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『松村達雄おいちゃん』名場面集













2代目おいちゃんの、松村おいちゃんはパチンコ好きで駄洒落好きで、喧嘩っぱやくて、
ちょっとスケベで、ちょっと軽薄で、涙もろくてチャキチャキでキップが良くて、
カッコ良くてハンサムで、そして、誰よりも寅思いで…。
あんな素敵なおいちゃんはいませんでした。
おいちゃん以外でも『軽妙洒脱』を絵に描いたような見事なセンスで、
柔らかな存在感を醸し出していました。
ちなみに、松村おいちゃんが出演された5作品は全て名作です。
以下に、第13作「恋やつれ」での松村おいちゃん最高の演技を含めた
数々の「男はつらいよ」での名場面を紹介いたします。



                第12作「私の寅さん」でみんなを笑わすおいちゃん
              








第6作「純情篇」より




その@  軽妙洒脱なスケベ医者で初登場の松村達雄さん



医者がきて
後の2代目おいちゃん
松村達雄さん登場!!

寅「だいじょうぶか?あの医者」
おいちゃん
あの先生はね、ちょっとでも自信がないと、
すぐ他の医者紹介するんだ。その点じゃ信用していいよ

寅「情けねえ医者だなあ、じゃぁ、
ずいぶん今まで殺してんだろ?←おいおい…(^^;)

医者降りてくる。

医者「いやー、なんでもないちょっと疲れてるだけだ。一日ゆっくり寝てリャ治るよ」
寅「
よく診てくれたんでしょうね
医者「
見た、見たじっくり見た!!
しかし、美人だネエ!!

寅「何ィ!!?、いっていドコ見てたんだよ!?」


医者「
どこったって…オッパイ…←身振り手振りつき
あ―――!!!←寅錯乱!(@@;)
松村医者の首絞める 
 



松村おいちゃん、とんでもない形で初登場(^^;)
しかし、見事なはまり役!!



                       









そのA  松村おいちゃんと森川おいちゃん御対面


              


森川信さんは第8作の直後に亡くなられてしまい、
第9作から松村達雄さんになるが、くしくも
この二人が第6作で上の画像のように
競演しているのは感慨深い。








そのB  続.軽妙洒脱な松村達雄さんのスケベ医者




寅「諦めてもらいます
医者「なに?」
寅「これだけ言やぁわかるだろう。いい年して可哀想に。今更女に惚れるのはちょっと無理だぜ。あばよ!!」
患者「だれです?」
医者「あれは、オレの患者でね、
神経侵されてるんだ。オレの手に負えないんだ。
はい、胸を開けてごらん。なんだい、
君は男か!
「はい」
医者「バカッ!
この松村さんの『バカッ』が最高!
いい味だしてるなあ〜。




               











第9作「柴又慕情」より







その@  寅と松村おいちゃんの足技喧嘩



おいちゃん遂に怒って「何が間違いだ!その通りだよ!
寅振り返って「なんだと!!?」
寅「おいちゃん!今何て言った!!」
おいちゃん「おまえが帰ってくるのは迷惑だよって!!机をバン!!と叩く。
寅「おいちゃん!」と言いつつ、おいちゃんの体をひっぱる。
寅「よくそういうことが言えるな!よくそういうことが言えるな!!
あっ、オレは出ていこ、出て行ってやるよ!へっ!なんだこんなボロ屋が
、家賃が6000円だと!?誰が払えるんでい

おいちゃん「しかったらてめえで払ってみろ!
寅怒って「どうしてそういうものの言い方!」といいつつ
おいちゃんをこかし足を
グリグリ攻撃する。

この
足ぐりぐりはその後も繰り返される。


               




                         第11作「忘れな草」でも喧嘩で足ぐりぐり
                       








そのA  くだらないシャレで座をしらけさす松村おいちゃん





夕食が終って

寅「なんか面白い話ないかよ、ぱーっと席が明るくなるような。
おいちゃん、得意じゃないか


おいちゃん「
あるあるフフフと思い出し笑い
寅「
なに



                        




おいちゃん「
この間ね、お駒で社長と飲んでいたんだよ。
社長の奴が便所の中で『プーッ』
とデカイ屁たれやがったんだよ。フフフ…



一同聞き入る。
おいちゃん「
そしたらなおかみがビックリして、
あら、今の音なんだろう?って言うからさ、
ヒヒヒ…
オレがね、
ヒヒヒ…、あれは社長の屁だよって
言ったら、
『へーッ』だって、ヒヒヒ!





                         





おばちゃん、怒って、おいちゃんの肩をパシ!

松村おいちゃんの独壇場!(^^;)



一同シラー



寅、歌子に「
つまんないでしょう…
寅「
おいちゃん…、長生きしろよ…

寅「さくらは
の話。おいちゃんはの話。もうちょっと上品な話題はないのかよ、まったく…」
さくら、また痔のこと言われて、驚く










第11作「寅次郎忘れな草」より






その@  ろれつがまわらない松村おいちゃん





リリー「やーねえ自分の家間違えるなんて」


                     


寅二カーっと笑って「そうだね。ハハハ・・・・
ただいま。」おいちゃんたちを見て笑いがひく。
寅「なんだい!?みんな変な顔して。
おいちゃんなんかおどろいてんのか?
と言いながら
寅、おいちゃんたちにウインク

おいちゃん「
おらあおどろろろかねえ!
おらあおどろろろろかねえ!


↑松村おいちゃん名人芸!(^^)/

        


寅「
このね口をフガフガさせてるもうろく爺ィ
俺のおじきでね。

こっちで
浴衣着てはれぼったくなってんの
俺のおばちゃん

まえっツラで口ぱかっと開けてんのが妹のさくら
(さくらハッとして口をかたく閉める。)
その向こうでサルガニ合戦の臼みてェな顎
してんのがのが亭主だ。
(博、びくっと驚く。)
その向こうは見た通りタコ!ね!

こちら俺の友達の
レコード歌手のリリーさん」寅ニッコリ笑う










第12作「私の寅さん」より







その@  遥か九州から寅と電話で喧嘩する松村おいちゃん



寅、怒って「わかったわかった、はい分かりました、
そうか、おいちゃんはそういうケチな男か

はい、わたくしはケチな叔父貴を持って幸せ者ですよ!

おいちゃん「なんだとこのやろう!
寅「おめえのケチは有名じゃねえか!とらやのケチだんごって知らねえのかい!?」

第6作「純情篇」でもこのパターンがあった↓
なんべんでも言ってやる!近所のガキどもはみんな言ってるぜ、
とらやの団子はね、ハナクソ団子だってよ!!ハハッハ!」
「くそー!!ヤロー!!テメエー!」揉み合いになる


おいちゃん「やい!寅!てめえ!
言って言いことと悪いことがあるんだぞ


寅「えへへへ、面白いねえ、ケチおやじ怒ったね。一人前に!

さくらも博も後ろではらはら、

おいちゃん「ちきしょうー悔しいな!!
この野郎!
てめえがそばにいたら
ぶん殴ってやるよ!


さくらたちうしろで「おいちゃん、そんなの言わないで」と止める

寅「いいねー、ぶってちょうだい!
どこ?どこ?
どッから殴るんだい!?
殴ってくれ殴ってくれよ!!←電話だからね(^^;)

おいちゃん「てめえなんか
出て行きやがれ!!ってんだ!
←電話だって(^^;)

さくらたち「おいちゃん」
博「相手は電話なんですから←言える言える!!
寅「いいやがったな この野郎!!
おいちゃん「えー!!」
寅「てめえ!出てけ!!?
それを言ったらおしまいだぞ!
←電話だけどね(-_-;)¶


                      


おいちゃん「あー!おしまいだよ!おめえ!←電話だよ!(^^;)

さくらたち「いいかげんにしなさい」ととめる

寅「よおし!出てってやるからな!てめえ!
あとでもって後悔したってきかねえぞ!今畜生!
←電話…(^^;)
ガチャン!と電話切る
寅「さくら!止めるな!止めるな!さくら!
と言いつつ外に出て行こうとするが、はっと誰もいないことに気づく。

寅我に帰り振り返って、ぼーっとしてしまう。


タコ社長がぼーっと茶の間に座っている。

寅、つつつ、と歩いて2階に上がってしまう。

社長「哀れで見ちゃいられねえな…」 と、首を振りながら酒を飲む











そのA  パントマイムをする松村おいちゃん



さくら「お兄ちゃん、どこいくの?

寅「さくら、博と仲良くやれよ。アンちゃん旅に出るからよ
さくら「どうして?

おいちゃん後ろで『りつ子さんに男が現れて、寅がショックで
泣いて旅に出る』というパントマイムをする。
松村さんの可笑しさ
が爆発(^^)/


寅「何も聞くな、わけは聞くなよ←聞かなくても分かるよ(^^;)

寅、振り向いて、おいちゃんのパントマイムの「泣き」部分を見て。
寅「おいちゃんまで泣くこたぁねえよ。なあ…

ちょうど泣きの部分でよかったねおいちゃん。寅にバレないで。


写真左から @りつ子さんと男が来て。 A仲良く話してて Bその時に寅がかち合っちゃって C四角い顔がお陀仏で D泣きの涙

                  



              ↓ で、このように泣いているわけです。(^^;)

                  



この演技は松村おいちゃんの可笑しさが
存分に発揮されていた、名場面。
こういう『間』は松村おいちゃんの得意技。















第13作「寅次郎恋やつれ」より






その@   松村おいちゃん刀振り回して大乱闘




さくら「やめてねえやめてみんなやめてよ!
私がねお兄さんと一緒に絹代さんに会いに行くわ。

ね?お兄ちゃんそれでいいでしょ?
おばちゃん「そうだよ」
寅「うるせいてめえなんかに世話になるかい!この野郎!
と手をほどこうとして
さくらを押し倒す(><;)
おいちゃん「
よくもさくらに手ェかけやがったな!
寅、うちわをお膳に叩きつける!
さくら「きゃあ!何すんのよおにいちゃん
寅「何だよ!」
博「兄さんやめてくださいよ」
おいちゃん「
よっし!!」っと


松村おいちゃん、おもちゃの刀抜いて
3回寅に面を打つ!

       


みんな入り乱れての大乱闘。




                    




博「兄さん!」
さくら「お兄ちゃんやめなさい」
おばちゃん「ちょっとあんたおよしよちょっと」

寅「
あ、てめえ!結婚前の体
傷つけやがったな!

ダアアー!」
っと、刀をもぎとり一発おいちゃんに胴を打つ

ダァー!と博にも胴!
博「あっ痛っ!」
大立ち回り
寅社長の方を向き、「ダアア!」と肩を打ち、
その後おいちゃんに再度「ダアア!」 胴!

おいちゃんも
鞘を使って応戦!


寅「クアア!」と羽交い絞めの博を振り落とす!








そのA イチャイチャイチャイチャする松村おいちゃん




さくら「そんなお兄ちゃん無茶苦茶な・・
寅「黙れ未亡人!誰がやねん(^^;)
博「兄さん落ち着いて・・
寅「黙れっつうの!!
一同「あ!あ〜あ、博後ろに張り倒される
おばちゃん、博とぶつかり、おいちゃんによろけ倒れる
おいちゃん、おばちゃんを抱きかかえて
おいちゃん「ォお、イヤ、あぶナ・・
寅「何をやってんだよおいちゃんもおばちゃんも
そんな所で
イチャイチャイチャイチャするなよ!


                        イチャイチャイチャイチャ(^^;)
                     



おいちゃん、思いっきりおばちゃんを切り離す。
おばちゃんあたふた状態(^^;)

よお!御両人!











そのB   松村おいちゃんの最高の演技





歌子「お父さん…




                     




父親、ちょっと戸惑ったように

父親「うん?…何だ…ともう一度座る。

歌子「・・長い間心配をかけてごめんなさい…

父親「いや・・うん、何も君が…謝ることはない…。
謝るのは、多分、私の方だろう…

いや、私は…口が下手だから…何というか
誤解されることが多くてな




美しいメロディが流れる。



父親「かし私は君が自分の道を。
自分の信ずる道を選んで、
その道を真っ直ぐに進んで行ったことを・・
うれしく…。私は…本当に…うれしく…


と、遂に胸が高ぶり、泣き、ハンカチを目に当てる。




                        





歌子も泣きながら「あたし…もっと早くお父さんに
会いに行けばよかったのにね…
ごめんなさいね…ごめんなさい…

と、父親の腕をしっかり掴み、
歌子「ごめんなさい…ウックゥゥゥ・・・と泣き崩れる。

おいちゃんの肩がぐっと落ち、震え続ける。



                     
               



こんなにも、この親子は会いたかったのだ。
父親こそ娘との和解を望んでいたのだろう。
娘に心底誇りを持っていた父親。
彼は実は娘の人生を理解していた。
歌子が見た生涯にたった一度の父親の涙。
本当に相手に伝えたかったことを、ようやく言い合えた二人。
和解の時期が手遅れにならなくて本当によかった。
二人は間に合ったのだ。




おいちゃん 「クフッズズズーゥッグファ
ぐちゃぐちゃに泣いているおいちゃん。



                    




さくら、目を潤ませて、歌子たちを見て、
 さくら「ねえ…良かったね、おばちゃんとおばちゃんに駆け寄る。



                    



おばちゃんも目を泣き腫らしながら
おばちゃんズゥゥゥ。よかったねェ・・・ズッ

おいちゃん、ガッと、立ち上がり、
おいちゃん「ヅゥ・・さくら!すぐ工場行って
博と社長呼んで来い







                     






男はつらいよ メインテーマがゆったりと流れる。


おいちゃん「おいつね!何だこの野郎、
メソメソしやがって、
酒だよ!
さ、酒の支度だよ!









                   







おばちゃん、泣きながら台所へ。






おい!寅ァ・・なんだいお前まで
バカみたいにそんなとこに突っ立って…


おいちゃん、優しい声…



                   




寅、店先で立って下を向き泣いてる。 

釣忍がチリンチリンチリンチチリン リン…と鳴る





                   




産みの母親に捨てられ、父親にも縁遠く育ってしまった寅。
そんな寅が垣間見た父と娘の深くて強い絆。この寅の涙は
父娘和解への感激の涙であると同時に、寂しい自分の
生い立ちへの慰めの涙でもあるのかもしれない。釣忍の
風鈴の朱色がいやに目に沁みた。
  
          

この作品の最も重要な部分とも言えるこの場面は、ともすれば
情感が強く支配し、テンポが止まってしまう場面でもある。
宮口さんが感動的に演じれば演じるほど、観る人はその演技の中に
入り込んで意識がそこにとどまって完結してしまう。「男はつらいよ」の
世界からずれてしまう。それを見事に広がりのあるカットに成立させて
いたのは、松村おいちゃんの、メリハリのある強い演技と台詞回しだ。
小細工抜きで真っ向勝負の彼の演技はこの場を大きな空気に変える
ことに成功し、あのシーンにもう一度テンポを与えていた。
見事な山田監督の演出。そして、松村達雄さんの面目躍如。
この演技は森川さんでも、下條さんでもなく、松村さんならではの世界
だったと思う。松村さんはここぞと言う時の「強い演技」ができる人だった。

それにしてもこの場面は「柴又慕情」からの歴史があってこその
感動だったことを思うに、続篇をあえて制作した意味がここに見事に
説得力を持つのである。







                  








そして…




第26作  『寅次郎かもめ歌』より



松村達雄さんここにあり。



松村さん扮する定時制高校の国語教師が
国鉄職員の濱口國雄作「便所掃除」という
長い詩を全文朗読する場面。
この時の松村さんは、なんとも味わい深かかった。






                








濱口國雄「便所掃除」。


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頭のしんまでくさくなります
まともに見ることが出来ません
神経までしびれる悲しいよごしかたです
澄んだ夜明けの空気もくさくします
掃除がいっぺんにいやになります

むかつくようなババ糞がかけてあります。
どうして落ち着いてしてくれないのでしょうか
尻の穴でも曲がっているのでしょう。
それともよっぽど慌てたのでしょう


唇をかみしめ戸のサンに足をかけます。

静かに水を流します。
ババ糞におそるおそる箒をあてます。
ボトンボトン便坪に落ちます。
乾いた糞はなかなか取れません。
タワシに砂をつけます。
手をつき入れて磨きます。
汚水が顔にかかります。
唇にもつきます。
そんなことにかまっていられません。
ゴシゴシ美しくするのが目的です。

朝風が壷から顔をなであげます。
心も糞に慣れてきます。
水を流します。
雑巾で拭きます。
金隠しのうらまで丁寧に拭きます。
もう一度水をかけます。
クレゾール液を撒きます。
白い乳液から新鮮な一瞬が流れます。

便所を美しくする娘は美しい娘を産むと言っていた母を思い出します。
僕は男です。
美しい妻に会えるかもしれません。







以上、松村達雄さん特集でした。




心より
ご冥福をお祈り申し上げます。





                 

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