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寅次郎な日々

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まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。



                 

武士の一分 絶妙のハーモニー  聴こえて来る美しい和音(2007年6月15日)

第22作「男はつらいよ.噂の寅次郎」ダイジェスト版(2007年6月10日)

第21作「男はつらいよ.寅次郎わが道をゆく」ダイジェスト版(2007年6月2日)

第20作「男はつらいよ.寅次郎頑張れ!」ダイジェスト版(2007年5月26日)

第19作「男はつらいよ.寅次郎と殿様」ダイジェスト版(2007年5月20日)



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武士の一分     絶妙のハーモニー  聴こえて来る美しい和音  
 

2007年6月15日寅次郎な日々 その318


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


不思議な縁あって、『武士の一分』を見せてくれる方がおり、こんな地球の果てで、帰国前にDVDで見ることが出来た。
バリの月夜を眺めながら徳平じいさんのぼそぼそ声を聞くのも悪くないなと思えた夜だった。



【最高のラストシーン】




新之丞「徳平」

徳平「え、 へえ」

新之丞「また鳥籠買わねばの」

徳平「へえ、…んだの。 ツガイの、小鳥ものう…」

新之丞「フフ、 だの…」



まず、全ての良い悪いの前評判も、役者の経歴も取っ払って真っ白な心になってから見た。

とてもシンプルで濁りのない作品だった。私の中では時代劇三部作の中で最もスッキリした後味のいいものになっていた。
山田監督にはこのシンプルさがあるから好きだ。
そしてこんな心が和やかになるラストシーンは久しぶりである。
たとえ主人公が目が見えなくても、そんなもの関係無しに見事な愛の賛歌のラストである。
バックに流れる富田勲さんの音楽が、あの美しいラストをさらに引き締め、いつまでも私達の中に余韻を作ってくれた。
繰り返すあの低音のリズムがたまらない魅力だった。才能とはああいうことを言うのだ。

家族、幸福の黄色いハンカチ、、はるかなる山の呼び声、寅次郎ハイビスカスの花、等々
山田監督のラストシーンというものは濁りがない。

ああ、見てよかった。見る意味のある時間だったと心からそう思えてくる作品というものは
そうそうあるものではない。決して大作でも、派手でもなく、シンプルで淡々としたこの小さな映画は、それでもお金を出して見て
決して損はないない数少ない映画だと思う。




            




【チームで作り上げた木村拓哉さんの『位置』】


なによりも木村拓哉さんが淡く美しく光り輝いている。そしてその微妙な芝居の階調を熟したスタッフとキャストが
丁寧に掬い取り、美しい和音に変え、絶妙のハーモニーを作り出している。このことは、心を透明にして見れば分かることだ。

あの木村さんの感覚を不協和音と見た日本の多くの映画ファンの人々は、この作品を理解できていないのだと思ってしまう。
なんせ、今年始め頃のこの映画の木村さんに対する不評と雑音は、遠く地球の果てに住む私にまで聞こえてくるくらい
激しいものがあった。まさに酷評の連続…。当時まだ映画を見ていなかった私は、彼の演技はそんなに酷いのだろうか…。と、
まだ見てもいないのに勝手に心配し、同情すらしていたのだが(^^;)ゞ

やはり、自分のこの目で映画を観て、確かめられてよかった。
あの役は木村拓哉さんでしか出来なかった。真田広之さんや永瀬正敏さんでは、あの三村新之丞はもっと『それらしく』なる。
その結果、緩急のバランスが弱くなり全体が硬く、息苦しいものになってしまっただろう。渡辺謙さんでもあそこまでイメージは
広がらなかった。木村さんだからこそ私達は、自分のこととして身につまされるように泣き、笑い、幸福感に浸れるのである。

ちなみに、剣道における基本は木村さんもかなり出来てはいるが、最も大事な足さばきや腰の入り方、立ち姿、格闘時のスケール、
などは真田広之さんの方が木村さんより格上だ。その部分は二人は人生が違う。目が見える見えないではなく、やって来た
道のりが違うのである。しかし、今作品は実はそういう体育系のチャンバラ映画ではない。男女の愛の賛歌である。

木村さんのまろやかで微妙にはにかむあの表情と庄内弁が、重くなりがちなこのテーマを中和し、再度見たくなる余韻を
作ってくれたのである。もしあの彼の『純情』を事前に山田監督が見抜き、起用したとすれば、山田監督の中に、よほど強い
イメージがこの作品に対してあったと言えるだろう。とにかく全体の中の彼の『位置』がとてもいいのである。これはある意味、
バランスを考え続けたスタッフとキャストたちの勝利だとも言える。いや、実はそちらの方こそが正しいのかもしれない。
私はこの鉄壁のチームワークに唸り、舌を巻いた。

また、時代考証に支えられたすべてのもののあり方や生活様式、『灯り』や『音』へのこだわりは三部作とも尋常さを遥かに超えていて、
この部分への執着はどんなことがあっても集中力を切らさない。相変わらず、この組のスタッフたちにはさすがの一言しかない。

チームワークの中では、笹野さんの間合いは凄まじい。やっぱり彼は『役者』だとつくづく思わされる。そして、加世を演じた檀れいさんの
間合いもこれまたいい。木村さんとのバランスを考えた、絶妙な間合いは、静かなスケールさえあり、すでに完成された大人の風格を
感じさせられた。

ある意味、みんなが坂東三津五郎さんや小林稔侍さんや緒方拳さんになる必要はないのである。
いや、そうなってもいいものは実は出来ない。ここが全ての芸術に当てはまる不思議なところ。
今回の映画を観て思ったのは、坂東さんや小林さんや緒方さんは、確かに様になっているし、実際貫禄も有りすぎるくらい有る。
しかし、ひょっとして彼らの代わりは探せば実はいるような気がしないでもない…。
しかし、木村拓哉さんの代わりはひょっとしていないんじゃないかと、ギリギリではそういうことだと思う。

重々しい正統派の時代劇は一見非の打ち所がないように見えるが、実は作品自体に余韻がなく、現代に生きる私たちにとって
イメージが広がらないものになっていることがしばしばある。ま、要するに重々しくは有るが硬直していて一本調子で退屈なのである。
映画というものはみんなで作るもの。それゆえ、ハーモニーと緩急が大切だということは私はすでに「男はつらいよ寅次郎相合い傘」で
学んでいるのだ。


ちなみに、笹野高志さんが演じた新之丞の父の代から務める中間の徳平役は実はとってもおいしい役である。映画人なら
誰でもわかる。あの役こそがこの物語の核なのだ。身分も格好もみすぼらしい冴えないじいさんだが、見て分かるように、
実は、物語的には陰の主役だと言ってもいい役なのだ。だから、あの役をもらった時点で、その役者はかなりおいしいのである。
そして笹野さんの凄いところは、スタッフや観客の期待を遥かに上回る、静かなれども大きな力強い芝居を今回見せてくれたところだ。
中間の爺さんのふにゃふにゃした中に黒光るあの腰の据わった静けさと間、貫禄はなかなか出せるものではない。笹野さんの懐は深い。
近年の笹野さんの演技は凄いのだ。





               




とにかく適材適所。この映画のまとまり方は尋常じゃない。撮影、音楽、美術、効果録音、編集、衣装、小道具、…
どれも全体の中でバランスを崩してはいない。ひとつひとつのパートがこれ見よがしに力んでいるわけでもない。
熟したスタッフと熟したキャストによって作られた濁りのない極めてシンプルで小さな夫婦の愛の物語である。
あの『たそがれ
清兵衛』の持つ広がりと切れ味は無いかもしれないが、シンプルで幸福な、きっぱりとしたラストシーンが
ここにはある。

山田監督の『映画人の一分』をしかと目に焼き付けさせてもらった。


最後に、桃井かおりさんのあの濃ゆい『味』にはニヤつきっぱなしだった。
「翔んでる寅次郎」から28年の歳月が流れ、本物のいい女優さんになられたことを実感しました〜(^^;)

あ、もう一つ、加世さんの『芋がらの煮物』を一度でいいから食べたいでがんす(^^)




第23作「翔んでる寅次郎」ダイジェスト版のアップは帰国直前で多忙のため6月21日頃となります。



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第22作「男はつらいよ.噂の寅次郎」ダイジェスト版
 

2007年6月10日寅次郎な日々 その317


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


魔性の女神、早苗さんの魅力      この言葉こそが女難の核 『寅さん 好きよ』

この映画の大原麗子さんはいやはやほんとうに麗しく、光り輝いている。こうして画像をキャプチャーしていても
どこで切り取っても絵になるのだ。普通なかなかこんなことはない。だから大原麗子さんだけを見ていてもかなり満足する
はずだ。第34作「寅次郎真実一路」の38歳の大原麗子さんもこの第22作に勝るとも劣らない色気だったが、
この若々しい32歳の大原麗子さんもなんともまあ美しいのである。しかし、そんな美しさとは反比例して、彼女は
いきなり不幸せのど真ん中にいるのである。どうしても好きになれなかった夫と離婚するしないで悩みながら別居し、
とらやに店員として働きにきたのだ。なんであのような見目麗しき彼女がこともあろうにとらやで働くんだ?…、
なんて思ってしまう。三平ちゃんやかよちゃんならいい意味でもとらやにぴったりなんだが、早苗さんではどうもオーラの
種類が違いすぎるのだ。ま、どうやらとにかく見た目とは違うちょっと変わった人らしいのだ。

その頃寅は、旅の僧に大井川の蓬莱橋で「女難の相」が出ていると言われて帰ってきたのだが、やはりそれは当たっていた。
精神的に追い詰められた人は、寅には弱いのだ。人は苦しい時悲しい時に他人に慰められると、ほんとうに嬉しいものだ。
第「ハイビスカスの花」のリリーが一番いい例だが、「寅次郎夢枕」の千代さんも寅の優しさに泣いてしまった。

そして遂に離婚をしてしまった早苗さん。早苗さんは今まで頑張って耐えていた緊張の糸が切れ、とらやで遂に
泣き崩れてしまうのである。
寅はなんとか茶の間で早苗さんの心を和まそうとするのだが、例の如く全て裏目に出る。
それで、みんなでかえって暗くなってしまったが早苗さんはその寅の優しい心に感動するのである。
そして帰り際に寅にこう言ってしまう。

早苗「あのー、今日はほんとにありがとう。
   私…寅さん好きよ!


駆けて行く早苗さん。
さくらの言うように、よほど、離婚直後のこの夜の団欒がうれしかったのだろうが、この発言には疑問が残る。
だいたい、いくら心を慰めてもらったとはいえ、この日は早苗さんが夫と離婚したばかりなのだ。
だから、これは間違ってもいわゆる「愛の告白」ではない。
あの第14作「寅次郎子守唄」で愛を告白する弥太郎青年のあの恋心とは異質のものである。

寅は齢四十をかなりもう越えている独身の男である。
寅に深い感謝と共にほのかな好意を持ちはじめたくらいで、いくら嬉しくてもちょっと言いすぎではないかと
思ってしまうのである。ましてやあの魔性の水野早苗さんの、あの目と声で言われると、寅でなくても誤解をしてしまう(^^;)
この早苗さんの『勇み足』が寅の気持ちを加速させ、結果的に悲しませてしまうことにも繋がっていくのである。

しかし、実はこの日から早苗さんも寅のことを好きになりかけてたのかもしれない。そういう展開は人生で確かにある。
そしてその心を持ったまま突然の別れが来るのがこの物語のせめてもの救いかとも思った。


ラストで、彼女を二十年も想い続けた従兄妹の肇のもとへ急ぐように強く勧める寅。

頷きながらもなにか言いたげだった早苗さん。
早苗「寅さん、私ね、…、分かってるのよあの人の気持ち
寅「だったら本人にそう言ってやりなよ、どんなに喜ぶか
早苗「そんなこと言ったって…私ね……
と、寅を見つめる。
早苗「あたしね…
寅「明日聞くよ。
  早く行かないと間にあわねえぞ、な

寅は恋のライバルが現れた場合、ほぼ100パーセント自分は譲ってしまう。
そればかりか、ライバルの心が痛いほど分かり、恋の仲立ちまでしてしまうのである。


「明日聞くよ」と言った寅の口跡とその表情は惚れ惚れするくらい素敵だった。
渥美さんのあの言葉と姿を見たいがためにこの作品を見ることもあるくらいだ。

それにしても早苗さんは「あたしね…」のあと、何を言おうとしたのだろうか?

いずれにしても寅は、すでに遠い旅の空である。
早苗さんの密やかな心は封印されてしまったのだ。

だからと言ってこの作品は実は大原麗子さんがメインではない。もう一つの魅力的な人物志村喬さんの存在は、
大原麗子さんが吹っ飛んでしまうほど大きなものがある。大原麗子さんは、私たちが見たまま、見えたままの
姿と演技だが、志村喬さんの芝居は、私の人生の歳月に比例して演技がどんどん違うように見えてくるのである。
一生をかけてひとつの役者の芝居を見ていくことの醍醐味を志村さんや渥美さんは私にずっと教えてくれている。
そういう意味でも、この第22作は『人間 諏訪一郎(ひょういちろう)』をもう一度垣間見ることが出来る嬉しい作品だ。
もちろん、私の関心の中心はもっぱらこちらにある。あ、これは、ここだけの話ということで…。



本編


@【墓参りをする寅とタコ社長の行方】

今回も夢から

寅地蔵尊物語

さくら(おさく)は、道端の毎日寅地蔵にお参りし、お父っつあんの目の病が治るように祈っているのだった。
雪が降り出して、おさくは自分のハンテンを寅地蔵にかけてやり、餅とみかんもお供えする。

寅地蔵の目からなんと涙が…。

一方、金貸しのタコべえは借金のカタにおさくを悪代官の妾として連れて行かれるのだったが、
そこへ、なんとあの寅地蔵の化身であるお坊さんが現れ、まず、タコベェたちを一瞬でやっつけてしまう。
寅地蔵「おさくとやら、南無観世音寅地蔵尊は、そなたの優しさにめでて、願いを聞き入れてとらせるぞよ

              

おさくたち「ははあー」と地べたにひれ伏す。
寅地蔵尊はお経を唱え、パワーを父親にかけてやると父親の目が見え出したのだ。
父親「あ!目が見える!
おさく「ああ!
なんと、冬の風景まで春に変えてしまい、 おいおい地球の摂理を… ヾ(^^;)

              

父親の目を治し、米俵を山積みにし、食料山盛り、おさくたちの服が立派になり、
ついでに小判をもジャラジャラ降ってこさせたのだった。
おさくたちは、驚愕し、うち震える。
寅地蔵「南無観世音寅地蔵尊…、ありがたき仏のお護りにより、この柴又村の幸せと平和は
     子々孫々まで守られることであろう…。めでたきかなめでたきかな

おさくと博「寅地蔵様…」と拝む
寅地蔵「南無観世音大菩薩、南無観世音大菩薩…」と唱え、フフとにっこり笑って消えていく。
そして家の前にはあの寅地蔵尊が残っていた。
一心不乱に祈るおさくたち。

寅地蔵尊の顔が寝ている寅の顔に変わっていく。

              

お寺で転寝して、和尚さんに起される寅。

寝ぼけてお賽銭に100円を入れてしまってお釣りをせがむ寅。
どうしていいかわからず賽銭箱を縦にしてお金を出そうとする やめろって ヾ(^^;)



タイトル 男はつらいよ 噂の寅次郎  映倫19616


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪



♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪



今回もコントの帝王津嘉山正種さん登場!
絵描きさん(津嘉山さん)が江戸川で油彩を描いている。



江戸川土手

ちょっとしたはずみで絵を見ていた人たちに寅が押されて、怒った寅が押し返し、その勢いで、一番前で絵を描いていた
津嘉山さんが倒れて、キャンバスの絵の具がべっちり顔につき、(TT)その二人で大喧嘩。
寅は、張本人の癖に例によって知らん顔してそそくさ立ち去るというコント。

             



柴又 題経寺近くの墓地

これはとても珍しいパターン。とらやの面々の野外ロケからはじまる。
おいちゃんおばちゃんさくらで秋のお彼岸に墓参り
春のお彼岸には「仏ほっとけ」で参らなかったので秋のお彼岸に参りに来たのだ。
すると、なんと墓の前で寅がもうすでに参っているではないか。
第11作「忘れな草」のオープニングと真逆。あの時は父親の法事をめちゃくちゃにしていた。

おいちゃんもおばちゃんもさくらも御前様もこれにはびっくり。
みんな大いに喜びみんなでお参りすることになる。

              

御前様「千造さん、あんたの息子が帰ってきたぞ、今日はいい日だなあ…南無妙法蓮華経…
★御前様、寅たちの父親は「千造」でなく「平造」ですよ。

おいちゃん、墓に水をかけている最中に寅が墓が間違っていることに気づき、
笑いながらみんなで花やボタモチ、お線香を引越し…


御前様もやり直し
御前様「千造さん、千造さん、あんたの息子が帰ってきたぞ、今日はいい日だなあ…
みんな御前様が同じことを言ってるので大笑い。
特にさくらがバカ笑い(^^


とらや  店 夜

おいちゃんの腰が年でかなり悪くなって来ているのだ。
さくらに揉んでもらっているのだがなかなかよくならない。

博「どうですか、いっそう人一人入れたら?
おいちゃん「冗談じゃない、ウチが給料なんか払えるか
さくら「あら、だって店員さんが来たら売り上げが確実に3割は増えるわよ
おいちゃん「増えたっておまえ、その分給料払えばもともとじゃねえか
博「もともとだっておじさんとおばさんの体が楽になるだけいいじゃありませんか
さくら「大事なことは、この店をいつまでも長く続けることでしょう
おばちゃん「でもねえ、ウチなんかにいい人が来てくれるかねえ


さくらのテーマが静かに流れる。

寅、心が沈んで…。

寅「すまねえな、オレがもうちょっとしっかりしてりゃ、おいちゃんたちにこんな心配をさせやしねえんだけど…

おいちゃん「寅、その気持ちだけで十分だ。人にはそれぞれ任というものがあるからなあ

人にはそれぞれ器があり、与えられた宿命があるという意味。
このシリーズのおいちゃんの言葉の中で最も深い感銘を受けた言葉の一つ。
この言葉は、3人のおいちゃんの中で下條おいちゃんが一番よく似合っていると思う。


さくら「そうね、お兄ちゃんにお店番なんか無理だもんね

              

ところで、このあたりでいつもならいる社長がいつまでもやってこない。

博の話によると不景気で仕事がなく赤字覚悟で割の合わない仕事を引き受けたりしているということ。
寅は社長が自殺したんじゃないかって想像を膨らませていく。

寅「おばちゃん、ウチには酒はあるか?すぐ酒屋行って叩き起こして、
  10本ぐらいここへ届けさせろ。さくら、茶碗、箸、皿、そういったもんの支度はいいか?
お通夜の準備だね(^^;)
さくら「そんなもん大丈夫だけど…、でも…

葬式好きの寅は、深刻になりながらも知らず知らずに葬式癖が出て気持ちが高揚している。

             

寅「よし、あとは寿司屋はずっとおそくまで起きてるっと…。
 残るのは葬儀屋だけだなあ。あいつは体がでかかったから棺桶も特大にしなきゃいけねえ。
 おいちゃん、これは万が一だけどな、もし、今晩お通夜ということになったら、このウチを貸してやろう、…な

おいちゃん、思わず頷く(^^;)
寅「奥の仏間にあいつの棺桶を据えて、ね。右っ方に親族、左っ方に遺族!、
  そしてここに労働者。ずっとここ酒の席にして、あそこ受付だよ、『ご愁傷様でした…』

汽笛 ピーーーーッ…。
寅、沈んだ顔で
寅「考えて見りゃあいつも可愛そうな奴だったなあ…決め付け(^^;)

このパターンのギャグはそっくりな形で第27作「浪花の恋の寅次郎」でも使われる。

寅「オレたちには計り知れねえ辛い思いをしてたんだろな…。
  もう一日オレが早く帰ってたらなあ…あいつと酒を酌み交わして、苦労話を聞いてやれたのに…

みんな「

と、その時…社長の鼻歌が聞こえてくる

社長「しのぶゥ〜と呼ばれたのぉ〜、神戸じゃァ〜、なぎさとぉ〜
酔っ払っていい気分で台所に入ってくる。
社長「なんだ寅さん帰ってたのかァ。今日はあたしもてちゃってね

おいちゃん「なんだどこ行ってたんだよ〜
どうやら池袋のバーで飲んで仲間と憂さ晴らししてたみたいだ。
寅の怒り爆発、社長をこかして、首を手で締め付けてしまう。
みんな引き離す。
寅「なんだこのヤロウ!みんながてめえのこと心配してんのに!
社長も怒って結局大喧嘩。庭で大暴れ。

              



翌朝 さくらのアパート こいわ荘(第5作ではコーポ江戸川)

電話をしているさくら
さくら「じゃあ、おばちゃんたちが寝ている間に、こっそり出て行っちゃったのかしら

とらや

おばちゃん「そうらしいんだよ、布団なんかきちんとたたんじゃってね、書置きまで置いてあるんだよ。あ、今読むよ
      『
やっぱり、帰ってくるんじゃなかった。社長によろしく言ってくれ。あばよ。とらや御一同様 寅次郎



A【女難の相を背負いながらの旅とこんにゃく物語】


静岡 秋深き大井川 蓬莱橋

蓬莱橋を渡る寅。  

尺八の音色
旅の僧とすれ違う。
僧、寅を見て、呼び止める。

僧「もし…
寅、立ち止まり、振り返る。
僧「旅のお方…、
寅、静かにお辞儀。
寅「何か…
僧「まことに失礼とは存じますが、あなたお顔に女難の相が出ております。お気をつけなされよ…

               

寅「わかっております。物心ついてこの方、そのことで苦しみ抜いております
寅って、『物心ついたころ』から女難…。そんな若い頃から惚れっぽかったんだ…( ̄0 ̄;)

僧、ゆっくり頷く、
寅「では…」と両手を合わせお祈りをする。
お互い風の中去っていく。


                           


バイで電子バンドを売ったあと、井川まで行く寅。


静岡県川根本町 井川ダムではなく 「塩郷(しおごう)ダム

「塩郷ダム」の詳しいいきさつは本編完全版をお読みください。
 

ダムの上で若い女性が泣いている。
寅はあの僧が言った「
女難」を気にするが、それでも声をかけてハンカチを渡してやる。
それは、男に騙され捨てられたばかりの瞳さんだった。


               

ずっと泣き続けている瞳さんをかまってやり千頭駅前の『お食事どころおざわ屋』という食堂で話を聞いてやるのだ。
ありったけの声と気持ちで、自分の悔しさを寅にぶつける瞳さん。
寅は優しいね。絶世の美女じゃなくても(^^;)優しいところがこの男のいいところ。


               

散々男の愚痴を聞いてもらった瞳は元気になって
千頭駅から井川鉄道バスで下泉方面へ向かう寅を見送る。


寅はいつものように

寅「あの山越えて、木曽路の方へでも言ってみるか」ってつぶやいたり、
寅「姓は車、名は寅次郎っていうんだ」って言って瞳を感動させるのである。
瞳さんは目を輝かせながら
瞳「かっこいい〜」(^^)
そして、バスに乗った寅をいつまでも手を振る瞳さん。
この映像は第13作「恋やつれ」で津和野でバスに乗った寅を手をふって
いつまでも見送る歌子ちゃんのアングルと同じだ。
実は、このパターンは「幸福の黄色いハンカチ」でも使われた。


そしてそのバスの中で寅はなんと博の父親である
諏訪ひょう一郎にばったり会う。
あり得ない確立が許されるのがこの映画。
いいではないですか(^^;)

一文無しの寅の独り言を後ろで聞いていたひょう一郎は、
ひょう一郎「君ね、今夜は私の宿で一緒に泊まらんかね
寅「え?、なんだいいいのかい、そんなこと言っておじさん随分親切だね、あんたどういう人?
ひょう一郎「君の親戚だよ諏訪一郎(ひょういちろう)さんだ!

                

寅「え?あー!博のお父っつあん!うまい人に会っちゃったねえ!
  よーし、今晩は温泉宿か、温かいお風呂に温まってと!さてそれからだ、フフフ


ひょう一郎、そんなやんちゃな寅を見てニコニコ。


木曽 紅葉館

                 

木曽節を芸者さんたちと唄いながら盛り上がり、挙句、外にみんなで遊びにいってしまう寅。
ひょう一郎「やれやれ参ったなあ…」と呆れて一人椅子にへたりこんでいる。


翌日木曽福島をタクシーが行く。 


妙覚寺 ― 定勝寺 ― と巡っていくが寅は寝てばかり。

ひょう一郎は何箇所か寺を巡って行くが、寅は昨日騒ぎすぎたこともあって車の中で寝てばかり。

                 

美しく雪をかぶった木曽御嶽山

ひょう一郎、山を撮ろうとしてカメラを向けるが、レンズキャップをはずし忘れるという小さなギャグを見せてくれる。
ひょう一郎のミニギャグ始めてみました(^^)


夜 大桑村 野尻 野尻商店街

木曽十一宿のひとつ 野尻宿

旅館 庭田屋



                


かばんの上に並んでいる二つの帽子(なんだか可愛い)

一向に芸者遊びに興味を示さないひょう一郎は寅にこういうことを言う

ひょう一郎「いくら美人でも死んじまえば、骸骨だからな
寅「そういう考え方がいけないんだよ。そんなふうに思ったら世の中面白くも可笑しくもないじゃないの〜

ひょう一郎「年を取るとね、面白いことなんかなくなるんだよ
寅「あー、そりゃ心がけがいけねえんだよ、こういう漢字ばっかり出ている本なんか
  出ているからね。いい影響を与えないんじゃないのこういう本っていうのは

ひょう一郎「これは面白い本なんだよ
寅「ほう
ひょう一郎「今昔物語と言ってね、…
寅「こんにゃくの作り方かなんか書いてあんの?おかしな本だね」と寝転がる。
ひょう一郎「いやあ、これはね、昔の日本人の暮らしを書いた本でね
寅「はい」と週刊誌を見ている。
ひょう一郎「たとえば、ある所に、君のように二枚目で、女にもてる男がいた。
寅「え、二枚目だなんて言われると困っちゃう、ハハハ
ひょう一郎「ところが、この世のものとも思えぬ美人がその男の前に現れた
寅「はあー、そういやね、こないだえらそうな坊さんに会って『女難の相』が
  あるって言われたんだ。他人事じゃねえな、そりゃ。そ、それで?

ひょう一郎「男はたちまち恋に陥ってだな、苦心惨たんな挙句、その美女をものにした
寅「結婚しちゃったんだろ、うまいことやりやがったなあ〜、それで?
ひょう一郎「可哀想にね、その美しい妻は一年も経たないうちに病を得て死んでしまったんだ。
寅「へー…、だけどそいつ二枚目だから、半年もしないうちにまた(小指立てて)
  いい女が出てきて、くっついた、くっついたろ

そりゃあんたや、半年に一回のサイクルで惚れてるのは ゞ(−−;)

ひょう一郎「いや、この男はね、君のような浮気者じゃないんだ座布団一枚(^^)
寅「……
ひょう一郎「三月経ち、半年経つが男はどうしても美しい妻の面影を忘れることができない。
      どうにもこうにも我慢ができなくなって、ある日妻の墓場へ行って、棺を掘り起こした。
      しかし、男が見たものは美しい妻の顔とは似ても似つかない腐り果てた肉の塊だった。

      男は、この世の無情を感じて頭を丸めて仏門に入り、一生仏に仕えて暮らしたということだ。

              

まあ、こんな話を読んでると、僕も人の一生についていろいろ考えさせられたりするんだけどね。

寅「……

               

じゃ、ま、風呂に入ってこよう.。。


寅、うつむいて真剣に何かを考えている。
寅、正座して『今昔物語』のページを開く。


翌早朝

書置きを残して寅はすでに去っていた。

寅次郎の声

お教えありがとうございました。寅次郎深く反省いたします。
なお、帰りの汽車賃と、コンニャク物語(り)を拝借いたします
大先生様  車寅次郎


御宿 庭田屋 と書かれた専用便箋

ひょう一郎「大人物は反省して去ったか…

お茶を飲みながら窓の外を眺める。

                




B【見目麗しき早苗さん登場と寅の帰郷】

柴又 題経寺 山門

御前様が源ちゃんを使って屋根の裏を磨かせている。
御前様「そこの下だ、下…
源ちゃん「へい

早苗さんが山門にやって来て
早苗「あのー、ちょっとお伺いしますけど…
御前様、はっとして「はい」
早苗「とらやさんってお店どこでしょうか?
御前様「とらやさんなら、この参道をまっすぐ行って左側だが…
早苗「あらそうですか、じゃあ私通り過ぎちゃったのかしら?
御前様「小さな店だからよく注意しないと分かりましぇん
この『分かりましぇん』のニュアンスが独特(^^;)
早苗「ありがとうございました

                  

源ちゃんいつの間にか下りて来て、あまりの美しさにボーっと
早苗さんについて行く。
御前様そうとは知らず、上を向いて
御前様「源!源!?どこいっちまったのかな…



とらや  店

早苗「あのー…、私墨田の職安から紹介されて来たんですけど
おばちゃん「え?あのー…あ、そうですか。ささ、どうぞどうぞ
みんなどうしてこんな美人がとらやに来たのか分からないで戸惑っている。
早苗「こんにちは、荒川と申します
おばちゃん「あのー…、ウチで働いてくださる方のご親戚か何かで…?」だよねェ(^^;)
早苗「いいえ、私です
おいちゃん「あのう…、ごらんの通りのちっぽけな団子屋なんですけど?」だよねェ(^^;)
早苗、少し微笑む。
おばちゃん「あの…赤坂にあるとらやさんって大きなお店があるんですけど、あそことは関係ないんですよ
早苗「知ってます
おばちゃん、小さく頷く。
早苗「これ、紹介状と履歴書です

                 

さくら「あのー…、仕事といったってお団子配達したり、お客さんにお茶運んだり、そんなことなんですよ
早苗「はい、それは職安から伺ってますけど
おばちゃん「あの、ちょっと店の中ご覧になったら?」もう店の中だよ。
おいちゃん「そーだ、ずーっと中のほうを…
さくら笑いながら
さくら「ずーっともなにもこれだけじゃないの、フフフ

ということで、明日から働くことになった早苗さんでした。

早苗さんが帰ったあとで
おいちゃん「いったい、どういう人なんかねありゃ…
さくら「さあ…いろんな事情がある人なんじゃない?
みんな「うん…」

博やって来て「ものすごく色っぽい人だって社長が興奮してたよ」見に来たんだね博(^^;)
おばちゃん「色っぽいだなんて失礼ね…
おいちゃん「いいや、色っぽいと、キッパリ(^^;)
さくら「おいちゃん

                 

おばちゃん「あんたまで…
あの当時の大原麗子さんは無敵ですからねえ〜、そりゃ無理ないわ(^^)

博「オレも店手伝うか…
さくら「バカねえ…とバシッ!
博「たまには兄さんのお株とってさ、ハハハ!

博、店先を見て突然真っ青

寅が店先で真面目な顔で眼光鋭くみんなを睨んでいる。

さくら「お兄ちゃん…お帰んなさい

信州の凍り豆腐の土産

寅「博、そこへ座れ
博、神妙に座る。
寅「オレが旅先で誰に会ったか知ってるか?
博「旅先でですか?さあ…色っぽい女の人にでも会いましたか?瞳さんには会ったけどね(^^;)
寅「バカモン!!オレが会ったのはな、博、おまえの親父だ
博「えー!?
みんな驚く

                 

寅は、博のお父さんが勉強して立派なのに対して博は昼間から仕事ほっぽらかして
大口あいてゲタゲタゲタゲタ笑っているとつい先日まで芸者遊びをしていた自分のことは棚に上げて説教をたれる。

寅「少しは反省しろ
博「すいませんでした
さくら「ねえ、お父さんとどんな話したの?
寅「そのことについては今晩みんなにじっくり話を聞かせる

社長早苗さんを見たさにデレデレでやって来る。
寅、社長を睨んで、みんなを見て、
寅「この手の人物とは付き合わないほうがいいんじゃないか?人間が堕落する」と二階へ上がっていく。
みんな、あの美人と寅が顔をあわせるとどうなるかを考えて憂鬱になってしまうのだった。

社長「これから大変だぞ…気の毒になあ…


夜   茶の間 

寅は例のごとく、受け売りで、あの『今昔物語』の話を聞かせようとする。

寅「今は昔、あるところに男がいた…
社長「ある所ってどこだい?
ちゃちを入れる社長。
機嫌が悪くなる寅。
おいちゃん「まあまあ、そう怒るなよ、面白そうな話じゃないか、
       昔、あるところに男がいた。ん、それで?恋愛でもしたか

寅「その通り。これがなんといいー女。男は惚れたねえー…
社長「でも失恋したんだろ?フフ座布団一枚(^^)
博「シッ!
寅「おい、どっか片付けろよ、この目障りの太ったの

さくら「お兄ちゃん、黙って聞くから先話して。恋をして、それからどうしたの?

寅「二人は結婚した。美しい妻。男は幸せさ、仕事にも励みが出る。
汗をかいて家へ帰る。『お帰りなさいませ。今日はお疲れになったことでございましょう
お風呂も沸いてございます。越後より美味しいお酒も届きました。
一つつけておきましょう。月の明かりの下で、つましい食事。
ほら、昔はこういう電気なんかなかったから、ね。
『どうだ、そなたも一口いかがじゃ』『いいえ、わたくしお酒など』『うん』
この幸せな二人の暮らしは、一年とは続かなかった。その女は病を得て死んだ。子宮外妊娠。
病名まで考えるか…(^^;)
おばちゃん「あら、気の毒に…昔話昔話…ゞ(^^;)
寅「男は泣いたな…。お通夜、葬式、初七日と、日は過ぎて行くんだが、男の涙は止まらない。
おいちゃん頷く。
寅「会いたい、もう一度だけ妻の顔が見たい。たまりかねて、月夜の晩に男は出かけたな…
みんな「…」
寅「…墓場へ
犬の遠吠えウオ〜ン
寅「サック、サック、サック…。薄暗ァ〜い木立の中に不気味なふくろうの声…
ホオ〜…、ホォ〜…、ホォ…。やがて棺桶が出てくる。はああ、この中に愛する美しい妻が…。
男の手が棺桶の蓋にかかる。ギギ、ギギ、ギギギギギギィィ〜ィ…。


                  

寅は驚愕の表情で中を見、
寅「うわあああああ!!

                  

みんなも一緒にびっくりし、
一同「うわあああ!
寅「なんと棺桶の中の妻の顔は腐れただれて蛆虫がうじゃうじゃ…
さくら「ヤメテェ〜!
おばちゃん「気持ち悪い〜
おいちゃん「なんだおどかしたのか
さくらたち「もうやだなもう

寅「違う!違うよ、これからが大事なんだ。いいかい、男はね、その日から
  二度とその美しい妻の顔を思い出せなくなってしまった。
  どうしても思い出そうとすると、醜く腐り果てて蛆虫のクチャクチャな顔が浮かんでくる。
  これは辛い…。その男の気持ちを考えるとオレも知らない間に涙が出てくる


さくら「それでどうしたの?その人

寅「出家したよ…。家を捨て、身を墨染めの衣にまとい。生涯修行の旅を続けた

                  

博「なかなか味のある話ですね…
寅「うん、人生について考えさせられたろ
博「はい
寅「よし、それでは今日はこのへんでお開きということにしよう

寅手を合わせる。
とりあえずおいちゃんと博も手を合わせる。
(^^;)

心を入れ替えた寅は明朝9時に修行の旅に出るそうである。

博に『コンニャク物語』をあげ、読むように勧める寅だった。



翌朝 とらや 店

昨日の早苗さんがやって来て、掃除をし始める。
おいちゃんたちなんとか寅と会わさないようにするが…。

そして旅出る直前の寅とばったり出会ってしまう。

おいちゃんおばちゃんはどうしていいか分からなくておろおろ。

早苗のテーマが流れる。

店まで出てきて早苗を見て、固まっている寅わかるわかる(^^;)

早苗、寅を見て小さく会釈。


                

おいちゃんおばちゃんはなんとか事が大きくなる前に出て行ってもらおうと…、
おばちゃん「この人ね、私たちの甥で、ゆうべ一晩泊まって、もう旅にでるの
おいちゃん「残念だなあ…、もっとゆっくりしていけばいいのにわざとらしい(^^;)

寅、ぎこちなく店先まで出て行く。かばんを忘れている。
おばちゃん、すばやくかばんを持たせて

おばちゃん「体に気をつけるんだよ

題経寺の曲がり角で、超後ろ髪を引かれ続けている寅。ついに体が止まってしまい。とらやを見ている。
なんとかとらやに戻りたいが適当な理由が見つからない。
六波羅貴子さんの経営するロークが見える。

ちょうどそこへさくらがやって来て、これ幸いと仮病の腹痛を起し、
寅「イタ…店帰んなきゃダメ、店帰んなきゃダメなんだと、店に戻ることをいやに強調(^^;)


とらや 店

なんと板戸で仏間までご近所さんに運ばれてくる。
第25作「ハイビスカスの花」もこのパターンを踏襲。
ご近所さんで谷よしのさん登場(ハイビスカスの時もも全く同じ位置で登場)

                    

仏間に運ばれてみんなでえらい騒ぎになっている。
それを見て咄嗟に救急車を呼ぶ早苗さん。正しい(^^;)
早苗「消防署ですか、急病人です!救急車お願いいたします!

おいちゃん「さくら草履草履!と頭に草履を乗せるしぐさをしながら必死でさくらを呼ぶ。
さくら「草履なんか何するの!?ねえ〜(^^;)
おいちゃん「草履要るんだよ!確信(^^;)
★昔の言い伝えなんだね。草履を頭に載せてお経を唱えると、癲癇や腹痛が治るらしい。

発作的な病気は「天に感じる病だからいつも地に接している(感じてる)草履を頭に乗せることで中和(陰陽バランスを取る)ことで
治そうとする。実際このとき草履を乗せる頭の頂上部が「百会」のツボで脳性疾患や精神不安などの治療によく用いられる。


救急車がサイレン鳴らしてやって来て、寅を乗せていく。『東京消防庁』
寅はこれで救急車2回目。第45作でも乗るから合計3回乗ることになる。
ここでも谷よしのさん登場。ひさしぶりのロケ参加。このあと結婚式のため式場に入るご近所さん役でもロケ参加。

                    

で、寅、本当は腹痛でもなんでもないので、きょろきょろ、おろおろしながら上半身を起している。

とらや 店

何時間かしてさくらと一緒にふてくされながら帰ってくる寅だった。

さくら曰く「おなかの痛いのはね、ガスだまりだって(^^;)
第2作では本物の「胃痙攣」で緊急入院していたけどね。

寅は、怒って救急車を呼んだ人物探しをし始める。
みんな知らないと言う。

寅「だったらどうして救急車が来たんだよ!え!誰かが電話をしたんだろ!今日は、責任取ってもらうからな

                    

早苗「あのう…実は…
寅、ふり向きながら
寅「ダメ!!!
寅、早苗さんに気づいて、すくっと立ち
寅「は…!…いたんですか
早苗「電話したのは私なんです。すいませんご迷惑おかけしてしまって」と頭を下げる。
寅「いいえー、そんなこと。でも、よく気がついてくれましたねー、なあっ出たァ〜((((^^;)/
早苗「でも私が電話しなけりゃ、こんな大騒ぎには…
さくら「いいんですよ、そんなこと気にしないで、ねえ、お兄ちゃん
寅「うん!オレ前からね一辺乗ってみたいと思ったの救急車第2作で乗ってるって…ヾ(^^;)
おいちゃん、だめだこりゃ顔。

                     

寅「うん、気持ちいいなあ!だってだって信号止まらないでな、
  どんどん突っ走っちゃって、葛飾病院まで
5分だぞ、博
博「ああ、速いですねえ…シラ〜…
寅「速かったよな

早苗「それじゃ私
寅「あ、もう帰りますか?

みんなで早苗さんを見送った後
当然ながら寅すっかり機嫌が直っている。

みんな完全にシラケきってさっと寅に背中を見せて散らばっていく。

寅、バツが悪そうに
寅「さくら、医者は一応なんて言ってたの?栄養失調、ふ〜ん、なんか栄養について考えるか



C【結婚が破局を迎えた早苗さんと喜んでしまう寅】

別居中なので、親友の家にしばらく厄介になっている早苗さんだった。
みんな人がいいが、早苗はいつまでも厄介になれないと思ってもいる。

                     


翌日

おいちゃんとおばちゃんは知り合いの結婚式で出かけている。
谷よしのさん、出席者役でここでも登場。

とらや 店

早苗さんが一人で客にてんてこ舞いになりながらも一生懸命一人で働いている。


寅二階から下りて来て、
寅「あのー…おばちゃんたちはどうしたのかな?
早苗「結婚式のお呼ばれだとかおっしゃってご夫婦で
寅「え?じゃあんたに店番頼んで、こりゃどうもすいませんでしたペコ
早苗「いいえ、店番は私の仕事ですから言える(^^;)
寅「んー、ま、そりゃそうだけどね

寅は、早苗さんがお弁当を食べるというので、漬物を探してやる。
とは、言うものの、どこにあるのかわからない(^^;)

早苗さん「フフフ」と笑う。
寅「え?なにが可笑しい?
早苗「寅さんって怖い人って思ったけど本当は優しいのね、フフフ
寅、緊張して
寅「そら誤解だよ。こ、怖いだなんてさ…。フフ、
  荒川さんだってあれだよ、最初見た時にゃ気取った人だなって思ったよ、オレャ
と、テレながら人参をぺちぺちさせて遊ぶ。

早苗「誤解だった?
寅「うん、あの荒川って名前がごつい感じしたんだけどねえ。全然…ハハハ
早苗「私も荒川って苗字嫌いなの。前は水野だったのよ
寅「水野、あ、水野早苗か…、あ、そりゃいいねェ。そっちのほうがいいよ、水野早苗。
  どうして、また名前変えちゃったの?
おいおいヾ(^^;)

                     

早苗「フフ、結婚したからよそらそうだ(^^;)

                     

寅「…!!…結婚してたのか…
と急に気持ちがしぼんでいく寅だった。
寅「そりゃそうだよなあ…、へー…、で、旦那さん元気?目が暗く沈んでいる。

                     

早苗「うん…今別居してるの…

寅「……
どうしても微妙〜ォに喜んでしまう寅。
寅「そう…、そりゃいけないな。はやいとこ話し合って仲直りしなきゃ無理やり深刻顔を作る寅。
早苗「そう思って努力したんだけどね。でも…ダメね

メインテーマが軽快に流れる。

寅、どうしても喜びを隠せなくてニコニコ顔で
寅「だめかもねェ。
寅「
いらっしゃい!

                     

と、店にるんるん気分で飛び出していく寅
寅「お団子美味しいよ!

さくらが店にやってきたのだ。
さくら「どうしたの?
寅「あ、さくらか
寅、心が高揚して、参道に出て、
寅「今日は天気が良くていいねえ!はいらっしゃい!お団子いかがですか!
外人客「アリガト」
寅「どういたしまして!また来てね!元気でね!
とスキップで足を前後に運んで遊ぶ。渥美さんのこのギャグは軽快で面白いです。
さくら、よくわからなくて苦笑い。
しかし、寅も、人の結婚生活が破綻しかかっているのに、そんなに露骨に喜んじゃダメだよ ヾ(−−;)

                    



さくらのアパート

                    

さくら洋裁の仕事している。
博「離婚か…。妙なものが流行るんだな…
さくら「はっきりした原因があるわけじゃないんだって。
    むしろ旦那さんはいい人だけど、好きになれなかったらしいの
博「結婚するから悪いんだよ。好きでもない人と
博は、相談に乗ってやれないかと聞くが、さくらは立ち入れないと躊躇する。
博は、父親に手紙を書いている。
机には 雑誌『世界』と今昔物語を置いてある。




翌朝

早苗さんは、とらやに遅れることを連絡する。

喫茶店で夫(荒川英樹)を待っている。
離婚についての最後の手続きをする約束になっていたのだ。

しかし約束の喫茶店にやって来たのは幼馴染でもある従兄妹の肇だった。
早苗さんの夫はどうしても会いにいけなかったらしい。

肇から渡された離婚届の紙に印鑑を押す早苗さん。
墨田区区役所に離婚届を出す早苗。付き合う肇。


                     



とらや 店

寅は、なかなか来ない早苗をいらいらそわそわしてずっと待っている。
遂には、こんな汚い団子屋辞めちゃったんだって言い出す始末。

そんなところへ早苗さんが走ってやってくる。

早苗「すいません、遅くなっちゃって、こんにちは

寅、店に飛び出し

寅「よくこんな日に来たねえ、休めばよかったんだよォ〜うそつけ(−−;)

早苗さん「あのね、さくらさん…、今日から私水野早苗になったの。もう荒川じゃないの
寅「へェ〜、どうして?
早苗「今日、正式に別れたの。長い間ごたごたしてたけどこれですっかりかたがついたわ
寅、よく分からないまま
寅「あ、そうそりゃよかったよー」ニコニコ
寅は事情が飲み込めていないようだ。
さくら、寅を睨む。
早苗「うん、よかったわ。私…これで…目にみるみる涙が溢れていく早苗さん。
寅、彼女の様子を見つめている。
早苗「寅さん…、私泣きそう…

                    

寅「
早苗「二階行ってもいい?
寅「…うん
早苗「ごめんなさい」と、二階へ上がっていく。
寅、状況把握がまだ出来なくて
寅「え?な、なんだい、どうしたの?とみんなに聞く。
分かれよないいかげん(__;)
みんなに批判される寅。

さくら、熱いお茶を持って二階へ上がっていく。

早苗のテーマが静かに流れる。

さくら「はい、熱いお茶
早苗「ありがとう
さくら「あなた、休めばよかったのに…
早苗「うん、そう思ったんだけれど、他に行くところもなかったの…
さくら「…そう
早苗さんの悲しいこの言葉は胸にしみました。

                    

離婚をすればどんなにスッキリするかと思っていた早苗さんだったが、
現実はその逆で、大きな穴が心に開いてしまったようだ。
人生の進むべき方角を見失ってしまった彼女は、財布を落とし、
交番でお金を借りて、とらやにたどり着くのがやっとだったのだ。


泣き続ける早苗さんの横に座りどのような助言もしてあげれないさくらは、ただ、一緒に
いることだけしかできなかった。


                   

一方、店では寅がおいちゃんとおばちゃんに口止め。

寅「いいか離婚と言う言葉これはいけないよ。あと離れる切れる別れる
  この手の言葉一切使わない

お馴染み『禁句ギャグ』

「続男はつらいよ」では「おかあさん」の類はダメ!
「夢枕」では「坊や」「倅(せがれ)」「息子」はダメ!
「恋やつれ」では「夫」「旦那」「ダーリン」はダメ!
「かもめ歌」では「すべる、落ちる」はダメ!


おばちゃんもとりあえず頷く。
早苗さんが下りてくる。
寅「あ!きた離れろ、切れろ!おいおい ゞ(^^;)
早苗さんが店に出て来る。
寅「ほんとだねえ、おばちゃんの言うとおりいい天気になっちゃった
おばちゃん「うん
早苗さん、ちょっと照れている。
早苗「どうもすみませんでした。ご心配かけて
早苗さん、早速お客さんの食器の後片付けをし始める。

さくら、下りて来て
さくら「雨上がったわね、雲が切れたみたいおっと(^^)
おいちゃんもびっくり(^^;)

寅「!!切れない!切れない

社長、庭からやって来て
社長「♪にい〜げたあ〜、にょ〜ぼにゃかァ!ハハハ!どうしたい別居中の美人は?

ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ出たアアアア〜!!


社長、早苗さんを見て
社長「!!!あ、いた、ごめんなさい!」とすっ飛んで帰る。
台所の門でぶつけて
社長「あいてえええ!!いたいたたた!

                   

寅「ああいうがさつな男はこの家に入れないほうがいいんじゃねえか

みん名で気を使っているところへあの、井川ダムで出会った瞳さんがやって来る。

瞳「寅さーん!!
寅「え?
瞳「いたのー!?

                   

寅「あー!あんたあの時の!
瞳「よかったァ〜!あのね、ハンカチどうもありがとうえらいね瞳さん(^^)
寅「おうおう
瞳「それからさ、寅さん、聞いて聞いて、例の男さ、私を捨ててさ、よその女と一緒になっちゃってさ
寅、まわりをチラチラ気にする。
瞳「新婚旅行から帰ってきてなんと一週間で離婚したのよ。別れてよかったねェあんな男と。
  私んとこ来てね、『オレともう一度よりを戻してくれ』って『バーカ言うな、おめえのツラなんか
  二度と見たくねえや!ざまあみろってんだ!ねえ

寅、たじたじ、おろおろ
瞳、周りに気づいて、急にしおらしく

瞳「あら、はじめまして」と挨拶。
早苗さんに気づいて

瞳「あら!こちら奥さん?」と寅に聞く。
とら「え?

瞳「え!?
寅「いや、ちょ、違う、この人は違う
瞳構わず、早苗に
瞳「まあ、失礼しました
瞳「寅さん、独身だなんて嘘ついて
寅「あ、この先にね、オレの知ってるところあるから。静かだからちょっと
寅、瞳さんを無理やり連れて行く。

                  

瞳「どうしてよ?
寅「いいから、いいいー
瞳「あ!分かった。私がいるとまずいんでしょ!いいじゃない別に、そんなへんな関係じゃないんだから
寅、連れて行きながら
寅「お前声が大きいんだよォ〜
瞳「どーして、変に誤解されるわよォ
さくら「あー、びっくりした

早苗、微笑みながら
早苗「寅さんって、もてるのね、フフフ



D【悲しみの中の救い。そして早苗さんのあの言葉】

夕方遅く 茶の間

早苗さんを囲んでデザートを食べている。
寅は明るい話をさせようとするが、みんな今いちいい話がない。
寅「だからさ、宝くじにドーンと当たったとか、ね。そらから一万円札がヒラヒラヒラヒラ振ってきたとかさ、
  裏庭をちょっと掘ったら小判がざくざく出てきたとか。
みんな棚からぼた餅系の金の話(^^;

                  

おばちゃん、ボケをかます。
おばちゃん「裏庭じゃないけどね、こないだ下水工事でそこんとこ掘り返して
間違えて水道管に穴開けてねえ、水がザーっと出て、そのへんがぐっちゃぐちゃ

さくら、違う話題で中和
さくら「ねえこういう話はどう?麒麟堂のお嫁さんに双子が生まれたっていうの
寅「あ、そら明るいね、かわいいだろうな
社長「それがね、大変らしいよ、なにしろね、かかりが倍だろ、二人の赤ん坊相手にね、
  オシメ取り替えたり、ミルクやったり、もう殺されそうだってね、ばあさんこぼしてたよ。
  近頃の若い嫁さんって文句言うとすぐ
離婚だとかなんとか…!暗い話になっちゃった。ごめんなさい」(TT)

寅「無音で『バカ』

博「そうだ、こないだ満男が国語のテストで100点もらいましてね
おいちゃん「そうそう
寅「これは明るい
博、満男の頭なでなで。
満男、ガッツポーズで威張る。
寅「満男偉いぞ!伯父さんに似たんだ。フフ
博、理科のテスト用紙を見て
博「…!なんだ理科30点じゃないか!」と頭を小突く。
さくら「30点?
おいちゃん「伯父さんに似たか座布団2枚(^^)
早苗さんクスクス…。
満男「みじめェ〜可愛い(^^)
寅「結局ね、何の話してもこの家ゃ、最後に暗くなるんだよ

早苗「はい!明るい話題」と手を挙げる。

                

寅「はい!出ました。なんでしょう?
早苗「フフフ
寅「フフフ
早苗「あのね
寅「はい!

早苗「私の人生で、寅さんに会ったていうこと


                

早苗のテーマが静かに流れる。

寅「

                

みんな「

寅「いやあ…、んん…、」新聞を読むふりをしながら

寅「そんなことを言われたの初めてだったなあ…。
 僕はどっちかって言うと暗い人間だと思っていたし…、
 それにこの年になってみると…、面白いことなんかなんいもないしね。
 まあ、楽しみといえば、寝ることぐらいだから…。
 明るいなんて言われると、なんか、とまど…ちまうなあ


               

早苗、下を向いてクスクス。

遂に早苗さん「プーっ」と吹いてしまう。

みんな大笑い。
     
社長「ほんとに楽しいや
早苗「暗い人間だって、フフフ
さくら「ねえ〜!フフフ
寅「陰気なんですね
みんな「ハハハ

               

早苗さんは、時間が来たので、同居の友人が心配すると帰ることに。

寅「気をつけてね、荒川さん
早苗「水野よ
寅「あ、そうか、今日から水野さんだったね
早苗「寅さん
寅「はい
早苗「私、こんな楽しく晩御飯食べたの何年ぶりかしら
寅「あ、そうか、よかったね。それだったらこれから毎晩来て食べればいいんだよ。淋しい時泊まっていきなよ
いつもいつもよく言うよね、自分は世話しないくせに(^^;)

早苗、頷いて

早苗「じゃ、また明日
寅「うん
早苗「さよなら」と言って帰っていく。
寅「待ってるからね

早苗さん、パッと止まって。

寅に近づき、寅を見つめて


あのー…、今日はほんとにありがとう。

               


早苗「私…寅さん好きよ!

と、走ってく。


               


さくらとおばちゃん、早苗のその言葉に驚いている。


               

寅、動かない

早苗のテーマが流れる。

寅、新聞を読むふりをしながら、カクカク動いていく。

みんな気を使って知らないふり。

新聞を読み、ものに何度もぶつかりながらカクカク二階に上がっていく寅だった。

おばちゃん「なんであの人あんなこと言っちゃったんだろ

さくら「よっぽど嬉しかったのね、今夜の食事

確かにいくら嬉しかったとはいえ、早苗さんの言葉はあまりにも唐突。
十代の女の子なら「好き」は、ただ好きという意味なんだけど、30歳の女性の場合は
ちょっと違った意味を持つ時がある。責任取れるのかな?


               



E【訪ねて来た博の父親の気持ち】


ひょう一郎が江戸川土手を歩いてくる。
金町駅からきたんだね。


とらや  店

               

ひょう一郎がとらや訪ねて来たが、誰もいない。
そのうちに客が来て、なんとひょう一郎が接客をするはめに(^^;)
若いカップルも客にお茶を入れようとしている。

このあたりもちょっとしたミニギャグ。志村喬さんも面白い人だ(^^)

さくらが来て驚き、恐縮する。


一方、今日は早苗さんの引越しの日でもある。

自分でアパートで住むことになったのだ。



いずみ荘


寅も手伝いに来た。
そこにはすでに例の従兄妹の肇が生徒を連れて手伝いに来ていたり、
トランクの中に下着がたくさん入って、早苗があわてて隠したり、てんやわんや。


               

さくらのアパート

ひょう一郎が来ている。

ひょう一郎「この部屋も狭くなったねえ…

博「仕方ありませんよ、月給が安いですから
博「明日の汽車で、まっすぐ岡山に帰ります?じゃ、新幹線の切符僕が買います偉いね博(−−)
ひょう一郎「いや、いい。歳をとるとな、速い乗り物に乗ってもしかたないんだ。別に用があるわけじゃないし
味わい深い言葉だねえ…。この人の言葉はどれも生きている(−−)

寅から電話があり

ひょう一郎に会いに来るそうだ。
酒と、それからついでに芸者を用意しておけとさくらに言っていた。
呆れているさくら(^^)
さくら、酒を買いに行く。

ひょう一郎「芸者か…フフ
博「旅先で、兄さんと何をしていたんですか?
ひょう一郎「いやあ、別にィ、フフフと、木曽路の夜のバカ騒ぎを思い出し笑い。

ひょう一郎は、何をしに来たんだろうか。たしか、第8作の時も博のアパートに来たが、
彼は自分の子供たちの中で、博のことが一番可愛いのかもしれない。博の不器用で実直な
ところを好ましく思っているのだろう。本当は一緒に住みたいのかもしれない…。


               



翌朝 柴又駅 ホーム


ひょう一郎「さくらさん
さくら「はい
ひょう一郎「もし、博が、家を建てるようなことになったら、あなたから私に言って下さい。
      そのつもりで、安曇野に少々土地が買ってあります


さくら「…はあ」と恐縮する。

                

そういえば第8作「寅次郎恋歌」のりんどうの花の話は彼が安曇野に旅をした時のものだったな…。
気に入ってるんだね安曇野が。ひょう一郎は、博がさくらのことや老夫婦、仕事、などいろんな事情で
この柴又を離れられないことを知っているはず。信州安曇野はあまりにも遠い土地。住めるはずもない。
ひょう一郎はどういう意味のことを言いたいのだろうか?それともその安曇野の土地を売って、資金にしなさい
と言う意味なのか?


              


第1作のテーマが流れる。

ひょう一郎「寅次郎君の言うように、あれは私に似て、頑固なだけで、面白くも可笑しくもない人間ですが、
どうか、よろしく
」と帽子を取って頭を下げる。

さくら「あの、これ兄から言われてきたんですけど、旅先でお父様からお借りした…あの
ひょう一郎「いやいや、それはいい。いやほんとにいいの
さくら「でも…あの」と、もう一度封筒を差し出す。
ひょう一郎「いやいいんだ、いいんだ、いいんだ」と手を引っ込めないさくらの手から
封筒を取って、さくらのエプロンのポケットに入れてやるひょう一郎。

このシーンに私は心を打たれた。ただ断るだけでなく、さくらのポケットにスッと封筒を入れるその姿に、
温かな人が人をいたわる姿が感じられた。さすが博のお父さんだ。一つ一つの行動になんともいえない味わいを感じる。
こういう時の断り方というのは意外に難しい。長い人生を歩んできた人にしか出来ない達人の姿だった。それにしても
志村喬さんが出演するといつも映画がビシッと引き締まる。脚本演出も大事だが役者も映画の要なんだねやっぱり。


観念し、丁寧に頭を下げ感謝するさくら。

電車がホームに入ってくる。

ひょう一郎がさくらのポケットに封筒を入れるシーンはカメラがホームの端から
彼らを小さく撮っている。この場面をアップで撮らず、引いて撮る高羽さんの自信に溢れた感覚に脱帽。


                 


浅草寺で易本のバイをする寅。

色即是空 空即是色




F【肇の気持ちに打たれ、躊躇する早苗さんを後押しする寅】


とらや 店  夕方

例の早苗さんの従兄妹の肇が店で彼女を待っている。


そこへまず寅が帰ってくる。

寅「確か従兄妹だとか言ったね
肇「ええ
寅「じゃあ、こんな小さいころから知ってる?
肇「ええ。おふくろたちが兄弟で、小学校の時は家が近くだったもんですからね
寅「そうか、へえー、小さい頃あの人は可愛かっただろうな
肇「ええとニコーッっと笑う。
寅「…!
肇「…!
寅「!!プッ、おい、お前ガキの頃惚れてたろ
肇「
寅「図星だろう!え!?、フフ

                 

さくら、お茶を運んで来て
さくら「お兄ちゃん失礼よ、そんな
肇、スクッと立って
肇「僕、帰ります
さくら「あら、せっかく見えたのに
肇「いえ、用件だけ伝えてもらえれば。それもたいしたことじゃないんです
寅「ああいいよ。聞いてやるよ
肇、預金通帳と印鑑を入れた封筒を渡し、
肇「これ。早苗ちゃんに渡してください
寅、受け取って
寅「

肇「何かあった時に使ってけれって…。そういえば分かります
寅「
肇「それから、実は僕、故郷(くに)に就職口が見つかりましてね、故郷ってのは小樽ですが。そっちへ転勤することに
なりました。しばらく会えないかもしれないけれど、元気でいるようにって、伝えてください

さくら、小さく頷く。
肇「じゃあ、失礼します」と店先へ出ようとする。
さくら「あ、あの、もう少し、お待ちになってみ…

肇、立ち止まり振り返り

肇「あのー…、
寅「なんだい

肇「……どうか車さん、
 早苗ちゃんを大事にしてやってくださいね。お願いします
」頭を下げる。

                  

寅、立って

寅「あんた……、惚れてるんだ今でも…


                  

肇、はっとして、立ち止まり、振り向き、

そして去っていく。



                  

参道から早苗さんの声
早苗「肇兄さん!」と、駆け寄ってくる。
振り向く肇
早苗「どうしたの?
さくら「さっきからあなたのこと待ってらしたのよ
早苗「あ、そうですか
はじめを見て
早苗「なんか用だったの?
肇「車さんに話といたから。じゃぁ」と去っていく。

この男は凄いね。自分がこれだけ好きなのに、
未練がましく話をしないできっぱり立ち去るんだね。これはなかなかできませんよ。

早苗「ちょっと、


早苗、店に入って来て
早苗「フフ、愛想のない人ね、昔っからああいう調子なのよ

寅、まだ呆然としている。

さくら、寅の体を自分に向かせて
さくら「お兄ちゃん、ちゃんと話さなくちゃ
寅、小さく頷く。

                  



寅、封筒を差し出しながら

寅「従兄妹が…小樽…行っちゃうってよ
早苗「え!?小樽へ?」と、参道を見る。
寅「当分会えねえけれども、元気で暮らせって…

封筒を、ぐっと差出し、
寅「これ置いてったよ
早苗封筒を開ける。

さくら、見ないようにしている。
印鑑が落ちる。
さくら拾ってあげる。

郵便貯金通帳  水野早苗
53年12月9日 1、000、000(円)


早苗「あ……」と声にならない声でつぶやく。

さくら「なにかあった時に使ってくださいって

早苗さん、通用を見ながら

早苗「あの人…こんなことして…

寅を見る早苗さん。


寅「わかるだろ、惚れてんだよ。あんたのことずーっと前から好きだったんだよ。
  あいつは不器用だから口ではうまいこと言えねえんだよ。十年も二十年も…。
  早く行ってやんなよ


早苗「……

さくら「まだ駅まで着かないと思うわ、ね

                  

早苗さん、頷いて、おいちゃんに
早苗「私、帰ってもいいですか…?
おいちゃん「どうぞどうぞ

早苗、急いで用意をして店を出ようとする早苗。
下を向いている寅。

早苗「じゃあ、さようなら

おばちゃん「ごくろうさん


早苗のテーマが流れる。

早苗さん、店先で立ち止まって…振り返り、寅を見て

                  


早苗「寅さん…、私ね…、分かってるのよ、あの人の気持ち」と、下を向く。

寅「だったら本人にそう言ってやんなよ、どんなに喜ぶか


早苗「そんなこと言ったって…、私ね…と寅を見つめる。


                  

寅「」と頷いて


寅「明日聞くよ、

 早く行かねえと間に合わないぞ、な
と強い目で言う。


                  


早苗「そう…じゃあまた明日ねと寅に微笑む早苗さん。


                  


駅のほうへ駆けて行く早苗さん。

早苗さんの、背中を見ている寅。



社長裏からやって来て、
社長「寅さん帰ったのかい?色っぽい店員さんは

寅、スッと、かばんを持って、店を出ようとする。

さくら「ね、どこ行くの?
寅「旅に出るよ
さくら、驚いて
さくら「どうして?
寅「
さくら「また明日って今早苗さんに言ったばっかりじゃない
寅「な、さくら、オレがこの家にいたんじゃあの人は困るんじゃねえのか?
さくら「そんなこと言ったって、あした、あの人がウチに来たらなんて説明するの?と、シリアスな顔で言う。
寅「ん……、急に気が変わってプイっと旅に出ました。そう言やいいのよ。
  あの男はそんな風に身勝手で、人の気持ちなんかさっぱり分からない不作法な男です

  どうぞ、お忘れくださいと、そう言やいいよ。な

                  

メインテーマが静かに流れる。

さくら「でも、なにもこんな時間に出て行かなくたって…

寅、社長に向かって「社長」
社長「なんだい…
寅「おまえとは一晩ゆっくり飲みてえと思ったけどまた今度だい、な
社長「うん
寅「おいちゃんおばちゃん、達者で暮らすんだぞ
おばちゃん「寅ちゃん、せっかく晩御飯の支度したのに
おいちゃん「そうだよ、正月はまだ先だろ、もう少しいろよ
寅「そうしてぇのは山々だが、そこが渡世人のつれえところよ。

寅、吹きすさぶ初冬の冷気に襟を立て、身をかがめ、
寅「あー…あ、もう師走だなあー…と題経寺の方へ行く。
早苗さんたちと逆のほうへ行くんだね。金町まで土手を歩くんだろうなあ。

さくら、何も言えないで、悲しみの中で小さくなっていく寅の背中を見ている。

向こうでおばちゃんが泣いている。

                  


早苗さんは「私ね…」の後に何を言おうとしたのであろうか…。寅への自分の気持ちなのか、それとも…。
もう今となっては、それは早苗さんの心の奥底に仕舞い込んでしまって出すことはないのだろう。

それにしても寅の「明日聞くよ」は渋かった。あの静かな口調の中に早苗さんに有無を言わさぬ気迫さえ感じた。




G【二つの年賀状と瞳さんとの再会】


正月


景色の中の 小樽  雪景色


早苗の年賀状

早苗の声「明けましておめでとうございます。
      何年ぶりかで小樽で正月を迎えています。
      やはり、故郷はいいものです。帰ってきてよかったと思います。
      今私が思うことは、もう一度寅さんとお話がしたかったということです。
      どうか寅さんに私の気持ちを伝えてください。
      遠い小樽より皆様の幸せを祈っております。

                                     水野早苗


                  



とらや 茶の間

さくらとおばちゃんが絵葉書を見ている。
さくら「よさそうな町ねえ、小樽って…

社長、カルタ遊びを手伝っている。
社長「ろうそくの灯りが灯るクリスマス
子供たち「はい

おばちゃん「どうなんだろう、水野さんあの男の人と一緒になんのかしら?
おいちゃん「そうなるんじゃないのかいずれ
あんないい店員さんはもうみつからないだろうとみんなで話している。


社長「とらやの団子は鼻くそ団子おいおいおいおいヾ(^ーー;)
子供たち一生懸命捜す。おいおいないってばヾ(^^;)
子供たち「そんなのないよォ〜そうそうないない騙されるな ヾ(^^;)

                  


寅からの年賀状

寅の声「謹賀新年
     昨年中は誠に恥ずかしき事のかずかず、
     心より反省しております。
   
     今年が早苗様にとりまして幸せな年でありますように、
     遠い旅の空の下で心より祈っております。
     一月元旦 寅次郎拝


                  




静岡  大井川鉄道 塩郷(しおごう)駅

煙をもうもうと出してやって来た機関車に寅が乗り込む。
蓬莱橋での一期一会。あの旅の僧とふたたび出会う寅。
お互い手を合わせお辞儀。


                 

椅子に座る寅。
目の前の座席にはなんと、あの瞳が新しい彼氏と座っているではないか。


寅「ヨォ!!
瞳「寅さん!!
寅「うん!
瞳「びっくりした。わあ、どうしよう」と、照れまくる

                 

川崎の工場で働いている瞳ちゃんがどうしてまたもや、大井川鉄道に…?

寅「なんだい、そんな『おめかし』してよ
瞳「だって…新婚旅行だもん」おいおい早すぎるぞ、あれから3ヶ月も経ってないぞたぶん。
寅「え?
新郎、寅にお辞儀。
瞳「私たちね、昔からの知り合いでね、兄妹みたいにしてたの。
  ま、手近で手打ったってわけ、ね、フフフ
」と二人とも照れまくり。
瞳「あ、そうだ、私たちねこれから赤石(あかし)温泉に行くの。
  寅さんもよかったら一緒に行かない?


え!?山梨の赤石温泉?それって線路が違うぞ、あそこは『身延線』。ここは『大井川鉄道』だけど
でも実は
静岡にも赤石温泉があるんだよなあ〜〜(^^;)

詳しいことは本編完全版のこの部分を参照してください。



                 

寅「ん…
瞳「行こうよォ
寅「へへ、ま、お邪魔でしょう、へへ
瞳「あー…、変なこと想像してんでしょう、いやらしいわね、エッチ!もう!フフフ
新郎、首をかしげて照れまくり。
寅、二人の様子を見て笑っている。             
瞳たちは赤石温泉に行くと行っていたので、この『大井川鉄道』金谷駅から東海道本線で静岡駅
そこでまた乗換えて『身延線』に乗り、市川大門行き、3時間以上かかるということになる。大変だ〜(^^;)

寅たちを乗せた大井川鉄道線は大井川に沿って根本町の茶畑の中を通っていく。


                 




 
第22作「男はつらいよ.噂の寅次郎」ダイジェスト版を本日6月10日にアップしました。
この第22作は第3作、第4作などと同様、【本編完全版】がまだ出来ていませんが、
ダイジェスト版から先にアップいたします。それはそれで面白いかなって…(^^;)ヾ

現在帰国準備で超多忙のため、
第23作「男はつらいよ.翔んでる寅次郎」ダイジェスト版はだいたい6月20日頃のアップになります。



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第21作「男はつらいよ.寅次郎わが道をゆく」ダイジェスト版
 

2007年6月2日寅次郎な日々 その316


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


わが道を迷う奈々子の不可思議         華やぐ留吉の存在

SKDの花形ダンサー紅奈々子さんはさくらの幼馴染、同級生。若い時から才能が開花し、今やSKDの花形だ。
しかし、そんな順風満帆に見える彼女も年齢から来る体力のことと結婚のことで悩んでいる。
10年も付き合っている恋人の宮田隆が結婚を迫っているのだ。SKDは結婚すれば退団する慣例があり、彼女は
結局結婚を選び引退を決意するが、なぜ踊りまで引退しなければならないのかが不明なのだ。恋人の宮田隆はSKDの
照明係、踊りに関しては理解が有るはず、結婚したからってSKDを退団しても、奈々子さんが踊りをやめなくてはならない理由は
ないはずだ。日本でも世界でも一線で活躍しているダンサーやミュージカル歌手、俳優のほとんどは結婚している。
あの世界的に有名な森下洋子さんも、倍賞千恵子さんも、ほとんどの人が結婚している。夫の理解さえあれば両立は
できるのだ。SKD関係の人間がそんな無理解なはずがない。このあたりが私にはどうも不可解なのだ。SKDをたとえやめても、
いろんな舞台やテレビでの活動をしぶとく地道に模索すればいいと思ってしまう。「わが道」を「ゆく」でなく「行っていない」では
ないか。彼女の才能はみんなのものだ。たったひとつの家庭に封じ込めてはいけないと思うのだが…。
もちろん体力の衰えをきっかけに『踊りと歌』に対する情熱が冷めてしまったのなら別だが。それならばもちろん仕方が無い。

寅もまた旅立つ時にさくらにこう言うのである。

ただ・・・踊りをやめたりしたら後悔するんじゃねえかな。オレだったらそんな事させねえ

それゆえこの第21作「寅次郎わが道をゆく」の主人公は私にとってSKDでも紅奈々子でもなく、あの留吉である(^^;)
武田鉄矢さんがとても生き生きとスクリーンの中で駆けずり回っていた。「幸福の黄色いハンカチ」のでの初々しい
演技は衰えることなくこの作品でも輝いていた。SKDも奈々子さんも華やかでいいが、やはり田の原温泉で寅を慕い、
いつも女性にふられて続けているあのどんくさい留吉が抱腹絶倒だ。レビューのキップを買う時に「男子1枚」と言う
留吉が好きである。寅の反省という文字を見て「力強い見事なタッチですよ!」とさくらに言いきった留吉も好きである。
そしてなぜか、阿弥陀杉で留吉に言った岡本茉利さんのきつ〜い一言がいつも頭に残っている(^^;)


@【寅の帰郷ととらや改造計画】

今回も夢から。


宇宙から帽子型円盤が柴又へやって来る。
このサイトのマウスポインター(矢印)につけたあの帽子型円盤が登場!
谷よしのさんたち驚いて空を見ている。

さくら二階に向かって

さくら「お兄ちゃん!大変!UFOだってぇ!ねえ、はやく!
なんと寅、上から下まで全てギンギラギンの格好でゆっくり下りてくる。
みんな驚いて座り込んでしまう。

寅「みなさん、実は私は寅次郎さんではありません。さくらさん…、あなたの兄さんは今から30年前、
 旅先で妹のことを心配しながらこの世を去りました。その気持ちを哀れんで第3惑星の女王様がわたくしを
 身代わりにこの地球に差し向けたのです


                

宙に浮く銀のカバン テグスが見えてるのがいいね(^^;)

寅「できれば、わたくしはずーっと寅次郎としてこの地球に留まりたいのですが、そうはいきません。
 まもなく迎えが来るでしょう

さくら「お兄ちゃんうそ、うそよ、お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんよと言いながらも笑いを隠せない様子の倍賞さん(^^;)
寅「わたくしも、あなたが本当の妹だったらなと思いますよ

帽子型円盤が題経寺境内に下りて来る
寅「あー…、もう行かねばならない」みんな一人一人に挨拶をして出て行く寅。
円盤から源ちゃんはじめ類人猿が下りてきて寅を連れて行ってしまう。源ちゃんだけ猿のマスク無し(^^;)
蛍の光が流れる(^^;)
寅「さようなら、とらやのみなさん。たとえこの身は第3惑星の彼方に消え去るとも、心はいつもみなさんと一緒です
ドアが閉まっていく。
さくら「お兄ちゃん!ほんとに行っちゃうの?

               

源ちゃんだけ取り残されてしまい、必死に飛び乗ろうとするが、無情にも置き去りにされ、
地元の消防団にタモで生け捕りにされてしまう(TT)
博士「なんだかチャチだなあ…、あれで飛んでいけるんですかねえ?
社長「予算がねえんだろ、アメリカ映画みたいにはいかねえよ
帽子型、ジグザグ落ちそうになりながらも、スクーターの音を立てながらもなんとなく飛んでいく。



大分県玖珠郡南山田村菅原

あそづる駅』のホームで転寝をしている寅

宮原線(みやのはるせん)大分県玖珠郡恵良駅から熊本県阿蘇郡の肥後小国駅までを1984年廃線。

ピンクレディの『UFO』が流れる。


男子高校生がカセットデッキを寅の横において聴いているのだ。
寅、不快感で起きてしまう。
寅が起き上がっったら、男子高校生が反動で転がってしまう。
横で笑いまくる女子高校生たち。

                


タイトル 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


今回は間奏が長く入って、もう一度後半部分を繰り返す。

   
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪



今回もコントの帝王、津嘉山正種さん登場。

津嘉山さんたちカップルに写真を撮ってくれと言われて、レンズを身構えながら後ろずさりしていくと別のカップルに
つまづき、転んでしまう寅。そこから次々に県下が発生していき、そこらじゅうの人々を巻き込んでいくというコント。

              




柴又 題経寺 境内

東京踊り成功祈願『大入り祈願』のために題経寺に訪れ、御前様と一緒に記念撮影しているSKDのメンバー。
さくらも、自転車を降りて山門から見ている。もちろん、(皆様ご存知倍賞千恵子さんは元SKDのスター


松竹歌劇団(しょうちくかげきだん)、宝塚歌劇団、OSK日本歌劇団と並ぶ日本の三大少女歌劇のひとつとして有名。
メインは15間の舞台にずらりと並んだラインダンス「アトミックガールズ」、
そしてなんと言っても精鋭団員8名で構成されたセクシーかつ華麗なダンス「エイト・ピーチェス」が出色。

                

源ちゃん、ヒヒヒヒ笑いをして、さくらに
源ちゃん「東京踊りの大入り祈願や
さくら「もうはじまるのねえ〜
源ちゃん「御前様、ええ機嫌や
さくら「嬉しそうね
源ちゃん「へへ、ええ年して、へへへ」と笑っている。



とらや  店

おばちゃんとさくら、東京踊りの話をしている。
さくら「東京踊りか…、もう5月なのねえ…
おばちゃん「あんた娘の時分に憧れてたねえ〜SKDに
さくら「フフ…
おばちゃん「入ってたら今頃どうなってるかねえ
さくら「さあねえ」と笑っている。
さくらがSKDに入ってたら、今頃映画の「男はつらいよ」でさくらさん役をやっていますよ、おばちゃん(^^)
おばちゃん「そういえばあんたの友達でスターになった子いたじゃない
さくら「奈々ちゃん、紅奈々子
おばちゃん「くれない…、あー!この人!」と店に貼ったポスター見て思い出す。

               

実は、おいちゃんは、心臓の発作で寝込んでいたが、なんとか持ち直し、床を上げようとしていた。
おいちゃん「オレもあの時はもうだめかと思ったよ〜
さくら「いやあね〜
おいちゃん「その時な、さくら、ふっと、寅のことを思い出したんだよ
さくら「へ〜
おいちゃん「あの四角い顔が目の前に浮かんでな、こいつはいけねえ、まだ死ねない、あいつがまともになって
      この店継いでくれるまでオレは死ぬわけにいかねえ〜!…。そう思ったら気分がしゃんとしたよ、フフ


そんなことを話している時にSKDの踊り子さんたちの後をつけていった寅がフラフラと通り過ぎていく。

おまけに備後屋に
寅「おい、備後屋相変わらずバカか?

物語後半で後に反省した寅が「いらっしゃいませ、お団子でございますか?あ、備後屋さん!お利口そうですねえ!
もちろん大喧嘩(初代備後屋は佐山俊二さん。初期の頃は蓬莱屋だったのに…

おいちゃん、それ見てまた発作をおこしてしまう。(TT)

                



夕方 とらや 二階

寅がおいちゃんのお見舞いの袋に名前を書いている。
寅「ちっとも知らなかったからね、オレ、おいちゃん病気してたなんて…、お見舞いでも出そうかと思って
さくら、喜んで
さくら「おいちゃん喜ぶわきっと



茶の間 夕食

寅「あの、これ…、遅くなって恥ずかしいんだけどとおいちゃんの前に置く寅。
さくら、微笑みながらおいちゃんの顔を見る。
おいちゃん、封筒を手にとって見る。封筒に『お見まい』裏に『車寅次郎
おばちゃん「なんだい?
おいちゃん、封筒をおばちゃんにそっと渡す。
おばちゃん「あら…

おいちゃん、頭を下げて、お見舞いの封筒を両手で拝む。

               

おいちゃん涙ぐんで仏壇へ行く。
寅も少しお辞儀。
みんな「
さくら「ねえ、おいちゃん涙ぐんでる

満男「なにがあったの?」おいちゃんの横で聞く(^^)
おいちゃん「んー…、うん…
と仏壇にお参りし、寅の両親に報告。

おばちゃん「ありがとうよ寅ちゃんと涙ぐみながらお辞儀。
さくら「いいことしたわね
寅「もっと早く気がつきゃよかったな

この不景気でとらやの経営も上手くいっていないのもおいちゃんの気疲れの原因の一つだとさくらは言う。
おばちゃん「寅ちゃん、もしも、おいちゃんになんかあったら頼むよその時は…

寅「そんなことを言われなくともずーっと前から考えていますよ。もし、オレがこのとらやを任されたら
  どんなふうにしていくか…


寅「まず最初に
@今の時代は、店に座ったまま団子を買いに来る客を待てるようじゃダメ。
Aもっと積極的に、社長のところでビラを印刷して、これを新聞に折込み各家庭へ配る。
B月に一度の値引きセール。団子を半値にしちゃう。全然儲けはないよ、
 しかしそのことによってとらやの団子はこんなに美味しかったのかぁ…っていうことを行き渡らせる。


おばちゃん「
結局、年寄りの商売ってのはそういう思い切ったことができないんだよね
おいちゃん「
そうなんだよなあ…と、頷いている。
博「兄さんもなかなか考えてるじゃありませんか

寅「
まだあるんだよ
Cそうやって客が増えてくる、この店が狭くなるな。その時は思い切ってこの店を
 ぶっ壊す。そのあとに鉄筋コンクリートのビルをぶっ建てる。1階が店.2階がお座敷.3階が老夫婦の隠居所。

                
ぶったてる!
             

D裏の工場はその頃潰れているから、労働者ごと買い取ってこれを団子工場にする。
 もう手でこんなクシャクシャクシャクシャ団子なんかこねない。これはオートメーション。
 機械の穴からコトン、ポロポロポロ、コトン、ポロポロポロ。(博、目で追う)

Eもちろんきたない年寄りなんか店に置かない。若い新鮮な乙女が6人くらい。
 そろいの浴衣をピシッと着て、「いらっしゃいませ
「またどうぞ」
F支店も増やす。北は北海道から南は沖縄まで、とらやチェーンがズラーッと並ぶ。
Gもちろんテレビのコマーシャルにも金はかけますよ。
 例えば『草団子でお馴染みのとらやが提供の浪曲劇場。
 『よおうっ…、、♪泣くなぁ、よしよぉぉしいっ、ねんねぇぇしぃなあ、あっ、あ。坊やの母ちゃんどこいった。…ん?』

一同「……」

            

この寅の意見に対して6代目店主夫妻の反応
おいちゃん「頭痛くなってきた、寝るぞ…」と寝てしまう。
おばちゃん「長生きなんかしたっていいことないよねえ…グスン…
老人夫婦はもちろん寅の意見のDEFGが特に気に入らなかったようである(^^;)

寅は社長がため息をついて帰ろうとするのを怒って、
寅「なにか気にいらねえことがあるんだったら、言ってみろ!
経営コンサルタント役のタコ社長のお言葉
社長「要するにねえ、お前に経営のことなんかわかりゃしねえんだよ
社長はもちろん寅の意見のDあたりが特にお気にさわったようである。

寅、切れて、タコ社長に暴言を吐いて、結局喧嘩になり
社長「いいか!寅!てめえなんかにな、中小企業の経営者の苦労がわかってたまるか!
下の写真の通り↓(^^;)社長は寅にやっつけられる。

             


おいちゃんの発作がまたおこってしまって、みんな大慌て。
寅二階へ行って荷物を持ってまた下りてくる。
寅「さくら止めるな!止めるな!
おばちゃん「出てちゃうよ、いいのかい?
さくら「いいのよ…
寅「夏になったら鳴きながら、必ず帰ってくるあのつばくろさえも…、
  なにかを境にぱったり帰ってこなくなることもあるんだぜえ…

さくら「…、満男ご飯食べよ…
今回さくらとめません(−−)
寅「…!!ちきしょう!もう二度と帰ってこないぞー!!と走り去っていく。

みんな沈んでいる。



A【寅に師事する留吉の純情】


九州 熊本

阿蘇大観峰の草原で遠くをぼんやり見つめている寅。

竹田市の広瀬神社でバイ。

日本最大のアーチ式水道橋
矢部の通潤橋のアーチを渡る寅

                

田の原温泉

田の原川を渡り、田の原温泉に入る寅。
岡本茉利さんが牛を追って歩いていく。

旅館 大朗館に寅は逗留。久しぶりの客らしい(^^;)

翌昼 千年杉である『阿弥陀杉』まで散歩

岡本茉利さん演じる留吉の彼女。(シナリオでは春子さん)
彼女「
ウチね、木村さんを好きになったと…
牛 モオ〜…
彼女「怒らんとってね。怒らんとって…
留吉「木村っておまえ…、あげな男のどこがよかかおめえ〜…、男は面かァ〜!
彼女「留吉さん、木村さんはよか人よ。ウチあの人に会うて、ほんとに良かったと思ってる。
   あの人はウチに夢と希望ば与えてくれた…。
あんた何くれた!?
キツウゥ〜(^^;)
留吉「…!「鶴屋」のデパートでネッカチーフとか、買うちゃったろーがーァ!
熊本の中心地にある老舗デパート「鶴屋百貨店

                

彼女「あとでみんな返す!
留吉「ちょっと待てて!ちょっと待てて、あた!
彼女「ね、うったちのこと美しか思い出にしよ!」と駆けていく。
留吉「ちょっと待ててぇ〜!…、ツヤつけんな、このバカたれがおまえ!
   おまえと木村の結婚式に肥たごにほりこんだるけんね、ほんのこってがあ!

留吉「…アタ…またじゃが…ウウウウと泣きじゃくる。

寅すっと出てきて

寅「青年・・・女にふられた時は、じっと耐えて、一言も口を利かず、
  黙って背中を見せて去るのが・・・男という物じゃないか?


                

尺八が流れる中、さっそうと去っていく寅。
留吉「・・・あのう、どちらさんでしょうかァ〜?
寅「東京は葛飾柴又の車寅次郎、人呼んでフーテンの寅。
  ゆえあってこの宿に滞在しています。…夜分にでも話しにいらっしゃい

留吉「はい!!
寅「
♪少ぉ〜年!〜老いやすぅ〜くぅ〜う!学ぅ成りぃいいがたぁ〜しぃ♪

少年老い易く学成り難し一寸の光陰軽んずべからず未だ覚めず池塘春草(ちとうしゅんそう)の夢階前の梧葉(ごよう)已(すで)に秋声

留吉気をつけして厳粛に聞いている。




浅草 国際劇場

銀座線田原町駅から国際通りをまっすぐ歩いて7〜8分、今の浅草ビューホテルの所に国際劇場があった。
松竹歌劇団(SKD)のホームグランドで、年3回大踊り(東京踊り、夏のおどり、秋のおどり)が上演された。


「映画と実演」と言って、昼はレビュー、夜は映画(寅さん)
当時は小月冴子さんや春日宏美さん千羽ちどりさんらがいた。


なんと、今回は朝日印刷の慰安観劇でみんなで『東京おどり』を見に来ている。

さくら、楽屋に奈々子さんに会いに来る。
一緒にいるのは千羽ちどりさんと藤川洋子さんかな(^^)

奈々子「さくらじやないのぉ〜!
さくら「しばらく
奈々子「ねえ、嬉しいわ、見に来てくれたの?

              

さくら「今日ね、彼の工場の慰安会でみんなで来てるの
奈々子「ねえ、元気
さくら「うん
今度とらやに遊びに行くことを約束する奈々子だった。なにやら相談があるらしい。

華やかな踊りや歌が始まる。
目を輝かせて見ている朝日印刷の人たち。



とらや 夜

さくらたちが国際劇場から帰ってくるが寅から速達が来ていた。
さくら「『拝啓、この間はオレが悪かった。九州の山奥で朝な夕な反省をしている。
   もう二度と柴又には帰らない。そうすればおまえたちに迷惑をかけなくてすむからな。
   遠い旅の空からオレは死ぬ日までおまえたちの幸せを祈り続けている。あばよ。妹へ 寅次郎』


              

博「何かあったのかなあ…
おばちゃん「やだよぉ…、心配だねえ…
おいちゃん「
さくら「ちょっと待って、まだなにか書いてある
博「え…
さくら「おい…字が汚くて読めない(^^;)
博「追伸じゃないのか?
さくら「…あ、追伸。最後の迷惑だ。宿…賃をかしてくれないか。頼む




熊本

心配なのでわざわざ九州、熊本まで寅に会いに行くさくら。
ここらへんは第12作「私の寅さん」で実はさくらも行ったはず。

さくらのチェックの服は第17作「寅次郎夕焼け小焼け」で青観の家にお金を返しに行ったときの服。可愛くよく似合っている。

久大本線の日田からバスに乗ったさくらは松原ダムを通って『杖立温泉』に着く。

昔、とらやのみんなと一緒にここ『杖立温泉』で一泊したことがあるさくらでした。
これを読まれている皆さん覚えていますか?
確か、おいちゃんが女風呂と間違えて入ってしまって大慌て。詳しくは第12作「私の寅さん」を参照。


留吉がバスの停留所で『諏訪さくら様』と書いたどでかい紙を持って
留吉「諏訪さくら様、諏訪さくら様、様諏訪さくら様、諏訪さくら様ハズカシ…(^^;)

             

さくら、降りて来て「はい
ジープで山道をず〜っと駆け抜け、田の原温泉へ。
それにしても留吉の運転は荒い(−−;)

大朗館に着いて
さくら、とらやのおばちゃんと電話で話している。
おばちゃん「とにかくね、家に連れてお帰り、ほっとくとどこで何するか分からないから。強引につれて帰っといで
電話切って
さくら「怒ってるわよ、みんな。どうしてお金もないのに旅館に泊まろうとするの?
寅「なんとかなるだろうと思って…さくらをあてにしてるってことだよ ヾ(−−;)
さくら「なるわけないんじゃないの。お金が空からでも降ってくると思ったの?」と怒っている。
             
そこへ、留吉とお母さんが上がってくる。
杉山とく子さん(ついこの前アップした第20作でもパチンコやってたなあ〜)
母親「ほんにどげんもこげんもならんバカタレがでございましたが、もう先生に
   お会いしてからもう別人のごつ立ち直りまして、ま、まあなんとお礼ばすりゃよかでっしゃろか?


大朗館のオヤジさんが村人たちがサインを欲しがっていると言って上がってくる。
村人たちの分が山盛りになっている。
留吉「オレも一枚よかですか、すいません
母親「家宝にしますけん家宝って…(((^^;)

             

さくら「あ、…お兄ちゃんあんまり字が上手くありませんから」と焦るさくら。

オヤジ「あげん立派な字書かれて」と指差す彼方に
色紙に書かれた反省
留吉親子「はあ〜!!」と感激。
寅、照れている。
さくら、後ろを振り向いて真っ青になる。

              

母親「あれ、なんと読むと?
留吉「なんば言うとね母ちゃん、『はんしぇー』うん『はんしぇー』
さくらみっともないと言って裏返して隠してしまう。
留吉「何をおっしゃいますか!そんなことなかですよ!
  力強い見事な
タッチの字ですよ!タッチって…((((^^;)

と、いうことですっかり村人には崇拝されている寅だったが、さくらは冷ややか(^^;)
まあ、とにかく留吉に別れを告げて寅を連れて柴又へ帰ってきたさくらでした。




B【寅の改悛と奈々子との出会い】


柴又 題経寺

源ちゃんが子供たちにピンクレディのUFOの振り付けを教えてもらっている。

さくら、御前様に、寅が九州から帰ってから反省をしてまじめに店を手伝っていると少し嬉しそうに話している。
御前様「近頃寅が生まれ変わったようだというもっぱらの噂はそのせいですか…、なるほど
さくら「でも、いつまで続きますか
御前様「まあ、長続きするように私からも仏様にお願いしてあげよう
さくら「ありがとうございます
御前様「もっとも寅のことは何度もお願いしたからなあ…、聞いてくださるかどうか、難しいなあ…御前様若干意地悪なギャグ(^^;)

               



とらや 店

寅が店員用の白い作業着を着てまじめに掃除をしたり働いたりしている。
このシリーズでもっとも真面目にとらやに貢献していた時期だといえよう。

             
例えば、店先で備後屋に出会っても…
寅「あ、備後屋さん、いつもお利口そうですねぇ。どうも
備後屋「????気味悪いよね(^^;)

おいちゃんは3日坊主
社長「それじゃあ、困るんだよぉ、実はね、もうあちこちで評判でね、オレのところにね、縁談が来てるんだよ
おいちゃん「え?
耳ダンボの寅、スッとやって来て、寅笑いながら、急須にお湯がないことを告げる。
相手は吉田活版の従業員さんだそうだ。
おいちゃん「で、あれか?…先方は寅のこと承知なのか?
社長「ああ、全部正直に話したよ
おいちゃん「…なにもかもか?
社長「ああ、年のことも職業のことも
おいちゃん「で…と言って寅をチラッと見ながら、社長の耳元で
おいちゃん「見てくれのこともか…?
社長、嬉しそうに、
社長「それがさ、先方の娘さんさ、二枚目嫌いなんだって…うん、フフ…情がないから、フフと寅をチラッと見る。

               

社長「いい話だろ」とニコニコ。
おいちゃん、思わず笑いながら寅を見る。
博「しかし、兄さん好みが難しいからなァ…
寅「ん…、博。オレがな、縁談に対して好き嫌いが言える立場の人間か?
 そのことについていちば〜んよく知っているのはおまえだろ?

博、こっくり頷く(^^;)
寅も二度頷く(^^;)


               

そして店に接客に行く寅。
おいちゃん「おい、聞いたか」とニッコニコ
博、頷く。
社長「よし!オレこの話進めるぞ!いいね!?いいな!?」と嬉しそうに工場に走っていく。


さくらが店にやって来る

寅が真面目に働いているので嬉しそう。

そして寅はこんなことも博に言うのだった。

寅「博、お前もバカだなァ〜…、オレが相手を気に入るかどうか出なく、
  相手がオレを気に入るかどうかが問題だろ?


このセリフは昔第13作「恋やつれ」でおいちゃん自身が
バカ!こっちが気に入るかどうかじゃないんだよ。向こう様が寅を気に入ってくれるかどうが問題なんだよ
寅の結婚のこと(夫が亡くなった松の湯の娘さんとの結婚)で社長に言っていたセリフ

おいちゃん、感激して

               

おいちゃん「よく言った…まだ早まるな信じるな、早いぞ。ヾ(^^;
博も尊敬のまなざしで 
博「変わったな兄さんは…、九州でいったい何があったんですか?博までヾ(^^;)

寅、掃除をしながら

寅「いや、別に…。ただ、あの静かな山里で残り少ない己の人生を考えてみただけです
おいちゃん、ますます感激
おいちゃん「偉い… まだだって…ヾ(^^;)
おばちゃん「よかったねえ、さくらちゃん」ニッコニコ ちょっと早いってば ヾ(^^;)

博「わざわざ九州にいったのも無駄じゃなかったな…と感慨深げ。
さくら「そうね
寅「なあ、さくら
さくら「ん?
寅「考えてみるとオレも惚れたハレタの年頃じゃなくなったなあ…。フフ
博「やっぱり兄さんも、いろいろと…まだ早いってば ヾ(^^;)
おいちゃんも頷く。 おいちゃん気持ちがもう固まってしまったな(^^;)



奈々子店先に走ってくる。

奈々子「確かこのへんだったはずなのにな」とまた題経寺方面へ。
掃除をしていた寅も一緒についていく(^^;)

これだよ、ダメだ…寅の『反省』は早々と終了いたしました。チーン、ナムナム ┐(-。ー;)┌

博「あら?兄さんどこ行った?
さくら「え?
奈々子大急ぎで戻ってきて

奈々子「ここだわ!あ!さくらァ!!
さくら「奈々ちゃん!
奈々子「あたしね、本当はもっと早く来るつもりだったのよ、そしたらさ、
さくら「うん
奈々子「家を出てしばらくしてねえ、忘れ物に気がついたの
さくら「ウフフ
奈々子「そいで、慌てて引き返したのよね
奈々子「ハ〜!フウ…おばちゃん、すいません、お水一杯お願いします、
おばちゃん「あ、はいはい
奈々子「すいません、ハー…こんどはさ、

さくら「うん
奈々子「タクシーをしろったら、 こんどは道が混んで混んで、

寅ずっと横で奈々子さんの顔真似(^^;)
奈々子さん江戸っ子なんだね。ひろったらをしろったらと言ってた。
               
以下渥美さんの顔真似を御堪能ください(^^)

奈々子「もう途中でよっぽどあきらめようと思ったのよ、でも、せっかくでしょう、ちょっとでも顔出したかったの、
    でも、開演一時間前なのよ!もう私ってほんとバカだもう、

寅も顔真似。
     
水が出てきて

奈々子「
あ、ありがとう…ああ、あの、おだんご!お団子一箱お願いします
奈々子、クーーッと水を飲む。

                         

奈々子の横でず〜〜っと表情を真似る寅。
もう倍賞さんも笑うしかないです。笑ってますよ〜(^^)

                倍賞さん笑っています(^^)
               

奈々子「っああ!!、美味しい、ええ?
まだ寅が真横で奈々子の真似をしている。

奈々子「
…お兄ちゃんじゃない!
奈々子あまりに懐かしいので寅に抱きついてしまう。
奈々子「うわ!あは!やだ、やだやだ!昔とおんなじ顔してる!
さくら、大笑い。
奈々子「ねえ、お兄ちゃん、私のこと覚えてる?ねえ、よーくいじめられたのお兄ちゃんに
寅、照れながら
寅「覚えてる
奈々子「ほんと!!
寅「覚えてるよ

さくら、奈々子をEKDの人だとオイちゃんたちに紹介。おいちゃんたち思い出して
おいちゃん「あああー!」と大感激。
寅、急いでポスターと本人何度も照らし合わせて、大感激。

しかし、開演1時間前になってしまっているので
挨拶もそこそこに団子をもらって、もう一度来ることをさくらに約束して駅まで走っていくのだった。


もちろん寅は、ほうき放り投げて一緒に走ってついていったのだった。


さくら「あら、お兄ちゃんは?
博、呆れた顔で
博「一緒にくっついて行っちゃったよ」とスゴスゴ工場へ戻る。
おいちゃんも指差して
おいちゃん「…いっちまった…
さくら、驚いて駅のほうを見る。

全ては短く淡い夢でした(TT)



国際劇場

レビューをかじりつくように観る寅

               


寅、夜の柴又を歌い踊りながら戻ってくる。

寅「さくら、さぁくぅらぁ〜、さくら咲く国ィ〜、さくぅら、さぁくらぁ〜…
寅、備後屋とすれ違って
寅「よ!備後屋!相変わらずバカかおまえは!
頭が元に戻りました(^^;)

このあと寅はとらやの茶の間でレビューと紅奈々子のことを印象深く語っていた。
おばちゃん、眠いのでまったく興味なさそう…。


寅「よし!オレは明日も行く!
ダメだこりゃ…(^^;)



B【寅と留吉、おかしなレビュー仲間】

翌日 江戸川土手


さくらは留吉がヨタヨタ歩いてくるのを見つける。
留吉はなんと寅に会いに来たのだった。


           

一方とらやでは

とらや 台所

寅が下に降りて来て
寅「あー、遅れちゃったよ。じゃ、おいちゃん行ってくら
おばちゃん「レビューかい?ごくろうさん」うわ、皮肉(><)
寅「なんだよ、その言い方、いつオレがレビュー行くって行ったよ
このパターンは第1作や第8作、第14作をはじめ、このシリーズの数々の作品で使われるギャグ。

この後、社長裏からやって来て見合いを迫るがもちろん寅はそんな気持ち吹っ飛んでいる。

社長「何もかも向こうに話してるんだよ、それでもいいって言ってるんだから
寅、時間を気にし、外を気にして
寅「会えばね、がっかりするよきっと。早い話がさ、オレの娘がオレみたいな男と
一緒になるって言ったらオレ絶対反対するからね。おいちゃんどう思う?

おいちゃん「
あー、オレだって反対だな見捨てました寅のこと(^^;)
寅「ほら見ろ、この話は無かったこととして、わかったね。
  じゃ、おいちゃん、オレちょっと
レビュー観てくるから
レビューって言っちゃってるよ結局は(−−;)


さくら入ってきて、

さくら「お兄ちゃん」と留吉が来たことを告げようとする。

寅「なんだなんだオレちょっと忙しいんだ
さくら「ちょっと、ほら、
寅「なに?
さくら「この人
寅「あー、いらっしゃい…。おおお!おまえか!出てきたのか!?
留吉「はい!

今回は農村を考える会のシンポジュウムで出てきたとのこと。

寅、やる気なさそうな声で、ぼそっと、
寅「あ、そうかそうかそりゃよかった…」早くレビューに行きたがってる。

留吉がみんなに挨拶しているときも、時間を気にしてそわそわ。
留吉が来たにもかかわらず、寅は無情にもレビューに行こうとするが、
さくらは、案内してやるように忠告。

寅「ん…、じゃあしょうがないなあ、じゃあいいよ、オレ案内するから。一緒に行こう。国会議事堂か?靖国神社、
さくら「やっぱり東京タワーじゃない?
おばちゃん「東京はじめてだったらさ、上野の西郷さんなんか、ねー
留吉「実はどうしても行きたかとこがあるとです
寅「ふーん、どこ、キャバレー?ト、トルコ?
おいおいおい ヾ(^^;)

             

留吉「寅さん、どうしてオレがそんなとこ行きたかですかーん。恥ずかしかぁ〜
寅「怒るなよおまえ、で、どこ行きたいんだよ
留吉「それじゃ言いますけど、実はオレ…
   一ぺんでよかけん
国際劇場のレビューば見たかあー!

             


寅、目の玉を上にやって、気の無いふり(^^;)

留吉「柄にもないこと言うて恥ずかしかぁ〜」と下を向く。
寅「へー。なに?レ、レビュー?
留吉「へえー、お前もまた変なもの見たがるね、そのツラでぇー
とら「困ったなあ〜、しかしなあ〜…
」と、ワザとらしく困ってみせる。
寅「と、言ってさ、おまえが見たがるものを、オレがいけない、って言うのもおかしいしなあ
さくらたち、笑いを我慢。
寅「いいよ、オレ浅草行くからさ、おまえ一人で見るんだぞ、おまえ
オレ見ないから、早く行こう、早く早く!時間無いぞ!と駆けていく

留吉「どうもすいません!寅さんお急ぎのようですから、じゃあ失礼しました
寅「早くしろ早くしろ!

留吉「はいはい!
寅「もう幕開くよ!」詳しいねえ(^^;)

社長見合い写真を開いて
さくらさんどうしてくれるんだよ、写真まで持ってきたのに

おいちゃんその写真を除きこむ。 おいおい ヾ(^^;)

             




国際劇場


アトミックガールズ登場!(AG)

                  

アトミックガールのラインダンスは、東京名物として海外にもその名をとどろかせた

食い入るように見続ける留吉

バレー『ラ.プリマべーラ』
そしてお待たせ妖艶!『エイトビーチェス!』ゴールデン.フェザーズ
小月冴子さんと紅奈々子による日本の民謡「刈干切唄
リズムオンラインソウル

そして…フィナーレ 『さくら咲く国
左から紅奈々子 春日宏美、小月冴子の豪華メンバー。

♪さくら咲く国さくらさくら
ここも散りしくアスファルト
さくら吹雪に、狂う足取り


寅も留吉も見終わって放心状態…。ポカ〜ン…。

楽屋出口で、あの、千羽ちどりさんもいる。
留吉が舞台が終わった後サインもらっていた。

留吉はこのあと梓しのぶさん演じる若手のしのぶちゃんに恋をすることに。

奈々子と一緒に歩く寅に
留吉「わあー!寅さん、紅さんとお知り合いですか?
寅「幼馴染よ!
留吉「うわッ、よかああ〜

            


近所のとんかつ食堂『河金』でみんなで食事

奈々子、留吉に
奈々子「ねえ、あなたがね、一生懸命見てるのとってもよく分かった
寅「こいつのツラはね、客席からレビュー見るツラじゃないんだよ。
  見世物小屋でろくろっ首見るツラだよ
笑いました。座布団2枚!

            

留吉に財布渡していい格好するがいつものように500円しか入ってない。で、留吉が自腹を切る(TT)
このパターンも良く使われるギャグ。

★ 留吉、そのあともう一度国際劇場に舞い戻って、なんと再度指定席の券を買う!
分かるなあ〜、その気持ち。のめり込んだんだねえ(^^)

留吉「すいません、指定席の券ください。一番前、男子1枚(^^)

            

かぶりつきで見ている留吉。

留吉の母親は村を出てから2週間行方不明の留吉を心配している手紙をとらやに送ってくる。
寅もどこにいるのか全く知らないようす。



C【奈々子の再訪と青春期のみんなの夢】

とらや 店

ある日 奈々子から電話がかかってきて
そうとは知らず、寅、いやいや出る
寅「はいはい、こちら『エイトビーチェスちゃうちゃうそれレビューの出し物だよ ヾ(^^;)
寅「え?あ、とらやですけど…。わたくしです…。!!!奈々ちゃん?
  うん、うんうん、うん、今、どこにいるの?どこに?

奈々子「今?楽屋。『夏の踊り』の練習が始まってるの。さくらいる?
    あのね、今日の午後暇なんだけど、遊びに行っていいかな?


           

寅「うん!いいよ、うん、来いよ!もうそろそろね、来るんじゃないかってオレ待ってたんだ。うん、うん、いやあ、
 店なんていつだって暇だから。うん、じゃあオレ待ってるからすぐ来いよ。え?迎えに行こうか?
 分かる?うん、うん、じゃ、道間違えるなよ、うんうん、はい、ん!


電話を切って

さくらやおばちゃんにいろいろ用意するように注文し、
客を店に入れないで、道を歩く通行人を端に寄らせ、用意を整える寅だった。


数時間後 工場

源ちゃんがシャツにサインしてもらったのを見せびらかしている。
タコ社長や工員たち、奈々子さんにサインをもらう。

おばちゃん「あなたは中学の学芸会の時からスターだったわねえ
奈々子「でしゃばりの、目立ちたがり屋だったのよ。要するに
奈々子「ほんとのスターはこのさくらよ
さくら「え?
みんなニコニコ

            

奈々子「美人で、勉強ができて、気立てが優しくて、まるでお姫様みたいだった。
さくら「うそよぉ〜フフフ
奈々子「ほんとよー、私なんかずいぶんヤキモチ焼いたんだからァ、男の生徒にもててもてて
寅「へェ〜もう当時すでに家出してたから寅は何も知りません(^^)
奈々子「だから、私ねェ、さくらは王子様みたいな男性と結婚すると思ってたの。
    そしたらねえ、あんな、あの、職…、ごめんね、あの、そういう意味じゃないのよ。つまり…

さくら、首を小さく振って笑っている。
寅「つまり!あのような貧しい職工と結ばれてしまったというわけ

           

さくら、クスクス笑っている。

寅「さくら、おまえ失敗したぞ
奈々子「いや、違うのよ、お兄ちゃん!あの、もちろんね、意外は意外だったけど、
私…羨ましいな…、どんなふうだった、ね、もちろん熱烈な恋愛だったんでしょ?

社長「そりゃあもう
奈々子「どうだったの?お兄ちゃん
寅「さあ、忘れたなァ、昔のことだから。お見合いでしょ、あんたたち
みんな大笑い。
おばちゃん「何言ってんのよぉ、あんた邪魔したくせにィ
奈々子「羨ましいな…、さくら

           

さくら「そんな…私なんかァ、フフ
奈々子「どうして?
さくら「だって羨ましいのは私のほうよぉ、
   中学の時からあなたは踊りも歌も全校一で、私たちは奈々子は必ず舞台のスターになる人だって信じ込んでいたし、
   あなたもそうなりたいと願って、そして、その通りに生きてきたのよぉ、素晴らしい人生じゃない

寅「素晴らしい人生だよ
さくら「ホント言うとね、私もレビューに憧れたり、歌手になりたいって真剣に
   思ったりしたことあんのよ。そういうささやかな夢ってだれもが一度は持つんじゃないの?ね
」と寅にふるさくら。
寅「そうそう、うん。おいちゃんだってな、まあ、若い時はこんなケチな団子屋のオヤジに納まろう
  と思ってなかったよな。そうだろ?

おいちゃん「そりゃおめえ、オレは満州で馬賊になるつもりだったからなあおおお((@_@)
おばちゃん「私はね、日本橋の大きな呉服屋の女将さんになりたかったの

          

みんな「ハハハ」
おいちゃん「なあに言ってんだい…
おばちゃん「なによ

寅「博の奴はね、学者になりたかったんだ
奈々子「へェー…
寅「それが今どうだい、こんあ倒産寸前の工場の職工だよ。もう一生ダメ
奈々子「フフフ
社長「何言ってんだい、オレだってねェ、弁護士になりたくて夜学に通ったもんだよ。あの時もっとがんばってりゃなあ…

寅「な、みんなこのように、若い頃の夢とは程遠い現実生活を営んでいるというわけだ。んー

ちなみにさくらは確か第12作「私の寅さん」で小学校の時は絵描きさん。中学校では声楽家。高校では芸術家のお嫁さん。だった。
博は
確か弁護士になりたかったり、、テストドライバー、バイク店のオーナーになりたかったりしてた。


さくら「奈々子のように、理想どおりに真っ直ぐに生きてきた人ってほんと少ないわよ
寅「そう、そら、少ない少ない
奈々子「お兄ちゃんにも夢があった?
寅「そらあったよ
奈々子「どんな?
寅「オレャ、鼻垂れ小僧の時はチンドン屋になりたかったんだ。
おばちゃん「そうーそう、そうだったよねえ
とら「あーあ」
寅「小学校に入ったら、オレサーカスに入りたかったんだ。あの三角テントさ
さくら「覚えてる覚えてないだろ、さくらはまだ赤ん坊だよ(^^;)

おばちゃんがそんな幼児だった頃の寅のディテ−ルを知っているということは、かなり初期の頃から
とらやで働いてtんだねきっと。


寅「中学校ではテキヤに憧れてね
奈々子「へェー
寅「四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、粋なネエチャン立ちションベン、白く咲いたが百合の花、

           

奈々子「ハハハ
寅「ヘへへ…、ま、オレはオレなりの貧しい小さな夢を持ってたわけよ
奈々子頷く。
寅「結局今はこうやって…、あ、ずっとオレそれやってんのか…
奈々子「え?ハハハ、じゃあとにかく、寅さん理想どおりに生きてるんじゃない?
寅「まあ、ギリギリそういうことにあんるかな、ハハハ
おいちゃん「そうだ、お前の場合、お前の場合、まわりも遊び人にしかならないと
       思ってたし、そしてそのとおりになちゃった…
」と締めくくっていた。

社長「じゃあこの中で理想の生き方を貫いているのは奈々子さんと寅さんだけだよな?

寅「そうそう
みんな「ハハハ

奈々子「でも、私とお兄ちゃんは違うわよ
寅「え?
さくら「どこが?
奈々子「だって、私は結婚してないもん…
みんな、シーン
寅、下を向いて「…」
奈々子「え…違うの??

          

さくら「お兄ちゃん慎重だから、ね」優しいねえ…(TT)
奈々子「…慎重に、選んだの?
寅「…恥ずかしいことよ…」と照れている。

おいちゃん「慎重すぎてまだ独りなんですよ
奈々子「あら
社長「上手い上手い!ハハハ
奈々子「そうなの!?
奈々子、寅の手を握り
奈々子「じゃ、私とお兄ちゃんは本当に仲間ね。ごめんね
寅「まあ、そういうことになるか、ハハハ
奈々子「でも。。。寂しくない?独り暮らしって
寅「そうねえ、まあ、傍目にはとても気楽そうにみえるらしいけどもさ、
  例えば冬の寒い夜なんかねえ…、妙に寝つけない時があるだろ

奈々子「あるある…
寅「そういう時は、なんかこう…、胸の中をね…、冷たい風ぴゅーっと吹き抜けていくような気持ちがするよ
奈々子「…わかるな…
寅「でも、すぐ寝ちゃうけどね
さくら、クスッ…

奈々子突然レッスンを思い出し帰ろうとする。

さくら上がり口で

さくら「ねえ、あなたなにか大事な話があったんじゃないの?」とひそひそ。
奈々子「ん?ん。実はね、悩んでんの。結婚のこと」ひそひそ。

           

ヒールを履いている奈々子。
さくら「やっぱり…
奈々子「もう年だしさ、かと言って踊りは止めたくないし、どっちにしていいかわかんない…」と悩んでいる様子。
寅、やって来て
寅「「行こ行こ行こ
二人で柴又駅に急いでいく。

谷よしのさん、お客さん役で店頭に。



D【奈々子の引き裂かれた心と涙】

アパートで

博との会話
         
SKDの慣習として結婚したらみんな退団するらしい。
さくらは、奈々子さんが踊りを踊りために生まれてきたことを分かっているので
その板ばさみになって奈々子がなんだか可愛そうだと言う。



浅草六区映画街

東京クラブ裏で布生地のバイをする寅。

その横を食堂で働きながらしのぶちゃんにアタックし続けている留吉を垣間見る。
寅「ちっ!あのヤロウ、なに何やってんだい!ふられるのは時間の問題です!


国際劇場 稽古場

奈々子、練習をしているが、日々体力の衰えを実感しているようす。

ぼんやり階段から外を眺めている。

照明係の隆がやって来て、缶ジュースを持ってくる。

奈々子はっとし、隆を見て
隆「冷たいぞ」
奈々子「ありがとう
隆「うん」

          

隆は何か言いたげだったが、階段を下りてゆく。
奈々子は悲しい気持ちで隆の後姿を目で追いかけている。

奈々子「隆!簡単に言うね。私、どうしても踊りを止めることができないの。
     ごめんなさい。一生忘れない、隆のこと…


奈々子のテーマが流れる

隆「…、」奈々子を見つめながら、少し動揺し、去っていく。

隆、仕事場に戻って黙々と働く。

奈々子風に吹かれながら、実はまだ迷っている。



奈々子は自分の実家に時々お金を援助しに行っている。
夫婦関係がうまくいっていない妹が、夫の元を飛び出して
実家に帰ってきている。そんな夫婦の有り方を見ていろいろ考える奈々子だった。

          



とらや 茶の間

『夏の踊り』のポスター
寅が、茶の間で寝転がっている。
博が工場に戻ってくる。
さくら「これね、今日のお兄ちゃんの稼ぎなんだって
博「大丈夫ですか兄さん
寅「うん、まあ、借りた銭に比べりゃ、ほんの僅かだけどよ、オレたちの商売も不景気でな
博「じゃ、受け取ります
さくら、ちょっぴり嬉しそう(^^)
社長やって来て
タコ社長「あーダメダメ、全くダメ、なんかいいことないかねおばちゃん。
      ヘへへ、寅さんまだふられねえかな

寅、むくっと起き上がる。
社長、あわわわ!となる。

           


博も口が滑って
博「社長も社長ですよ、兄さん、まだふられてやしないじゃないですか
で、寅は、カンカンに怒って、外で飲んでくると言い出て行くその時


奈々子がやって来る。

寅「よう!
奈々子「こんばんは
さくら「あら!なんだ奈々子じゃない
寅「なんだい、今頃急に
奈々子「お兄ちゃんの顔見たくなったの
奈々子は今度の『夏の踊り』でオリジナル曲の『道』という歌を歌うらしい。
奈々子は、その歌を説明しているうちに泣いてしまう。
寅「…!

           

さくら「何かあったの?
奈々子「ねえ、さくら、聞いてくれる?
さくら「え、ええ、いいわよ
奈々子「私ね、もう十年近く付き合ってる人がいるの
さくら頷く。
奈々子「大好きなのよ
さくら頷く。
奈々子「お互いにもう年だし、このへんで結婚してくれって彼が言うの

寅、椅子を立って沈んだ気持ちで奥にゆっくり引っ込む。

さくら、奈々子の話しを聞きながらも寅をちょっと気にする。

           

奈々子「私、ようやく決心したの
寅、暖簾のところで、止まり、背中で聞いている。

奈々子「それは彼は優しい人よ。私を大事にしてくれると思うわ。
    でもねさくら、私どうしても踊りをやめるわけにはいかないの

さくら、何度も頷く。
奈々子「だから…彼とは別れたわ…
さくら「…そう…

なぜか撮影カメラの音が流れ続ける。

寅、奈々子の言葉を聞いている。心なしか目に力が沸く。

           

さくら「そんなことがあったの。辛かったね奈々子
奈々子「でも、これでいいと思ってる。こうなるしかないと
思ってる。でも…

奈々子、さくらの膝にで泣きながら
奈々子「私、寂しい…うううう
寅は動かないで背中を見せている。

奈々子「私、帰る。恥ずかしいの…。ごめんなさい
寅「オレ、ちょっと送っていこうか
さくら「そうね、そうして
奈々子「あら、雨
寅「よ!傘!早く早く、早く行こう

博「兄さん!!」追いかける博。
寅「はい、なんだい?
博、寅に一万円札を渡す。博って凄いね(−−)
寅「こんなに?すまねえな、あとでまとめて返すから

寅「行こ!と一つの傘で二人入って駆けて行く。
奈々子「さよなら
さくら「またね

           

社長「どういうことだい?え?好きな男がいたけど別れた、確かそう言ったな。
大逆転だなこりゃあ

おいちゃん「おい、寅はな、おまえの楽しみのために、惚れたりふられたりしてるんじゃない
んだぞ、このタコ!


社長「楽しんじゃいないよ…
博「楽しんでますね
社長「そんなことないよ
おいちゃん「楽しんでる顔だよ、そりゃ
社長「ち、ち、違うよ
おばちゃん「なにが逆転よ
社長「もののはずみだよ
雨を見ているさくら。



E【雨の抱擁と傷ついた寅の心】

奈々子の部屋


奈々子さん酔っている。
奈々子「あー、ウチに着いたら急に宵が回ったみたいよ寅さん

なぜか呼び方が「お兄ちゃん」ではなく「寅さんに」になっている奈々子さんでした。

寅「そうかい、それじゃ今日は早く寝たほうがいいよ。オレはまた来るからよ
奈々子「ダメ、ゆっくりしてってよぉ
寅「でもなあ…
奈々子「私もっと話しを聞いて欲しいの、お願い、お願い

奈々子「私後悔してるんじゃないのよ。これでいいと思ってるの。
     だって私から踊りを取ったらなにが残るの?一日踊りを休んだら
    体がウズウズしてくるのよ。私ってそんな女なの…。
    結婚なんかできるわけないじゃないの。ね、寅さん


奈々子さん、結婚と踊りは配偶者の応援さえあれば両立できるよ。
世界で活躍している人々はみんな両立している。踊りをやめたら死ぬのと同じだ。


寅「ん、分かるよ。あんたの気持ちはよーく分かる
奈々子「恋なんかするんじゃなかった…

            

奈々子「どうして私なんかに惚れたんだろあいつ…」とまた酒を飲む。
寅「男が女に惚れるのは、理屈なんかじゃねえよ…
奈々子「好きだったら、なんでそっとしておいてくれないのさ…。
     どうしてこんなに苦しめるのさ…
」と泣く。
奈々子のテーマが静かに流れる。

寅「もう忘れろよ、え、済んだことだい、な。
  あんたには踊りがあるじゃねえか


奈々子「大した踊りじゃないよ…

寅「そんなことはないよ。あんたの踊りがどんなに素晴らしいか、
  あんたは分からないんだろうけども、大勢の人が、…、オレだってそうだよ、
  あんたの踊りを見て大勢の人がうっとりして、苦しい思いや、辛い思いを忘れようと
  するんだい。踊りを続けろよ、な。そのうちきっとその男も分かってくれるよ



            

奈々子、寅を見て、小さく頷く。
寅「な。…それじゃあまた明日稽古で大変だから、オレ、これで帰るから、な
奈々子「ダメ、
寅の手を握って、
奈々子「行っちゃダメ

寅「ん?
奈々子「今夜私につき合って、ね、一緒に飲んで寅さん、ね…
寅「…、そうだな、じゃ、まァそうするか、フフ


奈々子さん安心して

奈々子「ありがとう…、今日お兄ちゃんがいてくれてほんとよかった…

奈々子さん、喜んで、雨の降る窓の外を見る。

そこには雨に濡れながら立っている隆がいた。

隆を見つめながら涙が零れ落ちる奈々子さん。
隆も気づいて奈々子さんを見つめる。

                

奈々子さん、振り向いて寅を見つめ

奈々子「

寅「どうした?

奈々子「私……、お兄ちゃんちょっと待ってて

と外にかけていく。

寅は下の道に誰かがいることに気づく。
窓の外、下を見る寅、隆を追う奈々子さんを見る。
寅「…!

激しい雷鳴

          


雨の中隆を見つめる奈々子さん。
奈々子さんを見つめる隆。

奈々子さん、引き返そうとする隆を追いかけ


奈々子「隆!好き…

          


隆の胸に飛び込む奈々子さん。
奈々子さんを抱き上げるように抱擁する隆、


激しい雷鳴

二人は強く抱き合いキスをする。

          




柴又 とらや 茶の間


博たち雨が上がったので帰ろうとしている。

おばちゃん「寅ちゃん帰るまで待ってたら…、なんだか心配だよ。もし、朝まで帰ってこなかったら…
博「兄さんに限ってそんな…
おいちゃん「その手の間違いだけはしたことないんだよあいつは
それもなんだかなあ…(TT)
博「その点だけは大丈夫なんですがねえ…」みんな確信があるんだねえ…(TT)

さくら、外を見て

さくら「あー、帰って来た
おばちゃん「おかえり
博「おかえりなさい
さくら「濡れなかった?
寅「うん
寅「浅草のおでん屋でな、一杯やって、それからウチへ送り届けて帰ってきたよ
さくら「奈々子、元気になった?
寅「うん、ま、いろいろ慰めてやったから大丈夫だろ
さくら「そう…よかった…


寅は二階へ…

そんな時奈々子から電話

電話口で泣いているらしい奈々子。
さくら「どうしたの?ね、ちゃんと最初から話して…。

           


社長がやって来て

さっきのことを野球のことをたとえにしてまた言い訳する

社長「逆転なんて言って悪かったけどね、ほら、ジャイアンツが逆転ばかり
   されるだろ?だからつい出ちゃったんだよ

源ちゃん同様ジャイアンツファンのタコ社長でした(−−)
おいちゃん「おまえなにか?寅の恋愛と野球と一緒にするのか?
社長「そうじゃないけどさァ
博「兄さんは真剣なんですよ
社長「野球だって真剣だよ、逆転されて降ろされた時の顔見ろよ、失恋した時の寅さんの顔なんてもんじゃないよ

博、手で、階段を指す。

社長「え?はっ!!!!

お口ぽかん。

前に寅が立っている。

寅、きつい目をして、静かに

寅「社長…おまえ野球好きか?
社長「ああ、好きだよ…
寅、頷いて

             


寅「楽しみがたくさんあって幸せだな…
社長、泣きそうな声で
社長「ああ…とても幸せだよ…

寅「おいちゃんおばちゃん、オレャ今回長居をしたぜ…
  そういえばいつもより長めにいたね。

寅「旅に出るよ

みんなびっくり

おいちゃん「どうしたんだ突然…
寅「いや、別に厳しい表情。

暖簾をくぐり出て行く寅。

さくら、電話口で下を向いて考え込んでいる。

             

寅「さくら、オレ、ちょっと商売思い出したんで旅に出るよ…
さくら「今、奈々子から電話があった
寅「へぇー…
さくら「お兄ちゃんにとっても悪いことしたって…
寅「なに言ってんだい、どうってことないよ。あの子が幸せになりゃそれでいいんだから
さくら「
寅「ただ…、
さくら「ただ……、なあに?

             


寅「踊りをやめたりしたら、後悔するんじゃねえのかな。
 オレだったらそんなことさせねえ…


             


さくら「……!


             

兄のそんな気持ちに打たれ、静かに悲しみが押し寄せてくるさくらだった。

クラリネットでメインテーマがゆっくり流れる

寅「そうだ、あの、これだけでも返しておくよ
とおつりを博に渡そうとする寅。
博「いいんですよ、そのうちまとめて返してもらいますから
寅「そうか。すまねえな



店の出口まで来て

寅「さくら、『夏の踊り』の初日にだけは行ってやれよ
さくら「うん
寅「じゃあな
さくら「お兄ちゃん…

旅立って行く寅。

博「どうしたんだいったい?」  

さくら「あのね…、奈々子やっぱり結婚するんだって…
博「え?
さくら「急に決心変わっちゃったんだって
その場に立ち会ってしまった兄の悲劇を思い、涙するさくら。

             


結婚するとSKDを辞めなくてはならないのなら、私が隆ならいいアイデアがある。
同居しても(籍は入れない)。通い婚だっていい。そして奈々子さんにSKDの舞台を続けてもらう。
彼女の踊りを見ていろいろな人たちが明日も生きていこうと勇気づけられたり、元気づけられている、と
寅が言うように、どんなことをしても彼女のためにもみんなのためにも彼女には踊りを続けてもらいたいからだ。
そして頃を見計らって隆が家庭に入って『主夫』をする。もし実際の隆が仕事を辞めることを嫌がるなら
奈々子さんだって嫌がればいいのだと思う。シビアに言えば隆の代わりはあっても彼女の代わりはいないのである。

自分が神様から与えられた才能は完全に開花させて人生を終わらせなければならない。これは配偶者であり、
奈々子さんをもっとも大事にしたいであろう隆の最大の使命でもあるのだ。結婚して踊りをやめてしまった奈々子さんを
隆はどのように感じるのだろうか…。



F【奈々子の最後の舞台を陰で見守る寅】

浅草 国際劇場
 

夏の踊り SUMMER DANCE  

松竹歌劇団50周年公演

本日初日

映画も併映  雲霧仁左衛門
非情な武家組織に追われて盗賊と化した男と、彼に熾烈な闘争を挑む火付盗賊改めの姿を描く、池波正太郎原作の同名小説の映画化。仲代達也 松本幸四郎

留吉はまだ、性懲りも無く、しのぶちゃんにアタックするため、国際劇場に出前を繰り返していた。


小月冴子さんの部屋

小月結婚するんだって?あなたがいなくなると痛手だけど、仕方が無いわね。お幸せになってね
奈々子はい、ありがとうございます

高羽さん暖簾の隙間からの小月さんを狙うアングルは絶妙の味だった。
          

一方、留吉は案の定しのぶちゃんにふられてしまう。

              

しのぶいろいろありがとう。あなたのこと、きれいな思い出にするね
留吉じゃあ、恋愛より踊りを選ぶわけ?当たり前でしょが ヾ(^^;)
しのぶ「
私、勉強しなくちゃいけないことがいっぱいあるの。さよなら」と行ってしまう。
留吉、呆然…
留吉「またか…
ピヨヨ〜ン


さくらが奈々子の楽屋にやって来る。


奈々子「さくら…来てくれたのね
さくら「しっかりね、思い出の舞台になるように

           

奈々子「寅さんは?」 
お兄ちゃんとは言わないのか?奈々子さん
さくら「楽しみにしてたんだけど…、仕事の都合で急に旅に出ちゃったの
奈々子「…そうと、失望の色を隠せない。
さくら「ね、これお兄ちゃんからあなたにって花束を渡す。
奈々子「ありがとう…。さくら、私ね寅さんに悪いことしちゃったの
さくら「そんなこと気にしないで。じゃ、私行く。気にしないで

いよいよ奈々子が『道』を歌う瞬間がやってきた。

奈々子「私やめたくない!止めんのいやだ!」と春日宏美さんにすがりつく。
春日宏美さん「だめよ!泣いたりしちゃ!さ、しっかり!」と頷く。

           


そして…奈々子は舞台で『道』を歌う

脇で踊ってくれるのは春日宏美さん千羽ちどりさん。

               

♪ひとつのセリフも無くて 泣いた日もある
人がきれいに見えて、自分を恨んだ日もある。
でも、さあ立ち上がり 夜空の星を見つめて
つらい涙ふいて この道を歩き続ける
あたしを愛してくれる 人たちがいるから
あたしは心のすべてを、信じたこの歌に託し、生きて来たの。



なんと…寅が最後部座席で奈々子さんの歌を聴いている。

          


奈々子が気丈夫に舞台に立っているのを見届けた寅は
歌の途中で国際劇場を出て旅に出発する。


          


奈々子の歌を聴いているさくら。

スタッフたちや後輩たちが舞台の影から最後の公演の奈々子を見守っている。

                   

♪まぶたを閉じれば今も 今よみがえる
遠くさすらう日々の 幾人かの懐かしい人たち
時には叱ってくれた 優しい言葉であなたは
時にはつつんでくれた 温かい腕にあなたは
できるならもう一度巡り逢いたい
空を流れる雲を見つめ
若い日の夢を一緒に語りたいの


あたしを愛してくれる 人たちがいるから
もう泣かない あたしは
選んだこの道を歩き続けたいの


涙を潤ませるさくら。
われんばかりの拍手



夏真っ盛り とらや 店

SKDの若い団員たちがトコロテンやカキ氷を食べている。

さくら留吉の暑中見舞いを読んでいる。

          

拝啓 車先生

東京ではいろいろご心配かけました。
先生のお教えにそむいて勝手な行動をとりましたことを
深く反省しております。
熊本に帰ってからは心を入れかえ、農業に打ち込んでおりますので
ご安心下さい。
なお、私は今、結婚を前提として、ある娘とまじめにつきあっております。
本当の田舎娘ですが、私の青春遍歴は、このへんで終わらせたいと思っとります




G【再びの寅と留吉、可笑しな師弟】


熊本  田の原温泉

とはいうもののやはり留吉はまたもやふられてしまう(TT)
女の子「あんたとは、ただの友達やろがァ、もう二度と電話せんといてね、家のもんが変に思うけん、バイバイ〜

           

留吉「またか…

そして、なんと寅が一部始終を見ていた。

留吉「あ、…寅さん!
寅「あーあ、嫌だ嫌だ。真面目にやっているかと思って、熊本くんだりまで来て見りゃ、このざまだよ
留吉「見られちゃった!
寅「オレはもうおまえのツラ見たかねえよ、あばよ

メインテーマが盛り上がっていく。

留吉「違うとですよ、違うとですよて!あの女はほんなことずっとまじめに交際しとったですよ。

           

留吉またコケル。
留吉「
あた!
留吉「
いや、寅さん聞いてくださいて、母も喜んでずっとうまくいきよったのに、あの女に男がおったとですよ。
   だけん私は夢ば覚まさせてやろうと思うて、ちょっと懇々と話しばしよったとです。
   しょばってつまらんとですよ。夢にスポーっトはまって、
(またコケて『あた!』)


寅「おまえはね、結婚には向かないから諦めろってオレが言ったろ!
  どんどんあぜ道を歩いていく寅。
留吉「寅さん、寅さんって!そんなオレ真面目な男ですよ〜」と追いかけていく。

カメラは遠く夏真っ盛りの田の原温泉を遠くに眺めていく。

           





 
第21作「男はつらいよ.寅次郎わが道をゆく」ダイジェスト版を本日6月2日にアップしました。
この第21作は第3作、第4作同様、【本編完全版】がまだ出来ていませんが、ダイジェスト版から先にアップいたします。
それはそれで面白いかなって…(^^;)ヾ

第22作「男はつらいよ.噂の寅次郎」ダイジェスト版はだいたい6月6日頃にアップいたします。



【寅次郎な日々】全48作品ダイジェスト版のバックナンバーはこちら

【寅次郎な日々】全48作品マドンナ制作年度順






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315

                          
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第20作「男はつらいよ.寅次郎頑張れ!」ダイジェスト版
 

2007年5月26日寅次郎な日々 その315


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。




初めての本格的『恋のコーチ』バージョン             とらや二階大爆発の巻



この第20作「寅次郎頑張れ!」は、若い男女の恋を寅が取り持つ「応援歌」を物語の中心に据えた最初の作品である。
しかし渥美さんもまだまだ若く溌剌としている。この作品の場合寅は大竹しのぶ扮する福村幸子に恋愛感情が全く無い。
純粋に応援するのである。中村雅俊扮するこの2階に下宿する若者『ワット君』こと島田良介のキャラがとにかく面白い。
あまりユニークでとらやの2階を爆発させてふっ飛ばしてしまうくらいだ。全くすごいことをやらかす下宿人。よっぽど受けたのか、
このエピソードは第40作「寅次郎サラダ記念日」でも出てくる。第10作「寅次郎夢枕」の岡倉先生やの第24作「春の夢」のマイケルと
いい勝負の変わり者下宿人。もちろん恋も寅以上に苦手。そこで寅が指南(コーチ)するってことになる。まあもっとも、すぐにコーチから
現役復帰に転換してしまうところがいかにも寅らしい。
このように、この第20作「寅次郎頑張れ!」は幸子と良介という若い二人の溌剌としたパワーと寅のワイルドなパワーがぶつかる
動きのある物語だ。


上にも書いたがなんと言っても渥美さんがしっかり動いてくれるので実にテンポが良い。
特に、平戸でワット君のお姉さんである藤子さんに惚れた寅が、彼女の経営する雑貨土産物屋の仕入れから早朝帰って来る場面で
港の幸橋近くを自転車に乗る姿が映し出されるのだが、その時の渥美さんの自転車の乗り方とその表情、そして歌う「憧れのハワイ航路」
がなんとも爽やかで、格好いいのだ。ハンドルを一切持たないで細いブレーキの部分だけ持って威勢良く歌を歌いながら漕ぐ渥美さん。
もう惚れ惚れする!第5作「望郷篇」にも「月の法善寺横町」を自転車に乗りながら歌う渥美さんがいたが、今回も実に爽快な映像である。
もうこの短い映像と渥美さんの歌声だけでも本編を見る価値がある。
               

また平戸での船長と神父役を演じた石井均さんと桜井センリさんは見事な掛け合いと確かな演技で、平戸の人情を表現していた。
そして、この作品では第16作「葛飾立志編」でいい味を醸し出していた米倉斉加年さん扮する長万部出身の轟巡査(青山巡査)が再出演、
パトカーを伴っての久しぶりのとらや入り。全力疾走とハイテンポは見もの!凄いの一言!、源ちゃんと一緒にサル捕獲作戦ギャグなども
入って、大笑い。そして最後に雪の日の真面目で純朴な轟巡査さんにちょっと感動もするのである。そしてあの幸子のテーマ曲のなんと
美しいこと。

そう、この作品は最後にとらやに深々と雪が降る味わい深い情景が見られるのがなんとも嬉しい。

おまけでラストに坂東鶴八郎一座と再会し、車の荷台に乗って颯爽と正月の空の下町に向かっていくところで終わるのである。
これは第8作「寅次郎恋歌」のラストのアレンジ版であることは言うまでもない。




@寅とワット君、いきなりの喧嘩とおかしな友情

今回も夢から

成金の夢


ある日寅が目を覚ますと、豪華なベッドで寝ていた。そして優しい声でお手伝いさんが起こすのである。
岡本茉利さんがお手伝いさん役
執事は吉田義夫さん。


目が覚めた寅の元にさくらがやって来る。

寅「さくら、この部屋はいったい…
さくら「お兄ちゃんの部屋よ
寅「…!!

               

タコ社長は大会社の社長
博は副社長
おいちゃんおばちゃんもろ成金ガウンに装飾品。ある意味凄い格好(^^;)


さくら「長い間の苦労が実って私たち、今はお金持ちなのよそのまんまの表現(^^;)

寅「…!!
寅「え!とらやの家はどうなったんだ?」と聞くと、
みんな大笑いしながら

おいちゃん「あんな汚い家はとっくの昔にぶち壊してしまったよ
寅「え?オレあの家が好きだったんだ
さくら「そんな古いこと言ってお兄ちゃん、フフ」さくらまで…(TT)
みんな「ハハハ」

執事とお手伝いさんが寝室のドアを開けるとその向こうで弦楽奏が奏でられている。
おばちゃん「寅ちゃんの大好きなお芋の煮っ転がしは作りましたか?
おばちゃんが作らないと美味しくないよ(TT)
お手伝いさん「はい、がんもどきの煮たのも

寅の好きなお芋の煮っ転がしとがんもどきの煮たのを用意させてあるらしい。

博たちは、寅の服や帽子、かばんが汚いといって新しいものに取り替えようとするが、
寅は、持っていかれちゃ困るといって嫌がる。しかし執事は無理やり持っていってしまう。
みんな高笑いを浮かべながらロビーのほうへ去っていく。

さくらだけ若干寅に同情している表情…。この辺の微妙な演出が憎い(^^)

寅はかばんを持っていかれたので、
寅「待ってくれよ!、おい!待ってくれ!おい!
しかしカーテンがからまって前が見えない。



とある田舎道

うなされている寅。

寝言で
寅「待って…」と言ってガバっと起きる。

田舎の地蔵の横の積み藁でうたた寝していたのだ。

寅「あ…夢か…

               


ところが、帽子とカバンをどろぼうに取られてしまったことに気づく寅。
必死で泥棒を追いかけていく。

寅「こら!待て!誰か捕まえてくれ!泥棒ー!


タイトル 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。



   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 
   わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 
   偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪



   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪





お馴染みコントの津嘉山正種さんが土手でサックスを吹いているが、誤って寅がみかんをサックスの口に入れてしまい、
いくら吹いても音が出ないで、やじ馬たちや子供たちが大笑い。というコント。津嘉山ワールドが今回も炸裂(^^)

               





帝釈天  参道

島田良介(ワット君)が高木屋さんの横で飼われているサルにちょっかいだしている。
彼はとらやに下宿している電気工事技師なのだ。いいアパートが見つかるまでしばらくの間だけ
二回に下宿することになったのだ。パチンコはかなり上手らしい。さくらたちにも人気がある。
洗濯してあげたり、掃除してあげたり可愛がっている。


とらや 店

たまたま『押し売りお断り』の札を店の前に貼っている時に、寅が同じくたまたま帰ってくる。

良介は寅を不振がり、店から出そうとする。


良介「何ですかあんた
寅「なに?

               

良介「歯ブラシとかね、ゴムひもとか、そんなものウチ間に合っていますからね、出てってくださいよ
寅「…!おい、おまえなんだ!?
良介「オレはここのウチのもんですよ
寅「冗談言うなこのヤロウ!このウチにてめえなんかいるかい!オレは見たことねえよ!
良介「オレだって見たことないな、あんたなんか
寅「チキショウこのヤロ!おい!誰かウチのものいねえのか!

すぐさま良介は110番し、警察を呼び押し売りが来ていると言ってしまう。

みんな出てきて寅のことを良介に説明している時に、通報された参道名物の『轟巡査』がパトカーを誘導してとらやにやって来る。
寅は大喧嘩。止めに入ったタコ社長も寅にやられてしまう。大慌て。

               

夜になって寅はせっかく懐かしい故郷に帰ってきたのに押し売りに間違えられたのは許せない。
と、良介を追い出してほしいとぐずる寅。

寅「どうなんだよ! えぇっ! あのヤロウが出て行くのか、それともオレが出て行くのかよ!どっちかハッキリしろよ!
さくら「お兄ちゃんわかってよ
寅 「わかってない!
博「さくらからも聞いたでしょ?
寅 「聞いてない!
さくら 「さっき言ったでしょ?
寅 「言ってない!
駄々っ子かあんたは ヾ(^^;)

このあとおいちゃんのきつーい一言。

おいちゃん「押し売りに間違われるような甥っ子を持ったこっちの気持ちだって少しは察してくれよ
さくら、ちょっと驚く。
寅、怒ってバン!とお膳を叩き

寅「オレは出て行く!そういう言葉が出たらもうおしまいだ!チキショウ!
と、立ち上がって出て行こうとするが、それより早く良介が2階から降りてきて、
良介「さきほどはすいませんでした。反省してます」とリュックと家財道具担いでお辞儀。
さくら「ねえ、どこ行くの?
良介「お兄さん帰ってきちゃったから、出て行きます。長い間お世話になりました。
   これ今月の部屋代です。ここに置いておきます



               

満男も顔を触って
良介「よお、さよなら
と、出て行く。
満男「どこ行くのー?
さくら「でったわよ。これで満足なの?

タコ社長、やってきて

社長「寅さん、フフフ!おかしかったねえ〜!税務署行っておまえが押し売りに間違われた話したらさ、
   受けちゃってさー!みんな大笑いよ!おかげで税金負けてもらったよ、ハハハ!
普通負けるか税金??

プッツン切れた寅はタコ社長を物干しに宙ぶらりんに吊るして出て行く(TT)

               


パチンコ屋で良助と再会。
流れる音楽は『憧れのハワイ航路」
良介は寅のパチンコを手伝う。さすがにパチンコ好きだけあってどんどん玉が出る。
二人とも大喜び、そのあと飲んで
『憧れのハワイ航路』を歌いながら二人して酔っ払ってとらやに帰ってくる。
上機嫌の寅は良介を下宿することを賛成する。
こうして二人ともとらやの二階に住むことになったのだ。



翌朝 題経寺 山門

御前様はさくらにその騒動のことをこう言っていた。
御前様「しかし、その青年を責めるわけにはいかんよ。なにしろあの男を見て、押し売りだと思うのは
     むしろ正常な感覚だろうからな


               

さくら「ええ…、私たちもそう言ってるんですよ
御前様「いずれそのうち一騒ぎおこさずにはすまんじゃろ、そのぶんじゃあ…
さくら「いやですわ、御前様、フフ
御前様「ハアア、ハアア、ハアア…と例の御前様笑い。

満男がその横で源ちゃんをサルの物まねをさせて遊んでいる。
さくら「こら!」っと、叱って源ちゃんの紐を解く。
源ちゃんサルになりきっているので、しつこくさくらの前でもまだ続けている。
御前様に怒られて、掃除するふり。
いい演出だねえ(^^)

               



Aワット君の恋を目撃し、応援する寅

とらや  茶の間

ようやく昼近くになって起きて来た寅。
おばちゃんは堅気の良介と比べてその生活態度を叱る。
寅は機嫌が悪くなって、御飯も食べずに、
寅「可愛い娘さんにいる雰囲気のいい店で食事してきます!はい!」と言って外へ出て行く。

そしてなにげに入ったのが柴又7丁目の「ふるさと亭」 秋田県人会柴又支部(細かい…(^^))
そこは、実は良介が密かに惚れている幸子が勤める店だったのである。



「ふるさと亭」


寅「いい娘だな、青年
良介「ああ、そうですか…
寅「生まれは信州あたりかね?
良介「いえ、秋田です
寅「秋田…ほぉ〜…
寅「年は十八九か…
良介「いえ、もう二十歳です…
寅「ほお…
このシリーズでは珍しく渥美さんが次々に食べ物を口に運んでいる。

幸子のテーマが静かに流れる。

良介「小ちゃい時にお父さんが亡くなりましてね。お母さんと弟が田舎にいるんです。
   その弟に学費を送りながら、自分は速記の学校に通って夜遅くまで勉強しているんです

寅「
良介「名前を幸子って言いましてね。さいわいってういう字なんですよ」と手のひらに指で書く。

               

寅、全てを察知してニヤついている。
良介「いや、あの…、ちょっと聞いたんです

寅、ニヤニヤしながら
寅「このヤロウ!惚れてるな
良介、タジタジして
良介「え、違いますよ
とやみくもに御飯をネコまんまにしてかき込む。

その日以来、寅は良介の恋の成就を手伝うことを決意。



雨の日の『ふるさと亭』

も良介はいつものカツ丼と冷奴を『ふるさと亭』で食べる良介。
幸子カツ丼を運んできて

               

幸子「あー…いっぱい降ってきた
幸子「お客さん傘持ってるの?
良介「いや
幸子「じゃあ、私の貸したげる。二つ持ってるから。
かまわねえ?、女もんでも

良介「ああ…


翌日

帝釈天参道

なんと源ちゃんがネクタイを締めて彼女と腕を組んで歩いているではないか!
前代未聞、天変地異、これはぶったまげ。

               

とらや 二階

良介が幸子ちゃんに思い焦がれて、ため息をついている。
満男が『電線音頭』を歌いながら遊びに上がってきて、便箋の文字を見ながら
満男「サチコサチコサチコ…サチコってだあれ??ねえ(^^;)
良介焦って紙を取り上げる。


とらや 店

さくらと博は久しぶりに映画に出かけようとしている。

店先に幸子が立っている。
寅、幸子をさくらたちに紹介。

博「ワット君!ちょっと降りてこいよ!

良介「降りてきて、びっくり
寅「なんか口きけよおまえ!
良介、幸子に「オスッ」
座っても黙っている良介に

寅「おい、はやくなんかしゃべれよ、楽しい会話しろ、会話
良介「いや。。。会話って…

               

寅「あるだろう、趣味はなんですかとか、お好きな食べ物はとか、そういう…
良介「いや、趣味ったってオレパチンコするくらいしか…
寅、良介の口真似しながら
寅「オレに言ったってしょうがねえじゃねえか、バカヤロウ〜

幸子、ちょっとテレながら、
幸子「食べ物はカツ丼が好きだねえ…
良介「うん、んとそれから…冷奴とか…
寅、そっくりかえって

寅「んなあ…、ショボタレタ会話だなあ、会話はダメかァ?
よし、じゃあ、若い者通しだ、帝釈天の方ちょっと散歩して来い、ちょっと

幸子、ぱっと表情が華やいで
幸子「私、今行こうと思ってたんです!
寅「思ってたか!うん
寅「よし、青年、おまえちょっと送ってけ、な

良介、傘を返してなかったことを思い出し、バタバタ二階へ上がっていく。
思いっきり階段で滑って落ちてくる(^^;)

幸子「じゃあ、行ってきます
良介「じゃあ、行ってきます
足を引きずりながら歩いていく良介。

寅、見送りながらニヤついて妙に目を輝かせながら
寅「これから世話が焼けるぞあの二人は




Bワット君の初デートを指南する『迷コーチ』寅


とらや 夜  茶の間

映画から帰ったさくらが『ジョーズ』か何かの再現を社長にしている。

夜にとらやに戻った良介は上機嫌で今度の日曜にデートの約束をしたとみんなに報告。

もうニッコニコである。

               

しかし喫茶店以外のことは何も考えてない良介に寅は『デートの指南』を施す。

寅「テーブルの上にコーヒーがある…。静かな音楽。
 黙って聴く。彼女は言うな…。おいくつ?
 そしたらおまえなんて答える?

良介「二十五
寅「バカ!砂糖の数だよ!
第18作「純情詩集」では寅が綾さんの質問に対して同じように答えていた(^^;)

みんなクスクス

良介「あ、そうか、じゃあ.二つ

寅「いや、それが違う。僕…いいです。甘いの嫌いだから。こういう言葉に女は弱いんだよ。
 なあ、甘いもんなんかドンドン食う奴は体に締りが亡くなっちゃうんだよ。見てみろ、おい、
 社長やおばちゃんがいい見本!

おばちゃんたちブスウ
おばちゃん「大きなお世話だよ
社長「おれだって若いころは締まってたんだよ

良介「その先はどうするんすか?

寅「決まってるじゃないか映画を観るんだよ。ただし、洋画はダメだぞ。考えてももろおまえ、カッコのいい男がスーッとした
 足して次から次へ出てくるんだよ。そうだろ、終わって電気がパッとつく。カァ〜…ひどい顔してるなあ…


良介、すねながら
良介「じゃあ、日本の映画を観ますよ

寅は、やくざ映画、ギャング映画、悲恋もの、は寒々しい気持ち、悲しい気持ちになって
早く家に帰っちゃおうって気持ちになっちゃう」

結論

寅「決まってるじゃねえか、可笑しい映画!フフ、二人でさ、腹抱えて転げまわって笑ってさ、
『あー…可笑しかった。あんまり笑ったんで私おなかすいちゃったわ』

食事はレストランがいいなあ。ケチケチしないでデザートも取ってやれよ。
今の若い子はよく食うからねえ〜!
あの、ガラスの器に入った、ほれ、あれ、何って言ったい?


さくら「え?

寅「え、アイスクリームをねじりウンコみたいに山盛りにして…
ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ出たアア…。

さくら「きたないわねえ!いやねえ、もう〜
みんな嫌がるわ、そっぽをむくわ。

               

寅「あれなんか、一口でぺロッと食べちゃってさ

そのあと公園に行く。

寅「『あ、…あんなところに花が…』『え?どこに…』『ほら、ほら、そこに』

良介は指差した方をきょろきょろ。

寅「おい!こら!ここが大事なんだよ。差出したおまえの手に娘の頬が触れる。娘が振り返る。
いいか。ここで目をそらしちゃいけないぞ。ジーッと娘の目を見る。

              

おまえが好きなんだよという思いを込めて娘の目を見る。そこでおまえの気持ちが通じる。
そこだよ!そこで最後のセリフ。『
アイ ラブ ユウ』できるか、青年!
おまえこそ、できたためしがあるのか寅(−−;)

良介「あ。。。できるかな、そんなこと

寅「そのあと、結婚式、結納は一切オレが引き受ける早い早い ヾ(^^;)

タコ社長は「さすが寅さんだよ、名コーチだよ」と褒める。
おいちゃん「経験豊富だからな
寅は「日曜日が楽しみだなあ…フフフ楽しんでますねえ〜(^^;)



そして日曜日

電車に乗る良介と幸子ちゃん。




一方とらやでは

とらや 店

朝日印刷の草野球の後、とらやでくつろいでいる。

タコ社長「寅が現役を引退してコーチに就任した
博「現役の時はダメでも、コーチになったら
 よくなったってこともありますからねえ

と寅ネタを酒の肴にして大賑わい。

               


映画館 

山田監督演出のオリジナルホラー映画を観ている おいおい、なぜそんなものを…(^^;)
山田監督上手いなあホラー映画作るの。こういうところに凝るんだよね監督さん。
う〜ん、なかなかハイレベル。あの方はなにをやらせても平均以上行くんだねやっぱり。

               

そのあと、レストランに行かず、混んでいる食堂でラーメン。胡椒出まくり(^^;)

まあ、それでもなんとか、ようやくなんとか寅が指南した最終目的地である公園にたどり着く。

幸子ちゃんは幼いころの好きだったお父さんとの悲しい死に別れの話をする。そして慰めてくれたおばあちゃんの話も…。
幸子はいつでも笑っている人になってほしいと願っていたおばあちゃんの思い出を話すのだった。


しかし、その最後に、良介は告白どころか散々じらしたあげく、

アイ ラブ ユウではなく帰りの電車賃貸してくれるかと言ってしまう(TT)

               






夜  とらや  茶の間

沈んだ気持ちで戻ってきた良介。

良介「だめでした…

寅、いろいろ聞くが…、結局告白はできなかったらしいのだ。

寅「はーあ、ダメな男だな…

               


良介は二階に上がって落ち込みまくり、そのまま何日も寝込んでしまう。

寅は参道のサルの貼り紙「このサルは腹をこわしてますからエサをやらないでください」を意識してギャグで
この男は失恋中につきみだりに声をかけないでください。寅』と、良助の寝ている二階の窓の手すりにに貼り付けて遊ぶ始末。
工員たちが向こうからそれを見てクスクス笑っている。
不審に思ったさくらが発見してすぐにそっと剥ぎ取る。




Cああ…傷心のワット君、そしてとらや二階大爆発


ふるさと亭 夜

身内から電話があり、幸子のお母さんが胃潰瘍で倒れて緊急入院することになったのだ。
今夜中に急いで帰郷することになった幸子は心が動転していた。


そうとは知らずに、落ち込んだ挙句、起死回生を狙って、必死の覚悟で『告白』にやってきた良介。
間が極端に悪い男である。


ふるさと亭に入るなり

良介「幸ちゃん、オレ…、ケッ…、オレと結婚してくれ!

               

幸子頭が真っ白になり、ワナワナ震えながら

幸子「こ、こいたな時になしてしたなこと言うの!ううう…バカ!と、泣きながら奥に引っ込んでしまう。

               

良介、必死で奥に追いかけようとするが、
幸子ちゃんの叔父さんが阻む。

叔父さん「やめろ!やめろ!やめろ!

跳ね飛ばされる良介。

叔父さん「頭大丈夫かおめえ?
叔父さん「幸子!幸子、はやく支度して

良介は幸子のこの時の苦境を知らないので、自分がふられたと思ってしまう。
そして絶望感に襲われる良介。





とらや  二階

子や襖の全ての隙間にテープを張って、ガスの栓を開ける良介。

便箋に遺書を書く。


長い間お世話になりました。今度生まれるときは…

ここでタバコを一服   オイオイオイオイオイ((((((−−;)

               


ドカーーーン!!!

二階が一瞬で炎と煙に包まれ全てが外に吹っ飛ぶ。

               


((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((|||▽||| )

びえええええええ!!

きゃあああああああ!!

なんだどうしたんだ!!??


わあああああああ!!


二階から良介がドッドドッドドドと落ちてくる。顔は真っ黒。
あんたっていったい…( ̄ー ̄;)

良介「参ったなあ…とりあえず生きててよかったね。

               

博「ワット君!奥に逃げて!


タコ社長、手提げ金庫を持ちながらパンツ姿でわめき散らしている。それってあまりにも…ヾ(ーー ;)

社長「どうした!え?爆弾でも落ちたか!!??わけわからんよな確かに…(^^;)

               

で、またもやサイレン鳴らしてパトカーがとらやに。今回2回目の参上。



この騒動の後良介はいたたまれなくなり、結局故郷の平戸に帰ってしまった。
一方、煽っていた寅も後を追うようにして逃げて行ったのだった。



このあと青山巡査と源ちゃんのサル生け捕りコントで大笑い。
高木屋さんの横(御前様によると鶴屋さんちのサルらしい)
貼り紙「サルが逃げました。見つけた方は御一報ください。薄謝を呈します」
良介や寅とこのサルをかけているのが面白い。


               

この手の貼り紙は第19作「寅次郎と殿様」の鞠子さん探しの時も山門で使われていた。



D平戸でコーチから現役に完全復帰した寅


長崎  平戸島


平戸大橋が完成したてだが、やはり連絡船に乗っている寅。

あんな状態で逃げ帰った良介のことが気になって訪ねてきたのだ。
平戸の浜尾神社でバイをしながら金を稼いで良介の元を訪ねる寅。

良介をよく知る船長に教えられて良介に呼びかける寅。

良介「ゆっくりしてってくださいよ。せっかく来たんだから
寅「いやあもう帰る。おまえの元気な姿を見リャもう用事すんだようなもんだ

ところが良介の姉さんが独身だと分かったとたん、いつものように急に態度が激変。┐('〜`;)┌
寅「なんだか喉が渇いたてきたな…んん
なんて言って、しゃあしゃあとお茶を飲みにぴったりくっついて行く寅だった。このへんのチェックはいつもながら
厳しい寅だった。


               


松浦史料博物館石段の前にある藤子さんの経営するお土産屋兼貸し自転車屋さん

良介「ほら、前に話しちゃろが、柴又の寅さん

藤子「あの方が…と会釈。

良介「うん

寅も軽く会釈。

寅、もう『できあがった目』でふらああと近づいていくのでした   ロックオンゞ( ̄∇ ̄;)

            




柴又 とらや 庭

大工さんが二人ほどでとらやの二階を直している。

火災保険もボヤ扱いなのでほとんど下りない様だ。自腹を切る覚悟のおいちゃん。
良介や向こうの家族に請求しないところがさすがだねえ。

社長「ついでにおれの工場もぶっ飛ばしてくれればよかったのになあ!なんて凄いこと言っている。


幸子ちゃんがとらやにやって来る。

秋田から戻ったばかりだと言う。お母さんの病状はとてもいいようだった。
幸子ちゃんは良介が平戸に帰ったことを未だ知らないようだった。


幸子「…どうしてですか?
さくらはそのわけを言う。

さくら「あの…実はねえ…、私たち、良介さんとあなたとの間に何かあったんじゃないかって
   思っていたのだけれど…、違うの?

幸子「あの日の良介の告白を思い出す幸子。
さくら、何かを察知して
さくら「とにかくおかけなさい。何か思い当たることある…?

幸子涙をこぼしながら大きく頷く。

               


幸子「でも…、うう…あん時は私…、あん時は…うう…あん時は私…

涙で言葉にならない幸子ちゃんだった。

               

お母さんの急病のことで気が動転していたことを、不器用ゆえにさくらにすぐに伝えられなくて
泣いてしまう幸子ちゃんに素朴で温かな人の心を感じた。
幸子ちゃんの一番きれいな心がにじみ出た清らかなシーンだった。私はこのシーンがとても好き。


さくらたちは幸子ちゃんの気持ちを聞いて、安心する。



さくらのアパート

夜、アパートから早速平戸の良介に電話してやるが、
なんとその電話に出たのは寅だった。
これは第8作「寅次郎恋歌」のバリエーション。


さくら「私…東京の葛飾の諏訪と申しますが…」柴又という地名じゃローカルすぎるんだね。
寅「ハハ、さくら、おまえか
さくら「え?お兄ちゃんなの!?
博「ええ!!びっくり仰天ずっこける(^^;)

良介のお姉さんと話をしてつい電話を切ってしまうさくら。
オイオイ良介が失恋してないこと伝えてねえぞ(^^;)





平戸港 幸橋近く  早朝

自転車をこいで食品の買い付けに行っている寅

寅「♪別ァ〜れテープを〜、笑顔で切れば〜、とくらああ〜、
 夢もぉ〜なつかあしい〜、
 あのアロハオエ〜、

 ああああ〜憧れぇ〜の、ハワイ〜、航路ぉ〜



ハンドルを持たないで、ブレーキ部分を持つ、粋な寅。


                


朝早くから別人のように懸命に働く寅、お姉さんに気に入られたくて一生懸命なのだ。

船長、その姿を冷静に観察。
一方よく通ってくる神父さんもお姉さんに気があるようだ。
いやに張り切る寅を見て、神父さん気になり船長に尋ねる。


神父「誰ですか?
船長「惚れとるバイね
神父「は?
船長「お藤さんに惚れとるとぉ
神父「あたくしがァ…?
船長「…?
神父「とんでもない、なんてことを!

               

船長「ちょ、ちょ、ちょっと、神父さん!あんたも惚れとっと?
神父、恥ずかしがって逃げていく。
船長「うわあああ!ハハハ」とついていく。
船長「ちょっと、あんた!

十字路で、二人同時に右見て左見て、渡っていく。 上手い!ご両人!

               

船長「うわ、うわと、大喜び(^^;)





とらや 茶の間

さくら、あれからも何度も良介に知らせてやろうと電話するのだが、寅がいつも電話に出ては怒ってすぐ切ってしまう。

社長「なるほど、寅さんは再び現役復帰か!こうこなくっちゃな!ああ面白くなってきたぞ!
みんな呆れる。




平戸 日曜日のミサ

平戸カトリック教会からの帰り道

               

藤子さんは寅が一生懸命手伝ってくれ、良介のケアもしてくれてとても助かるようだった。

藤子「私はね、寅さん、口下手で…思うとることが上手く伝えられんばってん…、どんなに寅さんが
   来てくれたことがどんなに感謝しているか…。これも神様のお引き合わせよ、きっと…


寅「わたくしもなんだかそんなような気が…と舞い上がる寅だった。


良介、飛ぶように走ってきて

良介「今、さくらさんから電話があってね!オレ、失恋してなかったんだ

               

寅「ほんとか…
良介「だからオレ明日の朝東京行く。お姉ちゃんよか!?
藤子「よかよ
良介「寅さん、お姉ちゃんと二人で留守番頼む!よか?
寅「よか(^^;)


藤子さんのみやげ物店 居間

寅は明日から藤子さんと二人っきりだと思っているので嬉しくてしょうがない。

寅「なんだか参ったなあ〜、フフフ。
  差し向かいで御飯を食べる。お互いに意識しているから言葉は少ない。
  『静かな夜ですね』『そうですわね』また沈黙が流れる。たまりかねて姉さんが
  『あの…私休ませていただきます』『あ、どうぞ』『おやすみなさい』

               

  丁寧に挨拶してそこを出て行く。ひたひたひたひたひた…、廊下を歩く足音、
  お姉さんは風邪をひいているから軽く咳をしている。コホンコホンコホン。
  オレは横になって、ここで静かにそれを聞いている


寅、ふと、我に帰って…

寅「まずいな…、いくら広い屋敷とはいえ、同じ屋根の下世間が黙っているわけがない。
 まして、こんなちっちゃな島だ。噂は島中にパッと広がる。
 『おい、聞いたかい?寅のやつがお藤さんと怪しいらしいぜ』『へえ〜…』
 こんな噂を聞いてオレは黙ってここにいられない。『お姉さん、長い間お世話様になりました
 あっしはこれで失礼いたします。』『あら、寅さんも行っちゃうの?』『はい』
 『
あなた、世間の噂に負けたのね…、私は平気なのに』フフフ、そんなこと言われたらオレ、
 (タオルをバシッ!!)たまんねえなあ!!フフフ!


もう行きつくところまで行っている寅の妄想でした。┐(~ー~;)┌


良介がじっとその姿を土間から見ている。

寅、顔が豹変して
寅「なんだ、おまえそこにいたのか?
良介「ええ、今帰ってきたんです

寅「あのな、オレいろいろ考えたんだけどよ、明日っからこの近くの宿屋に泊まるよ
良介「どうしてですか?
寅「いい年した男と女が一つ家でもって寝起きしててみなよ、世間が黙っていると思うかい
良介「ああ、その心配だったら要りませんよ。お姉さんオレと一緒に東京行くことになったんだ
寅「え?
良介「寅さん、すまんけどしばらく留守番してくれますか?
寅「おい!
良介「え?
寅「恩を仇で返すってことあるけどもな、こんな寂しい無人島にたった一人オレを残しておまえ平気なのか?

そこへ藤子さんが帰ってきて、幸子ちゃんに会いに行くのとやとらやのみなさんにお詫びをする意味で東京について行く
ので、改めて直々に寅に留守番をお願いするのだった。寅は、またもやさっきと態度を豹変し、ニッコニコで、

寅「え、いってらっしゃい、平気ですよ、留守番はわたくしが引き受けますから、心配なくと、言ってしまう。

               


あきれ返った良介、二階に上がりながら寅を見てつぶやくように、

良介「惚れとるばい…(^^;)



翌朝 平戸港 

 二人が出て行く船を淋しく見送る寅。


神父さんは、船を見送った後の寅が機嫌が悪いのを察知して、向こうへ遠ざかりながら…

神父「惚れとるばい…(^^;)




E幸せな若いカップルと帰ってきた寅

柴又 ふるさと亭

閉店間際時間

叔父さん言いわれ、暖簾をしまおうとする幸子。

ガラスの向こうに良介がいる。

幸子のテーマが流れる。

驚く幸子。動けないでずっと良介を見ている。

               


良介、戸を開けて入ってくる。

そしていつもの席に座る。

幸子、表情が柔らかくなり、笑って


幸子「びっくりした

良介「明日からまた、ここで飯食うからな
幸子「…うん

良介「…カツ丼
幸子「卵のかかったのね

良介「それに…
幸子「冷奴?
良介「そう

幸子、幸せそうに笑う。

               




とらや 茶の間

大きなまだ生きている伊勢エビをお土産にもらっておおはしゃぎのみんな。

お姉さんそれよりも二階の修理費全額出してやってください。保険が下りないみたいです(TT)


満男「ザリガニ
さくら「いやあねぇ、伊勢エビよぉ!フフ
藤子「5時半に起きて寅さんが魚市場で買うてきてくださったとです
おばちゃん「5時半!!?
おいちゃん「寅が…?
おばちゃん「あ、朝のですか?上手い!座布団一枚(^^;)
藤子「ええ。寅さんはいつも6時には起きて、お店ば掃除して、ついでに表の道まできれいにして、
   もう、ほんとによう働いてくださるとですよぉ

おいちゃん「へえ…寅がねえ
第5作「望郷編」の豆腐屋さんを思い出すよ、このパターンって。

藤子「あのぉ〜、小学校から大学を出るまでずっと新聞配達ば、しとんなさったとですねえ〜。
   そいで、早起きの習慣がついたとか
信じるかァ〜?、それゞ( ̄∇ ̄;)
このパターンの寅の法螺は、第18作「寅次郎純情詩集」でも綾さんが信じていた。

とらや一同、うそうそと、大笑い。

博もやって来て、伊勢エビを見て
博「うわああ!びっくりしたあ、なんだザリガニじゃないかあ!さすが血続きの父と息子(^^;)
さくら「ハハハ、バカねえ、親子そろって何言ってんのぉ〜
みんなまたまた大笑い。

               



江戸川土手

数日後、さくらと藤子さんが江戸川土手で散歩

藤子さん、ホームシックにかかっている。

藤子「寅さん、どうしとんなさるかしら…、私帰らんばいけん…。
   寅さんに叱られてしまうけん、いつまでも一人で留守番ばさせとったら…

さくら「

さくら、土手の遠くを見て

さくら「???…あら…

さくら「ああああ!!お兄ちゃんだわ!!Σ(|||▽||| )

テーマ曲盛り上がって

なんと杖を突いてふらふらになって歩いてきた寅がそこにいた。

藤子「寅さーん!!」と走り寄る。
寅「お姉さァーん」と言って倒れてしまう。

               

なんと、昨日の朝平戸を出てからずーっと飲まず食わずで上野まで来て、あとはお金がないから
歩いてきたのだった。上野から柴又は歩いたら遠いぞぉ〜。


とはいえ、夜、みんなでいろんな意味を込めてパーティを始めたとらやさんだった。

幸子ちゃんや叔父さんも参加して賑やかな乾杯。

               

そして良介は明日から電気工事の仕事を再開することになった。

良介「あ、姉ちゃん、一人で平戸に帰れっと?
藤子「うん、それがねえ…、寅さんが一緒に帰ってくださるって言うとよぉ
寅「フフフ」と照れ笑い。
良介「ええ??
藤子「なんか申し訳のうして…
寅「いや、いいんですよ。オレははじめっからそのつもりだったしね、それから、神父さんや船長さんにも
  買い物頼まれてるから、え

良介「いや、寅さん、それじゃああんまり
寅「いいんだいいんだ

お姉さん、なぜいい年をした中年独身男の寅がそんな尋常じゃない親切をするか考えてください。
もう答えは一つしかありませんよ(TT
) 一度離婚経験もある藤子さんが、そういう機微を分からない
わけないと思うのだがどうだろうか…。



みんなで乾杯。

みんなで大騒ぎ。

良介「お姉ちゃん、話があるとばい
藤子「なんね…?
二人して二階に上がって行く。

寅は長旅で疲れて転寝している。




F藤子さんの目を覚まさせたワット君の真実の言葉


とらや  ニ階

さくらが布団を敷いている。
遠慮して下りようとしたさくらに良介はいてほしいと言う。



藤子「なんの話ね、はよう言わんね
良介「お姉ちゃん、寅さんと結婚する気があっとね?
藤子「…!!
さくら「…!!!」さくらの怯えた表情。

藤子「な、なんば言うとね…あんた愕然とする藤子さん。

               

さくら、どうしていいか分からないで、顔が青くなっている。

藤子「な、なんば言うとね…
良介「もし、お姉ちゃんにその気の無かなら、寅さん平戸に来るの、断らないけん正しい(−−)
藤子「あんたの言うとること、さっぱりわからんけど…鈍感すぎ(−−;)

さくら、後ろで下を向いて、怯えている。

                 

良介「なんでそげんこつ分からんかのぉ
藤子「
良介「ええか、お姉ちゃん、寅さんお姉ちゃんに惚れとるばい
あの態度見リャ誰でもわかるよね(−−)

さくら、どうしていいか分からなくて目をつぶっている。



下では宴会で盛り上がっている中、転寝している寅が映る。

幸子ちゃんの叔父さん十八番のシューベルトの「冬の旅」から菩提樹を歌う。実に上手い!


                                  

実はこの方、役者ではなく本物の声楽家の『築地文夫さん』(洗足学園大学名誉教授)なのだ。
それがご縁があって山田組と仲良くなり幸子ちゃんのおじさん役をお願いしたのだ。
ど〜おりで歌が上手いはずだ。ど〜おりで演技の『気』が他の人と違うはずだ。


でも役者さんじゃないから、これ1回特別出演しただけで終わりなんだな、と思っていたら、
なんと第35作「寅次郎恋愛塾」でも出演されているではないか!
やっぱり第20作と同じ秋田県人。民夫のお父さん役だ。ここでも寅を民夫の先生と
間違えたりいい味を出していた。この作品では歌は歌ってくれなかった。残念…。


タコ社長「ステレオだよ、ステレオ!意味不明〜(^^;)

寅、起きて

寅「藤子さんどこいったんだよ?
おばちゃん「あ、良介さんと二階行ったよ
寅「え?これからだってのにちょっとオレ呼んでくっか

寅、そっと二階へ上がっていく。

                 

良助のシリアスな声が聞こえてきて、寅は歩みを止め、聞き耳を立てる。

良介「オレが寅さんやったらな!オレが寅さんやったら、絶対お姉ちゃんを許さん。
   好きでもなかとに好いとる顔されて、うまく利用されとるじゃなかか


藤子「やめんね!そげん乱暴か口ばきいて…、寅さんはね…、
  あんたの考えてるよりもっともっと心のきれいか人よ。

人を好きになることは心がきれいだからだよ藤子さん。
そして、だからこそ丁寧にお礼を言って、感謝して、そして断らないといけないのでは…(−−)


                 


良介「いくらきれいかてん、寅さん男たいうん(−−)

藤子「あんた、…さくらさんの前で…そげん…そげん口ばきいて…と泣いてしまう。

さくら「ごめんなさいね、いやな思いさせちゃってなんで謝るの?

                 


良介「オレは寅さんが悪いとは言ってませんよ

さくら「迷惑をかけたのは兄ですものどこが…。

さくら、今回寅は、迷惑どころか良介に対しても藤子さんに対しても大いに役立ち、心から感謝されてましたよ。
あなたは平戸での活躍を見てないでしょ。


藤子さん泣き続けてる。

さくら「藤子さん、何も気になさることないのよ優しいね、さくら。そう言うしかないよね…。

さくら、冷静になって

さくら「仮に…私の兄がお姉さんを好きだとしても、今のような気持ちを知ったら、
   兄ってそういう人間なんですよ…
藤子さん救われたね…。


                 


さくらの言ったとおり、寅はそういう気持ちに救われるところがあるが、やはりマドンナが自分のことを
好きになってほしいのはあたりまえ。さくらがそれを一番知っているのだ。



さくら、人の気配と音がして階段から覗くと

寅がゆっくり下りていくのが見える。


                 



寅、庭に出て一人考え込んでいる。



さくらも下りてきて、そっと兄の背中を見ながら、その悲しみを思っている。


                 




そして、やがて妹も悲しみの中に沈んでいくのだった。


                 


この長いシリーズの中で良介のような冷静かつ相対的な発言があったことは、私には救いだった。
第5作の節子さんをはじめ、寅の気持ちを知らず知らずのうちにマドンナが利用してしまいがちになるパターンは
いろいろな作品で多く登場するのだが、やはり、「知らなかったわ…」では済まないことも世の中にはあると思う。
この良介の思い切った発言はこのシリーズを見続ける上で私には絶対に必要だった。そういう意味ではこのシーンを
見てから先、私はとても心が安定したことを今でも覚えている。




G寅の旅立ち


翌早朝 さくらのアパート

第5作「望郷編」では『コーポ江戸川』だったのに、今回は『こいわ荘』

さくら、寅に封筒に入ったお金を渡す。
平戸からの旅費で全て使い果たしてスッカラカンなのだ。

京成の線路脇で待っている寅。

                 


寅「こんなに要らねえよ
さくら「いいのよ、ボーナスもらったばっかりだから
寅「へえー、裏の社長そんなもん出したのか?
さくら「フフ。。
寅「すぐ返すからな返したことあんのかい(^^;)



寅「んーん、なんだかめっきり冷えてきやがったな


さくら「もうすぐお正月よ


寅「うん…」

この渥美さんの「うん…」には心底しびれました。かっこいいです。



さくら「ねえ、たまにはウチにいない?みんなで集まってお雑煮食べて…、ね

                 

寅「冗談言っちゃいけねえよ。正月はこっちの稼ぎ時だい。
  オレなあ、今年は新潟の弥彦に言ってみようと思うんだ

さくら「うん

         
メインテーマがクラリネットで静かに流れる。

寅「人が出るぞぉ〜!金なんかじゃんじゃんじゃんじゃん儲かっちゃってよ、
  腹巻なんか、こんなになっちゃうよ。ハハハ


さくら「フフフ」        

                 


寅「今年は不景気だから、とりわけ人が出らァ

寅「じゃあ行くぜ、あ、藤子さんによろしく言ってくれよ。なんだか寝てるようだったから
  挨拶しねえで来ちゃった。な


と、背中を見せて去っていく。

さくら、ちょっと追いかけて


さくら「なんて言えばいいの?藤子さんに


                 



寅「…、ん…、まあ、なんか適当に言っといてくれよ、な

                 


インテーマがゆっくり大きくスクリーンに広がっていく。

線路沿いをゆっくり去っていく寅。

いつまでも見送るさくら。


                 
                 



この別れのシーンもさりげないけどじみじみいいねえ…。名作の一つだね、やっぱり。




Hそれぞれの正月風景

正月 平戸


藤子さんが走って港に行く。

なんと良助が幸子さんを連れて平戸に正月なので帰省するのだ。


                 

神父さんも興味津々でついて行く。

神父さん子供たちに年賀の挨拶をされるが、急ぎながらもきちんと一人一人に
立ち止まって「おめでとう」と言っていた。こういう演出が好きなのだ。



船長さんの船

大漁旗がひらめいている。

遠く平戸城が見える。


幸子「あの天守閣に登れるの?

良介「ああ!あそこから見る景色は最高だよ、玄界灘から東シナ海までずーっと見えるんだ
いい映像だねえ〜(^^)

                 


良介双眼鏡を船長から借りて

良介「あ、いたいた!

幸子「誰が?
良介「お姉ちゃん、あ、神父さんも来とる、あ、二人とも手を振っとるわ!」と、手を振る。
幸子「あ、貸して貸して」と双眼鏡を覗く。

船長「こら、よか、おなごば見つけたばいねぇ
良介「え??なんて」エンジン音で聞こえにくい。

船長「よかおなごば見つけたばい、おまえにしちゃ上出来!ハハハ!


幸子ちゃんの年賀状のナレーション

幸子のテーマが流れる。

平戸城の天守閣から船を望む。


幸子の声「あけましておめでとうございます。
     生まれて初めて九州に来ました。
     お正月だというのにまるで春のような暖かさで、秋田生まれの私はびっくりしています




柴又 とらや 茶の間

               
                 


さくらが幸子ちゃんのハガキを読んでいる。

幸子の声「船長さんとか、神父さんとかとても面白い人たちに囲まれて毎日を楽しく過ごしております。。

障子の向こうは雪景色。

長万部に帰省していた青山(轟)巡査が柴又に戻ってきてみんなに挨拶。
これもさりげなくいいシーンだ。

幸子の声「ところで寅さんはどうしていますか?みんなで噂しています。
     今ここに寅さんがいたらどんなに楽しいでしょうね



さくらが障子を開けて庭の雪景色を眺めている。

庭で雪いじりをして遊んでいる満男。


                 


満男、さくらに雪をぶつける。

さくら、コラッて言いながらも笑っている。



このとらやの庭の雪景色はシリーズ全体でもとても印象深く、
切ない幸子のテーマと相まっていつまでも脳裏に焼きついている。





I懐かしい一座との再会と正月晴れ

寅、田舎の農家の片隅を借りて昼食をとった後外に出る。

田舎道を柿を2つ持ちながら歩いている寅。
子育て地蔵様の頭の上にその柿を乗せる。

第8作「寅次郎恋歌」のラストの演出と全く一緒。


向こうから軽四トラックの宣伝カーの大きな声が聞こえてくる。
音楽はジョルジュ・ビゼー作曲『カルメンCarmen』の中の『闘牛士の歌』

スピーカー「皆様 毎度ごひいきにあずかっております。坂東鶴八郎一座が新春公演にやって参りました。
       座員一同初春の装いも新たに、外題も改めまして、ビクトール.ユーゴー原作、『ああ無情』、『ああ無情』
       三幕八場、その他歌謡ショー、お色気コント等、合い揃えまして…


なんだ演目は『カルメン』ではないのか(^^;)
それにしても小百合ちゃん『お色気コント』は辛かろうに…。

荷台に乗っている大空小百合ちゃんが寅を見てすぐに

                 


小百合「まあ!先生!車先生!

車が止まる。

このように走っている車の中からも、すぐに寅のことを思い出し「車先生!」と叫ぶ小百合ちゃん。
第37作「幸福の青い鳥」では彼女は寅のことをなかなか思い出せなかったが、あれはあり得ませんよ、監督さん。
どんな時でも小百合ちゃんの記憶力は抜群で、そしてなにより恩を忘れない人なのだから。


寅「よお!あんたたちかあ!ハハハ!

                 

座長「やあやあ車先生!これは異な所で
寅「座長さん、その後みんな達者だったかね
座長「はい、いつぞやの教えをかたく守りまして、日夜芸道に精進いたしております
小百合「先生、これからどちらへ?


メインテーマが流れ始める

寅「うん、町まで…、あ、そうかこれに乗せてってもらおうか
小百合「どうぞぉ!
座員「はい、お荷物を
寅「ありがとう
座員「先生、今夜お暇でしたら、私たちのお芝居を
寅「そうよなあ、他にすることもないし、じゃあ、今夜芝居でも楽しませてもらうか!
小百合「わあー!嬉しい
座長頭を下げる。
座長「娘、今夜は気の抜けない舞台だぞ」
小百合「分かってるわ、おとっつあん
寅「まあ、硬いこと言わないで、軽く行こう軽く

一同ハハハ

                 



寅たちを乗せた軽四トラックは正月の青空の下、田舎道を遠ざかっていく。


                 







 
第20作「男はつらいよ.寅次郎頑張れ!」ダイジェスト版を本日5月26日にアップしました。
この第20作は第3作、第4作同様、【本編完全版】がまだ出来ていませんが、ダイジェスト版から先にアップいたします。
それはそれで面白いかなって…(^^;)ヾ

第21作「男はつらいよ.わが道をゆく」ダイジェスト版はだいたい5月30日頃にアップいたします。



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第19作「男はつらいよ.寅次郎と殿様」ダイジェスト版
 

2007年5月20日寅次郎な日々 その314


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


間に合った懺悔と和解     アラカンさんと渥美さん、夢の競演


この第19作「寅次郎と殿様」のメインはなんといってもアラカンさんこと嵐寛寿郎さんと渥美さんの共演である。世紀のスーパースターの
アラカンさんを『心の師』と尊敬してやまない渥美さんにとってこの競演はどんなに嬉しかったか。渥美さんの少年時代、青年時代は
このアラカンさんの映画と共に歩んだといっても過言ではないのだ。アラカンさんと共演している時の渥美さんは実に目が輝き、
楽しそうだった。浮世離れした二人がかもし出す御伽噺のような異色の作品だ。そして三木のり平さんがアラカンさんの脇をしっかり
固めているののがなんとも豪華で頼もしい。

とにかくアラカンさんは何を演じても絵になる。

甘露じゃの〜っとラムネを飲むアラカンさん。三木のり平さん相手に刀振りかざして大立ち回りを演ずるアラカンさん。
手品使いのような格好でとらやに訪ねてくるアラカンさん。リヤカーでとらやに連れてこられるアラカンさん。
さくらのことを「ムスメ!聞いておりますか!」と呼び捨てにするアラカンさん。鞠子さんと二人、涙をハラハラと流すアラカンさん。
そして、風吹く夕暮れの江戸川土手を鞠子さんと二人して歩いていくアラカンさんの後姿。

特に私が好きなシーンはラムネを不思議そうに眺めながら中のビー玉をコロコロと転がして喜んでいるあの目だ。
アラカンさんは少年の目をしたスーパースターなのだ。

今回のマドンナ鞠子さんは、そんなアラカンさん演じる伊予大洲の殿様(藤堂家)の一族の末の息子さん(藤堂克彦)と恋愛結婚をした。
鞠子さん自体はそのようなことを若くして亡くなった夫から少しだけ聞かされていただけで、別段なにも心をかけることもなくつつましく
二人して東京で生きていた。しかし、殿様の方は、
身分が違うと考えたのか結婚時に猛反対し、勘当し、息子の生前はこの夫婦と一度も
会わなかったのだ。そのせいで、鞠子さんは、全く藤堂一族のことを知らずに今日まできてしまった。
殿様はこの若い夫婦の結婚に
反対したまま、彼女の夫である息子は亡くなってしまったのだ。そのことを殿様は後悔して、人目会って鞠子さんに謝りたいと願い、寅に
彼女を探してくれるように頼む。そしてその願いが奇跡的にかなってふたりはとらやで初めて対面する。

殿様「一目お会いした時から、わたしにはよく分かりました。
  あなたがそばにいてくださって、克彦はどんなにしあわせ…
泣き続ける殿様

鞠子「お父様、あたくしもね、...あた
くしも幸せでしたよ」と涙を流す。

短い言葉の中にお互いの心のふれ合いが急速に広がりお互い感慨の涙を流すのであった。もっと早くこの二人が出会っていたら…と
思ったのは私だけではないだろう。

夕暮れの中、江戸川土手を歩いて去っていく二人の姿は、なんとも美しく人生に『遅すぎる』ということなどないのだと私に教えてくれた
印象深いシーンだった。視覚的にもこのシリーズ出色の美しいカットだったと言えよう。この場面がこの作品のクライマックスであることは
疑う余地が無い。

寅との恋の関係はこの作品では薄いが、人間の出会いを通して、人生での懺悔と和解のチャンスはいつでもどこでもあることを殿様も
鞠子さんも、そして見ている私たちも知ったのだった。


大洲の町のしっとりとした美しさ、真野響子さんの若々しい美しさが、元気なアラカンさんと上手くマッチしてなかなかの佳作だ。

またこの第19作は序盤に大笑いネタ「こいのぼり」「犬のトラ
騒動がある。アラカンさんが登場してからもさらに笑いの連続である。
特に鞠子さんを寅が探す場面はこのシリーズでも最高級のギャグだ!
鞠子のテーマ曲も優しく美しい。



@【寅の帰郷と、こいのぼり騒動&犬のトラ騒動】

もちろん本編の夢は寅の鞍馬天狗!!
鞍馬天狗は寅!
杉作を助けてくれた妹に礼を言う寅。
さくらは寅を見て長年探していた兄だとピンと来る。
さくら「もしやあなたは、江戸は葛飾柴又の生まれではございませんか?
寅「え?そういうそなたは?
さくら「妹のさくらでございます
寅「さくら…
さくら「兄上様お会いしとうございました」と泣く。
寅「さくら

山岳党の一味

ボス「鞍馬天狗、今夜こそ君には死んでもらうぞ」夢の悪役でお馴染み吉田義夫さん
寅「わたくしもあなたを切るでしょう。それがお互いの宿命というものです
寅「諸君、きたまえ、ここが地獄の門です鞍馬天狗ってこういう言い回しだよな(^^;)

              

寒いのでモモシキを身に着けながらも、上条恒彦さん、源ちゃん、タコ、ボスを次々にぶった切るカッコイイ寅。
闘い終わって、
寅「杉作!馬を呼べ馬を!
馬に乗っている最中に頭巾の前がずり落ちて、
寅「さくら!目が見えない!目が見えないぞ!
さくら「
え!?
寅「
眼が見えない!目が見えない…
さくら「
え!?なに!?

             

国鉄(JR)予讃線 下灘駅

通称「海線
」にある双海町(ふたみ)の下灘駅(しもなだ)

ホームから国道を挟んですぐ伊予灘の海が広がっているのでホームからは広い海を眺めることができる。
駅のホームのベンチで、うなされている寅。(このベンチは青春18きっぷのコマーシャルでお馴染み)
駅員に起こされて大きく伸び。

              

タイトル 男はつらいよ 寅次郎と殿様

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。


今作品も17作、18作同様、♪あてもないのに〜と、3番も歌う。

   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 
   わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 
   偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


  
♪あても無いのにあるよな素振り 
  それじゃあ行くぜと風の中
  止めに来るかとあと振り返りゃ 
  誰も来ないで汽車が来る

  男の人生一人旅 泣くな嘆くな
  泣くな嘆くな影法師 影法師♪


お馴染みオープニングコントの王様津嘉山正種さんがコントの中心。カメラマンがモデルさんを使って、写真を撮っている。
通りかかった寅が、フイルムを全部ビロ〜ンと取り出して一笑いした後、危険を察知してさっさと去っていく(^^;)。
怒ったカメラマンたちがお互いに当たって、大喧嘩。というコント。

             



とらや 庭

五月の風に泳ぐ本物のこいのぼり。

博が大きな本物のこいのぼりを買ってとらやの庭でみんなで揚げている。
満男は大喜び。


さくらが犬を抱いているがみんながその犬を「トラ」と呼んでいる。
どうやら源ちゃんが拾ってきて「トラ」という名前をつけたらしい。そしてトラはとらやが気に入ったらしく、いついてしまったのだ。
トラはさくらに懐いていて、さくらの頬をペロペロなめる。(トラ羨ましい…(^^;))

             

おばちゃん「ポチにしょうよお〜、寅ちゃんが帰ってきたら怒るよぉ〜
おいちゃん「そういやそろそろ帰ってくるころだなあ…
おばちゃん「ポチかい…。あ、違った、寅ちゃんかい?」間違うか、それ(^^;)
みんな、しみじみ心配している。

そんな時、必ずといっていいくらい寅は帰ってくるのだ。

で、案の定帰ってきてみんな大喜び。
寅、満男にお土産があるとトランクを開ける。
寅「ほら、これよ」とおもちゃの小さなこいのぼりを取り出してゆらゆら泳がせる。

一同真っ青。

             

寅「ほーら、これよ、えー、たいした高いもんじゃないんだ。本来なら、こんな立派なこいのぼり、本物勝ってこようと
  思ったんだけどよ、ま、それはいずれ寅おじさんが大金持ちになってから、はいよ、ん
」と、満男に渡す。
満男「こんな小さいの?」とさくらに言う(((((−−;)
さくら「何言ってんの!お礼言いなさい
みんな本物のこいのぼりが庭で揚がっているので、とても気を使っているのだ。いち早く気を利かせた博が庭のほうに飛んで
行ってこいのぼりを降ろし始める


寅に庭を見させないように必死になって一同気をそらせる。
おいちゃんも庭のツツジが咲かないと言って寅に庭を見させないようにするが、
おばちゃんが例のごとくボケをかます(TT)…
おばちゃん「ほんとうに狭い庭だからねえ、さっきも言ってたんだよ、あれじゃあ、こいのぼりもかわいそうだっ…は!
様子がちょっとおかしいことに気づき始める寅。
寅「なんかおかしいなあ…、おばちゃんなんて言ったんだい?

             

庭から博の声
博「満男邪魔だ!あっちいってなさい」と、必死でこいのぼりをたたんでいる。

寅の耳ダンボ。
遂にこいのぼりを見てしまう寅だった。
博、ふと茶の間を見ると、寅が細い目で睨んでいるではないか。

             

一同、絶体絶命のピンチ。
そんなときに限ってやっぱりこの人、タコ社長が庭に登場。
社長「満男ちゃん、どうしたの?このちっちゃいの」と寅のお土産を指す。
満男の声「たいやきィ〜
社長「ハハハハ!上手い上手い、ハハハ!
社長、たいやきを、いや、こいのぼりを手で振りながら台所に入ってきて、
社長「さくらさん、たいやきだって、ハハ…
一同、真っ青
さくら、何かを社長に言おうとするが…
社長「お、寅さんおかえり!しばらくだったねえ。見たかい?庭のこいのぼり。いくらしたと思う?
さくら「社長さん…

寅ブスウ〜…

寅「だったら、どうしてオレがトランク開けてこいのぼり出した時にスウ〜っとおまえ言ってくれなかったんだ?え?
 あら、お兄ちゃんせっかくだけども、私たち昨日、思い切って
バーゲンセールで、本物のこいのぼりを買ってきたのよ。
 ほら見て御覧なさい。おまえにそう言われりゃオレが、それそれ、あー、こりやあ立派なこいのぼりだ。そうか、
 じゃあ、こんなおもちゃみたいなものはとってもいらねえや、なあ、よし、うらの社長ところのハナッタレガキに
 くれてやるか、ほらよ。こう冗談で済んだでしょ
済まない済まない絶対済まない ヾ(−−;)

心からバーゲンセールと決め付ける寅でした(^^;)

             

さくら、下を向いて沈んでいる。
博もさくらも寅の気持ちを考えて言えなかったと言い訳をしたからまたまた寅は、

寅「そうかいそうかい貧乏な伯父さんが安物のおもちゃみたいなこいのぼりを買ってきた、本物のこいのぼりを見せちゃ
 あいつが僻むから、隠しちゃえ!隠しちゃえ!見え透いたお世辞使いやがって、えー。お前たちはオレを哀れんでるのかぁ?
 それほどおまえたちは大金持ちかぁ!ケ!田へしたもんだよかえるのションベン、見上げたもんだよ、屋根屋のふんどしだい!

おばちゃん泣きながら
おばちゃん「あんまりだよ、そんなに言わなくたっていいじゃないかぁ…うううう
第11作「わすれな草」の『ピアノ騒動』を思い出したよ。

社長「お互い貧乏人なんだから、いがみあうのはよそうよ、な
寅「へえ〜、どこをつつとおまえそんなセリフがでるんだ?え?オレが貧乏なのはオレのせいだよ、
  
博が貧乏なのは経営者のおまえのせいだぞ!」寅って凄いこというなあ…。
社長、たじたじ…。
博、チラッと社長を見る。なかなかシビアな場面だ。
寅「へ!なにが社長だこのやろう、あんな凸凹工場潰してなあ、どっか僻地へこせ!
社長も泣いてしまう(^^;)
おいちゃん「寅…
さくら「せっかく半年ぶりに帰ってきたのに…そんなこと言わなくたって…
さくらも泣いてしまう。

寅。スッと立ち上がる。
さくら、また旅立ってしまうかと恐れながら
さくら「どこいくの?

寅、雪駄履きながら
寅「え?二階行ってちょっと休んでくるよ
寅、博を見て
寅「それ、揚げてやりゃあいいじゃねえか。せっかく買ってきたんだ…
博、こいのぼりを買ってきたことを後悔する。



夕方  とらや 二階

二階で寅がぼんやり庭のこいのぼりを見ている。

             

下にゆっくり下りて来る。

おばちゃん、犬のトラに餌を与えようとする。
おばちゃん「トラ!ご飯だよ!トラ!懲りないねえおばちゃん(−−;)
さくら、またまた真っ青になって二階を見上げると、

下りてきたばかりの寅と目が合う。

寅「おばちゃん、どうでもいいけどさあ、犬の名を呼ぶようにしてオレのこと呼ぶなよ。ったく…
おばちゃん、あわてて
おばちゃん「ごめんよ、あんまり親しいもんだから、つい呼び捨てにしちなって…
おいちゃんニコニコしながら
おいちゃん「おい、美味そうだろ、鯉の洗い
寅、ビク!嫌がる。

満男茶の間に上がってきて

満男「屋根より高いこいのぼお〜り〜
おばちゃん「あ、ほかの歌にしよう、ほかの歌に
寅「いいんだよ、何の歌歌ったって

博庭で
博の声「トラ!

寅「はい…
博の声「なんだこんなところに糞してぇ!!
寅、つい自分の股を見る(^^;)

             

博怒りながら戻ってくる
博「何べん言ったらわかるんだよ、トラのやつは!
博、寅を見て青ざめる。
寅「博オレがいつ庭で糞をした?
博「ち、違います!
寅「第一な、いくら親戚でも、おまえとオレとは血の繋がらない他人だぞ、え!
  そのおまえにオレは呼び捨てになんかされたくねえな

博「冗談じゃない、兄さんのこと呼び捨てにするもんですか。あ、あの犬ですよ。あの犬トラって言う…
寅「……」周りを見渡して睨みつける。
庭で犬の鳴き声 ワンワン
おばちゃん「あら、同じ名前だね、私ちっとも気がつかなかったわ逆効果 ヾ(^^;)
おいちゃん「でも、おまえ犬のほうはカタカナだろう意味ねええ ヾ(^^;)
おばちゃん「あ、そうねえ、寅ちゃん漢字だものねえ細かい…ヾ(^^;)
おいちゃん「そうそう、寅次郎…とお膳に指で字を書く。
寅「ヘタな芝居見たかねえよ!」びびるおばちゃん。

             

寅「わかったよ、オレと同じ名前を犬につけてトッゥリャ!トラ!ぶったたいたり、蹴っ飛ばしたりしてたんだろ!
さくらいろいろ言い訳。
おいちゃん「もう捨てちゃえその犬
おばちゃん「そうだよね。そんな犬飼わなくたって、ウチには寅ちゃんというが…、いや人間がいるんだもんね…
普通この場面では絶対間違わないよおばちゃん(TT)。
おいちゃん「そ〜うそう」と、言って寅をチラッと見る。
寅、目が怖い。
寅「…おばちゃん、今なんて言ったんだい?えー、
 よっぽど人をバカにしてなきゃ言えないぞそのセリフ
正しい(^^;)
一同沈んでしまう。

           

間の悪いことにその直後、やっぱりお馴染みトラブルメーカーのたこ社長がやって来て
社長「トラ!いるかい?トラ!トラトラァ!魚持ってきてやったぞぉ!
寅、プッツン切れて、台所に下りていく、
寅、社長を押しのけて
寅「てめえまでオレのことバカにしやがるのか!このヤロウ!
タコ社長なぜ怒っているのか分からないまま応戦。凄まじいまでの大喧嘩になってしまう。
寅は野菜を投げまくり、社長はなべの蓋を盾代わりに受けていく。シリーズ中でも
かなり激しいやり取りで、どちらかというと寅が一方的に野菜を投げて攻撃していた。

             

寅「バカ!タコ!てめえまでこのオレをバカにすんのか!

おいちゃん「やめろ寅!お前が悪い!
え???(OO;)
寅「なにい!?どうしてオレが悪いんだ!?

おいちゃん「悔しかったらな、もっと尊敬される人間になれ、そうすりゃ誰も
      あの犬にトラなんて名前つけやしねえ。それをなんだ。いい年をして、嫁ももらわねえで
      フラフラフラフラしてりゃ、まるで野良犬じゃねえか
おいちゃん…言いすぎ…(−−;)

             

さくら、その厳しい言葉に驚き、おいちゃんを見る。

寅「…、そうか…、それを言っちゃおしまいよ

結局深く傷ついた寅は出て行ってしまう。

なすすべもなく見送るさくら。


             

今回もまたまた寅は悪くない。寅の普段のいい加減な言動やフーテン気質を苦々しく思いながらも抑圧していた
おいちゃんの深層心理が回帰したのだった。第16作「葛飾立志篇」でもおいちゃんのこの手の発言があった。
身内と言うのは愛し、執着するがゆえに、時としてとても残酷な事を言うものだ。



A【鞠子さんとの出会い。大洲での優しい時間】



瀬戸内海

寅と一緒にお遍路さんたちが連絡船に乗っている。

伊予大洲

大洲の亡き夫の墓参りを終えて町の『お花はん通り』を歩く鞠子さん。
肱川河畔で鵜飼舟を見ている鞠子さん。

             

伊洲屋旅館

寅は旅館のおかみと「鵜飼」のことで大笑い。
寅曰く「浦島太郎みたいな格好して、アヒルの首にゴムテープくっつけてこの引っ張ってるやつか
おかみ「ハハハ!」

同じ旅館に泊まっている鞠子さんが墓参りから帰ってきた。
そのの沈んだ姿を見て、ちょっと気になる寅だった。
谷よしのさん扮する女中さんが夕食時、鞠子さんに鮎を持ってくる。その鮎は寅が与えたものだった。
鞠子さんは「どなた?」と聞く。
谷さん「寅さん言うて、年に一度くらいはみえる方です

             

お礼に隣の部屋を訪れる鞠子さん。

寅は遠慮することはない、食べなよ、と、言ってやる。

寅「どっから来なすったね
鞠子「東京です
寅「オレも東京だよ。へー、東京のどこ?
鞠子「堀切です
寅「菖蒲園の?
鞠子「ええ、あそこのすぐ近くの団地に…」青戸団地
寅「ああ、じゃあオレんところの近くだ。オレ京成でずーっと下ってきてね、柴又という駅で降りて
鞠子「はい
寅「ずっとまっすぐ行くと帝釈天っていうのが
鞠子「ええ!行ったことあります。参道があって、お団子屋さんがずらーっと並んでて
寅「フフ、オレんとこ団子屋だよ
鞠子、表情が柔らかくなって
鞠子「えー
寅「とらやってんだ。オレ、寅次郎ってんだけど、また行くようなことあったら寄んなよ。オレに聞いたって、な。
  まあ、もうろくじじいと歯抜けばばあで、ろくな挨拶もできねえ連中だけど、気はいいからさ

鞠子「ありがとうございます、今度きっと寄らせていただきます

             

鞠子さんが隣の部屋に戻った後、窓の外を蛍が舞っている。
寅、ハッと気づいて、壁向こうの鞠子さんにそっと呼びかける。


寅「娘さん、外見てごらん…。蛍だよ

鞠子の声「あらあ、ほんと…

涼しい風を受けながら、しみじみ蛍を眺める寅だった。

なんでもないような、それでいて心が柔らかくなるようなそういうちょっとした出会いがあったのだ。
寅は色恋だけでいつも動いているわけではない。やっぱり人の心というものを知っている。




B【殿様と寅次郎、おかしな友情】

翌日、大洲城址に立つ寅。肱川が見える。

宿で鞠子さんに鮎(600円)&お土産の佃煮(1500円)をご馳走したり、お土産を持たせたりと散在したので
財布の中身がスッカラカンになって困ってしまう寅だった。
残り500円1枚(TT)

おまけに札は風で飛んでしまう。

寅「あああああ!!」走って追いかけていく寅。

             

石垣の下で500円札を持って歩いている老人(殿様)とすれ違う。
寅は礼を言い、金もないのにお礼にラムネを奢ってやるのだった。

殿様「いやいや、左様な高価なものを」安い安い ヾ(^^;)
寅「いいんだい、いいんだい拾ったら礼するのは決まりだよ」と、乾杯して二人とも飲む。
寅「あー、うめ。どうだおじいちゃんうめえか?
殿様「んー、なかなか甘露じゃのお〜カンロって…(^^)
寅「甘露?じいちゃん面白いこというなあ昔の殿様みたいなこと

             

殿様は、ラムネやアンパンをご馳走してくれた寅の心根に感激し、お礼に寅を屋敷に招待するのだった。


殿様の家は、江戸時代、大洲を治めた旧大洲藩主『加藤家』の住宅で、大洲城三之丸南隅櫓の敷地内に建つ。
桁行12m、梁間9mで木造二階建、寄棟造。玄関は南面に切妻造で突出。まお、この作品では殿様は加藤ではなく藤堂。
この、藤堂の名前はおそらく江戸初期、大洲城を建てた、あの名武将藤堂高虎の苗字から取ったものだろう。


この場面で昼御飯を運んでくる料亭の店員さんの役で岡本茉利さんが登場!
老獪な執事役の三木のり平さんの機敏な動きが実にいい味を醸し出していた。



執事の吉田は、人のいい殿様が見ず知らずのお客さんを気に入って時々こうして連れてくるので
今回も早く帰したがったが、殿様も寅も気が合うのか馴染んでしまって、その日の晩御飯もよばれてしまった寅は、
遂に泊まることに。すっかり眠くなって床の間で寝転がってしまう寅。

             

殿様「寅次郎君
寅「はいよ
殿様「確か、東京と聞いたが、ひとつものを尋ねてもよろしいか?
寅「苦しゅうないよ。ハハ、これはそっちの言いぐさだな。なんだい?
殿様「鞠子という女を知らんかね?
寅「マリ子???、うーん、知らないな、聞いたこともないな
殿様「さようかぁ…。もはや東京にはおらんのかのお…東京にはマリ子さんはゴマンと(^^;)
寅「おらんのじゃないの…、なんだ、ばあちゃんか?
殿様「確か二十五か六…
年を聞いてすくっと起き上がり、
寅「捜したらいるかもしれないよ、何してるんだいその子?
殿様「末の息子の嫁じゃ
急に興味無くなってまた寝転んでしまう寅だった(^^;)
寅「他人のカカアか…。だったら末の息子に聞きゃあわかるじゃん
殿様「その息子は一昨年の秋死にました。生きておればかれこれ三十…

殿様はその結婚に大反対し、勘当してしまったのだ。なんせ民主主義は大嫌いな殿様だった。しかし、今はその事を
後悔し、反省し、一目会いたいと言う。会って息子の思い出話などをしたいと寅に訴えるのだった。可哀想に思った寅は自分が
探し出してやると安請け合いをしてしまうのであった。感動する殿様。

一方執事の吉田は、ずうずうしい寅を何とか帰してしまおうとする。それを見た殿様の堪忍袋が切れて、
殿様「たわけ!もはや勘弁あいならん!
執事「お許しくださいませ、みんなお殿様の身を案じてのこと
殿様「黙れ!黙れ!黙りおろう!!
なんと、刀を抜いて執事を切ろうとする殿様。
寅、、後ろから羽交い絞めにして
寅「殿!殿中でござるぞ!赤穂浪士か… ヾ(^^;)
殿様「武士の情け、御放しくだされ!
寅「殿中でござるぞ、殿中でござるぞ〜

             

執事腰をガタガタ震わせて
執事「お出会いめされ、お出会いめされ〜!殿ご乱心でござるぞ〜!
殿様「おのれ上野介ぇ〜!おいおい関係ないぞ ヾ(^^;)
廊下でむくっと起き上がり
執事真顔で
執事「宮仕えは辛いね…とスタコラ立って去っていく。

世間知らずで未だに殿様気質の殿様と、老獪な執事吉田。絶妙なバランスですね(^^;)



C【殿様の訪問と鞠子さん探しに奮闘する寅】


とらや 店

なんと、店先に背広に蝶ネクタイをした殿様がすくっと立っている。
寅を訪ねてきたのだ。おそらく鞠子さんが見つかったかどうかを聞きにきたのだろう。


三味線の音色

おばちゃん「なんだろう?
さくら「変なおじいさんねえ
おばちゃん「手品使いじゃないかい?
これ笑いました。座布団一枚(^^;)
さくら「え?フフ?
さくら「おじいさん、なんか御用?
殿様、店に入ってきて、
殿様「卒爾ながらちとものを伺いたい
さくら「はい
殿様「寅次郎殿はご在宅ですか?


           

おばちゃんやおいちゃんは、寅はいったん旅に出ると、糸の切れた凧みたいに
どこにいったかわからないんだと言ってやる。
失望した殿様はおいちゃんたちが引き止めるのだが「失礼しました
」と帰ろうとする。

と、その時、寅が店先まで帰ってくる。

殿様「寅次郎君がご帰還になりましたら…
さくら、店先にいる寅を見つけびっくりしている。
殿様、さくらを指差し
殿様「娘!聞いておりますかいいねえ〜!笑える(^^)
おいちゃん「帰りました」と店先の寅を指差す。

             

寅「よ!殿様!
殿様「寅次郎君!鞠子は見つかりましたか!?苗字も住所も知らないんだから無理だよ ヾ(^^;)

寅はそんなことすっかり忘れていたが、見栄を張って見つけているふりをついしてしまう。

寅「えー…、んん、一生懸命探してるんだよ、もう見つかる。意外と手間がかかちゃって、
  見つかるんじゃないかな、こうなったら、うん
適当〜。その場しのぎ。嘘八百(^^;)
殿様「しかと左様か!?
寅「しかとさよう、しかとさよう、うん、へへ

さくら「お兄ちゃん、どなた?このおじいさん

寅「あ、このおじいいちゃんなあ…!!
寅、急に殿様だったことを思い出して、真顔になった寅は、スケさんカクさん調で、
寅「さがれ!おじいちゃんとはなにごとだ!無礼者!
  畏れ多くもこの方をなんと心得る!
  伊予は大洲五万石の城主
藤堂久宗様であらされるぞ!!
よく覚えてたねフルネーム(^^;)

みんなちょっとびびる。

寅「
頭が高い!団子あきんど頭が高い!コラア!タアー!!団子あきんどは笑いました(^^)

寅の大声も手伝ってすっかりみんな恐縮する。
殿様「もうよい
みんな頭を下げる。

殿様「
大洲の藤堂であります
寅「ハハアー

一同またとりあえず深く頭を下げる(^^;)

             

殿様「年寄りの切ない願い事叶えていただけますよう、ご家族の皆様方、どうかよろしくおたの申します
おばちゃん「お籠」で帰ると思い込んでいる。(^^;)
見送る源ちゃん「下にィ〜!下に。下にィ〜!下に
ギャグです(^^;)

孫の車に乗り込みながら
殿様「寅次郎君、吉報を待っていますよ



D【殿様と鞠子さん、涙の対面】

とらや 茶の間

とはいうものの。寅はまったくどう探していいか分からない。ほとほと困り果てる。
みんなで相談するが、博は冷ややかな反応だ。今は民主主義の時代。
殿様の願いだからって特別扱いする必要はないと言い切る。


寅「民主主義ってのは殿様嫌いなの
博「好き嫌いの問題じゃありません。歴史の流れです
寅「理屈じゃないんだよおまえ、そういう好き嫌いって言うのはさ。オレウナギ大嫌いだろ。
  お前ウナギ大好きじゃない。それも歴史の流れかそれもぉ〜
寅は第18作、第25作でウナギを食べる。

寅の聞いたところによると、末っ子の三男を一番可愛がっていた殿様は、その恋人が身分違いだったのを
気に入らなくて勘当したとのこと。


おばちゃん曰く「古いねえ!」(^^;)
社長「ということは、マリ子さんと殿様は今まで会ったことも見たこともないってことか?寅さん
寅「そうそう
おいちゃん「会ったってどうってことないんじゃないのかあ?
寅「おいちゃん、どうしてそんな冷たいこと言うんだよ
おいちゃん「どうして?
寅「これは例え話だよ。
  オレが所帯を持とうとする女が見つかる。しかし、身分違いだというんでおいちゃんたちは反対するよ

おいちゃん「しやしないよ、フフ
寅「例え話だと言ったでしょ
おいちゃん「ん、そうかそうか、ん、それで?
寅「しかし、オレはその女と一緒になっちゃう。民主主義だから
おばちゃん「もちろんだよぉ〜、一緒になればいいじゃない
寅「しかしな、おばちゃん
おばちゃん「ん?
寅「オレととらやはそれっきり喧嘩別れだよ。どこか遠くの町で所帯を持つ。5年6年暮らすうちに、ある日突然電報が来る
おばちゃん「あら、なんだって?
寅「トラジロウ ヤマイニテシス。… 侘しい葬式だ。変わり果てた姿で白木の棺に入って帰ってくるオレ。
 『寅ちゃん、こんな姿になってしまって…』おばちゃん、その時は泣いてくれるだろ?

おばちゃん「もちろんだともと、半泣き(^^;)
寅「一周忌、三回忌は瞬く間に過ぎ、それにつけても思い出すのはオレの嫁さんのこと。せめて一目会いたい。
 会って、両手を突いて礼を言いたい。トラジロウの奴がお世話になりました。あなたのような美しい、やさしい人が
 おそばにいてくれたからこそ、寅の奴の晩年はどれほど幸せであったことか…。なあ、おばちゃんこの気持ちも分かるだろう?

おばちゃん「分かるとも…本泣き(^^;)

             

寅「ん、それが分かれば、今の殿様の気持ちも分かる
みんな頷く。
社長「なるほどねえ…

とは言うものの、

寅は、どうして鞠子さんを探していいか分からないでほとほと困ってしまう。
寅「一軒一軒訪ね歩くか東京。え?

博の計算によると東京中のすべての家を回るには100年かかるらしい(^^;)
みんなビックラ仰天。


翌日 帝釈天参道

翌日から、寅は源ちゃん引き連れてとりあえずとらやのすぐご近所から探し始める(^^;)
題経寺山門に貼り紙『尋ね人 マリ子 発見の方はとらやにご連絡下さい。薄謝をていします

おいおい、せめて『鞠子』という漢字や苗字くらい殿様から聞いておけよな寅(−−;)

寅たち、てんぷらの大和家に来て

寅「おい大和家、おめえ、マリ子って女知らねえか?
大和家「ウチにいるよ」
寅「!!年はいくつだい!?
大和家「七十五六かな、オレのおばあちゃんだよ」
寅「バカ

結局その後江戸家でも聞いて、とらやでも聞いているバカな寅でした。
おばちゃん「無精だね考えることが」とあきれ返っている。

夕方遅くふらふらになって源ちゃんに肩を支えられて帰ってくる寅。
這うように階段を上がって、そしてずり落ちてしまう寅。


              



翌日

題経寺貼り紙『無断貼り紙を禁ず 題経寺 山主そらそうだ…((((^^;)


とらや 店

寅は、すべてを諦めて、殿様に会わずに旅に出てしまうことを決意。
さくらは引き止めるが、寅は殿様を騙したようなものだと逃げ出すのであった。
みんなに気の毒がられて、励まされる寅。


寅「そうだなあ…人間の運命なんてわからないもんなあ…。オレだってよ、いつかどっかでいい女に
 巡り合うかもしれねえもんなあ。例えばの話さ、この敷地またいだ所でいい女にばったり会って、
 その女と所帯持っちゃうかもしれねえ、な

さくら「そうよ
寅「ま、そういったようなことを信じて生きて行こうじゃないか、はあ〜.…」と元気がない。
さくら「早く帰ってきてね

             

寅「うん」しょぼしょぼ出て行く寅。
鞠子さんの声が参道から
鞠子「あらああ!

寅、はっと気づいて
寅「よう!」指差して

寅「大洲の宿の!
鞠子「あー!いらしたんですか!

さくらたち、なんだか分からずおろおろ(^^;)

寅「今オレ戻ってきたんだよ!出た〜嘘ばっか(−−;)
鞠子「その節はいろいろとありがとうございました。お土産までいただいてしまって
   あの翌朝お礼に伺おうと思ったんですけど、でもよかったあ!お会いできてぇ!


寅、目を輝かせながら
寅「運命だなあ〜!
鞠子「ほんと!わかんないもんねえ〜
寅「う〜ん

             

とらや一同顔を見合わせ????
寅「さ、入んなよ、ここオレんちだ。さささ
みんなポケエ〜…
寅「おい、何ポンヤリっとしてんだよ、お茶。おばちゃん団子出して団子団子

さくら「お兄ちゃん、どなた?

寅「これ、オレの妹。うん。それで後ろにいるのは旅先で話したでしょ。もうろくジジイ。それで歯抜けババア。
 で、これが裏のタコ社長だよ。フフ



寅「こちら、…あれ??オレあんたの名前知らねえんだ。あんたなんて言うんだい?
鞠子「堤鞠子です
寅「ツツミ マリ子さんニコ〜。
鞠子「突然お邪魔しまして。大洲ではお兄様にすっかりお世話になってしまって、
   一度はご挨拶をと、思っていたんですけど…

寅「まあ、その辺で、ね。いいお名前だ。ツツミ マリ子さん。…!!
鞠子さんをしげしげ眺め、寅そっと社長につぶやく

寅「社長…、偶然だねえ、フフこのしぐさと表情(^^;)

             

社長も笑って「この人がそうだったりして、フフ
寅「ハハハ!!
一同大笑い
鞠子「????

鞠子さん笑いながら
鞠子「どうしたんですか?
さくら「あのね、ウチでマリ子さんという名前の方探していたもんだからちょっとびっくりしちゃって、フフフ
おばちゃん「驚いちゃったぁ〜
さくら「さあ、どうぞ
さくら「マリ子さん大洲にお住まいですか?
寅「違うよぉ
鞠子「私は東京です。あのー、大洲には死んだ主人のお墓があるものですから…
社長、口をあんぐり
鞠子「それでたまたまお兄様と

寅「
おいちゃん「え?それじゃあ死んだご主人は大洲の方ですか?
鞠子「はい、そうですけど…
寅「…、え?」と座り込む。
寅「ご亭主は大洲の人?

鞠子のテーマ流れる。

寅「ご亭主の名前は何て言うんだい?

鞠子「藤堂…克彦と言いますけど…と、寅を見てさくらを見る。

一同「

             

寅、声が若干震えながら
寅「もしかしてご亭主のお父っつあんってのは大洲のお殿様
鞠子「ええ…、そんなふうに聞いてますけど…と周りの顔を見ている。
鞠子「どうして…?

音楽高まって

寅の目が輝き、立ち上がり

寅「やった!見つかった!!さくら!見つかったよ!

さくら「よかったわー!

みんな喜び興奮している。

             

寅「さくら。殿様に電話しろ!

寅はおおはしゃぎで参道を駆け抜け、殿様が題経寺にタクシーで来るから
源公を迎えに行かせるようにと御前様に伝えるが、御前様は信じず
御前様「なにをバカなこと言うとる。いい年をしてチャンバラごっこなどしょってぇ〜だそうです(^^;)

             

タクシーを降りた殿様をなぜか源ちゃんが引くリヤカーで
下に〜!下に〜!」っと言いながら連れてくる。
タクシーを降りずにそのままとらやの前まで来ればいいだけの話なんだが ヾ(^^;)

             

一方鞠子さんは、たまたま柴又に訪ねてきただけで、突然こういうことになった事に対して
戸惑いを隠せないでいる。いまさら会っても何を話せばいいか分からないと困惑している。

とらやに到着した殿様、座敷に上がり。正座。
厳粛な空気が漂い、ちょっと恐縮している鞠子さん。
殿様「克彦の父です…

             

鞠子「
殿様「鞠子さん
鞠子「はい
殿様「克彦が大変お世話になりました。ありがとうございました」と、静かに頭を下げる。

鞠子さん、殿様を見つめ、静かに頭を下げる。

涙を流す殿様。

寅もさくらも緊張している。

その様子を見つめ、下を向く鞠子さん。

そしてもう一度そっと殿様を見つめる。


             

殿様「一目お会いした時から私にはよく分かりました。

殿様「あなたがそばにいてくださって、
   克彦はどんなに幸せだっ……
とハンカチで顔を抑え泣いてしまう。

みんなも感無量になっていく。


            

鞠子のテーマが静かに流れる。
鞠子さん、目に涙を貯めながらそっと顔を上げ、

鞠子「お父様…、わたくしもね、わたくしも幸せでしたよ…」と泣いてしまう

             

寅、さくらのハンカチを借り、泣いてしまう。背中を向けて肩を震わせている寅。

みんなももらい泣き。

             

そのあと二人は縁側でしみじみ打ち解け、いろいろ話をしたのだった。
工場の塀からさくらと博が微笑みながら覗いている。

おばちゃん「お殿様は東京は初めてでいらっしゃいますか?
鞠子「若い時度々いらしたことがあるんですって
おばちゃん「やっぱり参勤交代で」そんなことよく知ってるね、おばちゃん(^^)
殿様「あー、さようさよう。東海道五十三次、下にぃ〜、下にぃ〜
鞠子「フフフフフ!
おばちゃん「??何が可笑しいの?
鞠子「だって冗談ですよ、フフ
おばちゃん「え、まあ、いやですわ
鞠子「参勤交代だなんて、フフフ!
おばちゃん「お殿様、お人が悪い、フフフ、いやですよフフフ
みんな大笑い。

夕焼けの中、江戸川土手を歩く殿様と鞠子さん。輝くように光る彼らの背中。
見送る寅とさくら。


             


高まる鞠子のテーマ


殿様は鞠子さんに会い、心から昔の過ちを謝ることが出来た。これは殿様の人生の救いであり、
鞠子さんの人生の救いでもあった。寅は二人の人生に大きな手助けをしたのだ。
人生での懺悔と和解のチャンスはいつでもどこでもある。そして遅すぎるということは決してないのだ
このことを殿様も鞠子さんも、そしてこれを見ている私たちも知ったのだった。





その後青戸団地にバナナをお土産に持って鞠子さんを訪ね歓談する寅だった。

その頃とらやでは殿様の長男がとらやにやって来て、籍も外れている以上鞠子さんと完全に
関係を無くしたい旨を伝えに来たのだった。そして失礼にも手切れ金を無理やり置いていったのだ。
さくらたちはそのことを寅には内緒にする。



E【殿様から寅へ。二つのお願い】

夕方 とらや茶の間

帰ってきた寅は昼に訪問した鞠子さんの部屋を説明する。亡き夫の蔵書や遺影を大切に
して飾ってあったそうだ。顔は殿様そっくり。鞠子さんの想いがその部屋に未だ残っているかのようだった。


おばちゃん「よっぽど愛し合ってたんだよ二人とも
博「でも、まだあの人も若いだし
おいちゃん「そうそう、いつかまたいい人見つけて再婚しなくちゃ
おばあちゃん「ほんとだねえ」
寅、寝転がりながら、ちょっとニヤついている。
さくら「でも…、難しいでしょうね
博「何が?
さくら「仮によ、いい人が鞠子さんの前に現れたとしても、亡くなったご主人のことぷっつり忘れられるかしら?
博「それは時間が解決するだろう
さくら「仮によ、いい人が鞠子さんの前に現れたとしても、なんかの拍子でふと死んだ人のこと思い出したらきっと辛いわよ…

             

社長「第一男のほうがたまらないよ。『あ!今こいつ前の亭主のことを思い出してる』なんて考えたら、こらもう
   気が狂いそうになるよな博さん

博「そうでしょうけどね

寅「ケッ!だめな男たちだねえ、…
社長「どうして

寅「いいか、男の気持ちってものはな、そういうもんじゃぁないんだよ。うん。
  むしろこっちから察してやらなけりゃいけない。
  『おまえそろそろ亡くなったご亭主の命日じゃないかい』『あら、ご存知だったんですの?』
  『黙っていてもおまえの素振りをみてればなんでも分かるよ。構わない。さ、お行き。
  今朝、郵便局からお金を下ろしてきました。(腹巻からお金を取り出す真似をして)これは大洲までの汽車賃と弁当代。
  これはお寺へのお布施。これは少しだけれど、亡くなったご亭主に花でも差し上げておくれ。オレからだと言ってね』
  『あなた、ごめんなさい』『ばかだねえ、なにも泣くことはないじゃないか。さ、お行き』
  これが男の気持ちなんだよ

  
いるかなあ…?そんな仏様みたいな人(−−)

             

寅、社長を見て
分かるか?
博を見て
寅「え?
さくら「そんな人と結婚できたら幸せでしょうね
寅、ニッコニコで
寅「そういうこと。うん、フフフ
一同納得している。
寅「さて、じゃあこの辺でオレはお開きとするか。お休み
土間に下りて
寅「♪妻は夫をいたわりつ、夫は妻をしたいつつううう〜、頃は六月中の頃〜」と二階へ上がっていく寅。

博「自分のこと言ってるんですね
社長「オレにはできないなあ…。例えばオレの女房に死んだ亭主がいたとして命日に花かなんか持って
   墓参りに行く。あ、ちきしょう!考えただけで、血圧が上がっちゃうよぉ!

さくらたち「フフフ
遠くから奥さんの声「お父ちゃん!」
社長「おー!
奥さん「早くお風呂入ってよ!片付かなくて困っちゃうんだよ!」
社長「うるせえ女だな」と裏へ行く。
おばちゃん「愛してるんね、あれでも…
おいちゃん「なあにが愛してるだ…、ったく」と人事ながら照れるおいちゃん。
さくら「フフフ



数日後 とらや 店

殿様の執事の吉田さんが、ドデかいお土産を持ってとらやにやって来て殿様から寅への手紙を託す。

執事「寅次郎様にお渡し下しますよう
と、すたこら芸者さんを伴って去っていく。

             

執事「こずえちゃん、おとなしくしてたかい?」たじたじ
芸者「バカねえ、なにがこずえちゃんよ、フフフ」
執事「バカ、なんで来るんだ」とすたこら逃げていく。
何しき来たんだろうね、このお人。


夜  茶の間 

博、茶の間で寅や、みんなに殿様からの手紙を読んであげている。

博「拝啓、車寅次郎殿…略(^^;)陳者(のぶれば)寅次郎殿にお願いの儀、之有り候えば、…、
  兄さんにお願いがあるそうですよ

寅「お願い?冗談じゃないよまた人探しか?フフ、こっちはおめえ、50軒歩き回っちゃって目回っちゃったよ
博「一つ、大洲に戻りしより、心優しき鞠子の面影胸裏を去らず、大洲の屋敷に鞠子を招き、父と呼び、娘と
  答えて暮らすことあたうれば、先短き年寄りの幸せ、これ過ぐるものなしと、存じ候


さくら「つまり…鞠子さんと大洲で暮らしたいっていうこと?
博「それを兄さんの口から話してほしいと、そういうことですねえ
寅「うん、それはいいんじゃない。あそこだったら空気はいいし、水はきれいだしさ、屋敷が広いから
 鞠子さん伸び伸び暮らせるよ、うん、田舎だから退屈するかも知れないけどね。でもああいうとこはな、
 メガネかけて小理屈並べて女を騙すあの手の男がいないからいいんです、うん。
 じゃあ、オレ、これ返事してやるわ

博「ああ、待って下さい。二つ目のお願いというのがあるんです
寅「なに?
博「一つ、鞠子、克彦を喪いて、早三年、残る生涯を克彦の思い出に浸りて送るべきにあらず、むしろ
 新しき伴侶を得、明るく楽しき家庭を築いて…

寅「なんだいなんだい、分かんないよ、意味
博「鞠子さんの再婚のことについて書いてあるんですねえ…

一同緊張

寅、ちょっと不機嫌になり、横を向く。
寅「誰だ相手は?誰、相手…

             

博もさくらも黙っている。

さくら「読んだら
博、寅に気を使いながら
博「じゃあ読みます。…すなわち私の友人にて最も人格高潔、清廉潔白なる人物、車寅次郎君こそ、
  鞠子の生涯の伴侶にもっともふさわしき…、あれ???


寅、博の横にへばりついて手紙を凝視している。
さくら、びっくりして唖然。
博、わが目を疑いながら、寅を見て、手紙を見る。
博「変だなあ…変って…なにもそこまで ゞ( ̄∇ ̄;)

             

さくら、自分の目で確かめるべく読み返す。
おいちゃん、ぱっとさくらの持ってる手紙をとって
おいちゃん「なにかの間違いじゃねえのか?」と再度黙読し始める。
おいちゃん「車寅次郎君こそ鞠子の生涯の伴侶に…

寅、おいちゃんから手紙を取って、両手で広げて持ちながら、声を震わせ

寅「これはどういう意味なんだ…??

さくら「あのね、お兄ちゃん、大変なことが書いてあるのよ…。
   お兄ちゃんさえよければ、将来鞠子さんと一緒になってほしいって…


ちょっとニュアンスが違うぞ。あくまでも殿様が、外野の立場としての希望であって、
当事者の鞠子さんの気持ちは置いといての話だから、ちょっと片手落ちの話なんだぞさくら。


みんな沈黙して下を向く。


寅、手を震わせながら、手紙を積んである座布団の上に丁寧に広げ、端を座布団の下に巻きつける。
意味不明の行動、体が若干震えている。
←意味不明の行動(^^;)でも気持ち分かるなあ〜。

寅「あの…大洲まで速達一番早いの、どれくらい時間かかるかなあ…もうすっかりその気(^^;)

博困った顔

さくら「そ、そんなに急いで返事出さなくてもいいんじゃないの?」と焦る。
さくら、肝心の鞠子さんの気持ちぜんぜん聞いてないぞ ヾ(^^;)

博「もっとゆっくりと考えて…っていうか、鞠子さんの気持ちが…(( ヾ(^^;)

寅「え…、だけど殿様年取ってるからイライラして待つんじゃないかなあ…
だから殿様じゃなくて鞠子さんの気持ちが…((( ゞ( ̄∇ ̄;)

おいちゃん「落ち着け落ち着け

             

寅、極度の緊張で寅「なんだか、ちょっとくたびれちゃった、少し上で寝るわ…」と土間に下りて、二階に上がっていく。

ちょうど何も知らずに同窓会からニコニコ帰ってきたおばちゃんが
おばちゃん「同級生がみんなおばあちゃんになっちゃってさ、孫の話ばっかり。
       寅ちゃんも早く結婚しとくれよ
」と上機嫌。

寅、夢遊病者のように二階に上がりながら
寅「まだそこまでは考えられねえなあ〜…頭が出来上がってます┐(~ー~;)┌



翌日


寅は小岩でぬいぐるみのバイ


納涼大会 水元公園の貼紙


すっかり四国に引っ越すつもりでバイをしているのが笑える(^^;)




東京港近くの鞠子さんの会社

さくらが鞠子さんに会いに来たのだ。

鞠子「あらあ、嬉しい、先日はどうも
さくら「こんにちは
鞠子「どうして?私に何か?
さくら「うん、ちょっとご相談があって…。電話でと思ったんだけど、
   兄がそれじゃ失礼だからどうしても行け行けっていうのよ


             



F【鞠子さんの選択と失意の寅】

夕方 とらや 店

寅が小岩でのバイから帰ってくる。

鞠子さんが茶の間に来ている。

鞠子「お帰りなさい
寅「ああ…??
鞠子さん、台所から暖簾越しにお辞儀。
寅、目を輝かせて

寅「よお…
台所に来て
寅「なんだ、来てたのか…
鞠子「ええ、ちょっとだけのつもりで伺ったら晩御飯までごちそうになることになっちゃって

寅、超わざとらしく
寅「さくら、何か用だったの?お前

さくら、ちょっと戸惑いながらも

さくら「ほら殿様の手紙のこと

寅「あ、あれか、ん

寅、お茶を飲みながら、小さな声ですばやく

寅「二つとも聞いたの?

二本指を密かに立ててさくらにアピール。

             

さくらも小さな声&早口で

さくら「ううん、ひとつだけ

寅「ひとつ

鞠子「なに?鞠子さん気になる。

さくら「さっきの話。お兄ちゃん。鞠子さんはね、大洲で暮らすのは少し考えさせてくださいって
寅「そらあ、そのほうがいいよ。ゆっくり考えて返事したほうがいいよ
鞠子「ええ

             

寅「まあ、あの爺様と顔つき合わせて暮らすのも考えものだし、ゆっくり、考えたほうがいいんんじゃないの

鞠子「私…話そうかな…

鞠子「結局、私の結論は決まってるようなもんだから、言ったほうがいいのよ
寅「はい!」無声音(^^;)
鞠子「でも、なんだか恥ずかしいなあ…
寅「いいんじゃない、なにしゃべっても…。あの連中邪魔かな?寅ドキドキ
鞠子「ううん、いてもらったほうがいいの
鞠子「じゃあ、思い切って寅さんに話しちゃうけど

寅「……

鞠子「いつか…大洲で寅さんに会ったでしょう。とっても優しい気持ちに触れて、
  私、胸の中が温かくなったような気がして…、そのときとっても素直に、
  そうだ、私結婚しようと決心ができたの…


寅「誰と…?」沈む目

鞠子「今、会社で働いている人

鞠子のテーマがゆっくり流れる。

寅「

             

鞠子「もちろん、今年とか来年だとかいうんじゃないけれども、彼は私の気持ちの
   整理がつくまで待つって言ってくれてるの


さくら、悲しい顔になる。

             

…が、なんとか気を取り直して
さくら「よかったわねえ。あなたが幸せになることを亡くなったご主人だってきっと願ってらっしゃるわよ
鞠子「ありがとう。それは主人の生まれた静かな町でお義父様と一緒に暮らす生活にもとっても魅力は
   あるけれど、でも私は若いんだし、どんな人生がこれから広がるかも分からないし、たとえ苦労が多くても
   そんなふうな生き方を選ぶべきだって、そんな風に思うのよ


さくら強く頷いている。

鞠子「だからね、寅さん、義父には申し訳ないんだけど、断ってくださる?
寅「うん、いいよ」と言いながらも、沈んでいく心を隠せない寅だった。

もうひとつの用件とはなんだったのか気にかかり、問う鞠子さんに
さくらは殿様が鞠子さんに縁談を持ってきたことを伝える。


鞠子「あ、そう…フフ、どういう人?

さくら「お義父様の知りあいの方で、とってもいい方らしいんだけど、
   でも今のお話ならお断りするより仕方ないわ。ねえ、お兄ちゃん


寅「え…、うん、そうしよう。な。
  ま、そらあ、相手の男はがっかりするだろうけれどしょうがないやね


鞠子さんがいるにもかかわらず、フラフラしながら階段を上がっていく寅。

さくら「お兄ちゃん、御飯は?
寅「
おばちゃん「おなかすいただろ
寅「なんだか疲れちゃって、飯も食いたかねえや…、二階でちょっと横になるよ…
さくら、悲しい顔で寅を見上げている。

鞠子「どうしたんだろう…寅さん、急に元気なくなっってしまって…

さくら、下を向いている。
おいちゃん「あいつはね、見かけは頑丈そうに見えるけど案外そうじゃないんですよ

満男を工場に呼びにいくさくら。
そして、庭で一人兄を想い、悲しみにくれるのだった。


             



G【旅立つ寅の言葉とさくらの涙】

とらや 店

失意の寅が淋しく柴又駅から旅立った後、さくらは、丁寧に鞠子さんの気持ちを殿様に電話で伝えるのだった。
電話口で悲しみに耐えながら一生懸命「はい!」と返事をする殿様。
電話を切ったあと、沈んでしまうさくら。


社長、横に座りながら

社長「殿様の夢も、寅さんの夢も、一瞬にしてパーになったわけか…

激しい雷雨

              

社長「別れ際に寅さんなんか言ってたかい?
さくら「鞠子さんのこと心配してた…
博「なんて?
さくら「駅のホームで柱にもたれながらね、
  『あの人と結婚する男は、死んだ亭主のことでやきもちなんか焼かねえだろうな…、』なんて



博「大丈夫だよ、そんな人じゃないからこそ、鞠子さん結婚する気になったんじゃないか
おばちゃん「そうだよぉ


さくら「うん、私もそう言ったのよ。そしたらね、…、
   ちょうどそこへ電車が入ってきたんだけどね。

   お兄ちゃん電車に乗りながら『でも、ほんとにそんな男っているのかな』って…、
   とても信じられないような顔でね…はう...うううう
とこみ上げてくる涙。


             



遂に堰を切ったように下を向き泣きじゃくるさくらだった。


             

3人でそっと帰っていくさくらたち。

残されたおばちゃんたちも心が沈んで行く。
泣いてしまうおばちゃん。


             


兄の悲しい恋の行方を、もう何度も見てきたさくら。
寅のその一言にこめられた鞠子さんに対する想いが、悲しくさくらの胸に染みていった。
繋がりの深い兄妹。兄の報われることのない恋は、そのままさくらの深い悲しみなのだ。




H【再びの大洲訪問と殿様との日々】

夏  伊予 大洲城址

寅は再び大洲に立ち寄り、淋しい殿様にを慰めようとしたのだが、
殿様にいつまでも引き止められてがんじがらめに幽閉されている寅。
遂にさくらに電話し、SOSを発信している。


寅「おまえがな、迎えに来てくれないとオレは一生ここで暮らすことになるかもしれねえんだ
なんて末期的なことを言って嘆くのだった。

             

で、やっぱりすぐに執事の吉田さんに見つかり
執事「あなたお屋敷にお帰り下さい、お殿様がお呼びです
寅「やだよ。オレは東京帰るんだい」とスタコラ去っていく。

             

執事「またそんなことをおっしゃってぇ〜、お願いでございます。
   お殿様はあなたがおそばにいらっしゃるとことのほかご機嫌麗しく
」と追いかける。
寅「言っとくけどなあ、おい、オレはここの殿様の家来じゃねえんだよ!
執事「それはよくわかっております。あ、そうだ。今夜宇和島で花火がございます。
   大洲美人を車に積み込みましてワッと繰り込み

寅「大洲美人、もう結構、どおせ『お駒』か『とんぼ』だろ、ツラ見るのも暑苦しい!

寺尾聡さん扮するお巡りさんも執事に言われて自転車二人乗りしながら寅を引き止めるために追いかける。なんだかんだ
言っても
寅は殿様の心根が好きなんだね。逃げながらも付き合っているのが寅らしくて面白い。

夏真っ盛りの大洲城址である。

メインテーマ盛り上がって

             






 
第19作「男はつらいよ.寅次郎と殿様」ダイジェスト版を本日5月20日にアップしました。
この第19作は第3作、第4作同様、【本編完全版】がまだ出来ていませんが、ダイジェスト版から先にアップいたします。
それはそれで面白いかなって…(^^;)ヾ

第20作「男はつらいよ.寅次郎頑張れ!」ダイジェスト版はだいたい5月24日頃にアップいたします。



【寅次郎な日々】全48作品ダイジェスト版のバックナンバーはこちら

【寅次郎な日々】全48作品マドンナ制作年度順






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