バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第15作 男はつらいよ![]()
1975年8月2日封切り

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物語の勝利. ― 渡り鳥たちの栄光 ―
神様の気まぐれ
山田監督の映画に限らず、人が人生をかけて何かを制作する場合、時として傑作が生まれる。
しかし傑作と呼ばれるものにもいろいろな種類がある。
まず、作者のもっとも言いたいことが最初に出たみずみずしい処女作の良さを伴う大傑作。これが第1作「男はつらいよ」である。
その次に、さらにテーマを深く掘り下げた力強い重量感がある力作とよんでいい大傑作。これが第8作「寅次郎恋歌」であろう。
そして、この2つはおおよそどの作家にも人生で1度は与えられているものである。しかし、いくら脚本や監督やスタッフがよくても
実際に演じるのは役者さんである。役者さんがその役に「出会う」ことがなければ、真に一流の作品は出来ないのだとも思う。
特にこのシリーズの場合は「マドンナ」の魅力が大きな比重を占める。
そして、神様は時として気まぐれ的に、ふっと、脚本、演出、スタッフ、キャストなど全てのタイミングを合わされるときがある。
監督やスタッフの人生での高揚の時期、出演者たちの人生での高揚の時期、それらが見事に一致する時がごくまれにある。
これは人生の中で全ての作家に必ず与えられるものでもなく、残念ながら意識的な努力でなんとかなるものでもない。
そういうときの作品は、傑作絵画のようにリズム感、テンポが抜群で、人物たちがその中で見事に自分の色を輝かせて、
しかもお互いの色が闘うことなく響きあい、すばらしいハーモニーを作り上げている。タイミングの偶然が重なり合うということは
確かにあるのだ。ある日「ポン」とこの地上に生まれ出る。そんな感覚。一気に出来る。そして、そのレベルでの2作品目はなかなか難しい。
たとえば私の感覚的には黒澤明の「七人の侍」小津安二郎の「東京物語」、新藤兼人の「裸の島」、野村芳太郎の「砂の器」、などが浮かぶ。
重なる4人の絶頂期
おそらく山田洋次監督の中で言えば「幸福の黄色いハンカチ」になるのだろうが、山田監督には実はもうひとつ「別枠」があるのだ。それが
「男はつらいよ」シリーズである。2種類の違った種類の映画たちをほぼ同時にどちらも同じ比重で、同じ気持ちで!作ることが出来ると言う
類まれな、ある意味変わった才能の持ち主である山田監督は、それゆえにこの「男はつらいよ」シリーズの中でも神様の気まぐれに遭遇し、
「寅次郎相合い傘」を生み出したのである。なんとも幸福な方だ。
ちなみに、この「相合い傘」が1975年封切り。「幸福の黄色いハンカチ」が1977年封切りである。
全てはタイミングの妙だ。「寅次郎相合い傘」はそのような奇跡の作品。このような作品には穴がほとんどない。最初から最後まで一気に
観させるテンポと軽やかさ、そして背後に流れる豊穣な叙情感。本当の傑作は「重々しくない」といのが私の持論だ。実に柔らかい
ふくよかな味わいがある。絵画も同じである。いわゆる力作というのは結構重々しいが、本当の傑作は「軽快なハーモニー」とでも
言うべきものが絵の隅々にまで溢れ、全てのカットに無駄な動きやギクシャクしたものがなく、観る者を優しく包んでくれるのである。
名作「忘れな草」を作り終えた山田監督は、浅丘ルリ子の水を得た魚のごとき最高の演技を見て、このリリーというキャラクターを
もっと生き生きしたものに、もっと人間として成長させて掘り下げたものにできる、と確信し、続編を書き始める。
アイデアはどんどん湧き出てくる。山田洋次44歳.
そしてこの頃、偶然にもちょうど渥美清、倍賞千恵子、浅丘ルリ子の人生の高揚期が訪れてくるのである。役者は年齢を重ねれば、
それはそれでその年齢しか出せない味が出てくるものだ。笠さんを見ているとそのことが良く分かる。しかし、それとは
別にやはりその役者のパワーが最も外に向けて発せられる高揚期というものはあるのだとも思う。
渥美清47歳.倍賞千恵子34歳.浅丘ルリ子35歳.
この作品は寅とリリーと同じくらいさくらが素晴らしい。倍賞さんが、このシリーズ中で最も生き生きとした表情でスクリーンの
なかで華やいでいた。内面の充実が、絶妙な演出とともに見事に光を放っていた。
そういうわけで、最初から最期まで作者側の「説明的な意図」というものを感じさせないで観終えることができる。
映画でしか味わえないエンターテイメント。ダイナミックな空間の広がり。軽妙なテンポ。それらが見事に決まっていた。
最高のオープニング.カギを握るさくら
すでに出だしから感覚が冴え渡っている。まず、ドラの音、そのあとの凝りに凝った夢の演出。このシリーズ最高の活劇「海賊タイガー」。
そしてタイトル。歌の中での映像の主人公はなんといつもの寅でなく今回は「自転車に乗るさくら」!。さくらが江戸川土手を通り、
しばらくたたずみ、遠くを見ながら兄のことを思い出し、そしてまた漕いでいく。題経寺の前を通ってとらやに行くまでの道のりのなかで、
涼しげなショットとともにさくらの表情も生き生きと映しだされる。途中、題経寺の大木の茂みが風にフワっと揺れた時、『リリー.浅丘ルリ子』と
クレジットが出る。風の中でリリーのクレジット。もう最高である。もうこの部分だけで胸が高まるのは私だけではないはずだ。
そして、境内で御前様や昼寝をしている源ちゃんが映し出される。夢もオープニングの歌の映像もシリーズ中もっとも冴えたものの
ひとつであることは間違いない。
このように、出だしから、だれたところが無い感覚的な演出だ。もうここまで見ただけでもこの作品はただものではないことがすぐ分かる。
そしてこの歌の部分の映像によってこの作品では「さくら」が物語のカギを握っていることが暗示される。
渡り鳥たちの栄光 −そして数々の名場面−
寅とリリーの相性は「忘れな草」の下地があるのでいきなり抜群である。寅はリリーとだったら大喧嘩でもなんでも出来る。
人生で唯一のそして最愛の人。そのリリーが最初の歌が終わってたった3分でいきなりとらやに訪ねてきた。もう物語は
ターボエンジンがかかり始めている。速い速い。どうしても堅気の地味な生活が続かず、夫と別れてしまったらしい。
下世話な話、これでリリーはフリーになり、寅との物語が再開されていく種は最初この場面で蒔かれたのである。
さくらも、リリーの離婚を聞き、いったんショックを受けるが、別れ際に、「また来るわね」と言うリリーに、
さくらは「今度はお兄ちゃんと一緒にね」と言うのである。ほんの5分前にリリーから離婚のことを聞いたばかりだというのに、
この積極性はどうしたことだろうか。さくらの心の奥にある寅とリリーへの思いにまた大きな火がついた瞬間だったと言える。
(このさくらについた火はこの物語の後半で大きく燃え上がることになる)
そして柴又でのさくらとの別れの直後の函館での寅との再会、パパも含めた3人の放浪の旅。彼らの人生での最も高揚した日々が
北海道を舞台に繰り広げられる。数々の名場面の誕生。見事なロードムービー。まさに「流れ流れの渡り鳥」たちの栄光なのだ。
そして小樽で、自立した生き方をめざすリリーとそれが理解できない寅との大喧嘩があり、お互い傷ついて別れた直後の、とらやでの
劇的な再会!そしてとらやでの蜜月の日々。寅の一世一代のこのシリーズ最高のアリア。さくらとの厚い友情の夜。、可笑しくも
哀しい「メロン騒動」。そしてあの雨の日の相合い傘…。あの時の『リリーのテーマ』は生涯忘れられない。兄を思うさくらのリリーへの
切なる願いとリリーの承諾。その直後の寅の混乱と急な別れ。雨の中、2階での寅とさくらの会話。そしてラストへ…。ほとんど息つく
暇もなくスクリーンに見入っているうちに映画は「キャバレー未完成」のギャグで終わるのである。まるでこのリリーと寅の恋物語が
まだ未完成で、このあとも続いていくことを暗示するかのように。

『物語』で見せていく醍醐味
この第15作には大きな悲劇や重みはない。誰も死なないし、大きな暴力も、裸も、殺しもしない。結婚式もないし、事故による大怪我も無い。
主人公が刑務所から出てきたり、警察から逃げ回ったりもしない。解決しがたい理不尽な大問題も出てこない。想像しえない大事件にも巻き込
まれない。外国へ行ったりもしない。超大物スターのゲストが出ているわけでもない。それなのにこれだけの感動が味わえるのである。
正真正銘、『物語の冴え』で最後までぐいぐい観客を引っ張っていくのである。
ここに私が映画と言うものに求めてやまない「物語の勝利」、「生活の勝利」がある。
「相合い傘」は、よい脚本とよい演出、そしてスタッフとキャストが冴えてタイミングが合えば、過激な出来事や悲劇抜きで傑作足りえると
いうことを、私に知らしめてくれた貴重な作品だった。
さくらとリリーの物語
先ほども書いたが、まず、さくらとリリーが最初にとらやで会う。忘れな草のラストからつながっている二人の友情が深まる予感を強烈に感じる。
リリーと寅の相性と同じくらいさくらとリリーは抜群に相性がいい。さくらとの相性で言えばリリーは全く他のマドンナの追随を許さない。
第48作のさくらのセリフ「リリーさんしかいないのよ!」を待つまでもなく、第11作「忘れな草」からすでに一目瞭然である。
ここがこのリリーシリーズを日本映画屈指の傑作にしている懐なのである。この作品はさくらとリリーの友情の物語が時には背後から、
時には表からと、しっかりと支えているので安心して登場人物たちが生き生きスクリーンで躍動し得ているのである。
物語の後半、リリーが事情があって自分のアパートに泊まれない時、リリーは思い切ってさくらに電話する。寅にではない、さくらに電話する
ところが見事な脚本である。さくらは強くリリーに自分たちのアパートに泊まることを勧める。さくらの「ねえ、そうして」はまさに絶品。
さくらは一瞬にしてリリーの現在の孤立を察知したのだ。この場合博の承諾は入ってこない。さくらは、自分だけの確信を持ってリリーを
家に招くのである。あとにも先にもさくらのあの狭いアパートに泊まったマドンナはリリーだけである。
『麦秋』から『相合い傘』へのバトン
そして、その2人の友情の先にあのさくらの「お兄ちゃんの奥さんになってくれたら…」がくる。
もちろん、さくらがマドンナに兄との結婚を直訴するのもリリーだけである。
この直訴の場面は小津安二郎の最高傑作のひとつ「麦秋」の影響が非常に色濃いシーンで、このシーンを見ていると「麦秋」で、
たみが紀子に息子との結婚を直訴したあの夜のシーンが見事に蘇るのである。あの時の杉村春子の嬉しそうな顔ときたらなかった。
この2つの場面の共通点についてはまた本編で明らかにしていこうと思う。
対極に運命付けられる者としての存在感
また、この物語のもうひとつのカギを握っている兵頭謙次郎(パパ)を演じる船越英二さんは、飄々としているが、実にバランスが取れていて、
寅とリリーの対極に運命づけられている者、つまり『定住者』としての滑稽さと哀愁を十二分に表現していた。なんともいえない柔らかな
演技。絶妙の間。この方も本物の役者である。
そして、寅もリリーも久しぶりの再会であるにもかかわらず、このパパを絶対排除しない!これがこの二人のおおらかさであり優しさなのだ。
リリーも寅も「出会い」を大切にする。放浪者の気質であり、絶対条件とでも言えるだろう。
その昔、「なつかしき風来坊」で、衛生局防疫課の課長補佐で、謙次郎に似た侘びしくも哀しいサラリーマンが出てきたが、山田監督に
とっては、この手の人物と型破りな放浪者との組み合わせは十八番だ。
謙次郎のあの優しき目は、さくらにも向けられ、ラストで「さくらさんは優しい言い方をなさいますね…」と言わしめるのである。
『懐かしさ』という助走
この第15作を語る時に忘れてはならないのはこの作品の成功の下でしっかり支えている第11作「寅次郎忘れな草」の存在だ。
「忘れな草」は放浪の宿命を背負った2つの孤独が北の大地で出会い、つかの間の蜜月のあと、お互いの孤独の深さの違いによって
別れていく物語であった。この物語を観客は今も懐かしく、そして切なく覚えているに違いない。
「相合い傘」の物語は、この名作「忘れな草」からの懐かしさと切なさという助走つきで、いきなりターボ加速していくのである。
いつものように松竹富士山の出だし。
今回はテーマ曲でなく、意表をつく大きなドラの音。(夢の内容にちなんで)
今回も夢から
ひらめくドクロの旗。
アニメーション制作:龍太郎
『海賊船悪魔号』
ドーン、ドーン、ドンドン、ドーン!(ミュージカル風)
「♪おいらは海賊、荒くれ男〜。
七つの海を股にかけ〜、
沈めた船が五万艘!。
エイ!ヤア!エイヤア、オー!」
手前はバック宙返りを見事に決めた手下

手下どもが、大砲を磨いたり、それぞれの仕事をしている。
(今回も統一劇場のみなさん)
手下のひとり、バク宙(バック宙返り)1回転の荒業を披露。
♪おいらが親方、モテモテ男〜。
七つの海を股にかけ〜、
奪った女が五万人!」
5万人って、大ぼらもいいとこな歌やなァ〜(^^;)

タイガーは右目と左足が不自由
タイガー、源ちゃんに酒を持ってこさせ、フッと受け取って飲み干した後、
むしゃくしゃして、グラスを『ガチャーン』と思いっきり叩きつける。
「エイ!ヤア!エイヤアオー!」
米倉.手下「キャプテン、また荒れていなさる」
と片目の顔。パイプを持ち、肩に鳥。
待ってました米倉斉加年さん!
上条.手下「20年前に別かれた妹さんのことが忘れられねえに
ちげえねえ…おいたわしや」と胸に鎖を掛けている。
待ってました上條恒彦さん!
「子守唄に続き2作品連続出演」
米倉.手下「お姿はあのように荒々しくとも、
心の優しいお方よ」と頷く。
とパイプを手にして言うので、上條.手下の顔に当たりそうになり、よける。
上條.手下もその言葉に納得。
米倉さんの肩の鳥が動いていたのでこの鳥は
ひょっとして本物だな。
この二人は友情出演なので、なんと配役名にクレジット無し!
第16作「葛飾立志篇」でも同じく夢のシーンで二人とも友情出演。
上條さんと米倉さん。友情出演

一方こちらは奴隷船(望遠鏡で)

甲板上から悲鳴が上がっている。
ジャック(博)が、ムチで叩かれている。
大勢の統一劇場扮する奴隷たちが悲鳴をあげている。
おいちゃん、おばちゃんが恐がって見え隠れしている。
満男「パパ〜!」
中村君なぜかちょっと笑っている。
面白いよね、中村君。みんな変な格好してるんだものね(^^)
しかし、なぜおいちゃん、おばちゃん、
満男が一緒に奴隷船に乗っている?
そもそも奴隷として役に立つのか?
満男は子供だから将来があるが、
この2人は??(^^;)おばちゃんは、
子守りや料理が出来ると思うけど、
おいちゃんは団子と盆栽くらいしか
できないぞ。

社長.手下「奴隷の分際で、この俺にたてをつくとどういうようになるか見てろ!」
ムチでジャック(博)をたたきまくる。
奴隷たち、騒ぎまくっている。
チェリー(さくら)甲板に出て、逃げようとする。
チェリー「助けて!助けて、ジャック!」
後ろから奴隷商人のボスが手を掴んで部屋へ持っていく。
奴隷商人「助けてほしけりゃわしの話を聞くんだな」
チェリーの耳にさしてあるハイビスカスが
まだ枯れていないので、昨日か、今日、故郷の島から
連れてこられてきた感じ。(ほんとは造花だってヾ(^^;))
ボスの部屋
大きな地球儀やクリス(刀)が置いてある。
奴隷商人「このアマ!手を焼かしやがって!いいか、
ワシの言うことを聞けば、食い物をやる、おお、
きれいなおべべもやる、大きな屋敷だってくれてやるぞ!
ええ?どうだ?」
チェリー「お前の言うことを聞くくらいだったら奴隷で
いたほうがましだわ!プッ!!」と唾をかける。
お〜!倍賞さんに唾をかけさせるなんて
山田監督思い切った演出。
シリーズ中後にも先にもたった一度の倍賞さんの唾吐き

奴隷商人「何しやがんでい!」とチェリーの頬をシバク!
奴隷商人「このアマァ!」
チェリー「キャア!」
奴隷商人、上着を脱ごうとするが、その時、大きな音が!
大砲の音ドガーン! ドガーン!
奴隷商人「なんだ!?どうしたんだ?」
それにしても吉田義夫さん、
実にこの悪役が似合っていた。絶品
いやあ〜、この雰囲気絶品です。
社長「大変だ!タイガーが!海賊タイガーが現れた!ワァ〜〜!」
っと倒れこんでしまう。
主題歌のイントロ チャ―ン!チャラリラリラリラ〜、リールールールー
奴隷商人「タイガー…!」
タイガー「そうか。…貴様であったのか!
奴隷の売り買いをしてあこぎな銭儲けをしていた男は!」
どこから声出してるんだ?(^^;)

奴隷商人「タイガー様、どうかお許しくださいませこの船に
積んだ金銀財宝、奴隷、女みんな差し上げます!
お願いでございます!どうか命だけは!」
ハッと奴隷商人目をむいて怯える。

タイガーが放った銃声が響き渡る。
奴隷商人「ああ!ぁ…。」
背中に貫通した弾丸の痕。
倒れこむ奴隷商人。
拳銃の煙を口で「フー…」っと吹く
タイガーが情け容赦なく撃ったように見えるが、
この手の悪いやつは、いったん許してやっても
必ず、すぐ裏切り、あとあと厄介なことになるので、
最初に元を断つのである。
深い人生経験から来ているタイガーの決断と行動に感服。
タイガー「娘さん。ケガはなかったかね」
チェリー「はい、ありがとうございました」
タイガー「もう大丈夫だ。君たちは奴隷ではない自由の身となったのだ」
チェリー「まあ」
タイガー「それぞれの故郷に帰るが良い」
外から歓声が聞こえてくる。
タイガー「娘さんお前のふるさとはどこだ?」
チェリー「はい、カツシカ島でございます。」
倍賞さん、こういう格好も
なかなか似合うね。
倍賞さん、派手な格好も似合うね。

タイガー「カツシカ島…!」
チェリー「あの、キャプテンはカツシカ島をご存知ですか?」
タイガー「カツシカ島…」
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第2楽章が流れる。
アントニーン・ドヴォルザークは、チェコの「国民楽派」を代表する作曲家。
彼の作品のなかで、最も有名なものが、この交響曲第9番「新世界より」。
第2楽章の主要主題は「家路」という名の歌曲に編曲されてたいへん有名に
なったもの。イングリシュ・ホルンの響きが美しい。
この夢のシーンで使われている意味は、後に歌曲になった「家路」から考える
方が自然。つまり、カツシカ島への望郷の意味を込めているのであろう。
タイガー「一日何遍もその名前をあの空に向かって
呼んだことだろうか…。私が住んでいたころの葛飾島はね、
水清く空澄み渡り四季の花々が美しく咲き乱れ、
人々は仲むつまじく平和に楽しく暮らしていた島だったんだよ」
ハイビスカスが咲く島の割には四季の花々が咲き乱れ…ということは
カツシカ島は熱帯ではなく奄美大島のような亜熱帯に属する島だな。
そして服装から考えると季節は夏。

後ろから階段を下りてくる男
チェリー「ジャック!あなた生きてたのね」
ジャック「チェリー!無事だったのかい!?」
チェリー「うん」
チェリー「ミツオ!」←おっとこれは日本名のまま。
ミツオ「ママ〜!」
そこへ、おいちゃんおばちゃんが来る。
おばちゃん「チェリー」
チェリー「おばちゃん」
おいちゃん「ああ!タイガー様!」
タイガー「そう言うお前達は!俺のおいちゃんとおばちゃん!」
おいちゃん「おお!そういうお前は!」
おばちゃん「20年前に島を飛び出したあたし達の!」
タイガー「うん!!」
ミュージカル風にならないで旅芸人ぽいベタな演技に
なってしまうおばちゃん。
しかし、その格好なんとかならんか(^^;)

タイガー「それじゃお前は
捜し求めていた妹のチェリーか!」

チェリー「お兄ちゃん?お兄ちゃんだったのね…」
椅子にもたれてハラハラと泣く。

タイガー「そうだよ…チェリー」
袖からハンカチを取り出し目を押さえる。
タイガーはチェリーを捜し求めていたって…、
チェリーはずっと生まれた時から「カツシカ島」に
住んでるんだよ。探す必要もないくらい、
会うのは実は簡単なのに???。
まあ、寅の夢だからね。何でもあり。
甲板上
社長、つるされてる
社長「おーい助けてくれ!イタッ!助けてくれ!」
そのうち、タコの干物になっちゃうぞ(^^;)
源ちゃん望遠鏡を覗いている。
源ちゃん「おーい!カツシカ島が見えたぞー!」
カツシカ島見えるの早すぎ!
さっき助けたばっか。でも夢だから…(^^;)
一同カツシカ島を見ようと、寄ってくる。
男「右舷前進に!」
女「シバマタの港が見える!」そのまんまの名前。
タイガー「よーし!全員帆を揚げェーい!」
上条手下「帆をあげー」
手下「主かあーじ!」
って、さっき望遠鏡で見た限りでは
もう帆は最初から揚がってるよ。ヾ(^^;)
一同、タイガーの方に向けて尊敬の念を
込めて手を伸ばしていく。(これまたミュージカル風)
工場の中村君もいるではないか!(@0@)
最後にさくらと寅の幸せそうな顔が
アップになって、赤く、「THE END」

ところで、この船は奴隷船の方なんだが。
もともと自分たちのいた、
海賊船の方はどこいった?
2隻で運転しないとおかしいぞ…。
辻褄の合わないところはすべて『所詮寅の夢ですから』で
片付けられそう(^^;)
映画館 場内
映画が終わって、場内が明るくなっていく。
眠っていた寅、ようやく目が覚める。

アナウンス「ありがとうございました。ありがとうございました。
お忘れ物ないよう、お帰りください。なお、場内の
お煙草は各局のお達しにより固くお断り申し上げます。」
寅、ロビーに出てくる。
壁にポスター
★シンドバット黄金の航海
★サンタマリア特命隊
★ゴールド〜地底大爆破〜
シンドバッド 黄金の航海(1973) アメリカ The Golden Voyage of Sinbad
昔、「アルゴ探検隊」で素晴らしい特殊視覚技術を見せてくれた
天才ハリーハウゼンが、この映画でも匠の技を存分に披露。
顔に負ったやけどのために仮面をつけたアラビアの領主を
応援するため、シンドバッド(ジョン・フィリップ・ロー)は
国を救う力を授けられるという伝説の島へ向かう。しかし、
彼らの後を悪の魔術師が追いかけていく。
ハリーハウゼンによる人形アニメの技法を駆使した
特殊技術“ダイナメーション”が冴えわたる冒険ファンタジー映画の
シンドバットシリーズ第2作。小さな人間こうもりや怪鳥、6本腕の仏像、
半人半馬のケンタウロスなど、息つく暇も無い。
ヒロインのキャロライン・マンローのボディもかなり話題になった(^^;)
サンタマリア特命隊(1972) アメリカ The Wrath of God
ロバートミッチャム主演。 武力革命が猛威を振う1920年代のメキシコを舞台に、
罪のない住民のために立ち上がった3人の男の活躍を描く。
ゴールド 〜地底大爆破〜 (1974) イギリス Gold
『007シリーズ』のロジャー・ムーア主演、
世界最大金鉱、地下3200メートルからの大脱出劇。
南アフリカの大金鉱を舞台に、国際シンジケートの陰謀と戦う男の活躍を描く。
寅「おばちゃん、面白かったよ」
この一言が映画人にとってどれほど栄養になるか。
でもまあ、ほんとは寝てたんだけどね…(^^;)
受付のおばちゃん「あ、よかったねぇ」素人のおばちゃん、いい味だねえ〜(^^)
寅「どうもありがと」
こういう、なにげないやり取りがこの映画の隠れた魅力。

寅、映画館から出てくる。
看板 豪華洋画超大作 上映中
宣伝の旗: 海賊船悪魔号
ハリウッド空前の超大作←ハリウッドって ヾ(^^;)
夢のシーンのために旗やポスターまで作る懲りよう。
ポスターに旗。全てこの夢のため。

向こうで花をリアカーで売ってる。
寅、土木工事の前を通り過ぎる。
工事現場のおじさんの後姿が大きく映って(^^;)

タイトル
江戸川をバックにして。
男(赤)はつらいよ(黄)
寅次郎相合い傘(白) 映倫18428(白)

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
なんと、今回は歌の間、コントも無いし寅も出ない。
歌の間の主人公は『さくら』
「さくら」の日常を大事に撮っている。
さくらが鉄橋近くの江戸川土手で自転車を走らせている。
(アパートから満男の幼稚園に向かうところ。)

子供たちがグループで自転車をこいでいる。
さくらは安全のためいったん止まる。
自転車を止めたあと、しばし遠くを見ながら兄のことを思っている。
この横顔を見ながら名曲「さくらのバラード」を思い出してしまうのは私だけだろうか。

近くで子供たちが野球をしている若者たちを見学している。
その向こうの土手をさくらが自転車で過ぎて行く。
土手を走るさくらの自転車が小さく見える

矢切の渡しに風が吹いている。
『浅丘ルリ子 リリー』のクレジットが
初夏の風に大きくゆれる題経寺の樹と共に出てくる。
これを見た時、はやくも目が潤んできた。
懐かしいリリーに会えるんだと…。
感無量!リリーが帰ってきた

ルンビーニ幼稚園で満男を引き取った後
貴子さんの経営する喫茶店ロークを曲がって
題経寺の山門前を他のお母さんたちと通るさくら。
話をしているので自転車から降りて手で押している。
小さな子供たちが水だめの入れ物に落書きしては消している。
さくら、子供たちに「落書きしちゃだめよ」もしくは
「ちゃんと消しておくのよ」かなにか笑いながら
言っている感じで通り過ぎていく。
題経寺の前のチョークによる落書き↓
相合い傘で みちこ .のぶお
バカ ねじりうんこマーク。
明るい日差しと風の中、御前様が
近所のおばあちゃんと挨拶をしている。

源ちゃんが、掃除を休んで、上着をその辺にかけて、
日陰になっている境内のベンチで午後の昼寝を
している。実に気持ちよさそう。

そこへカップルが座ろうとそばまで行くが、
驚いてそのまま避けていく(^^;)
さくらがとらやの横の煎餅の立花屋のおばちゃんと
自転車を押しながら挨拶。口の動きから
「こんにちは。暑いですねえ」と言っているのが分かる。
おばちゃん、頷きながらハタキで煎餅のビンをたたいている。
じつに明るく、輝いたさくらの表情!このシーンも大好きだ。

題経寺の門を前に『山田洋次』のクレジット。完璧な構図
それにしてもさくらはストライプのブラウスが好きなんだね。
ちょくちょく何種類かのたてしまストライプを着ている。
とらや 茶の間
テレビでエリザベス女王夫妻のパレードが映っている。
アナウンサー「えーオープンカーにですね、お堀端の方にえー女王陛下、
センターラインの方にエディンバラ公…」
エリザベス2世(1926年4月21日生まれ)
(Elizabeth II、正式には Elizabeth Alexandra
Mary - )は、
グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国の女王
(在位、1952年2月6日 - )である。
イギリス連邦元首。イギリス国教会の長。ジョージ6世と王妃エリザベスの長女。
夫君はギリシャ王子であったエディンバラ公フィリップ。
アン、チャールズ、アンドリュー、エドワードの3男1女を儲ける。
これは懐かしいフィルムだ。

おばちゃん「お若いねえ。あたしといくつも違わないんだよこれで」
と煎餅を食べる。
三崎千恵子さん 1919(大正9)年9月5日生まれ。当時56歳
エリザベス女王 1926年4月21日生まれ。当時49歳
おばちゃん、ちょっと違うぞ。7歳の違いは
「いくつも違わない」とは言えないな〜。
せめて2歳か3歳までだね。
この場合はタコ社長に自分が若いと言いたいだけ(^^;)

社長「へえ、本当」 7歳も違うぞ!騙されるな社長(^^)
おばちゃん「ちょっとあんた見てごらんよ」
おいちゃん「おう」
おばちゃん「あ、お笑いになった」
アナウンサー「えー両陛下がお乗りになりましたオープンカー、お見えになりました」
おばちゃん「ずいぶんお疲れになるだろうねえ」
おいちゃんヨモギをざるに移してる
おばちゃん「さっきからずーっと立ちっぱなしなんだよ。」
社長「でもねえおばちゃん」
おばちゃん「うん?」
社長「こうやってニコニコしてておまんまが頂けんならね
俺だって辛抱するぜ、立ちっぱなしぐらいのことは」
いつも金のことに置き換えてなんでも考えるタコ社長でした(^^;)
でも分かる気がしないでもない。
おばちゃん「まあ失礼だよこの人はこうやってねニコニコお笑いになってたって
あたし達には分かんない様な苦労がおありになさるに違いないんだよ」
おばちゃんもあいかわらず権威に弱いところが垣間見られる(^^;)
社長「そうかねえ」
社長、靴下が破けて指が見えているのを
見つけて、出ている足の親指に黒ペンで
黒く塗りつぶしてる。
ぴょえ〜、凄い発想。参りましたm(_ _)m
社長の足に黒ペンを塗る荒技

おいちゃん「旦那さん養子だってな」
社長「ほー養子なるほどねえ」
おばちゃん「おとなしそうで、ちょいと、うちの博さんに似てないかい?」
社長「じゃあさくらさんは女王様か?ガハハハハハ!!」
おばちゃん「アハハハハ!」
店先からさくらが自転車を置いて、入ってくる。
満男「ただいまー」
おばちゃん「はい、おかえりー」
さくら「どうしたの?」
おばちゃん「うん?」
満男「おばちゃんおやつは?」
おばちゃん「あいよ」
さくら「何笑ってんの?」とおいちゃんと社長を見る。
おいちゃん「つねがなエリザベス女王の
旦那さんは博さんに似ているってさ」
おいちゃんたまには「つね」って言うんだね。
さくら「ばかねえ」と呆れる。
満男、茶の間に上がってくる。
社長「ハハハ!坊やはプリンスだな」
さくら「あらこのプリンス鼻垂らして」と追いかける。
満男逃げていく。
さくら「ちょっとおいであ、ちょっと、こら!プリンス!」
社長「ハハハ」

おいちゃん「そういやあ、うちにももう一人プリンスがいたなあ」
とヨモギの葉っぱをちぎりながら思い出す。
おばちゃん「本当だ」
社長「いたいた!四角い顔のプリンス!」
おばちゃん「でも今度はずいぶん遅いねさくらちゃん」
さくら「何してんだろ今ごろ」
社長「あのプリンスにもそろそろお后を見つけて
差し上げなくちゃいけねえな。養子でもいいからさ」
博「社長!」
社長「ハイッ!」
博「銀行から電話ですよ」
社長「すまんすまん」
博、おいちゃんに「どうしました?しょんぼりした顔して」
おいちゃん「いやね、寅の噂してたんだよ」
やっぱり寂しいんだね。見なきゃ見ないで(^^)
博「そうか今度はいつもと違って帰りが遅いなあ」
さくら「そうねえ…どうしたんだろう?」
博「うん」
おばちゃん「あれ?お客さんかしら」
さくら「あ。あたし出るわ」
サンダル履きながら
さくら「いらっしゃい」
と、さくら、暖簾をくぐって店先を見る。
リリーが店先に立っている。
さくらの顔が、急に華やいで、
さくら「ぁあらっ!まあ珍しい!」
と両手をたたいて凄く嬉しそうにはしゃぎ声を出す。
(懐かしくてたまらないのだ)
よっぽど再会が嬉しいのだろう こんなに嬉しそうなさくらの表情は珍しい

リリー「こんちは」
さくら「ちょっと!おいちゃんおばちゃんね、早く!」
実にいい顔で迎えるさくら

おいちゃん「あ!!いやー、これはこれは」と驚く。
おばちゃん「あ〜ら、まあ!メリーさん」
出た〜〜!!おばちゃん十八番!
さくら、口にハンカチあてて「やだァ!」大笑い。
リリー「フフフ」
おばちゃん「え?あ、じゃないジュリーさん」
あちょ〜〜!2連発!(^0^;)/
ジュリーは三郎青年だよ。なんてね。
そういえば第17作「夕焼け小焼け」
の『ぼたん』の時もあわてて
『リボンちゃん』って言ってたね(^^;)
おばちゃんのおおぼけに笑い転げるさくら。

さくら「何言ってんのよリリーさんじゃないのよ」
リリー、ゲラゲラ笑っている。
おばちゃん「あーそうそう、フフフ」あ、そうそうじゃないだろが ヾ(^^;)
リリー「突然お邪魔して」
おいちゃん「さあさあどうぞどうぞ」
さくら「どうぞどうぞ」と椅子を勧める。
おいちゃん、おばちゃんに「おい、お茶お茶」
おばちゃん「あ、はいはいはい」
さくら「はー!よく来てくださったわねー」
リリー「なんだか急にここが懐かしく
なってきちゃってね」
さくら「そう!あれからずっと元気だった?」
リリー「うん」
さくら「お店のほう、相変わらず?」
おいちゃん「そうそう何か食べ物屋さんでしたね」
リリー、何か、言いたげ。
博「お寿司屋さんですよ」
おいちゃん「ああ、そうか、お寿司屋さんの女将さんでしたかぁ-」
リリー、やっぱり何か、言いたげ。
博「景気はどうですか?」
おいちゃん「近頃は良くないでしょう」
おばちゃん、お茶置きながら「赤ちゃんまだですか?リリーさん」

リリー「あのねえ」
さくら「うん」
リリー「あたし別れちゃったの」
一同「…!」
さくら、まだ、言ってることが、すぐに飲み込めないで
まだ顔がにこやかなまま。
さくらはリリーの言ったことが飲み込めていない ようやく呑み込めていき、顔がシリアスになる

リリー「結局堅気の商売には向かないのよ、あたしみたいな女は」
さくら「とっても、…いいご主人だと思ったけど」
リリー「そう。あたしが悪いのよ。あの人には、気の毒なことをしちゃった」
さくら、下を向いて「…」まだ頭が整理されていない状態なんだろう。
一同も沈黙。
リリー「寅さんは?」

さくら、ちょっと顔が明るくなって
さくら「ああ、お兄ちゃん?今さっきもね、噂してたんだけど、
去年の秋頃帰ってきて…それっきり」
リリー「そお」
さくら、照れ笑い。
博「兄さんがいたら、大喜びしてたでしょうねえ」
それは100パーセント言える!(^^)
おいちゃん「そうだなあ〜、よくリリーさんの
話してたもんなァ」
リリー、嬉しそうな笑い。
リリー「…ハハハ、私も会いたかったんだけど
でも多分そんなことじゃないかと
思ってたんだ」まあ、普通はいないよね。
寅は1年に4回ほど帰ってくる。まず、半年に1回帰ってきて、
そのあと何か騒動があって1日くらいで出て行って、
また数週間くらいですぐ帰ってくる。
帰ってきたあとは長くて1ヶ月ほど滞在。
これを年に2サイクル繰り返す。
だから実質は長くても年に2ヶ月ほどしかとらやにいない。
よっぽど運が良くないと会えないのだ。

リリー、お茶を飲んで…
リリー「さ、それじゃ私」
おばちゃん「あら、そんな」
さくら「いいじゃないの、ちょっとゆっくりしていけば」
おばちゃん「ご飯でも一緒に。つね、台所でちょっと…」
リリー「ありがとう。でも今旅の途中なのよ。
これから汽車乗るの」
おばちゃん「あらあ」

リリー「おマンマ食べなきゃいけないしね。
また昔みたいに下手な歌、歌って歩いてんの」
リリーがこのセリフを言った時、照れも
入っているとは言え、意外に嬉しそう
だった。ひょっとして、結局リリーは
また歌を歌いたくて一人になったの
かもしれない。
リリー「じゃあ、みなさん、さいなら」
おばちゃん「そお」
おいちゃん「じゃまたお寄りください」
リリー「ええ」
白いカバンを持ってとらやをスッととらやを後にするリリー。
おばちゃん「まあお構いもしませんで」
さくら「ね、ちょっとリリーさん」と追いかけていく。
リリーは、いつも立ち去り方が
寅と似ている。ぐだぐだ名残を惜しまない。
さっと思いを切るのだ。
放浪者の常で、人懐っこいが、
別れ際も心得ている。
このへんが格好いい。
でもなぜか右のほうへ行っちゃったけど…。
普通左だろ?
おいちゃん「寿司屋の女将で辛抱できなかったのかねえ」
おばちゃん「赤ちゃんまだですかァ何て
言っちまって悪かったかねえ…」と悩んでしまう。
悩むおばちゃん…

博「その一言は傷つけましたよ。りリーさんを」
おばちゃん「ええ?…本当?ハァ…」
おいちゃん、ちょと困った顔でタバコにマッチで火を点ける。
博、おばちゃんに、そんな言い方は無いよ。
誰だって、離婚してないと思っているから、いろいろ聞くんだよね。
結果的にリリーを傷つけることになってしまっただけで、おばちゃんが
悪いわけではない。それでも、言ってしまったおばちゃんは悩んで
しまうのはしょうがないとしても、博が追い討ちをかけることはないと
思うんだが…。
こういうときは、「しょうがないですよ。事情を知らなかったんだし、
リリーさんもその辺は分かってますよ。」って言ってやれよな。
帝釈天参道をリリーとさくらが歩いてる。
リリーはとらやから出たら後ろの髪の毛若干短くなっちゃった。
髪形も前髪のセットがちょっと違う。
これだからセットとロケのつなぎは難しい
倍賞さんは全く一緒の髪型。
さくら「ねえ、これからどこいくの?」
リリー「北の方。冬の内は九州とか四国とか
暖かい所歩いてたんだけどね。そうね…」
夫と別れてからだいぶ経つんだね…
リリー「これからは、岩手、青森、それから北海道。
そうだ!ひょっとしたらどっかで寅さんと会えるかもしれないわね」
さくら「ああ、そうね。会ったらよろしく言ってね」
リリー「うん」

さくら、止まって。
さくら「それじゃお元気でね」
リリー「さよなら。 そのうちまた来るわね」
さくら「お兄ちゃんと一緒にね」
リリー「うん」とハンドバックをふって別れる。
リリーが夫と別れたことに驚いてちょっとショックを受けて
しまったさくらだが、それからたった5分後、
この「お兄ちゃんと一緒にね」の発言が口から出る。
このさくらのセリフや表情からすると、この時点ではもう、
すっかりリリーの元夫のことは頭から消えて、
寅とリリーの未来を考えているようだった。
やっぱり、兄とリリーの仲が深まることを願っているんだね。
源ちゃん、山門前で箒を持って掃除している。
リリー源ちゃんを見て「坊や元気?」
と言いながら通り過ぎていく。
源ちゃんお辞儀。
リリーも寅と同じように四角いカバンを持って歩いている。
寅は茶色いカバン
リリーは白いカバン

近所の主婦赤ちゃんを抱きながら、さくらに挨拶をする
主婦「こんにちは」
さくら「こんにちは」
山田監督、いつもながらやっぱり、なにかを挿入するね。
絶対するんだなこれが。『リリーをいつまでも見送るさくら』
っていう、余韻をぶっち切るご近所さんの「こんにちは」。
この神経質なまでのリアリティの追求は山田監督の全作品を貫いている。
ところで、今から彼女どこへ行く気なんだろう。
ロークの方へ歩いて行くってことは…?
これから東北に行くのなら上野駅。そうなると
最短時間はやはり京成柴又駅からだろうに。
方向が逆だが…。国鉄金町まで歩くってのは
遠すぎる。それともバスか?あっちにバス停は
ないよな。ひょっとしてタクシーかな?
どなたか分かる人いますか?
それとも少しだけ時間があるので江戸川土手で
しばし風に吹かれてから柴又駅に向かうのかな…。
それにしても、一人行く後姿が良く似合うリリー。
寂しさを風で吹き飛ばしているようだ。寅と同じ。
でもひょっとして、とらやに寅がいたら、この時、二人で一緒に
旅に出て行ったかもしれない。リリーは、もしかしてそれを
心のどこかで期待して旅の途中にとらやに来てみたのかも…。
リリーの隣に寅がいたら
絵になったろうなぁ…。
青森市。青函連絡船の見える港町
青函連絡船の汽笛「ボ〜!」
祭りの笛太鼓
善知神社 縁日
寅がバイをしている。(易の本を売っている)
寅「天に起動がある如く人それぞれに運命と言うものがあります!
いいですか!とかく、子の干支の方は終晩年が色情的関係に
おいて良くないな、ネ!
羊の女は角にも立たすな丙午(ひのえうま)の女は
家にも入れるな。蛇の女は執念深い。」
あ、奥さん大変変失礼ですがあなたは
九紫火星をお持ちですね、いや!きっとそうです!
大変この方は聡明頭のいい人だが一つ欠点は
しばしば勝気なために夫と口げんか争いが絶えない!
そうでしょう、ね。
あ、子供は向こう行って見世物じゃないから、ネ。」

港が夕日に染まる。
かもめが飛び、 汽笛 ブゥォ〜
青い船体の『摩周丸』が
堂々と青森港に入港してくる。
青森と函館の間113.0kmを結んでいた青函連絡船は、
1908年(明治41年)3月7日に比羅夫丸の就航以来、
80年間の歴史を津軽海峡に刻んできた。
そして、88年(昭和63年)3月13日、
青函トンネルの開業により青函連絡船は全船廃止・廃船に
なったが現在「摩周丸」は長崎県、長崎港にて
ホテルシップ「ヴィクトリア」になっている。
廃船スクラップ、もしくは外国に売られて、その後
行方不明となった船が多い中で救われた方だ。
寅、カバンを持って旅館へ向かう。
後ろに見えるのが摩周丸

雑貨屋の看板『みなと』
店の裏に昔よくあった菱形広告看板 コカコーラ キンチョール 金鳥
青森駅駐車場の立て看板 許可なく通行禁止 青森駅長
福屋旅館の立て看板 入り口
旅館
ラジオがかかっている。
ラジオの声「…次に船舶の報告では北海道東方海上に
北緯45度東経151度では南の風…」
旅館の従業員「あ、寅さんおかえりなさい」
寅「おう」
上にあがって
寅「お姉ちゃん」
従業員「はい」
寅「二階の俺の連れさ、まだ居るのかい」
従業員「いるよ。今朝から部屋の中に入ったきりどこさも出かけねえよ」
寅「ケェー…」
従業員「何だべあの人」
寅「いや何だか知らねえけどよ変なのと連れになっちゃって
俺も弱っちゃったんだよ」
従業員「あれ」
ラジオの声「…関東東方海上…」
二階に上がってくる。
寅「あ〜あァ…」と障子を開ける。
暗い部屋のテーブルに男が乗って、つま先立ちをしている。
寅「あ〜!!おいッ!早まっちゃいけねえ!」と腰を持つ。
寅「えっ?命を粗末にするんじゃんえったら!
死んで花実が咲くものか!って言うじゃねえか!
おいこら、」
大変だね〜寅も

謙次郎「ち、違うんです」
寅「何ィ!?」
謙次郎「蛍光灯のひもが切れたんで繋げてたとこなんです」
寅、謙次郎を思いっきり投げ飛ばす。
健次郎「あ、いてて…た」
寅「バカァ!そのことを早く言えよお前!
ハアァー…ビックリしちゃったなオレ」
健次郎「どうもすいませんでした。」と頭を下げる。
健次郎「商売の方は、今日、寅さんいかがだったでしょうか」
寅「人の心配は要らないんだよ!
手前ェの心配だけしてりゃ良いじゃねえか、え?
今朝もほら俺がでかけに言ったろうかみさんとこへ
帰れって、どうして帰んないんだよお前」
健次郎「はい」
寅「え?せめて電話だけしたのか電話だけ」
健次郎「何べんもかけようと思ったんですが」
寅「おー」
健次郎「なんと言うか…照れくさいというか」
寅「そんなこと言ってる場合じゃないだろお前。
一家の亭主がだよ。ある朝ぷいと出たっきり、
お前一週間も行方不明じゃさ
家の者が心配でいてもたってもいられねえだろう。
あ、ひょっとしたら一家心中してるかも知れねえぞ、おい」
健次郎「いやあそんなことは有り得ないでしょう」
寅「えェ?それじゃお前ん家の家族はそんなに心が冷たいの?」
健次郎「はい。ある意味ではそう言っても
差し支えないと思います」
そんなことないぞ。家族はパパのこと凄く心配してるよ。
寅「へえ…」と言いかけた所へ健次郎が近寄ってくる。
健次郎「実際僕はこの数日間」
寅「ウン」
健次郎「あなたと旅をしながら」
寅「ウン」
健次郎「人間の愛情と言うものが」
寅「ん」と目をしかめる。
健次郎「本来どのように暖かくて」
寅「ア〜〜!!」

健次郎「優しいものであるかという事を…」
寅「分かった分かった分かった。
お前さんのその屁理屈を
聞いてるとね頭の芯がズーンと重くなっちゃうんだよオレ!
ビールでも飲もうよォ…もお」
寅、階段の所まで行って「おい姉ちゃん!ビール持ってきてくれビール!」
従業員「はーい」
柴又 とらや
博「満男帰ろうか」
おばちゃん夕飯の支度をしながら
おばちゃん「やっぱり帰るのかい?」
おいちゃん新聞を見ながら
おいちゃん「飯食っていきゃいいじゃねえか、え?」
博「今晩は家でサークルの集まりがありますから」
おいちゃん「なんだい、サークルって?」
電話が鳴る 「リ―ンリーン」
博「ええ、近所で働いてる連中が集まって読書会みたいなことを」
と言いいながら満男に幼稚園の黄色い帽子をかぶせる。
おいちゃん「ほお〜」
さくら、立ったまま電話を取って
さくら「はい。とらやです。……」
さくら「…!お兄ちゃん!?…」
おいちゃん、びっくりして振り向く。
さくら、さっと、下に座って、
「うん、みんな元気よ」
一同電話口に集まってくる。
いいねえ、寅が久しぶりに電話してくるたびに
みんな電話口に集まってくれるなんて
寅、もうそれだけで幸せだよ。ほんとに。
リリーが羨ましがるのはこういうとこなんだよね。
おばちゃん「寅ちゃんかい?」
さくら「お兄ちゃんどうしてるのぉ?」
おいちゃん、さくらの頭の近くで「今どこだ?」
さくら「え?遠いとこ?」
みんな寅のことが心配なんだね。

寅、忙しく宿の赤電話から十円玉を入れてる。
寅「長距離だからね用件だけ手早く言うぞ、え?
紙と鉛筆出せ、紙と鉛筆、うん。
いいか?東京416-6589だそこのね兵頭って家に
電話してご亭主は俺と一緒に旅をしているから
安心してくれとえーそう言うんだよ
な!いいか?うん。お、お前、お前達も元気でいるんだろ!?」

さくら「もしもし。もしもしあのねえ、この人どういう人なの!?
え?十円玉が無い?」
おいちゃん「おい、十円玉十円玉!」
おばちゃん、自分の財布の中を探し始める。
★夫婦で『ぼけ』をやるご両人(^^;)
さくら「どっから電話しているのよ」
おいちゃん「ああ十円玉!」
この十円玉ギャグはその後の作品にも出てくる。
おばちゃん「あるよ!十円玉!」
博「違います必要なのは向こうですから。」
★博も『つっこみ』大変だね〜。(^^;)
さくら「もしもし?あー切れちゃった。」
博「何だよ何があったんだよ」
さくら「何がなんだかさっぱり分かんないの」
おばちゃん「とにかく元気なんだろ寅ちゃんは」
こういうおばちゃんのセリフがいいねえ〜(^^)
さくら「うん元気は元気なんだけど」メモの内容 416 6589 ヒョウドウ
さくらメモを見ながら「誰だろうこれヒョウドウ…」
兵頭謙次郎の家
電話帳や手帳が机の上に散らばってる
ねずみ色のプッシュ電話
電話が鳴る
奥さん「はい、兵頭でございます。え?車様?
はあ…え!!宅が宅が御宅のお兄様とご一緒なのですか!
ちょっとお待ちくださいませ。内藤さん!大変。ちょっとちょっと」
と、かなり取り乱している。
内藤「ハイッ」
奥さん「もしもし大変失礼しましたそれで宅は今どこに?」
さくら「それがつい聞き漏らしてしまいましてええ兄は旅行先で、
…ええ出張と申しますかは…なんと申しますか」
奥さん「行き先はどちらでございますかなぜお分かりに
ならないのでございますか?ああ、電話では何でございます
お伺いしてお話を恐れいたしますがあなた様のご住所を!
あ、ちょっと内藤さんお願いします」
内藤「はいはい、もしもし電話変わりましたあなた様のご住所とお電話番号を」
鞠子「どうしたの?」

奥さん「は!鞠(マリ)ちゃん!パパが見つかったのよ!」
鞠子「ええ!?どこにいたの!?」
この鞠子さんはあの、早乙女愛さんです。
『愛と誠』の愛役で出てました。
内藤電話で「…はい…はい」と書き写している
津軽海峡
青函連絡船(十和田丸)の中
カモメが鳴いている。
寅、普通船室から出てくる。健次郎を探している。
二階のデッキで健次郎が風に当たってる。
デッキの手すりに付いてる救命浮き輪に TOWADA MARU TOKYO
汽笛 ボォ〜〜〜
寅たちが乗っていた連絡線は私も1984年に乗ったことのある
2代目十和田丸である。
この船も1988年の全船廃止に伴って
横浜〜神戸を結ぶ客船「ジャパニーズドリーム」と
なったが会社が倒産後、フィリピンにて
カジノ船「フィリピンドリーム」へ。・・・・・現在は閉館中とか?
栄枯盛衰だなあ…。
寅階段で上のデッキまで帽子を押さえながら上がってくる。
マジで強風で飛んじゃうんだねえ。
寅「どっか行く時は一言断っていけよ。
自殺したんじゃないかと思って心配しちゃうじゃないか」
健次郎「大丈夫ですよ寅さん」
寅「え?」

健次郎「僕は死にやしませんよ
僕は死ぬために旅に出たんじゃなくて
自由を求めて旅に出たんですから」
寅「分かった分かった分かった分かった」
寅「な、パパ、下行っておマンマ食おう。な、早く行こう。うん」
健次郎「そうですね」
あっ寅さん!こんな近くに。」
カモメが近くを飛んでいる。
健次郎「いいですねえ…鳥は自由で」
パパさん。鳥はあれはあれで、
空飛んでいる時も、
いろいろ大変なんですよ、本当は…(^^;)
だから、寅もこれはこれでその代償を
払いながら大変な人生を歩んでいる
んだけどなあ…。
自由の旅がそのまま日常になって
しまった男の侘しさと辛さを
パパは遂に知ることはないだろうな…。

柴又参道 とらや前
とらやの前に運転手つきの兵頭の黒塗りの車が
停まってる。
ナンバー 品川 55-21
結構金持ちなんだな、パパって…。
あの気質でよく出世したなあ…。
さくら、自転車で前を通り、とらやで止まる。
この時、お千代坊のパーマ店のロケに使われた
『パーマ アイリス』と屋根のの赤い看板がはっきりと
見える。しょっちゅう見えるあのアイリスの赤い屋根。
そらそうだ。なんせとらやの斜め前にあるんだもんね(^^;)
お千代さん、たまには団子買いに来てよ。

兵頭さんの奥さんが和服の訪問着で座っているのを見て、
さくら急いで仏間へ行く。
さくら「どうも遅くなりまして」
おばちゃん、上流階級らしき奥様に気が動転している。(^^;)
おばちゃん「アッ、さくらさん、お上がりあそばせ」
↑キターーーァ!おばちゃん
あそばせギャグ!!舌噛むよ、おばちゃん(^^;)
さくら、エプロンを急いではずして座る。
おいちゃん「妹のさくらでございます」
おばちゃん「みっともない格好をしておりまして…」
みっともない格好なんかしてないしてない(^^;)
さくら「どうも昨晩はお電話で失礼しました。」
奥さん、少し後ろに体をずらして
奥さん「兵頭の家内でございます」深々とお辞儀
奥さん「この度はお兄様に主人が大変お世話になりました」お辞儀
さくら「いえ、とんでもございません」お辞儀
奥さん「実は先週の月曜日、いつものように家を出たんでございますが、
お昼頃会社から連絡がございまして、出勤していないことが分かりまして
大騒ぎになりまして…、わたくしの口からこんなこと申し上げるのはなんなんで
ございますが、主人はいたって気の小さい人で、仕事上の手落ちだとか、女性関係
なんてのは全く無い人でございます。その点は、社長さんも、重役さんも、保障して
下さってるのですが、じゃ、あなぜこういうことになったのか、ということになりますと
本当に見当もつかないで、途方に暮れておりました時に、夕べのお電話…。…
生きて…生きていることが分かって、どんなに、ホッと…したことか…」
いや〜〜、よくしゃべる奥さんだ(^^;)
パパのことはとても心配していて、いい奥さんだが、
彼の日常の閉塞感は感じ取れていないのかもしれない。
『波長』がパパとずれている気がしないでもない。
パパの奥さん、結構美人です。

社長「あー、腹減った。団子くれ!」
おばちゃん「シッ!」
おいちゃん「カッ!」
台所に来た野良猫か社長は(^^;)
おばちゃん「お恥ずかしい…」と照れ笑い。
社長っていつも、こういう扱い。とほほ
奥さん「それで、奥様、」奥様って、誰のことじゃ?(^^;)
おばちゃん「あ、は、はい」おばちゃんが「奥様」
奥さん「先ほどのこと…」
おばちゃん「あの、さくらちゃん、寅次郎の
出張先はどこでしょう?」はれ〜(− −;)
さくら「え?」と笑ってしまう。
「出張先」って言われて、さくら、つい、笑ってしまう。

おいちゃん、小声で「おい、寅の居場所だよ…どこって」
『出張先』→『居場所』
とらやの辞書に『出張先』という言葉はない(^^;)
さくら「居場所って…」
奥さん「もし、ご存じなければ、
課長さんなり、部長さんなり、
上役の方に聞いていただければ
分かると存じますが…」
奥さん、寅が会社の下っ端だって決め付けてる(^^;)
さくら「上役…?」
おいちゃん「あ、あいつの会社…
何株式会社って言ったっけ?」
あちゃ〜、おいちゃんまで…(><;)
おいちゃん、おばちゃん、さくらが来るまで、
こりゃ、そうとうハッタリかましてたな。
見栄張ってもしょうがないよ(^^;)
奥さん「なにか、セールスのほうをおやりになってあそばしてるとか」
さくら「んん…、まあ…」
社長「おばちゃん」
おばちゃん「はい」
社長「お客さんだよ」
おばちゃん「はいはいはい。ごめんあそばせませ。」
出た〜!おばちゃん。
あそばせ砲、第2弾!(^^;)/
さくら「あの…会社と申しましても、
あるのかないのか分からないような…」
さくらまで、泥沼に入っていっている…。
会社なんか最初から無い。個人で物売ってる。って普通に言えよな。
奥さん「まあ、ご謙遜。
まさか道端で叩き売りを
おやりあそばしてるわけじゃ、
ございませんでしょ」
いや〜、おやりあそばしてるんですわ、
それが(^^;)
おいちゃん「ま、似たり寄ったりじゃないでしょうか…」
ようやく、おいちゃん、真実が混ざった発言。
奥さん「冗談をおっしゃらないで真面目に
お答えくださいませ。お願いします。」キッパリ!
と頭を下げて、ハンカチで鼻を抑える。
この言い方をされたら、冗談ではありません、とは
死んでもいえないな(^^;)
でもさくら、寅やパパがどこにいるかも分からないんだから、
話が進展しようがないよな。
寅からの連絡待ちしかないよ、この場合。
函館港 汽笛が鳴る 「ブォ〜〜〜」
船を見送る家族が映る。
謙次郎「長い航海に旅立つ父親。
別れを惜しむ子供たち。
悲しみを胸に秘めて手を振る妻…。
みんなそうやって生きてるんだなあ」
アンパンを持ちながら。
パパは、この家族の絆が現れている
心温まる風景を見て
しみじみと気持ちが潤っている。
それは、どこかで自分もそのような
状況にあり、ギリギリでは満ち足りて
いるからであろう。
しかし、「忘れな草」でのリリーは
同じ光景を見て、哀しみ、涙するのである。
青春期から自分とは縁の無いもの。
強烈な憧れがあるにもかかわらず、
自分の因果な放浪の気質ゆえに彼女には
持つことも出来ない遠い存在なのだ…。

寅「おい、パパ」
謙次郎「はい」
寅「のんきなこと言ってる場合じゃねえぞ、おい。
二人の金合わしたってこれだけなんだよ。
今夜の宿銭にも足りないんだよ」
謙次郎「いいじゃありませんか」
寅「ど、どうしてよ」
謙次郎「いよいよとなれば駅のベンチだって寝られますよ。
あ、そうだ、それがいい。
ロマンチックですよ〜それも」
と、アンパンをかじる。

寅「ケェッ、パパだけロマンチックにしなさいよ」
やってられねえな、まったく ┐(~。~;)┌
函館港 夜景
汽笛 ボーー…
屋台のおじさんが排水を海に捨ててる。
屋台でラーメンを食べてる謙次郎。寅はうつぶせになり寝ている。
ラーメン屋のおじさんはお馴染み大杉侃二朗さん!
谷よしのさん同様、もうどこでもちょこっと出てくる。
第8作「寅次郎恋歌」ではさくらが歌う『母さんの歌』を
聴いていた酔っ払い。普段は柴又界隈の人。
この人は「純情詩集」では坂東鶴八郎一座の座員
としてあの知る人ぞ知る『お掃除芸』を披露!
第3作「フーテンの寅」でもラーメン屋のオヤジ役。
あの、お掃除芸の大杉侃二朗(かんじろう)さん

謙次郎ラーメンを食べながら「ねえおじさん」
屋台のオヤジ「あ?」
謙次郎「この店何時までしてんの?」
オヤジ「2時、3時だい」
謙次郎「ほお〜それから家へ帰って風呂へ入って一杯やって寝るのは明け方だねえ」
おじさん「ああ」
謙次郎「大変だなあみんなそんなそうやって生活してんだなあ」
なんでもかんでも、見るもの聞くものが
新鮮な謙次郎パパでした。
リリーが謙次郎の横に座る。
リリー「おじさんさん、ラーメンちょうだい」
オヤジ「はい」
謙次郎「あ、どうもすいません」と荷物をどかす。
リリー「火かして」
謙次郎「はいはい」
リリー、少し頭を下げて、礼の意思表示。
謙次郎ライターをしまいながら
謙次郎「お仕事の帰りですか、大変ですねえこんな遅くまで」
リリー、それに答えるでもなく、
前を向いてぼんやりタバコを吹かしている。
リリーはいつもタバコを吹かす時、必ず、
人のいないほうへ向いて吹かす。
おいちゃんや博にも見習って欲しい。特にタコ社長。
寅、ちょっと起きかけて「う〜ん?」
自分に何か言われたと思って起きる。
謙次郎「え?いや、は」
リリー、寅の「う〜ん?」の声で、
ほんのチラッと寅の方を見るような見ないような…。

寅ぼーっとリリーを見る。
リリー、なんとなく寅のあの姿かたちが
視野の隅に入って、はっと振り返る。
動物的カンが働いたようだ。
二人ともよく見ようと顔を覗くように見る。
寅の目はしっかりとリリーに焦点が合った

寅もハッとし、顔を覗き込もうと体をずらす。

謙次郎「?」と寅に顔をあわせ、「???」
寅とリリー謙次郎の背中越しに、お互いを見ようとする。
寅、また、前へ乗り出して「…!リリー!」
謙次郎、寅を見る。

リリー「…!」
目を大きく見開いて

リリー「寅さん…!…寅さんじゃないのォォ!!」
リリーの顔がスクリーンから下へはみ出し、
リリーの突然の心の動きが見事に表現されていた。

寅「うん」
寅はリリーの手をしっかり握る

リリー「あんた本当に寅さんなのねえ!」
寅「当たり前じゃねえかよ。
お前どこ行ってたんだい!?」
リリー「いろいろあったんだあ〜。」
間髪いれず頷く寅
リリー「私、あんたに会いたくて
柴又まで行ったのよお!!」
いろいろあったんだあ〜
寅「柴又行ったぁ!」

リリー「うん」
寅、満面の笑みで
寅「俺いなかった!」
リリー「そうよぉ!どこ行ってたのよ一体!」
寅「うん、ヘヘへ」
パパ、間で座ってどんぶり持ちながらおろおろ。

リリーは、寅だと分かった瞬間、
すばやく寅の手を握ろうと手を伸ばす。
そして寅もほぼ同時にそれよりもっと早く、
リリーが握ろうとした手を外からしっかり握っている!
謙次郎「あの…ちょっとすいません。」
と二人が握り合う手の上を越えてどんぶりを置く。
リリー、ちょっと我に帰り、寅の手からすっとすり抜け、
酒を2人分注文をする。
謙次郎「お邪魔なようですので私はこれで…」
リリーも寅も嬉しくて、パパの言葉が耳に入っていない(^^;)
二人のあまりにも親しげな関係を見て、気を使って立ち去ろうとするパパ。
そういう感覚は持っている人なんだね。パパは鈍感ではないようだ。
リリー「お酒」とオヤジに二人分という仕草。
寅「あ、二つね俺にも」
謙次郎「本当に長い間いろいろお世話になって…」
リリー「この人あんたの連れ?」とパパを指差す。
寅「うん、そうなんだよ」
間髪いれずに、迷いなく
リリー「一緒に飲みましょ一緒に!」

寅「おー!よしよしよし、座れ座れ座れ」
寅もリリーも会って、一言目に
「久しぶり」だなんて
他人行儀なことは言わない。
寅は「お前、どこ行ってたんだい」
リリーも「どこ行ってたのよ一体」だ。
この言葉は夫婦や親子、兄妹たちの
再会場面で交わされる言葉で、
いつも相手のことを会っていない時にも
思い続けていないと出てこない言葉。
運命共同体の意識なしには絶対
出てこない言葉である。
友人同士が久しぶりに会った時には
まずこんな風には言わない。
お互いに恋人以上の
深い縁で結ばれているのだろう。
不思議なものだ。そして山田監督の
深い洞察力に基づかれた見事な演出だ。
寅「あ、この女な…、二年程前に
俺といろいろわけありの女よ」
と、謙次郎に紹介。
紹介の仕方があっさりしてていいねえ。
「わけあり」 ただそれだけで、
なにか全てを語っているように
思えてくるから面白い。

リリー「もう二年なるかしらねえ〜」
寅「そうよー。去年、おととしの夏だもの」

リリー「そうだったねええ〜…」と思い出すように。
寅「う〜ん」
リリー「あんたあれから何してたのよぉ〜!?」
と、寅の手を握って揺さぶる。

寅「えー?…俺か?
……恋をしていたのよ」
恋をしていたのよ

リリー「ヒィーー!よく言うよぉ!ハハハハ!」
ヒィ――!
寅「エヘへへへへ!ハハハ!」
パパも後ろで実に楽しそう。
よくゆうよォ― エヘへへへ!
このシーンを見ると、必ず
第25作「ハイビスカスの花」のラスト、
「兄さんこそ、なにしてるのさ、こんなところで」
「おれゃ、おめえ…、リリーの夢を見てたのよ」
を思い出す。この二つは寅とリリーの
名セリフの双璧だ。
何世紀にも渡って人々のこころに残り、
語り継がれていくだろう。そしてこれらの
名場面をリアルタイムで観ることが出来た
幸運に、ただただ感謝。
寅「よーし一杯飲むかおい!」
リリー「おじさんじゃんじゃん出して!」
おじさん「はいはい」
寅「よし!今夜はパーッと行こうおい!」
謙次郎「いきましょういきましょうハハハハ!」

汽笛 ヴォー…
この1975年、函館での再会の夜の場面を、
後に1995年第48作「紅の花」の中で
20年の歳月を経て、寅とリリーは
ふたりして回想してゆく。
観客はみんな20年前にもどり、
この時のあの顔、あの声が
あざやかに蘇っていたことだろう。
リリー「2回目に会ったのはどこだった?」
寅「忘れたのかよ、リリー。同じ北海道は函館だよ。
夜更けに港の近くの屋台でオレはラーメン食ってたんだ。
遠くで、青函連絡船の汽笛がボ〜〜ッと鳴ってなあ。
そこへ、ひょっこり、リリー、おまえが顔を出したんだよ」
リリー「そうだったねー…、あんたの懐かしい声が
聞こえて、まさかと思って、ひょいと見たら…」
寅「オレのこの顔が」
リリー「フフ、そう。懐かしいこの顔がニコニコ笑ってたの。
嬉しかったなー…、あの時…」
懐かしいこの顔がニコニコ笑ってたの 嬉しかったなあー…あの時…
リリーは寅にようやく会えた。
にもかかわらず、謙次郎の存在を歓迎する。
ここにこの映画の魅力の大きなヒントが
隠されている。
人間に対する愛情が独占的でないのだ。
これは寅だけの特徴でなく、
リリーも兼ね備えている。
人と人との交わりを大切にする
放浪者の特徴と言っていいかもしれない。
謙次郎も、当然自分だけ排除されると
思っていたら、自分の存在が
歓迎されたことで人の世の機微を
またひとつ学んだのである。
さびしい魂を抱えるものは
同じ魂を持つものを絶対に
排除しないのであろう。
函館の旅館 2階の廊下
パジャマで歯磨きをしているパパ
あんな薄いカバンのどこにパジャマや着替えが入ってるんだ?
谷よしのさん扮する
宿の人、ちょっと怒って階段を上がってくる。
谷よしのさん、そういえば、第9作「柴又慕情」でも金沢弁で、騒がしいって文句言ってる宿の人
やってたな…。この人は花売りと宿の人がなぜか絶品。
リリーのはしゃぐ声が廊下に聞こえてくる。
《リリー、何年ぶりかで
心の窓180度開放〜!》
\((( ̄( ̄( ̄▽ ̄) ̄) ̄)))/
リリー「うそうそうそ!そんなことな〜〜い!!」
寅「ほんとにほんとなんだ!」
リリー「うそだ〜!!」
リリー、相当はしゃいでいる。凄い声。
もう完全に子供状態!O(≧▽≦)O
宿の人、激しくノック、トントン!トントン!(▼▼メ)
全国どこでも出てくる谷よしのさん。今回は函館

寅「は〜い」低い波長で。←こういうニュアンスの声出す時あるんだね。
旅館の人「いいかげんにして下さい!遅いんだから!」Σ(`□´/)/
寅「はいよ」
と、寅、リリーに顔で促す
リリー「ねね、それからどうしたの?
その看護婦さんとは、うまくいったの?
前作、「寅次郎子守唄」の京子さんのことだね。
まさか、寅は全く相手にされず、彼女は髭中顔だらけの青年と
結婚しました。とは言えないだろうな(^^;)
寅「そら、バッチリいったよ」どこがやねん ヾ( ̄o ̄;)
リリー「バッチリってどういう風によ」ほら来た(^^;)
寅「い、いやいや…続きは明日!」この話から当然逃げる寅。
リリー「いやいやいや、今今、もう少しもう少し」
寅「眠いから眠いから」言いたくないこともあるよね(^^;)
リリーは寅といつまでも話がしたいのだ。

リリー、寅を揺さぶり、話を引き出そうとする。
寅「明日また…」
リリー「私、眠くないよ全然!」
寅「眠いから寝る…」
寅布団に入って
寅「リリー、寝ろ寝ろ、お前も寝ろ、寝ろ」
リリー「う〜ん、もう少し、起きよ〜!!」
谷よしのさん、怒ってまた来るぞ(^^;)
寅「明日ね、明日明日明日」
パパ、歯磨き終わって、入ってくる。寅の布団の上を踏んでしまう。
寅「痛い痛い!痛い!パパ踏むなよ!痛いなあ〜!おまえ」
謙次郎「ごめんなさい」
寅「う〜〜ん」
リリー、スタンドを消す。←お、意外に素直。
枕もとに札幌ビール(やっぱり北海道だからね〜!)
お銚子4本。パパの枕もとにタバコ(セブンスター系)とライター。
哀愁のあるアコーディオンが流れていく。
リリーのテーマのアレンジ版
リリー「う〜ん、つまんないよ」
リリー「寅さん…」
寅「ええ…」
リリー「私冷え性なのすごく。夏でも足が冷た〜いんだ」
寅、布団の中から、「下、行って、湯タンポつがしてもらえ」
リリー「温めさしてェ]と甘えながら寅の布団に足を入れる。
!! ヒャッコイ、ヒャッコイ、ヒャッコイ

寅「あ、あ、あ、だめだ。ヒャッコイ、ヒャッコイ、ヒャッコイ、
そんなつっこんじゃだめだよ、おまえ」
リリー「けち」
リリー「じゃあいいよ、パパに温めてもらうから」
とパパの布団に、足を突っ込む。
謙次郎「そんなあ…」(◎_◎;)
「うわぁ、温かいわ、パパの足。気持ちいい〜!」
謙次郎「寅さん…、寅さん!」
寅、寝ながら「パパ…、温めてやれ…」
謙次郎「ヒ、イイィ…」
パパ、緊張しながら、枕に頭を下ろす。
リリー、パパの布団に寄り添いながら、子供のように目をつぶり
リリー「気持ちいい…」

パパ、唾を呑み込みながら、仰向けで緊張している。
パパ、今夜は当然眠れそうにないねえ (〃^o^)=3
普段独りでいる時は気を張っているリリーも、このメンバーだと
気心が知れて心が芯から休まるのだろう。
リリーは、親に恵まれなかった分、実は甘えん坊。
リリー、今夜は久しぶりにぐっすり眠れるね。
パパのキャラクターだからこそ安眠できるんだけどね。
函館本線
車内
パパが、うとうと居眠りをしている。
つまみ、サッポロビール、セブンスター、が窓際に。
まあ、昨夜リリーにあんなにくっつかれちゃあ、
寝れないよな。普通は(^^;)
リリー「ちょっとちょっと」
寅つまようじをくわえながら「うん?」
リリー「気になってたんだけどさ。この人と寅さんとどういう関係?」
寅「…これ?スーッ、えーっとねえ…あ!
こいつと初めてあったのはね八戸の駅なんだよ。
ホームでもってボケ−って面して突っ立ってやんの」
リリーつまみを食べながら寅の話を聞いてる。(つまみの位置が違うぞ)
寅「『おいこら、お前自殺でもする気か?』って俺声かけてやったんだよ。
それからずっと俺についてきやがんの。」
リリー笑う「フフ…」
寅「だいぶ変わり者だよ、オレたち常識人に比べると」
リリー「ハハ…寅さん常識あるの?」と笑いながらつまみに手を出す
寅「あるよ、おめえ、大常識だよおまえ」
リリー「キャハハハハ!」
寅「おめえ無いんじゃないの?」
リリー「あるよォ〜キャハハハ…」
パパの横で布団に足入れて平気で寝てしまうリリーも、
寅のことを、悪く言えないぞ。
どっちもどっちの困った人たち ┐(-。ー;)┌
ちなみに、寅の「おまえ無いんじゃないの?」は本当の口の動きは
「お前と一緒だな」である。これでも面白いと思う。

寅「へへへへ」
謙次郎、起きて「ハハ…ハハハハ…」と寝ぼけながら釣られて笑う
寅「ホホホホホ…笑ってやんの」
リリー「ハハハハ」
寅「ウワハハハハ!」
リリー「アハー、あたしお腹すいちゃった〜!」
寅「あ〜?」
寅さんなんか食べよう!」
寅腕時計を見て「うーんそうだなあ…」と時計を見ながら。
寅「長万部で降りてカニでも食うか」
リリー「カニ!」
寅「