バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第8作 男はつらいよ

1971年12月29日封切り







第1作からの立て続けのヒットに松竹はいよいよ「男はつらいよ」を、会社の看板映画のひとつにすべく「B級喜劇映画」意識を脱却しはじめる
のがこの第8作からである。先行ロードショウとして、松竹系の洋画劇場で期間限定1本封切り決断。これが見事に成功するのである。そして
その勢いを買っての年末一斉一般封切り、と作戦がしっかり当たるのであった。上映時間もこれまでのなかで最長の113分である。資金を出
す側がやる気を見せると山田監督もそれに答えるように、それまでの7作品を総括するような、強い構成力、映像美、明確なテーマ意識を持って
制作したと思われる。それほどにもこの作品は見ごたえがある。それまで「望郷の念、定着への憧れ」を主題に置いてきた山田監督がはじめて
『定着と放浪の相互憧憬』という、より複雑でより本質的なテーマへと踏み込んでいるのがすばらしい。その前年に「家族」を制作している山田監
督がその実力、成績、共にいよいよ松竹に認められ始めた証がこの作品ともいえよう。私のベスト24作品の中でもかなり上位に入る作品だ。

また、名優森川信さんの遺作でもある。この第8作でも森川さんはその天才的才能をあますところなくなく発揮し、見事にスクリーンの中で輝いてい
た。寅との大喧嘩も凄い迫力だった。

また、そういうわけで、この作品は男はつらいよの歴史に残る美しい名場面が多い。大空小百合ちゃんとの雨の日のやり取り。さくらが「かあさんの
歌」を歌う深夜のとらや。葬儀後の博の胸のうちの吐露。博の父が寅と一緒に買物に行くシーンの蒸気機関車とふたり。博の父が寅に語る『りんどう
の話』。貴子と寅が『旅の暮らし』を語り合う夜。さくらが寅の旅の暮らしを話すとらやの二階。強い風の中さくらを振り切って襟を立てて柴又を出て行
く寅の後姿。そして晩秋の八ヶ岳を背景に旅を続ける寅と、四国での一座との再会と日本晴れ。なんとさわやかなラストだろう。
「夕焼け小焼け」のラスト、「ハイビスカスの花」のラスト、とならんで、この「寅次郎恋歌」のラストは見る人の心に生きる力を抱かせてくれる。誇張で
もなんでもなく本当にそう思える。

なお、源ちゃんはこの作品は自動車事故で怪我か何かしたとかでお休み。出てこない。
ポスター刷りしたあとだったのでポスターには載っているのはご愛嬌。



オープニングは、雨の日の四国の片田舎の午後である。
(この作品も第6作、第7作同様夢はない。)

この映画のラスト近く、寅が貴子に高知での話をしているので、ひょっとするとこのオープニングの土地は「高知」かもしれない。
寅が最後まで行かなかった県が富山県と高知県となっているが、
もし、この場面が高知なら、高知はすでに行っていることになる。


磯野漁協会館を借りて興行を打つ坂東鶴八郎一座の旗が雨に濡れている。
質の悪いスピーから『♪みーんなでー肩をくみーなーがーらー。歌ぁーをー…』(たれか故郷を思わざる)
この作品の中で何度もこの歌は出てくる。


 作詞 西条 八十
 作曲 古賀 政男
 唄  霧島  昇

 花摘む野辺に 日は落ちて
 みんなで肩を くみながら
 唄をうたった 帰りみち
 幼馴染みの あの友この友
 ああ 誰か故郷を 思わざる


 1940年(昭和15年)



坂東鶴八郎は後に改名:中村菊之丞とも言う。
第18作「純情詩集」でもこの一座と寅との交流が美しくそして面白く描かれていた。
その後もちょくちょく出演。しかし
第37作「幸福の青い鳥」では座長はすでに亡くなり
娘の大空小百合も役者をやめていた。
小百合役は本名:島村美保(
岡本茉莉さんが好演。37作は志穂美悦子さんが演じていた。
最後まで岡本さんに演じて欲しかった。)
また岡本さんの
あの独特のイントネーション「くるま先生」を聞いてみたい。

貼り紙に『
本日昼の部都合により休演致します』の文字
座敷の向こうに垂れ幕「漁場を返せ」
雨漏りがある客席

寅「
いやぁ、何ねえ、あいにくの雨で、すっかり商売も上がったりで、
ま、夕方まで楽しませてもらおうと思ってやって来たんだけれどもね」

座長「そうでございますか。実は私ども3日前からご当地で興行を打たせて
  頂いておりますが、何のタタリか9月の長雨、とうとう本日の
  昼の部はひとりもお客さんがお見えにならない次第でございます。


寅「
ああ、そうかい、そりゃ気の毒だなぁ…

寅「
なぁ、座長さん、お互いに稼業はつれえやなあ…。
まあ、こんなことはいつまで続くもんじゃねえよ。
今夜中にこの雨もカラッと上がって明日はきっと
気持ちのいい日本晴れだ。
お互いにくよくよしねえでがんばりましょう



つらい境遇や状況の時にこういうこと言われると嬉しいよね。
いつまでも覚えているもんだ。


座長「どうもありがとうございます」
寅「ま、お稼ぎなさい」
座長「お、お客様…、傘をお持ちでなのではないのですか?」

寅「
なに、宿はすぐそこ、濡れる暇に着きますよ。←いいねー!
座長「いえいえ、それはいけません。これ!小百合!
小百合「
はい!
座長「
一座の花形大空小百合にございます

小百合『にこり』と笑いながらちょこっと首をかしげる。
この時の小百合ちゃんの表情は可愛いがなんとも笑える。
座長を演ずる
吉田義夫さんはほんとに上手な役者さん。
夢のシーンでも必ず悪役で登場し、寅と闘う。
森川信さんと並んでこの映画をしっかりしめてくれている。
私の大好きな俳優さんだ。



              


座長「宿までお送りさせていただきます


「黒田屋」の番傘をさして宿まで行く。
松崎屋 一泊500円いくらなんでも凄く安い。雑魚寝形式だとしてもまだ安い。

小百合「じゃあ…」
寅「あ、ちょっと待ちな」
小百合「はい」
寅「ねえちゃん、確か小百合ちゃんとか言ったな」
小百合「はい」



                     



寅「
仕事はおもしれえかい?
小百合「
はい、とっても
寅「
つれえことはねえかい?
小百合「
フフ…、それはありますけど、でも舞台に立ったらみんな忘れてしまいます
寅「
そうかい、それはよかった、そうでなくっちゃいけねえ。
ねえちゃん、おまえさんそのうちきっと立派な女優さんになるよ

小百合「
ありがとうございます。私も頑張って、
はよ
テレビに出られるような俳優さんになりたいとおもてます関西弁

寅「
大丈夫だよ。それからな、これはほんのちょっとだがせめて座員の
みなさんで一杯飲んでくださいと、座長さんに
そう言って渡してくれ
(財布から五千円を取り出して渡す)
←いいのかそんなに(^^;)


小百合「こんなにたくさん

寅「
いーって、いーって、いーって
旅先でたいしたこともできないけど勘弁してくんな、さ、さ、さっ
(と手を伸ばして小百合を帰すそぶり)

小百合「
ありがとうございます


                    



寅「うん、うん、」背中を向けて宿に入ろうとする。
小百合「あのー、
先生のお名前は?」寅、『ピクッ…
寅「
…名乗るほどのもんじゃねえよ
小百合「そやかて座長さんに叱られますから」
寅「そうかい…、じゃあ、こう覚えてくんな。

東京は葛飾柴又の生まれ、車寅次郎。
人呼んで『フーテンの寅』というしがねえ旅烏だってな

小百合「
はい、フーテン寅先生ですね
そこの部分とるか?小百合ちゃん。

寅「へへ…、まぁ、そういうことよ」
小百合「ありがとうございました。頂いていきます。さようなら」
寅、見送りながら、「しっかりがんばるんだぞ!」
寅、「
あら!?
(財布の中みながら、500円しか入っていないのに気づいて)
間違えて五千円やっちゃった!


メインタイトル、


「男はつらいよ「寅次郎恋歌」
文字と白文字の構成で品がある。
バックの江戸川の風景も美しい。



                    



口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、
   姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」



  
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる



江戸川土手に帰ってきた寅次郎、おなじみの
ミニコントは子供達と竹竿で遊んでいるうちにカップルの帽子を
引っ掛けてしまう
というもの。

今回は江戸川土手の雰囲気をゆったりと味わえる美しい映像
この映像はスタンダードな安定感があり、大好きだ。




                    



帝釈天参道

さくらと満男が歩いている。

とらやにきても浮かぬ顔をするさくら
おばちゃん「どうしたんだい?元気ないじゃないか。あれ、?泣いてんのかい?」
おいちゃん、奥の座敷から出てきて「なんでぇ、いってぇどうしたんだ?」
さくら「さっき、
八百満さんで買物してたの。
奥でおばさんが『
あんまり勉強しないと
     寅さんみたいになっちゃうよ
』だって…」

おいちゃん「
…つね、あそこで野菜買うな←この間がいいねー森川おいちゃん
おばちゃん「あたりまえだよ、こっちは古い付き合いだから義理で買ってやってるんじゃないか」
おいちゃん「ほんとにちきしょ!!団子買いに来たら売ってやんなよオレはもう二度と口きかねえからな!
クゥー−オ!チキショ!
さくら「でもさ、
お兄ちゃん何一つ悪い事してないのよ…、それなのにどうしてバカにされなきゃいけないんだろう?
悔しくて、私、それが…」



寅、とらやの前を通りすぎる。


おいちゃん「今行ったの寅じゃねえか」
おばちゃん「入りにくいんだよ、可哀想に…」

タコ社長バイクでやって来て「
おい、寅さん帰ってるじゃないか。
これから大変だねあんた達も。ご愁傷様
おいちゃん「バカ野郎、何がご愁傷様だ」


今回のとらやのお品書き


氷あづき 50
氷いちご40
氷レモン40
氷メロン40
氷ミルク50
コーラ60
サイダー60
ジュース50


今回の冷蔵庫は
雪印

寅もう一度とらやの前に来て、また行ってしまう。
秋の新曲発表会』の看板
さくら、社長に「お兄ちゃんが帰ってきたらみんなで優しく迎えてあげようと相談してたの」
おいちゃん「さくら、ここにいろ、オレたちは奥にいるから、寅が入ってきたらお前

声だせな、オレたち奥からパーッと来るからな、
みんないい芝居しなくちゃいけねえぞ

寅が入ってくる。口笛で
ホッ、ホーホケキョ
さくら、気づいて「お帰りなさい、お兄ちゃん」
寅「お前元気だったか」
さくら「うん、お兄ちゃんは」
寅「うん、おいちゃんたちは…?」
さくら「うんみんないるわよ。おいちゃん、おばちゃんお兄ちゃんが帰ったわよ」
おいちゃん「
え!?寅が?
    いよーーわぁー!寅、おかえりいぃぃ!

わざとらしく胸をパタパタ叩く
タコ社長走ってきて「
やあーー!!
つまづいて、さくらたちをふっとばして転ぶ、おばちゃん胸を負傷。


これじゃ、いくらなんでもバレルよ(^^;)





                    


「なんのまねだい?」

おいちゃん「あれ、何のまねって、おめえ歓迎してたんじゃねえか」
寅「どうして俺を歓迎してんだい!?歓迎されたい気持ちはあるよ、
だけどオレはそんな歓迎される人物かよ!
おいちゃん「
クァィ〜〜〜ッ」 森川ワールド爆発(^^)/
寅「
なんだぃ、クァーって…、さくら、
おめえ企んだな!?あんちゃん久しぶりにからかおうって言ってたろう!

さくら「
何ひねくれてんのよ
寅「
タコ、てめえはなんだ、え?こんな田舎芝居に一役買うようじゃ、
仕事は
払底してるな、てめえの工場はとうとう潰れたか」

社長「縁起でもないこと言うな、オレだって経営者の端くれだよ、
ちゃんと頑張ってるよ!
」と行ってしまう。

寅「てめえが経営者か、カァー!

結構だよ結構毛だらけ猫灰だらけ、
お尻のまわりはクソだらけだ!


さくら「お兄ちゃん!!」

寅、おいちゃんに土産の孫の手渡すが途中からスポッと取れてしまう。

寅「ったく!」(とたたきつけるように置く)
寅、工場の方へ行ってしまう。

このような寅の帰郷に際してのとらやの面々の
愛情カラ回りギャグは第7作でも出てくる。誰も悪く無し、
みんなそれぞれに気を使っているのにどうも上手く事が
運ばないのである。


おいちゃん「
あー、いやだいやだ。オレはもう、横になるよ。
おい、まくら、さくら取って、
いや、さくら、まくらとってくれ、
あーあー」
毎度お馴染みの枕ギャグ。それにしても、
ものすごく頻繁に使われる
。)


工場の中

寅「いよ!労働者諸君!折からのドルショックにもめげず、
今日も労働に従事してますか、ごくろうさん。ははあ、
秋のお楽しみセールか大変だねえ…」←ドルショック…そういう時代だったんだねえ…

博「兄さん、お帰りなさい、しばらくでしたね…」
寅「よお!そうなんだよ、どおしてこう素直な挨拶ができないのかねえ、あいつら」
博「どうしたんですか?」
寅「聞いてくださいよ、ってんだ」
(といいつつ印刷したての広告で鼻をかむ)
工員達
「アハハハ!
寅「なんだ?何笑ってやがんだ、てめえら」
博笑いながら寅に鏡を見せる。
寅「なに可笑しいんだ?タコか?」



                 




寅、鏡見て、びっくり。
顔中インキだらけ
寅「
責任者呼べ!責任者を!安いインキ使うからこんなことになるんだ!チキショウ、バカにしやがって!」
タオルで拭いて余計に顔に広がる。
このパターンは第1作の大喧嘩の後のシーンで最初に使われた。

工員達「ハハハ!!」
寅「なんだ!てめえらそんなに可笑しいか!オレが!どけそこ、タコ呼べタコ!!」


とらや 夜

寅、酒飲んで、昔の仲間2人連れてとらやに戻ってくる。
(ベロベロに酔っ払っている)
とらやのみんな迷惑そう
仲間「兄貴、あそこにいるベッピン誰?」
この二人
谷村昌彦さん大杉侃二朗さんで、お二人とも雰囲気があった。
大杉侃二朗さんは「純情詩集」では坂東鶴八郎一座の座員
としてあの知る人ぞ知る『お掃除芸』を披露!


寅「ん?あ!ありゃ、オレの妹よ!、となりで
バカ面してんのがね、ここの使用人夫婦だ!」
寅「
おい、さくら、ちょっと、ビール持ってこい
おいちゃん「
おい、ビールなんか持っていくこたぁねえぞ
寅「
なに?何か言ったかジジイ!
おいちゃんと寅、口喧嘩
さくら「
お兄ちゃん、すぐビール持ってくるからあんまり大きい声だしちゃだめよ
寅「
ほら、いい女だろ、これはね、ちゃんと女学校出てんだよ。
  な!おまえ女学校出たな!これね、歌も上手いんだよ、
  ちょっと、ちょと、一曲歌、歌やってみなよ


仲間たち「よ!待ってました!」

おいちゃん「
くら、歌なんか歌うんじゃねえ、おめえは芸者じゃねえんだぞ

寅「
うるせえぞ!このクソジジイ!!黙ってろ!

おいちゃん「
つね!警察呼んで来い、警察!

寅「
うるせー!!チキショー!!」(怒ってテーブルのコップを下に落として割る)

さくら「
お兄ちゃん

寅「
なんでい

さくら「
歌うわよ…

寅「
よし、歌え!


               



仲間「
都はるみか、水前寺かい、よお!」

さくら、しばらく沈黙の後

さくら「
♪母さんがぁ〜…

寅「
♪カーラース、ほい!!、なぜ鳴くの、ほい…
そういえば出だしが似ているな(^^;)

さくら「
夜なべ〜をして、手袋〜編んでくれたぁ〜、
木枯らし吹いちゃ冷たかろうて、
せっせぇ〜と編んだだよ〜、
ふるさぁ〜とのたよりがと〜ど〜く、囲炉裏の臭いが
した〜……母さんの、アカギレ痛い、生味噌を…♪」

↑いやあ、もう倍賞さんの歌を
堪能できる数少ないシーンだ。やっぱり歌が上手い!

この他「葛飾立志篇」の夢で
「さくらのバラード」西部劇バージョンを
歌っている。「寅次郎春の夢」では
蝶蝶夫人となってプッチーニのマダムバタフライ、
の中の「ある晴れた日」を朗々と歌う。
「私の寅さん」では江戸川土手で
「どんぐりころころ」を歌う。



窪田 聡 作詞/作曲

かあさんが 夜なべをして
手袋あんでくれた
木枯らし吹いちゃ 冷たかろうて
せっせとあんだだよ
ふるさとの便りはとどく
いろりのにおいがした


かあさんは 麻糸つむぐ
一日つむぐ
おとうは土間で わら打ち仕事
お前もがんばれよ
ふるさとの冬はさみしい
せめてラジオ聞かせたい


かあさんの あかぎれ痛い
生みそをすりこむ
根雪もとけりゃ もうすぐ春だで
畑が待ってるよ
小川のせせらぎが聞こえる
なつかしさがしみとおる
なつかしさがしみとおる



                




寅じっと下を向いて聴いていた。
そして席を立って、トランクを持って店を出て行こうとする。(仲間も消えるようにすぐに出て行く)
寅「さくら、すまなかったな。おいちゃんたちに謝ってくれよ…」
さくら「お兄ちゃん…」
寅、出て行く
博、工場からとらやへ戻ってきて

博「兄さんの声がしたようだけど、
帰ってきたんですか?さくら、兄さんは?」

さくら「
…もう、行っちゃったの

さくらの、このセリフは心に染みとおりました。



雨の日 柴又参道

 
さくらがこわばった表情で早足でとらやに向かう。
さくら「おばちゃん」
おばちゃん「いやな雨だねえ、だるくてだるくて、よっこらしょっと…」
さくら
電報を渡す。
おばちゃん「なんだい?電報?」
おばちゃん「あら…ちょっと」
おいちゃん電報見て「え!?」
電報内容
ハハキトク スグカエレ」チチ
博、工場からやって来て「おばさん、コーラください」
さくらに気づいて「満男、連れてこなかったのか?」
さくら、博に電報を渡す。



                 



博「今からなら何とか今晩中には…黒い服持っていったほうがいい。たぶんいるようなことになると思うから」
夜に岡山県、
備中高梁駅に着く。

備中高梁は第32作でも舞台になりいろいろな場所が出てくる。
穏やかで住みやすそうな町。


古い土壁が続く大きな家が博の実家。

母親はすでに亡くなっていた。

父親はこんな時にも書き物をして、ちょっとエゴイスト。
さくらたちの結婚式の時の反省はどうした。

さくらを紹介する博。それぞれを紹介しあう。(父親のエゴを受け継いだ感じのちょっと冷たい兄弟達)
この時は博は全て男兄弟でお姉さんはいないことになっている。
第32作「口笛を吹く寅次郎」ではお姉さんが出てくる。

告別式の当日、寅が突然ご焼香に現れる。(いつもの背広に黒い腕章)


さくらと博ビックリして、唖然…。
さくらの数珠取ってお祈りをする寅。
さくら、寅のところへ行って「何しに来たのよこんなところへ…←何しに来たはないよ、さくら。(^^:)
寅「何しに来たって?、ゆうべおいちゃんとこへ電話いれたらよ。今日こっちで葬式だっていうんでね、
オレ岡山にバイにきてたんだよ、なんかいけねえのか?」
さくら「いけなくないけえど、何この洋服、お葬式よ」


さくら、結構世間体を気にするタイプだ。

結局、人に黒の服を借りて取り繕う。なぜか帽子を手離さない寅でありました。

出棺、挨拶、が済んで焼き場での待合(挨拶の時に蒸気機関車が走る)

みんな寅に注目している。(
ちょっと気がちがうのであろう。

コップとお菓子で
丁半サイコロ博打のまねごと。
寅「
よーござんすか?よーござんすね?
(丸いビスケット目にひっつけて)ブタ〜!!


さくら、ささっとコップとお菓子隠して恥ずかしさのあまり半泣き。


お墓でみんなで集合写真撮影。

さくら「お兄ちゃん、お兄ちゃんがシャッター押してあげなさいよ」

寅「あっ、ここじゃオレが一番遠縁なんだな、そうか」


寅「
じゃ、みんな、はい、写しますよ。
 はい、笑って〜!!」 カシャ

次男夫婦ついにっこり笑う。←これを見逃してはいけない
長男ムスッと怒る。


さくら、慌てて駆け寄り「なんてこと言うの!
笑ってっていうことないでしょ、お墓の前で!」
寅「あっ、そうか、つい、うっかりしましてすいません。
  もういっぺんやります」
寅「
はい!泣いて〜!!カシャ
←出ました!!(^^;)


長男怒って「もういい!!」

寅と次男カメラの紐が絡まってアタフタ。


              


この時の様子は第13作「恋やつれ」で博と寅が
とらやの茶の間で
歌子ちゃんに面白おかしくしゃべり、
歌子ちゃんが大笑いしてしまう。

夜、博の父、この家に一人で住み続けることをみんなに話す。
(正連寺古文書調べが面白くて5年や10年かかる)

だいたい奥さんが亡くなったからといって、
いきなり一人では住めないなんて
子供じゃあるまいし、その考えはナンセンスだよ長男さん。 
第32作の時もそうだったが遺産がらみの事
考えすぎだねこの兄弟。
どうも博は兄弟運にも恵まれていないなぁ。


その夜、それぞれが母親のことを語る。


父親「あれは何と言うか、欲望の少ない女だったな」
長男「人間の欲望はキリがないですから…
それに比べりゃ母さんは幸せだったかもしれませんね」
父親「まあ、あれが母さんの取り得だったんだろう」
次男「兄さん。
聖書にあるじゃないですか。
心の貧しきものは幸いなりって、やっぱりキリストはいいこと
いうなあ」

人間は、執拗に自分だけの力を頼んで、
神様の働きを避けて生きようとしがちだが、それよりも、むしろ自分の内に
あるいたらなさを認め、人間としての傲慢さから解放され、
素直な気持ちで、神の与えてくださる祝福の道に信頼して
生きることが出来るようになったなら、
その時、確かに神様の祝福を受けることが出来るという教え。



博「兄さん達は、本気でそんなことを思っているんですか
一同博を見る

博「
お母さんが、お母さんが幸せだったなんて…、
  よくもまあそんなことが言えるなぁ、お母さんがなんで幸せなものか!


長男「博、今日は母さんの葬式の日だぞ。そういう口の利き方はよせ」

博「
葬式の日だからこそ言いたいんじゃないか!」

長男「
なにい!

父親「
(つよし)いいから博に言わせろ。博、何を言いたいのか」

博「お母さんが世間並みの欲望がなかったなんて、それは嘘です。
小樽の小学校に行っている頃、僕は時々お母さんに
僕は時々お母さんに連れられて港に行きました。
お母さんは船を見ながら、
私の娘からの夢は、大きな船に乗って外国へ
行くことだったのよ。そして華やかな舞踏会で胸の開いたドレスを着て
ダンスを踊ることだったのよ。でも、父さんと結婚した時、そんな夢は諦めたのよ、』
って笑いながら僕に話してくれたことをよく覚えているんだ。

お母さんだって、情熱的な恋をしたかったんだ。
華やかな都会で暮らしてみたかったんだ。それを諦めていただけなんだ。


次男「
もうよせよ!なんだ、大学にも進まないで
  母さんに一番心配させといて、生意気言うのはよせ」

博「だから、オレは、一軒家を持ったら、
 さんざん心配かけた母さんを引き取って、せめて、
 せめて東京の生活を味あわせてやりたかったんだ。
 それがしたくてもできなかったんだ。
 大学にいけなかったのがどうして悪いんだ。
 大学を出なければまともな口を利けないのか!


長男「
お母さんが息を引き取る前オレに言った言葉なんだったと思う。
   お母さんはな、『もう、何も思い残すことはないよ…』
そう、苦しい息の下からな。


博「
お母さんは死ぬ間際まで
みんなに嘘をついていたんだなあ…
」(泣く)

長男「嘘!?お前何を根拠にそういう言い方するんだ!

もし、嘘じゃなかったら、
  もし本気でそう思っていたとしたら、
  オレはお母さんがもっと可哀想だよ。
  そうじゃないか!
  お母さんみたいな一生を、
  父さんの女中みたいなさびしい一生を
  本気で幸せだと思い込んでいたなら、…そんな…
  そんな可哀想なことってあるもんか!
  …ウウウ…ウウウ…」
(泣き続ける)



              


博の青春期の葛藤と母親に対する深い愛情が垣間見れる
重要なシーンだ。

この場面の前田吟さんは凄みがあった。気迫の名演技だといえる。

父親、ずっと聞いていて、そして席をたつ。


雨の中
りんどうの花が咲いている。


書斎でじっと考え込む父親
↑この短いショットで父親の悔恨の念を
表現している。父親も博の言葉に
何か考えるところがあったのかもしれない。


とらや 

さくらたちはすでに帰ってきている。


おばちゃん「博さん、お母さんが好きだったんだねえ。
      今までそんなこと話もしなかったけどさ…


満男頭に
ヒーローのお面つけてりんごを食べている。(かわいい♪

「続男はつらいよ」で博の発言から
母親が孫を見に「とらや」まで出向いてきた事実

が分かっている。これは博と母親の関係を
考察するうえでとても重要な要素となっている。


おばちゃん、おいちゃん、孤独であろう博の父親に挨拶の電話することを勧める。

さくら「もしもし…」
電話に出た寅「はい、こちら諏訪でございます。」
さくら「あの…わたくし、博の家内のさくらで…ございます…」
寅「ハハ!何だ、おまえ、さくらか!」
さくら「えっ!?お兄ちゃん!?」
横になっていたおいちゃん、その声聞いて
びっくらこいてバタバタ飛び起きる。

寅「なんだこのやろう、気取った声出しやがって。
なにが博の家内でございますだ!ハハハ!」

寅は商売の帰りに博の父が心配で
慰めるつもりで逗留しているようなのだ。

寅「何!?迷惑をかける?冗談を言っちゃいけないよ、
 迷惑かかってんのはこっちだよ!商売だって
 たまってんのにやりくりつけてね、
 年寄りの相手してやってんだよ。大丈夫だよ心配ないっていってんの。
 わかってんの。はい、はい、はい、はい、はいよ、うん。」
ガチャと切る

父親「寅次郎君

寅「ハイハイ」

父親「今夜は何が食べたいかね」

寅「そうね、ゆんべ魚だったから、今日は肉と行きますか。
このあたりは牛肉上手いんじゃないですか?」


志村喬
さんの買い物篭を持つ姿、なかなか『かわいい』


               



といいながら
辛口の酒も買いたいので寅も一緒について買物へ行く。

家を出て土壁の塀づたいに下ってゆく寅と博の父。

横をモウモウと煙を立てて力強く
蒸気機関車がすれ違う


なにげないがダイナミックなシーンで、私の大好きな映像だ。




               




 『
白神食品店』で嬉しそうに辛口酒を買う寅
 高梁魚市場

この【白神食品店】は第32作「口笛を吹く寅次郎」で
再度登場。一道の恋人ひろみちゃんが育った家。


 父親の家

庭にりんどうの花が咲いている


寅「
♪花摘むぅ〜野辺ぇ〜に、日はぁ〜、
 落ちてぇ〜、チャラチャラララランタンタンタン〜

箸でリズムを取りながら

博の父親「寅次郎君」
寅「ハイハイ」
博の父親「旅の暮らしは楽しいかね」
寅「
ええ、そりゃ楽しいございますよ、何ていったって
こりゃやめられませんね。ヘヘ…

↑これもまた寅次郎の本音であること
には違いない


寅「あっ、そのことですけどね、先生お一人じゃ寂しいから、ずっとおそばにいて差し上げてぇと、そう
思ってますけどね、何しろ旅先なもんで、いろんな用事が固まっちまいましてね、できましたら明日あたり、
失礼させていただきてぇなっと。こう思っていたんですけどね」
博の父親「そうか、そりゃ残念だね」
寅「すいませんどうも」
博の父親「いやいや、いろいろ世話になってありがとう」
寅「
言っちゃ何だけどさ、先生の息子さんたちっていうのは
少し冷たいんじゃねえか
、なっ。オレ、今度東京言ったらね、博の奴にバシッと言ってやるよ」

全く寅の言うとおりだよ。お兄さん方お父さんの
悪いところ全部似た感じ。



博の父親「
フフ…。で、君はこれからどこへ行くつもりかね

寅「
ええ…?どこへってね、これから寒くなるから南の方へ
行くってことになるんじゃないですか、ハハ、
気楽なもんだよね。
それに
女房子供がいないから身軽でいいですよ

博の父「…」
寅「
♪あ〜あ〜あ〜、誰か故郷を…♪
博の父「寅次郎君」
寅「ハイハイ」
博の父「
今、君は女房も子供もいないから身軽だと言ったね。
寅「え〜、そうですねー」
寅「
♪思わざるぅ〜ペコペ〜ン、
 ポンポン、ペコペ〜ンポンポン♪…


博の父「
ねー君、ちょっとその歌やめなさい

寅「ハイ…」

博の父「
そう、あれはもう10年も昔のことだがね、
私は
信州の安曇野というところに旅をしたんだ。
後にこのお父さんこの安曇野に土地を買ったらしい。

寅「へぇ〜、先生も旅したことあるの?」
「ん…。
バスに乗り遅れて田舎道を一人で歩いているうちに日が暮れちまってね。
暗い夜道を心細く歩いていると

寅、横から割り込んで「
狐の話でしょ!ね!ベッピンに化けた狐が背中なんか叩いて、
『旦那、振り向いてよ』なんて
茶化すねー!寅(^^;)

博の父「いや、そんな話じゃないんだ。」
←だろうねぇ。
寅「…」

博の父「
ぽつん、と、一軒家の農家が建っているんだ。
りんどうの花が庭いっぱいに咲いていてね、
開けっ放した縁側から明かりのついた
茶の間で家族が食事をしているのが見える。
まだ食事にこない子供がいるんだろう、
母親が大きな声でその子供の名前を
呼ぶのが聞こえる。

わたしはね、今でもその情景を
ありありと思い出すことができる。
庭一面に咲いたりんどうの花。
明々と明かりのついた茶の間。
賑やかに食事をする家族達。
私はそのとき、
それが、それが本当の人間の生活って
もんじゃないかと、ふとそう思ったら
急に涙が出てきちゃってね。
人間は絶対に一人じゃ生きていけない。
逆らっちゃいかん。
人間は人間の運命に逆らっちゃいかん。
そこに早く気がつかないと
不幸な一生を送ることになる。
分かるね、寅次郎君…分かるね…


寅「
へい、分かります。ようく分かります

博の父は寅にこのことを伝えながらも、自分の
人生に対して後悔の念も感じているようだ。
学究一筋に邁進するあまり、家庭を
かえりみなかったその半生を回想して
いるのだろう。
常に人はその話す言葉を一番聞かせたいのは
自分自身なのだ。



              


博の父親、ゆっくり立って廊下を去っていく。

翌早朝

原稿用紙に万年室で置手紙 傍らにひと茎のりんどうの花

よくお休みなので、起こさないでこのまま帰ります。
昨夜のご意見身にしみて感じ入りました。
先生のありがたいお言葉を固く胸に抱いて、
故郷柴又に帰り運命に逆らわずに生きてゆき
ます。先生もどうか御身大切に、幸せになって下しまし。
                       車寅次郎 拝
 』


朝、手紙を読み、
空の彼方に思いを馳せる博の父



帝釈天参道

とらや

おばちゃんやおいちゃんさくら、満男と遊んでいる。
おばちゃん「怪獣、いやー怖いねー」

貴子、開店のお知らせにとらやにやって来る。
貴子「ごめんください」
おばちゃん「はい」
おいちゃん「!」
バタッ!(あんまり美人なのでおったまげる)
貴子「
わたくし、このたびお寺の横で
  喫茶店を開業いたしました
六波羅貴子と申します。←珍しい苗字
おばちゃん「あーあー、あの角曲がった突き当りの」
貴子「はい」
おいちゃんずーとポケーっと貴子を見ている。

このおいちゃんの雰囲気がなんとも笑える。森川さんって、
何もしていなくてももう可笑しい(^^)


貴子が帰ったあと

おいちゃん「
はぁ〜…よかったなあ、さくら

さくら「どうして」(
と聞きながらもうすうす分かっている様子
おいちゃん「
いつもなら、こういう時必ず帰って来るんだよな。つね

おばちゃん、外の道掃除しながら

おばちゃん「
何にも知らずに、『おいちゃんただいま』なんてね


おばちゃん、寅を発見してすごい形相で店の中に
かけ戻ってくる。
やっぱり来ましたね。

三味線、『ペペペンペンペン』
寅「
よっ、おいちゃん、ただいま。みんなあの時ゃすまなかった。ベンベン

おいちゃん「
え…、お、ううん…いいえ

寅「
あれからいろいろ反省してな、オレも考えてみりゃずいぶん運命に逆らって
生きてきたものよ…


さくら「
え、…運命に?

寅「
はい。人間の運命にねぇ…
←いきなりこんなこと言ってもなんのことやら…

貴子、草団子を買いに戻ってくる。←わわわわ!!

みんなあわてる。寅、貴子に気づかず、

寅「いや、ともかくおいちゃん、
オレの話聞いてくれないか。たとえばね、
りんどうの花がね…

↑寅、いきなりりんどうの花じゃ分からんよ…(^^;)

貴子「お団子を…」
寅「はいはい」と言いながら少し振り向こうとする。
おいちゃんたちごまかして必死で2階に上げようとする。


寅「どうもありがとうよ、
なんて心の温かい人なんだ
おいちゃん「
うん、そうなんだ、そうなんだ
↑このリアクション好きです!


寅「
あ…、お客さんお団子お待ちだよ貴子に気づかない。

団子一折 大300円 中200円 小100円


貴子、おばちゃんに「こちらのお団子美味しいんですってね」(
200円の(中)を買う)

トランク床に落ちる。

貴子「
あら…?


               



貴子が帰ったあと、さくら2階から降りてきて

さくら「あー、あー、ドキドキしちゃったわ。」

おばちゃん「
でもさー、こんなことしたっていつか会うんだよ

寅、降りてくる。
おいちゃん「いよォ、あの、どこへ?」
「うん、なんとなく気分がすっきりしないんで表行ってコーシーでも飲んでこようと思って、
今来がけに見たらなかなか洒落た
きっちゃ店ができたんで…

おばちゃん「あ、あのね、いけませんよ!コーヒーは胃に悪いよ!」
おいちゃん「
体にだよ←そこまで言うか
おばちゃん「私がね、濃いお茶入れてあげるからから」
おいちゃん「
ほんとに体に毒だよ、寅さんみたいに神経質な者はダメだよ



               



さくら、店のイスに座ってため息(
三味線 ペペペンペンペン
トランクがまたバタッと倒れる
振り向くさくら


その夜十五夜のお月見の団子や果物が飾ってあり、満男が遊んでいる。




寅「
たとえば日暮れ時、農家のあぜ道を一人出歩いていたと考えてごらん…。
 庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間。
 明かりがあかあかとついていて父親と母親がいて子供がいてにぎやかに夕飯を食べる。
 これが、これが本当の人間の生活というもんじゃないかね
君!

こういう時は必ず博に振る寅。この先の作品でも数限りなく寅に
話を振られることになろうとは…。


博「ええ、まあ、そのとおりですね

さくら「
お兄ちゃん、ほんとよ。とってもいいこと言うわ受け売り受け売り(^^;)

寅「
オレもいろいろと考えたからなあ〜



                





おばちゃん「
ちょっと悪いけどね、
   親子で晩御飯食べてるだけのことで
   何でそんなに感心するんだい?


おいちゃん「
そうよ、どこでもやってるきゃないか、
   そのくらいのことは


寅「
ただ食べてるだけじゃないんだよ、
 庭先にりんどうの花が咲きこぼれていたの



おばちゃん「
りんどうの花だったら家にも咲いてるよ
←そりゃそうだけどさ(^^;)


寅「
電気があかあかとついててさ

おいちゃん「
夜になりゃ電気つける
    だろうどこでも
←そうなんだけどね(^^;)


おいちゃんやおばちゃんにとっての平凡な
日常が実は最高の幸せだということに
二人とも気づいていないのだが、
しかし、だからこそ尊いともいえる。
過剰な意識を持つと言うこと自体が、
そもそもそのことにどこかで充足していない
証にもなってしまうのだから。


寅「
…、あー分かってないな〜、
 これだから
教養のない人たち
 いやなんだよ、話し合えないって気がするもんね〜


「なー、博君」←またまた博に振る寅でありました。

博「え?ええそうですね。
 つまり兄さんが言いたいことは
 平凡な人間の営みの中にこそ、
 幸せがあるとでもいうのかなぁ


寅「そう
イトナミ

博「
言ってみれば、人間には人間の定められた生活がある
 ということじゃないですか


寅「そうそう…」
おいちゃん「
はぁ…←いいね〜!!森川さん!

寅、おいちゃんを
しげしげと見て「わからないだろうねえ〜」

分からない分からない。みんな充足してしまってるからね。


寅「
考えてみると、オレも長い間人間の運命というものに生きてきたものよ

おいちゃん「
そうかい?そんなに逆らっちゃいねえと思うけどなぁ…

寅「
逆らってますよ、十六歳の折からずっと逆らってますよオレは

寅は葛飾商業時代に校長の頭をぶん殴って退学し、
そのあとタバコを吸っていたことを父親に見つかって
大喧嘩の末、放浪の旅に出る


おばちゃん「
で、要するにこれからどうしたいんだい寅さんは?
寅「
なんだよ、その冷たいものの言い方は。そんなことまでいちいちおばちゃんに
言わなきゃ分かってくれないのか、おい

おばちゃん「
じゃ、電気の下でご飯食べたいの?

駄目押しおばちゃん天然ボケ。
だいたい寅は毎日電気の下で食べてるって(^^;)


寅「
違う違う違うって!分かんないのかな、ほんとうに。なぁ、さくら…

さくら「
うん、つまり…、結婚したいってこと?
寅の話を聞いただけでそういう風にかんがえられるかな??
さくらは寅のことなんでも分かるんだね。



寅「
え!?

寅照れて博の持っている酒の
お猪口を肘でぶつけ落とす


寅「いやぁ、そんなはっきり言われちまうとね、
オレも困っちまうんだけどさ
どえらく照れる寅でした。

→ん図星だったみたい(^^;)すごい、さくら!!




                



寅「
もちろんオレもいい年だし、
 たいして稼ぎがあるわけじゃなし、堅気のお嬢さんを嫁にもらいてぇ、なんて
大それたこと考えちゃいねえよ。いっそのことね、
コブつきでもいいと、オレは思ってるんだ。
それにうるせえガキよりも、そうだ、
小学校3年生くらい
利口そうな
男の子だったら都合がいいなあ…

おいちゃんたち貴子のことを思い当たって内心びびる。

寅「
ともかくさ、親と子があって人間の生活ってのは成り立つんだからな!
 どうだい、おいちゃん、なんか、そんな適当な人いねえかねぇ?



おいちゃん「
い、いない、いないな、絶対いないな!
おいちゃんそうとうびびっている
寅「
絶対?、どうしてそういうことが言えるんだよ?なぁ、さくら
さくら「そうねぇ〜、難しい注文ね…」
寅「え?難しい?何で難しいんだよ?おまえ」

タコ社長やって来て
社長「よっ、寅さんお帰り、どうだい、
会ったかい?あの人に
出ましたいつものタコ社長のぶっ潰し
寅「
誰だい?あの人って?誰かあわせたい人いるのか?
おいちゃんとおばちゃん、すごい形相で社長に言っちゃダメ光線
発射!社長それに気づいて


社長「
あの、…御前様だよ←上手く逃げたな(^^;)



                      




寅「
なんだ、…あ、そうか御前様に相談する手もあるな、ねえ

2階に上がろうとする寅
題経寺の鐘「
ゴ〜ン
寅「
鐘の音か…、さくら明日はなにかいいことありそうな…チョン!

さくら「お休みなさい」


チョン!チョン!チョンチョンチョンチョンチョンチョン、チョン!チョン!


おばちゃん「
明日からどうなるんだろうかねぇ…
↑なるようになるんだよ、おばちゃん(^^;)

一同心配でため息


翌日題経寺

貴子の息子、学校を早びきしてしまった学と話をしている寅

貴子がやって来て初対面

鐘の音『
ゴ〜ン』『ゴ〜ン

寅「
お子さんですか…

ゴ〜ン



                 





とらや 店

寅、
ふらふらになってとらやに帰ってきて

寅、おいちゃんに「
だれ?だ、だれ?見ちゃいられないね(><;)

おいちゃん「
へ?誰って?だ、誰?
←とにかくおいちゃんのこの間。絶妙!


寅「
落ち着けよ
おいちゃん
落ち着けって、
    オ、オレは落ち着いているよ
もっともです。

寅「
誰なんだろうなあ…と2階へ

おいちゃん気づいて「
あー!←今ごろ気づいたの?




 茶の間

おいちゃんとタコ社長が下で口裏あわせの打ち合わせ。


そこへ寅が降りてきて手招きしてタコを呼ぶ。

寅「
社長、知ってるかい?

社長「
知らねえ知らねえ知らねえ知らねえよ!
おいちゃん向こうで頭抱えている

寅「
バカ野郎、まだ何も聞いてねえじゃないかよ

社長「あ、そうか」

寅「
あのな、年のころなら三十一ちょっと過ぎ
目元にめっぽう色気
があって、小学校3年生くらいの子供がいる
後家さんどこの誰か知らねえか?←決め付けてるよ(^^;)

社長「さあ、知らねえなぁ、全然知らねぇ」

寅「そうか…」
社長「
でも寅さん、そのひと後家さんだって
 どうして分かったんだい?

↑社長、上手く言ったな、そのとおり寅の盲点


寅「
…はっ!ええ!!?。
 そう言えば、そうと決まってるわけじゃねえんだなぁ…



社長「そうだよ、
女は一人じゃ子供は産めねえんだよ。」

おいちゃん遠くから「
産めない、産めないよ!
駄目押しを狙うおいちゃんでした

寅、
呆然として2階へ上がっていく。



翌日 題経寺で、花占いをする寅。
寅「会う、会わない、会う…」『
ゴ〜ン
寅「やっぱり会うことになるか」『
ゴ〜ン
雪駄に釘が刺さって、後ろから着物姿の若い女の人あ(実はさくら)にハンカチを差し出されて
寅「
またお会いいたしましたね…。
さくら「え?」
寅「お笑いくださいまし。もう二度とお目にかからねえつもりでした。」
さくら「あ、あの…」
寅「いえ、分かっております。」
三味線ぺラペンペンペンペンペンペン

寅振り向いて、「
ハ?

さくら「
何が?

寅「
バカ!!なんだこの!
さくら「何よ」
寅「
何だ着物なんか着やがってまったく!

さくら「
あら、どうして?着物着ちゃいけないの?

寅「
間違えるじゃないかよ、そんなもん着てたらよ!
自分でばらしてるぞ寅。

さくら「なに怒ってるの?」

タコ社長、スクーターを止めて二人のやり取りを一部始終見ていて

社長「
ハハハハ!!!

寅「
このやろう!タコ笑いやがったな!テメエ待て!




                



社長あわてて正面にある貴子の喫茶店「
ローク」に入ってしまう。
←この喫茶店はもともとあったものを撮影時に利用

ヘルメットを殴られて店から逃げていく社長。

貴子、奥から出てきて

あの、どうかなさいました?

寅「
え?、不真面目なんだ、あのタコは!
寅振り向いて
ハッとする。

貴子「
あら、いつぞやの

寅「


貴子「
コーヒーでもいかがですか

寅、気もそぞろでドギマギして「表で妹が待っているもんですから…」

フラフラで、とらやの前を通り過ぎる。




とらや  店



さくら「
お兄ちゃん、こっちよ…

おばちゃん「
どうしたんだい?

さくら「
会っちゃったの…
この言葉ですべてを察したおばちゃんでした。



おばちゃん「
え…





夕暮れ時、とらやの二階


さくら「
お兄ちゃん、ごはんよ





部屋の壁に字を書いて張り紙している。(字がかなり間違っている。)

色即是空』『反省』『忍耐
色即是空は笑える
この字全て寅が墨を磨って書いたのかな?


それにしても是空

となっているぞ寅!意味わからん(^^;)

忍耐』の『
』の字もなんだかあやしい…(^^;)




さくら「だめよ、元気出さなくちゃ」


寅「オレだって、ひとの奥さんに
懸想するほどバカじゃないよ。
今だってよ、
もう一人のオレによーく言い聞かせていたんだよ。」
この
頭と心の分離は第6作「純情篇」でも寅がさくらに吐露している。

さくら「
もうひとりのお兄ちゃん、ちゃんと納得したの?

寅「
やっと…←時間がかかったんだね…


さくら「
よかったね…




                  





下でお客さんの声、(貴子が学にせがまれて団子を買いに来たのだ)
さくら降りてきて、あいさつ、後ろから寅も来る。


貴子「
あら?

寅「
さきほどはどうも

貴子「
まあ、こちらの方でしたの

さくら「
私の兄です

貴子「
あら!そうでしたの。みなさまには大変お世話になっております


貴子、団子買って、「
それじゃ、失礼いたします

寅「あの、…
坊やのお父さんによろしく




                  




貴子「
あの…実は主人は3年ばかり前に
  亡くなり
まして、女手ひとつでやっております。
  それじゃごめんくださいませ



寅、肩が、ちょと落ちる

おばちゃん、
がっくりしてイスに座り込む。
↑全ては徒労に終った…(−−;)


寅「



寅振り向いてさくらを見る。

さくら少し困りながらもニコッと笑ってしまう。
↑さくら、笑うしかないよな…なんともいえない印象深い表情

寅、清々しく笑って「
なんだかオレ腹空いてきちゃったよ!!
ご飯食べよう!みんな元気を出しましょう!


トントントンと茶の間に上がって箸と茶碗で伴奏しながら

寅「
♪あ〜あああ〜、
 誰か故郷を〜をを、思わぁーざぁぁ〜る〜♪
 パンパーン、パンパン、パンパーン、パンパン♪


おいちゃん、頭を抱え込みショックを隠しきれない。
さくら、おいちゃんの背中をさする。




翌日 とらや

おいちゃんがタコ社長を慰めている。

おいちゃん「
いいんだよ、社長、おめえのせいじゃないんだからくよくよするなよ

おいちゃん寅が降りてきたのに気づいて

おいちゃん「
おい、そんなに景気悪いか?←芝居を打つ
社長「えっ?」
おいちゃん「
景気、景気悪いか?な…うん…
と言いつつ
指で寅が来たことを合図

社長「
そ、そりゃダメだよ、全然ダメだよ

おいちゃん「
ダメかぁ…
社長「
とにかく、ほれ…
おいちゃん
「あー、ドルショックあー、そいつはいけねえなぁ

おいちゃん、今気づいた振りしておう、寅さん、出かけるの?

寅「
うん、ちょっとな
おいちゃん、
さりげな〜くあー、そ、うん、いっといで
おいちゃん「
そうかい、オレんところもそうとうなショックでな
もう商売の方はめっきりだめだな
←口から出まかせ(^^;)

社長「大変な
ショックだからねあれは」

寅「
大変だな、うん…うん」と言いつつ、
なにげなくロークヘ出かけようとする。

社長
「一時はね、一家揃ってね
首でもくくろうかと思ったくらいだよ


とりあえずの話題の時でも社長が言うとリアル(^^;)

と言いつつ社長チラチラ寅の行方を見ている。


おいちゃん「
そうかあ…、
聞いてられねえなあ、ああーいやだ


社長「
これから世界経済は
どうなっていくのかねとらやさん


おいちゃん「
あー、やだねー

社長「
難しいねぇ〜

寅、前の道でちょっとうろうろしたあと
パッと
ロークの方へ行く

社長、ほっとして「
行った行った、行っちゃったよ。
      やれやれこの分じゃこれから先は
      思いやられるなぁ…


おいちゃん「
そうなんだよ、察してくれよ、
    オレはもう長いことねえぞ、社長


 このあと封切り前に森川信さんが
 急死してしまうのでこのセリフは
 考え深いものがある。



二人でハハハと大笑い。


寅、パッと走って戻ってきて、
寅「
笑ってたな←寅、鋭い!

社長
「ちゃうちゃうちゃう、寅さんのこと笑ってたんじゃねえよ」と言いつつ

素早くヘルメット被って防御
する社長でした


寅「
今、二人してオレのこと笑ってたな

おいちゃん「
何?おめえのこと笑うわけないじゃないか


                        



寅「
オレがコーシー飲みに行くのが
可笑しいのか、おまえ。
あっ?オレ、
コーシー飲みに行くって言った?

社長「
い、言わねえ、言わねえよな

おいちゃん「
う、うん、うん、聞いてねえ聞いてねえ

寅「
じゃ、何で分かってんだよ。
どうして
家中分かってんだよ!
おかしいじゃねえか


おいちゃんたち「…」

寅「
ま、いいや。
…なんか言ってんだよな…
いつも。ま、いいや



道まで出て駅前のコーヒー店に行くふりをして、
駅前の方へ行ってしまう。



社長「
遠回りする気だね
おいちゃん「そうだよ、バカだねあいつは」

花売りのおばさん(谷よしのさん)が
とらやの前で立ち止まって「ごめんください、菊の花は?」


おばちゃん「
今日はいいわ

花売りおばさん「じゃあ、またお願いします」と
去っていく時におばさんの後ろに
寅がくっついて隠れるように歩いていく。

バレバレで完全に見えているのが大笑い。
寅って相変わらずやることが無精だね。


おいちゃん、それ見て「
バカだねえ…まったく

ロークの前で入るのをためらっている寅

ロークと同じ建物で横の店が『
美術刀剣.古美術商の竹屋

たまたま
自転車でさくら通りかかる。

さくら、気づいて止まり、「
お兄ちゃん、何してんのよ?

寅、さくらを見て喜び
寅「
コーヒー飲も、行こ行こ行こ、行こうよー←子供だねまったく(^^;)


ロークの店内



貴子「あら、あー、いらっしゃい」

さくら「こんにちは」

貴子「まあ、よく来てくださいましたわね、おそろいで」

貴子「仲がよくて羨ましいわ、あなたがた」

さくら「別によくはないんですけどね…。
私たちだってあんまり合わないんですよ、ねえ」

寅、
観葉植物の葉っぱ取ってしまって、隠しながら

寅「
そうそう、そうですよ。お互い兄妹といっても他人みたいなもんだよな、
お前とオレは。道の途中ですれ違っても
わかりゃしねえやね。
ところでおまえ元気かい?

さくら「う、うん」

寅「そうか、そりゃよかった」

貴子「あら、?じゃあ、お兄さんのお住まいは?」

さくら照れながら「
兄は風来坊なんですよ…

貴子「
そう…、そうなんですの。じゃあ、
  やっぱり、妹さんのいらっしゃるところが懐かしいですわよねー


さくら「
そう?懐かしい?
このさくらの聞き方が優しくていいなあ
こういうシーンがこのシリーズのたまらなくいいところです。




               




寅「
どーしてこんな古い町がよ。
 気の利いた飲み屋もねえし、ろくな
だっていないんだから

さくら、ちょっとドギマギ。

寅「
うん?あ。。。、そういうわけじゃないんです
さっき取ってしまった
葉っぱでパタパタ扇ぐ。

お昼休みで工員達が入ってくる。
寅、彼らにおごってやると見栄を張ってさくらに
財布を渡して立ち去る。

さっきの観葉植物の葉っぱを尻尾代わりにして歌を歌う。

寅「
♪タンタンたぬきのキン○○はぁ〜

貴子「気前がいいのねお兄様って、
お財布ごとぽんと出したりして

さくら「いいえー」と中身を見て
ビックリ、というかやはりというか500円札一枚しか入ってない。
この財布の中に500円札1枚パターンは
何度も使われているギャグ。

さくら、カウンターの下でささっと自分の財布から
千円札2枚出して寅の
財布に入れておく。(さくら冷や汗もの)
↑この財布の中身フォローパターンも時々出てくる。
浪花の恋の寅次郎で、ふみさんがさくらのように
財布にお札足してしていた。


工員5人+さくら+寅=7人分 
だいたい1971年当時コーヒー一杯200円〜 250円
くらいだから2000円あれば余裕でOK。
寅は作っている最中に飲まずに出て行ったけれども、
さくらは性格的に払うと思う。
(もちろん貴子は寅の分は受け取らないとは思うが)




題経寺境内

信徒会館建設 起工47年2月。 完成48年2月。

寅、貴子の息子、学を見つけて


寅「
よお!でこ坊、あの3人が遊んでくれねえのか?
よし!寅チャンがなもっと面白えこと教えてやるからな


このあと寺の饅頭盗んだり、

盗った盗った盗った、早く!

江戸川土手でみんなでソリごっこして遊んだり、
寅「
ほらほらほらほら、ほらいけー!!
寅「
上がって来い上がって来い上がって来い!
もう一回やろう!上がって来い!


やんややんやの大騒ぎ。3人の同級生ともすっかり仲良くなる。

このシーンで流れているのは
「ヨハンシュトラウス」のワルツ

この江戸川土手で遊ぶシーンは
寅の優しさがよく出ていて好きなシーンだ。


           



夕方遅くに学、3人の仲間を連れて帰ってきて、店内でキャッキャ遊ぶ。
貴子、学が元気になって嬉しくて感動している。





夜、とらや

貴子がお礼を言いに来ている。


貴子「
実を言いますと、あの子は人前じゃ口もきけない友達も出来ない
 気の弱い意気地の無い子だと思い込んで、なかば諦めていたんです


おいちゃん奥の部屋で寝ている。(ちょっと頭が痛い)

貴子「
あの子のあんな明るい顔、私初めて見たんですよ。
おまけにあんな愉快なお友達もいっぺんに3人も出来て

寅「
あー、ペンキ屋のハナッタレ芸者屋の倅でしょ?
おかしいねぇ、頭は悪いし、末はどういうことになるんで
しょうねえ…親泣かせな話だ


貴子「
ねえ、寅さん、どうぞこれからもあの子と
  遊んでやっていただけませんでしょうか。
  考えてみると、この何年ものあいだ学と
  あんなふうに遊んでくれる人は誰もおりませんでしたのよ。


寅「
そんなことでしたらお安い御用ですよ。
なに、こっちは
一年中遊んでいるようなもんですから

貴子「
でも、こちらのお店もお忙しいでしょうに
寅「
店って言いやすと、これですか?こんなもの
老い先短い老人夫婦の遊び半分のこと
ですよ。」

おいちゃん、それを聞いてむくっと起きて、怒り心頭。

貴子「そんなことは…

寅「
いや、ほんとうですよ。さっきもね、
 なんだか頭が、頭痛きちゃったから
 早仕舞いしようなんて調子ですよ、
 へへ、どうも始末におえやしねえ


貴子「
そりゃいけませんわね、お大事に


寅「
全身的にガタが来る年頃ですからねえ。

思えば不幸な一生だったんじゃないですか
あの年寄りも…
←言いたい放題だね。

貴子「
そんなご冗談を。寅さんいろいろありがとうございました。それじゃ私これで

寅「
もう、いらっしちゃうんですか?
 それじゃ参道までご一緒に、いいじゃございませんか

と、立ち上がりかける。

おいちゃん後ろから寅の
腹巻をぐいーっと引っ張る。

寅、尻餅ついて「
あ痛!


                 



貴子「どうかなさいました?」

寅「いいえ、ちょっと
足がしびれて

貴子おばちゃんにも挨拶をして去っていく。

寅「足元気をつけて、ごめんください」と言いつつ
前のめりにつんのめる。『バタ!!』

寅、おいちゃんに「
何しやがんだい!


おいちゃん息を荒げながら
おいちゃん「
はあ、はあ、よくもオレを殺しやがったな!

寅「
べつに殺しやしないよ。
ただ、不幸せな一生だったって
言っただけだないか、大げさなジジイだな…



おばちゃん「
寅さん、そんな言い方ってないよ

寅「
ガタガタと、謝りゃいいんだろ。

おばちゃん「
早く謝りなよ早く
寅「
謝るよ、はいはい謝りますよ。
僕の
おじ様の生涯は幸せに終りました。
これでいいかい?


おいちゃん「
おじさまとぬかしやがったな!!


おばちゃん「
あんた、そんな、心臓に悪いよ」後ろから必死で止める。


おいちゃん「
やい、寅!オレの生涯は本当に幸せだった。
   …テメエさえいなかったらな!


このおいちゃんの発言パターンは葛飾立志篇でも使われていた。


寅「なにぃ?」

おいちゃん「オレが不幸なのはなみんなてめえのせいだぞ!」

おばちゃん「寅さん謝んなよ!」

寅「そうか、そういうことかい。
それをいったらおしまいだよ

おいちゃん「
当たりめえじゃねえか。お、おしまいだよ!

「なんてこと言うんだよ、おいちゃん!」と言いながらおいちゃんの
肩を叩く
おいちゃんよろけながら「殴ったな、こんちくしょうめ!」と
寅を叩く
博止めに入るが寅に「テメエ引っ込んでろ!」と
ぶったおされる

博っていつもこういう役。でも第1作ではちゃんと寅の暴走を
止めていたし、第3作では寅にパンチをくらわし、
1本背負い投げをおみまいしていたのに…。



寅「おいちゃん、おしまいとはなんだ!おしまいとは!」

博「落ち着いてくださいよ!」

寅、
またまた博の頭ひっぱたいてこかす。←博…っていったい(TT)



                 



寅「
落ち着けるか!こんな時に!

博「お互い話し合わなきゃダメだ!」

おいちゃん「こんなバカと話し合えるかい!」

おばちゃん、止めてるふりして、
おいちゃんに
武器の肩たたきをさっと渡す!
さすが夫婦!

寅「おいちゃん、もういっぺん聞くけどな、
今日限りにおいちゃんとオレとは甥でも叔父でもねえと、こう言うんだね。」

おいちゃん「そうだよ、そうだよ」

寅「そうか、そんなこと言って後で後悔しねえか?」

おいちゃん「後悔なんかするかい!せいせいしてな、
明日っから日本晴れだ!!
寅、
パン!と手を叩いて立派!!立派ですよ!オレはね、二度と帰ってこねえよ、
止めたって帰ってこねえからな、絶対!」

おばちゃん、博止める。
寅「誰がこんなとこにいるもんかい!畜生!
さくら!止めるな!
出たぁ〜、極めつけギャグ


おいちゃん「
さくらなんかいるかい!


第12作「私の寅さん」で、九州旅行をしているおいちゃんたちと
留守番をしている寅とが長距離電話で話をした時、
寅がさくらも九州にいるのに、さくら、止めるな!って
言う場面がある。さくらがいないのに、「さくら止めるな」と言う、
そのつらさはよりどころの無い寅のことを考えると心が
締め付けられる思いだ。おもろうてやがて哀しきだ。


はっと、気づく寅、

おいちゃん「
どうする?



寅、ちょっと迷って、出て行ってしまう。



おいちゃん、くたびれて「は〜、ふぅ〜」と座り込んでおばちゃんに背中さすってもらう。

これが森川信さんと渥美さんの最後の大喧嘩シーン。
もっと観たかったなあ…


行く当てもなく、ロークのシャッターを閉める貴子を遠くから見ている寅。

翌朝 新聞を開きながらとらやに向かう寅。

↑たぶん寺の源ちゃんの部屋あたりで寝てたのかも。

ちなみに今回は源ちゃん出ません。(
佐藤我次郎さん確かこのとき怪我してキャンセルだったと思う

おいちゃん、ちょっとうつろな目で新聞を見ている。

おばちゃん「
いたよ!向こうから歩いて来るよ。夕べどっかに泊まったんだよ

おいちゃん「
いただと!クアーッ!!畜生目!
     まあ、さんざん心配させやがって


おいちゃん、やっぱり寅が戻ってくるのを
夕べ待っていたんだなあ…。優しいなぁ。


おいちゃん「おめえはひっこんでろよ。こういう時に甘え顔するから
つけ上がるんだ。来たぞ来たぞ、知らん顔してろ」


寅、ちょっと照れて、おいちゃんに「おはよ」

おいちゃん腕を組んでプイッ!

寅、しらーっとして、プイッと去っていく。

おいちゃん「フン!ざまあみやがれ」


おばちゃん「そんなことして、いつまで続ける気だい?」
おいちゃん「
決まってるじゃねえか、死ぬまでよ!
寅、すぐに前の道まで戻ってきて新聞見ながら
寅聞こえよがしに「
いやな世の中だねえ〜
おいちゃん「
クゥ〜〜!!」と、
アンコかき回しながらのた打ち回る。


おばちゃん「もう、よしなよ…」
おいちゃん、さっきのこと思い出して「
クゥ〜〜〜!!
おばちゃん、おいちゃんを睨む

もうふたりのやり取りは絶妙!さすが!のひと言!


                




夕方、いわし雲の下、江戸川土手で寝そべっている寅。

学たち集まってきて、
給食の残りのパン寅に上げる。
「どうも、ありがとうよ」と侘しくコッペパンをかじる寅。





とらや 仏間


一方、とらやでは

博の父親が博を訪ねて来ている。

おいちゃん、何を話せばよいか分からず、緊張している。気まずい空間。


おいちゃん「
あの…、大学では、その…なにがご専門で?

博の父親「
インドの古代哲学です


博のお父さんはなぜか「農学部」の名誉教授。
農学部とインド哲学か???なんか深い因果関係が
ありそうだ。う〜む。



おいちゃん「
インド?…?
博の父親「はぁ」
おいちゃん「
インドですか…大変ですね…
森川ワールド満開!(^^)/


裏の工場から博やって来る。

おいちゃん「
あっ、博君、さ、さあ、さあ、さあ、こっち入って!

小さい声で「いらしゃい」
博の父親「どう、元気かね」
博うなずきながら、タバコを吸おうとする。←なんとなく父親とはウマが合いにくい感じ。
おいちゃん「おい、つね、灰皿持って来い、灰皿!」
博「ここにあります」
おいちゃん「
あ、あるよ!もういいよ!
博の父親「あのひとはどうしました?寅次郎君は?」
おいちゃん「あっ、寅ですか。これは申し遅れました。なにか、お宅にお伺いしてえらい迷惑かけたそうで」
博の父親「元気にしとりますか?」
おいちゃん「ええー、もうこないだから家にいまして、ゴロゴロしてますよ。えー…、なんですか、

旅先で妙なことを聞きかじって参りましてね、
帰る早々、ええっと、なんだったけな、博さん、
りんどうが、ほら…」

博「庭先にりんどうが咲いていて明るい茶の間で一家が食事をしている…」

おいちゃん「
そうそう、これですよ、まあこんなくだらねえこと
   口走ったりしましてね、困ったもんなんですよ。
   どうせ
どっかの無責任なやろうが吹き込んだ
   にちげえねえんですけどね。

   なにしろ、ほら、頭が単純でしょう、ですからすぐ騙されちまうようで、
   ねー!そうだろう!



と、博に向かって相槌を求める。

おいちゃん「
どこの誰がしゃべったんですかねえ…。もうしょうがねえ…

博の父親「
いや、実は…、あれ、わたしが言ったんです

おいちゃん「
え…?、は……は……そうですか…、はぁ…
もじもじたじたじヘロヘロ(TT)

なんともいえないいい味!間!森川さん最高!!


寅の声「
おばちゃん、先生来てるって!


おいちゃん「
あー!寅さんかい、いや、よかった!おいでよ!

おいおい、ケンカしてんじゃなかったのかい?
すっかり今朝までの喧嘩忘れている


寅「
よお!先生!

おいちゃん「こっちこっち」

寅、
博を押しのけて、どかっと座って「先生、その後元気ですか」

博の父親「うん、君も元気そうだね」

寅「ええ、おかげさまで、ちょっとここに立ち寄りましたらね、
寄ってけ寄ってけって言ってくれるんで、ずるずる滞在することに、
ね!なあ、おいちゃん!」

おいちゃん「そう、そうだな!
仲いいんですよ!!
おいちゃん今朝の「死ぬまでよ!
発言は宇宙の彼方にふっとんでます(^^;)


寅、お手伝いのおばあさんの代わりの
代書屋の隣の後藤のおばあさんの事を聞いて
代書屋は主に、親族書、目録、表彰状、大事な手紙、等々なんでもこなす。
今でいう行政書士、司法書士、のような仕事も含めても言うこともある。


寅、「
あー、知ってる、知ってる、年のわりにちょっと色気のある、
三味線のひとつも弾こうってかんじの。先生も隅に置けないなあ。
差し向かいに酒でも飲みながら、

庭いっぱいに咲きこぼれるりんどうの花、これが本当の人間の
生活というもんじゃないかなんてやってんじゃないか、
年甲斐もなく!ハハハ!


と笑いつつ博の肩をポン!と叩く

寅、博を見て「なんだよ、
踏ん張ったみたいな顔して、
おまえのお父さんなんだよ。面白くも無い男だねえ、おまえも」


さくら、満男連れてやってくる

さくら「いらっしゃいませ」
寅、満男に「満男、こっちこいこっちこいこっちこい、
ほらほらほらほらおまえのおじいちゃんだ。ほーら満男おじいちゃんだ。
やさしい顔のおじいちゃんだ。」

博の父親、表情が硬い。

寅「先生、だめだよ、そんな仏頂面してちゃ。
もっとやさしい顔してあげなくちゃ。これ、あんたの孫ですよ」

(と言いつつ両手で満男の顔をむりやり博の父親のほうへ向けさせる。)

寅「博がなつくわけ無いのも無理はないよ。博、おまえ子供の頃から全然なつかないだろこの人に」
寅、博の父親に「
はい、バァーッと言ってください。バァーって
博の父親「
バァ←テンション低くすぎ(^^;)

みんな大笑い特においちゃんにバカ受け!



                 




寅「ひどいバァーッだなおい!ハハハ」

博の父親満男をひざにもって来てダッコして
よいしょ、よいしょ、さあ、さあ、さあ、さあ、

寅「ほら、満男、いいなあ」

中村はやと君ちょっと不安そう。

寅「ほーら、変わってくぞー、おじいちゃんが笑った、おじいちゃんが笑ったー」
満男「
なあに?、これなあに?
↑背広の内ポケットに何か入っているらしい。
中村君の
アドリブかもしれない!
もっとも彼はほとんどアドリブだと思うけど
(^^:)


夜.さくらのアパート


封筒を博に見せているさくら。「さくら殿」と書いてある。
さっきまで博の父親がアパートに来ていたことを伺わせる

(3人分の
バームクーヘン、コーヒー、握り寿司の桶、などで分かる)

博開ける。中に
一万円札が8枚から10枚
博「いつくれたんだい?」
博さんが入場券買っている間にね。満男に何か買ってやりなさいって
買い物篭の中にね…。いいのかしらそんなにたくさん」
博「くれるものはもらっとけよ」

さくら「
結局、お父さんは何しに来られたのかしら?
  本当はね、本当は、博さんと暮らしたいんじゃないの?
  一人暮らしは寂しいのよ、お父さん。なんとなく私そういう気がしたわ…


満男のオモチャ(大きな機関車)み満男もう寝ている。

博「そんなこと言ったって親父をこの家に呼べるわけじゃなし、
ましてオレ達が高梁に帰るなんて…、君、そんなことできるか?」

さくら「うん…」

博「できないだろ…」





翌日 とらや

寅、上機嫌で2階で歌
♪花摘む〜野辺に〜日はぁ〜落ちて〜ペコペコペコペンペコペンポン♪
おいちゃん、電話でさくらと話している。

おいちゃん「ハァ〜、どうなっちゃうのかねえ…、
このままいくと。
早いとこ決着つけて欲しいよ。
なんとかしてくれよ、さくら…」

珍しくとらやのお客用座敷が見える


               



さくら「大丈夫よ、お兄ちゃんだってちゃんと考えてるわよ」

おいちゃん「何が大丈夫なもんかい、来た!来た!」

寅、口笛を吹きながら「じゃね、おばちゃん」

おばちゃん「あ、いっといで」

おいちゃん寅の歌声のほうに受話器を
向けてさくらに聞かせる。
↑さすがのさくらも電話口で呆れているだろう。

おいちゃん「な、聞いたか?あの調子なんだよ



ローク店内

リーン、リーン(電話)

寅、店に入ってくる。

貴子「あ、いらっしゃい」

寅、電話に気づいて「はいはいはい私出ます」

貴子「すいません」

寅「
はい、もしもし、こちらきっちゃ店ロークでございます。
近代商事
さん、はいはい近代商事さん

貴子「
ありがとう、…もしもし、あ、あのう…利子でしたらおととい銀行の方に振込みました
   けれど、…
保証金!?、そんな、それじゃ約束が違うじゃありませんか。…だってあなた
   契約の時そんなふうには…、それじゃあたし、
騙されたも同じで…、だってそうじゃありま
   せんか!あなた契約の時にはあんなにはっきりと!あんまり人をバカにしないでください!


ガチャっと切ってしまう。


やはりお金を借りるときは健全経営の銀行かなにかでないと危ないです。気をつけないと。
しかし、担保がないとなかなか貸してくれないので、
悪質なマチ金に、つい手が出てしまったのかも。
貴子が人を信用しすぎたというよりも世間のことに未だ慣れていないのだろう。契約書をよく読めば必ず
書いてあるはずだ。言葉よりも書かれている文字が重要。口では悪質マチ金はいくらでも嘘を言う。
証拠が残らないからだ。
また、女で一つで子供を養っていかないといけないので当時は焦っていたのかもしれない。


↑第17作「夕焼け小焼け」でもぼたんが会社経営者の鬼頭に
200万円だまされていた。どちらも法律の網の目をくぐった悪質な
手口だ。裁判でも負けてしまう。



寅そのやりとりを聞いている。
工員達が客でやって来るが、貴子、悔しくて泣きそうになり奥に引っ込む。

寅、
自分の財布を取り出して、中を覗きこんむ。(ほとんど入っていない)
↑ 
一応財布の中身見るのが切なく哀しい。そして無力を思い知る。

寅もどうしていいか分からなくて動揺して店を出て行く。


江戸川土手で悩む寅、
独り言をつぶやく
何かお困りの事が御ありでしょうか、金で済むことなら…、金で済むことならか…


           


学たち「
♪一二の三、浅草のぉ〜ホラ、シンガラホケキョー♪
この「チンガラホケキョウの歌」は
渥美さんのCDの中に入ってます。


何とかしたいと売に励む寅だが…

寅「
国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら
助平の始まりが小平の義雄、ね!
続いた数字が二!
仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。仁木の弾正はお芝居の上での憎まれ役。ね!
お父さん、これ買ってよ!ダメ?ケチ!
三、三、六歩で引け目がない。産で死んだが三島のおせん。おせんばかりがおなごじゃな
いよ。


警官やって来て「許可は?許可」

寅「どうもごくろうさんでした」といいつつそそくさと片付け始める。

別の場所で

寅「畜生!汚わい屋の火事じゃないけど、もうこうなったらヤケクソだよ!え!
これで買い手がなかったら私、稼業三年の患いと思って諦めます。浅野内匠頭じゃないけど
腹切ったつもりで諦めちゃうからね。それあげるお兄さん、え!持ってってよ!買わねえか!
どいつもこいつも貧乏人の行列だ。買ってくれなんて頼みやしねえよ。おまえ、えー、どこへ
いったってこれだけの値段で安く買えると思ってんの!?


警官また来る。

寅「どうもまたごくろうさまでした。」と片付け始める。

警官「つまらない本だね」

物悲しく、つらい雰囲気が漂っている。

48作中寅の啖呵バイで、
これだけ重苦しい空気が流れる場面と言うのも滅多に無い。
貴子の置かれている状況の厳しさがこの場面に乗り移っているようだ。


          




夜。貴子の家の裏庭

学と貴子の声
学友達の家に勉強しに行く。

寅、裏庭の垣根越しに貴子を見る。

貴子、気づいて「
誰?誰なの、そこに…

寅「
あの…、私です


貴子「
あら、なんだ寅さん。
   よく来てくださったわね。まーどうぞお入りになって


寅「
いや、お構いなく、もうすぐ帰らせて帰らせてもらいますから

貴子「
あのぅ、何か御用でも

寅「
さっき、夜店をぶらっと冷やかしておりましたらこんなもんがありましてね

貴子「
あら、まあ!りんどうの花ね、うれしいわ、私好きなのよこれ

寅は貴子にあげるとは言っていないが、まあ流れ的にはあげるために持ってきたこと
は分かるのでよしとしましょう。


寅「
そうですか、それはようござんした

貴子「
ほんとにありがとう、まぁー、きれいだわ。
  …ねぇ、りんどうの花って月によーく映るのよ


寅「
あ…、さようでございますか

貴子「
あの、どうかなさいました…?

あの…、何か困っていることございませんか?
どうぞわたくしに言ってください。どうせわたくしのことです。
たいしたことはできませんか指の1本や2本、いえ…、片腕、片足くらいでしたら
なんてことありません。
どうぞ言ってください、どこかに気にいらない奴がいるんじゃないですか?


貴子「
ありがとう…。ほんとうにありがとう寅さん…嬉しいわ、
私とっても嬉しい。いいの、そりゃ、困ることもありますけどね。
私ひとりの力でなんとか解決できると思うの。だから、それはいいの…。
でも、寅さんの気持ち嬉しいわ。
そんなふうに言われたの…、
今…今の寅さんみたいに言われたの、生まれて初めてなのよ…


第10作のお千代さんも、第17作のぼたんも寅の気持ちに打たれ
涙を流す。なかなかこういう風には言えないもんだ。人は人の心に救われ
人の気持ちに涙を流す。寅は社会的な救済には無力だが、貴子さんの心を
温めることはできたのかもしれない。そして、そのことが人間にとっていかに
大切なことか。48作を通してこの物語は訴え続けるのである。


寅「
……、いい月夜でございますね

貴子「
寅さんも旅先で、こんなお月様見ながら
柴又のこと思いますことあるんでしょうね


寅「
ありますよ

貴子「
いいわねえ、旅の暮らしって

寅「
好きで飛び込んだ稼業ですからいまさら愚痴も言えませんが、