バリ島.吉川孝昭のギャラリー内 


第1作 男はつらいよ

1974年12月28日封切り









「フフ…兄さん、よかこと言ってくれるね」 呼子での一期一会 そして再会。


この「寅次郎子守唄」はある意味地味な作品である。しかし実に上手い展開の連続で、見ごたえが随所にある。
正調「男はつらいよ」とは正にこの作品のことである。見せ所がしっかりしていて密度が濃いのでしょっちゅう繰り返し観てしまうのだ。
熱烈な寅さんフアンのなかでこの作品をベスト10の中に入れている人を何人も知っている。しっとりとした味わい深い作品に
仕上がっていて見飽きない。笑いのタイミングも決まっている。「男はつらいよ」を観たことがない人に勧めるときの代表格だ。

この作品から恋のキューピットとしての寅が誕生する。しかしもちろんマドンナにも恋をしているので、恋を手伝いながらも、あわよくば
自分が恋を横取りしたいという、複雑な心理。まるで夏目漱石の「こころ」のような表層意識と潜在意識の葛藤が入り乱れる精神状態が
寅の心に芽生える。このようなパターンは後期になってくると当たり前のように繰り返し採用される。もっともその最初の萌芽は
第10作「夢枕」にすでに現れてはいる。

またそれゆえ、今回は、しっかり惚れるわりにはマドンナの京子さんと寅との縁自体は意外にも薄い。マドンナは精神的にも寅に
寄り添ってはいない。そしてそれとは別にさくらが京子さんたちの合唱団のグループに入り、京子さんとさくらの絆が強固になっていく。
これもリリーや歌子ちゃんなどの例外を除いては、とても珍しいパターンだ。寅抜きでさくらとマドンナの物語が進んでゆくことを予感させる
のである。これはこの直後に制作される、あの「同胞」の倍賞さん演じる主人公『河野秀子』に見事に繋がって行くのである。この合唱団の
メンバーもあの「同胞」の統一劇場のメンバーが演じている。そしてこの「同胞」の直前に名作「相合い傘」を制作。山田監督がこの時期、
いかに乗りに乗っていたかが分かる。第5作の時にも第8作のときにも感じたことだが、忙しいからと言って駄作が生まれるわけではない
のである。むしろ相乗効果で、質のいいものが出来る場合の方が多いのだ。

それにしても京子さんに自分の思いを告白する弥太郎の言葉はなんて簡潔で強いのだろう。おばちゃんのセリフじゃないけど、
「あの言葉に心を動かされない女はいない」だろう。恋のキューピットもどきでお茶らけた寅の完敗である。博がさくらへの思いを告白する
第1作のあの夜を思い出すのは私だけではないだろう。

今回から登場の3代目おいちゃんの下條正巳さんは、博のケガのシーンでいきなり好演し、その存在感をアピール。実に上手かった。

また、寅が赤ん坊を背負ってきたあとの一連の騒動は長いシリーズのなかでも特に印象深いドタバタとして語り継がれていくことであろう。
このあたりは柴又中を巻き込んで笑いの連続である。
そして、この騒動の中、おばちゃんのうれしそうな子守り姿と赤ん坊がいなくなってからの落胆は彼女の人生の哀しみを感じたものだ。

また、マドンナではないが、佐賀県の北の端、呼子港で知り合ったヌード劇場のダンサー役の春川ますみさんが実に味のある爽やかな演技で
この映画に奥行きを与えていた。渥美さんも絶妙のやり取りで、私はもうそれだけで胸が熱くなるのだ。渥美さんの春川さんを見つめる目が
実に温かい。同じ匂いを持つふたりは目だけで分かり合えるのだ。これだけリアリティがあるやり取りはこの長いシリーズの中でもめったに
お目にかかれない。「忘れな草」でのリリーとの出会いを彷彿させるような静かな名シーンだ。

「ここで踊ってんのかい?」
「こんな景色のいいとこまで来て、暗かところで女の裸観てどこがよかすかねェ」
「フフ…別に裸を観るわけじゃねえよ。姐さんの芸を観に来たと思えば腹もたたねえだろう」
「フフ…兄さん、よかこと言ってくれるね」
「そうか」

アンパンを食べながら遠くを見つめる春川さんますみさんと寅。そしてラストで赤ん坊を背負って、渡し舟で寅と再会する時のあの春川ますみさん。
それらのやり取りをまた観たくて、この作品を何度も観てしまう。だから、私には寅がラストで、もう一度彼女に、そして赤ん坊に会いに行く気持ち
が凄く分かる。もちろん十朱幸代さんの若々しい屈託のない笑顔も魅力的なのだが、やはりそれ以上に、美人女優でもマドンナでも何でもないが、
しみじみと春川ますみさんがいいのである。どこかでリリーの寂しさと通じる部分があるのかもしれない。実に味わいのある役者さんだ。



                       



ところで、この作品でもさくらと寅の別れがあるが、前半での別れの際、寅が博の医者代に使えと「郵便貯金通帳」をさくらに手渡す。
手にとった通帳を見たさくらの表情が変わる。それは「諏訪さくら」と書かれた通帳だった。中身は少しづつ増えたり減ったりしながら、7700円。
さくらの目に涙が溜まり…。 なにげないが凄いシーンだ。倍賞さんの演技が秀逸だった。

兄妹っていうのはいいもんだ、とこの時ばかりは思ったものだ。

それにしても、大川弥太郎が木谷京子に愛を告白するシーンは、数あるこのシリーズの愛の告白シーンのなかで最も美しいと私は思っている。




今回も夢から始まる。

本編の「赤ん坊」を暗示するような演出。


尺八が鳴る。

山脈が広がっている。


寅の声

昔ある村になとても働き者の夫婦がおった
正直者で人には親切で村中で二人の悪口を言う者は一人もおりゃせん。
嫁にもろうならあんな嫁を、
また婿にするんならあんな婿をと、
誰もがそうおもっとったところがまア気の毒に
この二人には子宝が無かった。二人とも子供がほしゅうてほしゅうてならん


博とさくらがお参りをしている。

寅の声
そこで、ま、二人は産土(うぶすな)の神様にお百度をふみ始めた
雨の日も風の日も一日も休まずに通い続けとうとう満願の日がやって来おった


今回は本編でおばちゃんお百度を踏む(^^;)



寅、少し高い声で

神様、どうか私どもにかわいい子どもをお授け、願いでございます。
どうか子供をお授けくださいまし…。懸命に祈る二人に聞こえてくる妙なる楽の音

雅楽の音 ポロロローン…ピラリィ〜…

寅の声
おやなんだろう。恐る恐る顔を上げた二人の目に映じたのは、はて!
オホホホホホホホホ!その声なあ(^^;)

さくら、博びっくり!

赤子が布に包まって現れる

雅楽の音 タンタンタンタンタンタン…!ポロロローン…

さくらたち大喜び

寅の声『ありがとうございます。ありがとうございます
喜びの祈りをささげる
ふたありの耳に再び聞こえる楽の音は…!


メインテーマ ♪ピーピロピロピロピロリ〜…リロり〜ロ、リ〜ロリロリロ〜。

寅の声
ハテ!おォ!またもオホホホホホホホホ…
もう、その笑いやめれってば \(^^;)

ラッパが吹かれ ♪パァーパカッパッパッパッパァーパパパァ〜!

さくらたち頭を下げる

寅次郎が産土の神になっている
我ハ産土ノ神ナルゾ



                       



さくら博夫婦「ハハーッ!

産土の神「善キ哉善キ哉と黄金の金槌を振り下げる。

夫婦の前に小判が約50枚(当時5百万円くらい?)と鯛3匹が現れる。
なぜ魚3匹??


産土の神「汝等ノ篤キ信仰二愛デテ、ソノ子ヲ授ク



                       



産土の神「賢キ男ノ子ナリセバ名ハ寅次郎ト命名ス。
必ズヤ立派二成長シ、孝養ヲ尽クスベシ…(煙でむせて)
コーホッコホッ…善キ哉コホッコホッ…善キ哉コホホホェ!…





夢から覚めて寝ている寅

寅「コホッコホッコホッコホッ…あー煙いなおい…あー
子供「おじさーん!魚焼けてるよ
寅「おう」
串刺しのちっちゃな川魚が焼けてる

寅「どーれどれ…フッフッフッフッ、ソッソッソッソッ…モクモク…
うん、上手いなこの
イワシはハハハハ
おいおい(^^;)




                       



子供「ハハハハイワシだってハハハ

大根を取り寄せる農家の人


タイトル

  『はつらいよ 『寅次郎子守唄




磯辺温泉近く  高田川






                       




口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。



   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪



    2番は歌わないで、今回は曲だけ続いていく。
   1番のサビだけもう一度歌う。


    奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪




今回は江戸川土手ではない。

上州、妙義山をバックにススキが揺れている中、旅をする寅。 

美しい描写。


群馬県安中市松井田町小日向地区





                       





群馬県安中市松井田町小日向 成就院


小さな寺で鈴をふる。成就院でザクロを食べる寅


この成就院は寅友の「ちびとら」さんが、2013年春に奇跡的に発見されました。





橋で金のことを心配してか腹巻を探ってる。

手すりの端に咲いてる花を摘もうとするが、
帽子を川に落としてしまう。
帽子どんどん流れていく。

帽子をカカシの頭に被せて藁の上に座りながら
乾くのをゆったり待っている寅。

実に絵になる風景。



               
               





柴又 江戸川土手 

さくら自転車で異様に急いでる。いつもとは違う表情。何かあったのか!?

「ハアハア…」といいつつ曲がっていく。



                       



参道 子供たちが道で遊んでる
急ぐさくらリリリリーン!とベル。子供たちに「危ないわよ」



とらや店先

さくら「おばちゃん!必死の目
おばちゃん「…!さくらちゃん!!
さくら「博さんどこ?



                       





おばちゃん「さっき病院行った
さくら「どこの病院?
おばちゃん「さあ…どこだったっけ
裏の工場に行っておいちゃんを呼ぶ。「ちょっとあんた!

下條おいちゃん初御目見え!

おいちゃん「あ!さくら!いたか」と工場の裏から出てくる。
おばちゃん「病院どこなの?
おいちゃん、工員に「病院どこだ?
工員「吉田病院ですよ2丁目の
おいちゃん「吉田病院2丁目の



                       



さくら「ケガ、博さんのケガどんなふうなの?
おいちゃん「なんかこう!機械に巻き込まれたとかって
と機械に巻き込まれた真似をする。ひえ〜〜!!(><;)
おばちゃん、怖がって「ハアッ!
さくら「とにかくあたし行ってくる
さくら「おばちゃん1時になったら満男迎えに行ってね
おばちゃん「ああいいよ
おいちゃん「自転車か。車に気をつけろ
さくら、急いで行く。



おばちゃん「ねえまさか片腕取れちまうんじゃないだろうね
おいちゃん「俺が見たときは確かについてたな問題はこっから先だと手の甲から先を示す
おばちゃん「あーッやだ!とにかくあたしお参りに行ってくるよ!と題経寺に。
おいちゃん「…。」沈黙









吉田病院 

労災指定 外科 整形外科 皮膚泌尿器科 内科 理学診療科

むこうに電車が通る ゴーガタガタン…




博がお世話になり、赤ん坊が御世話になり、
第38作ではおいちゃんまでが入院した吉田病院(吉田医院)。



映画の中ではこの吉田病院は柴又にあることになっているが、
実はこの病院は「京成関屋駅」や
東武伊勢崎線「牛田駅」のすぐ北、徒歩3分場所にある。
ストリートビューで見る限りは当時と雰囲気はあまり変わっていない。





           
 第14作での吉田医院

       



       
     第38作「知床慕情」での吉田医院

       




          
        現在の吉田医院

                     







さくら、病院の廊下疲れて虚ろに下を向いている。

横をベットが通る。
看護士「もう少しですよ」
向こう側に社長や工員が心配そうに見る。

ドアが開く音

博「…わかりました
工員A「どうっだった?
博「大丈夫。骨に異常は無いそうだから指一本取れちゃったかと思ったけど
そんな心配いらないらしいや。はは


工員A「じゃ車取って来るわ
工員B「あ、鍵、鍵
工員C「どの指?
博「うーん中指とやっぱり・・
京子「諏訪さーん
社長「ハイ!
京子「お薬あげますから取りに来てください
社長「はい…
京子「麻酔が切れるとすこーし痛むかもしれませんよ

ちょっと十朱さん、演技にちょっとタメがないかな…。

本編が始まってから5分以内でマドンナ登場!早い!!



                       




社長「ハ…」

一同頭を下げる

博、さくらに気づく。

博「…。は・・心配したかさくら。

さくら、ぎこちなく、うなずく。

博「何だまたおばちゃんが大げさに言ったんじゃないかそうだろ?

さくら、小さくうなずく。



                       



博「ハハハ・・
さくら「は〜…よかった←ようやく自分を取り戻したさくらでした。

こういう何気ない所の演技は倍賞さんの独壇場。なんという臨場感!



題経寺境内

おばちゃんお百度参り。



                       



おばちゃん、小さな声で「…軽くありますようにお願いいたします
さくら、自転車を押して「フフ…おばちゃん」と手をふる
おばちゃん「あー!どうだった?
さくら「大丈夫だったの
おばちゃん「あーよかったねー
おばちゃんお寺に「ありがとうございます。ありがとうございます
さくら「よしなさいよ

源ちゃん後ろでポーっと眺めてる。

さくら、感謝しろよ。おばちゃんのお陰で博のケガ軽くて
すんだんだよきっと。嬉しいね、その気持ちが。




とらや

今回のおしながき

冷蔵庫はオーソドックスに『雪印』

おでん   150
茶めし   150
赤飯    150
みつまめ  150
あんみつ  150
ところ天  100
磯おとめ  100
草団子   100
くず餅    100
焼き団子  100


草団子は一時120円になったがまた100円に値下げ(^^;)



とらや一同笑い

おばちゃん笑うことないじゃないか
さくらだっておばちゃんたら真剣な顔してさあ
おいちゃん面白かったなあ
いやあ、お百度参りのお陰かもしれませんよ。
 
軽くすんだのは
んだんだ(− −)

おいちゃんそういうことそういうこと
さくら博の袖を見てあら、破れてる
博「これなんだよ。いつもアームカバーしているだろう
さくらうん
今日に限ってしてなかったんですよ。
エアーの調子がおかしかったんでノズルの調整をしようと思って
こう…
腕を伸ばしたらこの袖口が機械に巻きこめれちゃってそのままこう…(><;)
おばちゃん「あー!嫌だ嫌だ!
さくら、怖がる「やめてさくら両耳をふさぐ
おいちゃん「こオー


すし屋「こんちはっ←いつもの備後屋、露木さん。

備後屋ってすし屋だったっけ?

おいちゃん「あれ?」
すし屋「お待ちどうさま」『松寿し』と自転車に書いてある。
おばちゃん「あら、おすし屋さん、うちで注文した?」
すし屋「ええ、そちらの社長さんから」
社長「そこ置いて」 満男離れる。
すし屋「はい毎度どうも」
社長「いや、みんなで食べてもらおうと思ってね
ほら、ごたごたしてて昼飯作る暇も無かっただろう?
社長気が利くね。
おいちゃん「おい社長…」
社長「いや、いいんだいいんだ今日は本当に皆さんに心配掛けて申し訳ない
狭いところに無理して機械置くとこう言う事になっちまって



                       



博「社長まだそんな事を」
社長「いや俺が悪いんだよすぐ労災の手続きして治療費は全額…本当に申し訳ない。じゃ俺はこれで」
深々と謝って、裏へ。

すし屋「あ、どうもっ」
満男来た寿司に興味津々で眺めている(^^)
おいちゃん「おい、あんまり気を落とすなよ

工場

社長「皆今日は仕事は打ち切りだ帰っていいよご苦労さん」
機械を直す
社長「どうもご苦労さん」
工員「お疲れ様」


社長「はー良かった…分かる分かる(− ー )


夕焼け 題経寺の鐘 ゴォーン…

カラス カアカアカア…


とらや 茶の間


博、味噌汁やご飯のおかず(イカ)を
スプーンで食べている。


茶碗をこかす
(おばちゃん、普通こういう時は平皿だよ。茶碗じゃそら、こかすよね)


おばちゃん「ああ、不自由だねえ
おいちゃん「何だこれみんな食べにくい物ばっかりじゃないかお前
おばちゃん「気が付かなかったねえソップでも作ってやればよかったねえ
ソップ汁:鶏肉のダシを使ったスープ類のこと。スープを聞き間違えて
ソップになったようだ。


博「お茶。もういらない
おばちゃん「悪かったねえ」
おいちゃん「いくら真面目に働いてきたってこんな事に片手でもなくなった日にゃ
誰も保障してくれないんだからなあ…たいへんだな博さんも

さくら「おいちゃんたちだってそうよ今までは丈夫ですごしてきたから
いいようなものだけでどっちか病気にでもなってごらんなさい

と言いながら博にタバコをつける。

おばちゃん「そうだよねえ。いつかは体だってきかなくなるんだからね〜
おいちゃん「なーに、そうなりゃは首くくって死んじまうよ
さくら「やあねえ、もう」
おいちゃん「フフ…」

御前様入ってくる。

御前様「御免。やあ皆さん」と店先から入ってくる
おばちゃん「まあ御前様…」
あー、これはこれは」と一同頭を下げる。
御前様「博さん、ケガをしたそうだなあ
博「たいしたことないんですけど」
御前様「軽くて幸いだった」とお見舞いの品
一同、恐縮して頭を下げる。



                       

御前様なんといっても博さんはこの家の大黒柱だからなァ
御前様いや、待てよ。博さんは車家の跡取じゃなかったか?
おばちゃん「さくらちゃんの、お婿さんでございますから
御前様「そうだったねえ…。こりゃ失礼」
おいちゃん「いや、博さんがこの店を継いでくれればそれこそ大黒柱なんですが、
まあ、博さんには博さんの事情がございまして、そんなわけには…


そんな大きな事情もあるとも思えない。むしろ寅のことを思って、
とらやの経営には一切タッチしないようにしているのかもしれない。


御前様「そうか…するととらやさんの跡取はいないのかァ…

おいちゃん「いや、一人おるにはおりますが…
御前様「誰だね?←御前様気づいてくださいよ。
おいちゃん「恥ずかしながら寅でございます
御前様「あ〜、なるほど、寅が大黒柱

一同照れ笑い

おばちゃん「はずかし…」

こりゃぁ困ったァ〜… っと、
おなじみのセリフ吐いて、考え込んでいる御前様。



おいちゃん、ちょっと笑いながら「すごい安普請でございます
一同、ハハハ
御前様「うん…困ったァ〜」といいつつ微笑む。

おいちゃん「何しろこの大黒柱住所不定でして

一同、ハハハ
おばちゃん「上手い上手い」

おいちゃん、寅ネタで楽しんでるね(^^;)

おいちゃん、暖簾のところの寅に気づく

御前様「ハァ!ハァ!ハァといつもの御前様笑い。
笠さんってコメディも間違いなく一流。

寅、ニコニコ笑いながら、「どうも御前様!



                       




寅「何を楽しそうにお笑いになってるんですかハハ・・よっしばらくだなオレだよ
なに不思議そうな顔してるんだおい、化けもんじゃないぞ、さくら


さくら「あんまり突然だからびっくりしたのよ

一同 ・・お帰り

寅「おらおらおら」とお土産をさくらに渡す。

御前様「元気かな寅」
寅「へっお陰様で」
御前様「うんそれは何より」
寅「へっ」


                       



御前様「それじゃあ
  大黒柱
帰りになった所で私はボツボツ…



一同どうもありがとうございました

御前様「あ〜あァ・・。じゃ」と手を合わせて帰っていく

一同御前様の方を向いて
おばちゃん「本当にどうも・・」
一同ありがとうございました
さくら「どうもわざわざすいませんでした」

遠くから踏み切りの音 カンカンカンカン・・・

おいちゃんたちが振り返ると寅が行儀悪く
おかずをモクモクと食べてる。



                       



満男「お腹すいた?満男お茶目で素直(^^)
寅「・・うんまあな(モグモグ)へへ・・(お茶を飲む)


おいちゃんそれを見て「・・車家の大黒柱か・・と落胆
さくら「お兄ちゃん!」
さくら食べてる寅に近づいて「お腹すいてるなら言ってよ何か作るから」
寅「へ・・じゃ悪いけどよ簡単でいいけど何か少し作ってくれや。な。」
おばちゃん「はいよ」

寅博の包帯を見つけて「何だ博ケガしたのかお前
博「ええ、工場の機械でちょっと
寅「そうだろう!だからオレ前から言ってんだよ危ない危ないって。え?あんなボロッ工場
やめちまえやめちまえ、おめえ!

おばちゃん「寅ちゃん!そんな無責任な言い方って無いよ!
寅「何だよ悪いかァ
おいちゃん「なあなあ寅、帰ってくる早々こんなこと言いたかないけどな。
実は今みんなでこの…
将来のことについて語り合ってたんだけどな

おいちゃん、寅ネタで笑ってたぞ \(^^;)

寅「ははァ・・相変わらず皆さんお暇ですねえ・・
おいちゃん「バカ!真面目に聞け真面目に!
さくら「そうよ少しはお兄ちゃんも考えてよ
寅「何を?
さくら「・・!」と言いかけるが、博が言う。
博「だからつまり兄さん自身将来についてですね、
少しは考えてほしいと

寅「オオッ?それじゃあ何か?俺が自分の将来について一度も
考えたことが無いとそう思ってんのか?
冗談言ってもらっちゃ困るよお前俺だって自分の将来ぐらい
考えてますよ
死んだ後の事まで…


普通、生きてるときの人生設計を考えてから、
死んだ後の事の順だろうが(^^;)


博「死んだ後・・?
寅「当たり前よ
博「例えばどういうことですか
寅「例えば…俺の葬式のことよ
寅の葬式好きはもう第2作の散歩先生や、
第5作で、すでに皆さんご承知。これはこれで困ったもんだ。



さくら「葬式?
寅「ああそれでなくても生前俺はお前たちに迷惑掛けてるし
さくら「・・…
寅「せめて、てめえの葬式ぐらい自分の費用で賄いたいと
そう思ってね
貯金だってしてるんだ

スッと貯金通帳をほんの一瞬腹巻から出す。

さくら「!!・・貯金?



                       




寅「まあいくらもたまっちゃいねえけどな

「貯金」:寅の辞書にない言葉。 だと思っていました(^^;)

おいちゃん感動いや額なんていくらだっていい

寅「そうかい?

おいちゃん「その気持ちだけでもうれしいじゃねえかな、さくら
おいちゃん「どうだ!久しぶりに一杯やるか!
寅「そうね
おばちゃん「貯金してるなんて?寅ちゃんさっきはごめんよ
寅「イイヨといい気分!
さくら「そうお兄ちゃんそんなこと思ってたの
寅「うん俺も年だからなあたまには寝られねえ夜もあるのよ
おいちゃん「わかる」ウイスキーのサントリー角瓶を開ける。



                           



寅「そんな時にはいろいろと考えるぜ
さくら「どんな事?
寅「オレみてえな者がこうして長らえたってのも、考えてみりゃみんな
心の温かい人たちのお陰だからねえ
おいちゃん何べんもうなずく

寅「お通夜の時はそう言う人たちにせめてもの恩返しに
おいしい酒の一杯も飲んでもらいてえとそういうところよ
さくら「そうねえそれがいいわねえ」
寅「だけど俺は精進料理ってのは嫌いだからねえ
寅「かまう事はないけどさやっぱり刺身かなんかでね
陽気にバァーン!といきたいな。
大体俺は派手好きだから。そうだろう


おいちゃん「そうだな。俺もどっちかって言うとそっちの方がいいなあ
おいちゃんそんなこと言っちゃって知らないよ〜(^^;)

寅「それとね御前様には悪いけどさ、あのお経
(手を合わせる)あれ嫌い!
あと、ほら
霊柩車
あの屋根のこうなった
(手であらわす)
キンキラキンのあれ嫌い!うん。


                          あの屋根のこうなった
                       




ともかく、そういうことは一切やめ!と調子に乗る。

さくら「そうねえ儀式張ったのはお兄ちゃんらしくないものねえと同意
寅「そうだろう。だから俺の野辺の送りにはだからあの江戸川に
屋形船の五艘も浮かべてもらいたいなァ!
と、どんどん調子に乗り始める。

おいちゃんたち少し戸惑う。
↑こうなったらもう止まんないよ寅って。おいちゃん(^^;)

さくら「屋形船?」と驚き。

寅「そう!先頭に俺の屋形船だ。
二艘にはさくら博、他に親戚一同。

寅「あ、おいちゃんおばちゃんは
そのころ死んで片づいてる。


おいちゃん、さすがにムカ顔。
おばちゃんとさくら、おいちゃんの顔色を気にする。
やばぁ〜い雰囲気(− −;)


                       おいちゃんの顔色をうかがうさくらとおばちゃん
                       




後の三艘にはハッピ鉢巻姿の柴又神明会
威勢のいい若い衆。


それと
本所深川
きれいどころの姐さんを二〜三十人!
あと笛太鼓三味線鳴り物も積み込んだ!!


さあ!出発だよぉ!


                 
さあ!出発だよ!
               



ネエ!

五艘の舟が江戸川を静かに下っていく!

♪エンヤトット
〜エンヤトット
松島
〜のオ!


                        エンヤトットォ〜 エンヤトットォ〜
                       



両岸で今や遅し待っている花火屋
大筒に
スッと思いを込めて火をつけた!
しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる…バーン!!



            しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる                バーン!
                   


玉屋ァ〜!!

パーッ!と散ったヤツが
パラパラパラパラパラパラ…




                タァーマヤァ〜!               パラパラパラパラパラパラ…
                  


このパラパラパラパラパラパラ…
おいちゃんたちの下を向いた表情の対比が最高!!




おいちゃん、情けない顔して「あ〜ヤダヤダ!
おばちゃん「ウゥゥ…しくしく
寅、シラケテ「…ツッ…は〜ウイスキーを飲む。
寅「おばちゃんちょっと醤油ちょうだい…
おばちゃん「情けないよウゥ・・
寅ウイスキーを取るが、おいちゃんが取り返す
おいちゃん「人の酒黙って飲むな!」 



                       

 
寅「何だよ」と取ろうとする
おいちゃん「うるせえ
と、もみ合い。

博「兄さん」
さくら「よしなさいよお兄ちゃん」

寅、「うるさいなこの野郎!博のギブスを叩く。
博、ビビリながらなんで僕ばっかし
この博のセリフ大笑い!

寅「何ィ!
寅バン!とちゃぶ台を叩いて「何だよみんな!クソ面白くネエ面しやがって!
なんか文句あるんだったらはっきり言ってくれエ!

さくら「あのねお兄ちゃんあたしたちは真面目に話してたのよ
寅「真面目だからいいってモンじゃないだろお前!え?
これだから
シャレのわかんねえ連中とは話にならないってんだよまったく!
博「シャレを言っていい時と悪い時があることぐらい分からないんですか?
寅「なんだこの野郎首から包帯つりやがってこの野郎大げさな、てめえなんだい
どうせお前
親指生爪はがしたくらいの事だろうこの野郎バカにしやがって
と博のケガの所を叩く。

博痛くて襖に吹っ飛んでうずくまる。
2回も…博っていったい(TT)


おばちゃん「まあ何て事を!
さくら「博さん大丈夫?

おいちゃん「寅!寅
おいちゃん「よーく聞け寅今日博さんがケガをして病院に
運ばれた時もしかしたら
指が何本か取れたんじゃねえか。
ひょっとして
片腕もげたんじゃねえか。
と俺たちゃどんなに心配したか。え?爪のあかほどでも
その気持ちが分かってたら今のてめえみたいな
口きけねえんだぞ。え?




                       



寅「あ〜・・と帽子を持って立ち上がる
さくら「お兄ちゃんどうするの?

寅「決まってるじゃねえかよ出て行くんだい!なんだい。
人がたまさか帰ってきたら、意見がましいこと言いやがって。
どうせね、俺はね遊び人だよ!お前さん方の苦労なんか分かりませんよヘッ!
結構毛だらけ猫灰だらけお尻の周りは糞だらけだい!あばよ邪魔したな


さくら「お兄ちゃん
寅「うるせえな
おばちゃん「ちょ、ちょっと寅ちゃん
さくら「ねえちょっと待って、お願い一晩だけでも泊まっていって…
寅「さくら
さくら「なあに?


さくらのテーマ流れる。

寅「これなあもう少し貯まってからお前にやろうと
思ったんだけど博の医者代にしろ


通帳印鑑を渡し、出て行く。




                       




さくら封筒から通帳を出す。




                       




郵便貯金通帳 諏訪さくら様 

  

                              



さくら、思いつめた表情


                       


さくら「お兄ちゃん…!と参道にかけ出す。



                       



寅はもう遠くへ…。


満男「バアバ、寅ちゃん行っちゃったの?
おばちゃん「

父も母ももういない、二人っきりの兄妹。
そんな兄が妹のためだけを思ってコツコツと貯めた7700円。
そのひとつひとつがさくらにはただただ嬉しかったに違いない。






通帳記載内容

49年  9月    800円        残高6800円 
 〃    〃17日1000円       残高7800円 
 〃    〃21日(引き出し)1200円残高6600円
 〃    〃30日 500円       残高7100円 
 〃  10月 2日 300円       残高7400円
 〃    〃 5日(引き出し)1000円残高6400円
 〃    〃14日 500円       残高6900円
 〃    〃22日 500円       残高7400円
 〃    〃27日 300円       残高7700円




寅が渡した「諏訪さくら」名義の郵便貯金通帳。
少額ながらもさくらのために実に足繁く通い、
入金を繰り返している。入金の額は小さいが1週間に
一度寅はさくらのことを考えながら増やしていったことが
伺われる。入金の回数だけ寅の思いがある。

ここ1ヶ月で2回ほど引き出しているのが、いかにも
寅らしくてリアルである。






九州 唐津


唐津神社秋祭り「唐津くんち」の花火が青空の下打ち上げられている。

国の重要無形民俗文化財で唐津神社の秋祭り「唐津くんち



                   



「唐津くんち」

唐津くんちは前夜祭ともいえる宵曳山(よいやま)で幕を開け、三日間、重さ1.5トンの
十四台の曳山が勇壮に市内を練り歩く。「エンヤ、エンヤ」「ヨイサ、ヨイサ」の掛け声と
笛、太鼓、鉦(かね)が奏でる曳山囃子(ばやし)が鳴り響き、唐津の街は毎年この時期、
くんちムード一色に染まるそうだ。五穀豊穣(ごこくほうじょう)祈願のため、市内を巡行
する曳山(やま)は、一八一九(文政二)年の一番曳山の赤獅子から始まり、
一八七六(明治九)年の十四番曳山の七宝丸まで、各町内では莫大な費用を使い、
競い合って豪華けんらんな曳山を作り、武家に対する町民の心意気を示す。




大勢の見物客が集まっている商店街の道を曳き山が練り歩いていく。
エンヤ!エンヤ!エンヤ!〜
ヨイサ!ヨイサ!ヨイサ!〜


唐津神社

寅の啖呵バイ 

うさぎの貯金箱兼置物 『愛してるの』『好きよ』って書いてある。(^^;)
敷物に『一億円札』の布




                        



寅「さあ!物の始まりが一ならば国の始まりが大和の国、
島の始まりは淡路島、ね!バシッ!バクチ打ちの始まりが熊坂の長範!
バシッ!どう!
赤い赤いはなに見てわかる。赤いもの見て迷わぬものは、木仏が、金仏、石仏だ。
千里旅する汽車でさえ、赤い花見てちょいと止まるというやつ!ねえ!
続いた数字が二つ、バシッ!ね!どう!兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ、
仁吉が通る東海道、憎まれ小僧世に憚る!な!仁木の弾正、お芝居の上での
憎まれ役っての。
続いた数字が三つ!ほら!三三六歩で引け目がない、産でしんだか三島のお千。
お千ばかりが女子じゃないよ。(かの小野小町が)京都は極楽寺坂の門前で
三日三晩飲まず食わずでのたれ死んだのが三十三!
続いた数字が四つ!四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、
粋な姐チャン立ちション便!ガハハハハハ!!


寅、『かの小野小町が』って言わないと誰のことかわからないよ(^^;)↑

人々の掛け声の中、曳山が趣のある橋を渡っていく。



               



佐賀県呼子港

ヌードショウ小屋『呼子ショー』の旗が見える道をぶらつく寅。

その横のよろずや


寅「ごめんよ」

寅、もう一度「ごめんよ」

後ろの路地から声「は〜い」

おばちゃん「何あげますか?」

寅「あ、おばちゃん、アンパンくんねえかい?」


渡し舟の船着場でアンパンを食べている寅、湯飲みのお茶をすする。
横はヌード小屋の裏。


女が赤ん坊を抱いて船着場にやって来る。



                        



女「おーよしよし。なんも力になりきれんで悪かったね

男「いろいろ世話になってすんまへんでしたな。今更、あんな女子に未練はおまへんねけどな、
未練おまへんねで、なんせこのガキがピーピーピー泣きもんでっさかいにもうわたい一人じゃ
どうしょうもできまへんのや。いっそのことコインロッカーにでもほりこんだろかほんまに…」キツイこと言うなァ八方さん(^^;)

階段でドテッとこける男
                        
女「バカんこと言うもんじゃなかよ!一生懸命探さにゃ、きっと見つかるバイ」

寅、座って聞いている。

男、小舟に乗りながら「おおきに…」

おんなから赤ん坊受け取り「すんまへんな。泣くな、何で泣くねや…」とダッコする。



                        



渡し舟 大人50円 小人25円

小舟が出る。

女「気ィつけて」

男「ほな、さいなら」

小舟が遠ざかっていく。


女、壁にもたれ、なんとなく寅に向かって

女「頼りなか親父だよ、ほんのこつ

寅、ニコっと笑って「訳ありかい?

女、小舟を見送りながら、

女「逃げられたとばい、女房に

寅「

女「去年、私のところでちょっと踊ってた娘(こ)ばってんね

寅、ゆっくり石段を降りて近づいてくる。女も、寅も
同じ匂いを持っているので、寅はとても力を抜いて
接している。こういう時の渥美さんの演技がほんとに好きだ。
田所康雄さんの素顔が覗く瞬間ではないか、とも思う。


女、小舟に向かって手を大きく振る。



                            








女、空を見上げて「あー、天気のよか…

寅「ここで踊ってんのかい?


女「フフ…こんな景色のよかとこへ来て、
暗か所で女の裸見て、どこがよかすかねえ…



寅「フフフ…別に裸を見るわけじゃねえよ。
姐さんの芸を見に来たと思えば
腹も立たねえだろう



女、寅の方を振り向いて

女「フフフ…兄さん、よかこと言ってくれるね

とちょっと嬉しそうに、にっこり笑う。


寅「そうかァ


と寅、かじりかけのアンパンをまたパクつく。



都はるみの「あなたの港」が流れる。


「♪ あの人の嘘で壊れたみじめな夢を
 抱いて泣き泣きああ一人旅〜〜〜」







                                         兄さん、よかこと言ってくれるね。
                     



女「フフフ…

女、アンパンの袋に気づく。

寅、紙袋をちょっと女の方に向けて、ひとつすすめる。

女、ちょっと、照れながら、

女「ありがと



                        



と、紙袋から一つ取ってがぶりとパクつき、笑う


寅、感心したように、ちょっと首をふり、女を見る。


この、なんでもないやり取りが実にいい。
アンパンの袋をチラッと見る春川さん。
それに応じるようにさりげなく春川さんにパンをすすめる
渥美さんのちょっとした動き。そしてその目は温かい。
春川さんならではの天真爛漫なアンパンのパクつき。いいねえ。




                        



小屋の中から流れる演歌の声

女、しゃがんで海を見る。



                        



カメラは遠くから二人を小さく映す。


呼子でのささやかな一期一会。




寅と女は同じ悲しみを持っている。稼業としても、
おそらく人生の中でも…。
そうでないとあのようなやさしい言葉は言えるものではない。
私はこのシーンを見るためだけに何度も「子守唄」を見続けるのだ。
この呼子のシーンは、渥美さんと春川さんだからこそ作り出せた
味わいだと思っている。透きとおった秋空のような清々しさがあった。


実際、ヌードショウを見に来る客は、ただ単に裸を見せられても興ざめだろう。
やはり、そこにはそれなりの「芸」が必要なのである。「銭が取れる芸」が。
渥美さんも春川さんも若かりし日々、そのようなヌード劇場で修行をしているので、
「芸」の力というものがいかに大事かを身を持って知っているのであろう。


浅草『ロック座』で、大きめのプロポーションと気立てのよさ、明るさで
人気ダンサーだった春川ますみさん。谷崎潤一郎も彼女の大フアンだった。
後に映画界にスカウトされ、現在も数々の映画に出演中。
そのような春川ますみさんにとってこの呼子のストリッパー役はある意味、
とてもはまり役だったと言える。実に味わいのある演技だった。








夜。旅館「馬渡屋」

晩酌をしている寅

赤ん坊が隣の部屋で泣いている。

男「隣の部屋の男の声「うるさいやつやなあ、静かにせえや、もう、飯くらい食わしたれや、
頼むわ。静かにせい!しまいに海の中ほり込んでしまうぞオ!」

泣き続ける赤ん坊。

男、キレテ「やかまっしゃい!見てみい、おまえのためにお汁までぬるうなってしもうとるやないか」
何言っても赤ん坊は分からんて(^^;)


寅、隣の襖を開けて

寅「兄さん」

男「あ、えらいすんまへんな、やかましいゆうて、今じき、黙らせますさかいな」

寅「いやいや…」

男、赤ん坊に「やかまし!アホウ!お父っつあん、どれだけ迷惑かかっとんのかわからんのか!
静かにさらせ!」どなると怖がってかえって泣くって(^^;)

寅に向かって「すんまへん、泣きやみまへんのや…、あ、今日確か…えらいすいまへんなあ…」

イソップ童話の『太陽と北風』読めよな、おじさん(−−;)

寅「ん、いいよいいよ。」

寅「それより、こっちきて一緒にやんねえかい。ひとりじゃ、酒も美味かねえや。な。」

寅、廊下に出て「姐さん」

下で「はーい」

寅「お銚子2〜3本と、何かツマミ持って来てくれよ」

下で「はい。ただいま」

階段の下に「からつくんち(唐津くんち)」のポスター。

寅の部屋で酒を飲む二人。

寅「さ、兄さん、ま、一杯やんなよ」とお猪口を渡す。



                        



男、赤ん坊ダッコしながら「そうでっか、おおきに」
寅「あ…冷たくなっちまったな」と徳利でついでやる。
男、美味そうに飲んで、返杯。
寅に注ぐ。

寅「ストリップのお姐ちゃんに、話は聞いたよ

男「そうでっか」

寅「うーん」

男「悪い女でなあ…、わたい、コロッと騙されましたんや」
男「っというのは、ちょっと顔がよろしいのや」どうでもいいって(^^;)

寅「兄さん、小さいのより、でかいのいこうか」っとコップを渡してやる。
男「あ、おおきに」
寅「嫌いじゃねえだろ」
男「好きだんねん」
寅「うん」
注いで
寅「あいよ」
男「これも好きだんねん」と魚を指差す。
寅「お、いいようん、うん」とすすめる。

魚をつつく男

寅「しかし、考えて見りや、生まれた子供にはなんの罪もねえんだからなあ
男「そりゃまあ…」

寅「いやなんだかオレも口幅ったい事を言うようだけども、オレもね、
母親知らねえで育ったんだ


産みの親である菊に捨てられ、寂しいく辛い幼少期を
過ごした寅にとって、捨てては置けないなにかがあるのだろう。


男「へェ…」
寅「うん〜、だから、こういうチビ見ると、他人事とは思えなくってよ」
寅、赤ん坊を見て、頬に手を沿えて
寅「な、可哀想に、可愛い顔してるじゃねえか」

男、泣き始める。

寅「どうしたい、泣くこたあねえじゃあねえかよ、え
赤ん坊泣き始める
寅「ほれ見ろ、赤ちゃんまで泣いちまわ、なあ。
男、泣き続ける。
寅「おかしい父ちゃんだな、泣いたりして、よしよし、おーよしよしよし、ほらほらほら



翌早朝

宿の前の港風景
小さな漁船が出て行く。

寅が寝ている横に赤ちゃんも寝ている。(赤ちゃんは目は開いて起きている)


置手紙『この子をよろしくお願いします。
 すいません。ほんとうにすいません。
 御恩は必ず返します。寅先生



置手紙には『佐藤幸夫』と書かれてあった。



                        



柴又帝釈天参道

博が手に包帯を巻いて帽子を被り自転車でとらやに向かう。

とらや

博「ただいま」
おばちゃん「あー、おかえり」
さくら「どうだった?」
博「うん、もう2、3日で包帯とっていいってさ」
社長「そうか、そりゃよかった」
さくら「思ったより早かったわね。じゃあ、もう病院いかなくていいの?」
博「うん、ちょっと残念だけどな〜」
さくら「どうして?」
社長「分かった、美人の看護婦さんに会えなくなるからだろう?」
博「そう←博にしては珍しい発言。よっぽど気に入ったんだな(^^)
さくら、博の思いっきり背中を「バシッ!」っとたたいて
さくら「まったく、ねえ
←(^^;)



                        



社長「ハハハ!」
おばちゃん、笑いながら「寅ちゃんだったら、絶対に、治った。なんて言わないよね
社長「ほんとほんと、もう来なくてもいいって言われたって『いえ、まだ、痛むんです』とか
何とか言ってね、ハハハ

おばちゃん「そうよね、フフフ」
博「でも、兄さんだったら間違いなく惚れるなあ〜。なあ、さくら
こういう時の博は的中率100パーセント(^^;)

さくら「明るくて、いつもニコニコしてて、ほんとにいい人だもんねえ」
博、頷きながら「真面目な話さ、兄さんが病気になったりしても、あの病院だけは
避けた方がいいぞ
無駄無駄すぐ見つかるって(−ー)
社長「ほんとほんと」
さくら「大丈夫よぉ〜、お兄ちゃん病気したことないじゃない」
博「恋の病以外は、か?」
社長「あれは、♪お医者様でも…、治らねえんだよ。ハハハ
博「ハハハ」
おばちゃん店先を掃除している。

社長、店先に行きながら「お医者様で〜も、草津〜のぉ湯で…??
おばちゃん、呆然とし、怯えて店に戻ってくる。
道の向こうを指差して、『石』になっている(^^;)
社長、驚いて、ヘルメット被って、店先に出て見に行く。
                        
社長、ぎこちなく店の中に戻って、ガクガクブルブル(((゛◇゛)))。

博とさくらそれ見て「???」
おばちゃん、ようやく声出して
おばちゃん「ちょっと〜! あ…と指差したまま。



                        



赤ちゃんのガラガラおもちゃの音が聞こえて来て、

寅が、赤ん坊を背負って荷物をたくさん持って
ふらふらでやって来る。


寅「ここが家だよ」
赤ん坊寝ている。


寅、フラフラよたって戸を何とか持つ。

おばちゃん、ビックリして立ち上がる。
タコ社長、固まっている。

寅、戸をもって仁王立ち

寅「おばちゃん、家のものはみな達者かい?
おばちゃん、かすれ声で「ああ」
寅「フ、とんだしょいものをしてな〜、…

おもちゃをその場に落として、

カクッっとつまずいて前によろけて椅子にへたりこむように座る。
カバンもなにもほうり出してしまう。


全員固まってしまって動けないでいる。



                        



寅「あー!くたびれたなあ!!

さくらと博も足がすくんで近くまで来れない。

寅「九州から上野の駅までずっと泣きっ通しでよ。ちょっと肩凝っちゃった。
下ろしてくれ、下ろしてくれよ
無精髭が伸びている。

まだみんな固まって動けない(^^;)

寅「さくら!何とかしてくれよ!おい!

さくら、ようやく赤ん坊を見に近寄る。

寅「あ〜…、まいったなあ、おい

さくら「お兄ちゃん、いったい!?

っと赤ん坊を背中から外そうとする。

寅「いいよー、訳は後だからさ、早く放せ、放せよ、おまえ



                        



さくら、博、社長の3人がかりで、外そうとする。

寅、首が紐で絞まって
うおっ!何だい!何やってんだよ!


                        



みんなで紐を解く。

寅「いー、痛い痛い!あ!あああお!


ようやく、外してさくらが赤ん坊をダッコする。

寅「あ〜、はァ〜、水持って来てくれ、
水を!早く、水を!

みんな赤ん坊に意識が行っていて誰も聞いてない(^^;)
事情を知っている観客側としては寅に同情してしまうね。


さくら、赤ん坊を抱いたまま気が動転して

さくら「おばちゃん、どうしよう!
おばちゃん「どうしよう…



                        



さくら「あら!?
おばちゃん「ん?
さくら「お尻がぐしょぐしょ!
おばちゃん「ちょっと、おしめ、おしめ!
博「とにかく上へ
慌てふためいた博とおばちゃんぶつかって
おばちゃん「あいた!

さくら「誰かに借りてくる走って奥へ飛んで行く。


寅「ちょっと、誰か水くれよ!
寅、誰も聞いてないって ヽ(^^;)



社長、ヘルメットを持ちながら怯えた目で寅を見つめている。

寅「水持って来てくれよ!!、もう!!とどなる。
とらや御一同、勝手に色々思い込んで
寅どころじゃない精神状態(^^;)



                          水持って来てくれよ!!、もう!!
                        



奥では、てんやわんや。

社長、ヘルメット放り投げて、工場の方へふっ飛んで行く。


店の寅はうつ伏せになって目がペケ。

ガクッ!
テーブルにうつ伏せ(^^;)


社長のヘルメット、コロコロ転がって電話の横へ。




工場の中


社長、目をひんむいて
社長「おい!大変だぞ、寅さんにな、
 赤ん坊が生まれたんだ!
おいおい (^^;)

工員達「えー…
社長「大変だぞ!これは!嬉しそうだね社長(^^)



                        




第13作「恋やつれ」の『重大発表の時』と同じパターンで
タコ社長はこれから柴又の街中に宣伝に!
大変だねえ〜。仕事しろよな。(- - ;)


題経寺横の雑貨屋

さくら、あわててやって来て

さくら「ミルク1缶と、ほ乳瓶と、え〜っと…、
店のおばさん「大変ねえ、寅さんに子供がいたんだってねえ←でたあ!!
さくら「ええ…」っと言ったあと「え!?」っと唖然…




                        




情報早い!タコ社長や源ちゃん、備後屋が走りに走る!
柴又町民の伝達能力は光フアイバーなみの速さ。凄い!
これは大変なことになってきたぞ。







題経寺の鐘(源ちゃんが撞く)
ゴーン ゴーン ゴーン

とらや

2階で疲れてぐっすり眠っている寅


とらや茶の間

おばちゃん「寅ちゃんがお嫁さんもらって、赤ちゃんが生まれたら、
みんなでお祝いして、ああもしよう、こうもしようってどんなに楽しみに
してたかしれないのに、こんな事になっちまって…

めそめそ泣いている。

おいちゃん、うるさい!もう!泣くな
と、新聞を座敷にたたきつける。

ふきんで泣いているおばちゃんのふきんを取り上げる博

さくら、籍なんかどうなってるんだ。まだ入ってないんじゃないか。
さくら、知らんて(^^;)

おいちゃん「騙されてるんじゃないか、あいつ
さくらそんなこと分からんて (^^;)

さくら「その、母親っての、いったいどこにいるんだい、え?さくらちゃん
さくらはまだ、なあ〜んにもわからんて (´д`;)



                        



さくら「そんなこと私に分かるわけないでしょう。
あたしだって泣きたいの我慢してるんだもの

と顔に手を当てて半泣きで落ち込む

おばちゃん「ウウウェ…とエプロンを顔に当て泣き続ける。



御前様入って来て

御前様「いや、みなさん

一同、恐縮して

おばちゃん「あ、御前様、お恥ずかしい…
   

                        




御前様「いろいろ聞いたがァ、大変だね、みなさんも小津監督的カメラアングル

おいちゃん「みっともないことになってしまいまして…、
もう、長生きしてもいいことはございませんですよ、ほんとに


おばちゃん「申しわけございません」

御前様「さぞ、辛いことでしょうがァ、しかし、人の噂も七十五日とか言ってな、
そのうち忘れますよ。


おいちゃん「そうでしょうか」

おばちゃん、「ありがとうございます」っと手を合わせる。

御前様「ほぅれェ〜、寅が捨て子同然に、
この家に貰われてきた時もこうだったでしょう

そういえば、そういうことも…( ̄ヘ ̄)


おいちゃん「ああ、そういえばあの時も大騒ぎでしたァ…

御前様「まあ、これも何かの因果と言うものかもしれん。
とにかく、生まれてきた子には罪はない


一同頭を下げる

御前様「ところで、どうしたのかね?父親は
御前様ちゃうって ヽ(^^;)


2階から寅、あくびをしながら下りてくる。


寅「あ〜、あ、あ〜ああ〜、よく寝たよく寝た。
あ、どうも御前様、どうも


御前様、寅を見続ける。

寅、台所の土間をうろうろしながら

寅「もう、お聞き及びでしょうねえ〜

御前様「…」

寅「え〜、まいった。世の中には酷い女もいますよ。
てめえで産んだ子を人に押し付けて、それっきり…


おいちゃん「寅!

人差し指を突き出しながらわなわな震えて

おいちゃん「…御前様にお詫びしろ!
おばちゃん「もうしわけございませんめそめそ

寅「何言ってんだ、何でオレが御前様にお詫びしなきゃならないの?

おばちゃん「だってそうじゃないか。え〜。
こんなみっともないマネをしでかして〜!
めそめそ

寅、座敷に上がりながら

寅「変なことを言うね、おばちゃん。オレがこの赤ん坊を
抱いてきて、なぜそれが、いけねえんだ?
普通だったら途中で放り出してるよ!
オレはちゃんと、抱いて帰ってきたんじゃないか!

冗談言うない、褒められて当たり前だよ。
謝る覚えなんかないよ、オレは





                        




御前様「寅!おまえはそれでも父親か!


寅「父親、?誰が?


御前様「おまえだ!バカッ



                        



寅「どうしてオレ…?キョロキョロ
寅、「あ!?カァ〜!ヤダヤダ
寅「おい、さくら!それじゃおまえたち、
その赤ん坊の父親がオレだと
思ってたのか?



さくら「違う…んでしょ ←さくら、上手い!



寅「あたりめえだい!見比べてみろ!
 現物オレとを!似てるか!?



一同、赤ん坊を見て比べる。


                  赤ん坊の顔を見                              寅の顔と見比べる
                        





寅「ええ、そんなこ汚ねえガキと…、
味噌も糞も一緒にするねい!

表現がきちゃない(^^;)


博とさくらほっとして顔がほころぶ。

さくら「よかった…ε=( ̄。 ̄;A

おいちゃんも、ようやくほころんで「疑って悪かった」と頭を下げる。

御前様「じゃ、寅、その子は、誰の子だ?
ごもっとも(^^;)

寅「ェ。。。それが、話せばね、長いことに…

赤ん坊の泣き声

寅「ほらほら、おい、赤ん坊泣いてるよ、ほら

さくら「ほら、よしよしよし…おばちゃん?この子熱があるんじゃないかしら?

おばちゃん「え、どれどれ…」

寅「大丈夫か、おい、え?オレと九州から長旅してきたから、
疲労がどっと出てるんだよ。ん、医者にちょっと診てもらえ、な


さくら、博に「そうしようか
博、「そうだな」と、うなづく

寅「あ、博、おまえどっかいい病院知らないか?

博とさくら顔を見合わせて、ドキッっとする。

御前様「博さんがそのケガで
  通っていた病院どうかね?


御前様、余計なことを(^^;)。
そういえば第12作「私の寅さん」でも
御前様が九州旅行をバラしていたね。




寅「あ〜それがいい、それがいい、そこにしろ、
そこだったらおめえ、医者や看護婦知ってるだろう


博「しょうがない。行こう

さくら「うん

博「工場の車、出してきます

寅「うん」

御前様「寅」

寅「え?」

御前様「おまえも、行った方がいい
御前様、またまた、余計なことを(^^;)

寅、立ち上がろうとする

博、間髪をいれず、いや、兄さんはいいですよ

寅「どうしてよ?」

さくら「お兄ちゃん疲れてるから

御前様「しかし、おまえも責任があるから
またまたまた、余計なことを(^^;)


寅「そうだね、責任あるし、じゃ、ちょと」

博「いや、あの、気持ちは嬉しいけど、車が小さいから」

寅「乗れないの、オレ?」



                  



さくら「そう、二人しかきっぱり!
あのライトバン、4人乗れるよ!

博「じゃあ、御前様」

御前様「うん」

寅「悪いな、ほんとな」

博とさくら裏から出て行く

寅「頼むよ」

寅「へへ、ねえ御前様、オレほんとのこと言うとね、病院嫌い。
あの匂い。
それからバイキンがいっぱい付いたスリッパ。
それと、あのツンケンとした看護婦。
イ〜〜ッ!!
凄い偏見!


吉田病院


診察中

京子「はい、お終い」

医師「少し風邪気味ですね。ま、たいしたことはないでしょう。薬、あげますから」
医師「ええっと、お子さんの名前は?」

博「おい、なんて名前?

さくら「さあ?
知らんよねえ、そりゃ(^^;)

京子「あらあ、諏訪さんのお子さんじゃないの?




                    




博「ええ、ち、違うんですよ。ちょっと訳がありましてね…」

京子「まあ!どんな?」

博「その訳は…よく分からないんですが…ほんとほんと(^^;)

さくら「ちょっと、電話で聞いてくる」

博「そうだな」




とらや

電話でさくらと話している寅

寅「生年月日? そんなもん知るわけねえじゃねえかおまえ

寅「名前?知らないよ、そんなの

寅「なんでもいいよ。適当につけとけ。花子でどうだ。うん?



                    



さくら「何言ってんの、男の子よ
しょうがないわねえ、もう…じゃあいいわ」と電話を切る。

別に寅が『しょうがない』わけではない。赤ん坊を置いて
逃げた男がしょうがないのだ。



とらや、裏庭

おばちゃん、背中に赤ん坊背負いながら
オシメを干している。




                     



工員「おばちゃん
おばちゃん「はい」
工員「大変ですね」
おばちゃん「ああ」
おいちゃん「おーい、お勘定だよ」
はーい



とらや

おばちゃん、店に戻って、どうもありがとうございます。
大変そう…。


さくらやって来る

おばちゃん「あ、さくらちゃん、おーよしよし

おばちゃん「そうすると450円頂きます。レジを打つ」
さくら「おばちゃん大変ね、赤ちゃん元気?

おばちゃん「すまないけど、ミルク作ってくんないかい



                   




さくら、急いで作りに行く

おばちゃん「ええっと550円のお返しね」

さくら「お兄ちゃんどうしてるの?いったい

おいちゃん、団子の箱詰めに大忙し

おいちゃん「ええ、さっきから2階で歌かなんか歌ってるよ。
ほれほれ、聞こえるだろ
怒ってる

寅、2階から下りて来る
寅「♪元気でい〜てえねえ〜、っか

『好きになった人』

都はるみ

昭和43年(1968年)

白鳥朝詠 作詞
市川昭介 作曲


さようならさよなら 元気でいてね
好きな二人は いつでも逢える
たとえ別れて 暮らしても
お嫁なんかにゃ 行かないわ
待って待って
待っているのよ 独りでいるわ
さようならさよなら 好きになった人


さようならさよなら 指切りしてね
固い約束 忘れはしない
恋をしたのも 泣いたのも
そうねあなたと このわたし
好きで好きで
好きでいるのよ 愛しているわ
さようならさよなら 好きになった人


さようならさよなら 泣いたらだめね
つらい気持は あなたもおなじ
ひとり待ってる わたしには
幸せもって 帰ってね
早く早く
早く帰って 笑ってみせて
さようならさよなら 好きになった人




寅「あ〜あ、退屈退屈、さくらちゃん、昼飯まだかい?

さくら「お兄ちゃん

寅「ん?」

さくら「みんなが忙しい時は少しくらい手伝ったらどうなの?

おいちゃん立ち上がって

おいちゃん「あ〜、どいたどいたぢたー!邪魔だ」っとアンコを足しに行く

寅「なんだよ。何を手伝うんだ、オレが?

さくら「たとえば子守りをするとかさ

爪楊枝加えながら「冗談じゃないよ、おまえ。オレが子守りなんか
出来るわけないじゃないか


さくら「だって、お兄ちゃんが連れてきた子でしょう?」

おばちゃん「あんたにはね、情愛ってもんが欠けてんだよ

寅「欠けてるかね。上等だよ、他人様の子だもんな
おおっと!言うねえ、寅(^^;)

マンガ本を見ている

さくら「なんていい方するの!


おいちゃん「ほっとけ、ほっとけ、こいつは、父親になる
    資格なんかねえんだい


父親になる義務も無い(^^;)



                    




寅「けッ!なりたくねえよ、そんなもんには。クソ面白くもねえな、
昼飯も晩飯もいらねえやい。どっか、面白いとこいって、遊んでくるよ
 」

と店の方へ出て行く

寅、はっ、とする

店先に京子が立っている。



京子のテーマが流れる(この曲も名曲)

寅、ぼ〜ッっと京子を見る。



                   



さくら、暖簾をくぐって、京子に気づく。

京子、さくらを見て安心したように「こんにちは



                   




寅、勘違いして「こんにちは



                   



京子「やっぱり、ここだったわ夕べうかがってたもんですから

寅、頷いてにこにこ

さくら「まあどうも、夕べはお世話様でした

寅??

京子「いかが?赤ちゃんの様子は?」

さくら「ええ、もう すっかり」


さくら、裏へ向かって「おいちゃん、おばちゃん!
寅、真似ておいちゃん、おいちゃん

おばちゃん、裏から声「はい」

さくら「病院の看護婦さん

寅「病院のきゃんごふしゃんうわずっている。

さくら「ほら、いつも噂してる…

↑寅、ピンっと来て、昨日のことを思い出してる感じ。
やばいぞ、さくら…。


おばちゃん「まあ、どうも、いつも家のものがお世話様になりまして」

と深々と礼



                   



おいちゃんもやって来て「あの…今日はまたわざわざ?」

京子「いえ、夜勤明けでね、家へ帰るところなんです。
金町まで買物があったものですから優しいね

おいちゃん「そうですか」
おばちゃん「ほんとにどうもありがとうございました。
おかげさまでね、今朝は、よくミルクを飲みまして

おいちゃん「はい

京子「そう、よかったわ。少し痩せてるから心配しちゃって」

寅、爪楊枝を、口から落としてしまう。


         


京子「よかったわねえ、元気になって」

京子「あんた、お父ちゃんお母ちゃんもいないのね。可哀想に。おろろろ、ちゅちゅちゅ…」

寅、おもむろにやって来て
寅「さくら、あ、赤ちゃんどうもありがとう。
オレが抱こうか、いつもの通り、ね。

っとしらじらしく抱く


さくら「あの、私の兄です




                   





京子「あ、この方、夕べのお話に出た」

さくら「ええ」

さくら「お兄ちゃん」

寅「はい」

さくら「病院の看護婦さん、夕べお世話になったの」

寅「寅次郎です。どうもよろしく

京子「木谷京子と申します。
事情は妹さんからお聞きしましたわ。大変でしたわねえ。


マドンナの本名は「木谷京子」さん!

寅「
ええ、思わぬ苦労を背負い込んじゃいまして…フフフフ

おいちゃん、おばちゃん、後ろで「…」

京子「でもそうやって抱いてると可愛いでしょう



                   





寅「そうですねえ、情が移ると言いますか、まるで他人の子ども
だとは思えなくって。ええ、フフ…

よく言うよ、しらじらしいね、まったくさっきまで
他人様の子って言ってたのに(− −;)


京子「フフフ

後ろのさくらたち、しら〜〜


京子「いい方に拾われてよかったわね」

さくら「まあ…無理やり微笑む

一同苦笑い(^^;)


寅「オレはほら、子供好きだもんね、なあ、さくら

さくら「そうね」  ←精一杯の皮肉を
こめて、目線がキツイさくらでした。


寅「好きだなあ!子ども、フフ
小さな声で「
なに言ってんのよ
さくらの小さな抵抗。第12作のりつ子さんの時も
「自分が言ったくせに」って小声で小さな抵抗をしていたさくら。



京子「あ〜、安心した


                       なによ…(さくらの表情注目!)
                   



さくらたち「ハハ…」

京子「それじゃ、私これで、
おばちゃん「あの、お茶を一杯でも


 京子「いいえ、私、家へ帰って一休みしないと…。なにしろ眠くて眠くて

寅「はあ〜、…看護婦さんのお仕事っていうのは大変なんですねェ…」

京子「フフ…それじゃ、失礼いたします」

一同 「わざわざありがとうございました」

京子、赤ん坊に「さようなら〜あ]

京子のテーマ流れる

寅、赤ん坊ダッコしながら店先まで京子について行く。

じゃあどうも、気をつけて

おいちゃん「ごめんなさい

京子、去っていく。

寅「またどうぞ」



おいちゃんたち、しらけて奥へ引っ込む

ヒヒっと笑っていた寅が
急にさくらの方へ向かって怖い顔


さくら、昨日のことがバレたので、ちょっと気まずい顔している。

すすっと歩いてさくらに赤ん坊を渡して、服をはたいて



                   


寅「そういうわけだったのかあちゃ…(><;)
さくら「何が…?

寅「とぼけるなよ!このやろう!怒りで声が裏返ってる。

寅「どうも、おかしいと思ったんだよ。
オレが夕べ帰ってきたとき、お前たちオレのことを病院に
行かせない算段したろう。


さくら、ぎこちなく「
し、しないわよ そんなこと
往生際が悪いさくら(^^;)

寅「した!した!したよ!

寅「博ちょっとここへ呼んで来い。あの野郎脅かしてやるんだ
博のやつ、ここへちょっと呼んで来い!!

しかしさくらって、いくらあとでややこしい事になるからといって、
寅をマドンナに無理やり会わさないのは極端だ。
ハナから、物語の成立を、寅の恋愛を否定してるってことに
なってしまう。寅の恋愛が成就しないのはしょうがないとしても、
寅が『人を好きになる機会』を奪うのは可哀想とも思う。
おいちゃんたちはめんどくさいこと嫌だからいかにもやりがちだが、
さくらが兄の恋愛のきっかけの芽を摘むのは、
さくららしくないとも思うんだが…。



京子、また店先に戻ってきて

京子「あー、肝心なこと忘れちゃって


寅、急にニコ〜ッっとして、赤ん坊を抱きもどして、
寅「はいはいはい。はい。
 いらっしゃいませ。何か?

もうそれやめれって、その演技は(^^;)

さくら、寅の態度にカチン(− −メ) 


                   



京子「いいえ、フフ、お団子買っていこうと思っていたのに
寅「あ、そうですか」
寅、さくらに「お団子ですって
さくら「はい」っと言いながら、プイッっと裏へ。(怒ったぞ!)
寅「まったくおまえも愛想のない女だねえ。
情愛ってものにかけてんじゃないかお前は

それはさっき寅がおばちゃんに
言われていたセリフだろうが ヾ(~∇~;)


京子「あら、そんなこと…」

寅「いえね、私が抱きゃァこうしておとなしいのに、
あいつが抱くとギャアギャアギャァ泣くんですよ




この作品のようにマドンナのいる時に限って、自分をよく見せよう
とする寅は第8作「恋歌」などでも少し演出されていたが、
寅がマドンナとの出会いから自分を必要以上にいい人に装う
時って、結果的には、マドンナとの縁は薄いときが多い。
その反対に、マドンナとの出会いの時に寅の『地』が出せた場合は
結構縁の深いいい関係になる場合が多い。
お千代さんとの出会い。リリーとの出会い。ぼたんとの出会い。
ふみさんとの出会い。光枝さんとの出会い。かがりさんとの出会い。
などは実に自然体で彼女達としゃべっている。
今回も呼子の春川ますみさんとの出会いは爽やかないい風が
吹いていた。自分をよく見せようと背伸びをしたらダメになる
っていうのは古今東西、恋愛の基本だからね。




京子「あんまり抱くと抱き癖がつきますよ
寅「ええ、私もそのこと心配してましてね
さくら「お待ちどおさまでした
寅「あ、できた。ハイハイハイ、どうも
さくら「500円いただきます
大中小の折り詰めあるのに、『どの大きさにしますか?』って聞かないで500円の
箱にしてしまったさくらって…(^^;)

寅「おついでの時で結構なんですよ、またどうぞ
京子「それじゃ、具合悪くなったらいつでも来てください

寅「いつでも、いらっしゃいます?

↑寅じゃなくて、赤ん坊だよ(^^;)

京子「はい
寅「あ、そうですか

京子「失礼します」っと帰っていく。

寅、見送りながら「それじゃどうも、またどうぞ。どうもありがとうございます。ハハ

さくら、腰に手をやって冷たい視線で寅を見る。
さくら(−−;)怒ってますよ〜。


                          



寅、ぎこちなく「はいはい、さ、お母ちゃん、はい
さくら、「お母ちゃんなんかじゃありませんよ」っと、さっと作業場のほうへ。(怒



                   




寅、バツが悪くて、台所の方へ行って
寅「おばあ〜ちゃん〜
おばちゃん「私だって知らないよ」と茶の間に逃げる。


                   



寅「おじいちゃん〜
おいちゃん「そんなもんじゃないよ」っとそっけなく作業場へ。




                    




ネギカモ(ネギダコ)のタコ社長やってくる。

寅「あ、タコちゃん!
社長「赤ん坊元気になったか?←エジキが来ました(^^;)
寅「うん、元気になったなったなった
っと赤ん坊をサッと手渡す。



                   


寅、間髪をいれず、「飯でも食ってくるか」とサッっと外へ。
あっという間に消え去った。ダメダコリャ! ┐(-。ー;)┌


社長、おばちゃんを見ておろおろしながら
社長「お〜、よしよしよし!(おろおろ)
お〜、よちよち、バア〜!
ハハ…
あ〜、タコちゃんよ!お!パァ!


おいちゃん、キョトン。


                    映画とはいえ、赤ん坊可哀想(^^;)
                        

 

↑社長、その顔怖い!近い!
かえって赤ん坊泣いちゃうよ (^^;)



前途多難だねえこりゃ…。





京成電鉄 江戸川駅

アパートに戻る京子

隣の人「木谷さん」
京子「はい」
隣の人「小荷物が来てますよ」
京子「すいませ〜ん」

東京都江戸川区小岩4−13−6
木谷京子 様


山形県米沢市通町3−4−15
木谷はな


りんごと干し柿。

赤い電話カバー
京子「母さん?今、りんご着いた。どうもありがとう。元気?ん…。私、夜勤明け、
これから寝るとこ。うん、うん、また、手紙書くから…、うん、それじゃ

りんご放り投げて手で掴んで

小さい頃から母一人子一人の環境で育った京子。
母親も若かりし頃看護婦さんで、京子も自分がこの仕事につくことが
当たり前だと思ってきた。そのような母と娘なのだ。




                   



コタツを入れて、ゆったりと雑誌をめくる。

このあたりの電話での何気ないやり取りや、
京子の静かな一人だの時間っていいよね。
京子の人生が唯一臨場感を持って感じられるシーン。
この映画はこういうなんでもない場面が実にいい。




題経寺 境内

源ちゃんがなんと子守りをしている。

変に似合っているぞ源ちゃん(^^;)

しかし誰が源ちゃんに、子守りを任せたのだろう?
さくらやおばちゃんのわけないし。
寅はもともとそんなものに
関わらないだろうし、不思議だ…。

一番考えられるのは、とらやでみんなが忙しい時、
寝ていた赤ん坊が起きて、泣き出した。その時、とらやに
遊びに来ていた源ちゃんに、寅が赤ん坊を抱かせて、
面倒見てろって題経寺までおんぶさせて面倒見させた。
おばちゃんも店が忙しくて、それを見届ける事が出来なくて、
アパートからとらやにやって来たさくらにすぐ知らせて、
急いでさくらが、境内に引き取りにきた。ということか。
もちろん、寅は、すぐに逃げてどこかへ遊びに行った。
もしくは、御前様が気を利かせて、源ちゃんに子守りの
手伝いをさせたのかも。

源ちゃん「あー、よしよし
森永マミーのベンチ

豆腐屋のラッパ

パープー

御前様やって来て、赤ん坊をあやす。

御前様「お?おしっこしてるんじゃないかァ?
どてらを脱がせて、オシメを変えさせようとする。

さくら、走ってきて
さくら「どうもすみません、御前様。どうしました。」
御前様「おしっこしてる、おしっこ
源ちゃん、デンデン太鼓を置いてどてらを脱ぐ。
さくら「あら、すみません」って手伝う



とらやの茶の間

石油ストーブが仏間についている。これはちょっと珍しい!
源ちゃんの着ていた子守り用のどてら吊るしてある。

社長やって来て寅さん、会っちゃったんだって?看護婦さんに。
大変だねえ、これから。なんとか会わせないようにできなかったかね

社長、ほんとは楽しみが増えてうれしいんじゃないの?(^^)

おいちゃん「一応打つべき手は打ってみたんだがね。
まあ所詮、小細工を弄したって無理よ。
なるようにしかならないんだからな
んだんだ(− −)

社長、蜜柑食べながら頷いて
社長「うん…工場の経営もそういうとこあるけどね
おいちゃん「そういうこと、そういうこと
おばちゃん、仏間で赤ん坊寝かせて

おばちゃん「よしよしよし、お前はどこにもやりゃしないよ。
    おばあちゃんが、ちゃ〜んと育ててやるからね


社長「おばちゃん、かわいいかい?

さくら「とっても懐いているのよ

社長、しみじみと「なにしろ、このおばちゃん、
     子どもができなかったんだからな


社長、相変わらずはっきり言いにくいこというねえ。


おいちゃん、そっとおばちゃんを見る。
人生の機微だねえ…。( ̄  ̄) 

タコ社長、オカキを口から落とす。
おいおい(^^;)


博「さくら、そろそろ」

赤ん坊を寝かせて、おばちゃん茶の間にやってくる。
おばちゃん「寝た寝た

おばちゃんの顔、嬉しそう。



                   



博に甘える満男。




さくらのアパート

電話をしているさくら

今回は電話カバー無し(黒電話)

さくら「え?病院に連れて行くの?その程度ならいいんじゃないかしら

満男、掃除機を、自動車代わりにして遊んでいる(^^;)



                   



寅、電話の向こうで「なんだよ、おばちゃんと同じこと言うのかい
さくら「どうして?


とらやでの電話

寅「いいか?これがオレの実の子だったら、
いちいち
ウンチが軟らかいくらいで大騒ぎはしやしないよ
こりゃおまえ、他人様の子なんだよ。もし、この子に間違いがあってみろ、
お前、
弁償できるか!?
弁償って…(^^;)
さくら「じゃあ、どうすればいいっての?
寅「だからさ、お前に相談してね、赤ん坊病院に連れてってみようかなって…
電話の向こうで 
さくら「だから、それほどじゃないって…
寅「お前、赤ん坊みたのか!?
見もしないで無責任なことが言えるな

じゃあ相談するなよ電話で(ー −)



                     



いいか、これは他人様の子どもなんだぞおまえ
さくら「わかったわよ。じゃあ、病院に行きなさいよ
さくらって、無理やり予定調和させられて可哀想(TT)

寅、ニヤッとして「いいよ、いいですよ。はい。連れて行きますよ。うん。
いや、
お前がそんなふうに言うなら仕方ないもん。
はいはい、はい、あばよ

そんなふうにって…よく言うよまったく┐(-。ー;)┌

おいちゃん、茶の間で首を振って嫌がる。


寅、幸せな顔して、台所へ

みんなシラ〜…

寅「おばちゃんよ、あの〜、さくらも病院連れてったほうがいいって言ってるぜ
言ってない言ってない。無理やりだってば ヾ(^^;)

おばちゃん、赤ん坊ダッコしながら
おばちゃん「そうかい?
寅「うん」 
おばちゃん「じゃあ、そうおしよ
寅「そうだな、フフ
寅「ま、色々面倒だけどしょうがねえや…じゃあ、上着もってくらあ、な

2階へ上がっていく。



おばちゃん「可哀想にね、こんなに元気なのにどうして病院連れて
行かれなきゃならないんだろうね

ほんとほんと犠牲者だよ、赤ん坊は(TT)


社長「そんなに行きたきゃ、てめえの体の悪いところ
見つけて診てもらえばいいじゃねか

おばちゃん「あの男、悪いとこなんか、ありゃしないもの
おいちゃん「頭以外はね

寅、鼻歌歌って下りて来る。

寅「じゃあ、行ってくらァ…
みんな、シラ〜
寅、ニコニコで「なんだか乗らないよな…。どうも病院ってのは嫌だなあオレ。
あのプーンとした薬の匂い嗅いだだけでね、気持ちがすっと滅入っちゃうんだよ。うん

おいちゃん、ずっとそっぽ向いている。
タコ社長も生返事

寅「誰でもそうだけどな。だけど行かなきゃしょうがないよ。
他人様の子どもだから、フフ、じゃあ、行ってくるらあ!

っと暖簾をくぐる。

タコ社長「ごゆっくり!
寅「なにい!!っとバッと戻ってくる。
おいちゃん、足を踏み外してコケル。



                   



寅「お前、何て言ったんだよ。ごゆっくりだと!
おいタコ!オレは風呂につかりに
行くんじゃねえぞ。病院なんてものは誰だって
行きたくないんだよ。
なんでごゆっくり…あ!てめえ、
オレのこと入院させようってつもりか!?



この「ごゆっくり」で寅がコケテ、ドタバタし始めるパタ〜ンは、
第1作で、冬子に会いに行く寅を「ごくろうさん」
って言ってしまう登とのドタバタで、すでに出てくる。
第8作でも似たような状況設定がある。


社長「いや…そんなつもりじゃないよ

寅「じゃあなんでい!
社長「ただなんとなく挨拶しただけだよ
寅「それが挨拶か。挨拶だったら他に言いようがあるでしょ?
大変ですね、とか。いってらっしゃい、とか。
ご苦労ね、とか。あるじゃねえか!

社長「わかったよ、オレが悪かったよ
寅「あたりめえだい!まったく礼儀作法持ち合わせてない連中とは、口もきけねえよ
寅「行ってくらァっと行きかける。

おいちゃん、社長、おばちゃんで一斉に

いっといでえ〜!
寅、のけぞり!

寅「なんだ!
おいちゃん、またコケル(^^;)


                        いっといでぇ〜!
                   



寅「声をそろえて言えばいいってもんじゃないだろおめえ!
雀の学校じゃねえんだい!
みんなで寄ってたかって、オレのことバカにしてんだい。
いいよ、もう。オレ行かない!
オレどこにも!行かない、行かない、行かない!

とテーブルにうつ伏せになりすねる。

おいちゃん、寅の肩をゆすって
おいちゃん「そう怒るな、オレ達の言い方が悪かったら謝るから、な!な!
社長「ほんとに大変だと思うよ。機嫌直して行っとくれよ、な!
おいちゃん「申し訳ない!申し訳ない…と片手で拝んで頭を下げる。



                   



寅、振り向いて「だったら、なんではじめっからそう言わないんだよ。人を嫌な気分にさせてよ
寅「行ってくるか、じゃあ」色々用事もあるんだよ。
おいちゃん「ごくろうさん
寅「オレだって色々用事もあるんだよ。え?じゃぁ行ってくるよ

おいちゃん、頭を下げて「あー、行っといで
寅、社長の腕をポンと叩いて
寅「おい、はじめっからこういう挨拶ができねえのかい
時計をチラッと見て、寅「ったく、時間の無駄だよ!ほんとにい〜!
っと店先に行く。
おいちゃん、暖簾の所から、もう一度
おいちゃん「行っといで

一同、ほっとする。

ほんとにみなさん大変だねえ…同情するよまったく(^^;)


おばちゃん「あら、嫌だ!肝心の赤ん坊
  忘れて行っちゃった!
でた〜!(^^)/
おいちゃん、社長、情けない顔で「ばかだねえ〜、まったく…

寅、参道を走りながら
♪ゆ〜くがあ、おーとーこの…

寅「あ!いけねえ…。赤ん坊忘れちゃった」とらやのほうを振り向いて
寅「利口じゃねえなあ…
寅「ま、いいや。手ぶらで行くか…」とまた小走りで去っていく。

『手ぶら』って言いやがった(− −;)



                   



吉田病院の前

電車が通る音

病院まで行って、うろうろして、ちょっと迷っている寅。


玄関から患者と一緒に京子も出てくる。
患者家族が京子に挨拶。退院するらしい。


京子のテーマ流れる

寅、ガード下に隠れて見ている。


京子と挨拶をして、タクシーに乗り込む患者家族

この当時の初乗りは280円!そういう時代だったんだなあ…。
京子、手を振って、別れる。


京子、爽やかな顔で、大きく伸びをし、
体操をしながら館内に戻っていく。




                   



寅、その姿を見て、なんともいえない優しい気持ちになる。
本気で京子のことが好きになった瞬間だった。


明るく健気に働く京子を見つめ、
なんだか温かい気持ちになっていく寅でした。




                   



京子には会わず、体操をしながら帰っていく寅。



究極のところ、寅はマドンナに直接会わなくても
いいのかもしれない。
マドンナが幸せに暮らしているのを遠くから
眺めているだけでいいのだ。





題経寺

源ちゃんが掃除している。

題経寺前にタクシーが止まる。



                   



呼子で出会ったあの二人がとらやを訪ねてくる。

女「
坊や、とらやさん知っちょる?

源ちゃん「へっ」
女「じゃあ案内して。こっち?」
源ちゃん「あっち。あっちです。」



とらや

さくら「はい、ありがとうございました。はい、飴、忘れ物よ」

子ども「ごちそうさまぁ〜」
さくら「はい、ありがとう〜」

例の二人やって来る。

さくら「いらっしゃい」

源ちゃん、ここですと知らせる。

男「あの〜…、車寅次郎先生のお宅はここでしゃろか?」
さくら「え…、そ、そうですが…」
男「先生、いてはりまっか?」
さくら「今ちょっと出かけてます…」
男「先生から、赤ん坊のこと、
なんも聞いてはらしまへんやろか?


さくら、驚いて、おいちゃんのほうを振り向く。
おいちゃんも、驚いて、
さくらとおいちゃんの反応は暗い。
赤ん坊の引き取り手が遂にやってきたことを瞬時に
悟ったのかもしれない。
そしておばちゃんのことを考えたのだろう。



おいちゃん「
あんたがた、どういうお方ですか…?

男「あのう、実は私、九州で車先生と知り合いましてな…。
そのときにわたい赤ん坊連れてましたんや。っていうのも
うちの嫁はん悪い嫁はんでなあ〜、産むだけ産んだあと、
わたいそんな子どもよう育てまへんで。
そんなこと言うな、二人で産んだんやないか。
知らんがな、あんたが勝手に布団の中入って来たんゃがな。
ちょっと顔がいい思たらこんなこと言いますのんや。ここがちょっと
と、(胸のオッパイのまね)

おいおい、そんなディテールまで聞いてないぞ(−−;)


女「
あんた、ちょっと黙っっとってえ、うちが話すけん

女「……すいませんけど、ちょっとここへ座らしてもらってもよかとですか?」
おいちゃん「あ、こりゃ、失礼。どうぞ」
さくら「どうぞ」

おいちゃん、さくらともども赤ん坊のことなので心配で、緊張している。

女「これつまらんものですけど…」

さくら「いえ
女「あの…、なんとなくお分かりかと思いますけど、この男が
かみさんに逃げられて赤ん坊ば抱えて困ってるときに、寅次郎さんって方に
会ったらしかとです

男「佐賀県の呼子ちゅう港だんねん
女「寅次郎さんは、とても同情してくれて、
お酒までご馳走してしてくれたとです。
この男はバカじゃるけん、寅次郎さんの親切に
甘えついでに、赤ん坊ば、押し付けて逃げてしまったのです。

あたし、後でその話ば聞いてビックリして、すぐその旅館に
行ったけど、もう、寅次郎さんは発った後で、警察に行っても
なんも分からんし、寅次郎さんって人が東京都葛飾区柴又の人
だってことだけを当てにして、九州から出てきたとです


さくら、うつろな目で聞いている。
複雑な精神状態。

女「あんた、そういうこと言いたいんやろ
男「おおきに、わい、上手いことよう言わんのや
男、ヘヘへと愛想笑い。



                   



さくらとおいちゃん、複雑な顔で男を見ている。
さくら、おいちゃんをチラッと見て。
さくら「お話はよく分かりました。
その赤ちゃん、確かにうちで預かってます

台所から。おばちゃんと赤ん坊の声

おばちゃん、店先に出てきて、笑いながら。
おばちゃん「さくらちゃん、笑った笑った笑った何も知らないで笑って来る
おばちゃん「え、?」
さくら「赤ちゃんのお父さん
おばちゃん「
おばちゃん、唖然として、赤ん坊を抱いたまま立ちすくむ。

男「わいの子や!
焦ってこけそうになりながら

「迷惑かけましたなぁ。元気だっかと、駆け寄る。

おばちゃん、いやがり、赤ん坊を抱いたままちょっと離れる。

おいちゃん、怒って、男を止める。
おばちゃんのことを思っている。

ちょっと待ってくれ。そんな、お前…、
そんなかっ…勝手な話が、あ…



男「何?このおっちゃん?
それは無いだろ、佐藤幸夫さん!


おいちゃん「おっちゃんとはなんだ、おっちゃんとは!
だいたいな。おまえみたいなやつが今時多いから…

さくら、おいちゃんを止めて
さくら「おいちゃん
さくら、男に「あなたにはあなたの事情があったかも
しれませんけど、この子、ほんとうに
可哀想だったんですよ。すっかり痩せてしまって、
肌着もおしめも汚れっぱなしで、
着いた晩に熱出して病院に駆け込んだ時なんか、
もしもの事があったら、どうしようかなと思ったりして…。
でもね、こうやって無事に育ってくれて、目方も増えたし…




                   



さくら、気持ちは分かるけど、返さないといけないんだよ…。

おいちゃん、男を睨みつけている。

おばちゃん、わなわなしながら、
赤ちゃんをヒシッと抱きしめている。


おばちゃん「ほんとに、こんなかわいい子を、
   よく犬や猫みたいに捨てられたもんですね


さくら、女に向かって、
さくら「お渡しするのはいいんですよ。でもね、お父さん、
二度とこの子を捨てたりしないでしょうね

よく言ったさくら!それでいいんだ。

おいちゃん「そこなんだよ、オレの言いてえのは。
どうなんだ。え?お兄さん
んだんだ(- −)

女、さくらからさっと赤ん坊を抱き上げる。
さくらたち、突然の事に驚きながら赤ん坊を見つめる。

女「あ〜、坊や!幸せだったんじゃねえ!
 よかったねえ!
 おばちゃんねえ、もう、おまえ、どっかで死んじょるかと
 思ってたよ。よかったねえ…、よかったねえ…


っと赤ん坊に頬をすり寄せて泣き続ける。
春川さん、情が深いね〜。
この人なら大丈夫だよ。おばちゃん。

さくらもおいちゃんも下を向いている。
男も下を向いたまま。


おばちゃん、赤ん坊から目をそらし、
涙を流している。



さくら、おばちゃんを見つめる。
男も自分の犯した罪にようやく気づき、すすり泣いている。

おばちゃん、涙が溢れて、
おいちゃんの肩の手ぬぐいを
取って涙を拭く。


おばちゃん…(TT)



             



江戸川土手 夕陽が射している。

女、赤ちゃんを抱っこしながら
女「本当にどうもすいませんでした」
さくら「タケちゃん、元気でね〜!
女「バイバイって」

赤ちゃんの名前はタケちゃん!



                  



タクシーが来る。

なぜ、江戸川土手から帰るのか?
柴又駅からのほうが便利だと思うんだが…。


女「ほんとにありがとうございました」

車に乗り込んで「すみません。さようなら」


さくら「さよなら」

タクシーを見送りながらいつまでも手を振るさくら。



夜。とらや茶の間


満男、天井から吊るしているガラガラをまわして遊んでいる。
おばちゃん、目を潤ませながら、悲しげにオシメを片付けている。


さくら、寅に「あたしが、責任を持って子どもを育てます。自信もあります。って
そう言うの。どうしてかっていうとね。
あの女の人、ちょうどあの子くらいの
子ども、死なせたことがあるんだって…。

あの人の話、聞いているうちに、この人なら、
きっとこの子を幸せにしてくれるだろうと思って…、
ねえ、おいちゃん


それで、彼女あんなに赤ん坊を可愛がっていたんだな…。
ようやく分かったよ。(−−)


          


おいちゃん「うん、おまえに会いたがっていたけどな…。汽車の時間があってさ、
よろしくってそう言ってたよ

さくら「お兄ちゃんに断わらずにしたけど、それでいいでしょ?
寅、帽子を手に取り、寂しそうに立ち上がって、
寅「迷惑かけてすまなかったな…
寅、しょんぼりとゆっくり階段を上がっていく。
おいちゃん、さくら、社長、寅を見ている。

やっぱり、寅も、いざ赤ん坊がいなくなると
心に穴があいてしまうんだね。分かる気がする。


おばちゃん、おしめを片付けながら、また涙ぐんでいる。
赤ん坊の起き上がりこぼし、遊び道具などがそのまま飾ってある。
天上からぶら下がっているプラスチックのガラガラの
おもちゃが哀しい…。


満男が無邪気に「カランコロン」と回転させている。


社長「寂しいだろおばちゃん

社長、座りなおして
社長「寅さんが結婚して、赤ん坊でも産めばいいんだよ。いないのかい誰か?例の
看護婦さんなんかどうなんだい?

どこまでも短絡的な発想を持つタコ社長でした。

おいちゃん、ブツブツ言いながら社長を睨む。
さくら、おいちゃんを見てちょっと苦笑い。

社長「ダメか…。おやすみ…」
さくら「おやすみ」
社長、すごすごと帰っていく。



                   



満男「バアーバ、泣いてんの?
おばちゃん、それ聞いて、また涙が溢れて、嗚咽する。

満男、おばちゃんのそばに立って、眺めている。

おばちゃんの悲しみが浮き彫りにされた場面だった。
世の中にはどうしようもないことがあるんだと、
思い知らされました(TT)





日曜日のキリスト系の聖和幼稚園(北千住)


江戸川合唱団  団員募集!の貼り紙
「歌が好きな人なら誰でも歓迎します。練習の事は
下記の所に連絡してください。
大川弥太郎」



歌声が聞こえて来る
  キャストは「統一劇場」の方々。




ポーランド民謡「ククウェチカ(ククエチカ)」 



♪希望の森で鳴いてるカッコウ。 
若者達は娘を探す〜♪
クック−クック−(オリリリーリ、オリリリリラ、オリリリリラ…)、
アーハー、アーハー、
オリリーリ、オリリリリラ、オリリリリラ、(アーハー)、
ウッ!ハッ!♪


「♪君らはなあぜ?(うん?)きどおって歩く。
大事な上着、(うん?)いそいそ着込み〜♪、
クック−、クック−、(オリリリーリ、オリリリリラ、オリリリリラ…)
アーハー、アーハー(オリリリーリ、オリリリリラ…)
オリリーリ、オリリリリラ、オリリリリラ、(アーハー)、
ウッ、ハッ!♪




                   







江戸川土手

野球をするさくらと博と満男


なんと、さくらがピッチャー!
バッター、博


さくら、さあ、
振りかぶって
第1球投げました!


        
          さくら振りかぶって            
                     


                     第1球投げました!
          


博、空振り〜!


なかなか暴れ気味のさくらの球は打てないぞ!

キャチャ−がいないので博が取りに行きます。

博「よし、満男、行くぞ、ほい〜ほ!

博満男にボールを投げるが、へんてこな方角へ投げてしまって
満男、スタコラ取りに行く。
こらこらちゃんと投げてやれよ ヾ(^^;)

さくら、なぜかピチャ−やめていきなり
土手で観客に早代わり(^^;)

リリーフは急きょ満男。



博、もう一度バットを構える。

満男、振りかぶって
「ストライク〜!」って言いながら投げるが
ボールはとんでもない方向へ。


           
   ストライク〜!
                   



博、可哀想(TT)
許してやってください。子どものやる事ですから。



さくら、それ見て笑っている。ハハハ…
サッカーボールを網に入れるさくら。
お菓子のクラッカー



京子「諏訪さぁ〜ん!
京子が土手の向こうから手を振ってやってくる。

さくら、気づいてにこやかに「こんにちは」
京子「どうも」



                   

とらや

さくらと京子とらやに戻ってくる。

さくら、網に入ったサッカーボール持ってる。
でもどうして野球道具はアパートにたぶん持って帰って
サッカーボールだけとらやに??裏庭で時々遊ぶのかな?
でもおいちゃんの盆栽が…。




さくら「おいちゃん
京子、を見て、おいちゃん
おいちゃん「あ、これはこれは」
さくら「今土手でお会いしたの」
「へえ〜」

さくら偉い。蜜柑の皮とか空き缶を家に持って帰ってきてる。
演出が細かいねえ〜。



京子「赤ちゃんのことお聞きしましたわ。
おばさん、がっかりしてらっしゃるんですってねえ。。。(TT)そうそう
京子「でも、仕方ないわね、いつまでもお宅にいるわけにもいかないでしょうし

やっぱりそんなもんなのか?もし、親がずっと現れない場合
どこかの施設に入れないといけないのかな…?
父親からよろしくお願いいたしますと紙に一筆書いて託された寅や
寅の家族が育ててもいい、というふうにはならないのかな。
保護施設や保健所、などと掛け合って、おばちゃんが
母親代わりになって育てるって言うわけにはいかないのかな?
日本はややこしい法律がありそうだ…。



おいちゃん「ええ、可愛がってもらってるといいんですけどねえ
京子「ほんとにね」
さくら2階に向かって
さくら「お兄ちゃ〜ん、お客さんよ〜
寅「どこのどいつだよ!?
さくら「木谷さん
京子、さくらのところに近寄っ二階に向かって
京子「こんにちは〜

京子裏庭を見て
京子「あら、お庭があるのねえ〜」
さくら「庭なんてもんじゃないわよ」
立派な庭ですよ、さくら。

京子「ま〜、菊がきれい!」っと香りを嗅ぐ。
おいちゃんが手入れしてるんだね。

京子、工場の2階を見て、
京子「あら!ここが工場なの?」
工員たち「あ!いつかの看護婦さん!こんにちは」
京子「ダメじゃないの〜!お天気がいいのに、こんなところに
くすぶったりしてて、健康に悪いわよ。ガールフレンドと
江戸川でも散歩したらどうなの

言うねえ京子さん。


京子さん、彼らにそんな横文字系の人はいませんよ。

京子「
いないの?
工員達「ハハハハハハ笑うしかないよな(^^;)
干しているパンツを端に寄せて隠す。分かる分かる(^^;)


突然、工員達の笑いが消える

寅、工員を睨んでいる。

京子「おじゃましてま〜す
寅「…。ぁ、どうも…
京子「あら、どうかしたの?元気がないわね…
寅、下を向いている
さくら、後ろで、寅をしょうがないわねっと、冷ややかに見ている。

京子「
どっか、具合が悪いの?
さくら、やってきて「赤ちゃんがいなくなってからずっとこうなのよ
京子「そう…無理も無いわねえ、がっかりしたでしょう

寅「ええ、コホッ、コホッ…コホッ…


                   



京子「あ、大丈夫?ちょっと失礼
っとおでこに手を当てようとする。
寅ビビッって柱に「ゴン!」っと後頭部を打ち付ける。



                   



工員達2階から「ハハハ!」っと大笑い。

寅、怒って、庭の池に水を貯めていたホースを取り出して
2階に向かってかけまくる


2階、ビショビショ。工員達逃げていく。

さくら「お兄ちゃんやめなさい!倍賞さんの逃げ方面白い(^^;)

寅、「ダ〜〜〜!!っと水を部屋に向かってかけまくる。
さくら、また戻ってきて寅を止めようとする。実は笑ってます倍賞さん(^^;)



                      面白い格好で逃げていく倍賞さん
                   



夜、とらや茶の間

みんな楽しそうに笑っている。

寅「バリ!っていうんだよね。なんか破けたんじゃないかと思ってよ、ハハハ!
社長、入ってくる。
こんばんは〜

おばちゃん「あ、いらっしゃい」

寅「よう、社長!上がれ上がれよ。お前知ってるだろ、この看護婦さん
京子「あ、」
社長「これはどうも。いつぞやは博さんが大変お世話様になりまして」
京子「いえ、フフフ」
寅「まあ、上がんなよ上がんなよ上がんなよ」
寅「今なぁ、オレ盲腸患った時、
手術した後でなかなか屁が出なくてね、
弱ったって話今してたのよ。



京子「それで閉口(ヘイコウ)したって話ね
京子さん、それってオヤジの駄洒落だよ。とほほヾ(^^;)


それにしても、寅が「手術」の経験有りだとは
知らなかったあ!!意外!(^^)/
これは大スクープだ!




一同「ハハハハ!!
社長「ガハッハ!そりゃ上手い上手い!」
おいちゃん「しかしー、なんでしょうな、近頃は手術も随分進歩したんでしょうねえ〜」
京子「ええ」
博「切った後、糸を使わないでホッチキスのようなものでガチャンとやるって本当ですか」
京子「ええ、簡単な手術はそうよ」
うちの病院では盲腸の患者さんなんか手術の後、部屋まで歩かせるんです」
一同「はあ〜」
京子「少しでも運動した方が回復が早いのよ」
寅、頷いて納得している。
京子「だから、患者さんが痛がってもダメ!歩きなさいって、叱りつけるの」
寅「ほぉ〜...」


今回はよく隣の部屋に石油ストーブがついている。さすがのとらやさん一同も
時々はストーブをつけるんだねえ。そのわりには店との境の障子が開けっ放しで、
おまけに店先まで開けっ放しですごく不経済だけど、(^^;)


社長「俺が入院した頃とは随分違うねえ...
嫌な予感(^^;)
寅「なんだ、タコ、おまえ人並みに入院した事があるのか?

社長、蜜柑の汁飛ばしながら(博に掛かり、嫌がられている)

社長「あるよ。手術したもん
寅「どこを〜
社長「痔だよ!脱肛!
寅にも汁掛かる。
さくら「社長さん!
寅「汚ねえな、コノヤロ、今、メシ終った後なんだぞおまえ〜
社長「いいじゃねえか!絶対ね、あれは切った方がいいんだよ。ねえ!看護婦さん
京子「ええ、でもこの頃は痔も切らないで治すんですよ
一同、へえ〜
社長「ほう〜、どうするんです?」
京子「飴の粉をね。こう、振り掛けるの
社長「へ〜、飴の粉を...?
博も真剣に聞いている。

京子「アメ降ってジ固まる...


一瞬、??

一同「ハハハハ!!
社長「あー、上手い上手い!ハハハ!
社長顎が外れるよそんなに笑っちゃ



                   



京子さん、そのギャグも落語の駄洒落だよ。しかもシモネタ。
これじゃ「おやぢギャグ」だよ。困った人だ(^^;)


寅も、大笑いしながら、
寅「可笑しなひとだねえ〜、看護婦さんいつもそんな話
してんですか?」
京子「違うわよ。この話はね、組合の機関紙に出てたの」
社長「組合?看護婦さんに組合あるのか?」っと博に聞く
博「そら、ありますよー」
おいちゃん「ふーううん、時代が変わったねえ。俺達の頃は看護婦さんて言えば
なんてたって
愛染かつらよ、なあ、社長

社長「ああ! ♪はあ〜なあ〜もぉ、あらしもぉ〜、
ふ〜みこぉ〜えーて〜、チャカチャン
チャンチャンチャンチャン...

凄い声、身振り手振りも入るので手におえないっす(− −;)


博、耳を閉じて防衛!
満男にも受けてました。


旅の夜風
「愛染かつら」より

西條八十 作詞
万城目正 作曲

花も嵐も 踏み越えて
行くが男の 生きる途
泣いてくれるな ほろほろ鳥よ
月の比叡を 独り行く

優しかの君 ただ独り
発たせまつりし 旅の空
可愛い子供は 女の生命
なぜに淋しい 子守唄

加茂の河原に 秋長けて
肌に夜風が 沁みわたる
男柳が なに泣くものか
風に揺れるは 影ばかり

愛の山河 雲幾重
心ごころを 隔てても
待てば来る来る 愛染かつら
やがて芽をふく 春が来る

昭和十三年(1938)の松竹映画作品。
田中絹代&上原謙主演、監督は野村浩将。
原作は川口松太郎で、脚本は野田高梧。

津村病院の看護婦・高石かつ江(田中絹代)は、かつて夫と死別して、
さらに子供がいることを隠して勤めていた。
そんな彼女に、病院の御曹司の津村浩三(上原謙)が一目ぼれ。
恋人同士を必ず結び付けてくれるという“愛染かつら”の
木の下で将来を誓い合おうと言う。だが、運命は二人の前に
数々のすれ違いを与えていく。
主題歌『旅の夜風』が大ヒットした。



                 
若かりし日の「愛染かつら」での田中絹代さん
                 


(さくら、満男に蜜柑の皮むいてあげている気配)

京子笑っている。
社長「♪ゆ〜くがぁ〜...」
寅「うるさい、うるさい、うるさいよ、汚い声出すんじゃないよ

おばちゃん「あの〜、なんですか、看護婦さんは大体お医者さんと
一緒になるんですか?

おばちゃん単純、テレビの見すぎ(^^;)

京子「そんなことないわ
社長「じゃあ、誰と結婚するんです?
寅「誰と一緒になろうとうとタコの知ったことかい、おまえ
真っ当な意見。

社長「しかしさ」
おばちゃん「愛染かつらだってねえ、やっぱりお医者さんと結婚するん...
さくら、満男の蜜柑の皮むいてやって、満男、向こうに持っていく。
さくら、笑いながら「そりゃさあ、お医者さんと結婚する人もいるだろうし、
患者さんと結婚する人もいるだろうし…

寅「誰とも結婚しない人ともいるだろうし
京子「フフフ
さくら「そりゃ、さまざまよねえ、京子さん

(社長と博、タバコふかしすぎ、煙が充満してるよ。)

京子「ええ…、でもォ…、私たちの悩みはなかなか結婚できないことかしら
さくら「やっぱり、仕事が忙しいから?
京子「看護学校出て、勤務するでしょう、
  初めの2年くらいは西も東もわからず無我夢中で、
  その時期が過ぎると、今度は仕事が面白くなってきて、
  あっと言う間に5、6年が過ぎて、ふっと気がつくともう、
  三十なのよぉ

寅「ほぉ……。えっ!?誰が?
京子「あたしがよ…
おばちゃん「あら?京子さん三十?ま〜見えないわぁ〜!
おばちゃんの「見えないわ〜!」は笑えました。上手い!

社長「見えない見えない
おばちゃん「うん〜

寅「十七、八くらいかなって思ってたオレ
それじゃ、逆効果だよ、寅ヾ(^^;)

京子「ハハハハ!
京子「まあ、嬉しいしいわ、お世辞でも
寅「いや、ほんとに、フフフ
京子「フフフ!



                   



京子、寅を見ながら、
京子ねえ、さくらさん

寅「なに??
って言いながら、京子が何か言いたげなので
『ニコッ』って笑う寅。渥美さんの独壇場。




                   



京子、さくらに「寅さんって…、お一人?
さくら、ちょっと苦笑いして、つまりながら
さくら「え、ええ…
京子「フフ…、どうして?
さくら、寅の方を見て
さくら「どうして?お兄ちゃん
寅「え???…どうしてなんだ?博?
おいおい、なんでも博に聞くなって(^^;)
博、急に呼ばれたもので、ビビッて、
博「つまり、…あれじゃないかな…
寅「うん…
博「初めの何年かは無我夢中で過ぎて、
今度は仕事が面白くなってまた何年かが
あっという間に過ぎて、ふと気がつくと、

四十
になってたと、そういうことじゃないですか?

博、京子さんの言葉のままだよ。
適当〜だなぁ、でも上手い上手い(^^)

京子「フフフ!
寅「あ〜、そんなとこかもしれないな
京子「まあ、寅さん、もう四十?
寅「え〜、なんですか、いたずらに歳ばっかり
京子「あたし、十七、八かと思っちゃった
っとお茶目に舌を出す。


                   



一同爆笑「ハハハ!!



                   



社長「上手い上手い!ハハハ!

京子さん、さっきの駄洒落2連発よりはちょっとは上手いギャグです。

京子「ハハハ!あ〜可笑しい!それじゃあの、私これで
寅「もう帰るの?
さくら「まだ、そんな時間じゃ」
おばちゃん「あの、よろしかったら、うちへ泊まってていただいてもいいんですよ
寅「そうそうそうそう
社長、まだ笑いながら「泊まってらっしゃいよ」
京子「ありがとう。でも私明日早番なの。5時半に起きなくちゃ」
寅「ほお〜、ふ〜ん
京子、お辞儀をして「みなさん、どうもお邪魔しました
一同、お辞儀をする
京子、さくらに「あ、そうそう!
寅「え?

京子「ね、さくらさん」
寅「え?」

京子「さっき話してた私たちのコーラスのこと、
さくら「ええ



                   



京子「今度一緒に歌わない?
寅「な、なになに?
さくら「私、何年も歌わないから…」っと照れる
寅、聞きながら「え?なんだい?

京子「平気よ。近所の工員さんとか先生とか主婦とか素人ばかりなの
パートは何?ソプラノ?

さくら「メゾかアルトだろうね、やっぱり(^^;)
京子「じゃあちょうどいいわ。是非いらっしゃいよ今度の土曜日
さくら「ええ
京子「ねっ

寅、博にコーラスグループの事を聞いて

寅「何だ歌か!歌だったら俺好きだ
京子「あら、そういえば寅さんもいい声ね
寅「いやあ…それ程でもないけれど…
その言い方なあ(^^;)

社長、ニヤケながら博の腕を打つ。

京子「じゃよかったらさくらさんとご一緒にどうぞ
寅「あ、そうですかさくらじゃ連れてってもらおう!うん!
京子「じゃ皆さんお休みなさい

一同「お休みなさい

社長「お気をつけて

京子「寅さん、あたし本当に楽しかったわ。
久しぶりに田舎に帰ってきたみたいよ

寅「そりゃよかったね
京子「今度の土曜日きっとね
寅「はい
京子「さくらさん、また後で電話します
さくら「はい
京子「お休みなさい
寅、京子を送っていく「電話してください
京子「あ、はい

寅戻ってきて

寅「♪花も嵐も〜さくらぁ〜♪
今度の土曜日コーラス行こうね!
♪踏み越えてェ〜…


この「♪さくら〜」が絶品!


                           さくらぁ〜♪
                      


さくら、あっけにとられ、そして呆れながらもながらも遂、微笑んでしまう。


                        困ったように微笑むしかないさくら
                     


寅、台所を経て裏庭へ

寅「労働者諸君!おっ一杯やってるか!
よし!今夜はボクも参加しよう!
♪聞け万国の労働者〜♪ハイッ…


満男、博に寄ってきて甘えながら「帰ろお〜
(手に自動車のおもちゃ)
おいちゃん、下を向いて首を振る。


森川おいちゃんだったら、こういう時
「かあぁ〜、バカだねえ…。さくら、おりゃ知らねえよ…」
って言うんだろうな(^^;)






社長、バイクで参道を走って行く。
木屋が見える。



とらや

おいちゃんあんここねている.

社長「竜造さん、」
おいちゃん「ああ?」
社長「コーラもらうよ。」
おいちゃん「ん」
社長「あー、忙しい忙しい、今日は水曜だったな
おいちゃん「木曜じゃねえか?
社長「え??

社長「もう木曜日?本当か?
おいちゃん「ああ」

社長「水曜日だとばっかり思ってたよ

清掃局の車の音楽


社長「あ、いけねえ、土曜が期限の手形があるんだよな
あと1日しかないじゃないか大変だこりゃこうしていられねえや
なんでこう一週間ってのは
早くたつのかな〜


おいちゃん「まったくだ」

寅上から下りてくる

寅「おいちゃんおいちゃん、」

おいちゃん「あん?」
寅「今日は金曜日だろ?
おいちゃん「うん?木曜日だろ

寅「まだ木曜日?なんだよオレ、
てっきり金曜日かと思ってたよ…。
あーあ、どうしてこうも
1週間が長いかねえ…



社長「あー嫌だ嫌だ俺生きてんのがになったよ」と情けない顔をする。

 


                      




寅「…?何だ?こらやぶから棒に?
社長「まだ木曜日とはなんだよお前にな一度でいいから俺の苦労
を味あわせてやりたいよ

あ〜あ、寅にあたってもろくなことないよ社長さん ヾ(^^;)

寅「へへ、どうしたおじさん、ええ?お前苦労してる面かそれで
その割には加減なくデブデブデブデブ太ってるじゃねえかよ

社長「カアッ!!

っと、寅を、押してしまう。
←あ〜あ、自分からやっちゃった(−−;)


寅「何だい!


                     このシリーズでは珍しく先に手を出したタコ社長
                      



社長「お前なんかにな中小企業の社長の
  苦労がわかってたまるか!

寅「面白え!やってやろうってのか!よし!
オレは隙持て余してんだこの野郎、裏へ出ろ!!

社長「クッソオ!チキショウ!
寅「よおしプッ!勝負してやろうじゃねえか来いタコ!
社長「おのれ!この野郎!
寅「何オ!」と一気に突き飛ばす!
社長「アヤアヤアヤ!と戸板に挟まる。
おいちゃん「おーいおーい博さん!
社長「寅のコニャロ!コニャロ!
おいちゃん「よせ、よせ!寅
寅、振り飛ばす「テヤッ!!
社長、またもや戸板から出てきた工員へぶつかって、
その工員に八つ当たり!




                      




工員「やめろ!いてえ!
おいちゃん「博さん!博さん!

社長、工員に取り押さえられる。

おいちゃん大声で「博さん!来てくれ!





さくらのアパート


さくらアイロンがけをしながら
さくら「じゃ、社長さんはもう木曜日かで
お兄ちゃんはまだ木曜日かでそれでケンカしちゃったの?

博飯を食いながら「そうなんだよ二人の言い分聞いてみたんだけどね
社長に言わせりゃ
『人が金で走り回っている時に
色恋沙汰のうつつを抜かしやがって』
って
って言うことになるし、
兄さんに言わせれば「
色恋の苦労に比べりゃ…


お茶漬けしたくてお湯を取りに台所へ。

さくら「あ、入ってるっとポットにお湯がすでに入れてあることを知らせる。

金の苦労なんかたかがしれてる、ってことになるし…、
まあ、人生観の相違だからしょうがないよな

さくら「困った兄貴だなあ〜…
博、ポットから急須にお湯を注ぎながら
博「いいじゃないか、あと一日の辛抱だよ、
あさって土曜日なんだから…

土曜日もそれはそれで思いやられるねえ。


あの喧嘩はやっぱり、最初に口と手が
出て仕掛けた社長がちょっと分が悪いよ、博。

迫りくる手形の期限ことで焦ってしまった
自分のストレスを、お気楽そうなフーテンの寅に
つい流しちゃったって感じ。



満男、博の頭にウルトラマンの被り物の人形を乗せる。
な、なんだ?このゴムのおもちゃは?
当時はこういう『かぶりもの』が売っていたのか…。


博、「失恋したウルトラマン
と、言いながら、満男に被せなおす。

博、意味ねぇー。(^^;)



                      




満男「エイ!と博怪獣をやっつける。



さくら、カレンダー見ながら
さくら「土曜日か…」っと気が重そう。
カレンダーの11月30日に欄に『コーラス』の文字







聖和幼稚園の近くの道

コーラスの声



みんな「♪月影は泉に落ちて〜、山の端に陽は昇る〜

なごり尽きぬ〜

寅とさくら、源ちゃん「スナック門」の前を通り、
急ぎ足で歩いている。



柳原銀座商店街入り口』の看板が見える。


この聖和幼稚園は北千住柳原のそばにある。
さくらたちの柴又からは京成電鉄で
高砂―青戸―を経て「
京成関屋」で降りて、
徒歩10分ほどか。

この後出てくる大川弥太郎のアパートは
この「京成関屋」の駅の真下なので、聖和幼稚園へはかなり近
い。

「江戸川」駅の近くに住んでいる京子もさくら同様
「江戸川」駅から高砂と来て「京成関屋」だからちょっと遠めか。


結局、練習場所としては世話役であるリーダーの弥太郎の
アパートから近いこの聖和幼稚園を借りて、いるのだろう。




                      



寅「あ!?、もう始まってるぞ、おまえ
寅「お前が悪いんだぞ、早くしねえから、どうするんだよ〜
さくら、ツンとして
さくら「遅れたっていいじゃない
寅の魂胆が見え見えなので、利用されているようで
気分が良くないさくらでした。
わかるわかる(^^;)


寅「なんでだい、京子さんには1時に来るって言ったんだぞ、おまえ
さくら「じゃあ、やめて帰る?っと引き返そうとする。
この発言は、ちょっと意外。
そうとう、さくら嫌がっているぞ、こりゃ。
寅だけが舞い上がっているからね。

寅「どうして、おまえはそう逆らった言い方するんだよ

近所の人、怪訝な顔で寅たちを見ながら歩いていく。

さくら,恥ずかしがって
さくら「よしましょう、みっともない…

寅「ほら、早く行って京子さんにお詫びするんだよ、ほら
っと手で押してさくらを幼稚園の中へ入れようとする寅、
さくら、困った表情でちょっと苦笑い。


源ちゃん、食べていたお菓子の袋を腹巻の中へ入れる。




聖和幼稚園内


スペイン民謡『ファニタ(ジュアニタ)



みんな「♪ニタファ〜ニタ、寄り添い来たれ〜、

京子、さくらに気づいて、小さく手を振る。

源ちゃん、物音を立てる。
寅、怒る


みんな「♪ニタファ〜ニタ、わが胸に〜
1曲歌が終わって。

弥太郎「ええっとねえ〜、…っとみんなを集めて指導.
チラッとさくらたちのほうをみる。

京子、駆け寄ってきて
京子先日はどうも
さくら、頭を下げる。
京子、寅の方も見て
京子「よくいらっしたわね
寅、頭を下げる
京子「見えるかな、どうかな?って思ってたの

寅「あ…、なんすか、こいつがね、
どうしても行きたい行きたいって
言い出して、へへ…
、」

おいおいそれじゃ、「私の寅さん」で満男の絵を
見せにりつ子さんちに行った時と同じじゃないか。
いつもさくらが誘ったことにしちゃ、さくら、信用なくすよ。


さくら、
ハッとして、寅を見る

寅「
『一人じゃ嫌だから、
お兄ちゃんついてってよ』、っていい年しやがって
おめえ、オレだって忙しい体なんだぞおまえ

あちゃ〜…┐('〜`;)┌



さくら、唖然として、寅を見ている。
源ちゃん、笑っている。
さくら、寅に何か言いたげ。ちょっと
口の中でブツブツ(^^;)

あんまりだよ寅…。さくらが可哀想(TT)


           


                      

京子はたぶん寅の気持ちを見抜けてないだろう。
だから、さくらが寅を誘って来たとほんとに
思っているのかもしれない。
もし、寅こそが来たくて、さくらを
誘ったことを気づいているとしたら
それは、寅の関心が自分にあることに
気づいていることにもなるわけだから、
それはちょっと今の時点では、
京子は想像できないだろう。
それゆえ、さくらが、来たくてしょうがなかった。
っていうことになるのかな…。

と、言うことで、やっぱり、さくら可哀想…(T T)


京子「フフ…、どうもご苦労様

京子「リーダー、紹介するわ。

さくら、この時、大川弥太郎でなく、
違う方向を見てニヤついている。
これは、そこになにがあるのか?
誰かスタッフか「統一劇場」の人が京子の
後方にいて笑っていたのかもしれない。
しかしそうだとしても、演出上、どういう意味が
あるのだろうか…。難しい。
ひょっとして、倍賞さん独特の例の「タメ」の演技かも。
もしそうだとしたら、ちょっと前衛。名人は危うきに遊ぶ。
ちなみに、私はこの目の動きとても気に入っている。

  
                  よそ見をするさくら。スタッフでもいたのかな
                 

スペイン民謡  ファニタ
【訳詞】不詳

1.月かげは泉に落ちて
  山の端に陽は昇る
  なごりつきぬ今朝の別れよ
  やさしき汝(な)がうたごえよ
   ニタファニタ よりそい来たれ
   ニタファニタ わが胸に

2.月かげは夢路を照らし
  よろこびは はてもなし
  なごりの夢 朝日に消えて
  一人帰る さみしさよ
   ニタファニタ よりそい来たれ
   ニタファニタ わが胸に



その後すぐに弥太郎のほうを向く。

京子「大川さァ〜ん




弥太郎、振り返って「はい」っと歩いてくる。




京子「この間お話した人
弥太郎「あ〜!、僕、大川弥太郎って言います。
おもちゃ工場で働いてます


ちなみに男はつらいよのファンである信州のTさんによりますと、
上條恒彦さんの実のお兄さんは『弥太郎』さんとおっしゃるらしい!
Tさんと上条さんの実家はお互い朝日村で、すぐご近所だったそうだ。


ちょっと着古してくたびれたセーターが
雰囲気を作っていた。

さくら「
諏訪さくらです」っと頭を下げる。
弥太郎、あ、っと頭を下げる。
さくら「あの、私の兄です
寅「おう、寅次郎って言うんだよ。妹がなにかと
弥太郎「いえ、どうも


さくら「それから、この人…
と源ちゃんを紹介しようとする。

寅「あ、これ、友達の源ちゃんだ
さくら「名前何て言ったっけ?と源ちゃんの方を向いて尋ねる
寅「え?
源ちゃん、考えながら、名前を思い出せない。
ほんとかよ、おいおい ヾ(^^;)



                        
                        自分の名前を思い出せない源ちゃん
                      




寅「名前か?名前なんかなにもないよ。
源ちゃんだよこいつは、ハハ!


ポーンっと弾けるように「源ちゃんだよこいつは」って
言い切る寅。一見突き放して冷たく感じるが、
寅と源ちゃんの仲のよさが出ている大好きなセリフである。
源ちゃんは、やっぱり源ちゃんなのだ。


みんな笑って、源ちゃんも自分で笑っている。

一応、脚本では「源吉」となっているので、本当は
源吉なんだろう。
しかし、誰もそう呼んだことないし、苗字なんか本人も
忘れてしまっているので「源ちゃん」「源公」で
いいのだろう。まあ、そんなもんだ。(^^)



弥太郎「じゃぁさっそく入っていただきましょうか。お兄さんたちもどうです?
寅「いやあ!とんでもない!オレ達はここで見学させてもらうから。おまえだけ
ちょっと、お世話になれ


ハナから歌う気がない寅、
源ちゃんは何のために来たのか?
寅の話し相手?別に源ちゃんが
手伝うことはなにもないと思うが?


さくら、ハンドバック寅に渡す。

さくら「じゃあ、静かに見ててよ
京子「そちらでお掛けになって」と寅たちに。
寅「はい、はいはい」

さくら、不安そう.。。

京子、さくらをみんなに紹介
京子「私のお友達で諏訪さくらさんです。パートはアルト
どうぞよろしくお願いします
みんな拍手で「いらっしゃい」「いらっしゃい」



弥太郎「木谷さん、楽譜見せてあげてください」
京子「はい」

統一劇場の人々と倍賞さん。
「さくら」と『同胞』のヒロイン「
河野秀子」が頭を交差した。
同胞が封切られるのはこの翌年。同時に脚本が進んでいたのは間違いない!



寅と源ちゃん椅子に座る。

弥太郎「それじゃ、あの〜、さっきのところ注意して、最初からいきましょう」
「はい」
いいですか
「はい」

弥太郎「それでは最初から〜」



アコーデオンの前奏

眺めている寅と源ちゃん

みんな「♪月影は〜、泉〜に落ちて〜、山の端に陽は昇る〜

さくら、寅が何かしないか気にしながら歌っている。



                      



みんな「♪名残尽きぬ〜今朝の別れよ〜

寅、手持ち無沙汰でハンドバックから口紅を取り出す。
源ちゃん、紙のお面を被って遊んでいる。


さくら、それに気づいて唖然。歌どころではない…

♪優しき汝が〜、歌声よ〜


源ちゃんお面を被っている間に
寅に口紅で顔じゅう落書きされている。

みんなクスクス笑い始める。

歌にならなくて


みんな「ハハハ!

弥太郎、手をたたいて
弥太郎「ねね、ちゃんとやろう」と真面目に注意。

一同、そうは言っても、顔が笑うモード
なってしまっている。こういう日は、まず笑いは止まらない。



弥太郎、振り返って「あなた方も静かに見ててください」と寅たちを睨む。

さくら、つらい顔をして京子にそっと耳うち

たぶん『ごめんなさい』『すみません』あたりか…。
やっぱり、さくら可哀想(TT)



京子、寅たちのほうを見てフッとため息を突いて微笑む。



弥太郎「じゃ、もう一度頭から」

アコーデオンの前奏

寅と源ちゃん真面目に座る。
しかし、源ちゃんの顔はすでに
口紅でめちゃくちゃ。



                           こりゃ、笑うわな。(^^;)
                      



♪月影は〜…フフフ…泉〜に落ちて〜

♪や〜フフフ…まの端に〜…陽は昇る〜…

もう完全にみんな笑いモードだって。



寅、京子さんのほうを見てニカッと微笑む。

弥太郎、寅たちのほうを見て睨む。


寅、それに気づきじっとしているが、源ちゃんが
口紅をつけられたことに
気づき、寅の顔になすりつけ始める


弥太郎「はい、盛り上げて〜」

♪名残〜尽きぬ〜

寅、怒って、源ちゃんに口紅をまたつけようとする
逃げる源ちゃん
源ちゃん、ドテッっと椅子からこける。




                           最悪の事態(><;)
                      



一同歌どころじゃなく笑いまくる。

さくら、我慢できずに怒る
さくら「お兄ちゃん!



                           お兄ちゃん!
                      






コーヒー専門のカフェ

たぶん北千住界隈の店



モーツァルト:幻想曲ニ短調K.397




さくら、寅、京子が座っている。(源ちゃんどこ行った?)

さくら、怒っている。

さくら「あそこに集まっている人たちは、京子さんのように
それぞれが仕事をもっていて
まじめに働いている人たちで、1週間に一度楽しみでああして
集まってコーラスしてるんじゃないの。

寅、京子さんにニカッっと笑ってごまかしている。

さくら「なによ!お兄ちゃんのあの態度は!
寅「だからよぉ〜、オレがバカにしたり、からかったりしてるわけじゃ
ねえじゃないかよぉ

歌う気もないくせに、来るからこういうことに
なるんだよ。とほほ(−−;)


さくら「結果としてはそれと同じことなのよ!んだんだ(−−)
寅、あまり反省してない顔で下を向いている。

さくら「
あの指揮してた人が、『今日はこれでやめます』って言った時の
あの悲しそうな顔見た?




                      



寅「そうかなぁ〜、見たっておまえ、ああ髭で埋まってたんじゃよ
笑ってんだか怒ってんだかツラ見えねえじゃねえか、ねえ


京子、思わず笑ってしまう



さくら「なんてこというのお兄ちゃん

寅「うるせええなあ、だから謝りに行きゃあいいんだろ、ようするに。行きますよ。

さくら「あたりまえよと小さく口の中で呟いて、下を向く

寅「あの、京子さん、遠いんですか、あいつの家は?

京子「ええ、そこまでしなくても、そんなこと根に持つ人じゃないんだけど
寅「そりゃ、分かってるけどさ、こいつ行かないとうるさいから

さくら「あたりまえよ!私たちを紹介したのは京子さん
なんですからね。京子さんの立場ってものもあるわよ


さくらは律儀だネエ。ふつう家まで謝りにはいかないよ。
かえって家に行くと気を使わせて迷惑ってことも多いからね。
だから京子の立場を守るためにも次週の土曜日に寅が早めに
行って、きちんと弥太郎に頭下げて謝って、もう寅は
見学しないっていうのがいいんだけどね。


寅「うるせえな、分かったよ!
さくら「家、近くなんですか?
京子「京成関屋なんだけどね。フフ…とっても分かりやすいの。
駅員さんに『こないだ、
一家心中のあったアパートどこですか』って
言ったら、すぐ教えてくれるの

すぐって…。普通そんな聞き方したら駅員さんかえって
不審がって教えないって(^^;)




寅「ほお〜…
さくら、目が点で「…」一家心中なんて言葉は超刺激が強いからね…。

京子「
その裏の緑色の建物。窓にパンダ
ぶら下がってんの。フフフ

寅「ハハ!面白いね〜」
「それじゃ、関屋の駅と、一家心中緑色窓にパンツだ」
さくら「パンダよ。いやねえ、もう」と笑う
寅「あ、そうか、パンダだパンダ
京子「ハハハ!」と笑う。


「京成関屋」だったら、完全に
現在地からは徒歩圏だ。寅、ラッキー(^^)





店内の板に掲げてあるメニュー
キリマンジャロ 250
ブルーマウンテン 260 
モカ 230
ブラジル 230
ガテマラ 230


寅「じゃあ、行ってくらあ!」

京子
「そうぉ、気持ちのさっぱりした人だから
すぐお友達になれると思うけど」


さくら笑っている


寅。壁の操り人形をいじりながら


寅「
大丈夫だよ、あの手のツラに悪い奴はないから、ね。うん
寅「
あんた、ちょっと、来たまえと、もじもじしてさくらを呼ぶ。
さくら、ちょっと笑って

さくら、もう用件お見通しで、すぐハンドバックを
開けてお金を渡そうとする。


さすがだね、受け取る方もやる方もまるで
当たり前のような行動だ。
甘やかしてるねえ、寅を。(^^;)

寅「仲間になるために一杯やろうと思って…ぶつぶつ
寅、京子にニカッっと笑って照れる。
京子「フフフ

寅「それじゃ。窓にパンツねシツコイね、シモネタ(^^;)
京子「フフフ!

寅、出て行く

京子、手を振る

寅、ニカッ

さくら、戻ってきて
さくら「しょうがないわね、まったく…
京子「うらやましいいなぁ〜
さくら「え…?
京子「遠慮なく口のきけるお兄さんがいて
なるほど、そうとるか…

さくら「…あ、フフ…。京子さん、兄弟は?
京子「いないの。父がちっちゃい時に死んじゃってね。母一人子一人
さくら「そう…お故郷(くに)は…?
京子「米沢。雪国よ
さくら「米沢
京子「さくらさんのご両親は?
さくら「もう、とっくにいないの…。だから私、今いる
  叔父と叔母に育てられたものなのよ

京子「そう。。。

さくら、頷く

京子「じゃあ、あのお兄さんが父親代わり?
さくら「と…言いたいところだけど…フフフ」と照れる。

父親代わりのわけないよな。聞くだけ野暮。
京子さんもギャグとばすんだね。


京子もなんとなくわかって「フフフ…」と笑う。



母一人子一人の京子がわざわざ東京で
働くのはなぜだろうか?
あまりにも絆が深いために、あえて距離を置くことに
よって、バランスを取っているのかもしれない。
親子とはなかなか難しいものである。





京成関屋の駅

ボーリングの音
このボーリングの効果音もちょっとした繁華街に時々使われているね。

緑のアパートの前をうろつく寅。


手にはさくらからの軍資金による真新しい一升瓶。


緑色、窓にパンダか…

「和一の奈寿司」のそばに緑色のアパート

『幸福荘』



踏み切りの音が遠くで鳴っている。
工事のボーリングの音も微かに聞こえる。


上を見上げると窓に耳の赤い白黒パンダのぬいぐるみ

しかし、どうしてパンダのぬいぐるみを?
実に不似合い(^^;)

弥太郎がパンダのぬいぐるみが好きだとは思えない。

また、そういうものを窓に出しっぱなしにしておくのも

不自然。やはり、コーラス団の募集や訪問者に分かりやすく
するために目印をつけていると考えるのが妥当なのだろうか?
外出中に雨が降ったら濡れるが、その辺のところは
どうしているのだろうか?




寅、上に向かって「オーイ青年!コーラス団の団長ぉ〜!
弥太郎、窓を開ける
寅「よう!
弥太郎「あ…
寅「ちょっと話あるんだけどな、おい



                          かわいいパンダのぬいぐるみ
                      




駅のすぐ近くなので電車の音がうるさくて聞こえない

弥太郎「じゃあ、上がってくだ…
寅「聞こえない…、え?こっちか?

弥太郎、いろいろ簡単に片付けはじめる。

弥太郎「何しにくるんだ、ち…

一応ちゃんと普通の台所もあるんだね。見た目が
未整理なだけでそんなに赤貧の生活でもないな。



パンツを干してある。

部屋のいたるところに音楽関係の物。
楽器やレコード、機械、道具、
楽譜、ポスター。などなど。
本気で音楽をやってる感じ。
なんとガリ版印刷の道具もある。
みんなのために楽譜を刷るんだね。


楽譜といえば、「忘れな草」でリリーが飛び出して
いったあのアパートにも楽譜が置きっぱなしになっていたなあ…



寅、戸を開けて、


寅「酷い所に住んでるな、おい

弥太郎、片付けている

寅「これでも、人間の棲みかかい?え?

弥太郎に向かって

寅「よ!青年。さっきはすまなかったな
弥太郎「え…
吊るしてある「徳利」に頭をぶつけて
弥太郎「ぁ痛

寅「悪気はないんだよ。オレはただ、おとなしく
じっとしてたんだけどさ、
みんなが笑うんだもの、しかたがねえや、な。
ま、本来ならオレが詫びを入れる
筋合いじゃないんだけれども、京子さんがね、
『私の顔を立てて謝りに行ってちょうだい』
、ていうからさ、しょうがないから
この薄汚いアパートまで出向いてきたってわけだ。
分かったか、青年


また言ってるよ。寅の悪い癖だね。真面目な人の性格を利用して、
『〜に頼まれたから』って言ってしまうのは(−−;)
まあ、話を上手く進めるための処世術と言ってしまえば
それまでだが。やっぱり、あまりよくないよ。トラブルの元になる。



弥太郎「え…、はあ、分かりました。あ、それでわざわざ、どうも
寅「どうだい、手打ちに一杯やんねえか!
弥太郎「あ、酒ですかと、ニカッ

寅「ホホ、嬉しそうな顔しやがって、おまえ、いける口か?
弥太郎「ええと、ニカッ
弥太郎「今、茶碗出しますから

っと言いながら大急ぎで、楽譜の横に立てかけて
あった
京子のモノクロ!写真を楽譜の中にしまいこむ。

コーラス全体を写した写真から写真屋でトリミングしたんだね。
わかるわかる(^^)


弥太郎「どうぞ、お上がりください

寅「お上がりくださいってほどのもんじゃないだろう、おめえ、
貧しい暮らしだねえ。いくら取ってんだよ、ええ?


寅「なんだか、臭いじゃないかぁ〜、おいおい、この茶碗、ちゃんと
洗ってあんのか、え・
バイキン付いてないかよ?

弥太郎「大丈夫です
寅「そうか、よし、なんだか、おめえ…、よし、じゃ行こう。うん
っと酒の栓を開けて、注いでやる。

自分の茶碗にも注いで

寅「行け行け行け

ふたり茶碗をカチャとあわせて
寅「よし!

弥太郎「いただきます
寅「おッ


弥太郎一気に飲み干し、

ブルブル震えながら
弥太郎「カアー!(ブルブル)プッハ!
シュウー!ハーッ、ハアア…

弥太郎っていったい…アル中か?(^^;)




                   





寅、あっけにとられて、湯のみを見つめている

弥太郎をマジマジ見て


寅「ハハハッ!…相当おまえ酒が切れてたねェ、
おい、え〜、


弥太郎「はい…」と頷く
寅、笑いながら「よし!おら、おい、駆けつけ3杯だ。う〜、
飲め飲め飲めはい飲め飲め!フフ


っと酒をついでやる。

弥太郎「給料前なもんですから
寅「んん〜、とニコニコ
こういうタイプは寅は大好き。


弥太郎、卓上塩を取って舐める

寅「しかしよぉ〜、銭はねえし、口は下手だし、
その上その男っぷりじゃ女にはモテねえだろう

弥太郎、飲みながら「え、まあ


寅「フハッハ、惚れられたことあんのかい?
弥太郎「ないです

寅「ハハハハ!ないですか、
よしよしよしよしよし飲め飲め飲め


と、また酒をついでやる。

寅「惚れたことはあんだろ?
弥太郎、ニヤケながら「しょっちゅうです

寅「ウヒヒヒ〜!ヒ〜!そうかい、
飲め飲め飲め
と手で催促



                     



寅、ってこういう正直で素朴な青年大好きなんだよね。
自分自身も実際は恋愛に関しては惚れっぽい割には
不器用な面が多いので弥太郎がいとおしいのかもしれない。
もちろんバカにしてからかっている部分もちょっとはある。


弥太郎「あ…そうだ」とラッキョの瓶(桃屋のハナラッキョ)を臭って
弥太郎「あ、大丈夫だ。どうぞ、やってください」っとすすめる。

寅、ベットに腰掛け治して
寅「あ〜、女に惚れても無理だな、お前は…
弥太郎「…そりゃあ…僕はあなたと違って二枚目じゃないし…
寅、ニコッとして「え?
弥太郎「口も下手だし、おまけに貧乏です…

寅「いや、そりゃ、どちらがいい悪いじゃなくね、
立場の違いはあるだろうけどさ、で、なに?


弥太郎「しかし、男にとって大事なのは顔じゃなくて心
じゃないでしょうかね

っと寅を見る。

寅「かあ〜、お前と話してるとため息がでちゃうよ。
ね〜、だから
素人は困るんだよ
心や気持ちで女が動いたら、
おまえ苦労はしないじゃないか、そうだろう?


寅が言うと真実味が出てくるなあ(^^;)


と楽譜のページをなにげなくめくる。

弥太郎、首をかしげて考え込む。

寅「おまえ、今誰に惚れてるんだい?
弥太郎「え?
寅「え?
弥太郎「あ、あなたの知らない人です
寅、楽譜めくりながら

寅「この近所のネエちゃんか?
それとも
労働者仲間の女子部か?ん?

例の写真が下に落ちる。

なにげなく拾って寅ビックリ

寅「!!



                             あ!!
                      





京子のテーマが流れる


弥太郎「
あ!!あ!!
寅、写真見ながら

寅「カハハハ!バカだなあ、
おまえ!え!?


弥太郎、写真を取り返そうと焦りながら

弥太郎「いや…、ち、
寅「これは身の程知らずだぞ青年!
可哀想だなあ〜


おいおい、あんたも人のこと言えないよ ヾ(^^;)


弥太郎写真を取り返そうとあせり、
寅は避けて窓の外に手を出して写真を見ようとする。
はずみで写真が窓から落ちてしまう


寅「
あああ!
弥太郎「
ああああ!あ…、ああ…



                      





下をたまたま通った軽トラックの屋根に
乗っかって持っていかれてしまう。

寅「おおい!
弥太郎「おーい!


今日の弥太郎っていったい…可哀想すぎ…(TT)


今作品の上条恒彦さんは、最初から最後まで
絶品でした。当たり役!


江戸川土手

さくらと京子が歩いている。



京子「私ね、母が看護婦だったでしょ。小学校の頃から家に帰っても誰もいないもんだから
つまんなくていつも母の病院行ってたの

京子「庭で遊んだり、看護婦さんと一緒にご飯食べたり、子どもの患者さんと仲良しになったり
行ってみれば病院で育ったようなもんだから、私子どもの時から自分は看護婦さんに
なるものだと決めてたの

さくら「そう、じゃあ、お母さん、今お一人で米沢に?
京子「そう、手紙よこすたんびに、いい男性見つけて早く結婚しろって
もう、うるさくって、うるさくって

さくら「おかあさん、あなたのことが心配でしょうがないんでしょう

京子、思い出し笑いしながら




                      








京子「それが可笑しいのよ、こないだ、田舎に帰った時に、
母さんの言ういい男性ってのは、どんな男性なの?
って聞いたら、
おまえの父さんみたいな人だってそう言うの。
さくら「じゃあ、お父さんって素適な人だったのね
京子「それがぜェんぜん!
さくら「え?
京子「私、よく覚えてないけど、写真で見ると酷い醜男。
 おまけにとっても口下手でお金儲けなんか全然縁が
 なかった人よ。フフフ…そんな人見つかると思う?


どこかで見たことあるなあそういう奴(^^;)


さくら、笑っている。

京子「ハハハ!
さくら「そうねえ、フフフ」とつられ笑い。




弥太郎のアパート

寅「今度会った時には、こうも言おう、ああも言おうって、頭の中で
いろいろ思い巡らしてはいるが、いざ、惚れた女にばったり出会った時に
まるでオシになったようになんにもしゃべれなくなることがある。

弥太郎、深く頷く

寅「それは、よおく分かる…。だがな、青年、
おまえはその口をチャックしたまま
好きでもないお多福と所帯を持って、
尻に敷かれて、
ガキの5人もヒリ出してだ。
どん底の生活に喘いで
一家心中をしようと
するその時に、『ああー、もしかして京子さんは、
このオレが好きではなかったのか…。』
そう思った時おまえどうする。
いくら後悔してももう遅いんだぞぉ…


よくもまあ、ここまで人の不幸の物語を
でっちあげれるねえ、まったく(^^;)



弥太郎「じゃあ、寅さんいったい僕にどうしろって言うんですか?
打ち解けてきたのか弥太郎はこの時点で
すでに「寅さん」と言っている。



寅「思い切って何でも言ったらいいさ。
惚れていますとか、好きですとか、




                      





弥太郎「そしたら、どうなりますかねェ?

寅「断わられるのに決まっているきっぱり!
おいおい、決め付けつけるなよ(^^;)

弥太郎「なんだ…」と酒を飲む

寅「しかし、無駄ではないんだ。
おまえがそれで諦めることが
できるから。な。
また、別の角度のお多福を
探し求めていけばいいんだ。
別の角度って…(^^;)
弥太郎「
……考え込んでいる。



寅「分かったか青年、うん・


   

                      




電車の警笛「プー!ガタンガタンガタン…」

二人とも酒を飲む

寅「プア〜ッ」っと飲んで弥太郎を見る。

弥太郎は飲みながら哀しそうな顔。




夜の柴又参道

寅と弥太郎の歌声

二人ともかなり酔っ払って、肩を組んで千鳥足で駅の方から歩いてくる。

二人で「
♪花も〜嵐も〜踏み越えーて〜
寅、近所の煎餅屋に
寅「よお、大変だね
弥太郎「へへへ…



                      






寅、近所の人に
寅「オウス!
二人で「♪行くが〜男のオ!〜生きるー道イ〜
と語尾を高く上げて歌う。





とらや

とらやの茶の間が店から見えて

京子がみんなと一緒に座っている

寒くないのか開けっ放しで??

寅、店に入って来て

寅「とらやの皆さんこんばんは!ただいま帰りました!
ベロベロに酔っている。



                      





弥太郎「こんばんは〜!!突然お邪魔しまして、
  僕、大川弥太郎といいます。千住の労働者です。
  今日は、寅さんに、ごちそうになってしまって…


弥太郎、京子に気づいて、目が輝き、驚く

弥太郎「ああ!



                      





京子「いやーね、大川さん、寅さんと飲んでたの?
っと立ち上がって上がり口まで来る。

おいちゃんや博、事情がよくわからなくて
あっちむいたりそっちむいたり。



京子「今、みんなで心配してたの、ケンカでもしてるんじゃないかって

寅、顔をあげて、京子を見る
寅「んあ!?
寅「あー!!なんだ、京子さん来てたのか
さくら、台所の暖簾から出てくる。

京子「さくらさんに誘われてね
寅「うん
京子「晩ご飯までご馳走になっちゃった。フフ
寅「あー、そりゃよかったよかった
寅「おい!さくら、おい、あんちゃんにちょっと水持ってこい、水を
さくら「どうも、すいません。兄がお世話になりまして
弥太郎「いいえ
博「どうぞお上がりになりませんか
おいちゃん「どうぞどうぞ
寅、茶の間の上がり口でひっくり返ってしまう。
弥太郎「どうも、ありがとうございます
寅「上がれ、うん〜
寅タンスに背中をもたれて
寅「そうか、うん、京子さん来てたのか、よかったよかった。
今ね、あの野郎と、
京子さんの話をしてたんだよ

京子「私の?
寅「うん、フフ…
京子「どんな話?
寅「決まってるじゃないか、ねえ!悪口
おいちゃん、笑う
京子「フフフ!どうせそうでしょう


弥太郎、店の中から大きな声で

弥太郎「違います!…悪口なんかじゃありません


一瞬一同『シーン』


寅「冗談が通じないね、お前。こんなになりやがって、ハハ

っと手で髭をふくらました格好をする。




                      





弥太郎のただならぬ気配を感じ、寅はハッとし、
周りの人たちにも緊張が走る

寅、小声で

寅「おい、と焦って、片目をつぶって京子さんの
ほうを見る格好をして弥太郎になにか合図をする。




              





弥太郎、そんなこと関係なしに、
京子の方を向いてなにか言おうとしている。


弥太郎「あの…木谷さん…

寅「わあ!あー!おい、こんなとこで、
そんなこと言うヤツあるかよ、




                      




弥太郎「あの、僕





                     






寅、肩を組んで「さ、楽しく歌おう!歌おう、ハイ!

寅「ね!、♪泣いてくれるな〜、

弥太郎「笑わないでください

寅「笑わない笑わない!♪ホロホロ鳥よ〜、っと、
月の比叡を、ホラ歌えよ!




                      




さくら「お兄ちゃん
さくらもただならぬ気配を弥太郎から感じ、寅の歌を止めようとする。

寅「♪ひとり行く〜
博「兄さん静かに…っと座敷に押さえ込む
寅「何だおまえ、いいじゃないか!おい



                      





弥太郎「いえ…

寅「♪パンパパンパッパンパン〜、パンパンパン

弥太郎「あの…

寅「♪花も〜嵐も〜…」


弥太郎「本当に、笑わないで下さい


寅「♪踏み…



                      




京子、真面目な顔で弥太郎を見ている。
その顔に、圧倒されて寅は歌を止める。



京子「笑わない。…なに?



                      








寅、弥太郎を見、京子を見、また弥太郎を見ている。





                      





弥太郎、息を整えて何か言おうとしている。



沈黙




弥太郎「急性盲腸炎で入院したその日から、
…僕はあなたが好きです





                      






京子のテーマ、ゆっくり、静かに流れる。




弥太郎「あれからずっと…、あなたが好きです




京子、弥太郎を見つめている。



                      







弥太郎、下を向いたまま。


          





沈黙の時。






弥太郎、京子を見て、我に帰ったようにハッとし、


          





周りの人たちを見て、

居たたまれなくて、体を反転し、

小走りで店から出て行く。


          





寅「おい!弥太郎!」っとこける

フラフラしながら「
なんだあいつ…」

寅、店の椅子にドテッっと座って、呆然とする



京子も呆然として、どうしていいかわからない。


京子静かな声で「どうも、ごちそう様でした
と言い、頭を下げて帰ろうとする

一同「いいえと緊張して頭を下げる

寅、京子を見ている。

京子、ゆっくり立ち上がって、靴を穿き、
さくらの方へ向かって、戸惑いながら少し微笑む



           




寅、下を向いてしまう。




                      





京子急ぎ足で寅の前を歩いていく
寅の前を通るとき


京子「さようなら

寅、下を向いたまま「


道へ出た後走って行く足音


寅、ハッと京子の行った方を見る




                      






我に帰って、とらやの人たちを見て、下を向き

立ち上がりながら



寅「ちェ!はッ!まったくねえ!
どうにもこうにも話にならないよ、おまえ!
女の気持ちなんて分からないんだから!
あれじゃ、振られるの当たり前だよ!

よ、ちょ、もうお開きお開き。無理だよ!


          


っと暖簾をくぐって2階にヨタヨタ上がっていく

さくら、ずっと店先の方を見ながら
弥太郎と京子のこと、



       


そして…兄のことを考えている。


       


博も、じっと下を向いて考えている。

とまどいながら時間が過ぎていく。





犬が遠くで鳴いている






この長い長いシリーズの中で
最も美しい愛の告白のシーンは
この弥太郎の告白である。
これ以上に美しい告白シーンを
私は他に知らない。









京成関屋駅

京子が電車から降りてくる。

下を弥太郎が走っていく。

立ち食いそばうどんの看板

その店ののれんから弥太郎の知り合いが
丼を見せながら弥太郎に話しかける。


知り合い「大川」と食べている物を見せびらかす。
弥太郎「へえ〜
弥太郎、「嫌いだよそんなもん」と意地を張る。

京子それを駅の上から見ている。

京子、駅の下へ降りていこうとする。
が、上っていくる弥太郎に気が付いてつい戻ってしまう。

弥太郎「
♪オーリオリリリ、オリリリララ!あ、こっちか。」
ホームに上がったところで
…ハ!
京子に気付く

弥太郎「こんちは
京子、消え入るような小さな声で「こんにちは



                                     




弥太郎「あ、あの…夕べはどうもすいませんでした
京子首を振って「フフ…今お昼休みなの
弥太郎「ァ」
京子「ちょっと..あなたに、会いたくて…と、少し照れる。



            ちょっとあなたに会いたくて               弥太郎はこの世の極楽浄土の気分
                 




弥太郎、ウレピイ表情。
生まれて初めて、最初で最後、
この世の極楽浄土!。(●⌒∇⌒●)/


ん〜〜!!よかったなあ〜、弥太郎ォ〜。(T-T) 
これも京子さんのお父さんの面影を追う京子さんの
父親コンプレックス&お母さんの理想の男性像の刷り込み
(ブ男、口下手、お金儲け下手)があったればこそだぞ。(^^;)
まず、普通はないぞ世の中でこんなこと。(キッパリ)
京子さんのご両親に感謝だね。



                       




京子、弥太郎を見つめ、そしてちょっと下を向きながら、
駅を降りてゆく。
弥太郎、真剣な顔でついて行く。





とらや 


二階で二日酔いの寅、水を飲んでへたっている。


踏み切りの音 チンチンチンチン…ガタンガタン、ブオ〜

一階の店先。社長がおいちゃんに聞いている。

社長「じゃあ寅さんがけしかけて無理やりに
愛の告白をさせたとこう言う訳か


おいちゃん「そうらしんだ可哀想になァ〜

おばちゃん「あんたそんなこと言うけどわかんないよ。
    だってあんな言い方されて心を動かされない女は
    いないんじゃないかい?




                       



おばちゃん、鋭いね。あれだけ真面目に
愛を告白されていやだと思う女性はいない。
自分が嫌いではなくどちらかというと好感を
持っていた人からの告白はさらに嬉しいに決まっている。
もちろん、それで恋人になるかどうか、結婚を考えるか
どうかは、また別の問題ではある。第24作「春の夢」で
マイケルに愛を告白されたさくらは戸惑い、困惑したが、
どこかで嬉しとも当然思っている。さくらは、誰よりも
博を愛しているし、絆も深いが、それとは別に、
自分のことを大事に思ってくれている人の
存在は嬉しいものだ。生き物として当然の感情。




おいちゃん「そらまあ『ひょうたんから駒』って事も有るだろうけどさあどうだか


瓢箪から駒が出る
駒とは馬のこと。ひょうたんから馬が出てくるはずは
ないので、意外な場所から意外な物が出てくること。
起こるはずのないことが起こること、冗談で言った
ことが現実になってしまうこと。類似語に『嘘から出たまこと』




社長「で、そのひょうたんどうしてんだい?
社長、『ひょうたん=寅』っていうのは
ことわざの意味から言って違うような…。

おいちゃん「二日酔いで寝てるよ夕べのことなんか
何にも覚えちゃいねえんじゃねえか


社長「ケェ!困った男だねえ!何も人にまで
失恋押し付けることは無いだろうになあ

と言いつつ、ヘルメットを被り、店先に行く。

その時、弥太郎が猛スピードで店先を通りぬける。

社長、びびって「何だ、あれ
弥太郎、戻ってきて「あれ?あ、間違えました。こんにちは。夕べはどうも失礼しました

かなり上機嫌



                       




おいちゃん「いえいえ
弥太郎「寅さんいますか?
おばちゃん「ええ、今二階で寝てますけど
弥太郎「あのぅ、上がってもいいでしょうか
おばちゃん「ええ、どうぞどうぞ
弥太郎「失礼します
弥太郎、荷物部屋のほうに上がろうとする。
おいちゃん「ああ、ちょっとちょっと
弥太郎「ハ?
おいちゃん「こっちです
弥太郎「あ〜間違えちゃった。こっちですね!
弥太郎、階段を上りながら「寅さァん!
社長「おい、何もんだい
おいちゃん「ほら、今話した
社長「え!じゃあいつが看護婦さんにアイラブユーって、
こう言ったのか!

ぜんぜんそんな言い方してないって ヾ(^^;)

タコ社長つばが飛びまくる。おいちゃん、顔にかかって大変。
おいちゃん「おどろいたか
社長「いやあ驚いたねえ!まだね、寅さんの方が
マシだよ。悪いけど


おいちゃん「な!な!っておいちゃん…
ここまで言い切るこの二人っていったい(^^;)
それにしても上条さんなんでこうまで顔のこと
言われなけりゃいけないんだ(TT)


おばちゃん「ちょっと上手く言ってんじゃないかい?
おいちゃん「どうして?
おばちゃん「だってうれしそうな顔!
   駄目だったら今頃ショボ〜…
   (おばちゃんポーズ!)
   っとしてなきゃいけないもの





                          駄目だったら今頃ショボ〜…
                       




う〜ん、おばちゃん、いつもながらポーズが最高。
そういえば、第13作「恋やつれ」で寅の父親が
夢枕に出たっておいちゃんが言ってた時の
おばちゃんの『幽霊ポーズ』は笑えた。


おいちゃんめがねをはずして「あ、そうか!そう言やそうだなあ
さくら「こんにちは
おばちゃん「あ!さくらちゃんちょっと
ほら何て言ったっけほら!ほら!

さくら「何よ
おばちゃん「何よじゃないよほら!
おいちゃん「ほら!『僕愛してます僕愛してます』!
おばちゃん「ほら!髭中顔だらけの!
あんたたちっていったい弥太郎のことを…(^^;)

まじめに考えると「髭中顔だらけ」はホラー映画。


さくら、さすがに笑う(^^;)


                           ほら!髭中顔だらけの!
                       




おいちゃん「夕べ来た奴
さくら「あ、大川さん?
おばちゃん「あ、その大川さん今来てんだよ
さくら「大川さん来てるの
おばちゃん「うん、寅さんいますか〜って言ってね。
二階上がってっちゃったんだよ

さくら「何の用だろう
おばちゃん「それがさなんだかおめでたいことがある様な気がするんだよ
おいちゃん「俺たちにとっては不幸せな事がな上手い!
社長「ホントだとつっこむ。
さくら「それどういう事?

弥太郎が上から口笛を吹きながら降りてくる。

弥太郎「♪フ、フィ、ピーィプーゥフゥーフフフゥ〜フウ〜」
弥太郎、さくら達に気が付いて
弥太郎「ああ、こんにちは。夕べはどうも。チョッと.. 。
寅さんにお話があったもんですから

さくら「何でしょう
弥太郎「は?いや、あのう…つまりちょっとお礼が言いたかったんです。
どうも失礼しました




                       



弥太郎「あ、そうださくらさん
さくら「はい
弥太郎「あのう…京子さんよろしくっ…ていってました
弥太郎、もう嬉しさを隠しきれないって言うか、
隠すつもりさえないっていうか(^^;)


さくら「そうですか
弥太郎「ハ!それじゃ」と帰っていく。
おばちゃん「あ、どうも
おばちゃん「やっぱりぞうだひょうたんから駒が出たんだよ!

さくら急いで二階の寅の部屋へ。



とらや 二階

寅「お、さくらか…。あんちゃんなそろそろ旅に出るよ
さくら「大川さん何の用だったの?
寅「なあに、何だか礼かなんか言ってたよ。
早い話が
ひょうたんから駒が出たんじゃないかな




                       



救急車の音 ウ〜ウ〜

寅「ま、良かったじゃないか、さくら。な、


弥太郎が来たら、すぐ二日酔いが
治るっていうのもなんかなあ(^^;)




とらや 一階

寅「おいちゃんおばちゃん。長い間世話になったな
おいちゃん「寅!
寅「え?
おいちゃん「止めても無駄か
寅「ああ、無駄だなァ。これから正月にかけて俺たちの稼ぎ時だし。
そうだ、この正月は大宰府天神で一稼ぎしておいちゃんと
おばちゃんにそろいのちゃんちゃんこでも買ってくるか


おいちゃん「気持ちだけでもうれしいよ」と涙ぐむ。
寅「さくら
さくら「うん?
寅「博と仲良くやるんだぞ
さくら「うん
寅「社長達者でな
社長「寅さん
寅「え?
社長「辛いだろうな
寅「なあに社長の金の苦労に比べりゃ…俺の色恋ざたの苦労なんてなヘッ!、
屁みたいなもんだよ

社長「ありがとうよ寅さん



さくら、茶の間で貯金通帳と印鑑を引き出しから取り出してきて

さくら「これ、使わずに済んだから返しとく



                       



寅「…そうか、…じゃ、また、
少しずつ貯めといてやらっ
と懐に仕舞い込む。



さくら、大きく頷いて
さくら「ありがとう

寅を見て少し涙ぐみながら
さくら「あてにしてるわ

寅にとって、この諏訪さくら名義の貯金通帳は
さくらの願が入った『お守り』みたいなものになったね。
さくらも、潜在意識の中でそのことを願っているような気がする。



               




寅、頷いて、店先へ行き、梁に手をおいて。

寅「あ〜、すっかり涼しくなりやがったなあ〜
寅「さくら
さくら「ん?
寅「今日は、何日だい?
さくら「十二月…一日
寅「もう師走だなあ…。せめて正月ぐらいは生まれ故郷の
 柴又でゆっくり過ごしてえが…

さくら、近づいて「ねえ、たまにはそうしたら?
寅「そうできねえのが、渡世人のつれえところよ

 

                       




寅、ちょっと、微笑んで「じゃあ、あばよ!と寒そうに襟を立てて歩いていく。

さくら、哀しくて、「お兄ちゃんと言って参道を追いかける。


寅、大和屋の前あたりで、赤ん坊をなでて、去っていく。

見送るさくら。


              



     
「歳末大売出し」のボードを持ったサンタクロースの
サンドイッチマンが歩いて行く。

柴又参道をサンドイッチマンが歩いてもあまり効果ないと思うんだが(^^;)


この長いシリーズで結局寅は一度たりとも、
正月を柴又で過ごすことはなかった。
もうあと数週間でと言うときに、
必ず、マドンナのことでトラブルがあって、
旅に出てしまうのだ。稼ぎ時かもしれないけれど
一度だけでもとらやで大晦日居ればよかったのに…。


ちなみにこのあとの作品第15作「相合い傘」の中で
函館でばったりリリーと再会した寅が、宿の布団の中で
リリーに、京子さんとのことを話していた。
リリーのセリフ「で、その看護婦さんとは上手くいったの?」で
そのことが分かる。寅はそのあとごまかしていたが…(^^;)
まさか髭中顔だらけの男と一緒になりました、
とは言えないだろうな。  




正月 江戸川土手の凧


京成関屋駅下の大川弥太郎のアパート「幸福荘」

アパートの前を獅子舞の職人さんが歩いていく。

その後ろをさくらが2階を見上げながら歩いてくる。

たぶん、さくらは『緑色、パンダのぬいぐるみ、』と
つぶやきながら歩いてたんだろな…(^^;)




                        



沢山の靴が玄関に並べられてる。

さくら「遅くなりましてまた遅れたのかいさくら(^^;)
京子「いらっしゃい
京子「こっちへどうぞ、ちょっと詰めてあげて
さくら「どうもあけましておめでとうございますとお辞儀をする。
みんなも一斉に頭を下げるので、さくらが頭をぶつける。
みかんを持った後ろの青年、みかんをこぼす。



                         



一同「アハハハハ!
団員A「やっぱりケチしないで会場借りりゃ良かったな
会場借りたら面白味ががないよ。この狭いところが楽しいんだよね(^^)

団員B「無理よ、こんな狭い部屋でねー
弥太郎「まあ、まあ、さくらさん来たところで乾杯といこう
弥太郎「大先輩、あの、音頭お願いいたします
団員C「では、ご指名いただいたので僭越ながら、
我らが
江戸川合唱団1975年度
の発展をきたして、乾杯!


一同「カンパー
京子「おめでとう
みんな口々に「おめでとうございます
さくらだけなぜか『オレンジジュース』なぜ??

さくら、京子に「とらやの団子折り詰め」を渡す。

いつもさくらは何かあると、とらやの団子の折り詰めを手渡したり、
お土産に持っていったりする。違うお土産や差し入れはほとんどみたことない。



それにしても、さくらはあのあと、毎週土曜日「江戸川合唱団」で
歌の練習していたんだね。あの日、寅が恥をかかせた
ままだったら、新年会は行けないよな〜。
と、いうことは、やっぱり何度か練習に参加して、
汚名挽回したんだと思う。やっぱり歌うことが好きなんだね。



一同飲んで。

京子「おいしい

一同拍手

京子「とらやのお団子いただきました〜
一同口々に「ごちそうさま」「ごちそうさま

弥太郎「あの〜…、みなさん、あのぉ…、
いや、ちょっと聞いていただきたいことがあるんです。

一同弥太郎を見る。
弥太郎「あのぅ…、
京子、照れて少し笑っている。
みんなも、ニタニタ。

弥太郎「実は…

沈黙

弥太郎「つまり…

みんなクスクス

弥太郎「結婚します
団員D「誰が?
弥太郎「いや、俺だ…
団員D「誰と?
みんなニヤニヤ



                            




弥太郎「あのぅ…そこにいる木谷京子さんとです
京子お辞儀する。

団員D「どうして?
弥太郎「ど?どうしてって、おまえ!
とドギマギしてつっかかっていく。

一同大爆笑
                           



                            





団員F「まあまあまあ、
団員G「みんな知ってんのよ
一同「ねえェ〜!
団員H「とっく、とっく
弥太郎「え?え?っときょとんとする。
あんただけだよ、誰にも知られてないと思っていたのは(^^;)

それにしても、1ヶ月の間に結婚を決めたんだね。早え〜!
それも看護婦さんだから毎日は会えないだろうに…。
たぶん6、7回あのあと会って、いろいろ話し合って、
決めたんだろうね。まあ、昔からメンバーとして知ってはいたんだ
が、それにしてもなぜそんなに早く決めたんだ?
それと、誰がとっくにバラしたんだ?
そらまあ京子さんしかいないか。あたりまえ(^^;)


団員I「美女と野獣上手い!
みんなゲラゲラ

京子が小さなカバンからハガキを取り出す。
寅からの年賀状、さくらにそのハガキを見せる。



                  



寅の声がかぶさっていく。


寅の声『新年おめでとうございます。
新しき年をいかがお迎えでしょうか。
私こと、昨年中を振り返れば、
思い起こすだに恥ずかしきことの数々
今はひたすら反省の日々をうち過ごしております。
本年が、京子様には特別に良き年であるよう、
心からお祈り申し上げます。


ここから映像は佐賀の呼子港の渡しが映リ始める

なお、末筆ながら、くだんの青年。
名前は失念いたしましたが、
あなた様を恋い慕うひげ面の男にくれぐれも
よろしくお伝えくださいまし。

木谷京子様      九州大宰府にて 車寅次郎



『あなた様を恋い慕う』は最高!


この最後の『九州大宰府にて』の部分は
寅のナレーションでは読まれていない。
が、ハガキには書いてある。




                             








佐賀. 呼子港



                            




ふたたびこの地へやってきた寅。

寅、こちら岸で、渡しを待っている。

かもめの鳴き声


渡船 大人50円 小人25円 の看板

寅、降りる客の腕をつかんで手伝いながら、

小舟に乗り込んで座る。



遠くから、女の声

女「おじさ〜ん!待っちょってェ〜!
女子供を抱っこしながら、走ってくる
女「待っちょって〜、待っちょって〜。ほっ、ほっと石段を降りてくる。

寅。振り返って、顔を見て驚き、立ち上がる。

女、ドンと飛び乗り、寅が支えてやる。
女「あ、すいません
寅、手を持ってニコニコ笑いながら


寅「よお〜!



                           





女、寅を見て、…間があって

女「ああ〜!あんたじゃなかね!

寅、満面の笑みで
寅「んん!と頷く。

舟が動き始める。

船頭さんもなぜかニコニコ。

女、寅をシゲシゲ見て「わあ
二人とも笑いながら座る。

女「わざわざ来てくれたんね!?

寅「ん!唐津まで来たんでね。
 赤ん坊のことも気になってたもんだから


女「そう〜!
寅「うん
女「元気だよ、ほら、
 ここにいるばい、見てみんね




            赤ん坊をあやす寅                      寅を見て笑う赤ん坊
                





寅、笑いながら赤ん坊の、ほっぺを指でさわる。

女「病気ひとつせんもん、ね!と赤ん坊を見ながら笑う。
赤ん坊、笑っている。
女「タケはいい子じゃけんね!
赤ん坊、寅を見て笑っている。
女「ほ!ほ!ほ!と言いながら赤ん坊をあやす。

寅、ほっとした顔で
寅「そうか…、元気だったか…


ちょっと、まじめな顔になって、

寅「ところで、この子の父親どうしてるんだい?
女「フフ…いるばい、あそこに
寅「え?」と振り向く。


小屋の呼び込みとかモギリとかさせちょるんよ。
つまり、ね!なんと言うか、ま、一緒に暮らしとるんさ



寅「そうかあ、それじゃ親子ともどもあんたの
世話になってるわけだ
と心から安堵。



                            



女「フフ…
寅「よかったよかった

この時の春川さんの笑顔。なんの『けれん』もない、
そのままの笑顔に、何度救われてきたことか。
この笑顔を見たいために何度も「子守唄」を見てきた。




                           




女「あ!お父ちゃんだ!お父ちゃーん!
対岸に出てきた男、手を振っている。



                           



女「お父ちゃーん!
お客さんバイ!こん人こん人


寅、遠く岸に立つ男の方を見ている

メインテーマが大きく流れる。





女「わかっちょるのかね?と笑う。

寅、涼やかな顔で手を振る。



                           




安堵の表情で遠く、対岸を見ている寅。

静かに寅たちの舟が近づいていく。



                            




呼子の海と渡し舟が遠くに映る。


                           




このシリーズの数あるラストの中でもベスト10に入る
爽やかなラスト。寅はこういうラストが実に良く似合う。






出演

渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子
(諏訪さくら)
十朱幸代(木谷京子)
下絛正巳 (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)

前田吟 (諏訪博)
中村はやと(諏訪満男)
太宰久雄 (社長)

佐藤蛾次郎 (源公)
上條恒彦 (大川弥太郎)
春川ますみ(踊り子)
月亭八方 (佐藤幸夫)
笠智衆(御前様)

内村友志
羽生昭彦
長谷川英敏
松下努
木村賢治
渡辺隆司
中原美樹
秩父晴子
戸川美子
松原直
高木信夫
土田桂司
協力:統一劇場


監督: 山田洋次
製作: 島津清
企画: 高島幸夫 、小林俊一
原作: 山田洋次
脚本: 山田洋次 朝間義隆
撮影: 高羽哲夫
美術: 佐藤公信
編集: 石井巌
音楽: 山本直純
助監督: 五十嵐敬司

 

今回の更新は4月23日でした。
今回で「寅次郎子守唄」は
完結です。

次回はいよいよ
第15作「寅次郎相合い傘」です。
気合が入ります(^^)。密度をより高め、
3ヶ月の長丁場の予定でやります。
次回、第1回目更新は余裕を持って5月2日です。
どうぞお楽しみに。




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