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寅次郎な日々

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ご注意) このサイトの文章には物語のネタバレが含まれます。
まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。



                 

第18作「男はつらいよ.純情詩集」ダイジェスト版(2007年5月14日)

第17作「男はつらいよ.夕焼け小焼け」ダイジェスト版(2007年5月8日)

第16作「男はつらいよ.葛飾立志篇」ダイジェスト版(2007年5月3日)


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313

                          
『寅次郎な日々』バックナンバー          





第18作「男はつらいよ.純情詩集」ダイジェスト版
 

2007年5月14日寅次郎な日々 その313


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
       まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



禁じ手に懸けた寅次郎の究極の愛情   


無償の献身とは    山田監督、一世一代の『禁じ手』


第18作「純情詩集」はマドンナが亡くなってしまう、という悲劇が待っている。むろんこれは他の山田映画の特徴から行けば
『禁じ手』といえるかもしれない。昨今のドラマや映画はこれでもかとばかりに主人公やその恋人、家族などが若くして死んでしまう。
人というものは不安定な「自我」をいつも抱え込んでいるので、人の死というものに敏感である。死の恐怖と言うものが人間に宿り続け
ている以上、この手のピリカラ物語は今後も流行り続けるであろう。ある意味とても安直で、短絡的な手法ともいえる。しかし、
この「純情詩集」はそのような安直なドラマとは正反対にある物語になっている。マドンナの悲劇や絶望を過剰に表現せず、寅の心の動きや
さくらの心の動きに重点を置き、絶望の中でさえ、ユーモアを忘れず、豊かな想像力を持ち、人の気持ちに寄り添うことの意味を表現して
いるのである。そのことがもっとも明らかにされるのが、マドンナが庭先で人間の死すべき運命を嘆いた時、それに対して寅が示した究極の
あのユーモアであり、とらやの団欒で綾の仕事をみんなで話し合う、あの未来に向けての想像力である。

人間は必ず死ぬのだ。おいちゃんおばちゃんも、寅もさくらも、満男でさえも…。問題はそのことばかりに過剰に反応するのではなく、
周りの人たちがいかに寄り添ってそれまでの日々を共に生きていくか、ということなのだろう。もうひたすらそれだけである。

寅は、もちろん綾との出会いの部分は惚れたハレタだが、次第に、綾に対して共に生きてゆく姿勢に変化していく。それは寅の表情を
見ていると分かる。寅はもうただただ綾を幸せにしたいのだろう。人が人を大事に想うこと。これこそが寅の無償の献身に繋がっていき、
その行為こそが彼の優れた才能の開花の瞬間ともいえる。



さくらの気持ち、寅の気持ち       想像力ということ

さくらは雅子から綾の命がもう長くないことを伝えられる。さくらは頻繁に綾の家に出かける寅を後押ししていく。
こういう時のさくらの行動は思いっきりがいい。もうここからは寅がどうのこうのというよりも、さくらと寅が綾さんに寄り添おうと
して行く。そしてそのことが最も大きくクローズアップされるシーンが寅とさくらで芋の煮っ転がしを作るシーンであり、もう一つは
綾さん亡き後、別れの柴又駅ホームでの寅とさくらの会話である。私は人が人を想うことがこんなにも美しくそして哀しいもの
なのかと、このときばかりは愕然としてしまった。

寅は綾さんが亡くなってしまった後も、まるで未来が待っているかのように彼女の将来の仕事のことを考えてしたのだった。
寅の数々の人を想う行為の中でこんな切ない想像は後にも先にもこのシーンを置いて他にない。寅の想像力の豊かさと類稀なる
才能を思い知らされたシーンだった。



別所温泉での再会、そして朝もやの中の別れ

この作品の中で、もうひとつ忘れられないのはあの第8作「寅次郎恋歌」で印象深い一期一会があった、坂東鶴八郎一座との
再会と交流、そして別れである。特に彼らとの宴会のシーンと翌朝のしみじみとした別れのシーンが秀逸だ。
寅は見栄を張ってお金も無いのに彼らに宴席を設けてやるが、あの心意気が旅役者たちにとって、どれだけ励みになるか。
この後も彼らにとって車寅次郎は人生を賭けて応援してくれる大事な人になっていったのだろう。



@【寅の帰郷と家庭訪問騒動】

今回も夢から

アルジェリアの港町のカスバ。場末の酒場が映る

兄の行方を捜して日本からはるばる北アフリカのアルジェリアまでやって来たさくら。場末のカスバにたどり着き、兄の居場所を
知っているらしい男を聞き出しアラビアのトランスのところへ来たのだ。

さくら「アラビアのトランスとおっしゃるのはあなたですか?
トランス「昔はそう呼ばれたこともあった…。今は夢も希望も失って酒と女にあけくれる日々だ
トランス「ご用件は?
さくら「実は人を探しております。20年前に祖国を捨てて、放浪の旅に出ましたが、人づてに、北アフリカで見かけたと
   聞きまして、カイロからアレキサンドリア、カサブランカと長い旅をしてまいりました
と泣いてしまう。
トランス「その人の名前は?
さくら「車寅次郎と申します
トランス「…!!
汽笛 ボォ〜〜〜!!
トランス「あなたは、その男の…
さくら「妹でございます。名前をさくらと申します
トランス「…!!トランス、少しうろたえる。
暗い音楽が流れる。

              

トランス「オレはその寅次郎の…友達だった…
音楽大きくなって
さくら「え?…じゃあ、…今どこに!
トランス「娘さん、寅次郎は…気の毒だがもうこの世の人ではない
さくら「…!!
トランス「いい奴だったぁ…、アレキサンドリアの星と慕われ、強きをくじき、
弱気を助け、多くの貧乏人に慕われ死んでいった…


後ろから追ってきた刑事がトランスを見つけて叫ぶ。
すぐさまピストルを向けて撃とうとする。
さくら「
シバマタ…!!
トランス「しまった!!洒落(^^)
刑事撃つ。
トランスも同時に2発撃つ。
刑事と源ちゃん撃たれる。
トランスも,わき腹あたりを押さえている。撃たれたのだ。
さくら「もしや、あなたは!?
トランス「違う!!、オレはケチな人殺しをして、刑事に追われているヤクザもんだ
さくら「うそよ!お兄ちゃんでしょ!と泣きじゃくっている。
シューマンの「トロイメライ」が流れる。
トランス「…違う!!とむせび泣きながら…
トランス「お前の兄さんはな…、アレキサンドリアの星と謳われた英雄なんだ

 C’est elegans, d’urban エレガンスなダーバン
昔、ダーバンのコートの宣伝でアランドロンが言った名セリフ(^^)

               

トランス、さくらを見つめ、すばやく立ち去っていく。
さくら「お兄ちゃん!!」と
泣きながら呼び止めるがトランスは振り向かず消えていく。
空しく響く汽笛ブォ〜〜〜〜!!!




信州  上田地方 上田電鉄別所線鉄道付近

床屋で寅が髭を剃られようとしている。

まだ、夢を見ている寅。

アツアツのタオルを持ってくる店主。
寅「はっ!アチ!アチ!アチ、アチィ〜!あー熱い!備後屋でおなじみのスタッフの露木さんが床屋の店主に扮している。
店主「どうもすいません
寅「ほォー
店主「うあ!あちち!あち!やっぱり熱かった

子供「お兄ィーちゃん
信州 上田電鉄別所線の駅が映る。
子供「お兄ィーちゃん!昼ごはんだよー。お兄ィーちゃん!もお〜…お兄ィーちゃぁーん!



タイトル (赤)はつらいよ(黄)寅次郎純情詩集(白)映倫18923

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。


今作品も第17作「夕焼け小焼け」同様いつもの歌の2番の代わりに、
歌の3番が挿入されている。私はこの3番の歌詞が大好きだ。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 
   わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 
   偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


  
♪あても無いのにあるよな素振り 
  それじゃあ行くぜと風の中
  止めに来るかとあと振り返りゃ 
  誰も来ないで汽車が来る

  男の人生一人旅 泣くな嘆くな
  泣くな嘆くな影法師 影法師♪


テレビ局(映画)が、ドラマの撮影を江戸川の土手で行っている。
女優と男優が一緒に歩いて、それを移動板レールの上に設置したカメラが追う。
レフをかざすスタッフ。
しかし、そこへ例のごとく、寅の邪魔が入る。
無造作に置かれた寅のカバンにカメラが正面衝突。カメラは倒れ、一緒に乗っていた監督も台から落ちる。

            

寅、知らんふり。
野次馬たち、笑ってる。監督、激怒して、寅を追っ払う。というミニコント




柴又 帝釈天参道

パーマアイリスがとらやの斜め前に見える!お千代さんの店だ。どうしているかな…。

とらや 店先

さくら「満男の先生がね、今日家庭訪問なの

満男の担任の若い美人の産休教師が過程訪問に来るという日、運の悪い事になんと寅がとらやに帰ってくる。
博もさくらも寅が先生と鉢合わせして何か変な言動をするのではないかと心配し、ハラハラしている。
で、もちろん案の定鉢合わせ(^^;)。



雅子「あたし柴又小学校の柳生と申します
寅振り向いて
寅「柴又小学校の柳…

雅子のテーマが流れる。

一同、唖然…

全ては始まり、全ては終わった…(-_-;)
さくら「あ、先生、お待ちしておりました
寅「あー満男の先生か!は〜どうもいつもお世話様になりまして
さくら「私の兄です
雅子「ああ、じゃあ、満男君の伯父さまですか
寅「いいえ、そんな伯父さまだなんて。

            

座敷に上がってもらったのはいいが、しつこく寅もついてくる。せっかく博やさくらがいろいろ話そうとしても、
すぐにちゃちゃを入れる寅だった。おいちゃんおばちゃんは見かねて何とか追い払おうとするが、
若い美人な雅子先生に目がハートで離れようとしない。

あ〜〜〜…もうだめだね。ロックオンされちゃった┐(-。ー;)┌

雅子先生、満男のことで、みんなに質問。
雅子「お友達は多いほうですか?
寅「おお、友達は多い!
雅子「どんなお友達かしら担任なのに先生は知らないのか?

寅「まあ、いろんなのがいるえねえ、まず、伊賀のシンベイ、こいつは博打が好きでしたちょいちょいヾ(^^;)
と言いながら、サイコロを振る手つき。
ちなみに私の生まれも伊賀上野。
寅「でも、女房もらったらぷつっ…と噂聞かなくなったなあ、あれ堅気になったんじゃねえかなあ…
寅「あ、それとコナツのジョウジ、これはね、オカマ(((^^;)
  夕方の四時ごろなるとね、こうタワシみたいにヒゲがダァ〜っとはえてさ、笑っちゃう面白い奴なんだ、笑っちゃう
もっとまともな奴いないのかよ(−−;)
第38作「知床慕情」でもヘンなやつと知り合いだった。ちょん髷結ってるやつ。

             

結局寅は、博たちにほとんどしゃべらせないで、自分がしゃしゃり出て時間ばかりが過ぎていく。

雅子「フフ…伯父様も大変ですね先生もこの場の空気読めよ(−−)
寅「いやあ
結局何にも大事な事を話さないまま雅子先生は帰ってしまう。

厳しいようだが雅子先生が本当は空気を読まないといけない。博たちは明らかに何かを先生と真剣に話したがっている。
学校を出たての臨時産休講師も経験豊富なベテラン先生も満男にはたったひとりの担任の先生だから自覚が必要なのである。

雅子「じゃ、みなさん失礼致します
一同頭を下げる
寅「あ、先生、僕、そのへんまでお送りいたします。これだよなあ┐(-。ー;)┌
雅子「いえ、そんなあ
寅「いや、ヘンな奴が出てくるといけないんで、さ、行きましょうそれはあんただよヽ(´〜`; )

寅たちが行ってしまったあと、博は珍しくワナワナ震えて怒る。
博「いくら兄さんでも、今の態度は許せないよ

              

さくら「え?
博「必ず決着をつけるからな!今夜!
おいちゃん「…!!

博のこの態度にさくら、もおいちゃんも、おろおろしてしまっている。
寅は博の大事にしている心のエリアに侵入してしまったようだ。





とらや 茶の間

博とらやに戻って来る。


寅、店先で茶の間を見ては、行ったりきたりしている
茶の間に戻ってきた寅は、何とか寅は昼間のことを水に流してもらおうと思い、みんなにそれなりに気を使うが
博の静かな怒りは収まらない。それを察してみんなもダンマリを決め込む。寅はなんとかごまかそうとするが
みんなの怒りは根深い。


寅「あ!がんもどき、お芋かあ、俺の好きなものばかりだ。おばちゃん気使って作ってくれたんだねぇ
一同ず〜っと完全無視
寅、いっこうに気持ちを許してくれない一同を見渡しムスッっとする。
ひたすら押し黙って食べている博を睨む。
寅「なんだい!みんなつん黙りやがって、オレに何か言いてえ文句でもあんのか!?
さくら、チラッと博を見て
さくら「 久しぶりに帰ってきたお兄ちゃんに、こんなことほんとうに言いたくないんだけどね。
   今日の昼間のお兄ちゃんの態度はなあに?

寅「オレがなんかしたっていうのか!?
さくらは、遂に昼間の寅の勝手な態度を怒る。
何を言われても自分は悪くないと反省の色が無い寅。


              

寅「博なんだ、てめえ、オレに文句あるのか!
おいちゃん「親切にしたかったらな、黙って引っ込んでりゃいいんだ!
おばちゃん「そうだよ!あれが男の先生だったら、おまえなんか鼻もひっかけやしないだろ!もちろん(^^)
と言いつつ、おっとォ!おばちゃん箸で芋を刺して一口でパクリ!!
おばちゃん、何回リハーサルしたんだろう。おなかの中芋だらけだとか…(^^;)

博何か言いたげ。
おいちゃん「言いたかないけどな、お前満男のことなんかどうだっていいんだ。
      あの先生の前でいい格好したかっただけじゃねえか!

寅「なにい!?
博「 なにが教育だよ、ばかばかしい!(▼皿▼メ)
さくら、蒼ざめる。
寅「 てめえ!婿の癖に生意気なこといいやがって!このやろう!と博をぶっとばす。
おいちゃんたちは寅を真剣に怒る。
博「みんなの言ってる事が図星なんで、それで腹を立ててるんだ、そうでしょう
寅「
なんだてめえ!このヤロウ!

さくら、間に入って、
さくら「博さん、お兄ちゃんだってもう分かってるんだから。お兄ちゃん…、分かったでしょう
またもや寅をすぐ甘やかすさくらでした。
博「僕にも言わせてくれよ!たまには!
博「そらあ、僕は職工です。大学にもいけませんでした。そんな僕が、満男にどれほど夢を託しているか!
  そんなこと、子供も持ったことのない兄さんに分かってたまるか!


                

重く長い沈黙が流れる…
おいちゃん「…博さん、あんたの言うとおりだ。寅、博さんに謝んなさい
おばちゃん「そうだよ、あやまんなよ
さくら「お兄ちゃん、お願いよさくら「お願いよ」という言い方で謝らせるなよな(−−)
                 
そして、出て行く寅。

おばちゃん「さくらちゃん、いいのかい?
さくら店先まで追いかけて
さくら「お兄ちゃん、バカねえ、お腹すいてるんでしょう?
寅「さくら、あの女先生に会って、満男君の伯父ちゃんはどうしましたって聞かれたらな、うちのものと喧嘩して
  家を出ました、今頃は遠い旅の空で、すきっ腹抱えてたった一人の甥っ子の幸せを祈ってますってそう言え」

寅「あばよ」と出て行く。
寅の背中を見ているさくら。そして下を向く。

                

博の気持ちも分かるが、自分のかなわぬ夢を人に託すと、託された人が苦しむことがよくある。人には人の分というものもあり
色というものもある。その人の道というものもある。自分が過去に出来たからこの子もできるだろう、はよくないし、逆に、
自分は過去にできなかったが環境が整っているこの子はできるだろう、もよくない。人は完全に人それぞれだ。



A【信州での坂東鶴八郎一座との再会】

晩秋の信濃路

田園を淋しく歩く寅
美しいBGMが流れる。
前山寺の山門でアンパンを食べる寅

信州の鎌倉』と言われる上田市塩田平。寅の背中の向こうに見えるのは知る人ぞ知る有名な未完の三重の塔。
この前山寺(曹洞宗)はその塩田平きっての古刹。この寺は、信州の鎌倉「塩田平」の独鈷山に近く、塩田平を一望する高台に建つ。
このすぐ前に私の好きな『信濃デッサン館』がある。それゆえ、私もこのエリアのロケ地は巡ったたことがある。               

                


信州 塩田平の神社

寅の啖呵バイ  入浴用品
花火  お神楽が舞われている。

夕暮れ時家に帰る子供たち
夕焼けの塩田平を歩いていく寅
ススキの穂が風に揺れる。
桃源郷のような風景…

                



国立東京第二病院
 
柳生綾さんが退院してタクシーで柴又へ向かう。


柴又 柳生家

綾「ありがとう雅子、さ、早くこれを…ああ、帰ってきた!婆や!婆や、婆や〜!帰ってきたわよ!
ばあや「お嬢様!
綾「こんなに元気になったわ!もー大丈夫よ
ばあや「神のお恵みですよ、うう」と泣く。そう…クリスチャンなんだねえ…
綾「バカねえ、泣いたりして、峰先生がね太鼓判押してくだすったの、もう二度と病院には戻ってこなくていいって、
  だから私、これからはずっとここで暮らすのよ。もうこれからずっと!

ばあや「ああ、良かったですえねえああ…と二人して泣きじゃくる。




一方、信州の寅

上田電鉄別所線が塩田平を走る
稲刈り後の田んぼが黄金色にキラキラ光っている。
上田電鉄別所線が信州上田と信州の鎌倉と呼ばれる塩田平を走り抜ける。別所温泉までを結ぶ全長11.6Kmの可愛い鉄道。

電車の中で赤ん坊をかまう寅

                


別所温泉に電車が着く。BESSHO ONSEN STATION

坂東鶴八郎一座公演のポスターが見える。 遠くから太鼓の音
拍子木 カンカンカン、カンカンカンカンカンカン、カン!
とざいとおおおーざいいいいぃ…。
太鼓 ドドドオン!!
谷村昌彦さん上手い!谷村さんは森川信さんの出弟子筋の人。

小百合ちゃん、寅を見つけて、
小百合「先生!…車先生!
寅「よお、お前さんいつか甲州で

第8作「寅次郎恋歌」で四国は高知の雨の日に出会い、一期一会のひとときがあり、ラスト、秋の甲州路で、
寅と一座は再会。物語はここで終わるが、おそらくそのあと寅と一座の人々は楽しいひとときを過ごしたに違いない。

小百合「はい、大空小百合でございます、その節はありがとうございました。
寅「いやあ〜達者でよかった、あの〜座長やってたお父っつあんどうしてる?

               

小百合「はい、丈夫で勤めさせていただいております

そして彼らのことが懐かしい寅は、酒を包んで、芝居を見に行ってやるのだった。

芝居小屋の中  舞台『不如帰』 クライマックス

武夫(座長)が舞台に出てくる。
観客拍手。

武夫「先生!浪子の命は!?
医者、悲しく首を横に振る。
アコーディオンの美しい音色、哀愁を帯びながらも盛り上がる
武夫「ハ!武夫、すべてを諦めた顔で泣く。
武夫「クハハ!ァァハハハハハ…上手いぁ〜!この悲しい笑い。
浪子の近くに寄って、手袋を外し、浪子の頬に触れながら
武夫「よく眠っているなァ〜…
掛け声 お若い! 大和屋! 
浪子「あなた!
掛け声「 御両人!
浪子「武夫さん
武夫「僕は帰ってきたよォ
浪子「はァ〜嬉しいぃぃ…人間は…なぜ死ぬんでしょねえ…、
  あたくし、千年も万年も、生きぃたいわァ…

掛け声「小百合
武夫「何を言うんだ浪さん、君の病気はァかならずゥウ治る、いや!治してみせるぅ、このぼぉくぅが…

                

掛け声 日本一!
掛け声 大統領! 
掛け声 大和屋!
掛け声 小百合!

芝居が終わって、観客に座長は寅を紹介するのだった。
座長「芝居の途中でございますが、皆様に、お知らせいたします、本日の客席には、昔から私どものごひいきの、
   わざわざ東京から駆けつけてくださいました
車寅次郎先生です!

お客たち拍手。
舞台に向かって手を振る寅




夜 いづみ屋

夜になって、坂東鶴八郎一座を自分お部屋に呼び、酒や肴を振舞う寅だった。
応援しているんだねえ。お金も無いのに大丈夫だろうか。

一同「ありがとうございますと深々とお辞儀。
寅「礼の言われるほどのことはしちゃいないよ、ささ、こっちこっちへ座って、ささ、はい

座長「常日頃、座員一同には、いつ、どこでどういうお方が御覧になってるか分からない、少しでも手を抜けば、
  必ずそのお方の目にとまり、笑いものになる、芝居は常に真剣勝負であらねばならない、こう申し聞かしておりましたが、
  今日は、はからずも、車先生のようなお方に御覧をいただき、座員一同、励みになりました!ありがとうございました!

一同「ありがとうございました
座長さん、さすがだねえ。芝居が本当に好きな人の言葉だね。感服しました。

                

寅「……
少し、照れながら聞いている寅
寅「いや…いや、まあまあ、さ!固い挨拶は抜きにして!さ!こっち来てパッと飲んで、ささ、ね
一同、笑う。
女中が銚子を運び込む。
谷よしのさん登場!
寅「あ、どうも姐さん、ありがとう、さあ、どんどんどんどん回して。あの、いい酒もって来たね、
女中「はい、分かってます
寅「安い酒はダメだよ、役者衆舌がおごってるから

宴会が始まる。  二階からドッと拍手と笑い声。
盛り上がっているようす。

座はすっかり盛り上がり、酒に酔った座員が滑稽な余興を演じている。
上機嫌で拍手をしている寅。
大杉侃二朗さんの十八番『お掃除芸』
一同「♪ほら、おそうじ おそうじ おそおじだ、
谷よしのさんも一緒に見て大笑い。
一同「♪ほら、あ、おそうじだ!
一同「ハハハ
一同「ほら、おそうじおそうじおそうじだ!
                      
                

一同「ほら、おそうじだ
寅「おい、座長!おもしろい!おもしれえな
一同大爆笑「
ハハハ
こうなると笑いは止むことはない。




翌早朝
 

坂東鶴八郎一座がトラックに乗って旅立とうとしている。
小百合「
先生。車先生! 」
寅、目を覚ます。障子を開けて、寅が寝起きの顔を出す。
旅役者の一行を乗せたトラックが停まっていて、小百合ちゃんが大声で挨拶する。
小百合「いろいろとありがとうございました。これで失礼します
小百合ちゃん、さっと手を向こうに差し出す。
トラックの荷台に乗っている座員たち。
寅「よオー
座長「先生、昨日はお世話になりました

座員一同「ありがとうございました!

                       

座長「
お元気で、失礼します
トラックのクラクション プープーッ
座長「ご馳走になりました
座員「お達者にーっ
荷台の上で頭を下げる一同の姿を見ながら、寅の胸に熱い感慨が湧く。
一期一会とはこのようなことを言うのだろう。なんともさわやかな別れだ。


寅「
お-い!
小百合「
はーい
一同「はい!
寅「しっかりやれよお!またいつか、日本のどっかできっと会おうな!
小百合「
はい!
座員一同「はい!
小百合「ありがとうございました。勉強します!
一同「さようなら、さようなら
と言いながら、その姿が消えて行く。

そして、このような無茶な出費を伴う応援と見栄の後始末は必ず堅気のさくらが泣き泣きするはめになる。

宿の女中さんに主人を呼んでくれるように言う寅。お金が全然足らないようだ(−−;)



B【無銭飲食騒動と引き取りに行くさくら】

とらや 店

電話のベルが鳴る。
電話に出たおばちゃんは驚愕…。
とんでもないことがおこったのだ。

表から入って来たさくらに声をかける。

おばちゃん「さくらちゃん、たいへんだよ。寅ちゃんがね、無銭飲食で捕まっちゃったんだよ
びっくりして起き上がるおいちゃん。
さくらどこで?
おばちゃんベッショ!
さくらベッショってどこ?
おばちゃん知らないよ!出た〜(^^;)/
さくら、慌てて受話器を受げ取る。
さくらもしもし、電話替わりました。私、車寅次郎の妹ですが兄が何か…はい、はい…

               

暗く不吉な音楽が流れる。
呆然とその様子を見ているおいちゃんとおばちゃん。



信州、上田電鉄別所線・車内

窓外に、深まり行く秋の景色がゆっくりと流れて行く。下を向いて考えごとをしているさくら。


別所警察署前

配達率が警察署の前へ着き、さくらが降りる。

さくら「
ご親切に、ほんとうにありがとうございました
さくらあのう、私、東京から参りました諏訪と申しますが、兄の車寅次郎のことで……
渡辺、気さくな表憶で答える。
渡辺「ああ、妹さんですか、どうもご苦労さまです。(奥に向かって)、おい、寅さんどうしたっけ?
巡査「今、風呂に行ってます
渡辺「あ、風呂か。風呂に行ってますから、もうすぐ帰りますよ。まあ、どうぞ
いろいろ示談で済みそうだとさくらに言ってあげる渡辺さん。
渡辺「ええと……あ、これだ。金額は一応こういうことに
さくら「はい金額を見て「こんなに…」と言う顔をするさくら
渡辺「それからですね、これは、お兄さんが警察の弁当は口にあわたいと、こう言われるんで、店から取り寄せたんですが、
  寿司、うな重、
それからザルソバ、これは一応規則ですからそちらで払っていただきたいんですが
寅ってうなぎ嫌いだったはずなんだけどなあ…。どう言う気持ちでこんな贅沢な注文するんだろうね(−−)
さくら「はい、勿論です
さくら「コーヒー、八杯…?
渡辺「(慌てて)あ、それはですね、我々署員に、いえ、勿総固くお断わりしたんですがどうし
 てもご馳走してやると、こう言われるんで。どうも申し訳ありませんでした

寅っていったい…。こういう見栄のお金もさくらに払わせる。いやはやもう理解できません(^^;)
さくら「いいえ
さくら、呆れ返っているところへ、頭に手拭をのせた寅が、巡査の監視付きで戻って来る。
寅「アハハハあー、いい湯だったなア、えー?これで冷たいビールの一杯でもいけぱ申し分ないげどよ、
 警察ホテルじゃそうもいかないや、アハハハハ。(さくらに気づいて)よオ、さくら、来たか早かったたア

この1年後に作られた「幸福の黄色いハンカチ」で、渥美さんが「ナベさん」と呼ばれている渡辺係長の
役を北海道でしていた。もちろんこの第18作での名前を意識しているのは間違いない。山田監督ならしそうな事だ。
寅「へ〜、いい雰囲気の警察でしょう、え?あと、二、三日泊まって行こうと思ってたんだよ、オレ

                 

さくら「
何言ってんのよ、私心配で飛んで来たのよ
さくらの怒った顔に、寅、ようやくシュンとなる。
さくら「もお…




別所温泉駅

寅、大きく伸びをして、
寅「あ-、いいねえシャバはのびのびして

さくら、怒って駅の方へ…
寅「なんだい、怒ってんのか、おい、さくら、さくらさん、
満男のお母さま、諏訪博の奥さん、よ

怒るだろそら、こんな遠くまで引き取りにこさせて、大金を支払って…┐(-。ー;)┌

さくら、駅の入り口でこけそうになる。
寅「おらおらおら(^^;)
さくら、プンプンして、駅の構内を歩いて行く。



C【綾さんと寅、運命の再会】

帝釈天.参道

とらや 茶の間

おばちゃん「
うちじゃね、無銭飲食の甥が帰って来んですよ!と、憮然としているおばちゃん。
おいちゃん「敷居を一歩もまたがせるな怒りは収まらない。
博「それはあんまりですよ
おいちゃん「いいか博さん、ウチはね商売やってるんだよ、ん、んな、無銭飲食ってのは一番恥ずかしい
     犯罪だ、泥棒のほうがよっぽどマシだ!
泥棒も恥かしいよ(^^;)
博「犯罪じゃありませんよ、示談ですんだんですから無理があるぞ(^^;)
おいちゃん「似たようたもんじゃないか!それは言える(^^;)


さくらがげっそり疲れた様子で帰ってくる。
さくら「ただいま不機嫌な顔で、茶の間の上り口に腰をおろす…。
博「兄さんどうした
.さくら「今、来るわよ
寅がノコノコ入って来ておいちゃんに声をかけるが、おいちゃんキレて、
たまりかねて大声を出す。
おいちゃん「
寅、お前な無銭…
博「ちょっと待って、…。兄さん、謝るべきじゃないんですか、みんな、どれほど心配したか分からないんですよ
寅「そうなんだよ。オレも今度は悪かったなア、と思って、あやまろうと思って今帰って来たんだよ、ほら、今度のは、
 金のことでもってみんなに迷惑かけちゃったから、ねっ

おいちゃん「今度ばかりじゃねえや!この間のことだってあるじゃねえか!おいちゃん怒りまくり
寅「うん、…?え?この間のことって何だっけ
おばちゃん「満男の先生のことだよ!
寅「
ああ、女先生な、悪かった、 なにしろあの時はオレも若かったから (ー_ー;)若かったって… 
社長「フフ、
博「プーッと、博もタコ社長もつい笑ってしまう。
脚本ではみんな笑っていない

おいちゃん「
何が若かっただバカァッ!ありゃ先月のことだァァァ〜
おいちゃんもうセリフ言いながら笑っています。そりゃ笑うよねえ〜、あの顔であれ言われたら、分かる分かる(^^;)

                        
笑ってしまうおいちゃん
                    

寅「
あ、そうか
おばちゃん「情けないねぇ!、もうォォ〜!と、三崎さん泣きながらもやっぱり笑いをこらえ気味(^^;)
(実は必死で口を噛み、笑いをこらえる)
さくら「あのね、お兄ちゃんはほんとに若くないのよ、そりゃいくつになっても、女の人を好きになったってかまわないわ、
  でもね、あの先生はお兄ちゃんの娘ぐらいの歳なのよ、お兄ちゃんがまともに結婚してたら
  あの先生ぐらいの女の子がいてもおかしくないのよ


                    
博「
そうですよ
寅「そうか、なるほどな
さくら「仮によ、あの先生にきれーなお母さんがいたとして、その人をお兄ちゃんが
   好きになったとしたら、私たち
誰も文句なんか言わないわ、お兄ちゃんはそれぐらいの歳なのよ
社長「
そう
寅「そうか…、あの先生のおっ母さんねぇ〜
さくら「
そうよ
寅「ん…歳恰好になんのか…オレもそろそろ考えなくっちゃなア

と、一人うなずいているところへ、またもや雅子先生が現われる。
そしてなんと雅子先生のお母さんが登場するのだった。

寅、フラフラと雅子先生について行きかけるのを、博が呼びとめる。
博「さっきさくらが言ったこと、憶えてますね!
寅「憶えている、億えている。今、言われたばっかりだもんな、
  お母さんだったらいいんだ、お母さんどまり…分かってんだ、ちゃんと

雅子が再び姿を現わし、母親に呼びかける。
雅子「お母様、こっちよ
さくら「!!
寅「!!!お母さん…
出った〜〜〜〜 ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ

雅子「
母も一緒に来ているんですよ
寅「は は……洒落…(^^)

                            は は…
                    

蒼ざめる一同
入口に、雅子の母、綾が姿を現わす。
美しく気品のある姿ながら、どこか未だ病気を思わせる青い肌の色、
そしてそのあどげない瞳はキラキラして懐かしさでいっぱいのようす。

綾、懐しそうにつぶやく。

綾のテーマがゆったりと響いていく。

綾「
まあ、懐しいわあ〜

                    

一同唖然…

とりあえずさくら丁寧に挨拶。

綾「
いいえ、先日この子がとらやさんに伺ったという話を聞きまして、もう懐しくて懐しくて、
今日は散歩がてらに足をのばしましたの。…どなたか私を憶えてらっしゃるかしら


おばちゃん「あのう…、柳生様のぉ…お嬢様でいらっしゃいますか?
綾「あら、おかみさん!?
おばちゃん「はい、まあ、これはこれは。ご病気だとは伺っておりましたが
綾「先月退院しましたの、三年ぶりに
おばちゃん「年も〜…」
さくら、開いた口がふさがらない状態が続いている(^^;)
また目がハートになっている寅にを見てどうしていいか分からないようす。
綾「…あの時分…、こんな可愛らしいお嬢ちゃんがいらしたけど-・…と、手で子供の背丈を示す。
おいちゃん「そら、多分、この子じゃないかと思いますが…ハハと、さくらを紹介する。
綾「やっぱり。そうじゃないかと思ってたのよ。まあ、こんなに大きくなって!
  それじゃね、あなたにお兄様がいらしたでしょう、ほら、
眼が小っちゃくて面白い顔をした
ある意味、人に対して凄い表現。世間知らずだね(^^;)
私がこのお店の前通るといつも後くっついて来て、『やい、出目金』なんて大声出したり、ヴァイオリン
のケースにいたずらをして私を困らせたの。あの
お坊ちゃん、お元気〜?
寅、そっと、静かな声で…
寅「ここにおります…ィヒッこれはまさしくチャップリンだね。
綾「あらっ、 まあ、 あなたぁぁ〜!?。
寅、ビックリしてタジタジ

綾「まあ、そういえば、同じ顔。まあ、懐しいわあ・…
大きな眼をうるませて、しげしげと寅を見つめる。
綾…さすがに時の流れを感じ、
綾「ねえ、あれから…もう三十年もたったのね…
綾さんはおばちゃんのことをおかみさんだといっているが、当時さくらのお母さんがおかみさんだったはず??
30年前ならまだ、さくらのお母さんは生きていてたぶん店番してた。また、寅のお兄さんのことは覚えていないのか?

最後に雅子先生団子を買って帰ろうとする
綾「ありがとう。お嬢ちゃん坊ちゃんも。あら、坊ちゃんじゃ失礼よね、お名前は?
『お嬢ちゃん』の名前も聴いてやってね綾さん(^^;)
寅「…とらじろう、でと無声音で言う(^^;)。
その言い方なあ…、童心に戻ってしまったんだね。
綾「は?」と聞き取れない
寅「…とらじろうで」ともう一度。ひょんと首を伸ばして可愛く言う。

            
    とらじろうです。
            

寅「……てれてれ顔
綾「寅次郎さん、お暇な時には家にも遊びにいらしてくださいね。この娘が学校へ行った後は私一人ぼ
  っちで、まァ、淋しくって淋しくって困ってるんですの。
そいじゃあ、みなさん、ご機嫌よう
雅子「さようなら
寅「お送ります!寅ニコニコ。さくらに「お母さんなら応援する」と許可済み!
出て行く綾と雅子について、寅、フワフワと出て行く。
果然としている一同。
さくら、目がうつろ…。まだショックから立ち直っていない…。
あ〜…おそらくさくらの人生最大の失言。


                      
さくら生涯最大の失言…
              

おばちゃん「
さくらちゃん、えらいこと言っちゃったね、寅ちゃんに
さくら「だって……
社長「あ、そうだ博物館に行かなきゃ、文化の日文化の日と、いち早く逃げ出す杜長。
さくら「、参ったなぁ…、フゥ……
ほんと、参った参った…(^^;)


題経寺・境内


御前様に退院の挨拶を終えて帰る綾さんたち後を寅がついていく。
綾「寅さぁ〜ん
寅「はいはい
御前様、「」と言う声を聞いて、ドキリ!

参道を歩いている短い間にもう「寅さん」という呼び名になっている。綾さんって結構適応が早いみたいだ。
               




D【柳生家にお呼ばれされた寅の回想アリア】

とらや 茶の間

おいちゃん「まあ一種の政略結婚だろうなァ、破産寸前の柳生家を助けるために
     あのお母さんは戦争成金と結婚させられんだから

博「で、その人が柳生先生のお父さんなんですね
おいちゃん「そういう訳さ、…ありゃ確かあの娘さんが生まれてすぐ病気になって、そのまま離婚させられ
      たんじゃないかなあ

博「不幸せな人なんですねえ
おいちゃん「昔から言うだろう美人薄命って
社長「しかしなな、寅さんがポーとなるのが分かるよ。その昔ー俺も胸をこがしたもんだよ、さくらちゃん
 おっ、告白 ( ̄◇ ̄)

さくら「柳生先生のお母さんに…?
社長「あの人がね、スラッとしたセーラー服姿で、手にヴアィオリンケースを持って
  歩いていく姿を工場の窓から眺めながら、どんだけ胸をときめかしたことか
ほお〜〜(^^)
おばちゃん「プッ!!おばちゃんに結構うけている(^^)
社長「職工だったからね、当時はさ、
さくら「うん
社長「チキショウ!オレも一生懸命働いて、出世したその暁にはあんな人を嫁さんに
貰うんだと、何べん心に言い聞かした事か!

さくら「へえ
おいちゃん「その努力の甲斐があって大会杜の杜長になったじゃねえか一本〜!(^^)/
一同「ハハハ



寅が機嫌よく帰ってくる

寅、幸せそうな表情でニコニコしている。
おばちゃん「ご飯食べちゃったよ
寅「あ、いいよ、いいよ、オレ済ましてきたから
おばちゃん「あ、ま、お上がりよ
博「一杯やったんですか
寅「そう、フランスのワインを、少々
博「フランス…?.
よくよく聞いてみると、寅は柳生綾さんの家で、なんと夕飯をご馳走になっていたのだ。
さくら... 唖然 and ガックリ ( ̄0 ̄;)
おいちゃん「はー〜…まさかお前失礼な食い方したんじゃねえだろうな〜
寅「と、いうと?
おばちゃん「グチャグチャ音たてたり、こぼしたり、箸でお芋を突っついてワーッと口の中に放り込んだり
こらこら、その食べ方はついこの前おばちゃんがしてたやろが ゞ( ̄∇ ̄;)
寅「フフフフフ…おばちゃん、あなた想像が貧しいねえ〜、自分の家で絶えず
 お芋を食してるからと言って、世間の人みんなが芋を食ってると思ったらあなた違いですよ

おばちゃん「悪かったね
博「じゃ。どんな食事だったんですか?
寅、坐り直し、思い返すように、 

寅のアリアが始まる…

寅「まア、例えば外国映画に出て来るような机と椅子のある食堂だなあ〜こっちの窓際には、大きな花瓶があって、
 そこに花がいっぱいだよ、
こっちの壁にはキリストとその弟子がご飯を食べてる、
 知ってるかあの絵、『最後の晩酌
…これで終りだと言っているんだよ。うん (^^;)

               
晩酌!
           


博「最後の晩餐とおいちゃんにそっと言う。

二人は静かに手を合わして口の中でなんかボソ、ボソ、ボソ、ボソ、言ってたなア…、(^^;)
そして、アーメン、
とりあえず感心する一同
寅「白身の焼魚少々、上等なお吸物、酢の物に香の物、案外と質素だぞ、さくら
さくら「そおお?
寅「ただし、器が違う、おばちゃんちみたい夜店で買って来た五枚百円の瀬戸物とはワケが違う、
めちゃ安!おばちゃん餌食、ブスッ…
うん、これは時代物のいい〜器だから、その底のほうにご飯がほんの少し、ねっ!
白魚のような指でそのお茶碗を持ってさ、右手に象牙の箸だよ、
それをこうやっていただくの、ほっ…って、
いやだったってこの箸がここにンとあたるでしょう、
チンチロリ〜ン
おちょぼ口のを前歯でたくあんをポリポリポリポリ…
チンチロリ〜〜ン
ポリポリポリポリ…
秋の虫が泣くようだもの…う〜〜〜ん(落語『たらちね』からの借用だ

聴き入っている一同。
うっとりと話を続げる寅。
ショパン夜想曲作品9-2変ホ長調がゆったりと流れる

寅「それで食事が終わる。
食後の果物。西洋音楽を聞いて、お茶の時間
やがて僕は帰らなきゃならない、立ちあがって挨拶する。
『あら、寅さんもうお帰り?』

『はい、家で、さくら達が案じておりますから』
『そう、でも寅さんに来ていただいて、
ほんとうに楽しいお夕食でしたわ。
ねえ、雅子』
『ほんとうね、お母さま』
『それでは、おやすみなさい』『寅さん、また、きっと来てくださいね
娘がいない時の私はほんとうに一人きりで寂しいんですもの』『分かっています』

親子に送られて表に出る。</