バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第4作 男はつらいよ


1970年2月27日封切り











懐かしい柴又の風の中で華やぐ人々     正調『男はつらいよ』の世界  



昨年2007年夏に久しぶりに田宮二郎主演の1978年にフジテレビで放送された『白い巨塔』(全31回)全作品をDVDで見た。
田宮さんの鬼気迫る本物の芝居に圧倒されると同時に演出に携わった人々の鋭敏な感覚にも脱帽してしまった。
あんなドラマは二度と制作出来ないだろうと今でもそう思う。完全にスタッフもキャストも仕事の域を超えたステージまで
到達してしまっている作品だ。襟を正して見ないといけないドラマ。そういう域にあるドラマなんてそうそうはない。
そのスタッフの一番中心におられ、この作品をリードし、コントロールし、プロデュースし、大活躍だったたのが、
この『新男はつらいよ』を監督された小林俊一さんなのである。

それにしても田宮二郎さんの集中力には呆然となった。迫真の演技を遥かに越えた彼の心の叫びだったようにも思える。
ちなみに田宮二郎さんといえば私はいつも加藤登紀子さんが歌っていたこの歌を思い出す。


白い花なら 百合の花 人は情けと 男だて

恋をするなら 命がけ 酒は大関 こころいき。


赤い花なら はまなすの 友と語らん ふるさとを

生まれたからには どんとやれ 酒は大関 こころいき




             




あのCMの中の田宮さんはまるで車寅次郎のように初心な心で女性に接していた。あんな役者さんはちょっといない。



さて、田宮さんの白い巨塔からさかのぼること10年前、同じくフジテレビであるドラマが大きな人気を博した。
それがテレビドラマの『男はつらいよ』である。(脚本は山田洋次さん)もちろん小林監督の世紀の代表作になった。

『僕たちの好きな白い巨塔』というディープなサイトのインタビューで、小林さんはこの二つのヒット作品について、
「白い巨塔」の財前五郎と「男はつらいよ」の車寅次郎は両方とも、自分の分身みたいな気がする。
2人はまったく両極端なんだけど、よく考えるとどっちも同じなのだ、と仰られていた。



                  



『人間っていうのはみんな両極端なものを持っているのであって、悪人になったり善人になったり、やさしくなったりいじわるになったり、
まじめになったりいいかげんになったり、それを振り子の幅みたいにどんどん片方の端っこにふっていけば、車寅次郎になるし、
その逆にふっていけば、財前五郎になる。寅さんみたいに自由になりたいと思うこともあるし、でも、仕事をやるときは財前みたいに
一生懸命やりたいって思うこともある』そのように語られていた。


小林さんは、渥美さんとは「おもろい夫婦」でのプロデュースからはじまり、テレビドラマの「男はつらいよ」で渥美さんとの間に
満開の花を咲かせたが、今回、思い出深いあの『車寅次郎』をもう一度、今度は大きなスクリーンで演出する機会を得たのだ。


1970年当時、山田監督はといえば、他の映画制作で手が空かないのと同時に渥美さんとの演出面での摩擦などがあり、
前作の第3作に続き、今回も脚本の共同脚本執筆に留まるのみである。森崎東監督はすでに第3作制作の真っ最中で
体は2つはない。そこで次なる監督は上に記したようにテレビ版「男はつらいよ」に演出やプロデューサーとして
深く携わってこられた小林俊一監督になんとかお願いすることとなった。この第4作は松竹が無理して早く作らせたお陰で
なんと1ヵ月半で作らざるを得ないはめになったのである。

そのようなご自分の分身のようなテレビドラマの車寅次郎を、映画で急遽演出することとなったことはある意味たいへんなことだし、
やっかいな難仕事ではあれども、ある意味チャンスでもあったとも言える。
つまりここにきてテレビドラマで展開していたあの正調「男はつらいよ」を制作するチャンスにめぐり会ったともいえるのだ。
それがたとえ、制作費や製作日数に大きな制限があったとしても、やはりこれはチャンスと言えると思う。
それこそ、小林さんが上で仰ったように財前五郎のように一生懸命仕事をがんばれるまさにその時が来たのだ。






手を伸ばせば届く息づかい   懐かしい柴又の風と匂い


制約の関係でこの作品にはほとんどロケらしいロケが出てこない。しかしそのぶん柴又参道がたっぷり出てくる。
ロケが無いのはつまらないとおっしゃる人も多いとは思うが、私にとっては風吹く柴又参道がたくさん映し出されるこの作品は
とても嬉しく貴重なもので、古き良き庶民の町、柴又をしっとりと窺い知ることができる数少ない作品なのである。

また、登場する人々も佐山俊二さん扮する蓬莱屋、二見忠男さん扮する弁天屋この二人は絶品である。あんな味が出せる役者さんは
そうはいない。彼らの存在自体が柴又の風情なのである。そしてそれらを囲むように谷よしのさんたち柴又の御一統さんたちが
実にいい顔でスクリーンを駆けずり回っている。全48作中、こんなに柴又風情がしみじみ描かれた作品は無い。
第3作『フーテンの寅』と比べて演出が柔らかく自然体で落ち着いている。人々のセリフに力みが無いのはさすが小林さんである。
第3作には寅次郎のリアルな皮膚呼吸が聴こえてきたが、この第4作には柴又という町のリアルな息づかいが感じられるのである。
山田監督作品と比べてギクシャクした部分や未醗酵な部分は若干あれども、伸ばせば手が届く臨場感のある風と匂いがそこにはある。
これはなにものにも代えがたい魅力なのだ。




                             




そういう意味ではこの映画シリーズのオリジナルである『テレビ版男はつらいよ』のあの独自の雰囲気を最も強く醸し出しているのが
この第4作とも言えよう。またエピソード的にも抱腹絶倒のハワイ旅行騒動やその後の泥棒騒動など、テレビ版の名場面のアレンジが
多く採用されている。この前半部分がメインと言ってもいいほどテンポのいい展開である。




ところでこの作品で、初めてマドンナがとらやに長く下宿することになる。マドンナがとらやに下宿すると物語りに幅ができるのである。
このパターンは後に第6作、第16作等々で使われていくこととなる。やはり、マドンナがとらやの家族になると物語は俄然面白くなるのだ。

それにしてもこの作品のマドンナ春子先生を演じた栗原小巻さんは当時24歳!若い若い。第7作の花子ちゃん(当時20歳)はもちろん
だんとつ一番若いが、春子先生はこのシリーズで2番目に若いマドンナなのだ。なんせ第26作のすみれちゃん(25歳)や第19作鞠子さん(25歳)より
春子先生は若いのだ!ああ、寅との絡みがもう少し濃ければ…、このへんがやはり恋の物語としてはもったいない。






森川信さんの懐


この第4作の中で森川信さんが劇中劇を寅に向かって演じるシーンがあるが、この『婦系図』の長い一人芝居は必見だ。
森川さんが只者じゃない事がよく分かる。森川おいちゃんの芝居の中でも特筆の名シーンだ。一緒にいる渥美さんの芝居が
小さく見えるほど圧巻だった。
第4作は全体に森川さんが実によく動いている。森川さんの回と言っても過言ではないだろう。後半のメインはマドンナでなく実はこの
『森川おいちゃんのアリア』である。




                       



また、この作品では、第1作で寅と登が住んでいたあの『幻の部屋』も見ることが出来るのだ。
その二階に上がった右側の部屋に春子先生が下宿するのである。
この後この右側の部屋は完全に茶色の戸板で封鎖されて、階段を上がって左の部屋のみが
使われ、結局、最後の48作まで開くことはなかった。

それにしてもこの2階部屋の下を考えるとちょっと構造的に無理があることが分かるのだが、それはまた本編後半で。



                      














それでは本編完全版をどうぞ




松竹富士山


この時のバックミュージックは、第3作で使われたもの。
この曲は第5作でも使われる。






                                   








早春の山梨県の道志村 (山梨県南都留郡道志村)


白い梅の花が咲いている。



郵便局の赤いスクーターが走ってくる。




                      





寅のナレーションが流れる。



寅「梅の花が咲いております。
 どっからともなく聞こえてくる谷川のせせらぎの音も
 なにか春近きを思わせる今日この頃でございます。
 旅から旅へのしがない渡世の私どもは、
 粋がってオーバーも着ずに歩いちゃおりますが
 ほんとうのところ、あの春を待ちわびて鳴く小鳥のように
 暖かい日差しの射す季節を恋焦がれているんでございます




俳優座の大御所、村瀬幸子さん演じるおばあちゃんが営む峠茶屋


この店(峠の茶屋)のあり方がなんともいいんだよな。
昔ネパールのヒマラヤに行った時、茶店がこんな感じだったよ。



郵便局員さんの真っ赤なスクーター、峠茶屋に止まる。

このスクーター欲しい(^^;)



                      



郵便局員さん「ばあちゃん!ばあちゃん、郵便やでー

と、中に入っていく。



おばあちゃん「どこからや?

郵便局員さん「名古屋のヨシオさんからやな

おばあちゃん「んん」と、頷いてはがきを受け取る。

おばあちゃん「あんた、すまんけど、読んでくれんかいな

郵便局員さん「んー?

おばあちゃん「めがねつぶしてしもうてな、読めへんのや
めがねつぶしても買わないところが昔の人らしくていいねえ(^^)

郵便局員さん「面倒やな」と言って読んであげる。

郵便屋さん「いいかい。読むで。

     『拝啓おばあちゃん、元気ですか。僕も元気で働いています。
     はやいもんで名古屋に就職してもう一年になります。少し貯金が出来たので、おばあちゃんに
     前から欲しがっていた電気アンカを買って送ります。お母さんに使い方をよく聞いて火傷をしたり
     しないよう大事に使ってください。

     ヨシ子やスミ子によろしく。敬具』




おばあちゃん、泣いている。


寅、店の中でその手紙の内容を聞いて静かな感銘を受けている。




郵便局員さん「おばあちゃん、ええ孫持って幸せやな、フフフ



                      




微笑みながらうなずくおばあちゃん。

おばあちゃん「おおきに

郵便局員さん「じゃあ

おばあちゃん、郵便局員さんに休憩していくように勧めるが、
郵便局員さん、笑いながら遠慮していく。
細かい演出だ(^^)



町のお孫さんから心のこもったはがきが届く峠の茶屋。
団子と甘酒で体を休憩していた寅は、
望郷の念に駆られる。






寅の声「私の故郷にも、血を分けた妹と叔父夫婦が、
   私のことを案じながら暮らしております。

   毎年、春が近付くたびに、
   出来ることなら暖けえちゃんちゃんこの一枚も買って帰って、
   喜ばしてやりてえと思うのでございますがね。
   それがなかなか、思うに任せぬ辛さでございます。」




で、このあと、その恩返しの銭のために競馬に手を出すはめになる寅だった…。



                      



バスが来たので支払って出て行こうとする寅。



貼り紙


舌代

峠団子  六十円
甘酒   六十円
おでん 一皿 七十円
あべ川 八十円
あったかい牛乳 三十円





寅「お、来たな。ばあさん、ごちそうさん。
 じゃあ勘定はここへ置くぜ



団子と甘酒で120円。なんと寅が出したお札は
500円でも千円でもなく、あの
板垣退助さんの肖像の百円札!
百円札の支払停止日は昭和49.8.1この作品の4年後。


おばあちゃん、あわてて

おばあちゃん「あ、あああ…



寅「釣りはいらねえよ。ばあさん、
 おまえさんの可愛いお孫さんが送ってくれた電気アンカの
 電気代の足しにでもしてくれたら嬉しいぜ、あばよ


と格好つけて外へ出て行くが

おばあちゃん「あ、あのと百円札を見せながら追いかける。

寅「いいんだ、いいんだって

おばあちゃん「あの、お客さん、団子と甘酒で百二十円やけどそれでも安い!


寅「え…二十円?

おばあちゃん「ええ

寅「あ、たんないの。あ…足りたのかと思ってた

と財布から小銭を取り出す寅。


そういえば、第43作「寅次郎の休日」で、
小島三児さんの店で酒飲んで煮しめ食べて、
指を5本(500円)出されたので、「安いな」って言って、
なんと50円だけ置いていったことあったなあ…。
あの時も「釣りはいらねェ」ってほざいてた(^^;)



                 



寅「こまけえのばっかり、はい…どうも

おばあちゃん「おおきに





バスが来ている。


大宇宙博の広告  富士急ハイランド


寅「あばよ

車掌さん「峠茶屋でございます

なんともいいバス停の名前だね〜(^^)こんなバス停の近くに住んでみたいよ。


急いでバスに乗る寅。



寅の声「全くの話、銭があれば、銭さえあれば、
   私は今すぐにでも土産を買い込んで
   故郷へ帰りたいのでございます



乗ってすぐこけてしまう寅。


あわてて百円札を車掌さんに渡し、
乗客にカバンをほうり投げる。

乗客「あいて!!いてー

近くの乗客を巻き込みながら、寅、窓から顔を出して、



女性客「いや!いてて

男性客、赤い帽子を落とされて

男性客「ああああ!


すぐバス止めて、拾えよ ヾ(^^;)


寅「おい、ばあさんよ、余生達者で暮らせよ。
 なあ、お孫さんによろしく言ってくれい、
 うん、ばあさん元気で暮らすんだぜ。
 オレも元気で生きていくからよ、
 ハハハ達者でな、あばよォ!




窓から顔を引っ込められずに苦しんでいる男女の乗客たち。
それを止めようとしている若者の顔に帽子が当たり続ける。



                      

           



ブリジストン(BS)タイヤの広告看板


寅「
さよなら、あばよォー!ばあちゃん、元気でなー!


手を振るおばあちゃん。


寅、ようやく窓から顔を引っ込めて

寅「あばよ、さよなら…か、へへ



                      



自分しか見えないヤツとは、このような男を言うのだね。
乗客の赤い帽子どうするんだ…(−−;)




寅の声「
さようでございます、
   私の故郷と申しますのは、
   東京、葛飾の柴又なのでございます。








タイトル  .男はつらいよ




                      




「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。






春まだ遠い柴又 江戸川土手が映る。


矢切の渡しが映り、川漁師さんが映り、
江戸川土手が映り、その下の茶店が映り、
帝釈さまが映り、参道のせんべいやさんが映っていく。



今回だけ歌詞がテレビ版から続く正調『男はつらいよ』の3番の歌詞
どうせおいらは、底抜けバケツ〜の歌が唄われる。
このあたりもとても貴重。


♪どうせオイラは底抜けバケツ、分かっちゃいるんだ妹よ
入れたつもりがすとんのポンで、何もせぬより未だ悪い。
それでも男の夢だけは、何で忘れて、
何で忘れているものか、いるものか♪

このあとはメロディだけが流れていく。



柴又題経寺、帝釈天参道が涼やかに映り、下町の風が吹いている。


このオープニングの江戸川土手風景は、
第一作のオープニングと同じ店の同じ位置からのアングルが使われている。


           ↓


        



        第1作で登場した店と土手への階段↓

             




題経寺の人々の罪穢れを洗い清めて下さる
浄行菩薩なども紹介。

信者の方々が汚れを落としてお祈りをする。


ありがたい線香の煙を体につけているのは第3作でも登場した
川千家のご主人だと思う。



            



第40作「サラダ記念日」でも真知子さんたちがここでありがたい煙を
体にかけていた。


           
境内の端に『ルンビニー幼稚園』の標識。




帝釈天参道の店  

塩せんべい  亀屋



                              





そして最後にとらやが映って、


監督 小林俊一




                      







とらや 店


『本家 とらや老舗』の看板


このあたりではまだ二階建てながら、看板のところまでは二階部屋がきていない。
                 ↓
                      


              
十作台の作品では下のように総二階作りになっている。
            
る         
              







カメラは真上から店内を撮っている。


登が
JALのハワイ旅行のポスターを広げている。

JAPAN AIR LINES

HONOLULU

おいちゃん「そら行きたいよ。オレだってね、
    死ぬまでには一度外国の土地を踏んでみてェやな。
    でもねえ、おめえ…、いくら安上がりだって
    30万もの金を出せるわけないよ〜




一人30万円か…当時は高いねえ〜。
当時はまだドルに対して円が360円にわざと抑えられていた時代だからね。




                        



おばちゃん「ハワイどころか、大島だって連れてってくれないんだからね、
     このけちんぼはぁ、フフフ


おいちゃん「ヘヘへ何言ってんだいヘヘへ

登「
じゃ誰かこの商店街で行きそうな人ありませんかねえ

柴又界隈で営業したって無理 ヽ(´〜`;)


さくら「無理よ登君、来年はおいちゃんが
  商店会の幹事だって言うからその時に来たら


登「
来年ですか、随分先だなあ…、今年にしませんか

おいちゃん「ハハ、だってついこないだ修善寺行ったばかりだぜ

登「じゃどうでしょう、今年の秋、紅葉の日光見物なんてのは…

おいちゃん手を振りながら笑っている。

さくら「ちょっと登君、随分商売が板に付いてきたじゃない

登「いやだな、冷やさないでくださいよ



                      




みんな大笑い。


登「じゃあ、ポスター置いておきますから、店にでも貼って置いてください

団子屋さんにハワイのポスター貼って何になるんだい登君(^^;)

おいちゃん「ああ、いいよ、うん

おばちゃん「じゃあ、またおいで

登「へい

登帰っていく。


おばちゃん「あの子もよく堅気になったね、どっか違うんだね、寅さんとは

おばちゃん甘いよ、第5作や第9作の中の登見てみなってヾ(^^;) 
でも第33作でようやく盛岡で堅気になってたけどね。

おいちゃん「ああ


登は第3作には登場しなかったので久しぶりの感があるね。
第1作、第2作、第4作、第5作、第9作、第10作、第33作で登場。





おばちゃん、茶の間に上がりながら、満男をさわって、歌うように…

おばちゃん「違うんだとさ、寅.ち.ゃ.ん」 おいおい満男だろヾ(^^;)

さくら「寅ちゃんじゃないの『満男』

おばちゃん「あ、また間違えた。ハハハハ

さくら「満男はもっと色男だもんねえ〜
ああ…さくら実もフタもいない…(TT)





さくら土間に下りて

さくら「さあ、お父ちゃんとこいってこようかと工場へ行く。

仕事の邪魔になるだけだと思うんだけれど…(^^;)

おいちゃん「まったくどうしてるかね、寅のバカ

寅のこと思い出すときに愛情を込めて
『バカ』ってつけるおいちゃんっていいねえ〜(^^)







そこへタコ社長が旅行から帰ってくる。




なぜか、題経寺の方向から帰ってくる。普通は逆。
だいたい、社長が一人で旅行するか?





おいちゃん「どうだった旅行は?


社長「それがね、びっくりしちゃったよ




                      



おいちゃん「どうして?

社長「寅さんに会ったんだよ

おばちゃん「えー…?

おいちゃん「寅にい〜…?どこでェ?

社長「名古屋で。水いっぱいくれ

おばちゃん「あ、あいよ

おいちゃん「へー、名古屋でなにしてたあのバカ
またバカってつけるよ(^^)

おばちゃん「叩き売りでもしてたのかい?

社長「いやいやいやと言いつつ水を一気に飲む。

社長「ぷはっ!実はね、競馬場にいたんだ

おばちゃん「競馬場?



頷く社長。








名古屋  名古屋競馬場



花火と音楽

パッドックで動き回る馬達。



タコ社長黄色いメガネをかけて新聞読んでいる。



寅を見つけ、驚いて駆け寄る社長


社長「
は!寅さん!

寅、社長の方を見ないで

寅「うるせえ!黙ってろい!と馬に集中している。



拝む形で

寅「
頼むよと、帽子を浮かせ、祈るしぐさで自分の気持ちを伝える。

なんせおいちゃんたちへの孝行がかかってるからね(^^;)




                      



今度は両手をからめて、念入りに祈るしぐさ(^^;)


寅「はー…凄い気迫(^^;)









とらや 店


おいちゃん「なんだいそりゃ?

社長「馬に頼んだって言うんだがね

おばちゃん「何を?

社長「一着になってくれよって
なんという無謀な…(((−−;)



                      



おいちゃん「何を言いやがるんだい、冗談だろ


社長「いやあ本人は大真面目さ、
  『一寸の虫にも五分の魂と言うくらい、
  ましてや相手は四足だ。
  人間の気持ちが通じねえわけないだろう』なんてね




                      



おいちゃん「バカだねまったく

おばちゃん「その馬それで強いのかい?

社長「いや、それがねえ、どうしょうもない馬さー。
  
ワゴンタイガーっていうんだけどね。
  ま、人間でいやあ50歳くらいのジジイ馬さ。
  無印もいいとこ、まず絶対来ないということ請け合いの駄馬さァ




                      






名古屋  名古屋競馬場


印度カレールー

場外で、おでんを食べながら
『ワゴンタイガー』を揶揄する社長に寅は憤慨する。



                      



寅「なにい、ジジイ馬だああ?」と社長の首根っこをつかむ寅。

寅「
おい、ワゴンタイガーの悪口言いやがると承知しねえぞ!

 いいか、ワゴンタイガー、
 日本流に言やあどういうことになるんでえ、

 
ワゴンは車、タイガーは寅
 
早く言やあ車寅次郎じゃねえか。
 そうだろう、
同姓同名だい、

 ちょいと他人とは思えないぜェ




社長「むちゃくちゃだよそんなー、
  同姓同名だからって
  気持ちが通じるわけねえだろ



寅「あれ、バカヤロ!馬だって人間だって
  同じ真っ赤な血が流れてるんだい。
  貧乏人が全財産はたきだしてよ。
  命を懸けて頼みやあわかってくれるんだ!


おいおい、命はかけてないだろがヾ(^^;)



社長「どうだかねえ」とバカにしている。


                      


寅「あれ?てめえワゴンタイガー信用しねえのか。
 あいつはオレの言うことにちゃんと
返事したんだぜ


社長目を丸くして

社長「返事!

寅「あたりめえよー。
  馬は嘘つかねえからな。
  オレは馬をジーーーっと見て…頼んだんだ。
  馬は大きく頷いたぜェ。つぶらな瞳でよー。
  へへーたのむぜー!



パドックの5番の馬が大きく映る。


串カツ どて焼き 一本 30円








とらや 店




おいちゃん「
バカだねえ…、
   どこまで
バカなんだろうねえ


もう『バカ』どんどん連発(^^;)




                      



おばちゃん「で、…結局損しちゃったのかい

社長「いやね、それが驚くじゃねえか

おばちゃん「え…?







名古屋  名古屋競馬場



レースが佳境に入っている。


最終直線で各馬ラストスパート。


なんと一着に入る『ワゴンタイガー』


社長「来たよ来たよ!
  寅さん来たんだよ!大穴だよ!
  おい!しっかりせえ!
  おい!しっかりするんだよ!
  ほんとに来たんだよ!
  ワゴンタイガーが!



、心臓が飛び出るほど緊張し、頭ぐるぐるで

寅「
あ…あったりめえだい、べらぼうめ((((@@;))))






とらや  店




社長「一万八千円の大穴よ!
  ヤロウね
特券ぶちこんでるからしめて十八万
よ!


1枚100円で1種類のみの場合『投票券』と言い。
それを1000円単位にまとめた場合「特券(とっけん)」と言う。
寅の場合は単勝を10枚分と言う意味の1000円の馬券を買ったのである。
で、いわゆる万馬券がでたのだ。

ちなみに、過去に出た万馬券の最高額は、
2005年10月22日の東京競馬の3連単でなんと1846万9120円。
こうなると万馬券ではなく一千万馬券
となる。



おばちゃん「十八万!!?

おいちゃん「おい、そそそ、その金どうしたい?

おいちゃん、もうビビっている(^^;)






名古屋  名古屋競馬場


寅「オレは今日ツイてる。
 ツキは逃がしちゃいけねえ。それが渡世人というものよ


社長「おい、待ってくれ、それだけはやめてくれ。
  ここはね、その金持っておとなしく柴又へ。ね、さ、


と、寅をひぱって行こうとするが


寅「おう、これはオレの銭だ。
 オレの銭をどう使おうと勝手じゃねえか。
 いやだったら一足先に帰ってくれ


社長「と、寅さん、ああ」とそれでも止めようとするが寅は社長を振り払う。

社長「あー、あいててて



警備員の人2人が、ずっと見ているのはなぜ?
撮影キャストを保護しているのかな…。




                      



寅「あばよ!タコ」と場内に走って戻っていく。








とらや  店


『次の
庚申は三月五日です』の貼り紙。


社長「ああなったらね、半分キチガイみたいなもんだからねェ、
   いくら止めたって無駄だよ


このあたりの映像はかなり劣化していて、保存状態が悪い。


おばちゃん「じゃあ、寅さんそのあと…

社長「決まってるよ、パーだよ。
   あと3レースもあったからね。
   あの勢いじゃあ18万、1レースですっちまったんじゃねえのかな


おばちゃん「はー…

社長「人間ねえ、ああいうところに行くようになったら終わりだね。
  つける薬がねえよ、まったくの話が


おいちゃん「まったくだなあ…

社長「そーよ、ハハハハ、ハハハハ


                      



おいちゃん「ところでおまえさんは何しにいってたんだい?
ほんと(ーー;)

おばちゃん「あ、そうだ

社長「」と下を向く。



ちょっと間があって…


社長「あ、コロッと忘れてた…」とそろそろっと工場へ歩いていく社長.

この逃げ方は第3作での見合い騒動の時の社長と同じ逃げ口上。



振り向いて照れ笑いしながら

社長「フフ…家へ帰らなくっちゃ」とアタフタ。



おいちゃん、ため息をついて

おいちゃん「はあー…18万パーだとさ…。いやだいやだ

おばちゃん「はあー…

おいちゃん「オレ、頭痛くなっちゃったなもう…



                      




今回の冷蔵庫は『森永』
黄色い色の冷蔵庫


森永マミー











江戸川土手


メインテーマが軽快に流れる。




タクシーが江戸川土手を走っている。


オレンジと黄色

ナンバー 95-32 名古屋タクシー  タクシー番号126



                      



寅が後部座席の窓から身を乗り出して
土手の風を受けている。




源ちゃんの背中が見える。

寅「おう!源の字、相変わらずだなこのヤロ!

源ちゃん走ってきて、タクシーに追いつく。

源ちゃん「兄貴ィー!どこへ行ってたんだよォ!

まだまだ東京弁&ジャイアンツの野球帽(^^;)
第1作でも同じ野球帽。

(ちなみに源ちゃんは第5作からいきなり大阪弁になる)



寅「名古屋よォ


源ちゃん「名古屋?



                      



寅「名古屋からタクシーぶっ飛ばしてきたのよ

源ちゃん「名古屋だい!名古屋のタクシーだぞーィ!

と、意味無くわめいている(^^;)

おかもちを担ぎ、自転車に乗った弁天屋の横をタクシーと源ちゃんが通っていく。

源ちゃん、弁天屋の自転車の後ろに乗りながら

源ちゃん「寅の兄貴が帰ってきたんだぞ!


弁天屋、なんと仕事の『おかもち』をほうり投げて



                      



弁天屋「おう!そーら、それ行くぞおら!


それほどまでに、寅が帰って来たことが面白いのか。
それともタクシーで帰ってきたことに何か大きな期待を寄せているのか…。
この弁天屋のとっぴな行動も不可思議。でもなんとなく分かる気もする。

それにしても、この
二見忠男さんは懐かしい人だ。
私が幼い頃、怪獣ブースカや仮面の忍者赤影でもよく拝見したお顔である。
また私が大好きだったテレビドラマ「雑居時代」でも編集長役で出演されていた。




源ちゃん「それー!

柴又七丁目の電柱

源ちゃん「名古屋だーい!名古屋のタクシーだぞーい!

と、意味不明の言葉を言いながらすぐ後ろを追いかけていく。


源ちゃん、今回は題経寺のハンテン着ていたので、
とりあえず、寺男してるんだね。
第3作では完全にとらやの店員をしていた(^^)




後に
喫茶店ロークができるコーナーを題経寺山門の方へ曲がる。
シャッターが下りている右の方が後にロークが出来る店。↓


                      



これは、第1作の予告編の画像。
寅たちの後ろにある古い店だったのだが、たった1年で、第4作では↑上のように建てかえられている。
                  ↓
           




横を歩く蓬莱屋に声をかける寅。

寅「よお!蓬莱屋どうした?相変わらずバカか?

今や古典となりました、このセリフ。


出ました、参道の顔、佐山俊二さん。
佐山俊二さんってそんなにたくさんご近所役で出ているわけではないのだが
あの風貌と軽さがなんとも柴又の雰囲気なのだ。
第9作「柴又慕情」での不動産屋役も忘れがたい。
寅との大喧嘩は今でも語り草だ。



蓬莱屋「寅さん!何でい寅さん、
    名古屋から帰ってきたのかい、え!
」とタクシーを追いかける。


源ちゃん「名古屋だ名古屋だーい!
     兄貴がタクシーで帰って来たぞー、
     兄貴だぞー兄貴が帰って来たぞーい!


蓬莱屋「
寅さんだ寅さんだ


                      



そんなにこの第4作では寅って待望の人なのか…。
いつもはどちらかというと邪険にされてるのに
まだ競馬で大当たりの報告を聞く前から
みんな予感めいたものを感じているのかもしれないね(^^;)


柴又界隈の人々急にタクシーを見てざわめきだす。
タクシーに群がるご近所さん達。
谷よしのさんも向こうの方に立っている。



弁天屋と源ちゃんタクシーを追い抜いて
とらやに一目散に自転車を漕いでゆく。







とらや  店



女店員の
友ちゃんが雑誌を読んでいる。


この友ちゃんは、この第4作でも健在。
第1作は別の女性だが、第2作から彼女。
こんなに頻繁にスクリーンに映っているのに
女優さんの名前がわからない。
どなたか御存知の方いませんか?
困った〜(TT)



そこへ自転車で弁天屋と源ちゃんが滑り込んでくる。

蓬莱屋も大慌てで駆け込んでくる。



                      



蓬莱屋「とらやさん、大変だ、とらやさん。
    寅さんが帰って来た。寅さんが帰って来た、寅さんが!


居間で寝ていたおいちゃん、びっくりして起き出す。

蓬莱屋「とらやさん、寝ている場合じゃないよおめえ、
    寅さんがね、名古屋からタクシーで帰って来たんだよ


弁天屋「なんでもね、競馬で大穴あてたらしくて


弁天屋さん、いつ聞いたんだい?
あなたたち自転車でタクシーを追い抜いたので寅とそこまで話す時間は
源ちゃんも弁天屋もなかったはず。無理があるぞこの早耳(^^;)
まあ、寅から誰かが聞いて、みんなに叫んだんだろうね。


それにしても佐山さんと二見さんのコンビはいいねえ〜(^^)
これぞ柴又御一統さんだ。




                      







タクシー到着。


源ちゃん「来ました来ました!


おもむろにタクシーが止まり、寅がゆっくり出てくる。

みんな寅を取り囲んで興味津々。


貼り紙 『次の庚申は三月五日』


寅「おう、へへ。なんだい、へへー、
 いつ来てもこ汚い店だな、おい



みんな「
ハハハ


                      



源ちゃん、友ちゃんに寅の大量のお土産を渡す。
冒頭のナレーションの願いどおり、土産を買い込んでいるのが面白い。



谷よしのさんここからアップでしっかり登場。



源ちゃん「兄貴、あの、運ちゃんがタクシー代払ってくれって



                      



寅「おう、いくらだ

源ちゃん「2万9千円

名古屋からタクシーで2万9千円!つい安いと感じてしまう。


寅「おう、乗り物は安いな」と言いつつ。

札束がぎっしり入った財布をパン!と叩いて、源ちゃんに軽くほって

寅「勘定してけや



源ちゃん中身見て


                      



源ちゃん「
うえええ!」とおののいて財布を落としてしまう。




                      




寅の後ろで谷よしのさんたち驚いてお口ポカン。


店中緊張が走る


寅「ガタガタするなよおめえ!

と、源ちゃんを小突く寅。

源ちゃん「あ、運転手さん

運転手「はい



おいちゃんおばちゃん、唖然としている。


寅「いよォ、おばちゃん元気かい。
  おう、おいちゃんも達者でいたか。
  ん、よかったよかった


蓬莱屋「よ、寅さん、いったいいくら儲けたんだい?



                      



寅「なあに、たいしたこたあねえさ


源ちゃん、財布のおおよその中身をみんなにひそひそ伝えている。



寅「この寅ちゃんにちょいと芽が出たと思ってくんな


蓬莱屋「十万くらいか!?


寅「へへへと笑う。

弁天屋「二、二十万??と既にこの時点でびびっている(^^;)

寅「へへへ



                      




蓬莱屋「も、もっと多いのかいあんたらも遊び人だねえ(^^)



寅「なァに、いつも手ぶらで
 故郷に帰ってくる寅ちゃんがよ、
 ほんの手土産代わりに、
 年寄り夫婦をどっかへお連れする、
 まあそのぐれえのはした金だと思ってくんな…




この男は、このシリーズで、
最初から最後まで自分のために余分にお金を沢山稼ごうと
思ったことはついに一度もなかったね。
お金に対して、ほんとうに無欲な男なんだよな、寅って。




蓬莱屋「へえェ〜、とらやさん、すげえじゃねえかよ。あ、あのどこ行く、
   あ、熱海かい。それとも湯河原かい



弁天屋「思い切って、別府か雲仙あたりどうだね、ね、寅さん


寅「別府?

弁天屋「

寅「おー、それもいいかもしれねえな、
 どうだい、二人そろって行ってみるか、
 一月か半年ほどよ
大きく出たね(^^;)



第12作「私の寅さん」でおいちゃんたちは遂に九州に行くのだが、
この時はそんなこと知るヨシもない。
そして、実は寅自身もこの作品のラストで
あの近くを汽車で旅しているのだから面白い。



               




おいちゃん「お、おい、ちょっと待ってくれよ、寅さん、おめえ正気か



                      



寅「あたりめえよ、それともなにか、
 お二人でもうちょい遠っぱしりしてえか?



おばちゃん「あのね、寅さん…


寅「ん?

蓬莱屋「どうだい、いっそうのこと
   おめえ
ハワイにでも連れてってもらっちゃ

と、貼ってあるポスターを指差す。


一同「ハハハハワイはいくらなんでも」と笑っている。

谷さんど真ん中で映っています。

谷さんの横の背の高い男性は、
後に第33作でタコ社長の娘あけみの仲人をしたご近所さん。




                      



第4作の大きな特色のひとつとして、
この柴又界隈の人々の寅との融合がある。
他の作品では柴又界隈の人々は
どこかフーテンの寅に対して冷ややかな部分が
あるが、この作品では結構馴染んでいる。
彼らはなにはともあれ寅を受け入れているのである。



とらやのロゴマークが谷よしのさんの後ろに見える、
江戸時代から続いておいちゃんで6代目だそうだから
江戸時代からあのマークなんだね。



                    




寅「
おう、蓬莱の

蓬莱屋「

寅「百万もありゃハワイ行けるか?

蓬莱屋「そりゃ、百万もありゃ三、四人は楽に行けるな

30万円×3人=90万円 +小遣い


寅「ハワイ結構、結構毛だらけ猫灰だらけ、
 お尻の周りは糞だらけってな、
 おいちゃん、おばちゃん、
 ハワイに行こうじゃないか。
決定!



                      


おいちゃん、おばちゃん目が点で口半開き。


寅「なんだい?どうかしたか?


                         ほけ〜〜〜〜
                      



蓬莱屋「よ、よ。一体どのくらいもうけたんだい


寅「知りてえか


弁天屋「知りたいねえ


寅「よ、見せてやろうじゃねえか、このオレが肌身離さず……




寅、あせって腹巻全部伸ばして財布を捜すが見つからない。


小銭がちゃらちゃら落ちる。



寅「すみません、(金がない)アレ、ちょっとそこら辺に…とおろおろ。

源ちゃん「兄貴:…・と、預かっていた財布をおどおど渡す。

寅「馬鹿野郎!なんでてめえが持てるんだい!と源ちゃんを叩く。

あんたが渡したんだろが ヾ(−−;)



                      



源ちゃん「だって…あの…だよなあ(TT)


寅、おいちゃんたちを見て、にこやかに

寅「
おい、いいか、このフーテンの寅が、
 血の続きのあるおいちゃんとおばちゃんに
 恩返しをしてえと思ってな。神仏に願かけて、
 五と六と七、買ったレースがツキにツイてどうだい、
 これだけの銭。へへ、目回すなよ、
 おばちやん、立ったままションベン洩らすなよ。

 (財布をポン!と叩いて)

 
ざっと百万両だ!



おいちゃんに一万円の札束が入った財布をひょいと投げる。



           



一同、気をのまれて眺めている。

おいちゃん、札束を取り出し




おいちゃん「ほんとだ…



                      




一同一段とガヤガヤ驚いている。


ちなみに、第41作「心の旅路」でも寅は万車券を取ったものの、
最後に一気に賭けてスッテンテンになったらしい(^^;)




寅「へへへ、おう源の字

源ちゃん「

寅「店閉めろい、今日はオレのおごりで前祝いだ。
  パーっと派手に無礼講といこうじゃねえか



一同ドッと歓声をあげる。


みんな大喜び。

蓬莱屋「ジャンジャン飲もうじゃないか、なあ!



                      




蓬莱屋あんた遊び人だねえ(−−)
みなさんそれぞれのお店はどうなさったんですか?

この作品では蓬莱屋をはじめ、
芝又参道の御一統さんもかなりの遊び人たち(^^;)



当時はまだドルに対して円が360円にわざと
抑えられていた時代だからね。

この対ドル固定相場制に基づく金為替本位制は、
1971年のニクソン・ショックにより終結し、
1973年には変動相場制に移行したが、この作品の
1970年時点ではまだ固定相場制で360円。


それゆえ、当時はハワイ旅行は夢だったんだね。
ロート製薬提供のアップダウンクイズでも
10問正解して『夢のハワイ』へ行きましょう!って言ってたもの。

それにしても3人で100万円は高いなあ…。
今の100万円とは価値が全然違うからね。
1970年の物価は現在の3分の一以下だから。
今で言うと300万円で旅行するってことになる。

現在のスタンダードなハワイ旅行のツアーは
寅たちのように5日間でホテル食事込みで
JALのエコノミークラスを使って平均一人15万円くらいかな…。
3人で45万円ほどか。



寅は今回は人生最初で最後の大もうけだったのだが、
その後この大もうけ記録を塗り替えたのが
第29作「あじさいの恋」で加納作次郎がくれた
打薬窯変三菜碗うちぐすりようへんさんさいわん)』と
第31作「旅と女と寅次郎」の京はるみがくれた
エメラルド指輪
もっともこれはその後も換金をしていないはずなので
宝の持ち腐れだと思う(^^;)

寅は今回以外でも、もう一度、ギャンブルで大もうけするのだが、
皆さん御存知ですか。
第41作「寅次郎心の旅路」で、なぜか寅は数年前にパスポートを
とらやにすでに預けていたが、
あの時の理由が、
競輪で『万車券』をとって、ハワイ旅行を企んだのだ。
これじゃこの第4作と同じパターン。
もっとも第41作では、旅行の前にもう一度元金を倍にしようと
欲を出して全部パーになったとか…。トホホな話である。



冒頭の解説にも書いたが、
この競馬大穴ぼろ儲けとハワイ騒動はテレビ版の「男はつらいよ」
の物語からの拝借アレンジ版である。
第2作同様この第4作もテレビ版の影響が濃い作品である。










夜  とらや  店


『本日臨時休業』の貼り紙



参道の人たちがやんやと騒いでいる。

人の金で酒を飲んで…。
しかも止めに入るべきご婦人たちまで…。
なんて節操の無い人たちなんでしょうか(^^;)


一升ビンを2本追加しに戻ってきた男が戸をあけて入ってくる。



                




中から盛大な宴会の歌声が聞こえる

みんなで『酋長の娘』を歌っている

♪私のラバ(LOVER)さん〜、酋長のォムスメエーイーロは黒いが南洋じゃぁ美人〜



私のラバさん 酋長の娘 色は黒いが 南洋じゃ美人

赤道直下 マーシャル群島 ヤシの木陰で テクテク踊る

踊れ踊れ どぶろくのんで 明日は嬉しい 首の祭り

踊れ踊れ 踊らぬものに 誰がお嫁に 行くものか

きのう浜でみた 酋長の娘 きょうはバナナの 木陰でねむる

私のラバさん 酋長の娘 色は黒いが 南洋じゃ美人




この歌は、ミクロネシア諸島にある現在のパラオ共和国で、
本当に大酋長の娘さんと結婚した杉山隼人氏をモデルにしたものであるといわれている。


この歌は第17作「夕焼け小焼け」で龍野で桜井センリさんが振り付けつきで歌った歌。

松竹映画「オレは田舎のプレスリー」でも、「男はつらいよ」と同じ役の
岡本茉莉さん演じる大空小百合ちゃんがこの歌と踊りを披露していた。


           第17作での桜井センリさんの「私の〜ラバーさーん…」
          







とらや 茶の間


さくら、博が来ている。

おいちゃん「何だか悪い夢見てるような気がしてしょうがねえんだよ

おばちゃん「競馬でバカ当りしちゃったんで、
      少し頭がおかしくなったんじゃないかい


おばちゃんのキツイ発言にちょっと驚くさくら。


博「もともと余り正常じゃないんですからねえ

おっと…、博はこういう軽口は普通は言わない。
こういう発言はおいちゃんの十八番。



                      


おばちゃんをさらに上回る意外な博の発言に
目を白黒させて驚くさくら。



だよね。ちょっと言わないよ博は(^^;)


このあたりのとらやでバカ騒ぎ&おいちゃんたちシラケパターンは
第3作にも出てきたメリハリ。この辺の展開はよく似ている。





ちなみにこの第4作の予告編ではこのドンチャン騒ぎの最中寅がおいちゃんたちやさくらたち
も巻き込んで騒いでいるのが映る(下の画像)。結局本編では使われなかったシーンだ。
                    

               









翌日  江戸川土手



土手の上にバイクを停めたタコ社長が釣人と大声でしゃべっている。

釣人「
へえー!、百万円か-、たいしたことやったなあ


社長「やってくれたのはいいけどさ、
  おかげでうちの工員共、勤労意欲をたくしちまってね、
  全然働かねえんだよ、えらい迷惑よォ



工員諸君、君達の汗水たらして働いた貴重なお金と
寅の博打で稼いだあぶく銭じゃ、
『銭の色』が違うんだよ。わかるかい。(−−)




                      









帝釈天参道


蓬莱屋が無気力になってこぼしている。


蓬莱屋「まったく真面目に働くのが嫌んなちゃったよー。
   あくせくかせいでよ、倅を大学にやって、ハワイどころか、えー、
   いまだに親のスネかじってんだ




                      








とらや  茶の間


おばちゃん、泣きだしそうな顔で電話をしている。



おばちゃん「もう町中の評判でね、
    会う人会う人よかったねえだの、
    おめでとう.だの、いつ出かけるんだいだの、
    あたしゃ返事に困っちまうんだよ…
    
ん、おいちゃんかい、熱出して寝てるよォ


ストーブついてます。


電話の向こうで布団に包まっているおいちゃんの姿が妙に可笑しい。
これだけで、あそこに森川さんが寝てると思うだけで
もう笑わせるのが森川さんのキャラなのだ。




            布団の中を想像すると笑いがこみ上げてしまう。
              








さ<らのアパート(今回は『江戸川荘』)



廊下にピンクの公衆電話がある。


貼り紙

『ご使用の方へ〜  
江戸川荘管理人


おっと、今回第4作は『江戸川荘
ちなみに第5作では『コーポ江戸川』
後に『こいわ荘』になる。




さくら、電話に出ている。

さくら「
お兄ちゃんは?お兄ちゃんはどうしたの?
   ええ!?
切符買いに行った。
   おばちゃん、切符ったって駅で買えやしないわよ。
   ええ?登君の名刺・…・・

   
登君のとこへ行ったの!?


さくら、声をつい荒げてしまう。
若干いやな予感、するどい(((^^;)





                      








登の旅行代理店


場末の小さなみすぼらしい事務所って感じ。

パチンコ屋の『軍艦マーチ』が聞こえてくる。


寅「まぁ、こっちは外国旅行ははじめてだからよ、
 何分よろしくたのむぜ、おい



登「木当に、よござんしたね、兄貴、
 一体何でもうけたんですか?
 まさか
競馬や競輸じゃないだろうね
★図星〜!★(^^)/


寅「冗談い言うなよお前、
 オレがそんなケチな貧乏人のバクチに手エ出すかい、
 やせてもかれてもこちとら渡世人の端くれよ!


どの口で言うとんねん…(−−;)


杜長「本当に、登君がこんな立派な方と知り合いとは存じませんで

出ました
浜村純さん。


登「あの、特別に勉強してもらえるそうですから

寅「あ、そうかい、ま、よろしく杜長たのむよ、な。
 登、銭払っとけ



と、部厚い財布をポイと投げる。


社長の目の色が変わる。こいつ…(ーー)

目の色の変化を演じきる変に上手い浜村純さん(^^)




                      



登、中身を見てオドオド、生唾を飲み込む。


あんたらお金見たこと無いのか ヾ(^^;)



                      



寅、わざと、知らん顔ですましている。










さくらのアパー卜 夜




博、遅いタ食後の茶を飲んでいる。

さくら「払っちゃったお金はもう戻らないんだしさ、
   こうなったらクヨクヨするのはやめて
   スッパリその気になったほうがいいんじゃない


博「おじさん達、どう言ってた?

さくら「もうヤケクソだなんて言ってたけど、
  そうと決土れば結構楽しいんじゃない、
  明日あたり買物に行くか、なんて相談してたから


結構ハワイ行く気になってきたんだね、おいちゃんたち(^^)


博「そうか……そうだろうな


この作品のアパートは、
後のアパートと雰囲気がかなり違っている。




                       



おっと、さくらたちのアパートのこのテレビはとらやにあったテレビだ。
と、いうことはさくらたちも
同じメーカー同じ型の
テレビを買ったんだろうね(^^)
しかし、ちょっと無理があるなあ…ミスかなあ…(^^;)




             とらやのテレビ                さくらのアパートのテレビ
             





博、ゴロンと横になる。

博「ああ、ああ、ハワイか…

この博が旅に思いを馳せて、ゴロっと横になるシーンは、忘れな草のピアノ騒動の直後にも
アレンジして演出されている。あの時博の口から出たのはハワイでなく、北海道だった。












帝釈天参道


出発当日



御前様が急ぎ足にとらやに来る。








とらや 店


蓬莱屋、社長、源ちゃん、博、はじめ七、八人の近所の人達が
白の背広の下にアロハシャッを着込んだ寅をとりかこんで
娠やかに酒を欽んでいる。


旗を持っているご近所さん。

ハワイ旅行おめでとう。 寅さん気をつけて いってらっしゃい』

日本酒に『祝 ハワイ旅行』の、のし。


寅「じゃ、オレは元気で行ってくるからな-、ん、パーっとやってくれ

御前様が入って来る。今回第4作はずっとメガネをかけている。

源ちゃん「御前様です!


一同、立ち上がって口々に挨拶する。

一同「おはようございます

御前様「おはよう、みなさん、朝早くからご苦労さん

寅「どうも、御前様、このたびは、
 わざわざお見送りくださいましてありがとうございます




御前様「おめでとう、幸い天気もよくて何よりだ



寅、ニコニコ笑いながら胸の日の丸をさりげなく見せびらかしている。

凄いセンスだね。日の丸を胸につけるなんて…(((^^;)

御前様、餞別とお守りを渡して、

御前様「えー…少しだが餞別と旅行安全のお札だ。
    ま、気は心だ、鞄の隅っこにでも入れてくれ


寅「いえいえ、何をおっしゃいますか、それでは遠慮なく。
 おう博、ちょうだいしたぜ



御前様、寅の足元に眼をとめる。

御前様「なにか、お前、草履ばきでハワイに行くのか


一同、ドッと笑う。


御前様は第1作の奈良ホテルの玄関前での発言でも分かるように、
寅の草履ばきがいつも気に障られるようだ。



             



寅「あ、これですか、へへ!今もね、その話をみんなでここでしてね、
 ドォッと笑ったばかりなんで



一同大笑い。


寅「雪駄つうものはね、日本古来の履物だ。
 あっしはこれをはいてね、バリだってロンドンだって平気で行きますよ


日本古来が好きなら、じゃあ羽織袴で草履を履けば?(−−)



御前様「ふむ、ま、とにかく余り日本人のになるようなことはせんようにな

寅「恥だなんて言われちゃうと、こっちは弱いなおい



                      



一同、再びドッと笑う。


寅「おう!おいちゃん、おばちゃん、おいでおいで、御前様が見えたぜ


さくら「はいはい、ただいま



さくらの声がして、一同注視の中を奥の部屋より、
新調の旅行服にJALのかばんをさげたおいちゃんと
ミニスカートに大きなストールのおばちゃんが
さくらにつきそわれるようにしてみんなの前に現われる。



ジャ〜〜ン!!

ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ



最初で最後のおばちゃんのちょっぴりミニスカート。


                   




後ろで満男を抱っこしている谷よしのさん。

満男と谷さんの絡みがあるのは、
この長いシリーズでこのシーンだけ。


一同「いやあー」とどよめく。



弁天屋「いよオ……まるで総理ご夫妻だね



                      



一同、はやし、手を叩く。


おいちゃん「(照れて)いやぁ皆さん、どうもどうも。
    お、、御前様、朝早々とどうも





みんなでパスポート作ったんだね

★寅は胸に日の丸。しかしハキモノは雪駄
★おばちゃんはなんと
ミニスカートに紫の帽子。長ぁーいストール。
★おいちゃんは
JALの大きなカバンななめがけ。




                      



ふたりでお辞儀。


御前様「どうかね、少しは英語を話せるようになったかね

おばちゃん「えーッ、だめ、だめ、あたしゃね、
    一切向うへ行ったら口をきかないことに決めました



と、ハイテンションで答える。



                      



一同、ドッと笑う。


寅「おぼちゃんはよ、ホエア イズ トイレット
 ってこれだけ覚えてりゃいいんだよ



一同又笑う。


おいちゃん「ギブ ミィ ウイスキーだな


寅「ちげえねえ


一同又笑う。


さくら笑いながら


さくら「お兄ちゃんは?


寅「決まってるじゃねえか、アイ ラブ ユー よ


一同、大爆笑!


座布団2枚(^^)。
でも、日本語でさえ誰にも言ったこと無いくせに。


おばちゃんも寅も、いつ買ったんだあんな服(^^;)
おいちゃんもおばちゃんも、
いつの間にかもうすっかりノリノリになっているね。
もうかなり加速度がついてる感じ。


寅、楽しくてしょうがないって感じ。
今から『飛行機』乗るのに何の抵抗も無いのだ。
第25作「ハイビスカスの花」ではなにがななんでも乗りたくないって
ポールにしがみついて嫌がってたのに、このころはまったくアレルギーなし!?




                      






御前様「ま、気をつけてね。私も死ぬまでに一度、
   そのハワイに行きたかったが、
   私の分まで楽しんで来てくれ



おいちゃん「へえへえ

博「さア兄さん、そろそろ時間が

寅「オゥ、源の字、車見て来てくれ

源ちゃん「へえ!

源ちゃん、入口の所から声をかける。


源ちゃん「来ました来ました!



寅「大丈夫か、おぼちゃん、え、
 なんだか
竹馬はいているみたいだなおいハイヒール?(^^;)


一同、ゾロゾロ立ち上がり、表へ出てゆく。

寅「おっと、カバンだ」と戻る。


谷よしのさん、寅にカバンを渡してやる。



                   



寅「おう、ありがとよ







突然!いきなり後ろから小声で



登「兄貴兄貴



                      



寅、ふり返ると登が真っ青な顔で裏から入ってくる。


寅「あれ、この野郎お前どこから入って来たんだ



                      



登「ちょっと、ちょっと、ちょっと」と、


寅を強引に引っばって庭のほうへゆく。


寅「なんだ、お前……?


登の顔は今にも泣き出しそうである。


寅「オゥ、何だよ、え、社長はどうしたい、
 羽田の飛行場で侍ってるのか?



登「兄貴、それがね:…


泣き出しそうな登の声に寅、ハッとする。


ぱっと登の袖をつかんで


寅「お前、何かあったな…、一体どうしたんでいと声が真剣。


登「申し訳ないことにたっちゃったんですよ。
 社長が兄責の金をもって逃げちゃったらしいんだよ


ガビーン!!(||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)


寅、愕然として

寅「逃げた…-?


登「昨日から姿を見せないんで、
 念のために航空会杜に電話してみたら、
 全然、金を払い込んでないんだよ!



寅「で、どうしたらいいんだよ!と、登のむなぐらをつかむ寅。



                      



登「すみません、まさか杜長がそんな悪いことをするなんて


寅「バカヤローと登の頭をぶんなぐる。




店のほうから蓬莱屋がくる。

蓬莱屋「よう、よう寅さん、タクシーが待ってるよ

寅「お、そうか、うん、すぐ行くすぐ行くと、とりつくろう寅。

蓬莱屋「お、おう」と参道へ。


登.「兄貴…どうする?


寅、胸ぐらをつかんで、

寅「ど、どうするって、こっちで言いてえことだい。
 どうするんでい!バカヤロ!


再び登をブンなぐる。

登、「うへえええと半分泣き出す。





今度は、博が店のほうからやって来る。

博「兄さん、荷物を積み込みました、おじさんたちも待ってますよ


寅「あ、そうか、ありがとう。
じゃ、これ持ってってくれ
と、カバンを渡す寅。

博「はい


博、泣いている登の様子をみて、

博「どうしたんですか?

寅「いやこれか、へへへ、
 オレとの別れが悲しいなんて泣きやがって、
 へへ、泣き虫野郎、フフフ



博、笑う。



                      



博「そうですか、あ、ぼくも羽田まで一緒に行ぎますよ

寅「…!あんた行くの?

博「いけないんですか?

寅「いや、いいよ、ありがと、ん、フフ…

寅「泣くなよ、登、すぐ帰ってくるんだから、な

と言いながら、博に愛想笑いの寅。


寅「フフフ…と言いながらも、微妙な顔で登を睨む寅だった。


半泣きの登。



当時のお金で100万円、現在のお金で300万円がパー…(TT)










とらや前  帝釈天参道


車を囲んで人々がわいわい言っている。

電柱に 『毛呂質店』




旗に『ハワイ旅行おめでとう寅さん、気をつけて』


おばちゃん「じゃあさくらちゃん、あとよろしくねェ


さくら「ええ、大丈夫よ


                      



谷よしのさん、横でニコニコ。


寅と博が店から出てくる。


個人タクシー



博「どうも皆さんお待ちどおさま


社長「早く早く

博「さ、兄さん早く

御前様「気を付けて…ん


寅「どうも、お待たせいたしました。
  本日は朝早々とお見送りくださいましてありがとうございます。
  車寅次郎以下三名、ただ今よりハワイヘむけて
  出発させていただきます



一同、ドッと抽手する。


さくら「お兄ちゃん、おじちゃんとおぼちゃんの面倒をちゃんとみてね


このようにさくらも寅も、時々おいちゃんのことを「おいちゃん」じゃなくて「おじちゃん」と
言う時がある。



寅「大丈夫だよ、まかしとけ!

御前様「では……梅太郎さん万才三唱といこう


おお!この作品では御前様が社長の事を『梅太郎さん』と呼んでいる。


それにしても、御前様もバンザイさせるなんてお茶目だねえ〜(^^)


寅「い、いや…と、戸惑う寅。


社長「え、では、とらやさんご一行バンザーイ!!



                      



一同、バンザイ、バンザイと叫ぶ。


戸惑っていた寅も、遂にヤケクソになって酔ぶ。


寅「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!へへへ…
ああ…寅って…(TT)




                      











羽田空港


禁煙 NO SMOKING


寅たちが乗るべきはずであった大型ジェット旅客機が轟音をあげて飛び立ってゆく。


おいちゃんとおばちゃんがそれを淋しく見ている。


寅「『三人は無事出発いたしました。
 ご町内の皆様には、くれぐれもよろしく申してました』と、こう言っとけよ


博「それで後どうするんです

寅「オレがなんとかうまいことやるよ、さ、帰れ帰れ帰れ

博「そうですか、僕先に帰ります、じゃ


帰っていく博。


『森永キャラメル』のベンチ


おいちゃんとおばちゃん、寒そうにベンチに座る。


おばちゃん竹馬ヒールが足に合わないようだ。足痛そう(^^;)


おいちゃん「寅さん、オレ達はどうすんだよ、え?



                      



おばちゃん「うううう、寒いよォ、あたしゃ風邪を引きそうだよォ、イタタ…と痛い足をもむ。



おいちゃんおばちゃんブルブル震えている。



寅「まアそう言うなよォ、
 こっちもいろいろ考えてんだからよ、
 まア落ち着いて景色でも見ろよ、な。
 大したもんだぜ日本の飛行場もよ


空しいねえ…(TT)



                      



三人ともちょっと絶望的になっている。

ああ…そして悲しいねえ〜(TT)








帝釈天・参道 夜


人通りの絶えた参道を、
寅とすっかり疲れきった様子のおいちゃんおばちゃんの三人が
あたりをうかがうようにしてやってくる。



名代 大和家 天ぷら

大和家さんの前でおいちゃん物音を立ててしまう。



ガチャ。。。。

寅「しッ!おいちゃん無声音(^^;)



                      



おっと、大和家さんの明かりがつく。(((((^^;)


ビビルおいちゃん。


咄嗟に犬のなき声を真似る寅。

寅「ワォ〜〜ワン


おいちゃんもつられて

おいちゃん「ワオオーン、ワオオーン、ウオオ…

森川おいちゃん上手すぎ(^^;)



                      




それにしてもおばちゃん、
ストールを帽子に巻いてほお被りしてる姿は、トホホだね(^^;)




大和家さん犬だと思い、明かりを消す。
大和家さんって意外と単純(^^;)

いつまでも真似しているおいちゃん(^^;)

寅「いつまでやってんだよ


と、三人ともそっととらやの店に入っていく。









とらや  真っ暗



そっとと鍵をはずし、戸を開けて無言で三人が入ってくる。

寅、もう一度戸を閉め、鍵をかけ、カーテンを閉じる。



寅「(小声で)おい、誰にも見られなかったろうな

おいちゃん「ああ、大丈夫だろ


おいちゃん「おい、つね、明かりをつけろよ

おばちゃん「あいよ

寅「おばちゃん、駄目だよ、明かりをつけちゃ

おばちゃん「なんで?

寅「なんでってわからないのかい、
  オレ達は留守ってことになっているんじゃねえか




                      



おいちゃん「そうか…、明かりもつけられねえんだ…


おばちゃん「寅さん

寅「え?

おばちゃん「食べ物はどうするんだよ


寅「食べ物ってお前、米ぐらいあるだろ

おばちゃん「そりゃ少し残ってるけどさ、おかずは何もないよ

おいおい、そんなことわかってるんだったら
羽田からもどる時に食べてくるか、買ってこいよな(−−;)




寅「ぜいたく言うんじゃねえよこの野郎、
 塩ぱあっとふりまいて食やあいいじゃねえかよ



その時、表の戸をトントンたたく音がする。

三人、ハッとして顔を見合わせ、中に逃げていく。


博超小声で

博「僕ですよ、博です、もう帰ってるんでしょ



寅たちほっとして


戸を開ける。

博が入ってくる。


すぐにさっとカーテンを閉めて警戒する寅。



                      



博、緊張のため息


博「はぁー…


寅「誰にも見つからなかったろうな?



                      



博「ええ


と、たんに椅子につまずき大きな音を立てる。

一同、ハッとする。


寅、博のお尻を叩いて


寅「静かにしてくださいよ無声音(^^;)



                      



博「すみません無声音(^^;)

おばちゃん「博さん、さくらちゃんはもう知ってるの?

博「いえ、まだ言ってないんです。
  あんまり心配だったもので、ぼくだけ様子を見に来たんですよ



倍賞さん、ほんとはスケジュールの都合で来れないのかも…(^^;)


寅、大きく頷き、博の肩を叩き、



寅「えらいぞ、頼むぜ、
 どんなことがあったってさくらの奴には内緒だぞ、な。
 まず、
敵を欺くには味方からって言うからな

博「で、これからどうするんですか

寅「簡単よおめえ、四日ばかりこの家へ隠れてるのよ、
  な、そして五日目にどっかの八百屋行ってパィナップルでも買って、
  近所の衆に、ただいま帰りましたと挨拶すりゃそれでいいんだよ



博「パイナップルはいいけど、もしハワイの話を聞かれたらどうします?


寅「簡単だよおめえ、『お水が合いませんでした』とこう言やあいいんだ。
 むこう着いたらすぐピーッと下痢しちゃってね、
 ホテルから一歩も出なかったとそう言やあいいんだから



博「うまくいきますかねェ…いくわけないって ヾ(^^;)


おいちゃん「そうだろ、オレァ自信ねえと言ってるんだよ

寅「グチこぼすんじゃないよお前、小便して早く寝ろよ

と、言いつつ寅つまづく。

寅「あっ痛ッ…イテテテ…静かにしろよ」 あんただよヾ(−−;)



寅つまづいた拍子に、おいちゃんの帽子を踏んづけてしまう。


おいちゃん、悲しげにペチャンコになった帽子を見ている。

寅、笑いながら、帽子を指差して笑っている。

寅、無声音で



寅「ヒヒヒ、つぶれちゃった、ヒヒヒ


おいちゃん、腹立てて、
手で思いっきり帽子を突いて膨らまし、
パフっと頭にかぶってしまう。

こういうしぐさは森川おいちゃんの独壇場です(^^)



寅おいちゃんを指差して

寅「ヒヒヒヒヒ










とらや 表  翌日



『従業員慰安のため、勝手ながら金曜日まで
休業致させていただきます。店主敬白』



と書いた貼り紙




蓬莱屋、社長、それに近所の人が、前でしゃべっている。


蓬莱屋「今頃ハワイの海岸でのんびりとこの日光浴やってるよ

社長「いや、むこうじゃ今は夜じゃないか

蓬莱屋「そうか、じゃ、ヤシの木陰で美人に囲まれちゃってよ、
   フラダンスかなんかやってるな



一同「ハハハ



                      



見知らぬ男(財津一郎)がゆっくりと四人のそばを通ってゆく。



弁天屋「あたしゃね、あちらはまだ夜が
   明けたばかりじゃないかと思いますがね



蓬莱屋「それじゃとらやさんはおかみさんと一緒に
   ダブルベッドの上でよ、
   この、コーヒーかなんか飲んでるよきっと



一同大笑い。



このシーンなぜか私は大好きだ。
柴又の風情を強く感じるいい雰囲気だ。






そこへ、ルンビニー幼稚園の春子先生
子供たちと一緒に歩いてくる。






春子のテーマが流れる。




春子「列を乱さないで:…




                      



町の人「ご苦労さんでございます

蓬莱屋「あ、お帰りですか、先生

社長「お帰りですか

春子「ええ、さ、…どうも


にっこり会釈をして通りすぎるのを
一同鼻の下を長くして見送る。









とらや 店



ここで、カメラはとらやのカーテンの隙間から外の視点になっている。


つまり寅の視点だ。


案の定、寅とおいちゃんが重なるようにして
戸のすき間から表をのぞいている。


寅「あ、あの人は誰だ?


おいちゃん「あ、新しく来た幼稚園の先生だよ




寅「美人だなァ…



                      



とカメラが寅の表情をズーム(^^;)

おいちゃん「だろう、綺麗だろう



寅はマドンナに一目ぼれの時にはあのように口に出して「美人だなあ」なんて
説明的で野暮なこと人前で絶対言わない。
そういうところは繊細なので、一人心の中でポーッとなるのだ。

ここは脚本と演出がちょっと荒い。









とらや  茶の間  夜



紫の粋なハンテンを着て
寝転びながらテレビを見ている寅。




                      


テレビの画面・長門勇さんが活躍する時代劇が映っている


                      



これは、なんていう時代劇なのか?
長門勇さんが目立っているので
1964年の『
道場破り』かな…。
それとも『続道場破り 問答無用』あたりかな…?

(槍ではないので『三匹の侍』『新三匹の侍』ではないような気がする。)

どなたかこの時代劇ドラマが何か分かる方
お手数ですがメールお願いいたします(^^;)



暗い部屋の中でごろ寝しながら
寅が音を消してテレビを見ているのである。



寅「声の出ないテレピはさっぱりわけが分からねえなと消す。

そらそうだ(^^;)



                      



となりの部屋では戦争中の灯火管制のような電燈の下で
おいちゃんとおばちゃんがが博の持って来た折詰ののり巻を食べている。



おいちゃん「(小声で)何だか戦争中を思い出すなア

おばちゃん「さくらちゃんには何て言って出て来たんだい

博「友達のところへ行くって…、しかし毎日同じことは言えませんからねえ…

おいちゃん「変に誤解されても困るしな



                      



博「じゃ、ぼくそろそろ帰ります

おばちゃん「あ、そう、すまないねえ

博「明日また何かおいしそうな物、買って来ます、じゃ


寅「…!!!?


立ち上がって寅のいる部屋を通って帰りかけるのを寅が止める。


博「何ですか

寅「静かにしろい


博、緊張する。



                      



表の戸のほうからガタガタという音がする。


寅、小声で

寅「おばちゃん、明かりを消せよ

おばちゃん「え?

寅「明かりを消せってんだい



                      



おばちゃん、あわてて電灯を消す。


一同、裏口のほうをのぞく。



サスペンス調の音楽



月の光を背からあびているために
裏のガラス戸のむこうに人の影がくっきり浮かび出ている。

男ばガラスを切ろうとして、戸をガタガタいわせてしまう。
家の中の四人、じっと耳をすましている。
男はようやくガラスを『
ガチャン』っと切り落とし、
手を内側に入れ、鍵をあけるのに成功する。



朝、とらやの噂を後ろで聞いていたあの財津一郎さんである(^^;)

財津さんは、第2作で寅と同じ病室の盲腸の患者を演じ、
寅に散々腹を踏まれていた。

寒かったらしく赤々とついているストーブへ走り寄る。

ストーブがついてる事の不思議に気づけよな(^^;)

しばらくしてようやく不思議がる泥棒。



                      



その瞬間!


寅「このヤロウ!!」と、


寅と博は泥棒におどりかかり、
寅が押さえつけ、博が背中を殴りつける。
あっという間にとりおさえてその辺のひもで手をしばりあげる。



                      



寅「縛れ縛れ、縛っちめえ!、おばちゃん、明かりをつけろ


おばちゃん、電灯をつげる。

泥棒「ちくしょう…



                      



寅「うるせえ!このヤロウ、こすっからいツラしやがって!


と、また殴る。

泥棒「アイテテ!…もういいじゃないですか、
  無抵抗なのにそんなにひっぱたくのは卑きょうもんですよ



寅「生意気なこと言うなこのヤロ!とまたひっぱたく寅。

泥棒「あ、痛ア!


おいちゃん電気掃除機の棒持っている。
とらやに『電機掃除機』ってあるんだねえ〜(^^)


おばちゃんはほうき。

鋤博「兄さん、もうそのへんで。
  おい!あんた本当に泥捧か!?
なんか変な質問(^^;)

泥棒「はい声が上ずっている。

寅「なにが『はい』だ、この野郎とぼけやがっててめえ!
 しらばっくれやがって


と頭をパーン!とまた叩く。これで叩いたの3回目(^^;)

おいちゃん「
おい寅、かまわねえから早く