえ、ほれ」とお土産を渡す。

寅、ちょっと、社長のことが気になって、考えている。

社長がトボトボ参道を歩いていく。背中が哀しい…。



工場 夕方

夜になっても帰ってこない社長にみんな心配している。

博「こないだ、不渡り手形をつかまされて…、ま、額はたいしたことないんだけど、
 だいぶ参ってたんだァ…

不渡り手形つかまされると、人間不信にもなるから2重のダメージなんだよなあ(−−;)
さくら「
おばちゃん「その矢先に、寅ちゃんにあんなこと言われたんじゃ、涙もこぼしたくなるよね、可哀相に
博「何て言ったんですか?兄さん
おばちゃん「竜宮城の乙姫様に会いに行ったら社長とおんなじ顔したタコが
      踊りを踊ってる夢を見たんだって


博「ふー、困ったもんだなあ

まあ、夢ですからねえ(^^;)

おいちゃん「たったひとつの言葉が、人間を死に追いやることだってあるんだからなあおいおい ヾ(^^;)


寅は、それを聞いて、社長が自殺したんじゃないかと思い、外へ飛び出していく。
そして源ちゃんを引き連れて必死で江戸川一帯を探し始めるのだった。


                  

寅「
社長はやまるなよ!
源ちゃん「社長さん!
寅「社長ー!、あ、源公おまえな、矢切の渡しで向こう岸渡り、対岸をずっと下って、
  東京湾で落ち合おう!早く行け!


叫びながら江戸川を下流に向って行く二人だった。


とらや  茶の間

満男がおいちゃんの腰揉んでいる。

吉岡秀隆君初登場!

おいちゃん「何時だ?
満男、上を見て
満男「11時」                    

で、結局この後、社長は一杯飲んで帰ってきたのだ。先払いのいい仕事を
もらったので気分よく酔っていたらしい。

そうとは知らず、寅は社長を探したが見つからないので戻ってきたのだった。

社長が横にいるにもかかわらず、社長を心配する寅。社長が横にいるので、
拍子抜けしてしまって呆然とする寅だった。


さくら「お金の目安がついたからね、一安心してお酒飲んでたんだって
おばちゃん「電話もしないで
社長「友達が誘ってくれたんだよ、くよくよしないで酒でも飲もうって
社長、含み笑いして
社長「ふ…、それがな、寅さん、気分のいいバーでな、オレ、もてちゃった、フフヘヘへ
寅、いきなりタコ社長の鼻に手の平をこすり付けてグリグリする。
社長「あいた、あいたた、いててててえ!!

                   

さくら「お兄ちゃん、やめて!
博「兄さん!やめてくださいよ
と止めにはいる。
寅「なんだこのやろ!酒なんか飲みやがって!
社長「オレが酒飲んで悪いか!?
寅「あたりめえだ!てめえら江戸川の水でも飲んでろ!
社長「なんだと!クッ!!

っと寅に掴みかかる社長。

一同  「あああ!

寅、上がり口に座って

寅「オレはてっきり、社長は、江戸川に身を投げて、土座衛門になったもんだと思ってな、
  あの江戸川をどんどんどんどん月明かりをたよりに下っていったんだい、
篠崎水門まで行くと、
 社長、おまえとおんなじ姿の白いもんがポッカリ浮かんでるんだ

社長「え?
寅「オラ、竹竿でもってな、つっついてみたんだと、竹竿で突っつく仕草。
寅「そしたらおめえ、腹にガスの溜まった子豚の死骸だったの
一同 聞き入っている。
寅「それから今井押切、どんどん下がって江戸川大橋

列車の警笛  ピ〜〜〜ッ!

寅「
あそこまで行くと、川幅がグーっと広くなるんだ。
  向こう岸の浦安の灯が心細くチラホラチラホラ見えるんだ…。
  暗ーい川の面を見ていると、『そうだ、この底の方で今頃社長は…、
  ポッ!ポッ!
  ボラの餌になってるのかなあと思うと、なんだかオレは悲しい気持ちになってなあ。
 『社長ー!社長さあああん!』


 グスン、お前の名前を呼んでるうちに涙が
 ポロポロポロポロとこぼれてきてなあ…、グスン…。
 『そうだ!オレの言葉のせいで社長は死んだんだ!』」

寅、くるっと逆向いて、手を合わせて、

寅「『だったらオレも死のう!南無阿弥陀仏、

寅、題経寺の檀家だから『南無妙法蓮華経』だろ(^^;)

江戸川へ身を投げようとする
このオレを、源公が袖をつかまえて、
『兄貴!早まっちゃいけねえ!』


                   

『いいからてめえ離せ!』
『早まっちゃいけねえ!』
『いいからてめえ離せ!』
『くっくっくくくくくく……』


おばちゃん、身を乗り出して

おばちゃん「それでどうなった!?」 おいおい講談じゃないんだから ヾ(ーー )

寅「ドボーン!とそのままオレゃな、……

寅、我に帰って、

寅「んっは…、そうなったらオレはここにいねえんだな

おばちゃん「ほんとだ、はあー、よかった…ととりあえず安心(^^;)


メインテーマがゆっくり流れる。

寅「ほんとに、無事でよかった…
と、2階にゆっくり上がっていく。
寅「はああ…はああ…
社長「迷惑かけちゃったなあ今日は。 いや、オレが飲みたいって
   言ったんじゃないんだよ、友達がさそってさ

おいちゃん「分かった分かったくどいよお前は

この一連の騒動は先ほども書いたように第22作「噂の寅次郎」の社長の酒飲み騒動を
かなり再現、もしくは模写したと言ってもいいだろう。結構物語の運びが似ている。お暇な時に
両方をじっくり比べて見てください(^^)



次の日 さくらの家の前

結局寅は、なんだか、間が悪いのと、社長が羨ましくなって出て行ったのだった。

おばちゃんとさくらとの電話で
おばちゃんの声「うん、考えてみたらねえ、寅ちゃんが旅先で行方不明になったって
        誰も心配してくれる人なんかいないもんねえそれを思ったらなんだか哀れになっちゃってねえ…。
        あ、はいはい、お客さんだから、また後でね

さくら「うん

                   

この翌朝のふたりの電話のシーンもやはり
第22作のアレンジ版だ。第22作では寅は布団をきちんとたたんで
『書き置き』をして出て行った。このあたりは山田監督も苦しい日々が続いていると
見ていいかもしれない。




Aふみさんとの運命の出会いと再会



瀬戸内海

寅が小さな連絡船に乗っている。
広島県 大崎下島 豊町

遠くから寅の啖呵バイの声が聞こえる

寅「心斎橋から天王寺の一流のデパートで…」と大阪ネタも取り入れている。
おばさんたち、ゲラゲラ笑っている。

                   

豊浜町・小野浦

寅、見晴らしのいいところで一人アンパン食べている。
雪印牛乳も飲んでいる。

この場面、映画『故郷』の松下さん思い出した。
あの時、松下さんも、一人で海の見える丘でパンを食べて『浜千鳥』を歌いだすのだ…。


                   


ふみがお墓への階段を登っているのを発見する寅。

目がいきなりハート気味な寅(^^;)

寅、会釈。

ふみも軽く会釈。

あまりの美しさに寅、つまづきそうになる。

寅「お身内の方ですか
ふみ「はい
寅「旅のものですが、通りすがったのも何かのご縁、お線香の
  一本でも上げさせてくれますか

ふみ「はい、ありがとうございます
寅「南無阿弥陀仏…こんなお美しいおかみさんを残して、
  先立たれたご主人は、さぞかしお心残りだったでしょうねえ…お気の毒です


すげえ、決め付け(^^;)宗派も決めつけ(^^;)
寅ってもしふみさんが美人じゃなかったら間違いなく素通りしてただろうね。


ふみ「ふふ、
寅「え?何か?
ふみ「うち、主人はいません、これはね、おばあちゃん

寅「あ、おばあちゃん!…おばあちゃん、南無阿弥陀仏…

                   

ふみ「ふ、ウフフ・・・

野球をしている少年たちの横を通る二人。

ふみ「両親とは訳があって小さいときに分かれたんです。
  だからウチはおばあちゃんに育てられたの

寅「へえ〜じゃあ、あんたそのおばあちゃんと
 一緒に暮らしていたのか

ふみ「ううん、ウチは大阪で働いてるの、
   だからおばあちゃんに何べんも大阪で一緒に暮らそうってゆうたんだけど、
   どうしてもこの島を離れるのは嫌だゆうて、


松阪慶子さん、大阪弁ちょっと苦手そう(^^;)

寅「そうだろうなあ年寄りにとっちゃ自分の生まれ育ったところが
  一番いいんだろうな、この島いいところだしね

細い坂を下りながら
寅「大阪で何やってんの?工場勤めだろ。

                  

ふみ「ううん
寅「うそだい…じゃあOL
この時にはさすがにもう第1作のように
BG(ビジネスガール)とは言わないようだ。
寅「え?あ!郵便局、郵便局勤めてる…

照れて首を振るふみ。



船着場

寅「当分はまだこの島にいるかい?


ふみ「おってもしょうがないよ、初七日もすんだし、2、3日うちにはまた大阪にもどんなきゃ
寅「大阪に戻るか…
ふみ「お兄さんこれからどうするの?
寅「う〜ん?へへっ、風の吹くまま気の向くままよ!

ふみ「自由でいいねえ、魚みたいに…

と、水面を泳ぐ魚を見るふみ。