バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第10作 男はつらいよ

1972年12月29日封切り









6月28日『松村達雄おいちゃん』名場面集

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  運命の亀戸天神での告白                 シリーズ初の得恋的失恋



第8作「寅次郎恋歌」で全力疾走を見せた山田監督は、第9作「柴又慕情」で大スター吉永小百合を起用することによって
その加速度を緩めることなくここまでやってきた。そして遂にこの第10作で寅の恋は新たな方向を向きはじめる。
つまり、マドンナに「一緒に暮らしてもいい」と言われるに至るのである。それもあの美しい!八千草薫さんに!
こうなるとその加速度は緩まるはずもない。

初期の寅の無様なふられ方からすると、天と地の差だ。ある意味で得恋という「禁じ手」を使ったこの作品は、
それゆえにシリーズ屈指の名場面を作り上げることにもなる。そして皮肉にも、あんなに結婚願望がある寅が、
実はギリギリでは結婚というものから逃げていることが露出してしまう最初の作品でもある。
つまり、寅にとって『得恋』することは、すなわち『失恋』にそのまま繋がってしまう、という永遠の悲しみが、
はからずも露出したとも言える。

このあと、「寅次郎忘れな草」「寅次郎相合い傘」「寅次郎ハイビスカスの花」のリリーを初め、
「寅次郎夕焼け小焼け」のぼたん、「浪花の恋の寅次郎」のふみさん、「寅次郎あじさいの恋」のかがりさん、
「口笛を吹く寅次郎」の朋子さん、「知床慕情」のりん子さん、と本気で寅を男性として愛する女性が登場してくる。

しかし、リリーは別にしてもこの作品のお千代さんほどはっきりと面と向かって本人に、そしてとらやの面々に
自分の心を告白した人はいない。なんて潔い人なんだろう。一見おっとりして引っ込み思案にみえるが、
お千代さんは自分の気持ちをはっきり と相手に伝える強さを持っている。全48作中でもリリーに匹敵するくらいの
魅力あるマドンナだ。『千代のテーマ』も美しい曲だ。これも『リリーのテーマ』や『歌子のテーマ』に匹敵する名曲!

 あの運命の冬の亀戸天神でお千代さんが寅に自分の気持ちを告げた時、
男はつらいよの次のステージへの新しい扉が大きく開かれたのだ。
 そして寅を愛するその気持ちは第11作「忘れな草」のリリーへと受け継がれていくのである。
やはりこの第10作は「珠玉の名作」だ。
 
 それにしても八千草さんは美しい。もう文句なく美しい。後に山田太一さんの「岸辺のアルバム」「シャツの店」などでも
輝いていたが、この「寅次郎夢枕」でも清楚な美しさが光っていた。





お千代さんが語る寅

寅の幼い頃をよく知っていて、寅の気質のある側面を理解していた幼馴染のお千代さんは、その言葉もとても印象的だった。


千代「そんなことないわよ、本当に助かってるのよ。照れ屋なのよ、
   あなたのお兄さんは。小さい時からそうだったわ。人が見てるといじめたり、
   悪口を言ったりするけど、二人っきりになるととっても親切よ。
   さくらちゃんだってそうでしょ」


寅「よくおまえたちからかわれて泣いて帰ってきたじゃねえか!へへへハハッハ!」
千代「そのたびに、寅ちゃん棒切れ持って飛び出してったのよね」


千代「私ね、寅ちゃんと一緒にいるとなんだか気持ちがホッとするの。
   寅ちゃんと話をしてると、ああ、私は生きているんだなぁーって、
   そんな楽しい気持ちになるの。
   寅ちゃんとなら一緒に暮らしてもいいって、今、フッとそう思ったんだけど…」



             



リリーも第15作「相合い傘」でさくらたちの質問に対して「いいわよ、私のような女でよかったら」と言い、
「お兄ちゃんと結婚してもいいってこと?」念を押すさくらに対して凄く真面目な表情で「そう」と話す。
これもまぎれもないリリーの愛の告白と結婚への同意だが、やはり、その時は寅は不在であり、
寅に面と向かって告白はしていない。


第25作「ハイビスカスの花」でも沖縄の下宿先で、リリーは、寅に告白めいた言葉を言っているが、
寅がすぐ分かるくらいにはっきりは言い切っていない。だから全48作中、結婚をしたいという真剣な
自分の気持ちを寅にそのままストレートに伝えたのはこの第10作の千代さんを置いて他にはない。
この真っ正直な気持ちが私は大好きだ。

寅は、愚かで堪え性のない人間だが、人の心を優しくする何かを持っているようだ。
そのような数々の人々のそのような言葉を聞くにつけ、幼少期や少年期の寅の人格形成に
大きく関わったであろうさくらのお母さんの人間性をいつも想像している。このことはあまり
誰も言わないが、寅のあの優しさは、さくらとのやり取りの中で育っていったということもあるが、
それよりもっと前、彼の幼少期が最も大きく影響しているのは間違いないのだから。



優しさの背後に潜むエゴ


この一連のシーンの考察で、巷では、『結局寅は、こんなダメな自分が一緒になっても、千代さんを
幸せにしてやれないことを、うすうす知っているから、敵前逃亡したのだ。』という意見があるが、
それはたった一面の真理でしかすぎず、もう一面では、この寅の行為は、寅の強烈なエゴイズムの
表れだといえる。

どんなにくだらないと思われている人間でも、一人の人を愛し、人生を共にすることは出来る。そもそも、
どんな人も大して立派でなんかない。みんな欠点だらけで、その日常はくだらないことばかり考えている。
寅は私に言わせれば、そのへんのお兄ちゃんたちより無欲で心優しい人である。

つまり、結婚という行為は「資格」や「人格」が必要なのではなく「覚悟」や「決意」が必要なのであろう。
寅の恋愛は、純粋で濁りが無いが、しかし、それは、あくまでも相手に憧れて、相手のためになることをして
あげているうちだけが楽しいのであり、そこから発展する「結婚」という、相手と共にリアルな日常とその背後に
ある複雑な人生を見つめながら何十年も歩むような行為はできないのである。
いや、愛する人のそんなリアルな日常を寅は知りたくないのだ、と言ってもいいのかもしれない。
良い悪いの問題でも人格の問題でもない。そういう寅という人間がいるということだ。それ以上でもそれ以下でもない。

第10作以降、自分さえその気になれば、結婚はできたはずだ。しかしそれ以降も結局寅は「夢枕」同様またまた
『逃げる』のである。この寅の気質はこの後も、数々のマドンナに愛されながらも変わることなく、第48作「紅の花」
ラスト、リリーからの手紙の内容で分かるように最後の最後まで引きずっていくことになる。
渥美清さんの言葉を借りれば、「結局、寅はてめえが一番かわいいんでしょうね」ということにもなる。


しかし、皮肉にも、誰のためでもなく、ひょうひょうと生き、その時その時の出会いの中で相手に愛されながら、
短い愛情を花開かせていった車寅次郎を、多くの国民は大いに支持をし、『寅さん』はリアルでヤクザなフーテンから
愉快で人情味のあるヒーローとして完成されていくのである。

その萌芽が先日書いた第8作「寅次郎恋歌」であり、
第9作「柴又慕情」でさらにその色は濃くなり、この第10作「夢枕」で遂に完全に変身したのである。
もちろん寅次郎の恋愛とは別の次元で、さくらとの不変の兄妹愛が全編を通して底に流れていて、この長い長い物語を
土台で完璧に支えていたのは言うまでもない。


あの運命の冬の亀戸天神でお千代さんが寅に自分の気持ちを目を見つめながら告げた時、またもや、早くも
男はつらいよの次のステージへの新しい扉が大きく開かれたのだ。そして寅を愛するその気持ちは第11作「忘れな草」の
リリーへと受け継がれていくのである。



それはそうと、この作品の最初の方で「さっちゃん」という女性が文金高島田に白無垢の花嫁姿でとらやに
挨拶に来るが、この花嫁さんは、なんと佐藤蛾次郎さんの本当の奥さんである。当時同棲生活をしていた
蛾次郎さんを山田監督が籍を入れることを勧め、そしてこの第10作に奥さんを花嫁さん役で出演させ、
撮影直後に、蛾次郎さんに衣裳部屋へ行かせ、紋付き袴を着させて、みんなで記念撮影をした。
という美しいエピソードがある。蛾次郎さんは「僕の人生の中で一番の思い出だ」と何かに書いていた。
なんとも山田監督らしい優しさがうかがわれる話だ。
 
 また、この作品には田中絹代さんが甲州の旧家の奥さん役で少し出てくるが、静かな物腰の奥で
物凄い存在感を醸し出していた。また岡倉助教授を演じていた米倉斉加年さんはキャラの立ちかたが
尋常じゃなかった。好演であるし怪演でもあった。(^^;)
 
 



今回も夢から始まる。




セピアの画面。



昭和初期のカフェ。


蓄音機から『君恋し』が流れている。


君恋し/二村定一  作詞時雨音羽 作曲佐々紅華  (昭和4年)


♪『宵闇〜迫れば〜、悩みは〜果て無し〜…←この歌いいなあ。大好きです。



作詞者の時雨音羽さんは宵闇迫る頃、神田のカフェーで慣れない新人女給の
結びつけない帯がずれて体をくねらせるのを見て歌のヒントを得たという。
さらに、芸者の鮮やかな帯の臙脂の色が憂愁の詩のイメージとなったということらしい。

《君恋し》はレコード会社の企画・製作のヒット第一号。日本情緒とジャズをたくみに
融合させた佐々紅華の曲想もよかった。

レコードは昭和四年一月発売。もともと二村定一さんは、浅草オペラの出身の
テナー歌手である。大正後期からでジャズソングを吹込み、昭和三年ビクター十一月新譜で
《青空》《アラビアの唄》がヒットすると、ジャズソングを本格的に歌うようになった。
翌年の昭和4年《君恋し》で人気は絶頂となった。この歌は、昭和の悲劇を暗示させ
る歌でもあったように思う。


後に戦後フランク永井さんがリバイバルとして歌いもう一度全国的な大ヒットとなる。





吉田義夫扮するヤクザの親分に無理やり酒を飲まされようとする女給のさくら



さくら、なかなか女給姿似合っていて綺麗!



父親のことで義理があるので邪険に出来ない。

書生の博、後ろから止めに入る。




博「
やめろ!


親分や子分博を殴る蹴る。

親分がステッキで博を殴り続ける




その時、その手を掴む男が!


親分「
あ痛!くっ、誰だ!?


親分「おお、てめえ!マカオの寅


女給たち…「
マカオの寅…!あの人が


寅「
親分さん…やっとお会いしましたね。
 今夜私の手で地獄へ行ってもらいますよ



親分「
バラセ!


親分、そっと胸からピストルを取り出そうとする。


それより早く寅のピストルが速く、『
バーン!!


女給たち「
きゃー!!

親分倒れる。

子分たち逃げ帰る。


ピストルの銃口を
ふーっと吹く寅。



               



その時パッとドアが開いて、刑事が入ってくる。


刑事「
マカオの寅!御用だ!

寅、ピストルを刑事に向ける。


刑事「
オレだ!


寅、ハッとしてピストルを下ろす。



寅「
旦那、お待ちしておりました…とピストルを渡す。


刑事「
お上にも慈悲はあるぞ


寅「
ありがとうございます


寅「
書生さん


博「
ハイ


寅「
一生懸命勉強してそこにいる人を必ず幸せにして下さいよ




トロイメライが流れる。





さくら「
せめて、お名前だけでも聞かせて下さい





               




寅「
江戸川は葛飾柴又の川っぷち、
 題経寺にあるお父っつぁんの
 墓だけは参ってくれよ…




霧笛が『ボーッ』と鳴る。



刑事と一緒に店を出て、去っていく寅。




さくら追いかけながら

さくらお兄ちゃん?
 やっぱりお兄ちゃんだわ!
 お兄ちゃん!


と泣き崩れる。




寅、刑事に
旦那、マカオの寅もひとの子でございます


刑事うなずく。

霧笛がまた鳴る。『ボーッ』


源ちゃん車引きの役で店の前にいる。







長野県 塩尻 早朝の駅

中央本線
  日出塩駅


夢から覚めて…朝



小さな駅(日出塩駅)の待合室にいる寅。


寅「あー、夢か…

とあくびをしながら外に出て、柿をひとつ枝からもいでかじる。


寅「
プァーッ!!と吐き、眼をパチパチ。


寅「
カーッ!!渋い!プア〜…

  

                      




タイトル 



はつらいよ寅次郎夢枕』 赤と黄の文字 バックは江戸川





                          






江戸川土手を歩く寅


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。

   右に行きましても左に行きましてもとかく
   土地土地の御ア兄さん御ア姐さんに
   御厄介かけがちなる若造です。」

↑今回は長めの口上が入っている。





  ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前
喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪



   1級河川 『江戸川』 EDOGAWA 建設省のプレート


   
今回のミニコントは乳母車を土手から誤って転がしてしまう。
  乳母車は猛スピードで土手にいるカップルの中にぶつかってしまう。
  それを追いかけていたお母さんもスッテンと転がってしまう。
  赤ちゃんはお父さんが持ってるので無事。(^^;)





                    







題経寺山門の前に立つ寅


久しぶりなので懐かしい気持ちでいっぱい。

境内で子供達がお面を被って遊んでいる。



 お母さんが子供を叱る。
バカみたいに遊んでばかりいると寅さんみたいになっちゃうんだよ!

 寅、ハッとして、不快指数100パーセント。ブスー。

 ふと門の壁を見ると、チョークでトラのバカと、落書きしてある。


 寅、ますますむかついて不快指数200パーセント



                          




 久しぶりに帰ってきていきなりのダブルパンチはさすがに可哀想と思ってしまいました。(^^;)


 源ちゃん、寅のその姿見て、必死で落書きを消す。






とらや 店




店先に花嫁さんが挨拶にやって来る。


                     




おばちゃん「さくらちゃん、さくらちゃん、お嫁さんだよ!

さくら、奥から出てきて

さくら「まあ!さっちゃん!綺麗ねえ、おめでとう

おいちゃん「こうして、すかしているところを見ると、
    とてもおてんばのさっちゃんとは思えないね。フフフ…


おばちゃん「あー、笑っちゃだめ、笑っちゃだめ。笑うとお化粧崩れるよ


さくら「さっちゃん、幸せにネ

さっちゃん「ありがとう

おいちゃん「ほんとにおめでとうございました。

おばちゃん「ほんとにいいお天気でよかったですね


今回はの冷蔵庫は森永なんだけどなぜか模様が半分隠されていて
それとなく
スポンサー無しを暗示。
でも明らかに森永だと分かるところが可笑しい(^^;)



冷蔵庫の上には大きな将棋の駒の置物、煎餅のビン2つ。
ピンク電話。古いレジスタ。



一番上にも書いたが
この花嫁さんは、なんと源ちゃんこと佐藤蛾次郎さんの本当の
奥さんである。当時お金が無くて結婚式をあげれないので
同棲生活をしていた蛾次郎さんを山田監督が籍を入れることを勧め、
そしてこの第10作に奥さんを花嫁さん役で出演させ、撮影直後に、
蛾次郎さんに衣裳部屋へ行かせ、紋付き袴を着させて、みんなで
記念撮影をしたのだ。カメラマンはたまたま近くのスタジオで仕事を
していた、篠山紀信さんを渥美さんがお願いしてくれて撮りにきて
くれたくれたということである。

蛾次郎さんは「僕の人生の中で一番の思い出だ」と何かに書いていた。
今でもその写真は蛾次郎さんの家宝になっていることだろう






みんな店の中に戻って

おいちゃん「ほんとにあのお茶目な娘がね、ハハハ!

さくら「どうしたの?

おいちゃん「社長の奴、あの娘に惚れてたんだよ。

←ちょっと無理がある話だが、ありえないこともない(^^;)


さくら「うそーっ!だよね(^^;)


おいちゃん「ほんとだとも!いつかの晩、
    酒飲みながらね、
    あーオレがもう20年も若けりゃナーって
    涙ぐんでやがんだ。あの面してさ、ハハハハ!



さくらも笑いながら「悪いわよ!おいちゃん

バンと手でテーブルを叩いた時に

なんと割り箸が空中1回転!!。
←倍賞さんの荒業発見(^^;)



 そこへ不快指数200パーセントの寅が帰ってくる。



おいちゃん「あ!!

さくら「あ!!

寅「あ!!

おばちゃん「あ!!


寅、スッと行ってしまう。

 おばちゃん「知らん顔して、知らん顔





 寅、朝日印刷の裏通用口に行って独り言


実はここは、大和家と高木屋の間の細い通路

この細い通路の向こうに高木屋さんの従業員などの休憩室がある。
山田組の人たちもここで休憩したり待ったりしていた。


 寅「すぐ戻ると思ってるんだろう。そうは問屋がおろさねえぞ


朝日印刷KK 通用口 

従業員募集住み込み可 
 神明会の赤ちょうちん  
大和屋のてんぷら看板

柴又7−4  (高木屋の住所)




    


    


    




さくらたち、店の方見て待っている。



おいちゃん「さくら、まだか?ずいぶん遅いじゃねえか…


中村はやと君、マイ ヘルメット を持って遊んでいる。



タコ社長ふっとんで来て


社長「たいへんだよ!寅さんがオレの工場で工員達を捕まえてね、
  物凄い剣幕で『やい!てめえら!オレのいない時には
  いつも悪口ばっかり言ってんだろう!』って、こうよ








工場の中


いつものように工場のロケは大船撮影所から
歩いて5分の距離にある
三誠印刷株式会社


博、働きながら


博「悪口なんか言うもんですか。
 さくらいつだって兄さんのこと心配してますよ


寅「俺はこの眼で見たんだよ!お前の女房はな、
 大口開いてゲタゲタゲタゲタ笑ってたよ!


博「それじゃあなんですか?兄さんは
 悪口を言う時しか笑わないんですか?


寅「おまえ、理屈を言って言い逃れしようってのか?
 よし!オレは裏口から行ってな、この目で確かめてやるよ


寅「どけ、どけ!と言いながらとらやの裏庭に向かう。

タコ社長「来た!


寅身をかがめながら、忍者ハットリ君のように
ツツツツと手を広げながら裏庭にしゃがむ




さくら、気づいておいちゃんに指を差す。

おいちゃん窓の外を見てびっくらこいて、腰を抜かす。



寅の帽子だけ見えているところが間が抜けている。(^^;)



おいちゃん「褒めろ…褒めろ…


社長「褒めろ!?←でかい声で。 ゞ( ̄∇ ̄;)



おばちゃん「シッ!



                          



おいちゃん「しかしなんだなあ社長、いい奴だねー、寅は
超わざとらしい(−−;)


社長「あー、ほんとだ ほんとだ、
   あんないい奴は見たことないなー。

  なあ、おばちゃん!
とおばちゃんに振る(^^;)

おばちゃん、ドキッとして

おばちゃん「うん、そうだね、私ねえ昔っからそう思っていたの。
    
ねえ、さくらちゃん!!
とさくらに振る(^^;)

さくら、冷静に

さくら「そうねえ…おにいちゃんは
   ああ見えても気持ちが優しいもんね


さくらだけ、ちょっと真面目に言っている。


おいちゃん、ポンと手を打って


おいちゃん「そこだよ、そこ、優しいんだよ寅って奴は


寅、うなだれて聞いている。

信じるか普通??
 ゞ( ̄∇ ̄;)


社長「全くだなあ…、あんないい奴見たことないなあ…

さっきと全く同じ発言だよ社長(−−)




おばちゃん「私も昔からそう思ってたんだよ

おばちゃんもさっきと同じだってば(−−)





おいちゃん「オレはあいつのこと考えるだけで
    涙ポロポロ出ちまうんだよ
そこまで言うか〜。



社長「出る出る!ハンカチ出して泣くふり。


おいちゃん「その、なんだ、つまりな…さくら、
    
何かねえか何か…え?



さくら「行っちゃったわ…


おばちゃん「怒っちゃったんじゃないかしら?


社長「そういえば今のやり取りは
  なんとなく
インチキ臭かったよな…


完全にインチキ臭いよ(−−)



おいちゃん「何言ってやがんだい。
   おまえの
芝居が下手だからだよ!



   なんだあの『出る出る』って、
   
糞してるわけじゃあるまいし


ひどいたとえだねえ〜おいちゃんよ ゞ( ̄∇ ̄;)



おばちゃん「今のはちょっとねえ…


さくら「大丈夫よ、おいちゃんたちの
  優しい気持ちはちゃんと通じてるわよ。
  それがわかんない、お兄ちゃんじゃないはずよ


↑さくらいいこと言うねえ。さくらのこういう発言を
聞くとさくらはとらやの
陰の大黒柱だな、とつくづく思う。


おいちゃん「それを聞かせたかったなあー
と言いつつまたひっくり返る。




寅が博に付き添われて戻ってきたのである。



寅「博、本当のこと言うと、オレは穴でも
あったら入りてえくらいなんだよ…



さくら「お兄ちゃん

寅「すまねえ、さくら。俺は心のひねくれた男だよ。
  あんな心の優しい人たちのことを疑ってたんだからなあ…



寅ふらふらになって工員におんぶされてとらやに入ってくる。



寅、おんぶされながら


寅「労働者諸君…面倒かけるねえ…









とらやの夕食。 鍋料理


寅がが反省の色濃い顔をして、みんなと座っている。


さくらのテーマが流れる。



寅「オレは心の汚れた人間よ。心のゆがんだ人間だよ…

さくら「そんなことないってば、
  お兄ちゃんは本当に心の優しい人なんだから


博「そうですよ

寅「はぁ〜、そんなこと言われるとオレぁ穴めど
 ひとつもありゃくぐりこみてえ気持ちだぜ…


博「まあ一杯いきましょう。

おばちゃん「とらちゃん、お餅

寅「ありがとう。そこのみどりを…

さくら「え?

寅「みどりを取ってくれ

博、気づいてむらさきとさくらの耳元で言う。

普通に醤油と言えばいいのに…と
つい思って今います。(^^;)


さくら、醤油を取ってあげる。



それにしても、もう初冬だというのに、店先も、障子も、
仏間も開けっ放しで、ストーブもなくみんな寒くないのかな?
まあ、いつものことなんですが(^^;)



御前様、社長と一緒にやって来る。



御前様「ごめん

一同「あ、御前様

御前様「あー、みんなそろって晩餐か、あー、結構だねえ

寅「すっかりご無沙汰いたしまして

御前様「実は今、社長さんに聞いたんだが
   お前が
改悛したそうだな

改悛:自分の犯した罪を反省し、
    悔い改め、真面目になること。

寅「ひやーと照れる。

御前様「
それはよかった。それを聞いて
   わしも一言褒めておかなきゃいかんと思ってな。


おいちゃん「
それで、わざわざ

みんなで「
ありがとうございます

おいちゃん「
この通りみんな仲良くやっております。
    どうかご安心のほどを


御前様「
さくらさんもこれでひと安心だね

さくら「
はい、ありがとうございます



社長「
あとはこれで、
 お嫁さんですな


←おいおい、いきなり過ぎるよ社長 ゞ( ̄∇ ̄;)


みんな一斉に寅の方を見る。

寅、ハッとして、もじもじ…



おばちゃん「
ほんとうだ…

←おばちゃんまでいきなりそんなこと…
もうちょっと様子を見たほうが…(^^;)



                  



寅「いや、とんでもない。地道な暮らしも立たないうちに
 そんな浮ついたことを。なぁ、なぁ、…なぁ、
博君




博「
いえ、そんなことありませんよ。
真面目な結婚は真面目な生活に繋がりますよ

←博までそんなこと…。まだ早いって ヽ(´〜`;)


みんなうなずく。



おいちゃん「
若い頃、さんざん道楽をやらかした人間に限って
    所帯を持ったら真面目な働きもんになるんだ


ちょっと今反省してるだけだってば ヾ(-_-;)

おばちゃん「
おまえさんが、いい見本だろ

おいちゃん「
ハハハ、人間、奇態なもんでございますね。ハハハ

寅「
いや、ありがとう…。
 みなさんがそう言ってくださるんだったら、
 僕もこの際、恥ずかしながら
踏み切ってみるか
…」


さくら「
でもお兄ちゃんはいろいろ好みがあるし

さくらまで本気になっちゃった(−−)

寅「
そんなことあるもんか。オレだって
 今更そんな贅沢言えた身分じゃないってことは
 十分によく知っているんだ。
 おばちゃんやさくらが見つけてくれた人なら
 たとえどんな人だって文句言わないよ。
 誰でも連れてらっしゃい



博、なるほどと、うなづく。

御前様「
いやー、よかったよかった。
  じゃ、私も及ばずながら力になってみよう。
  社長さん、あんたも一肌脱いでやってください


社長「
もうね、寅さんのためだったら、
一肌も二肌も素っ裸になっちゃいますよ。
明日からさっそく嫁さん探しを!
こりゃもう止まらんわ┐(´-`)┌

御前様「
お願いしますよ

御前様「
竜造さん

おいちゃん「
はい


御前様「
ひとが褒めあうということは、
  これぁ、実に良いことだねえ。
  お互いに褒めあわなきゃいけない。
  褒めあってこそ人間は
  少しづつ向上していくんじゃないかな



おいちゃん「
ありがたいお言葉でございます

一同深々と礼。

御前様「
それでは、私はこれで

一同礼

おばちゃん「
本当にわざわざありがとうございました」と見送っていく。



博「
本当だなあ…。人間は褒めあわなきゃいけないか…。
 さすが御前様いいこと言うな



寅、何度もうなずく。


題経寺の鐘『ゴ〜ン』


寅「
アー鐘の音か…

『ゴ〜ン』


寅「
源ちゃんが祈りを込めて撞いているんでしょうね…




題経寺鐘撞き場
源ちゃん、つり鐘の撞く部分にトラのバカ
寅が泣いている似顔絵を貼り付け、

それに向かって鐘を撞いている。

源ちゃんにとって改悛した寅は
面白くないのかもしれない。
自分ひとりだけ置いてきぼりを
食った気分なのかも…




翌朝 とらやの2階


寅起きてあくび。上からコウモリ傘とか雑誌が
ドサドサっと落ちてくるギャグ
をかました後下に降りていく。

寅「
おばちゃん、おはよ。おいちゃんはどうした?
朝っぱらからパチンコか?



おばちゃん「
何言ってんだよ、あんたの縁談で朝から走り回ってんだよ。
      今日はね、さくらちゃんも博さんも
      社長さんも手分けしてお嫁さん探しだよ


寅「
しかしそんなにたくさん、みんなに口かけちゃってよ
 誰かに罪作りなことにならねえかい?
ノリノリ(^^;)

おばちゃん「
そうなったら何とかするから大丈夫だよ

寅「
じゃあ、オレどうしたらいいのかなぁ…

おばちゃん「
楽しみに待ってればいいよ

寅「
楽しみにか…、じゃあ待ってるか…



夕方
   題経寺の鐘『ゴ〜ン』

とらやの2階で口笛を吹きながら
背広にブラッシングする寅


博「
ただいま

おばちゃん「
あ、ごくろうさん。ご飯食べていきなよ

博上がって、みんなに

博「
どうでした?縁談の方は?

おいちゃん「
柴又界隈はダメだな…。
   寅の名前を出すと
   みんなだめになっちゃうんだよ。
なあ、さくら


さくら少しうなづきながらお湯を注いでいる。


博「
やっぱりねえ…。うちの工員にもあたってみたんだけど
 誰も兄さんの親戚にはなりたくないらしいんですよ

おいちゃん「
身から出たびだな…いやまったくその通り(−−)

博「
社長の方はどうでした?

社長「
ひでー目にあったよ。
  『今日は娘さんの縁談の話できたんですよ』って
  言ったらね。のっけからね、
  『
まさか寅さんじゃないでしょうね』って
  こう言いやがるんだ。
  そうじゃないとも言えないからさ、『その寅さんですよ』って
  言ったらね、聞いていた娘が泣き出しやがって、
  その親父もカンカンになって怒りやがって、
  『てめえところにはもう印刷なんか頼まねえ!』こう言うんだよ。
  オレはまあ、一件得意先無くしちゃったよ。



おいちゃん、社長に指で寅が
聞いていることを知らせる。


社長振り向くと寅が階段の
ところで座って聞いている。



社長「
あ、いけね…しくじっちゃった


寅、低い声で「
聞いてたよ…


一同気まずい空気が漂う。




電話「リ―ン、リーン」

おばちゃん、逃げるように、ドタバタ
必死で電話口へ。


おばちゃん「
はい、とらやでございます。
    はい、はい、ちょっとお待ちくださいまし



寅、ふてくされて大根の皮を
包丁で大げさにむく。




おばちゃん「
ちょっと、あんた!寅ちゃんの縁談らしいよ

おいちゃん、電話変わって、

おいちゃん「もしもし車でございます。
    あはーっ、先ほどはどうも。
    はい、いーえ、私どもの甥でございます。




                




寅、気になって電話のそばまで来て座る。


満男、おばちゃんにダッコされていたのだが、
するりと抜けてひとり遊び。


おいちゃん「
え?勤務先
    えーっと本人の勤務先は、
    つまりなんと言いますか…


寅、みんなに「
何かないか?嘘ついてどうする(^^;)

博「
セールス上手い上手い(^^;)

おいちゃん「
あ、あのセールスでございます

みんな少しほっとする、

おいちゃん「
はい、え?、仕事の内容

またみんなおろおろ…。

さくら満男の『
めばえ』の本タタタタタと指差して

さくら出版、出版!


寅「
本売ってる

おいちゃん「
本…、いえ、あの確か
   出版関係の方じゃなかったかと、
   はいはい、え?
学歴?…



みんな下を向いてしまう。

おいちゃん「
えー、柴又尋常小学校を卒業いたしまして、
    それから
葛飾商業を、ええ、こちらのほうは少し早め
    卒業いたしまして…



寅、引け目があるのでずっと下を向いている。


おいちゃん「
え?それからあと?いえいえ、
    もちろん
東大なんかじゃございません。
    
早稲田大学でも、慶應でもございません。

    そのー…なんと言うんですかね、
   私どもの
教育方針と申しますのが、
   そのう…
実力主義でございまして、はい、
   そうでございます。くだらない大学なんぞ出るよりも
   そのほうがよっぽっどと、そう思いまして早めに社会 
   に出しましてみっちり鍛えましたわけで



一同少し安堵。

寅は緊張でお膳に手を置いてソワソワ。


おいちゃん「
はい、え?趣味?えー…趣味の方は…?

寅、お猪口で酒飲むしぐさしておどける。

みんなハラハラ。


さくら「
旅行上手い上手い(^^)

寅「
旅行だと

おいちゃん「
旅行だといえ、旅行でございます。
    はい、当人旅行が何よりも好きで、
    年がら年中旅行しております。


みんなちょっと安心。


おいちゃん「
え??いやもうそれだけは
   頑丈そのものでして、
   えー
病気したことございません


↑第2作で胃痙攣起こして救急車で運ばれて入院している(^^;)
第14作で、かつて盲腸で入院したことが分かる。
第23作で、重い便秘で医者で薬をもらう。



寅「
決まってらーな!と、笑いながら
「いいよもう、キリがないから」
向こうに座って新聞を読むふり。



おいちゃん「
本人の性格はいたって
  大人しくまじめ一方、地道な人間

   ございまして、まあそんなわけで縁が
   遠かったのかもしれません。はい」


←地道な人間になってからまだたった1日…(^^;)



みんな、にこにこかなり安心してきている。



おいちゃん「
あ、肝心の本人の名前
   申し上げておりませんでした。
   ええ、はい、名前は
車寅次郎と申します。


      
あ、フーテンの寅?あ、御存知で、え?バカにするな?
  …いえ、バカになんてそんな…。もしもしもしもし

寅新聞で顔を隠して、ショックで硬直、仮死状態。


おいちゃん「
あ、切っちゃった。なんだろうね、まあ。
   なーに寅が
有名人だから、みんな知ってるんだよ


寅、目と新聞がくっ付いたまま硬直している。(^^;)


寅の持ってる新聞記事

東京新聞 ○○事件全員無罪 自白信用できぬ。

おいちゃん、お猪口飲む真似して

おいちゃん寅、一杯行こうか、行こう、な←おいちゃん優しいね。


さくら「
お兄ちゃん…


寅新聞に顔くっ付けたまま
ロボット歩きして階段を踏み外しながら
コキコキ2階へ上がっていく。




さくら、心配そう。



社長「
とにかくね、柴又で探すのは無理だよ。
  明日からさ、もうちょっと、この、足を伸ばしてね、

 千住
とかさ、立石とかさ、
 江戸川沿いにだな、それでもダメだったら千葉とか
 埼玉だとか
関東一円探しゃあね、
 ひとりやふたり
引っかかってくると思うんだよ。


と、手を広げる仕草をしたとき時、
危うく
さくらの顔に社長の手が当たりそうになる
のをさくらかろうじてよける。

←気をつけろよ危ないぞ、社長さん!


寅、階段を下りてきている。


さくら、寅に気づいて、社長に知らせようとする。
博、ずっと寅の方を見ている。

社長、博の目を見て気づく。



寅「
そんなにオレの嫁さんひっかけるのが
 面白ええか!タコ、

 てめえ手足が多いからかすみ網でも
 投網でも持って朝っぱらから町駆けずり
 回ったらどーだ!



さくら「
お兄ちゃん、やめて


寅「
うるせえ!

寅「
てめえらもそうでい!
 なんでい恩着せがましいこと言いやがって!
 人の一生いっぺんの大切なことをよ、
 てめえたちの
娯楽にして
 
ゲタゲタ楽しんでやがる!


さくら「
お兄ちゃん、そんな言い方ってないでしょ


寅「
うるせい!

社長「
ほんと、ほんとだよ!そりゃひどいよ

寅「
なんだタコてめえが文句言うセキあんのか!
 この野郎黙ってろい!


博「
兄さん、社長は今日、税務署に行く用ほっぽり出して
 一日中走り回っていたんですよ!



寅「
なんだい、偉そうに、税務署がどーした!
 朝っぱらからガタガタガタガタ働いてやがって、
この野郎税金納めるのは
国民の義務でしょ。
えっ!催促されねえうちにズーっと払え!このバカ!



寅が言うと変に新鮮だなあ〜(^^;)


社長、ムカッ!



おばちゃん「
あんた、よくそんなことが言えるねえ!


博「
払ったことがない人がそんなこと
 言っちゃいけませんよ
←博キツイ!


社長「
悔しかったらなあ、いっぺんくらい払ってみろ!


寅「
コノヤロー、向こうからいっぺんでも下さいって来たか!?

申告してないからだよ寅
(^^;)


社長「
非国民!


寅「
この野郎!!白菜くらいやがれ!!!

と社長の頭に
白菜直撃!!!←ひぇー!!超過激(@@;)/

社長「
白菜でやりやがったな!」                           



                          




バンバン掴み合い。

みんな止めに入る。

寅、カバンで殴ろうとする。

さくら、カバンを掴む。




おいちゃん「
出て行け!!

寅「
何!?

おいちゃん「
出てけって言ったんだ!!

寅「
おいちゃん、それ言ったらおしまいだぞ!!

おいちゃん「
おしまいだよ、この野郎!

寅、悔しくて「
聞いたか、さくら、
   あんちゃんこんなことを言われてんだぞ。
   オレがいってえ何悪いことをしたって言うんだよ。


↑確かに身から出た錆びなんだけど寅の気持ちも分かるなあ…。


これだけ人間がいる中でオレが
一番つらい思いしてんだ。悔しい思いしてんだ。そう思わねえか!?



さくら「
思うわよ…、だけどね、
  本当につらいのは、お兄ちゃんより
  おいちゃんたちのほうかもしれないのよ…


と泣き崩れる。
←これはさくら切ないね…

さくらの言葉に打たれて、じっとさくらを見つめる寅。
しかし、どう言っていいか分からない。





                          




カバンを持って店の方へ出て行く。


暗い店内で寅、「
そうだよな、さくら…、一番つれえのは…


と、さくらの切なくつらい気持ちが
ようやく分かる寅だった。


寅、出て行ってしまう。




さくら「
お兄ちゃん…



博「
お互いに褒めあわなきゃいけないって、
 きのう聞いたばかりなのになあ…




おばちゃん、わんわんチャルメラ泣きの号泣。


この場合、もちろん誰も悪くないのである。
そして誰もが深く傷ついている。
第10作のこの「見合い騒動」はなんとも見ていて
辛かった。特にさくらの悲しみが身にしみる。







晩秋の甲州路を寂しく歩く寅。

予告編では信濃路とあるが実際は甲州  


2013年12月18日の私や寅友人たちによる現地調査で
北杜市明野地区のロケ地がほぼ解明されました。



山梨県北杜市山梨県北杜市明野町三之蔵

ビバルディの「四季」の中の「秋」が流れている。

美しい甲斐駒ケ岳が遠くに見える風景の中、
とても孤独そうな背中。




                     

     




       2013年12月18日撮影

      






山が良く見えるときに私の友人である小寅さんが撮影した同じ場所とグーグルストリートビュー。

どちらも本編画像と山や丘がぴったり一致。

      








        





ビバルデイ 秋 第1楽章


浅尾  旧家の玄関先


とある大きな旧家の上がり口を借りて、
持ってきた昼ごはんを食べている寅。
お茶と漬物を出されている。

山梨県明野村でのロケだったらしい。

奥さん「
これからは寒くなる一方であなた方の商売も大変ですね

寅「
ええもう慣れていますから…。
あ、これは美味うございますね」ポリポリ漬物を食べる。


奥さん「
寅次郎さんとか言われましたな

寅「
へい

奥さん「
あなたのお仲間で為三郎という人を知っていますか?

寅「
為三郎…。あ、伊賀の為三郎ですか

↑私が生まれたのは伊賀上野なのでなぜか嬉しい(^^;)
育ったのは大阪だが…。



奥さん「
ええ


寅「
ええ、あいつでしたら、旅の行きずりに
 二、三度出会ったことがありますが、あいつが何かご迷惑を?





                          




奥さん「
いいえ、それどころか亡くなった舅のお気に入りでしてな、
  ずいぶん昔から時々寄ってくれてはいろいろと旅の話を
  賑やかに聞かせてくれたものです。
  私たち女はその話が面白うて、為三郎さんが来ると、
  うれしゅうて、うれしゅうて



寅「
あー、そうでしたか。そういえばどっかひょうきんな奴でしたね


奥さん、囲炉裏の灰をかき混ぜながら、

奥さん「
この夏、まだ暑い盛でしたがの。
  その為三郎さんがひょっこり見えて
  あなたのようにそこに腰を下ろしてお昼をつかいながら
  いつものように旅のよもやま話を聞かせてくれているうちに、
  急に具合が悪くなったとかでしばらく横にさせてくれと、
  おしゃいますからな、
  裏の座敷に床をとって休んでもらいましたが、
  そのまま寝込んでしまわれて、
  三日後にポックリと、それこそ言葉どおり、眠るようにあの世にな…。

  第一番に身内の方にと思うて、伊賀を名乗るを手立てに
  人を走らせましたが、結局分からずじまい…。
  この家で安らかに往生をとげられたのも仏の思し召しと思うて、
  形ばかりでしたが、私どもでお弔いをさせていただきました。
  なんにも手のかからん大人しいご病人でしたよ




 田中絹代さんのこの語りは静かな中にも、
 人生の深みを感じさせる名演技だった。
 間の取り方や、声も素晴らしかったがなによりも
 その物腰が、その人の有り方、姿かたち
 そのものが何かを語っていた。
 これはいったいどういうことなんだろう…。
 同じことを第17作「寅次郎夕焼け小焼け」の
 岡田嘉子さんにも強烈に感じた。


寅「



奥さん、奥の部屋から為三郎の形見を持って来て、


奥さん「
はい、これが形見です…

トランクかばん 帽子 ダボシャツ 青の腹巻 ← 寅の格好にそっくり

寅「



寅「
ご親切にしていただきまして、ありがとうございました。
 随分ご迷惑をおかけしたんでしょうねー…


奥さん「
もしお時間があればお仲間のために
  お線香を上げていただけますか?


寅、下を向きながらコックリ神妙にうなずく。




明野町 浅尾 の墓地(地図参照)

ビバルディの「四季」の中の「秋」第2楽章
が流れる中、お墓で手を合わせる寅。
向こうに晩秋の甲斐駒ケ岳が美しく見える。



甲斐駒ケ岳は第8作のラストにも映っている。




                  
夕日に映える甲斐駒ケ岳
           






                       




    



   
2013年12月18日撮影

   




奥さんに礼を言い、寂しい田舎道を襟を立てながら寒そうに歩いていく寅。

見送る奥さん。
夕暮れで、カラスが『カアー、カアー』と鳴いてうら悲しい。


この場面の田中絹代さんの背中もやっぱり凄い存在感だった。
本物の役者とはこういうものなのかもしれない。



   


   
2013年12月18日撮影

   




信州 塩尻 奈良井駅前 「かぎや旅館」


実際は「奈良井館」

ポーっと汽車の汽笛

しんみり、部屋で酒を飲んでいる寅
旅館の仲居たちが隣で騒いでいる。

谷よしの扮する仲居、寅の部屋に入ってくる。

仲居「
あー、何か御用?

寅「
酒だ。酒がねえや

仲居「
はい、ただいま

寅「
それと、となりがバカにうるせえんじゃねえか。
 少し静かにするように言ってくんねえか



仲居「
はい」と無造作にピシャッと襖を閉めて出て行く。


隣の部屋の声かすかに聞こえる。


隣部屋の仲居「
ちょっとあんた、本当に東京かい?東京のどこ?


寅、となりで仰向けになってなんとなく聞いている。

客「
オレか?オレの故郷はな、
東京は葛飾柴又
というとこよ


仲居「
シバマタ?

客「
そうよ。もう何年も帰らねえなあー、
 おいちゃんや、おばちゃんはどーしてるかなー


↑そういえば第9作でもこのパターンで、寅が歌子ちゃんたちを騙していた(^^;)


寅、ムカッとして、すぐさま隣の襖をバシッと開ける。

登と仲居3人が寅のほうを見て、驚いている。
←谷よしのさん。寅の酒の注文まだ調理場にしてないぞ!

登「あ!兄貴!!…聞いてたのかい!?」

寅「おう!聞いてたよ」

寅「
葛飾柴又の生まれだってねえ…。
そんじゃフーテンの寅という色男の御あ兄さんですか!フハハハ!!


登「
兄貴ィー!!

寅「
登ー!!

登「
どうしてたんだよ!?」

寅「
相変わらず地道な暮らしよ!ハハハ!

寅「
おい!パーッと酒持って来てくれ!どんどんやってくれ!




翌日 登と一緒に
明野町 浅尾地区
の田舎道を歩く寅

この田舎道は田中絹代さんと別れたあの石碑のある
道のたった50メートル横(*^▽^*)



   



     2013年12月18日撮影
   






   


   


ビバルディの「秋」 第3楽章



ラストで出てくる清水橋を実はこの時も渡る。


    


    
12月18日撮影
    



県道23号線 保坂路 道沿いの
大内 バス停留所」でじゃれあう二人。


    




     2013年12月18日 撮影

    



実に楽しそう。
犬が尻尾振って吼えながらずっとついて来る。
小さなバス停でふたり楽しそうに喋っている。



須玉町江草にある『唐土神社』



登と一緒に啖呵バイ

寅「
物の始まりが一ならば島の始まりが淡路島。
 泥棒の始まりが石川の五右衛門なら
 博打打の始まりは熊坂の長範!
 ねえ!兄さんは寄ってらっしゃいは吉原のカブ。
 産で死んだが三島のお千、そう、ハイ!
 四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる
 御茶ノ水、いきな姐ちゃんたちションベン!!


マンガ、雑誌を売っている。

中三時代4月号』『中三時代6月号』『月の友』などなど。
↑懐かしい〜!!昔こんな名前の雑誌ありました。中学生の時よく買った覚えがあるぞ!!
さすがに今はもうないかもね。?ひょっとしてまだあるかな?



                   





        2013年12月18日 撮影

       
       



早朝、「かぎや」宿で寝ている登。

目を覚ますと寅の置手紙←手紙の上に
もみじ3枚

ハイライトの空き箱



登。おまえと共にいつまでも楽しく旅を続けてぇが、
そんなことはおまえのためにならねえと思ったから
オレはひとりで行く。追いかけてなんか来るな。
お前も早く足を洗って地道に暮らせ。
このままじゃ末はろくなことにならねえからな。
お前ならまだ間に合うよ。では達者でな。  寅次郎  


↑手紙に書いてあった文章。 


実際の寅のナレーションはちょっと短く変えてある。
『楽しく』と『おまえならまだ間に合うよ。では達者でな』が省かれている。



やはり、伊賀の為三郎の最期を聞いたのが、
登との決別に繋がっていたのかもしれない。
登には自分や為三郎のような孤独な
人生をなんとしても歩ませたくなかったのだろう。



登、泣きながら外に出て「兄貴ィー!!」

このパターンは第5作「望郷篇」で、北海道の小樽近くの小沢駅前旅館で
登にきついことをし、無理やり別れる寅がいたが、その時のアレンジ版。



この第10作をもって登は登場しなくなる。
それよりずっと後の
第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」で
もう一度だけ登場するが、すでに彼はきちんと堅気に
なっていて、東北で『今川焼き屋』さんを営み、
所帯を持って、子供もいた。
登の奥さんに寅は「親分さん」と言われていた。





とらや 店先


とらやの前に軽トラックが止まっていて学生風の若者達が荷重を運んでいる。

御前様、源ちゃん連れて入ってきて

御前様「
いやー、どなたもご苦労さん。
  この度はうちの甥がお世話になります


おばちゃん「汚いところで申しわけございません」

御前様「
いやー、なんせ静かなところでないと
   勉強できんというのでなー、
   いやー、これは大変な書物ですなあ…



岡倉金之助助教授階段を下りてくる。


御前様「
金之助、部屋は気に入ったか?


岡倉先生「
はい…といいつつ、

山のように本を抱えてまた2階にヨタヨタ上がっていく。



                     



御前様「
学者と言うのはちょっと変わり者ですなあ…
   小さい頃から無口な奴でしたが…


手伝いの若者「
おばさん!コーラもらえます?と叫ぶ。

さくら、「
おばさんじゃないって
  言ってるでしょう!!もう!
と笑う。

御前様も笑って「
おばさんかーハハ…
←御前様も結構からかうんだなあ(^^)



源ちゃん「ヒヒヒヒ」と
おなじみの笑いでさくらを見て笑う。


さくら「源ちゃん!」と笑いながらはたきで頭をたたく。
↑笑っているけど過激なさくらでした。
さすが寅とは血続き。(^^;)

もっとも、さくらは当時、役柄としては
だいたい20代後半なので
「おばさん」呼ばわれはさすがにちょっときついかも(^^;)
ちなみに第32作「口笛を吹く寅次郎」でも高梁での
法事の際に姪っ子に「さくらおばさん」と言われて、
『またおばさんって言った!」と気にしていた。




裏庭で学生たち、今日における
マクスウェル理論の妥当性を議論している。

学生A「
マクスウェル理論は否定されたんだろう?
学生B「
そういう言い方は正確じゃないなあ
学生A「
どうして
学生C「
近似的に正しいということはさ、否定されたこととは違うのよ
学生D「
うん、乗り越えられたと、言うべきじゃないか。
   つまりさ、すでに普遍的な妥当性を持ち得ないということなんだよ

学生A「
マクスウェル理論じゃ放射のミクロの構造は説明できないんじゃないのか?
   だから否定されたということになるんじゃないのか?



James Clerk Maxwell(1831年6月13日 - 1879年11月5日、エジンバラ生まれ)は、
イギリス(スコットランド)の理論物理学者。電磁気学を確立したことで有名な天才。

マイケル・ファラデーによる電磁場理論をもとに、
1864年にMaxwellの方程式を導いて古典電磁気学を確立した。
さらに電磁波の存在を理論的に予言し、
その伝播速度が光速度に同じで、横波であることを証明した。
土星の環や気体分子運動論・熱力学・統計力学などの研究でも知られている。


電磁場の実験的研究を数学的にまとめあげたあの有名な基礎方程式は
4つの方程式からなり、はじめの2つは電場と磁場の連続性をあらわし、
あとの2つは一方の場の変化が他方の場におよぼす変化の原理をしめした。

さらに、導線中をとおる電流の速度が真空中の光の速度に近いことを発見し、
光が電磁波であることを予言した。


のちの科学者たちはマクスウェルの理論にもとづいて光速度をCGS単位で確定した。
磁束のCGS単位であるマクスウェルMxは彼の名にちなんで命名されたものだ。


(マクスウェルの肖像)



岡倉先生、団子を食べながら難しい本を読んでいる。


おばちゃん「
難しい話してるねえ…、偉いんだろうねえー
←むやみに感心するおばちゃん(^^;)


さくら「
東大でも何十年に一度って秀才なんだって

おいちゃん「
へえー、満男、あんな人になるんだぞ
←おい、おい、それはそれでちょっと困るぞ(^^;)


おばちゃん「
満男だってさ、
    父ちゃんや母ちゃんに似りゃ、頭いいもんねー



おいちゃん「
顔はうちの寅にそっくりだけどな。
    おめえ、だんだん
エラ張ってきたぞ


おいちゃん「
大丈夫だろうな…、本当に帰ってこないんだろうな…

さくら「
いいじゃないの、帰ってきたって。
  他に部屋がないわけじゃないんだもん



おいちゃん「
だってよ、寅の一番嫌いなタイプなんだよ、
    ああいうのは


←んだ。さしずめインテリだもんなあー。


さくら、少し納得した顔で、
兄のことを思っている。


満男、おいちゃんのお茶ごくごく飲む。

←中村はやと君、アドリブかなあ…?


千代さん登場!



千代「
こんにちは

さくら「
いらっしゃい

千代「
さっき、お店の前をお通りになったのを見かけたものだから。
  早速だけど、これ、お言葉に甘えて持ってきちゃったの。
  縫っていただける?



さくら「
あらー、素敵な色ねー。


千代「
安物よ

千代とさくら服地のことで親しく喋っている。


おいちゃん「
お千代さん、お茶でもどうだい


千代「
ありがとう、またあとで、おじゃましました」と裏地に使う生地を探しに戻っていった。

おばちゃん「
お千代ちゃん、若いねー。
   美人は得だねェー


←おばちゃんが言うと説得力あるなあ(^^;)



おいちゃん「
正直言って、今、寅に帰ってもらいたくねえよ


さくら「


おいちゃん「
さくら、
  えれえことになるぞ、こりゃあ…



絶対当たるおいちゃんの寅予言。



                       






とらや 夕食


夕食を食べている。


岡倉先生、本を読みながら、芋の煮っ転がしを食べている。

社長「
大変だ!」と、入ってくる。

博、社長を岡倉先生に紹介。
岡倉先生「あ、どうも」とそっけない。


岡倉先生、本を読みながら急に笑い出す。

岡倉先生ヒヒヒ…


おいちゃん「
何か面白いこと書いてありますか?


岡倉先生「
え、三次元の世界のボールが四次元を
   通る様子が書いてあるんだが、これが
   可笑しいんだなあー。
   四次元ではボールの通る様子が一本の線に
   なって見えるんです。
   この線の左と右とでは時間がずれていると
   いうわけなんです。

     
ゆえにボールの通る様が団子の串刺し状態
     
なって見える。というわけなんですよ


団子屋ならではの話題でした(^^;)



おばちゃん「
おもしろいですね…、←おばちゃんもたいへんだね。(^^;)

さくら小声で博に「
分かる?

博首を横に振る。

社長「
おい、知ってんのかよ、寅さんが帰ってきたこと

さくらハッとして「
どこに?どこにって…(^^;)


社長「
柴又によ。夕方江戸川を
 フラフラ歩いてるのを源ちゃんが
 見かけたんだってさ



さくら「



社長
小声でどうしよう…


おいちゃん、
小声で知らねーよ



岡倉先生、本を読んで「
ヒヒヒ…フフフ


夜風で店のカーテンが揺れる。←いかにも帰ってきそうな予感(^^;)


寅、店先に現れる。

店に入ってカバンをイスに置く。

さくら、寅を見つけて「
!…お兄ちゃん!と大声。

横に座ってたたおばちゃん2センチ浮いて転ぶ。
↑時々やってくれるおばちゃんの、この手のギャグは見逃せません!

寅「
さくら!

と入ってきて「
おお、社長も来てたのか

社長「
え、あ、お、お帰り


寅、なんとなく知らない男が座っていることが分かっている。


寅「
おいちゃんおばちゃんも達者でやってるかい?

おいちゃん「
元気元気

寅「
満男は?

さくら「
うん、風邪も引かないしね

寅「


博「
ええ…相変わらずですよ

寅「
次は

社長「
ハハ…経営も大変だよ

寅「
うん、そうだろうなー。なーにね、
 ちょっと近くまで商売できたもんだからさ…
 寄って見たんだよ。
てめえの家だもんな!
 岡倉先生への圧力のつもり。



さくら「
とにかく、お兄ちゃん上がったら


おばちゃん「
ささ、こっちへ

寅「
しかし、なんだな、この家のなんかそのあたりによー,
 なんか
お見かけしない人
 いるんじゃねえかい?
 さっきから、たくあんポリポリポリポリ噛んでっけど、
 どちらのどなたなんだ?



さくら「ごめんね、遅くなって、こちら、
  御前様の甥っ子さんの岡倉さん


博「
大学の先生ですよ

さくら「
今までいらっした官舎が建て直しになるんで…

おいちゃん「
そいで、しばらくな、家に居ていただくことになったわけだ

さくら「
先ほどもお話しましたけど、私の兄です

岡倉先生「
あーどーもだけ(^^;)。

寅帽子の手をかけて挨拶しようとしたが、
そのまま固まってしまう。



寅「
ほーっ!大学の岡倉さん、へぇ〜っ!
じゃあさしずめインテリだぁー!!

第2作の医者との場面で初登場した
「てめえさしずめインテリだな」は、
ちょくちょく使われる。一番寅の嫌いなタイプ。


寅「
そりゃ結構!

さくら「
お兄ちゃん

岡倉先生「
ごちそうさまでした」と
席を立って上がり口に座っていた寅を
ちょっと失礼」と、押しのけて下へ下りる。

寅、はずみで横に倒れる。


岡倉先生階段上りかけてちょっと気づいて

岡倉先生「あ、大丈夫ですかと言い、スタスタと2階へ。


寅、無言で階段のところまで行って、カッと上を睨み、
さくらたちをぐるりと睨み、
また上をカッと睨んで、無言で2階を指差す。
そしてさくらたちにも指を差す。
そしてまた階段にへばりついてカッと上を睨む。

                     

            

この無言のアクションは渥美さんの独壇場だ。実に上手い!




2階の岡倉先生

ビバルディの「四季」を聴く。ベートーベンのデスマスク


寅、すぐにかばんを持って出て行こうとする。


さくら「
お兄ちゃん!こんなこと初めてじゃないでしょ?

寅、ちょっと止まる。

さくら「
いつだって気持ちよく2階の荷物部屋に
  寝てくれたじゃない。ね、お兄ちゃん


第6作「純情篇」の下宿人の
超美人の夕子さんとはわけが違うからなあ…。
特に今回は「さしずめインテリ」だから怒るのは
寅的には無理もない。


寅「さくら、旅行けば、信濃路はもう秋よ…。
 村はずれの優しいお地蔵さんの顔に
 赤い夕日が差してカラスがカァーと鳴いてかなぁ…。
 そんな時、そんな時よ。
 いっときも早く地道な暮らしを持って年老いた
 おいちゃん、おばちゃんたちを安心させて
 やらなきゃならねえ…。
 もう矢も楯もたまらねえ気持ちで戻ってみりゃ、

 何でい、このありさまは!見てみろ、この家の者の

 冷てえ
地獄の鬼みてえな眼差しを!
 オレは馬鹿だったよ。いや、もう何も言うな。

 二度とこの家には帰ってこないよ

 どこか
遠い他国馬車引きでもして地道に暮らすよ

そういえば第9作「柴又慕情」でも
とらやのことを
悪魔の棲家って呼んでいた。(^^;)

寅の場合
遠い他国って日本国内の地方っていう意味なんだろうなあ…たぶん。


寅、さくらからカバン奪って出て行こうとする。


暖簾の向こうから千代の声
こんばんは


さくら「はい…

寅「さくら、
もう生涯会えねえかもしれないけどな
たとえ、どんな、どんな
遠い他国の空でも、
兄ちゃんお前の幸せを祈っているぜ。あばよ」



千代暖簾をくぐろうとしながら寅の顔を見る。

寅も思い当たる顔なので暖簾をくぐりなおす。

千代、逆にくぐる。


寅、またくぐる。

ようやくお互い顔を見合わせ、

千代「
あ…

寅「
あ…

千代、寅見て、さくら見て

千代「
寅ちゃん…じゃない?

寅、早口で「
お千代坊でしょ

千代「
寅ちゃん!


寅「お千代坊か!どうしたんだよ一体!

千代、感極まりながら、

千代「
懐かしいわねえ!…

寅「
うん!


               


↑この演出はリズム感があり上手かった!!

第48作中でも寅のことを気安く「寅ちゃん」と
呼ぶのはおばちゃんはもちろんの
こと、第1作の冬子さん、第2作の夏子さん、
そして第10作のお千代さん、第30作
にちょっと出てくる江戸屋の娘の桃枝さん、
など幼馴染で気心が知れた女性ばかり。



寅、さくらに「
おい!ほら!覚えているだろ!
     オレと
同級生の、なあ!呉服屋の娘のお千代坊だ!

さくら「
一月ほど前からね、そこで美容院をね。

寅「
病院務めてんのか、看護婦か

千代、笑いながら首をふる。

さくら「
違うわよ!病院じゃないの、
  美容院
そこにあるでしょう


寅「
あーあー、パーマネント屋か

寅、おいちゃんたちのほうを見て、
寅「
おいちゃんたち、覚えてるか!?
 え!ほれ、

 おでこが出っ張ったラッキョみたいな

 おかしなつらした娘
だったよなあー。
 結構見られるようになったんじゃねえーか!?



千代、笑う。


さくら「
お兄ちゃん、何言うの、
  こんなきれいな人つかまえてねー


寅「
そうそうそうそう、おまえと二人でもってね
 手握って歩いているとよ、

デカラッキョにチビラッキョ
って
よくおまえたちからかわれて泣いて
帰ってきたじゃねえか!へへへハハッハ!


千代「
そのたびに、寅ちゃん棒切れ持って
  飛び出してったのよね

←寅がからかってたのではなく寅は助けていた方だった!



寅「
そうそうそう」と、座敷に上がって


寅「
あの頃からよ、シミシミシミシミ小便しちゃ
布団濡らしてたけど、
寝ションベン治ったのか?おい、ハハハ!

←なんでもばらす寅でした。


千代、大笑いしながら「
それ言われるから、
寅ちゃんに会うのが嫌だったの。フフフ

↑なんだ、やっぱり寅もからかっていたのか…(^^;)

寅「
またまたまた!!

ちなみに寅とさくらは設定上おおよそ
8歳〜12歳くらいの年の差があるので、
どう考えても寅と同級生の千代さくらとが
手を繋いで遊んで、さくらと一緒に誰か
に泣かされ、時々寝ションベンしてるって、
無理があるなあ。
でも、まあ、ありえないことはないか…。
まあ、よし、としましょう。
よくあることです。(^^;)



千代「寅ちゃん、でも変わらないわねえ…。
  昔とおんなじ顔



寅、笑いながら

寅「
うん、よくお前と二人でいるとよ、
瓜二つ』だなんて言われてたもんなあ、ハハハ」←凄いギャグ


お千代さん笑いが止まらない。




                      



しかし山田監督も、
よくもまああんな美しい清純派女優の
八千草薫さんに対してこんなムゴイことを
次々に寅に言わせるなあ。
デカラッキョだなんて(^^;)


ようやくさくらに裏地を渡すことを
思い出して帰ろうとする。


千代「寅ちゃん、しばらくいるんでしょう?


寅「あー、ずっといるよ、なあ!
←さっき一生帰ってこないなんて言ってたのに。
馬車引きどうすんだよ(−−)



千代「でも嬉しいわ、寅ちゃんに会えて。
  どうしてるの、今?



寅「ん、まぁー、相変わらず地道な暮らしよ


千代「そう。じゃあまた後でね。じゃあおじさんおばさん
と言って帰っていく。


寅、にこにこ陽気に



よし!」「よし!っと


一同シラー…

寅、博に小声で
おい、博、あの、ほら、なんだい、
 お千代坊の
御亭主ってのは何してるの?え?


もじもじしながらお馴染みのさぐりをいれる。


博「ご主人ですか?

寅「うん、いるんだろう?
←満男の本の「
めばえ」読んでるふり。



博、おいちゃんたちを見ながら

博「え、ええ…、それが…いろいろ訳が
 あって2年前に
別れたらしいんですよね…


おばちゃん、言っちゃダメダメと手を振る。


おいちゃん「え!?、いや、そんな噂わね…


おばちゃん「でも、はっきりしたわけじゃないでしょ...

もう遅いって何言っても┐(-。ー;)┌



寅「そりゃどっちにしても気の毒な話だなあ…。そうか

決まっちゃいました頭の中で(^^;)



と元気になって、寅「さくら、二階の物置部屋空いてたっけな

あっさり、荷物部屋へ住むことをok 

さくら「うん、空いてるわよ

寅「じゃあ、今日はこの辺でお開きにして、ね!
 あーあー疲れた疲れた
と2階へ。


社長「えらいことになったねー。これから大変だねー
と帰っていく。


博「これは、はじめてのケースですね、おじさん


おいちゃん「オレはこれを心配していたんだよ!
    最悪だよ、事態は…



そんないきなり最悪って、まだ何もおこって
ませんがな…(^^:)






翌日、

大学で『
量子力学』の講義をする岡倉先生。



寅、参道にあるお千代さんの美容院を
外から見て、入ろうかどうか迷っている。



その時ダイハツの車が止まる。『足立8 7286』 江藤商会


店の配達員、車から降りてきて
「こちらへガスストーブ持ってきたんですが」


この時、美容院の名前がちらっとスクリーンに見える!!

アイリス

アイリスって確かとらやの斜め前!ほんとかよ(^^;)


配達員「あ、旦那ですか、どうもまいど、これ伝票です


寅「おう、早く出せ


寅、そばで見ていた源ちゃんに、

寅「なにボーっと見てんだよ。
おめえ遊んでんだったら手伝え手伝え



グロリー ガスメタリックストーブ
 VD-4 プロパンガス用

↑当時都市ガスがまだ来ていないのか…。なるほど。


手伝っている源ちゃん車の角で頭打つ


店に入ってきて、


寅「お千代坊、この辺でいいか?


千代、びっくりして

千代「え?」「どうもすいません


寅「ほらほら、大事にしろよと配達員に。

寅、パーマ当てている客に「大変ですねー」と言う。

『バン!』という音。


寅「おい!壊れ物だぞ!どさっと置くなよ!



                    




とらや.店


寅、配達員に団子食わせている。
源ちゃんも食べている。


配達員「旦那、ごちそうさまでした

寅「今日は、ごくろうだったなあ、それからねー、
 あれ壊れ物だから、悪くなったらすぐ来なきゃだめだぞ!


寅、財布から500円だして「はい!これとっとけ

配達員「え、いいですよ

寅「いいからいいからとっとけ

配達員「そうですか、どうもすいません」と受け取って帰っていく。

千代「すいません、いろいろと。お陰で助かったわ。
  やっぱり、
男手って必要ね…

そんなことないよ、寅はちょっと派手にやりすぎ。
ストーブ搬入の手続きくらいは普通は女手でも軽くクリア(^^)



寅「そうかい?こんな事でだったらいつでも言ってきてくれよ。
  こっちはしょちゅう暇なんだから


千代「ありがとう。おばさん、おいくら?

寅「あ、いいんだいいんだ

千代「悪いわ、そんな

寅「いいって、ここオレの店だから
←源ちゃん、それ聞いてクククと、笑う。
寅、ここはあんたの店ってわけじゃないよ(^^;)



寅、さりげなく千代の肩に
ついたほこりを取ってやる。

↑お!寅にしては結構思い切った行動。
 やっぱり幼馴染の気安さか。



さくら、店にやって来る。


ちょうど岡倉先生も帰ってくる。

寅、岡倉先生に気づいて、プイッと横を向く。

さくら、お千代さんを見て、

さくら「いらしてたの

千代「え、寅ちゃんに助けてもらっちゃって

まあ、寅が過剰サービスしてたんですけどね(^^;)


岡倉先生、お千代さんを見て『ポ――ッ



                       



さくら「あ、ご紹介するわね。あの、お千代さんです。
  私たちの小さい時からの知り合いなんです


さくら「あの、こちら岡倉先生、
 東大の理学部の助教授よ。
 2階に下宿していただいてるの。
 とっても偉い方なんですって



『偉い方』っておばちゃんと同じこと言ってる(^^;)



千代「はじめまして、志村千代と申します
←本名でました!


岡倉先生、ずっと『ポ―ッ


岡倉先生「岡倉です。どーも

寅、ここで、岡倉先生の一目惚れに、
はやくも気づく。



岡倉先生、緊張のあまり、
いきなり団子調理場に入って、
おばちゃんとおでこがごっつんこ!!

おばちゃん「あいた!!」ガチャ―ン!!


寅、ますます確信する。源ちゃんも分かる。
岡倉先生、裏庭まで行ってしまって「ハッ」と気づいて戻って2階へ行く。

寅と源ちゃん店の前まで出て、
二人で押しくら饅頭しながら笑いあっている。
源ちゃん肩透かしくらってコケル。



寅笑って走って行く。


向こうで寅たちの笑い声だけ聞こえる。
ハハハハ!!!



お千代さん、意味がわからなくて
「え?」とさくらを見る。




さくら、困った顔。


おばちゃんおでこ押さえて痛がっている。
←おばちゃんとんだ迷惑(^^:)




とらやの今回のメニューの値段

コーラ 60円  サイダー 50円  
ジュース 50円  団子一折 300円

おでん100円  茶めし100円 
焼き団子60円  草団子200円


ちなみに2004年現在木屋などでおでん食べると500円です。



題経寺の鐘 『ゴ〜ン』



とらや 夕食。



岡倉先生、本を読みながら食べている。

寅、歌を歌いながら帰ってくる。

寅「♪ あら、今夜だけ、
 あら、今夜だけ〜♪

この当時ヒットした山本リンダの『どうにもとまらない
を節と歌詞を変えて面白おかしく歌っている。

今回のスポンサー、タイアップ曲


山本リンダ

0年代前半、突然『こまっちゃうナ』からの脱皮をはかり、
見事に一世を風靡した不思議な歌手さん。そのインパクト
の強さたるや他の追随をまったく許さない孤高の存在だ。
狂気すら漂う忘我寸前のダンシング、ソウル/ファンクを

基調としたパンチの効いたサウンド

特にこの曲は
阿久 悠 都倉俊一コンビの名曲のひとつだと言える。

それ以外のヒット曲もタイトルがぶっ飛んでる。
「狙いうち」「こまっちゃうな」「ウブウブ」「狂わせたいの」「じんじんさせて」
「ぎらぎら燃えて」「きりきり舞い」「やけどしそう」「もっといいことしない」、
まさに「
どうにもとまらない」という
感じだった(^^;)
91年にも第3次リンダブームを巻き起こした。
しかし、実際の彼女はシャンソンも大好きで、しっとり
とした曲なんかも小さなステージでたくさん歌うそうだ。
 
1951(昭和26)年3月4日福岡県生まれ。53歳。 
今でもおそろしく若く見える(^^;)





どうにもとまらない

阿久 悠 作詞
都倉俊一 作曲


うわさを信じちゃ いけないよ
私の心は うぶなのさ
いつでも楽しい 夢を見て
生きているのが 好きなのさ
今夜は真赤な バラを抱き
器量のいい子と 踊ろうか
それともやさしい あのひとに
熱い心をあげようか
ああ蝶になる ああ花になる
恋した夜は あなたしだいなの
ああ今夜だけ ああ今夜だけ
もうどうにもとまらない





私の場合、山本リンダの『こまっちゃうナ』は
小学校1年生あたりだった
と思うがかろうじて覚えている。
1972年の『どうにもとまらない』は強烈
な印象が今でも残っていて、よくやるなあ〜、と
子供心にも感心したり、
呆れたり、心配したり、していた。
『こまっちゃうナ』との落差を自分で
どう埋めていいのか、分からなくて
困っちゃってた記憶がある(^^;)ゝ

おばちゃん「あ、帰ってきた。どこ行ってたんだろう?

さくら「
お千代さんのところでしょ
見切ってるねさくら(−−)

岡倉先生、その名前に
ハッ!と顔を上げてしまう。

寅「
とらやのみなさん今日も一日神聖な労働ご苦労様でした。
ハハ!酔っ払っちゃったよ!


さくら「何してたの?」

寅「えー、
お千代坊とふたりで差し向かいで一杯飲んでいたのよ

岡倉先生、
ご飯茶碗落とす。(^^;)

さくら「
お千代さんのところはずうずうしく押しかけたらご迷惑よ

寅「
バカヤロウ、あいつとオレとは幼友達でしょ、大丈夫だよ

おいちゃん「
差し向かいで何しゃべってたんだ?

寅「
あ、…岡倉先生のこと褒めてたなあ…つりだね(−−;)

岡倉先生『ムクッ!』と顔を上げる。


さくら「
あ、ああ…、何て?
さくら乗っちゃダメだよ、つりだよ、寅の。



寅「
え?さすが大学の先生だって。
 立派で真面目な人そうだって言ってたなぁ…。
 
好感もってんじゃないかなあぁ〜



岡倉先生緊張しまくり、下を向いたまま、
箸でおかずを取ろうとして
灰皿に箸をつっこむ。


一同唖然…

そのまま、タバコの吸殻をつまみ口へ
ポイッ』っとほり込む。

一同「
…!!!!

寅「
はっ!?

岡倉先生、目をひんむいて、
河豚のように口を膨らまし、
土間へ行ってゲーゲー吐く。


さくらたち「
大丈夫ですか!?」と背中をさする。

寅「
先生大丈夫かい?慌てるからいけないんだよ。
  落ち着いてさ、冷静に


おいちゃん「
何言ってんだい!

寅「
ウンコになって出るときは同じだよ!意味ねえ(^^;)

さくら「何言ってるのお兄ちゃん

寅「
じゃ、ま、今晩はこれでお開きということにしましょう

おばちゃん「
洗面器差し上げて、洗面器

おばちゃん「
だいじょうぶですか?
岡倉先生「
だいじょうぶです。致死量は食べてません



                      



インテリが嫌いな寅はとことんまで
岡倉先生をからかうのでありました。
困ったもんだ。




とらや 店

おばちゃん、電話でさくらと話している。


岡倉先生の気持ち、結構みんなにばれてしまったね。


おばちゃん「
一日中お千代ちゃんの店の前うろうろしてさ、
    あれじゃ商売に差しつかえるよ。あんた来て言っとくれよ


さくら「
うん、分かったわよ、今どこにいるの?

おばちゃん「
どうせ今もお千代さんの店だろ…。
地道に馬車引きする
なんてよく言うよ。
そらぞらしいことを






帝釈天参道


柴又の洋品店に岡倉先生入っていく。


岡倉先生「
パンツ下さい(^^)

店員さんいろいろ出す。
岡倉先生「
こんなのはダメです。
真っ白
でなければいけません!材質は綿
理想的にはひも付きです
もしなければやむを得ません。たぶんないでしょう



物事を追究するタイプの人はこういうところも
けっこうこだわるのだ。
日常生活で使う感覚と学問で使う感覚はどこかで密接に
繋がっているものだ。




千代偶然店に入ってくる。

千代「先生
岡倉先生、
はっ!と帽子を上げて、また被る。

千代「お買物ですか?御不自由なことが多いでしょう。
  お手伝いいたしましょうか?


岡倉先生「
!…

千代「
何をお買いになるのですか?

岡倉先生いえ、ちょっと…

店員「
白いパンツないんですけど

岡倉先生、恥ずかしがって「
でもピンクでも構いません。
はければいいんですから
」と財布を捜す。

お千代さん、くすっと笑う。

二人参道を歩く。

高木屋の前を通る。

岡倉先生はなぜかいつでも長靴をはいている。
その長靴で隣の長靴を掻きながらヨタヨタ歩いている。



千代「
先生は大学で何をご研究すか?

岡倉先生「
あの、理論物理の中の『素粒子論』です。



                 



源ちゃん高木屋から出たところで、
偶然二人を見つけて、一緒にいた寅に知らせる。


寅、なぜか団子食べてるけど、
寅って普段団子なんか絶対食べないのになあ…。
それに自分の家が団子屋なのに?なんて、
ついつい思ってしまうのでありました。


千代「
私どもにはさっぱり分からない学問ですねー

岡倉先生「
いえ、たいしたことありません。
   世界水準
にはまだ…


千代、岡倉先生の襟を直してあげたりして、岡倉先生ヘロヘロ。

寅と源ちゃん、笑いながら一緒に後をつけて笑っている。


暮れ六つの鐘 『ゴーン』

とらやの二階

岡倉先生「
♪あら、今夜だけ、
   あら、今夜だけ、
   あーあ、どーにも
   止まらなうぃーん!ジャン!

↑鉛筆で指揮をして、拳骨で机を叩く、
ヴェートーベンのデスマスク、カクッとずれる。

岡倉先生の恋心はもう『どうにもとまらない』と
いう感じだ。(^^;)




とらやの茶の間



寅「
オレは、はなっからピンと来てたんだ。これぁ、
一目惚れだよ。一度あったらもう忘れることが出来ない。

寝ては夢、覚めてはうつつ幻の…。今、先生はそれよ


博、さくらの
緑色の毛糸巻きを手伝ってあげている
←リアルな日常ですね。

寅「
オレは、そっちのほうの勘は鋭いんだよ
難しい顔して英語の本なんか読んでいるけどさ、
頭の中には何にも入っちゃいないからね。
今、目先にはお千代坊の顔だけがちらついているんだ。
オレにゃ―、ちゃんと読めてるのよ。


こういう時の寅の推測って
正解率100パーセントだもんなあ…。


さくら「
いくらなんでもそんなこと…

寅「
なんだよ、違うってのか、おまえ

おいちゃん「
あの先生の頭の中には難しい学問が
     詰まってるんだよ。色恋なんかするもんか、
     おまえじゃあるまいし



妙なこと言うね。それじゃ何かい?
 オレみたいな下等な人間だから恋をして、
 上等な人間は恋をしないと、おいちゃんは
 こう言うのか?

 恋は下等な人間のするものなのか?


おいちゃん「
決まってらーな

博「
それは違うな、おじさん、人間は誰だって恋をしますよ

寅「
そうだ、その通りだ

恋愛というのは人間の美しい感情ですからね

博は前々から「恋愛」という感情をとても大事にしている。


そうだよな。おまえは経験者だから分かってるんだよ。
 え、博、おまえがさくらに恋をしているときは
 寝ても覚めてもさくらのことしか頭になかったろ。
 何見たって全部さくらに見えちゃったろ?え?



博「
それほどでも…」と苦笑い。

寅「
なんだおまえ、そうじゃねえのか?

博「
だって飯も食わなきゃいかんし、仕事だってしなきゃ…

寅「
ほう、そうかい。お前、そんな気持ちでさくらに恋をしてたのか?

寅「
いいかい恋なんてそんな
 生易しいもんじゃないぞ。

 飯を食う時もウンコをする時も
 もうその人のことで頭がいっぱいになる。
 何だかこー胸の中が柔らかぁーくなるような
 気持ちでさ、ちょっとした音でも、

 たとえば千里先で

 針がポトって落ちてもワ〜ッ!
 なるような(さくらたち驚いて身を引く)
 そんな優しい気持ちになって、この人の

 ためなら何でもしてやろう、命なんか惜しくない。

 『ねえ、寅ちゃん、私のために死んでくれる?』と
 言われたら、
 『
ありがとう』っと言ってすぐ死ねる。

 それが恋というもんじゃないだろうか


↑「葛飾立志篇」でも、寅が恋について大学教授に、このような
 自分の信条をせつせつと話す場面がある。


寅「
どうかね、社長

社長「
さあ、オレは見合い結婚だからねえ、申し訳ない」っと、話題をさける。
↑特に社長の場合は見合いの時と結婚式当日とは違う相手だったという凄い経験の
持ち主だからなあ…(^^;)


寅「
帰れ、タコ

寅「
博、おまえどうかね

博「
いやーっ、なかなかそこまでは…

寅「
おいちゃんはどうなんだ

おいちゃん「
とてもとても

寅「
ほう、誰もそういう気持ちは知らないってのか
 不幸せだねぇ、君たちは



おいちゃん「
寅ほど幸せじゃねえよ、こっちは

社長「
そーだよ


寅は幸せだ、と、みんな言う。
そうじゃない、の言い合いが続いて



寅が「
どうしてみんなで言うの?どうして!!?
みんなで口裏合わせて結局オレのことバカだって!



さくらたち「
そうじゃなくて…

寅、大声で「
嘘だよー!!!ってふざける。
←さくら大笑い。(倍賞さんマジで笑っていた)

みんなガヤガヤワイワイ


いつの間にか岡倉先生階段の下に立っている。

さくら気づいて「先生、なんか用ですか?←さくら、まだ笑っている。

岡倉先生「
勉強中ですので少し静かにしていただけませんでしょうか

さくら「
すいません

岡倉先生階段上りながらドイツ語ぶつぶつ。




暖簾の向こうからお千代さんの声

千代「
こんばんは


岡倉先生階段の途中でビクッとして止まる。


さくら「
あら、お千代さん

寅「
お千代坊来たか

千代「
あ、先生先ほどはどうも

岡倉先生「いえ!」
←ずっと階段で止まっている。

千代、満男に「
満男ちゃん、ケーキよ

寅「
あれ?先生、何やってんの?そこで

岡倉先生「
あの、ド、ドイツ語の辞書…

寅「
都々逸(どどいつ)やるの?え?

岡倉先生「
あ、いえ、無ければいいです
←あるわけないよ、とらやに(^^;)


寅「
あー、そう、残念だねえー

さくら「
あ、先生、お茶でも

岡倉先生「はっ」っと階段を下りかける。

寅「
あ、呼ぶかい?あ!無理だよ

岡倉先生、小さな声で「
どうして?

寅「
今、お千代坊が来たんでね、
みんなでここでもってお茶でも飲んでさ、
愉快に話をしようと思ったんだけどね、
先生勉強中だろ、こりゃ仕方がねえや。
あきらめた


岡倉先生、小さく首をふり、何か言いたげ…。



                   



千代「
私、仮縫いでお邪魔したのよ
っとさくらといっしょに隣の部屋へ行く。

寅「
あーそー、仮縫いか、仮縫いってのは何、
全部スポッと脱ぐのー!?
 ゞ( ̄∇ ̄;)

岡倉先生、
ハッ!!!と振り向いて手を広げる。


さくら、隣の部屋から「お兄ちゃん!

寅「
おっ、先生まだそこにいたの?
 しっかり勉強してくださいねー!
 私たちの分も!
やな性格だねえ〜(__;)


岡倉先生、しぶしぶ上がっていく。

寅「
お千代坊、仮縫いが済んだらさ、
 コーシー
とケーキで楽しいお話をしましょう!!
先生はお二階でお勉強ぉー!!

寅ニッコニコ



おいちゃん、心底呆れて

おいちゃん「
幸せだよなぁ…

寅、ニコニコで「
そうそう


もう一生やってろよって感じ┐(-。ー;)┌




大学の研究室

レポートを提出」する岡倉先生





教授「
あ、君、アメリカへはいつ行くんだい?

岡倉先生「
あれは断るつもりです

教授「
断る?プリンストンをかい?


岡倉先生「
はい、僕は当分日本にいたいんです。失礼します



↓レポート用紙を見て驚く教授

(黒文字)フクザツダ…オチヨサン。
(赤文字)スキダ スキダ…
    アイシテル アイシテル


末期症状ですねこれはもう…(−−;)




お千代さんの美容院「アイリス」

ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番 「春」第1楽章 


髪をセットしてもらっているさくら。


千代「
そんなことないわよ、本当に助かってるのよ。
  照れ屋なのよ、あなたのお兄さんは。
  小さい時からそうだったわ。
  人が見てるといじめたり、
  悪口を言ったりするけど、
  二人っきりになるととっても親切よ。
  さくらちゃんだってそうでしょ


やっぱり幼馴染はその人を昔から見ているから鋭いね。




さくら「
うん、まあ、そういえばね…

さくらのことを「さくらちゃん」と呼べるのは、
おばちゃんとお千代さんだけかもしれない。
それにしてもお千代さんは寅のことをよく見ている。
ただ単に、優しいくて美しい人だけ
ではない、深い洞察力のある聡明な
人なんだな、と思う。




さくら、窓の方を見ると、
寅が笑いながら中を指差しているので驚く。



寅、ドア開けて



寅「
なんだいこの店は漬物屋か?えーっ、
 ラッキョが2個そろって、何の相談してるんだよ。
 ほんとやるほうもやるほうだし、やらせるほうも
 やらせるほうだよ。髪の毛なんかやらないで
 おでこ削ったらいいじゃないか、以上!ハハハ!!

  と大笑いで出て行く。

相変わらず容赦なく『ラッキョ攻撃』を浴びせ掛ける
過激な山田演出でした(^^;)


でも、なぜかこの時の寅もお千代さんも
とても幸せそうだった。
繋がりが深いんだなあ。



                




お千代さん、大笑い。

さくら「
まぁー!!、憎らしいわねー!


千代「
フフ…、いいわねえ、
 お兄さんがいるって


ほんとは一番上にもう一人お兄さんがいたんですよ。


さくら「
どうして?

千代「
私は一人っ子でしょう、羨ましいわ

さくら「


千代は今、ちょっと淋しいのかもしれない。





さくらのアパート



博「
じゃあ大きな呉服屋の一人娘だったのか」

さくら「お千代さんがお嫁に行くころは
  もう随分大きな借金をかかえこんで
  たんじゃないかしら。とても華やかな
  お嫁入りだったけど、その翌年だったかしら、
  お店が潰れて、まもなくお父さんが病気で亡くなられたの…



博「
ふーん、おまけに亭主運にも
 恵まれなかった
わけだな



さくら「


博「
何があったんだ?

さくら「さあ、そんなこと聞けないしねぇ…


博「
うん…





午後の柴又参道



お千代さん、蒼ざめた形相で
カーデガンを羽織って走って行く。





江戸川土手で遊ぶさとしたち。

千代、かけて来て
、「さとし!

さとし、千代のところへ行く。

千代「
よく電話かけてかけてくれたわね。
  ママ、
夢かと思った…


さとし「この辺、柴又って聞いたもんだからさ

千代「
そう、ボク、大きくなったわね…
←ずっと会ってないのだ。

お千代さんが自分の息子が会いにくることが「夢かと思う」って、
いったいどんな障害がこの親子の間にあるんだろう…。

向こうから子供達の声「
さとし!行くぞ!

さとし「
おう!

千代「
もう行くの?もう少しいられないの?


さとし「
だめだよ、みんなと一緒だから、
先生も遠出をOKしてくれたんだもの


千代「そりゃそうね


そんなことはないよお千代さん。放課後の行動は基本的には親の責任で、先生の指導は
登下校も含めた学校生活に限定されるはずだよ。一応帰宅以後のことや休日の生活は
大まかな指導はするけれどね。
特に今回は特別な事情があるので大丈夫だとおもうけどなあ。



しかしそれにしてもなぜ、お千代さんが
さとしと会ってはならないんだろう…?
お千代さんの性格からして、
自分から子供を捨てることは考えられないので、
おそらく夫になにか重大な問題があり、

子供をお千代さんに会わそうとしないんだろう。
お千代さんはラストで「もう結婚はこりごり」って
とらやで言っていたことからも、なんとなく博の言う通り
亭主運が良くなかったことが想像される。
もしそうだとしたら、さとしは可哀想だ。
こういう場合、家庭裁判所の仲裁によって
定期的に息子と会えるようにしている夫婦も
たくさんあると聞く。自分が産んで育ててきた
子供にいきなり会えなくなるなんて、情の厚い
お千代さんには耐えられないことだ。




千代「
あまり突然で何も買えなかったから、
  これ…みんなでなんかおあがんなさい


さとし「


千代「
さあ」っと手につかませる。

さとし、水色の手袋はめて、

さとし「じゃ、行く

千代「
うん

千代「
パパ、お元気?

さとし「
うん

千代「


さとし「
ママ…
←さとしのこの言葉は切なく、悲しい。
この親子にいったい何があったんだ…



千代、さとしのジャンパーの
ファスナーを上げてやる。




                  



千代「早く、いらっしゃい。みんなが呼んでるわ

さとし、涙を拭く。千代、さとしを見つめる。

さとし走って行く。自転車に乗りみんなと帰って行く。

千代、すすり泣く。







とらや 
夕暮れ時


さくら「
あのお店の女の子の話なんだけどね、
 男の子の声でママいますかって、
 電話がかかってきたんですって。
 お千代さんが二言三言話したらと思ったら、
 顔色変えて飛びだしてってね、
 30分ほどしたら目を真っ赤に泣き腫らして
 帰ってきたんだって…



おばちゃん「かわいそうにね。
     自分のお腹を痛めた子に会えないなんて、
     どんなにつらいだろうね




寅、ずっと、考え込んでいる。


さくら「


寅「
よし!オレ!行ってくる!


おばちゃん「何しに!?

寅、ツツッ、と止まって「
慰めによ

おばちゃん「
慰めるって、どうすんのよ

寅「
どうするって、ど、そうしたらいいんだ!?

さくら「
じゃあ…さあ、晩御飯にでも呼んであげたら?


寅「
バカヤロウ!そんないいこと
 知ってるんだったら何で初めから言わないんだよ!


↑この寅のリアクションは第2作「続男はつらいよ」の
鰻釣りのシーンでも使われた。
夏子さんが「鰻屋で鰻買って、江戸川で
釣ったことにすればいい」という助言に
対するリアクションだった。




寅「
おばちゃん、今夜のうちのおかず何だ?

おばちゃん「
お前の好きなお芋の煮っ転がし


寅「
カァーッ!!貧しいなあ、うちのメニューは。
 もうちょっと、何かこう、
心の豊かになる
 おかず
はないかい・
 たとえばさあ、
厚揚げだとか、
 筍の煮た
んだとか頼むよ

美味しそうなメニュー!
あくまでも
ヘルシー清貧路線を貫く寅でした。(^^;)


おばちゃん「
わかったよなんか工夫するよ



寅「
じゃ、行って来る!と行きかけて、「あ!とまた戻ってくる



寅「
あのな、お千代坊を、
オレがここに連れてき
たら『坊や』だとか
『倅(せがれ)』だとか
『息子』
そういう類のことは
いっさい口にするなよ



さくら「分かってるわよ

寅「
大丈夫か?

さくら「
大丈夫よ

寅「
頼んだぞ!」っと走って行く。

出ましたお馴染み『
禁句』ギャグ↑!

「続男はつらいよ」では「おかあさん」の類はダメ!
「恋やつれ」では「夫、亭主、だんな、ダーリン」はダメ!
「噂の寅次郎」では「離婚」はダメ!
「かもめ歌」では「すべる、落ちる」はダメ!


もちろん、どの回も全て禁句を使ってしまって大騒ぎになるのだが(^^;)





とらやの2階 夜

ワーグナーを聴いている。

下で寅の声「おい、お千代坊来たぞ


千代「
こんばんは


2階で、岡倉先生ハッと驚いて音楽を消し、廊下に出る。

ベートーベンのデスマスクガタッと動く
蜜柑食べたあとがある。


千代「
すいません、突然おじゃまして…、

寅「
どうせ、こんな貧しい家だからよ、
 ま、大したもんもねえけけんどたくさん食ってくれや



千代「
とんでもない、私、ここに来ると
 自分の家帰ったみたいでほっとするの



↑私も一度でいいからとらやで
食事してみたい…お千代さんの気持ち分かるなあ…



寅「
そうかい

おばちゃん「
栗ご飯、お好き?

寅「
あ、俺嫌いだなぁ、腹が張ってが出るからやだ
あんんたじゃないってば(−−)

さくら「
お兄ちゃんに聞いてるんじゃないわよ

寅「
そうか、お千代坊こっち来なよ

千代「
寅ちゃんには悪いけど私は大好きよ

寅「
そうかい?

博「
ただいま」と、満男と二人で裏から入ってくる。

博「
いらっしゃい

さくら「
晩ご飯にお呼びしたのよ

千代「
おじさんは?

さくら「
今日は寄り合いなのよ」

千代「
先生は?

寅「
お2階でお勉強…、うんもういいってば(^^;)

寅「
ハハ…、なあ、博、今日工場でなんか楽しい話なかったかい?

博「
別にありませんねぇ…」と新聞を広げる。

寅「
なんだよ、おまえ、面白くもなんともない男だなあ
 なんかこう、新聞に面白いことでもないか?
あったら発表しろよ、え



博「
中近東はだいぶ騒然としてますねぇ

寅「
あ、そうか、そら大変だなー、どうなんだそれで

博「
総領事の子供が誘拐、13歳の少年か…

寅「13歳の少年?なんだおまえつまんないよ、そんなもん」と新聞を下げさせる。

博は千代の事情をまだ知らないのかもしれない。(^^;)

博、別の記事呼んで「
けしからんな実に!

寅「
なんだ、何かあったのか!?

博「実にひどいな、こういうことは許せないな僕は

寅「
何かやりやがったなちきしょう!
 どんな奴だ!?
内容知らないで怒るなって(^^;)

博「
母親が子供を置き去りにして
 家出しちゃったんです


お千代さん、下を向いてじっとしている。
寅、お千代さんの顔をちらっと見ながら

寅「つまんないんだよ…、
 誰がそんなの読めと言った


博「
しかし、僕はこういうことはけしからんと…

寅「
黙れって言ってんだよ!おまえはねぇ!」と、
新聞を丸めてしまう

寅「テレビ、テレビつけろ、こういう場合はテレビだ

博、スイッチを入れて0,3秒くらいで映像が出る!
凄い!こんなに早く映像が出るなんて
2004年の今でもなかなか
難しいぞ!未来から来たテレビか?(^^;)


CM『ダイハツ、ハイゼット。
ざっとこんなもんよ!
(若い外国人の女性と
落語家さんのコント)

軽ライトバン初めての
両側スライドドア。
でっか〜いハイゼット。
スライド、バン』




                     


今回のスポンサーであるダイハツは
そうとうお金張り込んだな!
それで森永のスポンサー必要なかったのかなあ…


続いて、ローカルニュースです
樋口アナウンサー
すごい簡素なニュースだ!


第6作「純情篇」での『ふるさとの川.江戸川』と
同じようにシンプルな番組



寅「
うん、今日は何かいいことあったかなー?

お千代さん、ちょっと顔が明るくなってきている。

樋口アナウンサー
幼い子供を置き去りにして
      家出した母親が逮捕されました


さくら、少しおろおろ。

去る19日午後、世田谷区野沢2丁目の会社員、関琢磨(拓馬)さんの…

寅「早く消せよ!消せよ!早く!


このテレビで墓穴を掘るパターンは
第2作の「おかあさあ〜あん」が有名。」


お千代さん、また下を向いてしまう。


一同どう反応していいか分からない


岡倉先生が下りてくる。

寅「
おっ!先生!

岡倉先生「
はっ?

寅「
はっ、じゃないよ。歌うたえよ!
 歌うたえってんだよ!ほら!歌いましょう!せーの!



箸をタクト代わりに振っている。

岡倉先生「
♪きーぃよぉーしー…
寅「何!?清がどうした?
いいよ!2階に行ってろよ、おまえ

お千代さん下を向いたまま。


寅「
じゃ、オレ歌う。♪かーらーす何故鳴くの、
からすはやぁーまーにー
清!歌え!合唱!みんな。

♪かぁーわいーい…
あ、これ違うんだな。



♪お馬のおーやーこーは、
…初めからだめだな。


♪ちいちいぱっぱ、ちいぱっぱー、
雀の
ガッコの先生はー、むーち
をふりふりちいぱっぱ!』歌えよ
!清!



さくら、お千代さんが涙ぐんでいることに気づき、歌い続ける寅に
さくら「
お兄ちゃん、やめなさい


寅「
うるせぇ!『♪ちいちいぱっぱ、
ちいぱっぱー、雀のガッコの先生はー、

むーちをふりふりちいぱっぱ!ちいちいぱっぱ、
ちいぱっぱ…
ちいちいぱっぱ
ちい
ぱっぱ、
ちいパッ』…」と声が小さくなっていく。

寅もお千代さんが涙ぐんでいるのを見て
黙って下をむいてしまう。


みんな気まずい雰囲気になる。

満男が後ろからお千代さんに抱きつく。
←お千代さん少し微笑む。

↑この満男の行動はお千代さんにとって
少し救いだったのだろう。満男の無邪気な
行動がその場の重苦しい空気を少し和らげていた。


さくら「悪かったわね…、無理に引っぱってきて

お千代さん、首を横にふる。

千代「
そんなことないわ。
 …寅ちゃん、ほんとにありがとう…。
 私ね、寅ちゃんたちの優しい気持ちが
 よく分かるの。…
 私…ほ、ほんとうにうれしいの…




            



と号泣する。


「千代のテーマ」が美しく流れる。


この時の千代のテーマは、亀戸天神での
クライマックスと双璧のタイミングで、
最高の効果だった。


嗚咽する千代
さくら「お千代さん…」と優しく慰める。
寅、下を向いたまま。
おばちゃん、台所で泣いている。



美しい場面だった。
マドンナが心から寅の気持ちに打たれ号泣する
場面は第17作「夕焼け小焼け」の
ぼたんの時にもあった。


お千代さんは寅や、とらやの人々と一緒にいる時が
一番気持ちが休まるのだろう。
それだけ、彼女の今までの人生が、
悲しく辛いことの連続だったと想像できる。

このように寅と、とらやの二つをセットで
自分の人生でかけがえのない大切なものだと考える
マドンナは少なくない。第7作「奮闘篇」の花子ちゃん、
第9作「柴又慕情」
の歌子ちゃん、
この第10作のお千代さん、
第11作「忘れな草」
のリリー、
第18作「純情詩集」の綾さん、
第26作「かもめ歌」のすみれちゃん、
第33作『夜霧にむせぶ寅次郎』の風子ちゃん、
などなどである。彼女達にとって、『寅』と同じくらい
『とらや』の人々が人生に影響を与えたのだ。





東京大学




ロケ撮影はなんと
一橋大学
思い込みは怖い。

誰も調べなかったこのロケ地。

東京大学ではなく
一橋大学と最初に言い切ったのは寅友の寅増さんでした^^


岡倉先生のレポートを大学に届けに行く寅

寅、教授に岡倉先生の恋煩いのことを知らせる。


寅「
別に熱があるわけじゃなし、腹下してるわけじゃなし、
 神経だよ、神経

教授「
神経って言うと?

寅「
ほら、よく言うじゃない恋煩い。たいしたことないよ

教授「
あ、ちょっと、そのことをもう少し詳しく話してくれませんか

寅「
うん、オレ悪いけどさ、どうもこういう雰囲気に長くいると、
後ろ頭がズキズキ痛くなっちゃうんだよ。

ちょっとションベンしてくらぁ、あ、大丈夫大丈夫、
すぐ帰ってくるから。あんたずっとここにいるでしょ。ね。」

寅、学生に「よお、ションベンどこ?
と聞いて、小走りに走って行く。


トイレと大教室間違えて開けてしまう。
講義中の満員の大教室。一斉に学生達寅の方を見る。


寅「
あれ?ここは教室か…。はあ〜っ、
田へしたもんだよかえるのションベン
だな、こりゃ

よう!学生諸君!
ご苦労さん!先生よ!
手ぇ抜かないでしっかり
勉強教えてやってくれよ!
ご苦労さん!!」


寅と学生の交流パターンは実に面白い。
第40作「サラダ記念日」にこのアレンジ版がしっかり登場する。



              


と出て行く。
学生達「
わぁーっ、と、どよめく。パチパチと拍手


寅、とらやに戻ってくる。
寅「
♪都のせいほーく、とらやぁーの杜にぃー♪
早稲田大学校歌の替え歌。

第2作「続男はつらいよ」でも
ハナマルキ味噌の宣伝を
『とらや』に変えて、お味噌なーら、
ハナマルキ!おかーさーん!を、
団子なーら、とらやさん!おじーちゃーん!
言いながらとらやに
戻ってくる寅がいたっけ。

満男見つけて、

寅「
満男!一生懸命勉強して大学に入れよ!」2階に上がりながら

寅「え〜!フレーッ!フレーッ!と.ら.や!、フレッフレッ!とらや、っと」

襖にレーシングカーの青色のポスター

↑なぜか5分後にポスターの位置と色が変わっていた!!(@@;)

ONKYOのステレオ



寅「
若先生行ってきたよー!大先生がよろしくってさ

岡倉先生、布団の中から「
どうもありがとう

寅「
だけど、たいした学校だな、えーっ、
あれじゃ
月謝高いだろ、月謝


岡倉先生「…」


寅「
どうしたんだよ、若先生、えーっ、
めしくらい食べなきゃだめだぞ。この手の病気はな

気分からきてるんだ、気分。な!
♪お医者様でぇ〜も、草津ーのー湯でもって言うだろ?
惚れた病ぃ〜はぁーあ…

岡倉先生「そんな、変な誤解はやめてください。
僕の病気はあくまでも
感冒の初期にしかすぎません。
寅「
ほんとか?ヒヒ…
岡倉先生「
そんな変な目つきはよしてください。
いったい、いつ僕が
お千代さんに恋をしたというのですか?

寅「
あ!

岡倉先生「
あ!」またシュンとしてしまう。

寅「
ほら、何も聞かないうちに
 全部白状しちゃったじゃないか、そうだろ?



岡倉先生、布団に潜り込んでしまう。


寅「
別に恥ずかしいことじゃないんだよ。
誰だって身に覚えがあることなんだからな、え。



岡倉先生「
寅さん

寅「
あいよ

岡倉先生「
君は、今までに恋をしたことがありますか?

寅「さあ、…ねえ…、
 あるんじゃないの、そういうことは…

                  

↑あるなんてもんじゃないです。
御前様のお嬢さんの冬子さん、
散歩先生のお嬢さんの夏子さん、
湯の山温泉の旅館の女将さんのお志津さん、
ルンビーニ幼稚園の先生の春子さん、
浦安の豆腐屋の節ちゃん、
おばちゃんの超遠縁でとらやに
下宿をした夕子さん、
津軽の鯵ヶ沢の娘さんの花子ちゃん、
喫茶店ロークの貴子さん、
そして多治見にお嫁に行った歌子ちゃん、
そして幼馴染の美女お千代さん!
等々もうすでになかなかの顔ぶれだ。

岡倉先生「それなら、今の僕の気持ちは分かってもらえますね。僕はね今までに
    恋を
研究したことがないもんだからよく分からないんですよ


寅「
どうも、インテリの言うことは大げさでいけないいよ。
 自分でお千代坊のとこへ行って
 スーッと話をすりゃ、いいじゃねえか。それでスミだよ


おいおい、岡倉先生と千代さんはほとんど
お互いまだ何も分かり合ってないぞ。早すぎ(^^;)



岡倉先生、むくっと起きて、

岡倉先生「
それが可能なくらいならこんな苦しい…。
    恋をする男の気持ちというのはですよ、
    寅さん、そんなものじゃない


え…

岡倉先生「
頭の中にはその人のことばかし、
    何を見てもお千代さんの顔に見えてくる。

    君の顔だってこうして見ているうちにだんだん

   角がとれてきて、瞳がつぶらになってきて
…」

寅「
ラッキョみたいになっちゃうの?

岡倉先生
ラッキョ?ラッキョとはなんのことです?

寅「お千代坊だよ、そっくりだろ?ハハハ

岡倉先生「
よくもあんな美しい人のことをラッキョだなんて!
    そういう君はいったいなんだ!


え!え!
(三角)フラスコみたいなツラしやがって!
そうでなきゃ
プラカード
だ!


寅「
な、なんか言ったな?
 さしあたりオレのツラのこと言ったな。
 おう!上等だよ!へえー!

てめえ、なんだい

夏の日のドブ板じゃ
ねえけどもな!
反り返ってるじゃねえか!
しゃくれてりゃ
いいってもんじゃないんだよ!
えー!
裏ひっくりかえしたら
ミミズがのたくってる
だろう、ざまあみろ
ってんだ!
この野郎!


岡倉先生「
ナンセンス!!

寅も立ち上がって

寅「
ナンデンション?
何言ってるか分かんないんだよ、
おまえは!愚にもつかねえ本読みやがってよ、
本読みゃーいいってもんじゃないん
だよ。ツラ見てると頭痛くなるよ、おまえは!


岡倉先生「
封建主義者!」と指を差す。

寅、指を払って、「
勝負するのか!おまえ、勝負を!

岡倉先生、泣きわめきながら寅にしがみついて行く。

寅、よける。


             


岡倉先生、寅にそれでも執拗にしがみつこうとして転げる。


さくら、上がってきて

さくら「どうかしたの?お兄ちゃん

寅「
下に下りていく。


この時、さきほどの↑レーシングカーのポスターの色が
青から赤に変わっていた!!
それにしても誰の趣味なんだろう?
レーシングカーなんて寅もさくらも博も興味ないだろうに。
まさか岡倉先生…?やっぱり満男かなあ?
素粒子論とレーシングカーってなんか関係あるのかな?

さくら、岡倉先生を心配して先生…





江戸川土手


江戸川土手で考え込む寅



さくら、満男連れて、やって来る。


さくら「
お兄ちゃん、なにしてんの、こんなところで

寅「
…、考え事よ…

さくら「
お兄ちゃんでも考えることあるの?

寅「
そら、あるさ。インテリと交際してるからな今、…

寅立ち上がって、お尻の汚れを気にする。

さくら、手でお尻をはたいてやる。


満男、川っぷちで「ドボーン」と言って遊んでいる。


さくら「
満男、危ないわよ


寅、雪駄両手にはめて、パンパン鳴らしながら、
満男に

寅「満男、ほら、そんなところでごちゃごちゃしてないで
 ドボーン!と、飛び込め、ドボーンっと



満男
ドボーン!

寅、ジャンプして、「ホラ、ドボーン!って





さくらのアパート

さくら裁縫をしている。


博、満男の
おもちゃの機関銃ドライバー使って直している。

満男、博の横で寝ている。



さくら「
お兄ちゃん、先生が気の毒になったんじゃないかしら、オレがまとめてやんなきゃ
   しょうがねえだろ、なんてね


博「
ちょっと頼り無い使者だけど案外上手くいくんじゃないかな。
 お千代さんも教授夫人には
 ふさわしいし、…なんだ、心配なのか?


さくら「
ひょっとして、お兄ちゃん、
  お千代さんが好きなんじゃないかしら?



博「
…うん…と、仰向けになる。


さくら、「ひょっとして」って、
あれだけ毎日美容院の近くをうろうろしてりゃ、
見え見えで当たり前だよ。
好きでなきゃそんなことしないよ。
今更「かしら?」
なんて思うこと自体、鈍すぎだ。


寅は明らかに気持ちが左右に引き裂かれている。
これはとてもつらいことだ。恋のライバルに自らが
進んで道を譲ることを考える寅。このシリーズで
始めてのパターン。




数日後、亀戸天神


寅とお千代さんが並んで歩いている。

「亀戸天神」は、都内でも有名な藤の花の名所だ。
天神という名のとおり祭神は菅原道真。
有名な学問の神様だ。この亀戸天神は、
その名の通り池に無数の亀が生息しているらしい。
その池に掛かっているのが太鼓橋というアーチ状の橋。
この橋を渡ってお千代さんと寅が歩いているのである。
境内には紅白の梅の木も約300本植えられている。
「藤」で有名な場所だが、この映画の時期は年の瀬なので
藤棚があるのみ。お千代さんの告白はこの藤棚のそばで撮影された。


寅「♪歩みののろい毛が生えた、どうして…

↑童謡「うさぎとかめ」『♪もしもし亀よ〜』の替え歌
それにしても今回は童謡が多く使われた。



千代「
寅ちゃん…

寅「
なんだ。…」「♪どうしてそんなに毛が生えた〜

歌の種類選べよな寅(−−;)


千代「
用があるってなんのこと?


寅「
うん…



                    


 
千代「
歌ばかり歌ってないで話してよ

寅「
どうも、言いにくいんだよな、これが…なぁ…

千代「
でも、ご飯食べて、お茶飲んで、
   かれこれ
4時間も経ってるのよ

寅「
そんなに経っちゃった?
 じゃあ、めんどくさいから今日は打ち切りにして帰るか


千代「
そんな…、せっかくお店を休みにして出てきたのに…」

お千代さん、わざわざ美容院休んで
寅の誘いについて来たのか…、
お千代さんなりにかなり気合が入っていると感じた。



寅「
うん…そうか…。あーなんてったらいいのかなあ…

お千代さん、ため息

遠くからなぜかあの、上にも書いた山本リンダの『どうにもとまらない』が聞こえてくる。
年末の商店街の有線か何か、という設定かもしれないが、
この場面ではちょっと無理がある。


寅「
えー…、おおかた察しはついているだろう。
 お千代坊は勘がいいから、え?



千代「
それは、まあ…なんとなく


お千代さん、ちょっと微笑み、はにかむ。


寅「
あ、それだよ、それでいいんだよ…。
 なんだ4時間もかかってくたびれちゃったよ



お千代さん、クスッっと笑いながら、橋の手すりを手でなぞり、
寅に求婚された嬉しさを表していた。


                   


寅、しゃがんで手すりに両腕を掛けながら

まあ、お千代坊もさ、
 いつまで一人でいられるわけでもないんだし、
 あんまりパッとした相手でもないんだけどさ、
 このあたりで手を打ったほうが
 いいんじゃねえかな…どうかね



と、お千代さんを見る。


お千代さん、微笑んで、下を向きながら

千代うん…


寅「
いや、いやだったらいやでいいんだよ、
 こういうことは…、いやかい?


↑寅、ほんとは心のどこかで「いや」と言って欲しい。




千代「
ううん…嫌じゃないわ…

寅「
じゃ、いいのかい?


千代「
フフ…、ずいぶん乱暴なプロポーズね。寅ちゃん

寅「
しかたがねえや、おれこういうこと苦手だしさ
←寅、まだ気づかない。


微笑んで、フッ、っと息を吐く千代。



寅「
じゃ、いいんだな


お千代さん、微笑みながら、
小さくもう一度うなづく。


ここまでのお千代さんは幸せだった




                   



寅、少し寂しそうに、


寅「
決まったようなもんだ。よし!
そうとなりゃ、
あいつ
電話で知らせてやろうか。
嬉しくなって気が狂っちゃうんじゃないかな?
電話どこかな?



っと腹巻から小銭を探す。


千代「
…?…寅ちゃん

寅「
なんだい?

千代「
あいつって誰のこと?

寅「
決まってるじゃないか、うちの2階のインテリだよ

千代「
岡倉先生!!?

寅「
そうだよ

お千代さん、失意の微笑みを寅に向け、


千代「
あ、フフ…私、勘違いしていた…と、寅を見る。


寅、「
勘違いって、誰と?まだ気づいていない。


お千代さん、寅から目をそらし、下を向き、


千代寅ちゃんと…




                    



寅、ビクッっと小さな目を大きくして、
あまりのショックに肩をガクッ!っと落とし、
しばらく何も言えない。



お千代さん、
後ろを向いて、向こうの手すりのところに行き、
自分のありのままの気持ちを寅に伝える。

千代「
私ね、寅ちゃんと一緒にいると
  なんだか気持ちがホッとするの。
  寅ちゃんと話をしてると、
  ああ、私は生きているんだなぁーって、
  そんな楽しい気持ちになるの。
  寅ちゃんとなら一緒に暮らしてもいいって、
  今、フッとそう思ったんだけど…


っと遠くを見る。


寅、すごく動揺し、肩をガタガタさせ、
唾を飲み込み、飲み込み、


寅「
ジョ…ジョージャンじゃないよ。
 そんなこと言われたら誰だって
 ビックリしちゃうよ。ハハハ…




お千代さん、寅の方に向きなおして
首をしっかり横に振りながら、
はっきりと
冗談じゃないわと言い、
真剣に寅を見つめる。



      


千代のテーマ美しく大きく流れていく

この「冗談じゃないわ」という言葉こそが
 お千代さんが自分の気持ちを真剣に
 寅に告白した、大事な発言である。



リリーも第15作「相合い傘」でさくらたちの質問に対して
「いいわよ、私のような女でよかったら」と言い、
「お兄ちゃんと結婚してもいいってこと?」念を押すさくらに
対して凄く真面目な表情で「そう」と話す。
これもまぎれもないリリーの愛の告白と結婚への同意だが、
やはり、その時は寅は不在であり、寅に面と向かって告白は
していない。第25作「ハイビスカスの花」でも沖縄の下宿先で、
リリーは、寅に告白めいた言葉を言っているが、
寅がすぐ分かるくらいにはっきりは言い切っていない。
だから全48作中、結婚をしたいという真剣な自分の
気持ちを寅にそのままストレート
に伝えたのはこの第10作のお千代さんを置いて他にはない。
この真っ正直な気持ちが私は大好きだ。




寅、お千代さんの視線に耐えられなくて
後ろずさりしながら目を上に上げることが
できないまま、橋の手すりに背中をもたれてしまう。
嬉しい以上に動揺してしまって
いる。(渥美さんの名演技が冴えていた)


            



お千代さんは、寅のこのような態度を見て、
幼馴染み以上の自分への特別の
気持ちが無いのだ、と、
勘違いしてしまったのかもしれない。
寅をこれ以上萎縮させてはいけない、
という気持ちで




寅を見つめ、                

下を向き考え小さく息をはき、

そしてうって変わって、
にこやかに             




嘘よ、フフ、やっぱり冗談よ
と、笑って言ってしまう。


あ〜!!!残念だァー!!!(T T)


寅、安堵感で溢れた顔になり、
ペタッっと尻餅をついてしまう。


寅「
そうだろ!冗談に決まってるよ!ハァー…


お千代さん、失恋の気持ちを隠しながら、


千代「
じゃ、そろそろ帰りましょうか…

寅、しゃがんだまま、お千代さんの方を見ないで

そうね、帰ろうか

千代、ゆっくり先に歩きながら

千代買物があるから、寄り道するわ…


寅、しゃがんだまま、まだ、
お千代さんを見ないで

寅「
うん!

寅、両手で顔や目を擦って
ハァーッと息をはく。

遠ざかるお千代さん。

お千代さん、
もう一度だけ振り返り寅を見る。


寅は相変わらず、
お千代さんを見ないで、
下を向いて大きなため息をついている。

お千代さん、ゆっくりずっと遠ざかっていく。



          


お千代さんは最後にもう一度寅の方を見る。
なぜならば、寅に呼び止めて欲しいからだ。
そしてもう一度寅の気持ちを確かめたいと
思ったに違いない。
その一分の望みも絶たれたのを観て、
なんとも切なく、やるせない気持ちになった。

この場面を見るたびにそのまま、
スクリーンの中に飛び込んでいって、
寅の手を引いて、
『お千代さんともう一度話をしろ!』と言いたくなる。


この一連のシーンの考察で
巷では、『結局寅は、こんなダメな自分が一緒になっても、
お千代さんを幸せにしてやれないことを、
うすうす知っているから、敵前逃亡したのだ。』という意見があるが、
それはたった一面の真理でしかすぎず、
もう一面では、この寅の行為は、寅の強烈なエゴイズムの
表れだといえる。

どんなにくだらないと思われている人間でも、
一人の人を愛し、人生を共にすることは出来る。
そもそも、どんな人も大して立派でなんかない。
みんな欠点だらけで、その日常はくだらないことばかり
考えている。寅は私に言わせれば、無欲で心優しい人である。

つまり、結婚という行為は「資格」や「人格」が必要なのではなく
「覚悟」や「決意」が必要なのであろう。寅の恋愛は、
純粋で濁りが無いが、しかし、それは、あくまでも相手に憧れて、
相手のためになることをしてあげているうちが楽しいのであり、
そこから発展する「結婚」という、相手と共にリアルな日常と
その背後にある複雑な人生を見つめながら何十年も歩むような
行為はできないのである。

いや、愛する人のそんなリアルな日常を寅は知りたくないのだ。
と言ってもいいのかもしれない。
良い悪いの問題でも人格の問題でもない。
そういう人間がいるということだ。それ以上でもそれ以下でもない。

寅は見合いをしたこともあるし、
何度も真剣に結婚を考えたことがあるが、
それはあくまでも願望や推測の状況時のことであり、
決定的に相手からの告白があり結婚が決まりそうになった
第10作「夢枕」、第15作「相合い傘」第25作「ハイビスカスの花」では、
やはり踏み切れずに、マドンナに少し悲しい思いをさせる。
罪な男なのだ。
また、第29作「あじさいの恋」
第32作「口笛を吹く寅次郎」第38作「知床慕情」あたり
でもその気になれば、結婚はできたはずだ。
しかし結局寅は「夢枕」同様またまた『逃げる』のである。

この寅の気質はこの後も、数々のマドンナに
愛されながらも変わることなく、第48作「紅の花」ラスト、
リリーからの手紙の内容で分かるように最後の最後まで引きずって
いくことになる。
渥美清さんの言葉を借りれば、
「結局、寅はてめえが一番かわいいんでしょうね」という
ことにもなる。

しかし、皮肉にも、誰のためでもなく、ひょうひょうと生き、
その時その時の出会いの中で相手に愛されながら、
短い愛情を花開かせていった車寅次郎を、多くの国民は
大いに支持をし、『寅さん』はリアルでヤクザなフーテンから
愉快で人情味のあるヒーローに変身していくのである。

その萌芽が第8作「寅次郎恋歌」であり、
第9作「柴又慕情」でさらにその色は濃くなり、
この第10作「夢枕」で遂に完全に変身したのである。

もちろん寅次郎の恋愛とは別の次元で、
さくらとの不変の兄妹愛が全編を通して底に
流れていて、この長い長い物語を土台で完璧に
支えていたのは言うまでもない。




とらや

おいちゃん「おい、先生どうしてる?

おばちゃん「
待ちくたびれちゃってさ、気の毒みたいだよ…

おいちゃん「
上手くいったのかなあ…

千代さんはまだ岡倉先生のこと知らないんだってば、
どんなに上手く説明しても
拒否しないのがせきのやま。上手くいきようがない。




寅が帰ってくる。



さくら「
お帰りなさい

おいちゃん「
どうだった?上手くいったか?

寅「
先生いるか?

さくら「
うん

オレの部屋来るように言ってくれよ
 と2階へ上がっていく。

座敷に仮面ライダーの人形が置いてある。



さくら「
上手くいかなかったんじゃないかな…
   今のお兄ちゃんの顔…


おいちゃん「
ヘマやったんじゃないか、寅の奴…

おばちゃん「
困ったねー

さくら「


おばちゃん「
さくら」 と、岡倉先生を呼ぶことを促す。

さくら、階段の下に行って、


さくら「
先生ー


さくら階段上りながら


さくら「
あの、今、兄が帰って…

岡倉先生「はい!」と言いながら、
ダダダ!ドドド!!と階段を駆け下りて
こける。



さくら、怖くて逃げる。(^^;)


             


岡倉先生そのままピュ−ッとおいちゃんを蹴散らし、
帯を撒き散らし、寅のいる部屋
まで物凄い勢いで上っていく。


おいちゃん、起き上がって、

おいちゃん「
あー、びっくりした!
   まるで寅だな!


2階から岡倉先生の
結論だけ教えてください


おいちゃん、おばちゃん、さくら、
階段の下で
耳をダンボにして聞いている。

岡倉先生「
分かりました…

岡倉先生「
もう、結構です…と言いながらゆっくり下りてくる。

↑夢遊病者状態(^^;)


おいちゃんとおばちゃん深々と頭を下げる。

さくら、落ちていた帯を岡倉先生に渡そうとする。

おいちゃんとおばちゃん、それ見て、大慌て。
さくらもすぐに気づいて岡倉先生から帯を取り上げて
ぐるぐる巻きにしてからもう一度手渡していた。


首吊りを未然に防ごうとしてるのでしょう。(^^;)


↑この時のさくらの慌てながら、
帯をぐるぐる巻いていく姿は笑えます!




タコ社長、例のごとく間が悪く入ってくる。

社長「おい、どうだったい!?お千代さんの返事は!?
  
まさかふられたわけじゃ…あー!!

目の前に幽霊のようなのような岡倉先生がいる。


もちろん今までのパターンならここに寅がいた。
今回は岡倉先生。



社長目をつぶって梅干顔。


岡倉先生、社長に向かってキッと怒り、社長怖がってよける。

岡倉先生「
寅さんなら、
     殴っているところでしょう…寅さんならね…


社長怖がる。


岡倉先生が2階へ上がったあと、社長ようやく安心して、


社長「
言うことが違うね、インテリは」

おいちゃん「
感心している場合じゃねえよ。
    おい、目を離すんじゃねえぞ


さくら、寅のいる2階の荷物部屋へ上がっていく。

さくら「お兄ちゃん

寅、向こうを向いたまま。

さくら「
だめだったの?…

寅、小さくうなずく。

さくら「
ちゃんと、上手く話したの?


寅、向こうを向いたまま「
話したよ


さくら「
何かあったんじゃない?←さくらは勘がいい

寅「


寅「
さくら

さくら「
ん?

寅「
ほんとはな、ほんとは千代…


              


寅「まあ、いいや…。何てことはないんだよ…と、窓を見る。


寅はこの時、お千代さんの告白を
さくらに伝えなかったが、それは当然のことだ。

お千代さんの気持ちを受け止めることが
出来なかった寅に、彼女の気持ちを
たとえさくらであろうが吹聴する資格はない。
それはお千代さんに対する礼儀だろう。
もちろん、さくらにあの告白を伝えることによって、
自分がお千代さんと結婚しようと
新しく決意していくならば、話は別だが…。



さくら「ねえ、どうしたの?

寅「
どうもしないよ。下へ下りてろようるせえから

さくら「



さくら、気になりながらもゆっくり下へ下りて行く。

木枯らしがビュービュー吹いている。




青空の正月


とらやの茶の間


みんなで何か笑いあっている。
お千代さんもお年始の挨拶に来ている。



おいちゃん、笑いながら「
お千代坊も、先生の嫁さんになったらどうだ?え?

おばちゃん「
そうだよねー、強がり言ってないでさー

千代「
本当よ、もう結婚なんてこりごりよ

おばちゃん「
何いってんの、まだ若いくせに、ねえー


社長「
ほんとだよ

おいちゃん
なんならさ、あのー…寅でどうだい?えー。


博も社長も大笑い。




千代、真面目な顔で

千代
どうして、可笑しいの!?



              



みんな『シーン


千代
私、寅ちゃんとならいいわ


おいちゃん「
えー−!!!!?


千代
でもだめねえ、ふられちゃったから…


社長「あっ、びっくりした、オレ本当かと思ったよ!おい!

と、博の肩を叩く。



お千代さん社長に向かって

千代「本当よ真面目に答える。


さくら
だめよ、そんなこと言っちゃ。お兄ちゃん本気にするわよ



千代、さくらに

千代「
冗談じゃないのよ


社長「またまたーハハハ!とすぐ茶化す。


お千代さんもつられてつい笑ってしまう。
みんなも笑っ
ている。


でもさくらだけはお千代さんを
見つめたまま、笑っていない。



千代のテーマが美しく流れる。



お千代さんを見つめるさくら。


さくらは、お千代さんが「冗談じゃないのよ」と
言った言葉の意味を考え、あの日何が
二人にあったのかを少し理解したのだった。

さくらは短い時間だがお千代さんを見つめ、
そして下を向き、深く考える動作をしている。

お千代さんの言葉をさくらが受け止めることが
出来た瞬間だった。


さくらにとっても兄の「得恋的失恋」を
垣間見る初めての経験でもあった。



「冗談じゃないのよ」と言う
お千代さんの言葉を真正面から
受け入れるさくら
斜め後ろからのアングルでも
さくらが笑っていないのがはっき
リ分かる。

                     


そして、下を向いてその言葉
の意味を考え、あの日、2階で
兄は何を言いたかったのかを
理解したのだった。

                     



お千代さんは、あの日、寅に真正面からぶつかり、
告白し、そして今、もう一度自分の
寅に対する気持ちをとらやの全員の前で告白している。
この人は常に直球を投げる人
なんだなー。だから、あんなに姿かたちが
凛としているんだろう。私もかくありたいと憧れる。



そしてそのあとさくらもなにごともなかったように
みんなと一緒に
笑っていた。



おいちゃん、笑いながら「ラッキョあるよ」とか言って笑わせる。

おばちゃん「
寅ちゃん、今ごろどっかでクシャミしてるわよ、きっと


さくら、笑いながらも少し切ない気持ちになって、
お膳に置いてある寅からお千代さん宛て
に来た年賀状をもう一度目で読み返す。



               



『謹賀新年』と大きく書いたあと、
本文は寅のナレーションと共に、


『明けましておめでとうございます。
わたくし、柴又におります日々は
思い起こすだに恥ずかしきことの数々、
今はただ、後悔と反省の日々を
過ごしておりますれば、
お千代坊にもご放念下されたく、
恐惶(向後)万端ひれ伏して、
おん願い申し上げます。

末筆ながら、あなた様の幸せを
遠い他国の空からお祈りして
おります。 車寅次郎 』




この年賀状の横に
岡倉先生からのエアメールも置いてあった。
車竜造 様(Kuruma Ryuzo) 
 
Los Angeles 空港にて  岡倉金之助

と、書いてあったので、
アメリカのプリンストン大学で
心機一転研究を頑張る気持ちに
なったのだろう。まあ、これはこれで
めでたしめでたしだ。


プリンストン大学は東部アメリカでも伝統のある
名門校で特に岡倉先生の専門である理論物理学の分野では、
アインシュタイン博士(相対性理論)、
湯川秀樹博士(中間素粒子論)が居られたことでも有名だ。






旅先の茶店 
保坂路にある。

山梨県 北杜市 明野村
(小寅さんの現地調査による)


山梨県北杜市須玉町江草835

篠原商店

    
   




      2013年12月18日撮影

     




寅が酒を飲みながら、登と店のおかみさんに
お千代さんとの一件を話している。


寅「
オレは言ったのよ、お千代坊、おめえのその気持ちは
分かるが、どうかオレのことはあきらめてくれ。
そこが渡世人のつれえところよ』ってな


↑相当脚色しているぞ!(^^;)


登「
かわいそうにな…その、お千代さんって人

寅「
うん…泣いてたよ←泣いてない泣いてないゞ( ̄∇ ̄;)

おかみさん「
罪作りな男だねえー、
    そんなに女を泣かせちゃだめじゃないか…



寅「
泣かせたかねえんだけどなあ…

なあにカッコつけてんだまったく ┐(-。ー;)┌



              
                  


おかみさん「はやいとこお嫁さんもらいなよ


寅「
ふっ…、それがねぇ…


登、寅を見て「カァー」と笑う。


寅、笑って、「
バカ野郎!」と、
箸で登のおでこを『ポン』とたたく。



寅「
さて、ばあさん、ごちそうになったねー、
釣りはいらねえよ。お孫さんに飴玉のひとつも

買ってやってくんな。


500円札を置く。


意気揚揚と店を出る、寅、

おかみさん、登に向かって

「ちょっと兄さん、これじゃ足らないよ」



登、困って「
いくら?

おかみさん「
あと200円

登、いくら探してもお金が見つからず、
仕方無しに自分の
上着をおかみさんに押し付けて
「すいません。これでお願いします」と逃げていく。


↑200円くらいで上着渡してたら
すぐに真っ裸になっちゃうぞ登。




塩川に架かる【清水橋】

↑の茶屋はずっと北
、須玉町江草にある。
それに対してこの橋は須玉町藤田にある。
5キロ以上離れている。



古い橋を渡りながら、

登「ー!見てくれ!ババアに上着取られちゃった!
 ハハハ!」「あー寒、寒い



    


寅、笑いながら

寅「バカ野郎!しょうがねえなまったく、
  てめえ、それくらいの金ねえのかよー!


登、晴れ着姿の娘さん達に向かって

ねえちゃん、あったかそうねー!

とからかい寅とはしゃぎながら嬉しそうに歩いて行く。



             




     








製作 ................  島津清
企画 ................  高島幸夫 小林俊一
監督 ................  山田洋次
監督助手 .......  五十嵐敬司
脚本 ................  山田洋次 朝間義隆
原作 ................  山田洋次
撮影 ................  高羽哲夫
音楽 ................  山本直純
美術 ................  佐藤公信
録音 ................  中村寛
調音 ................  松本隆司
照明 ................  青木好文
編集 ................  石井厳
進行 ................  玉生久宗
製作主任 ............池田義徳
スチール .............堺謙一
製作宣伝 ............藤谷正雄
協力 ................  ダイハツ自動車
          柴又神明会
 

出演 
 
車寅次郎 ...........  渥美清
諏訪さくら .......   倍賞千恵子
志村千代 .......  八千草薫
岡倉金之助
......  米倉斉加年

車竜造 ................ 松村達雄
車つね ................ 三崎千恵子
諏訪博 ................ 前田吟
諏訪満男 ............ 中村はやと.
(社長)梅太郎.....太宰久雄
源公 ................   佐藤蛾次郎

御前様 ................ 笠智衆

旧家の奥様....... 田中絹代

登 ................     津坂匡章
ヤクザの親分
.....吉田義夫
高垣刑事 
.....  河村憲一郎
湯中教授 
.....  清水将夫

           岡崎夏子
           武智豊子
           三角八郎
           中田昇
           江藤孝
           長谷川英敏
           羽生昭彦
           村上猛
           粟辻聰
           笹原光子
           安井真樹子
           後藤泰子
           谷よしの


上映時間 98分
動員数 211万1000人
配収 7億6000万円



次回は北の大地で遂にリリー登場!
第11作「寅次郎忘れな草」です!


今回の更新は2004年7月19日でした。
次回更新はだいたい
7月24日頃です






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