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寅次郎な日々

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ご注意) このサイトの文章には物語のネタバレが含まれます。
まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。



                 

第15作「男はつらいよ.寅次郎相合い傘」ダイジェスト版(2007年4月30日)

第14作「男はつらいよ.寅次郎子守唄」ダイジェスト版(2007年4月29日)

第13作「男はつらいよ.恋やつれ」ダイジェスト版(2007年4月20日)


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310

                          
『寅次郎な日々』バックナンバー





第15作「男はつらいよ.寅次郎相合い傘」ダイジェスト版
 

2007年4月30日寅次郎な日々 その310


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


物語の勝利. ― 渡り鳥たちの栄光 ―


山田洋次監督の中で代表作と言えば「幸福の黄色いハンカチ」になるのだろうが、山田監督には実はもうひとつ「別枠」があるのだ。
それが「男はつらいよ」シリーズである。2種類の違った種類の映画たちをほぼ同時にどちらも同じ比重で、同じ気持ちで!
作ることが出来ると言う類まれな、ある意味変わった才能の持ち主である山田監督は、それゆえにこの「男はつらいよ」シリーズの中でも
神様の気まぐれに遭遇し、もう一つの代表作となった「寅次郎相合い傘」を生み出したのである。なんとも幸福な方だ。

ちなみに、この「相合い傘」が1975年封切り。「幸福の黄色いハンカチ」が1977年封切りである。

全てはタイミングの妙だ。「寅次郎相合い傘」はそのような奇跡の作品。このような作品には穴がほとんどない。最初から最後まで一気に
観させるテンポと軽やかさ、そして背後に流れる豊穣な叙情感。本当の傑作は「重々しくない」といのが私の持論だ。実に柔らかい
ふくよかな味わいがある。絵画も同じである。いわゆる力作というのは結構重々しいが、本当の傑作は「軽快なハーモニー」とでも
言うべきものが絵の隅々にまで溢れ、全てのカットに無駄な動きやギクシャクしたものがなく、観る者を優しく包んでくれるのである。

名作「忘れな草」を作り終えた山田監督は、浅丘ルリ子の水を得た魚のごとき最高の演技を見て、このリリーというキャラクターを
もっと生き生きしたものに、もっと人間として成長させて掘り下げたものにできる、と確信し、続編を書き始める。
アイデアはどんどん湧き出てくる。山田洋次44歳.

そしてこの頃、偶然にもちょうど渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子の人生の高揚期が訪れてくるのである。役者は年齢を重ねれば、
それはそれでその年齢しか出せない味が出てくるものだ。笠さんを見ているとそのことが良く分かる。しかし、それとは
別にやはりその役者のパワーが最も外に向けて発せられる高揚期というものはあるのだとも思う。
渥美清47歳.倍賞千恵子34歳.浅丘ルリ子35歳.

この作品は寅とリリーと同じくらいさくらが素晴らしい。倍賞さんが、このシリーズ中で最も生き生きとした表情でスクリーンの
なかで華やいでいた。内面の充実が、絶妙な演出とともに見事に光を放っていた。

そういうわけで、最初から最期まで作者側の「説明的な意図」というものを感じさせないで観終えることができる。
映画でしか味わえないエンターテイメント。ダイナミックな空間の広がり。軽妙なテンポ。それらが見事に決まっていた。



『物語』で見せていく醍醐味

この第15作には大きな悲劇や重みはない。誰も死なないし、大きな暴力も、裸も、殺しもしない。結婚式もないし、事故による
大怪我も無い。主人公が刑務所から出てきたり、警察から逃げ回ったりもしない。解決しがたい理不尽な大問題も出てこない。
想像しえない大事件にも巻き込まれない。外国へ行ったりもしない。超大物スターのゲストが出ているわけでもない。
それなのにこれだけの感動が味わえるのである。正真正銘、『物語の冴え』で最後までぐいぐい観客を引っ張っていくのである。
ここに私が映画と言うものに求めてやまない「物語の勝利」、「生活の勝利」がある。

「相合い傘」は、よい脚本とよい演出、そしてスタッフとキャストが冴えてタイミングが合えば、
過激な出来事や悲劇抜きで傑作足りえるということを、私に知らしめてくれた貴重な作品だった。


『懐かしさ』という助走

この第15作を語る時に忘れてはならないのはこの作品の成功の下でしっかり支えている第11作「寅次郎忘れな草」の存在だ。
「忘れな草」は放浪の宿命を背負った2つの孤独が北の大地で出会い、つかの間の蜜月のあと、お互いの孤独の深さの違いによって
別れていく物語であった。この物語を観客は今も懐かしく、そして切なく覚えているに違いない。
「相合い傘」の物語は、この名作「忘れな草」からの懐かしさと切なさという助走つきで、いきなりターボ加速していくのである。



@【独りに戻ったリリーの訪問】

今回も夢から  

『海賊船悪魔号』

海賊タイガーキッドの夢。20年前に別れてしまった妹のことが今でも忘れられなくて苦しんでいる心優しき海賊なのだ。

              


一方遠く離れた奴隷船ではさくらや博、なぜかおいちゃんおばちゃん、そして満男までも連れ去られて苦しんでいた。

ボスの部屋

奴隷商人「このアマ!手を焼かしやがって!いいか、ワシの言うことを聞けば、食い物をやる、おお、
      きれいな
おべべもやる、大きな屋敷だってくれてやるぞ!ええ?どうだ?
待ってました!吉田義夫さん!
チェリー「お前の言うことを聞くくらいだったら奴隷でいたほうがましだわ!プッ!!と唾をかける。
お〜!倍賞さんに唾をかけさせるなんて山田監督思い切った演出。

社長「大変だ!タイガーが!海賊タイガーが現れた!ワァ〜〜!」っと倒れこんでしまう。
主題歌のイントロ チャ―ン!チャラリラリラリラ〜、リールールールー
奴隷商人「タイガー…!
タイガー「そうか。…貴様であったのか!奴隷の売り買いをしてあこぎな銭儲けをしていた男は!
奴隷商人は命乞いをするが、人生の達人であるタイガーキッドは、冷血に商人の背中を撃ち抜く。
拳銃の煙を口で「フー…」っと吹く。

タイガー「娘さんお前のふるさとはどこだ?
チェリー「はい、カツシカでございます。倍賞さん、こういう格好もなかなか似合うね。
タイガー「カツシカ島…!
チェリー「あの、キャプテンはカツシカ島をご存知ですか?
タイガー「カツシカ島…と、懐かしがる寅。
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第2楽章が流れる。

おいちゃん「ああ!タイガー様!
タイガー「そう言うお前達は!俺のおいちゃんとおばちゃん!
おいちゃん「おお!そういうお前は!
おばちゃん「20年前に島を飛び出したあたし達の!
タイガー「うん!!
タイガー「それじゃお前は捜し求めていた妹のチェリーか!
チェリー「お兄ちゃん?お兄ちゃんだったのね…椅子にもたれてハラハラと泣く。

源ちゃん望遠鏡を覗いている。
源ちゃん「おーい!カツシカ島が見えたぞー!
カツシカ島見えるの早すぎ!さっき助けたばっか。でも夢だから…(^^;)
タイガー「よーし!全員帆を揚げェーい!

                           

最後にさくらと寅の幸せそうな顔がアップになって、赤く、「THE END


映画館 場内

映画が終わって、場内が明るくなっていく。
眠っていた寅、ようやく目が覚め、ロビーに出てくる。
寅「おばちゃん、面白かったよこの一言が映画人にとってどれほど栄養になるか。
でもまあ、ほんとは寝てたんだけどね…。こういう、なにげないやり取りがこの映画の隠れた魅力。
               

寅、映画館から出てくる。
                           

タイトル

江戸川をバックにして。
男(赤)はつらいよ(黄)寅次郎相合い傘(白) 映倫18428(白)

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪



なんと、今回は歌の間、コントも無いし寅も出ない。
歌の間の主人公は『さくら』

クレジット中ずっと「さくら」の日常を大事に撮っている。江戸川土手で旅先の兄を想うさくら。
さくらが鉄橋近くの江戸川土手で自転車を走ら、満男を迎えに行き、とらやに戻ってくるまでをカメラは丁寧に追っている。

               


矢切の渡しに風が吹いている。 
題経寺境内に午後の風が爽やかに吹いている。
ルンビーニ幼稚園で満男を引き取った後貴子さんの経営する喫茶店ロークを曲がって
題経寺の山門前を他のお母さんたちと通り、参道を歩きとらやに向かうさくら。




とらや 茶の間


テレビでエリザベス女王夫妻のパレードが映っている。
おばちゃん「お若いねえ。あたしといくつも違わないんだよこれで
エジンバラ公は博に似ているとか、じゃあさくらは女王様だ。って言って盛り上がる面々(^^;)
さくら「あらこのプリンス鼻垂らして、ちょっとおいであ、ちょっと、こら!プリンス!と満男を追いかける。
おいちゃん「そういやあ、うちにももう一人プリンスがいたなあとヨモギの葉っぱをちぎりながら思い出す。
おばちゃん「本当だ
社長「いたいた!四角い顔のプリンス!
おばちゃん「でも今度はずいぶん遅いねさくらちゃん
さくら「何してんだろ今ごろ

店に人が入ってくる。

おばちゃん「あれ?お客さんかしら
さくら「あ。あたし出るわ
さくら「いらっしゃいと、さくら、暖簾をくぐって店先を見る。

リリーが店先に立っている。


さくら「ぁあらまあ珍しい!さくらの顔が、急に華やぐ。懐かしくてたまらないのだ
リリー「こんちは
さくら「ちょっと!おいちゃんおばちゃんね、早く!

                 実にいい顔で迎えるさくら
              

おいちゃん「あ!!いやー、これはこれは」と驚く。
おばちゃん「あ〜ら、まあ!メリーさん出た〜〜!!おばちゃん十八番!
さくら、口にハンカチあてて「やだァ!大笑い。
リリー「フフフ
おばちゃん「え?あ、じゃないジュリーさんあちょ〜!2連発!(^0^;)/ジュリーは三郎青年だよ。なんてね。
そういえば第17作「夕焼け小焼け」の『ぼたん』の時もあわてて『リボンちゃん』って言ってたね(^^;)
さくら「何言ってんのよリリーさんじゃないのよ
リリー、ゲラゲラ笑っている。
さくら「はー!よく来てくださったわねー
リリー「なんだか急にここが懐かしくなってきちゃってね
いろいろリリーにお店(寿司屋さん)のことや近況を尋ねるみんな。
おばちゃん、お茶置きながら「赤ちゃんまだですか?リリーさん
リリー「あのねえ
さくら「うん
リリー「あたし別れちゃったの
一同「…!
さくら、まだ、言ってることが、すぐに飲み込めないでまだ顔がにこやかなまま。

               さくらはリリーの言ったことが飲み込めていない        
                    

リリー「結局堅気の商売には向かないのよ、あたしみたいな女は
さくら「…とっても、…いいご主人だと思ったけど
リリー「そう…。あたしが悪いのよ。あの人には、気の毒なことをしちゃった

一同沈黙。

リリー気を取り直して「寅さんは?
さくら、ちょっと顔が明るくなって
さくら「ああ、お兄ちゃん?今さっきもね、噂してたんだけど、去年の秋頃帰ってきて…それっきり
リリー「そお…ハハハ、私も会いたかったんだけどでも多分そんなことじゃないかと思ってたんだまあ、普通はいないよね。

みんなでリリーを引き止めるが旅の途中だからと遠慮し、スッと出て行く。
どうやらリリーは昔のようにまた旅をしながら歌を歌っているようだった。




帝釈天参道をリリーとさくらが歩いてる。

さくら「ねえ、これからどこいくの?
リリー「北の方。冬の内は九州とか四国とか暖かい所歩いてたんだけどね。そうね…夫と別れてからだいぶ経つんだね…
リリー「これからは、岩手、青森、それから北海道。そうだ!ひょっとしたらどっかで寅さんと会えるかもしれないわね
さくら「ああ、そうね。会ったらよろしく言ってね
リリー「うん
さくら、止まって。
さくら「それじゃお元気でね
リリー「さよなら。 そのうちまた来るわね
さくら「お兄ちゃんと一緒にね詩人だねえ…(−−)
リリー「うん」とハンドバックをふって別れる。
それにしても、一人行く後姿が良く似合うリリー。寂しさを風で吹き飛ばしているようだ。寅と同じ。


A【パパと寅の北の旅】

青森市。青函連絡船の見える港町

青函連絡船の汽笛「ボ〜!」
縁日 寅がバイをしている。易の本を売っている


旅館

二階に上がってくる。
寅は今、八戸からついて来たへんなサラリーマンと一緒なのだ。


寅「あ〜あァ…」と障子を開ける。
暗い部屋のテーブルに謙次郎が乗って、つま先立ちをしている。
寅「あ〜!!おいッ!早まっちゃいけねえ!と腰を持つ。
謙次郎が遂に自殺と思ったらただの蛍光灯のひも直しだったので寅は怒る。
                       
寅「バカァ!そのことを早く言えよお前!ハアァー…ビックリしちゃったなオレ
健次郎「どうもすいませんでした。」と頭を下げる。

健次郎「実際僕はこの数日間
寅「ウン
健次郎「あなたと旅をしながら
寅「ウン
健次郎「人間の愛情と言うものが
寅「と目をしかめる。
健次郎「本来どのように暖かくて
寅「ア〜〜!!
健次郎「優しいものであるかという事を…
寅「分かった分かった分かった
お前さんのその屁理屈聞いてるとね頭の芯がズーンと重くなっちゃうんだよオレ!
ビールでも飲もうよォ…もお

東京の家から失踪し、八戸からずっと寅にくっついてくる兵頭謙次郎だったが、本人は自宅にどうしても
連絡したがっていないので、寅は仕方なく自分でさくらに電話し、連れの男の家に連絡してやるように頼むのだった。
さくらはいきなりいろいろ言われて訳がよく分からないままにとりあえず電話をする。



津軽海峡

青函連絡船(十和田丸)の中 
寅階段で上のデッキまで帽子を押さえながら上がってくる。

寅「どっか行く時は一言断っていけよ。自殺したんじゃないかと思って心配しちゃうじゃないか
健次郎「大丈夫ですよ寅さん
寅「え?

               

健次郎「僕は死にやしませんよ僕は死ぬために旅に出たんじゃなくて自由を求めて旅に出たんですから
寅「分かった分かった分かった分かった
寅「な、パパ、下行っておマンマ食おう。な、早く行こう。うん
健次郎「そうですね

あっ寅さん!こんな近くに。
カモメが近くを飛んでいる。
健次郎「いいですねえ…鳥は自由で
パパさん。鳥はあれはあれで、空飛んでいる時も、いろいろ大変なんですよ、本当は…(^^;)だから、
寅もこれはこれでその代償を払いながら大変な人生を歩んでいるんだけどなあ…。
自由の旅がそのまま日常になってしまった男の侘しさと辛さをパパは遂に知ることはないだろうな…。



柴又参道 とらや 

兵頭パパの奥さんがやっていろいろさくらたちに尋ねるが、寅やパパがどこにいるかも分からないんだから、
話が進展しようがないのだ。結局寅からの連絡待ちしかない。




北海道 函館港  汽笛が鳴る ブォ〜〜〜

船を見送る家族が映る。

謙次郎「長い航海に旅立つ父親。別れを惜しむ子供たち。
    悲しみを胸に秘めて手を振る妻…。みんなそうやって生きてるんだなあ

アンパンを持ちながらしみじみする謙次郎パパ。
寅「のんきなこと言ってる場合じゃねえぞ、おい。二人の金合わしたってこれだけなんだよ。
 今夜の宿銭にも足りないんだよ

謙次郎「いいじゃありませんか
寅「ど、どうしてよ
謙次郎「いよいよとなれば駅のベンチだって寝られますよ。それがいい。ロマンチックですよ〜それも
と、
アンパンをかじる。

寅「ケェッ、パパだけロマンチックにしなさいよやってられねえな、まったく ┐(~。~;)┌



B【懐かしいリリーとの再会】

函館港 夜景

汽笛 ボーー…
屋台でラーメンを食べてる謙次郎。寅はうつぶせになり寝ている。
ラーメン屋のおじさんはお馴染み大杉侃二朗さん!


リリーが謙次郎の横に座る。

リリー「おじさん、ラーメンちょうだい
リリー「火かして
謙次郎「はいはい
リリー、少し頭を下げて、礼の意思表示。

謙次郎「お仕事の帰りですか、大変ですねえこんな遅くまで

リリー、それに答えるでもなく、前を向いてぼんやりタバコを吹かしている。
                 
寅、ちょっと起きかけて「う〜ん?自分に何か言われたと思って起きる。
リリー、寅の「う〜ん?」の声で、ほんのチラッと寅の方を見るような見ないような…。
寅ぼーっとリリーを見る。
リリー、なんとなく寅のあの姿かたちが視野の隅に入って、はっと振り返る。動物的カンが働いたようだ。
二人ともよく見ようと顔を覗くように見る。寅もハッとし、顔を覗き込もうと体をずらす。
寅、また、前へ乗り出して「…!リリー!
リリー「…!

目を大きく見開いて

リリー「寅さん…!…寅さんじゃないのォォ!!」    
寅「うん

             

リリー「あんた本当に寅さんなのねえ!
寅「当たり前じゃねえかよ。お前どこ行ってたんだい!?
リリー「いろいろあったんだあ〜。
間髪いれず頷く寅

リリー「私、あんたに会いたくて柴又まで行ったのよ!!

              

寅「柴又行ったぁ!
リリー「うん
寅、満面の笑みで
寅「俺いなかった!
リリー「そうよぉ!どこ行ってたのよ一体!
寅「うん、ヘヘへ
リリーは、寅だと分かった瞬間、すばやく寅の手を握ろうと手を伸ばす。
そして寅もほぼ同時にそれよりもっと早く、リリーが握ろうとした手を外からしっかり握っている!

謙次郎「あの…ちょっとすいません。お邪魔なようですので私はこれで…
リリーも寅も嬉しくて、パパの言葉が耳に入っていない(^^;)
謙次郎「本当に長い間いろいろお世話になって…
リリー「この人あんたの連れ?とパパを指差す。
寅「うん、そうなんだよ
間髪いれずに、迷いなく
リリー「一緒に飲みましょ一緒に!
寅「おー!よしよしよし、座れ座れ座れ

寅もリリーも会って、一言目に「久しぶり」だなんて他人行儀なことは言わない。寅は「お前、どこ行ってたんだい
リリーも「
どこ行ってたのよ一体だ。この言葉は夫婦や親子、兄妹たちの再会場面で交わされる言葉で、
いつも相手のことを会っていない時にも思い続けていないと出てこない言葉。運命共同体の意識なしには
絶対出てこない言葉である。友人同士が久しぶりに会った時にはまずこんな風には言わない。
お互いに
恋人以上の深い縁で結ばれているのだろう。不思議なものだ。そして山田監督の深い洞察力に基づかれた見事な演出だ。


寅「あ、この女な…、二年程前に俺といろいろわけありの女よと、謙次郎に紹介。
紹介の仕方があっさりしてていいねえ。「わけあり」 ただそれだけで、全てを語っているように思えてくるから面白い。

リリー「もう二年なるかしらねえ〜
寅「そうよー。去年、おととしの夏だもの
リリー「そうだったねえ〜…と思い出すように。
寅「う〜ん
リリー「あんたあれから何してたのよぉ〜!?と、寅の手を握って揺さぶる。
寅「えー?…俺か?……恋をしていたのよ
リリー「ヒィーー!よく言うよ!ハハハハ!
寅「エヘへへへへ!ハハハ!
パパも後ろで実に楽しそう。
                                           
                   

この函館の再会シーンを見ると、必ず第25作「ハイビスカスの花」のラスト「兄さんこそ、なにしてるのさ、こんなところで
おれゃ、おめえ…、リリーの夢を見てたのよ を思い出す。この二つは寅とリリーの名セリフの双璧だ。

寅「よーし一杯飲むかおい!
リリー「おじさんじゃんじゃん出して!
おじさん「はいはい」
寅「よし!今夜はパーッと行こうおい!
謙次郎「いきましょういきましょうハハハハ!

この1975年、函館での再会の夜の場面を、後に1995年第48作「紅の花」の中で20年の歳月を経て、
寅とリリーはふたりして回想してゆく。観客はみんな20年前にもどり、あの顔、あの声があざやかに蘇っていたことだろう。



リリーは寅にようやく会えた。にもかかわらず、謙次郎の存在を歓迎する。ここにこの映画の魅力の大きなヒントが隠されている。
人間に対する愛情が独占的でないのだ。これは寅だけの特徴でなく、リリーも兼ね備えている。人と人との交わりを
大切にする放浪者の特徴と言っていいかもしれない。謙次郎も、当然自分だけ排除されると思っていたら、
自分の存在が歓迎されたことで人の世の機微をまたひとつ学んだのである。さびしい魂を抱えるものは同じ魂を
持つものを絶対に排除しないのであろう。


C【彼ら生涯の最高の日々】

函館の旅館 2階の廊下

パジャマで歯磨きをしているパパ。あんな薄いカバンのどこにパジャマが入ってるんだ?
リリーのはしゃぐ声が廊下に聞こえてくる。
《リリー、何年ぶりかで心の窓180度開放〜!》\((( ̄( ̄( ̄▽ ̄) ̄) ̄)))/

リリー、相当はしゃいでいる。凄い声。もう完全に子供状態!O(≧▽≦)O

谷よしのさん扮する宿の人、ちょっと怒って階段を上がってきて!トントン!(▼▼メ) 静かにしてくれと怒る。

哀愁のあるアコーディオンが流れていく。リリーのテーマのアレンジ版

寅もパパも寝ようとする。
リリー「う〜ん、つまんないよ寅さん…
寅「ええ…
リリー「私冷え性なのすごく。夏でも足が冷た〜いんだ
寅、布団の中から、「下、行って、湯タンポつがしてもらえ
リリー「温めさしてェ]と甘えながら寅の布団に足を入れる。
寅「あ、あ、あ、だめだ。ヒャッコイ、ヒャッコイ、ヒャッコイ、そんなつっこんじゃだめだよ、おまえ
リリー「けち
リリー「じゃあいいよ、パパに温めてもらうからとパパの布団に、足を突っ込む。
謙次郎「そんなあ…(◎_◎;)
リリー「うわぁ、温かいわ、パパの足。気持ちいい〜!
謙次郎「寅さん…、寅さん!
寅、寝ながら「パパ…、温めてやれ…
謙次郎「ヒ、イイィ…パパ、緊張しながら、枕に頭を下ろす。
リリー、パパの布団に寄り添いながら、子供のように目をつぶり
リリー「気持ちいい…
パパ、唾を呑み込みながら、仰向けで緊張している。パパ、今夜は当然眠れそうにないねえ (〃^o^)=3

               




函館本線 

車内
パパが、うとうと居眠りをしている。
まあ、昨夜リリーにあんなにくっつかれちゃあ、寝れないよな。普通は(^^;)
リリー「アハー、あたしお腹すいちゃった〜!
寅「長万部で降りてカニでも食うか
リリー「カニ!
寅「うん!
リリーいいわねえ、パパ、お金有る?さっきの宿代の残り
寅「ちょっと、出してみろ、出してみろ
謙次郎「あ、はい。しかし、カニなんか食べてしまうと今夜の宿代が…
寅「いいじゃないか銭がなかったら、三人そろって駅のベンチで寝たっていいよ
謙次郎満面の笑み!「そうですね!そうしましょう
寅「だいぶ変わってるだろへへへへへ
リリー「ハハハハ
              



夕日に染まる  塩谷海岸。 積丹半島のつけ根

寅たち夕日をバックに波打ち際で遊んでいる。
ハーモニカによる故郷の廃家(はいか)が流れる。
第7作「奮闘篇」で花子ちゃんが、江戸川土手で歌っていた曲。
寅が拾った海草を振りまく。逃げるリリー。笑うパパ。
寅「ホ〜レ〜
リリー「イヤァ〜走るリリーハイヒールを手に持って
リリー「キャハハハ!
石を海に投げる寅。トォ〜

               

波打ち際をキャキャ走り回るリリー。
リリーの体が夕陽に包まれ光り輝く。

彼ら、生涯最高の日々…



早朝の  函館本線  『塩谷駅』
鶏の鳴き声
リリー、水道で顔を洗っている。
寅「ハーァ、久しぶりに駅のベンチで寝たら体痛くて。布団じゃなきゃダメだなこりゃ鉢巻している。
リリー「フ…タオルで顔を拭いてる。
パパ、出てきて「おはようございます
リリー「おはよう
謙次郎「よく寝られましたか、リリーさん

パジャマ姿!のパパ、歯ブラシを口に突っ込んで歯を磨く。
林間学校の生徒みたいな気持ちなのかもしれない(^^;)パパにとっては『駅寝』もハレなのだろう。
背広やワイシャツを脱いで、きちんとパジャマを着て寝てしまう行為は、日常の心を残したまま旅を続けていると
いうことでもある。『決心を伴わない放浪』のぎこちない、滑稽な姿がそこにある。


寅「ガハハハ!パパ!短靴(タングツ)はいて寝てやがる!ガハハ!
謙次郎「フフフ…」と笑いながら歯をしっかり磨いている。
リリーも笑っている。

                


札幌 大通り公園

なんと3人でバイをしている。(万年筆)
バイの主役はなんと寅ではなく、パパ!寅とリリーは『サクラ』
寅「あ、そうかい…、それじゃ、その火事になってその万年筆工場っての、潰れてしまったってわけだねおいおい(^^;)
謙次郎 頷く
寅「可哀想になあ…
リリー「あなた、買ってさしあげたら?坊やも欲しがってたじゃないの坊やって誰や?(ノ゜ο゜)ノ
寅「そうねえ…。これ1本いかほど?
謙次郎「せ、千円いただければ…上手い!(^^)

                

リリー「安い…
寅「え?そんな安くっていいの?、これ、あの、ほら、水をかぶっただけで、火には全然あぶられていないんでしょう?
パパ、頷く
寅「安いもんだなあ…
リリー「あ、よく書けるわ〜リリーっていったい…(^^;)
寅「ママ、嬢やにも1本買ってあげたら。英語のお勉強しているから嬢やもおるんかい?(/^□^)/
リリー「そうねえそうねえって…(^^;)
『ママ』『嬢やにも』って言われて、ほんの一瞬、どう言おうか迷っていたりりーでした(^^;)
リリー「女物ございますぅ?リリー笑ってるよ ヾ(´▽`;)
寅「安いねえ!千円は。安いねえ〜しかし

つられて何人の客が買い始めている。


田舎の牧場の1本道

荷馬車の上に揺られている3人。
白い花が一面に咲いている。
鳩笛による スコットランド民謡「Comin' thro' the Rye」が流れる。

リリー「だってさ、パパがしょんぼりしてると、ほんと可哀想ぽくなっちゃうよね!
寅「ほんとなあ、素人は恐いよ!え
謙次郎「いや、ほんとは汗びっしょりだったんです、ハハハハ!
荷馬車が揺れて「ワーッ」と3人とも大はしゃぎ。

3人の笑い声は続く。景色はいいし、懐もちょっと温かくなって、安堵して、最高の気分!
この笑顔はいつまでも私たちの記憶に刻まれていくことだろう。
こうして、渡り鳥たちの栄光の日々は最高潮に達していった。

                



D【小樽物語ー 謙次郎と信子30年目の再会】

小樽

蒸気機関車が遠くを走っている「ピ〜!」 。鄙びた小樽運河をポンポン船が行く 「ポンポンポン」

運河の橋の上

謙次郎「小樽……ここが小樽かあ…しみじみと感慨深げに運河を見ている。

小樽ではパパが主役なので、パパ改め謙次郎(^^;)
謙次郎、寅のところに駆け寄って
謙次郎「寅さん、僕は30年間、夢に見た街ですよ…30年間とは、ただ事じゃないぞ、こりゃ。
寅「そんなにいいかね、この古臭え街が…

                           

謙次郎「あ、いや…この街には僕の初恋の人がいるんです…学生時代東京で知り合った人ですけどね、
    小樽の人だったんですよ、その人は…

寅「そんなに惚れてたの…
謙次郎「ひょっとしたら、僕が生涯で一番愛した人かもしれませんねえ…
寅「愛しただって…ククク
リリー「ク〜ククク

謙次郎「考えてみれば、僕はこの街に来たくて旅に出たのかもしれないなあ…これはますますただ事ではないぞ…


『外人坂』の急な石段  小樽市東雲町付近。

初恋の人の家を探したが、一昨年夫に先立たれ、引っ越したことが分かる。今は喫茶店を開いているらしい。
寅「行ってやれ、行ってやれよ!と、彼女にそれでも会うことを助言する。
謙次郎、静かに頷いて「…そうですねえ心なしか表情が明るい(^^;)
謙次郎緑町へ急ぐ。



小樽市緑町1丁目あたり。

軽食喫茶 ポケット店内 

謙次郎、中に入ってくる。

信子、遠くから「いらっしゃいませ
初恋の人帽子を脱いで、前の方を向いた時、カウンターの中の信子を見つけ、ドキリとする。

三十年ぶりに見た初恋の人の姿であった。
彼女は入ってきた謙次郎に、全く気づいていないような、しかし、そのようなふりをしてるような…。
謙次郎「コーヒー下さい
しばらくたって
信子「お待ちどうさまと、やはり、謙次郎の方を見ないでコーヒーとミルクピッチャーを置く。
謙次郎は、思い切って信子を見るが、信子はやはりそのまま向こうへ行ってしまう。
謙次郎、急にいたたまれなくなり、
謙次郎「あの…お金ここに置きますからと、大急ぎで店を出て行こうとする。
信子「あら…

謙次郎は自分が信子に30年間抱いていたイメージとのギャップと、そして、信子が自分を
覚えていなかったのではないかと思う失望感で、いっぱいになってしまったのであろう。

店から出た謙次郎。迷いながらも歩いていく。

しかし、すぐ、立ち止る。カバンを忘れたことに気づいたのである。 ためらいながらも、店に戻ろうとして振り向く。

信子店から謙次郎の鞄を持って出て来て、目で謙次郎を探す。 そして、はじめて謙次郎を見て微笑む。

謙次郎、信子に近づき、鞄を受け取りながら
あ、どうもすいませんと、すぐに立ち去ろうとする。
信子「謙次郎さんでしょう?

哀しげな、テーマ曲が流れる。

謙次郎「ええあのうお分かりですか?
信子うなづいて「お店に入ってらっした時、すぐわかりました
謙次郎うなずく
信子「あなた、昔とちっともかわらないのねえ…
謙次郎「そうですか、僕はまた、覚えてないんじゃないかと思って。ヘヘヘ…
謙次郎、ハッとして
謙次郎「いえ、出張でこっちに来たもんですから、ちょっとお寄りしただけなんです
信子、ほんの少し、うなづく。
謙次郎「あのう…お元気そうで何よりです
信子「あの…
謙次郎「は?
信子「もう一度お入りになりません?

             

謙次郎「い、いえ。僕、汽車の時間なんかあるもんですから
信子「……
謙次郎「あのう…どうぞ、お幸せに…
信子「……下を向いたまま小さく頷く。
謙次郎「じゃ、僕、これで、…どうも…


足早に去っていく謙次郎。謙次郎に、もう一言何かを言おうとするが、やめ、
その後姿を追いすがるような目でいつまでも見つめている信子。

アコーディオンの響き

実は、信子は店に入ってきた謙次郎を、彼が彼女を見つけるより早く気づいていたのだった。
30年という歳月はあまりにもお互いの溝を大きくしていた。気持ちがあるからこそ気づかないふりをして
しまったのかもしれない。
それでも、最後は、ほんのひと時、昔の思い出に浸りたい気持ちを遂に隠せなかった。

会わない方がいいのは百も承知で、それでも過去の思い出に引きずられて会ってしまった男女の悲劇。
一番大切にしていた青春の美しい思い出が崩れていったのかもしれない。



E【突然やって来た旅の終わり】

小樽港。

夕暮れ時の波止場


謙次郎「僕って男は…、僕って男は、たった一人の女性すら幸せにしてやることもできないダメな男なんだ…
リリー「幸せにしてやる?大きなお世話だ。女が幸せになるには男の力を借りなきゃいけないとでも思ってるのかい?
寅「でもよぉ、女の幸せは男しだいだっていうんじゃないのか?
リリー「へえ〜、初耳だね、あたし今までに一度だってそんな風に考えたこと無いね。
   もし、あんたがたがそんなふうに思ってるんだとしたら、それは男の思い上がりってもんだよ

寅「へえ〜…、おまえもなんだか可愛げのない女だな、おい
リリー、ムカッときて、近寄ってくる。
リリー「女がどうして可愛くなくちゃ、いけないんだい。寅さん、あんたそんなふうだから、
    年がら年中、女に振られてばっかりいるんだよォ
と背中を向ける。
寅「おい!リリー、おまえ、 言っていいことと悪いことあんだぞー
リリー「だって、ほんとだろ?と少し微笑みながら寅の方へ振り向く。
謙次郎、おろおろ
寅「じゃあ、オレも言ってやるよ。なんだおめえ、寿司屋の亭主と
  別れてやったなんて体裁のいいこと言ってェ。ほんとは、テメェ、捨てられたんだろ


リリー、動きが急に止まって、振り向く。
一瞬その場が凍りつく。   
 リリー、振り向いたまま絶句。 悲しみに震え出す。
リリー「……

                           
              

リリー、悲しい顔で、

リリー寅さん…、あんたまでそんなことを…。あんただけは,そんなふうに考えないと思っていたんだけどね…
目に涙が一杯溜まっている。やがて頬につたってゆく。


寅、リリーを見つめている。
リリー、強い目で寅をにらんでいる。

謙次郎、リリーのところへ歩み寄って
謙次郎ごめんなさい!僕のために、こんなことになっ…!
リリー「うるさい!!
私帰る。さいなら
早足で行ってしまうリリー。
謙次郎「リリーさん!
謙次郎寅の方を振り向き、りりーの鞄を持ち上げる。
謙次郎「寅さん!どうしましょ!?
寅「バカ、持ってってやれよ!!とどなる。
謙次郎、頷いて、すぐに追いかける。

寅、リリーの後姿を見ている。
下を向き、自分が言ってしまった言葉の罪が ようやく実感できてきた表情。
座って、ぼんやり海を見ている寅

旅の終わりは突然やって来た。
謙次郎は謙次郎の理由で。
リリーと寅は背負った運命の重さの違いで。


リリーの、歌を愛するがゆえの、自分の足で歩き続けたいがゆえの、定住からの決別と孤独の闘いの日々を、
巷の色恋の顛末に、すりかえて茶化してしまった寅。 自分の日々の闘いの寂しさ辛さをたとえ誰も分かってくれなくても
この世で、寅が分かってくれていると心底信じていたリリー。 今、リリーはまぎれもなくこの世で独りぼっちなのだ。

ついさっきまで、あの声、あの瞳を持っていたリリーは寅の横で笑っていたというのに…。
波止場に独りたたずむ寅の背中は、いつになく小さく痛々しかった。



F【リリー再びのとらや登場】

とらや 店 

とらや さくらが兵頭パパの奥さんからの電話を受けている。

電話切って

さくら「兵頭さんのご主人帰ってきたって
おばちゃん「あら
おいちゃん「そうか、そりゃよかった

なんと店先の参道に寅がいる。
みんな、背中を向いているので寅には気づかない。

寅「

おいちゃん「そういや、リリーさんも北の方に行くって言ってたんだろ
さくら「うん…
寅、ビクッ  と反応
さくら「ひょっとしたらどっかで会ってるかも知れないわね

その発言を聞いて、ドドッ!っとさくらたちのところに駆け寄ってくる寅

寅「おい!リリー来たのか…!
さくら「うん…つい、寅に気づかず、下を向いたまま返事をしてしまう。
寅「うん!
寅「いついつ!?いつ!…いつ!!
さくら「ええーっと…せせ、先月の始め頃だったかしら
寅「きのうやおとといじゃねえのか…がっくり。
さくら「うううんん倍賞さんのこの小刻みな首の振り方、愛嬌がありました(^^)
寅「チッ、何だよ…ガックリさせやがらァ
さくら、おいちゃんと顔見合わせて、ようやく我に帰り、立ち上がりながら両手をあげて

さくら「…!お兄ちゃん!!遅いって ヽ(^^;)
さくらの、カン高い大声に、おいちゃんおばちゃん椅子から宙に浮く!!このタイミングのズレがたまりません(^^)
特におばちゃんのスーパーボールのようなぶっ飛び方は、さすが年季が入ってる!
寅「オイオイ!脅かすなよおまえ!!!あんたでしょそれはヾ(^o^;)

さくら「ね、お兄ちゃんリリーさんが来たのよ
寅「知ってるよ…函館でな、ばったり会ったんだよ
おいちゃん「やっぱり…やっぱりって、普通会わないぞ。天文学的数字だからね(^^;)

寅「それがな、さくら…
さくら「うん
寅「オレ、リリーの奴に…ひでェこと言っちゃったんだよ
さくら「どんなこと?
寅「うーん…ちょっと口に出しちゃ言えねえようなことよ。あいつ大きな目に、いっぱい涙浮かべて、
 よっぽど悔しかったんだろうな


さくら、リリーが前にいることに気づいて目が唖然。

おいちゃんや、おばちゃんもさくらに目で合図されてリリーに気づく。

寅「は〜あ、もし…ここにリリーがね、現れたら、オラァ、この土間に、手ぇついてでも謝りたいよ。
さくら、リリーのことを寅に知らせようとする。
さくら
ねえ、」と寅の袖に手を当てる。
寅、さくらに、お構いなしに反省の弁を続ける。
でもねえ、あいつはきっと勘弁しちゃくれねえよ。オラァ本当ひでえこと言ったんだもん…

リリー「寅さん…

寅、ビクッとして、捻っていた手ぬぐいがすっぽ抜ける。

                      寅さん…
              

寅「あれはリリーの声…、まさかそんな…
リリー「寅さん、私よ
寅、振り返る。
リリー微笑む。
寅「…!リリー
リリー「寅さん!夢中で寅に駆け寄るリリー

リリーのテーマが流れる  

マンドリンから入り、ギター、オーケストラへと膨らんでいく。

寅に抱きつくリリー。
リリー「ごめんねこないだ、私も言い過ぎたんだぁ!

                       

寅「悪いのはオレのほうじゃなえかよ。オレはもうおまえに一生勘弁してもらえねえと思ったんだぜ
リリー「バカねえ、私そんな女じゃないよ
寅「うん、そうなんだよ。おめえそんな女じゃねえんだ、そんな女じゃねえとオラァよく分かってんだよ

リリー「こんにちはと照れながら一同にあいさつ。
さくら「いらっしゃい
寅「お、さくら、分かったろ?こういう訳なんだよへへへ…分からんて、なあ〜んにも (´ー`;)
さくら「うん、なんだかよくわかんないけど、とにかく良かったわねさすが、さくら。熟練の技。訳聞かずに納得(^^)
寅「早く早く!オラオラ!オラ!お茶お茶お茶! いや!ビールビール!ビールに切り替えよう!
 さ!さ!ほら、リリー、上がって上がって!ね!パア−ッと盛り上がろうじゃねえかよ、これ!」




夜。とらや

リリーとみんなで賑やかに歌を歌って宴会をしている。
寅、パパに報告がてら電話している。
寅、電話から戻って

寅「どうしたどうしたどうした、え!?パーッっともっと盛り上げよう!
寅、今度は博に歌を催促。
博、頷いて「じゃあ兄さんとリリーさんの再会を祝して…、いっちょやるか!!

博「!!〜〜とお〜〜り〜〜それじゃ悲鳴だよ ゞ( ̄∇ ̄;) ♪』マークだせないよ。
博「♪さ〜かぁ〜ばでえ〜、の〜むさあ〜けぇ〜は〜…
寅とリリー顔を見合わせて微笑む
さくら、博のすさまじい歌にずっと照れている。**(/▽/)**
いいねえ〜。さくらのこの表情(@⌒ο⌒@)

博「♪わあ〜かあ〜れ、なあ〜み〜だあ〜の、あ〜あじが〜す〜る〜
寅も、リリーも、少し一緒に歌っている。
                                            
                        

とらやの茶の間で博と寅とリリーが歌っている。ただそれだけのことなのに、胸が熱くなってくるのはどうしたわけだろう…。

さくら、リリーも歌っているのに気づいて、寅に人差し指で「シー」っと知らせる。
寅も分かって、人差し指で『シッ』のポーズ。 指揮だけをする。
この寅の指揮がなんとも楽しそうで上手い!


ここからリリー独唱

リリー「♪の〜め〜ば、ぐ〜ら〜すに、 まあ〜たぁ、う〜〜か〜ぶ〜〜〜

寅「ハイ!!上手いなああああ!!指揮者の最後の決め!のポーズ!
一同大拍手! (*)ノノ゛☆

               

おいちゃん「はあー!よかったー!
おばちゃん「リリーさんは、いい声だねぇ〜!
リリー、おもいっきり手を左右に振って照れながら否定する。
寅「そら、あたりまえだよ。本職だもんなあ!

そして疲れたから先に休ませてもらうと
2階に上がっていくリリー。

寅「リリー…と言いながら土間に下りて、階段の下に来る。
リリー、階段を上ろうとして
リリー「うん?
寅、腰に手を当て「何か、不自由なものないかい?
リリー、手すりに頬を近づけ甘えるように
リリー「ないわ…
寅、リリーのすぐ隣まで寄り添って
寅「足が冷たくないのかい?
リリー「冷たい…
寅「じゃあ、オレが温めてやろうか?いつものようにひゃっこいひゃっこい、って嫌がってたくせに…(^^;)