バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第3作 男はつらいよ

1970年1月15日封切り

















一筋縄ではいかぬ厄介な男への回帰     寅次郎の原点を追い求める旅




夜が冷たい心が寒い、渡り鳥かよ俺等の旅は、風のまにまに吹きさらし。


山田監督の中に温めてきた人間像は、古くは昭和18年に作られた稲垣浩監督の「無法松の一生」を源流として、
自作の1964年の「馬鹿まるだし」の安五郎を経て、自ら脚本を書いたフジテレビのドラマ「男はつらいよ」の寅次郎でひとつの帰結点を作り得たのだ。
これらの人物は現在私たちが知っている車寅次郎よりもかなり煮ても焼いても食えない、文字通り「ヤクザな兄貴」だったわけだ。

そして山田監督は、テレビドラマの成功のあと、遂に失敗は許されないシビアな状況の中で映画版「男はつらいよ」第1作を制作する。
映画になった寅次郎は「馬鹿まるだし」の安五郎や、テレビドラマの寅次郎より洗練され、柔らかくなり、『渡世人』のイメージは小さくなったとも
言えるだろう。それゆえに多くの人々が自分に照らし合わせやすくなり、すぐさま人気を博し始めたのだ。そしてその直後に作られた
第2作「続男はつらいよ」もテレビ版の物語をかなり採用したこともあってまたもやヒットした。気を良くした会社側に、矢継ぎ早に作ることを
指示された山田監督は、さすがにスケジュール的にキツイと感じ、とにかく、第3作は脚本だけは協力するが、監督は他の方にして欲しいと
願い出たのだ。

そこで真っ先にお呼びがかかったのが、森崎東(もりさき あずま)監督だ。

TV版「男はつらいよ」の脚本と、第1作「男はつらいよ」の脚本とに携わった森崎東監督はこの映画を引き継ぐに相応しい人選だと思う。
森崎監督は、山田洋次監督・小林俊一監督と共に『男はつらいよ』をTVドラマから映画版まで育てて来た、もう1人の生みの親にあたる人だ。

ちなみに、森崎監督と言えば私などは『生きてるうちが花なのよ、死んだらそれまでよ党宣言』がとても印象深い。
世の中の泥にまみれてあがき、それでも力強く生き抜く庶民のバイタリティを描いた危ない傑作だった。
近作の「ニワトリはハダシだ」も見たが、これらの作品に共通している、倒れてもまた立ち上がる庶民の底なしのパワーは、
見ていて爽快感すらある。【おっとどっこい生きてるんだよ!ざまあ見ろ!】って感覚だ。それは第1回監督作品である「女は度胸」
から続いてきた『どぶの中に咲く蓮の花』の感覚だ。これが徹底したリアリストであり、同時に大いなるロマンティストでもある彼の世界観なのである。

あの処女作である『女は度胸』という映画は活きが良かった。親子兄弟三者三様ブザマな男たち。(河原崎健三、渥美清、花澤徳衛)、
そしてあたかも人生を諦めたかのようにただ毎日黙々と内職をこなす人生の達人である母親(清川虹子)。
彼らの生々しい人生模様が印象的だった。

『涙と一緒にパンを食べたことのない人には真実というものは分からない』この「女は度胸」で清川虹子さんがゲーテの
『ウィルヘルム・マイスターの修行時代』からの言葉を読むが、あの映画は母親役の清川さんの存在が渋く光っていた。

夜明けの海で結婚を決意した愛子を演じる倍賞美津子さんがラストでこう言うのである。

「私が年を取っておばあちゃんになって死ぬ時になっても私この太陽を忘れないだろうな」

彼女のこのセリフの鮮やかさと泥臭さが第3作「フーテンの寅」へ繋がっていき、人間車寅次郎、渡世人車寅次郎が生き返るのである。

『女は度胸』が公開された当時のキネマ旬報を読んでみると、キネマ旬報の編集長の白井佳夫氏はその年の日本映画のベストワンに
選んでいるほどだ。1969年は「男はつらいよ」「続男はつらいよ」が封切られた年であるのにもかかわらずである。
『完成を意識せず、揺れ動くエネルギーと、底力のあるバイタリティを秘めた映画』だと注目しているのである。



                『女は度胸』の夜明けのシーン
             



ちょうど、この第3作「フーテンの寅」に関しても、森崎監督は、監督を引き受けるのなら、自分の思う生々しく力強い人間寅次郎を表現したい、
そしてちょっと厄介な渡世人寅次郎の片鱗も入れてみたく思ったのだった。山田監督の描くソフトタッチでしっとりとした情緒溢れる寅次郎とは違い、
ギラギラ眼光が鋭く泥の中でもがいている寅次郎を見事に描ききっている。第4作「新.男はつらいよ」の小林俊一監督もそうだが、
山田監督とはまた違ったもう片方の封じ込められかけた「男はつらいよ」が燦然とそこに輝いているのである。キャストも、第1回監督の「女は度胸」
のみなさんが大勢出演されている。


まだまだ演出に荒さが見られるものの、全48作中、寅が最もパワフルで、最も悲惨で、最も打たれ強かったのがこの第3作「フーテンの寅」である。



また、この作品では珍しく、寅は最初だけ柴又に滞在するが、そのあとは旅の空で、独りで自分の世界を作っていくのである。
本来寅は家出をして以来20年間柴又には帰還しなかったわけだし、そのあとも一年の大部分を旅を住処として暮らしているのである。
森崎さんは、そのような寅の人生の大部分をしめる『旅を日常とした渡世人の生活』を描いてみようと思ったのだ。だからこそ、柴又にいる時間が
他の作品と比べて極端に少ないのだ。『旅を日常としてしまった男』としての『人間車寅次郎の日々』に迫ろうとしたわけである。
なんとまっとうな発想だろうか。寅という人間を知るヒントは、みんなが待ってくれていてさくらたちに甘えていられる柴又とらやではなく、
独り淋しく生き抜く旅の空にこそあるのは明白なことなのだから。




とらやの温かさと旅先の寒さ

それゆえ、寅の故郷の象徴であるとらやには長居をせず、旅に出て、湯ノ山温泉に逗留し、恋敗れても柴又には戻らず、そのまま九州は鹿児島に
旅立っていくのである。先ほども書いたが、ある意味、これこそが本来の寅の日常だとも言える。20年間寅はそのように生きてきたのだから。
森崎監督は執拗にそこの旅人としてのリアリティにこだわるのである。

そしてとらやのみんなは、そんな意地っ張りでフーテンで孤独な寅をテレビで垣間見て涙を流してしまうのだ。

…、なにが子供だい…、そんなものどこにいるんだい…ううう…バカだよ、あいつはほんとにバカだよ…

と、テレビ画面を見ながら旅先での寅のことを思い泣いてしまうおいちゃんの心がせつなく伝わる名場面が、こうして生まれる。
寅が柴又へ帰らないからこそ流すおいちゃんの『旅先で独りさすらう寅』を想うつらい涙だった。



             





ふられてもまた立ち上がる不屈の精神


このシリーズで、寅は多くのマドンナに失恋するが、途中第10作からは逆に惚れられてしまうのだ。その後寅が怖気づいて
スゴスゴ逃げるという得恋的失恋が多くなってくる。しかし、よくよく考えてみると、私たちが寅にほんとうに期待するものはマドンナに
惚れられ、求愛される姿だろうか。いやそうではないだろう。寅の凄みが分かるマドンナなどほとんどこの社会にいるわけがないのだ。

私たちが寅に求めていたものはふられても馬鹿にされても、無欲に突っ走っていく寅であり、ステンとこけてしまっても、ニカッと
笑って『どっこいまだまだ生きてるぜ』と啖呵をきる寅なのではないだろうか。寅に両得のスーパーマンを求めてはいけないのである。
威勢が良くて、渡世人で、それでいてブザマで滑稽だが、心優しく美しい女にはもてまくるなんてなんでもありを、期待し始めると、
急に寅から生気が失せ、なにか空々しい作り物のヒーローになっていくのである。そんな人間はありえないのだ。
それはある意味イメージの退廃であり、観客への媚でもあるわけだ。もちろん山田監督がそのような状況に陥りそうになりそうに
なりながら、危ない綱渡りをしつつも、寅から決して生気を失わせることがなかったのは、ひとえにもの作りをする人間としての、
これこそが「才能」というものだろう。


そして山田監督が満州からの引揚者であり、故郷というものを遂に持てなかった人間であること。そして彼が家庭的にもその青春後期には
決して恵まれない道のりを一人歩まねばならなかったことが、常に『飢えたる創作者』として『永遠の漂泊者』としてもの作りの現状に胡坐を
かかなかった、もしくはかけなかった第一要因だったと私は密かに思っている。

しかし、森崎監督は、そのような絶妙なバランスをとり続ける山田監督の中庸さと品格が、かえって寅次郎と言う人間を見えにくくしてしまって
いるのではないかと考えたのかもしれない。この第3作の脚本には森崎監督の名はない。山田洋次、小林俊一、宮崎晃という「続男はつらいよ」と
同じメンバーの三人で書き上げたと言うことになっているが、森崎監督も演出をするリーダーなのだから相当脚本つくりに参加していたのかも
しれない。まあ、どちらにしても森崎監督は演出をした。当たり前だが、現場監督はやはりもっともその作品に活力を与えるのだ。

この第3作「フーテンの寅」を見ると分かるが、もう最初から最後まで『森崎ワールド』が広がっているのである。

とにかくこの作品の寅は打たれ強い。

宴会で「お志津!」と言って客や仲居たちに笑われようが、マドンナに見てみぬふりをされ、利用され、最後にお礼の挨拶さえもされなかろうが、
番頭に面と向かって「バカはおめえよ」と言われようが、ぐっと堪えて立ち上がるのである。不感症なのではない。また、寅という人物を、
お人好しのバカという型にはめて軽く扱っているのでもない。ひたすら寅の心の海が豊穣なのである。
人一倍傷つき、涙を流す寅なのだが、踏まれても起き上がる豊かな清水が心に流れているのだ。この「庶民の精神の逞しさと健康さ」は
森崎監督の世界だ。

すべては最初から最後まで映画を観さえすれば分かることなのだ。

そして逆に、そのような、あまりにも露わな森崎監督の精神の露出表現は、どうしてもニヒルな側面をその青春期に持つ山田監督にとっては
正視できないものだったのかもしれない。それらはあまりにも山田監督にとって『生』であり『愚直』なのだ。

ここに実は山田監督のネックがある。

山田監督がこの第3作と噛み合いが悪いのもそこに原因がありそうだし、この作品が不当に邪険に扱われてきた側面があるのも
同じ原因だと思われる。

この作品の、不完全で荒い演出の向こうに広がっている『揺れ動くエネルギーと、底力のあるバイタリティ』を、
私たちは今こそ両眼で正視し、深く感じ、そして再評価しなければならないのではないかと思っている。



              




ところで、劇中で寅が『旅笠道中』の二番を何度も歌うが、あの歌の一番の歌詞に森崎監督の描こうとした寅の旅先の暮らしがあり、
その自由でかつ孤独な人生の中にこそ、寅の本質が渦巻いているのである。

夜が冷たい心が寒い、渡り鳥かよ俺等の旅は、風のまにまに吹きさらし。



それでは本編をどうぞ、








本編




松竹富士山



             






蒸気機関車が煙を吐き出しながら疾走する。


流れる木曾節


             





披露宴の木曽節が流れる信州の旅館。


木曽奈良井の旅館 『越後屋 


この宿は実際にあり、創業は寛政年間。

奈良井宿は第10作でも出てくる。登と寅は奈良井駅前の旅館で再会していた。





越後屋二階 披露宴座敷



二階では結婚披露宴の真っ最中。

『伊勢屋』のオヤジが帰ろうとしている。


             



この『伊勢屋』も実はこの奈良井宿の代表的な宿屋のひとつ。

オヤジ「おい伊勢屋!帰っちゃいけねえ」と、二階から叫ぶ声。

無理やりまたもや戻らされてしまう伊勢屋さん(TT)


二階では、木曽節を歌い、踊っている。

神妙な顔つきで座っている新郎新婦。



             



木曽のナァー なかのりさん
木曽のおんたけ ナンチャラホーイ
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
袷ナァー なかのりさん
袷やりたや ナンチャラホーイ
足袋そえて ヨイヨイヨイ

心ナァー なかのりさん
心細いよ ナンチャラホーイ
木曽路の旅は ヨイヨイヨイ
笠にナァー なかのりさん
笠に木の葉が ナンチャラホーイ
舞いかかる ヨイヨイヨイ

木曽のナァー なかのりさん
木曽の名木 ナンチャラホーイ
ひのきにさわら ヨイヨイヨイ
ねずにナァー なかのりさん
ねずにあすひに ナンチャラホーイ
こうやまき ヨイヨイヨイ

三里ナァー なかのりさん
三里笹山  ナンチャラホーイ
二里松林  ヨイヨイヨイ
嫁ごナァー  なかのりさん
嫁ごよくきた  ナンチャラホーイ
五里の道  ヨイヨイヨイ

以下延々と続いていく。



寅は風邪をこじらせ、この部屋の近くで泊まっていたが、あまりにもうるさくて
一階に部屋換えを頼んだのだった。

オヤジ、二階の廊下に出て

オヤジ「おい伊勢屋!くそったれ、はよ上がって来い!

女中役の悠木千帆さんが寅の布団を下に運ぼうとしている。

オヤジ「なんだこの布団は?

女中「おまえらの結婚式で宿替えじゃ!

与太っているオヤジたちのところを風邪を引き、マスクをしたフラフラの寅がすれ違う。

オヤジ「こら!しみったれた顔をすんな!

と寅に絡み無理やり酒を勧める。

オヤジ「貧乏人!飲め、こら!飲め、俺が飲ましてやるからな



             




寅、お猪口を持ちながら大きなくしゃみ。

寅「ハークション!!」と杯の酒をぶっかける。」

酔っ払いのオヤジたち、あたふたと階段を転がっていく。

女中さんもみんなの下敷きになって目がペケ。



             




一階 荷物部屋


部屋が満室なのか、寅の持ち金が切れたのか、
うらびれた荷物部屋のようなところへ引っ越す。

風邪をこじらせ、宿のこたつで寝込んでいる寅は、みなしごだった女中と話しているうちに、
とらやのみんな写した家族写真を見せ、故郷柴又を思い出すのだった。


女中「あんた

寅「ん?

女中「家や親兄弟があんのかね?

寅、帽子をポイっと下に投げて

寅「なにを言ってやがるんだい、人のこと野良犬と一緒にしやがってよ、コホコホ、
 はばかりながらこのフーテンの寅さんな、チャキチャキの江戸っ子よ。
 えー、故郷(くに)に帰りゃあ、ほれ、この通り、れっきとした家族が待ってらァ、
 ちゃんとォ、コホコホ


と、女中にとらやのみんなと写した写真を見せる。


こんなもんいつ写したんだ ヾ(^^;)


女中「へー、これお客さんちの人たち?

寅「そうよォ

女中「ねえねえ、これ、このきれいな人奥さんけ?

寅「え…まあなあ」 おいおいそれはさくらヾ(^^;)

女中「可愛い赤ちゃんねェ、これお客さんの赤ちゃんずら

寅「そ、そら、そうだいおいおいおいヾ(−−;)



             



女中「この人たち誰だね?

寅「おふくろとオヤジだよまあこれは…気持ちは分かる分かる(^^;)


女中「うらやましい…」と、泣いてしまう。

寅「なに泣いてるんだい?あ、…はは、おめえウチ帰りたくなったな?

女中首を振る。

寅「えー?

女中「おら、みなしごの家なしだい

寅「みなしご?そりゃ可哀想だな…。
 元気出せよ。おめえ、きといい婿さんめっけて幸せになれるぞ


女中「けへ…、めっかるかな?」と照れ笑い。

寅「めっかるとも、めっからなかったらオレが婿さんなってやるよ

女中「あ、やだあー、そしたら奥さんに叱られるずら」と照れ笑い。

寅「あ、…そうか、ハハハそうだな

寅、写真にキスをしながら

寅「母ちゃん、ごめんよかんべんな、(チュッ、チュッ)あのな…(−−)



             



女中「あらー

寅もう一度

寅「フフ(チュッ、チュッ)悪乗り(−−;)

女中「フフフ

と、恥ずかしがって出て行く。


このように女中は勘違いしてさくらを奥さん、満男を寅の子供だと間違えてしまう。
寅は見栄を張ってそうだと肯定する。



やはり寅は自分だけの家族が欲しいのだ。


寅「いくら可愛くっても妹じゃしょうがねえや、はああ〜

と、写真を手から離して、我ながら呆れている。



             



みんなにっこにこのとらやのみんなの写真。

中村はやと君かわいい〜(^^)



しかし、いったいいつ撮ったんだよ。第2作ではほとんどそんな暇なかったが、
唯一、時間があるとすれば夏子さんの家に通っているころかな…。



             



ふーっと、淋しく息を吐く寅。


二階からは相変わらず『木曽節』が延々と歌われている。



機関車の汽笛


プォーッ!シュシュシュシュシュシュ!


煙が部屋に入ってきたので窓を閉めるのだが…、親指をつめてしまう。

寅「はあ〜…」

痛がって、指をなめる寅。


その直後くしゃみをして今度は窓が外れる。


寅「へックシュン!


全て裏目(TT)


寅「落ち目だなあ〜…


旅先ではこういう孤独や侘しさはつきもの。
踏んだり蹴ったりでも意地を張って耐え抜く寅でした。ああ…(TT)




             



女中は勘違いしてさくらを奥さん、満男を寅の子供だと間違えてしまう。
寅は見栄を張ってそうだと肯定する。そしておいちゃんおばちゃんも父母だと嘘をつく。

この発言は、巷で時々言われているような、さくらへの兄妹の関係を超えた
特別な愛情ではなく、この話の流れ的には、あきらかに自分を待ってくれている
家族がいてほしい寅なのだ。

そしてラストでも、志津さんやお嬢さんの道子ちゃんを自分の『家族』だと言ってテレビで
嘘をついてしまうのである。

やはり寅は自分を待っていてくれる『家族』が欲しいのだ。






メインタイトル ゆったりとした音楽で


男はつらいよ




                





フーテンの寅



             




わたくし、生まれも育ちも
 葛飾柴又です。
 帝釈天で産湯をつかい、
 姓は車、名は寅次郎、
 人呼んでフーテンの寅と発します。




♪俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、
 分かっちゃいるんだ妹よ、
 いつかおまえ
よろこぶような
 偉い兄貴になりたくて、

 奮闘努力の甲斐もなく、
 今日も涙の、
 今日も涙の陽が落ちる
 陽が落ちる。



♪どぶに落ちても根のある奴は
 いつかは蓮の花と咲く
 意地は張っても心の中

 泣いているんだ兄さんは
 目方で男が売れるなら
 こんな苦労も
 こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪





第3作は懐かしい第1作の「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」の歌詞が
使われている。原点に帰りたいってことだろう。

今回は「おまえが」じゃなくて「おまえ

「心の中じゃ」ではなく「心の中
」と歌っている。






強い風の中、
神社の境内で寅が『ガマの油売り』のバイをしている。


なんとも精悍で溌剌とした渥美さんが風吹く中、きびきびと刀を振りかざすさまは、
見ていてただそれだけで嬉しく気持ちがいいものだ。



             


このバイは、まず、伝家の宝刀で自分の二の腕に切り傷を作り、ガマの油をつけて止血するのだ。
この口上の面白さは、油の効能以上に刀の切れ味を示す部分にあると言われている。

紙を二つ折りに切っていき、「一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚、八枚が十六枚…
と徐々に小さく切っていく。
紙を細かく次々に切ることで、客寄せをし、腕に刃を当てて傷を付けて血が出ることを見せる。
その切り口にガマの油を塗ることで止血作用が明らかなことを示す。この口上に前後して、
ガマの油を塗った二の腕は刃物で切ろうとしても切れず効能があることをも示して、客は馬の油だと
分かっているのだが、口上と実演の鮮やかさにお金を出したくなる。と、まあこういうことだ。

筑波山のガマの油売りが有名。



田舎の阿弥陀堂のような場所で易のバイをする寅が昼ごはんを食べている。
それを村の子供たちがじーっと見ている(^^;)



歌の中のミニコントは、寅が農道を歩いているとテーラーがやって来て
かっこよく道を開けて、どうぞとポーズしたのに、テーラーはその直前で
曲がってしまい間が悪い寅。




             



土手で高校生の自転車通学とすれ違い、ちょっと肩に触ったら、ドミノ倒しで
みんなこけてしまう。




             



最後は海岸で自分のかばんに座ったら寅もこけてしまう。


というミニコント3本立て。




監督   森崎  東




                      










葛飾 柴又 帝釈天参道

飴や団子を作っている様子が映し出される貴重な映像。

一折小が200円、大が300円。

ふたつとも、物凄い分量入っている。

昔は安かったんだねえ〜(−−)


おもちゃ屋

『サスケの射的』と『フェラーリのプラモ』


飴をぐるぐる練り上げる横で、芋飴、や千歳飴をリズムよく包丁で切っていく。飴屋さん。



               




源ちゃんが、とらやの箱を持ちながら参道を帰っていく。






とらや 店


客で大賑わい。


源ちゃん「おかみさん、お寺へ団子届けてきました

おばちゃん「はい、ごくろうさん、今度はね、
     川千家さんにお土産30箱届けておくれ。あそこにできてるからね




              



源ちゃん「はい」と団子製造室へ。

源ちゃん「おかみさん、団子が噴けていますよ

おばちゃん「あ、そうかい、おろしといておくれよ、すまないね

と、言いながらおばちゃん折に団子とあんこを休む暇もなく詰め込んでいる。

源ちゃん今回はこのシリーズで紛れもないとらやの店員さん。
題経寺の手伝いはどうしたのだろうか?




タコ社長入ってきて

社長「おばちゃん、客が来るんだ。団子十箱ばかり作っといてくれよ、200円の


おばちゃん「まいど、ちょいと30分ばかし待ってよね

社長「ああ、いいよ

おいちゃんもずっと包装紙に折を包んでいる。

社長「忙しそうだね

おいちゃん「おう、貧乏暇なしだよ。ウチはがねえからな

社長「どこでもおんなじだよ、こういう時は

女店員さん(友ちゃん)、忙しそうに前を通っていく。

           
  忙しく働いている『友ちゃん』 
           


この店員さん第2作から第5作まで出ずっぱりだが、一切役者さんの名前が
分からないままだ。(第1作は違う役者さん)
第46作から出演した「カヨちゃん」とは扱われ方にかなりの差がある。


このシリーズで第2作から第5作までかなりの長時間スクリーンに映っているにもかかわらず、
さくらにもおばちゃんにも一度たりとも名前を呼ばれることもなく、ただ黙々と働き、
彼女の役者名すら分からないのはあんまりだと思うのだがどうでしょうか。
この女店員さんの女優名が分かる方メールをいただければ嬉しいです。

ただ、この友ちゃんは、カヨちゃんとの共通点もあって、第2作では寅のことを知らないのだ。
ビールの注文を寅から取っていた(^^)
これは遥か、ず〜と後に第47作「拝啓車寅次郎様」で店員のカヨちゃんが同じ間違いを犯し、
寅に団子を出していたことに繋がっていく。


一応第4作ではたった1回だけ『ともちゃん』とおいちゃんに呼ばれていた。
脚本にもこのシーンでは『友ちゃん』という漢字が当てがわれていた。


           
 第5作ではしっかり長い時間映る『友ちゃん』              
              






おいちゃん「こういう時はね、寅でもいいからいてくれるといいと思うよ本当に

社長、タバコに火をつけながら

社長「便り無しかい?


おいちゃん「あるわけねえだろ、おめえ

社長「こないだの縁談ねえ

おいちゃん「

社長「そうとう向こうじゃ乗り気なんだがね


おいちゃん「縁談って、あの、川千家の女中さんの話かい?

社長「相当変わりもんだって、念を押したんだけどね

おいちゃん「うんうん

社長「それでも向こうはいいって言うんだよ

おいちゃん「へー、そりゃそっちのほうも相当変わりもんだなー

社長「こりゃいい話だと思うんだけどねえ…。
  なにしろご本人が行方不明じゃ、話にならないやな、ハハハ


おいちゃん「まったくしょうがねえバカだよ、本当に

店員「おまちどうさま時々セリフがある(^^)

リリリリーン!!

おいちゃん「おい、つね電話だぞ出ろよ

おばちゃん「あんたでておくれよなんだいタバコふかしてるくせに

おいちゃん「フン、オレがタバコ吸ってると電話鳴るんだからなまったく…

おいちゃん「へえ、とらやでござんすが、もしもし?あれ!?お前寅さんかい?

社長「へッ?

おばちゃん「寅さん?

おいちゃん「ちょ、ちょっとまてよお前一体どこから電話してんだい?え?



             



寅はとらやに入りにくくて、わざわざ「とらや」の店先から「とらや」へ電話をかけているのだ。
このギャグは後に第7作「奮闘篇」でも使われる。





おいちゃん「旅先?旅先ってどこだよ?東北方面かい?北陸かい?え?
     どうでも良くないよ、え〜?今も噂してたとこなんだよ。帰っておいでよ。
     みんなで心配してんだぜおめえのこと。


寅「ありがとうよ心配かけてすまねえと思ってるよ


この作品ではトレンチコートを着てマフラーをしている寅、ということになっている。

ちなみに、この寅の背広は『吹けば飛ぶよな男だが』の中で犬塚さんが着ていたものと一緒。



             



おばちゃん「ちょっとちょっと、どっからなんだい?

おいちゃん「知らねよ、旅先だってんだ。
     おい、寅さんよもしもし…もしもし?もしもしィ〜??




寅、道からとらやの店先を見ながら

寅「もしもしじゃないよ、ほら、客だよ。どこにィ〜?、
 後突っ立ってるじゃねえかー。ほら、おばちゃんマゴマゴするんじゃないよ




             



おいちゃん「うん、あいよ おい、つね、

おばちゃん「うん?

おいちゃん「表お客だってよ

おばちゃん「あ、いらっしゃい、どうも

おいちゃん「あ ?? え? おい!もしもし、オメェ一体どっから??気づくの遅いよヾ(^^;)



             



社長「おいおい


寅、店に入って来て、

寅「あ、こらどうもお待たせいたしましてハイ、
 どうもお待たせいたしましたね、お団子でございますか
 ハイハイ、ハイ、ただいま、ハイ。おいちゃんよあんこがないあんこが


おいちゃん「おめえ…

寅「いいんだ、いいんだ話は後だよ。すいませんねえ、お待たせしちゃって、いますぐ
  まいりますからね、どうぞ待っててくださいまし。ね、


客「お茶

寅「お茶ですか?ハイハイ、ハイ。ほら、お茶

店員「あ、はい

寅「ほら、すーっとすーっとと注いで注いで注いで注いで、はい。
 電話待ってるよ、ほら、相手が〜


おいちゃん「あ、もしもし

寅「ハイハイ



              



おいちゃん「失礼しました。

寅「どうぞどうぞ

おいちゃん「は…???

寅「オレここにいるよ

             
寅が電話で接客をあれこれ指示。
森川さんと渥美さんのやり取りが笑える電話ギャグでした(^^)



              






とらや 茶の間   夜


一同「アハハハハ


おいちゃん「本当になー、いくら照れくせえたってさ、おい。
     何も家の前来て電話する事ねえよな、
     おらァてっきり仙台か
富山あたりから電話してるのかと


こういうところで自分の自宅がある富山が出てくると嬉しいね。



              



寅「いや、もうおいちゃんよ、その話はこのへんでおつもりにして

『おつもり』とは『お終い』という意味。

おいちゃん「んー

寅「さ、も、もう一杯いこう、もう一杯いこう

寅「お、おっとこりゃ失礼したかな?失礼したかな?

おいちゃん「ねえじゃねえかおい、つけてるんだろ?酒

おばちゃん「忘れてた忘れてた

おいちゃん「ばかだなあ、もうにたぎっちゃってるぞ、おい

寅「へへへへへ、しかしよ、おいちゃんもおばちゃんも
 相変わらずで、結構結構


おいちゃん「相変わらずでもねえよ、もう年だからな。
     あっちこっち故障だらけだよ


寅「うん

おいちゃん「な〜、電話でも言ったろ寅さんがさ、このへんで腰落ち着けてな、
     店手伝ってくれると大助かりなんだけどな〜


おばちゃん「そうしてくれないかね〜。さくらちゃんだって安心するよ。
     ねえ、博さん


博「僕からもお願いしますよ兄さん。
 もうそろそろ旅がらすの生活にもケリをつけてください。



この作品の博前田吟さんはいつもの自然さがちょっと少ないかなって思う。
森崎監督は活きのいい博にしたかったのかもしれない。



             



おいちゃん「どうだい、寅さん?

寅「ありがとう今のおいらにこんな優しい事言ってくれるのは
 オメェさん方だけだ本当にありがとう


おいちゃん「ま、ハハ、しんみりしちゃったな。ま、一杯いこうや。
     え?アチ、アチチチ熱いなあおめえ え?
     煮たぎっちゃってるじゃねえかよ。新しくつけなおしてこいよ


おばちゃん「あいよ

寅「そりゃあ、あっし、正直言ってもう若くはねえさ

寅「旅から旅へのしがねえ暮らしの明け暮れ田舎の商人宿のせんべい布団で
  くるまって天井の節穴眺めてよ、ふっとああ、オレもそろそろ所帯を持って
  落ち着くところへ落ち着かなきゃいけねえかなあ、なんてね、
  ふ、こう思うことがねえでもねえがねえ…


おいちゃん「そうだろう、そうだろうとも

博「それを聞いてほっとしたんですど、実はですね、兄さん

寅「うーん

博「もし兄さんにその気があったらと思って、縁談を用意しといたんですよ

寅「縁談?だ、誰の?



             



博「兄さんのですよ

寅「オレの?

博「ええ、僕は直接には知らないんですが、うちの社長が前から言ってた話でね、
 もし兄さんが帰ってきたらぜひ勧めてくれって言われてるんですよ
 どうですか、兄さん一度会ってみませんか



やっぱり前田吟さん、今回の演技はちょっと一本調子で固いな…。



              前田吟さんにしては珍しい表情
             



寅「うん?う〜ん…んー…ん、と、緊張して、博に酒を注ぐ。

寅「あああ、ねえや

おいちゃん「お、おい、つね、つね!酒がねえぞ、早くしろよ

おばちゃん「あいよ

おいちゃん「寅さんの事はね

寅「うん

おいちゃん「先方にもちゃーんと話がしてあんだってよ

寅「あ?オレのこと?

おいちゃん「うん

寅「へえ、なんて言った?

おいちゃん「フフ、つまりその、キップが良くてね

寅「アハ

おいちゃん「どことなく粋でさ、頼りがいがあってな

寅「ヘヘ

おいちゃん「この昔の侠客みてえな男だってな

寅「へへへ、そ、それで?

おいちゃん「うん、そしたらな、先方すっかり乗り気になっちゃってんだよ。うん

おいちゃん「そりゃもちろんあれだよ、どこ様の金持ちの娘ってワケにはいかねえよ、
     うん、そりゃ
川千家で女中してな、働いてる娘なんだけれども


寅「いや〜おいちゃん、オレは決して金持ちの娘嫁にもらおうなんて気持ちは
 これっぽっちだってありゃしねえよ。なあ女ってのは少し苦労していた方が
 いい嫁になるって言うからね




             



おいちゃん「あ〜そうそうそうそう そのとおりだよおめえ

おばちゃん「とにかく会うだけ会ってみたら、

おいちゃん「うん

おばちゃん「嫌ならことわりゃいいんだから、ねえ、博さん

博「そうですよ今夜にでも社長に話しましょう急ぐねえ(^^;)

寅「こ、今夜?

おいちゃん「おう、善は急げって言うからな早いほうがいいよ

博「そうですよ

おいちゃん「もう一杯行こう

寅「あ、そうか?

おばちゃん「気に入りゃいいけどね本当に

おいちゃん「そりゃあ、おめえ、寅さんにだっていろいろ注文があるだろうけどな〜?

おばちゃん「ね、どんな人がいいんだい?

寅「え?へヘン、オレなんかに別に注文なんかあるわけねえじゃねえかよ〜

博「だけど、こう、好きなタイプってあるでしょう?

寅「ええ?

おばちゃん「ねえ、どんな人がいいんだい?

寅「別に注文なんかあるわけねえじゃねえかよ」と照れる。

博「だけどこう、好きなタイプってあるでしょう

寅「えー、どうせこっちはしがねえ旅がらすよ、贅沢は言えねえよ。
  フフ、まあ、
ババアじゃなかったらいいってとこじゃねえか、イヒヒヒヒ


みんな「ハハハ

おいちゃん「ほんとうに誰でも言いのかい?ババアでなきゃあ

寅「まあ…、しいて言えばさ、次第に好みが露出していく…。

おいちゃん「うん

寅「気立てが優しいって事ぐれえかな



             




おばちゃん「はー、ね、そりゃ大切だよね、うん」と、頷く。

おいちゃん「そりゃそうだ。そのとおりだ。
     女は気立てが優しくなくちゃいけねえな。ほかに何かねえのか


寅「そおねえ、別に取り立ててねえけどもねえ、
 ま、
寝坊の女はいけないな う〜ん

寅「朝こっちはパチ〜っと目が覚めてもよ、
 隣でもってパカーッと大口あいてイビキかいて
 寝ていられたんじゃたまらねえからねえ


おばちゃん「そりゃそうだよね ヘヘヘヘ

寅「う〜ん

おいちゃん「笑い事じゃねえぞ、お前のことだぞ アハハハハ

と、おばちゃんを指すおいちゃん。

博「アハハハハハ博まで(TT)

寅「それともう一つ、ンン。
  朝起きて亭主に冷っけい水でツラ洗わせるのこれ良くないな、
  
ちゃ〜んと温かいお湯が沸いてるって具合にしなきゃ行けねえ



             



おばちゃん「でもさ、朝忙しいからね、女は

寅「それがいけねえんだよおばちゃん ちょっと来なよ

と、小便に行く寅が、おばちゃんを呼ぶ。


おばちゃん「あ?


寅「いいかい、おばちゃん、いくら忙しくたってツラ洗うのは
 たかだか5分か10分だぜ。
 その間ぐらい
ピターッと亭主のそばにいろってんだよ。

 亭主が洗面器の中にスッと手をいれる。
 
後ろに回って丹前の袖が汚れねえようにスッとこう持ってやる。
 その心遣いがほしいってんだよ。
 粋なもんだよ、まったくなあ!エヘへへ はー、分かるか、おばちゃん。

 おばちゃんよう、突っ立ってないでこっち来いよ。

 ええ?覗けって言ってんじゃないんだよ、ほら、
 ちょっとやってみろ、練習してみろ。持ってみろ持って。ええ?


おばちゃん「んー…と、しぶしぶ持ってやるおばちゃん。

おばちゃん可哀想…なんでこんなことを…(TT)


寅「赤ん坊のおしめ取り替えてんじゃねえよ。
 いっ、ったくもう!しょうがねえなあっ」



         



寅「はあ〜あ、おらおら、ほれ

と、水で濡れた手をおばちゃんのエプロンで拭く寅。

おばちゃん「あ、やだよお!いやだよねえ(^^;)

おばちゃん、可哀想すぎ…(TT)

            
ここは、とらやのお手洗いが見える数少ない貴重なシーン。
第2作では、小便をする寅が窓の外から撮られていた。


寅「デリカシーがないなあ〜それは、あんただよ(−−)


この作品では寅は『デリカシー』という言葉を自分の言葉として使っている。
第11作「忘れな草」では


博「なんでデリカシーの欠けたこと言ってくれたんですか!」
寅「なに
デリカシカケタって?」
博「つまり無神経だってゆうことですよ」

というように、博の使う『デリカシー』という言葉がわからなかった。
作品によって違うんだね(^^)




おいちゃん「それじゃ、あの、そのほかに何かあんのか、おい

寅「ま、贅沢言っちゃきりがないよ、んー

おいちゃん「そそそ、そうそう

寅「う〜ん、んー

寅「だけどね、男はいったん敷居またいで表へ出りゃ
 7人の敵ありって言うようなもんだからな、
 うん、汗水たらして苦労して稼いで、帰ってくるんだからさ、
女房としちゃやっぱりツッと
化粧して三つ指の一つもついて、
『お帰りなさいまし、お疲れ様でしたでしょ?』
 ぐれえの事はちょっと言ってもらいたいよねえ? 


          



寅「おばちゃんみてえにザンバラ髪でよ、
 『帰ってたのかい?風呂沸かしておくれよ』な〜んてのはダメだよ、う〜ん。


おばちゃん、集中攻撃にあっています(TT)

寅「
亭主が帰ってくる、
 風呂が先か酒が先かスッと
ツラ見て分かるようじゃなきゃダメ
だよ ねえ!

あ、それからもう一つおばちゃん、
酒、ね、こりゃ難しいよ
酒は人肌。熱くもなしぬるくもなしってね。
うん。こりゃね、燗のつけ過ぎでさ、こうやって注ぐだろ 
ここんところまで持ってくる。
目にツーンと
アンモニアみてえになっちゃうぐれえ燗するようじゃ、
こりゃ、女房として落第なんだよ


おばちゃん、さすがに雨あられの集中攻撃で
かなりふて腐れている。(▼▼メ)



        


寅「亭主が最後の一滴を杯に受けて、チュッとやる。
これをちゃぶ台に置くか置かねえかに、
スッと入れ違いに人肌のヤツがもう一本出てくる。


ここらへんの呼吸を、うま〜く飲み込んでもらわねえと、
気分よく酔えねえよなあ。フフー。

歌の一つも口を出る時はさ、
昼間の疲れで…トローッと眠くなるんだ…ハァ…ァア〜。
とかなり眠そうな寅。

あー、横んなりてえなあ〜と思う時にはさ、スッと枕が出るんだよ
 う〜ん、ねえ



           


おばちゃん、かなり嫌々座布団を二つ折りにして差し出してやる


寅「ボカァ、別に注文するのは…

あ、そうだ、もう一つあるよ、うん。

女にはね、たしなみってもんが必要なんだよな、

亭主の前で持ってさ、よくバタバタバタバタ、
『あ、あたしオシッコニ行こう』なんておばちゃん、良くやってるじゃないか、ね?
『あ、わたし、もっちゃうもっちゃうもっちゃう』
そりゃ行っちゃいけないって言わないよ。行ってもいいんだよ。

ただ、男の気がつかねえようにスッと用を済まして帰ってくる。
そういうたしなみが欲しいと言ってる訳だ。

ハア〜〜ま、他に、特別注文て言うのは…も、無いね、うん。じゃ、寝ますか。
ハァ〜ァ、グゥ〜、


と、瞬時にイビキをかいて寝てしまう寅だった。


第9作「柴又慕情」で下宿探しをする寅が、不動産屋のオヤジに、
別に特別注文はないと言いながらも、理想の『大家さんの気質』について
長々としゃべるシーンは、このあたりのアレンジ版だと思う。



             

               



みんな呆れて「」 心の中で、だめだこりゃ ┐(-。ー;)┌


結局寅は、自分の夢の中で遊んでいるだけで、
現実と何もシンクロさせていないのだろうね。
こんな女性がいたら、さぞかし男は幸せだろう、と、
思えるような作り物の女性像だったわけだ。
このような話はまじめに聞くだけ損。





翌日 とらや 茶の間



2つの鳥かごに鳥がいる。文鳥とセキセイインコ
おいちゃんは文鳥が好きそう。


社長「冗談言っちゃいけないよ、今時そんな女はね、
  日本中、鐘や太鼓で探したっていやしないよ。
  なに言ってるんだよ!
2階の寅に聞こえないように若干小声。



              



博「僕もちょっと贅沢だと思うんですよ

社長「贅沢なんてもんじゃないよ!てめえの事考えてみろってんだよ
  悪いけどね、
体のいい失業者だよ、おめえ

キツイね相変わらず。あんたも体のいい倒産工場じゃないのかい。(−−)




おいちゃん「そう言うなよ、その辺が分かってないのが
     あいつのバカなところなんだから


社長「いくらバカだっ…!

寅が二階から下りて来る。

寅「おはよッ!はー、おいちゃん、

おいちゃん「おう

寅「オレ、ダチ公とこ行ってね、

おいちゃん「うん

寅「ヨウラン借りてくるよ

おいちゃん「何だい、ヨウランって?

寅「え?見合いの洋服よ

おいちゃん「洋服?

寅「へへ、きのうお見合いするって言ったじゃないか へ、何時っからだい?

社長「一時だよ一時

寅「一時かあー、じゃ、だいぶんあらァへへっ

寅「なあ、おいちゃんよ

おいちゃん「うん?

寅「鳥もツガイで温めあってるじゃねえか へへヘヘへ!
 は〜、めんどくせえな〜。ちょっと行ってくら


と、凄い乗り気の寅だった。



             






午後一時 川千家


社長「大将!大将〜った…あ、とと、寅さんたち来てるかい?
   じゃあ、すぐ始めるからね、へへ部屋はどこだい、部屋!部屋は!?




             



キャッシャーのカウンターで川千家のご主人登場。

大将「二階ですアフレコで吹き替えですね(^^;)



社長「あ、そうかいそうかい




二階

社長「いや〜、申し訳ない、いや、きょ、今日はね、
  手形の期限
なのコロッと忘れちゃってね、
   今ご本人来るからね あ〜、汗かいちゃった


さくらの結婚式にも同じ理由で遅れた懲りないタコ社長(−−;)


寅、緊張して座っている。


おいちゃん「な、なんだよ、うまくまあ、お前の注文にあった人ならいいんだけどな

寅「いえ、ぼかあ別に注文なんてありませんよ

場の空気に呑まれてかなり、緊張し、謙虚になっている寅。




             



おいちゃん「ええ?夕べいろいろ言ったじゃねえか

寅「いえ、そんな事は言いませんでございましょう?
 僕はただ、気性がおとなしければ、それで充分ですよ
 いや、かえって、気の強いほうが気が合うかもしんない。うん


社長「そ!そそそ、そうだよな!

駒子「ごめんください

社長「あ、どうぞ、あ〜ささこっちこっちささ


寅、緊張で目が宙を回っている。


社長「ほら、ほら は、

おいちゃん「どうも

社長「こちらがね、あの、いつか話した寅次郎さんだよ。(こちらが)おじさんだ

おいちゃん「はあ

社長「こちら駒子さん


寅「あ、どうも


駒子「どうも



なんと、緊張する寅の前に現れた見合い相手は
寅次郎の仙台の知り合いのお駒さんだったのである。


音楽高まって


駒子「あら

             




寅「おー!確かあんた仙台の狸小路の焼き鳥屋のお駒さんじゃねえか



             



駒子「寅さん!


この後第14作「寅次郎子守唄」で、
春川ますみさんと渥美さんは再度共演することになる。
あの佐賀の呼子港での一期一会は、
このシリーズの名シーンのひとつとして輝いていた。



寅「なんだよ、おい、ええ〜?お駒さんとはオレも気がつかなかったよなあ〜
  あ、おいちゃんよ、よく知ってんだよ!おら知ってんだよ。


寅「あ〜、昔から懇意な女だよ な

寅「アハハハハ!

寅「あれ?なんだい?お前亭主いたじゃねえか。
 あれどうしたい?


おいちゃん、驚いて目が点。

寅「札幌ラーメンの店でもってよ、
 コックやってたじゃねえか サーッと、え?



駒子「ウウウと、急に泣き始める駒子さん。



             



社長、亭主がいると聞いて顔が青ざめ、オロオロし始める。


社長を睨む寅。


社長「あ、そうだ、コロッと忘れてたよと必死で逃げる理由を考えている。

おいちゃん「何を?

社長「え、ほれほれ…、ちょっと手形の期限なんだ!え、ヒヒ…
その問題片付いたんじゃないの(−−)


と、一目散に逃げていく社長。


おいちゃん「おい、おいおい


おいちゃん「フフ〜、そうだ!おれもコロッと忘れてたよ!
    ちょ、ちょっと失礼すらあちょっとちょっと失礼な
と、あたふた逃げようとして

廊下の仕切りに顔が当たって『バコ!』
 痛!(TT)

おいちゃん、鼻を押さえながら

おいちゃん「ゴホゴホ・・コロッと忘れてた、ちょっと失礼な


と、スタコラ退散するおいちゃん。


腕を組んで怒っている寅。


泣き崩れている駒子さん。


向こうに見える『だんご本家 亀家本店』の看板。



             





そのあと、延々と駒子さんの身の上話が続いていく。


寅、大あくび(TT)


駒子「二人で仙台を逃げ出してさ、四畳半のアパート借りて
  これでやっと二人っきりの新生活ができると思った矢先…、

  あいつったらさ、新しい勤め先のラーメン屋の娘と出来ちまってさ、
  ウウウ!



酒の追加に現れた女中さん、駒子さんの身の上を興味本位の目で聞きながら、
ニヤついている。



泣きながら飲みまくる駒子さん。


寅「分かった分かったよ よ、そう飲むなよ

駒子「ごめんね寅さん

寅「いいんだよ

興味本位の女中さんを手で追い払う寅。


駒子「でもさ、こんな事話できるのあんただけだもんね

寅「そりゃそうだ、そりゃそうだ

駒子「寅さんならさ、私の気持ち分かってくれるわよね

寅「よく分かるよよく分かるよ

駒子「あんまり悔しいからさ、
  男はあいつだけじゃない!って所見せてやろうと思ってさ、


寅「うん

駒子「あたしも他の男にくっついてやろうと思った矢先よ
 あの印刷屋さんがさ、見合いしないかって言うからね、
 どんな人だって聞いたらさ、『
あまりおつむは良くなくて
 オオボラ吹きで下駄みたいな顔してる
けど、
 根はいい人間だから』って言うからさ、
 まあ、こうなったら、
下駄であろうとサンダルであろうと
 かまやしない。と思ってさ、


もうめちゃくちゃ言われてたんだねえ〜(^^;)


寅「あのタコの野郎そんな事言いやがったのか!

駒子「そう言っただよ

寅「チクショウ、ぶっ飛ばしてやらあムカムカしている寅。

駒子「それがまさかさ、寅さんだとは思っても見なかったからさ、
  本当にごめんね


寅「いいんだよ、いいんだよ、何も謝ることはないやね

お酒をがぶ飲みしようとする駒子さんを止めて、

寅「よせよせよせよせ よせよ、ほら え?お前身体に毒だからよ

駒子「ウ!ウウ〜つわり(((^^;)



寅「ほら、吐きっぽくなったんだろ、
 おい、大丈夫か、大丈夫か。え?


駒子「大丈夫、何でも無いの、私ね、今つわりなの

寅「今つわりか

寅「…!!今つわりい〜? それじゃ何か、おい、
 お前もう、
仕込んであったのかおいおいヾ(^^;)



             



駒子「寅さああああん〜〜ううう、 オエ〜〜


寅「ウオ〜ウオ〜ゴエ… ああ〜気持ちわりい(((〜〜;)



             







とらや  店


冷蔵庫 森永



源ちゃん店の前から走って入ってきて

源ちゃん「今こっち来ますよ!

おいちゃん「怒ってるか?

源ちゃん「すごい顔してますよ



             



おいちゃん「本当か、おい〜

おいちゃん「カ、カアちゃん。と、とにかくね、裏の社長が悪いんだから、
    
 ォ、オレは知らないよ

おいちゃんが、おばちゃんのことを『カアちゃん』と呼ぶのは珍しい。

おばちゃん「あたしだって知らないよ!


一目散に、逃げていく、源ちゃんとおばちゃん。

おいちゃん「だって、かあ…おりゃ、あわああ…」とおろおろ。

寅、勢いよう帰ってきて、

寅「おいちゃんよお!

おいちゃん「はい?ハイ、ハイ、ハイ…超逃げ腰(((((^^;)

森川さん上手いねえ〜(^^)森川さんしかこの味は出せませんよ。



メインテーマが軽快に流れていく。

寅は、勢いで、とらやのピンク提灯をヘディングで飛ばして

寅「オレはちょいと千住の方へ行くからな、
  タクシー代按配してくんないかい?


おいちゃん「ああ、うんうん…

寅「早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ!
  数えることはねえんだよ!よし。



寅、また戻ってきて、


おいちゃん「わあああ!とビビる(((^^;)

寅「ひょっとしたらよ

おいちゃん「うん

寅「こん晩、結婚式になるかもしれねえぜ!そのつもりでな。



             



寅「借りとくぜ!

ある意味、凄まじい行動力だ(^^;)


このあたりの、弱気な逃げ腰は森川さんの独壇場だ。上手すぎ!(^^)






夜 とらや


寅、当事者たちを連れてきて、

寅「さ、入れよ、ほらなあ、なにぐずぐずしてんだよ。遠慮すること
 無いよ、スッと入れよ、すっとここはオレの家だからなあ、うん。
 こっち来い、座れ座れ座れよ、うん


寅「なあ、あんまりオレに世話焼かせるなよ。ええ?為さんとか言ったな

亭主「え?へえ晴乃ピーチクさん

寅「オメェさん良くねえぜ。こんないい女房がありながら
 浮気するなんてその
了見(料簡)がいけねえよ。

 お駒さん身ごもってるんだぜ?オメェさんの子供だろう?




了見(料簡)って、いい言葉だねえ。人の世の機微に触れて、叩かれ、褒められ、
その人その人の了見(料簡)ができる。



亭主「へえ?…ぜんぜん知らなかったです。

友人「とぼけんじゃねえや、バカどうも晴乃パーチクさん

寅「お駒さん、おめえさんもだぜ、
 この男に惚れてるんだろ。
 だったとしたら、一度や二度の浮気はだまって
 目をつぶってやんなよ 浮気は男の甲斐性よって、
 女に持てねえような男じゃつまらねえじゃねえか。


 ともかく、縁あって所帯持った二人だい。
 それが離れるなんて事はよかねえ、
 そらいいてえことはお互いに山ほどあるだろう。しかしな、
 ここは一番、この寅さんの顔を立てて、どうかひとつ、
 元通り仲良くやってくれ頼むよ




             




駒子「あんた、ごめんよ



亭主「うううん、オレが悪かったよ



             



第1作のテーマ曲が流れる。



寅「よ〜し、できた!めでてえめでてえ、
  これで万事めでたしだ! なっ


駒子「寅さん

寅「え?

駒子「本当にありがとう

駒子「あたしはもう、なんてお礼を言っていいか わか…

寅「うん

亭主「どうもありがとうございました。ご親切に

寅「いいのよ、いいのよ。オレの事なんかかまわねえんだ
 おめえたち二人が幸せになってくれればオレはそれでいいんだよ。
 良かったなあ!



おいちゃんたちの後ろからドッドっとタコ社長が走ってくる。

社長「寅さん、なんだい、もう結婚式だって、
  えらい手回しがいいじゃないかあ〜ハハ…
適当なヤツ…(−−)


寅「オレが結婚するわけねえじゃねえか、このタコ!え〜?

 ささ、何もねえけどね、まずこちらへ 兄さんもどうぞ。

 よ、おばちゃん、したくできてるな?



おばちゃん「いいや



寅「何にもできてねえのか?
 俺だから言ったろ?ったく、モーロクしてやんなあ。

 しょうがねえや、源公、おめえちょっとな、仕出し屋行って、な、
 料理を15〜16人前至急届けてくれ、そう言ってくれよ


源ちゃん「へい!

寅「あ、それからな、どうせお祝いだ、
 パーッと何か明るいめでてえ名前の酒を
 5、6本注文しとけ


寅「あ、それからな、検番へ行ってよ、粒よりの芸者5〜6人いいの
 至急届けてくれって


源ちゃん「へい!


検番とは、芸妓組合やお茶屋組合の事務所を指す言葉である。
昔はお茶屋の取り締まりをする場所をそう呼んだため「検番」と言う。
芸舞妓の稽古場が「検番」と呼ばれることもある。



寅「あ、それからな、近所の衆に帰りに声かけるんだ
 とらやでもって祝い事がございます。もしお手すきでしたら
 ご一緒していただいて、祝っていただけたらありがとうござんすそう言え。

 
あ、それからな、…もういい、行け



             




夜 茶の間


当事者と柴又のご一統さんたち、宴会で盛り上がっている。

柴又芸者さんも3人ばかり来ている。


縁もゆかりもないのに、よく参加できるねみなさん(−−;)


「♪でためでた〜の若松様よ〜枝ァも〜…、あ、ちょいちょい

花笠音頭

めでためでたの若松様よ

枝も (ちょいちょい)

栄えて葉もしげる

(はあ やっしょうまかしょのしゃんしゃんしゃん)


花笠音頭の歌詞は150種類以上あるのでこのへんでご勘弁を(^^;)




             



おいちゃん「博さん、さくら呼んで来いよあれにでも止めさせないと
     えれえ事になっちまうぜ


博「それが子供が熱を出しちゃいましてねえ〜手が離せないんですよ〜


満男が熱出してるなら、おばちゃんが今まで知らないわけないよ。
ちょっと無理があるね、その設定は ヾ(^^;)



おいちゃん「弱ったねえ〜

おばちゃん「はー…



             



ハイヤーがやって来る。

      
運転手「こんばんは、とらやさんはこちらでございますか?

おばちゃん「はい


運転手「葛飾交通でございますがハイヤーのお迎えにあがりました


と、大きな外車がとらやの前に横付けされている。


寅「さあ、さあさあさあ乗ってくれ乗ってくれよ


源ちゃん「これ、外車だねアハハ・・・でかいなおい


おお!GM(ゼネラルモーターズGeneral Motors)の
シボレーのインパラ.1968年式』だ!


シボレー・インパラ(Chevrolet Impala)は、ゼネラルモーターズのシボレーブランドによって販売されている自動車の車種名。


1958年型シボレーの最上級グレード「ベルエア」に「インパラ・スポーツ・パッケージ」という名のスペシャルパッケージが設定された。
1959年からは最高級グレード名となり、下から「デルレイ」「ビスケイン」「ベルエア」「インパラ」の4グレードとなった。
1965年にインパラ・カプリスに改称、1966年にカプリスとして独立する。一般的には2ドアが多い。


               



シボレー インパラ 1968年式   







ワーグナー作曲 歌劇『ローエングリーン』より「婚礼の合唱」が流れる。

ウィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー Wilhelm Richard Wagner
(1813 〜 1883)ドイツ
 

ウィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー( 1813 〜 1883 )の歌劇「ローエングリーン」にふくまれるこの曲は、
「ワーグナーの結婚行進曲」ともいわれている。“歓喜の動機”で有名な「第 3 幕への前奏曲」にみちびかれた第 1 場の冒頭で、
白鳥の騎士ローエングリーンとブラバンドのエルザの結婚式に演奏される。しかしこの二人、一晩で別れてしまうので、ほんとうは
縁起が悪い曲なのだが…(^^;)



駒子「寅さん

寅「ん?

駒子「本当に何から何までなんとお礼を行ったらいいんだか

寅「何を言ってんだよ さあ、早いところ乗れよ
 お前さんがたはよ、生活が貧しいから新婚旅行なんかもした事ないっしょ
 ひとつ、頭っからいっぺんやり直したらどうだ?はい、乗った乗った


寅「おい、運ちゃん、一つたのむぜ


駒子夫婦と一緒に来たなぜかその友人まで一緒に乗り込んでしまう。
新婚旅行のためのハイヤーなのになぜ?



運転手「そどちらまででございますか?

寅「そうよなあ、どうせならいっそ景気のいいところ、
 熱海までバーッとぶっ飛ばしてもらおうか


運転手「熱海

寅「そうよ

運転手「かしこまりました

寅「あいよ

運転手「あの〜、お支払いの方は?

寅「銭か?銭はこのとらやへ伝票回しといてくれ

寅「ああ


それ聞いておいちゃんたち、ドキッとしている。


寅「では諸君、中村為吉妻駒子 両人の前途を祝して、
 ここで、ささやかながら、万歳を三唱させていただきます!



社長「ワ〜!社長まで一緒に飲んでどうするんだよ(−−)

寅「そ〜れ

一同「ばんざ〜い!ばんざ〜い!ばんざ〜い!



             



寅「な、おいちゃん、な、おばちゃんよかったな、おい

源ちゃん「良かったな兄貴!

寅「良かったよかったよかった!


おいちゃん、おばちゃん、かなり怒っている。




タクシー
 カローラなどの小型車がほとんど。
 ○○タクシー、○○交通、などのシンボルがルーフに付いてて、ボディは一般にカラフル。
 窓にクレジットカードのシールが貼ってあったり、何となくなんでもありで雑然としている。
 乗降の際、運転手は乗ったままでドアは自動で開く。
 運転手は制服はあまり着ていない場合が多い。
 
 メーターに表示された料金を自分でを払って降りる。
 たいていの場合、自分で見つけるか予約する。
 呼んでおいて待たせると、普通は第48作のOK無線の犬塚さんのように運転手は怒る。


ハイヤー
 大型車(セルシオ、シーマ)、輸入車(キャデラック、ベンツ)などの高級車が多い。
 ルーフには何も付いていない。黒塗りが一般的。

 乗降の際、ドアは自動では開かず、運転手が降りてきて開けてくれる。
 運転手は白手袋、帽子、制服を着けている。

 降りるときに料金を払わない。。
 予約して半日とか1日とか使う以上、何時間待たせても文句は言わない。



タクシー業務適正化臨時措置法という法律の定めでは、

ハイヤーとは“営業所のみ”でお客さんをとることになっており、
それ以外のものをタクシーと呼ぶと定められている。


料金面では、タクシーを呼んだ場合、車庫〜乗車地〜目的地の料金を支払うが、
ハイヤーではさらに目的地〜車庫までも課金の対象になる。


ハイヤーは、英語の hire (賃貸)から来ている。英語で rent a car と言えば車だけを借りることだが、
hire a car だと、運転手付きで車を借りる意味になる。私の住んでいるバリ島では「チャーター.カー」
と言えば、運転手付になる。


お客さんを乗せている時間で料金を計算するのがハイヤー。
お客さんを運んだ距離(道のり)で料金を計算するのがタクシー。という考えもある。




話は戻って…


おばちゃん「あたしゃね、みんな先方が払うもんだとばっかり思ってたんだよ!
     だから黙ってたんだよ
ほんとそうだよ(−−)

源ちゃん、そーっと聞き耳立てて聞いている。

駒子さんたちも、いくら寅経由と言ったって、縁もゆかりもないとらやの人たちに
全額払わせちゃいけないよ。寅はああいう自分しか見えない男だからあれで
完結してしまっているが、駒子さんたちは、それに乗っかかりっぱなしじゃおかしい。
堅気なんだから、あとで半分くらいはローンでもいいから払わないとね(−−)



おばちゃん「なんでウチで払わないといけないんだよ!ええ?
     ハイヤーの料金まで!
     言いたかないけどね、あたしゃタクシーだって年に数えるほどしか
     乗ったことがないんだよ!ハイヤーなんて生まれてからいっぺんだって
     乗ったことないんだよ!なんでそんなお金まで



いったいいくら使ったんだ??ガクガクブルブル(((((^^;)


寅「金金言うなよおめえ、みっともねえまったくう…。祝い事じゃねえかよォ、
 少しぐらいの金でおってガタガタ言うなよ
と酒を飲む。


おばちゃん「ああ、そうかい!そんなら自分で払ってみろってんだ!

本当に全うなご意見です(^^)





             



寅、カチンと来て

寅「なにいー!なにいって、おばちゃんは当たり前のことを言っただけだよヾ(^^;)



             



おばちゃん「そうじゃないかァ!

おいちゃん、おばちゃんを止めて、

おいちゃん「つね、待て。いいか寅、そもそものおこりはな、
     おまえの幸せを願ってやったことなんだぞ。
     オレたちゃなァ、たった一人の甥っ子の結婚式なら
     どんな贅沢だってさせてやらあ!


おばちゃん「そうよォー

おいちゃん「それがだなあ、なんで赤の他人の祝い事に
     こんな散財をしなくちゃならねえんだァ!


寅「あー…、あ、そうかい!じゃあおいちゃんは、
 オレだけが幸せになりゃ、それでいいってのかよ!


おいちゃん「そうよ!そうだよ!

寅「あー、そうかい、それじゃあの二人はどうなったってかまわねえって言うのか!?
 はあー、おいちゃんはそんな人間かよ!


費用は当事者と言いだしっぺが払うのが当たり前だろ寅(−−)


おいちゃん「このやろう!



              



と、わなわな震えながら立ち上がり、

おいちゃん「てめえ、脳みそ足りねえくせに、文句ばっかり言いやがてこのやろう!

寅「なにい!?」と、寅も立ち上がる。

おいちゃん「なんだ!やるか!てめえ!

博、おいちゃんを止めて、

博「おじさん!僕が言う!

博、寅を睨んで

博「兄さん、あんた、さいぜんから言葉が過ぎるよ!


寅「職工、てめえ誰にもの言ってんだ、このやろう

博「おじさんたちはなにもあの二人の再婚を
 祝福しないと言ってるんじゃない!
 そのために、芸者を呼んだり料理を取ったり、
 そんな費用まで払う義理合いはないと
 言ってるんだ!そんなことが分からないのか!


寅「分からないよ!!


こういう場合、幸いにもまだおいちゃんたちは払っていないんだから
ハイヤー会社への支払いは駒子さんたちにまわせばいいと思うんだが…。
上にも書いたが、駒子さんたちも、寅が全額払うのはおかしいことくらい
分かるはず。
いくら、寅が一人で勝手に手はずしてしまったこととはいえ、自分たち
夫婦を祝ってくれるための宴会であり、ハイヤーなんだから、
半分くらいは自分持ちにしてもらってもとらやの人たちは罰が当たらないと思う。
これは、笑えない相当の額だと思うので、きちんとしたほうがいい。



             



寅「てめえも同じ人間か、そんな心の冷てえ男がオレの親戚かよ!
 そうとわかってたら、てめえなんかに妹のさくらをやるんじゃなかったよ!


と、博の頬を小突く。


博「表へ出ろ!


こんな荒々しい博は第3作だけ。
第1作でさえ、博は寅にはこんな言い方はしなかった。




寅「このやろう上等だよ!やってやろうじゃねえか!

と、博の額を小突く寅

おばちゃん「ちょっと、ちょっとちょっと…」と、止めに入るが、

寅「黙ってろ!ババァ!

おばちゃん「博さん、およしよ、あんた、ちょっと

おばちゃん、おいちゃんに

おばちゃん「およしったら

おいちゃん「黙ってろ!ババァ!おいおいゞ(^^;)

おばちゃん「ちょっとあんた

源ちゃんや、タコ社長が恐る恐る覗いている。

庭に出て、今にも殴りかからんとしている二人。


おいちゃんも外に出て


おいちゃん「いいか寅、オレももうちょっと若かったらな、
     オレの拳固で張り倒してやるところなんだ、ええ!
     博の拳固はオレの拳固だと思えよ!



第1作では、おいちゃんは、
オレの拳固はおまえの親父の拳固だと思え。と、言っていた。
今回は、博の拳固はオレの拳固。


寅「なに言ってやがんだこのやろう!
 そんな拳固でおれのこと殴れると思ってんのか!バカ!チクショウ!



と、博を突き放す。



             



倒れる博。

おいちゃん「博さん!

寅「やってやろうじゃないか!来い!このヤロ!


博、寅を睨んで


博「兄さん!殴るぞ!

おばちゃん「誰か来てえ!!

源ちゃんもタコ社長も怖がる。


博思いっきりストレートパンチを寅に浴びせる。


バシッ!!



             



衝撃で後ろに倒れこむ寅。


おいちゃん「それでいいんだ!それでェ!


倒れた寅、こめかみあたりを押さえながらながら


寅「あれえ?このヤロ!本気でやりやがったてめえ!



             



寅、起き上がって、博に掴みかかる。

寅「チキショー!!


うわああああ!


博、叫びながら

そして間髪おかずに一本背負い


思いっきり地面に叩きつけられる寅。


びびる源ちゃん。



             



寅「お!く…くそ!…


それでも起き上がろうとするが、博に後ろから腕を押さえられ、
地面に這い蹲るしかない寅だった。




             



おいちゃん「どうだ寅、こたえたろ、こたえたら謝れ!
    私が悪うございましたって謝れ!!



寅、何も言わないで、表情を硬くし、博に抑えられている。



             



おばちゃん「博さん

博、押さえていた手をそっと離す。



さくらのテーマが流れる。


おいちゃん、涙を浮かべながら、しゃがみこみ


おいちゃん「みんなで、心配して…、こんど帰って来た時は…、
    今度はなんとかしてえ…、嫁さん見つけてと、
    ううう…本気でそう思ってたのに…、
    よくも、心が…冷てえ人間だなんて言ってくれたな…ううう、
    オレによくもそんなこと言ってくれたな、うううう



おいちゃん、自分の心が伝わらない寅が情けなくて、おいおい泣いてしまう。
第1作の大喧嘩のアレンジ版だ。




おばちゃん「あんた、うううう…とおばちゃんも涙を浮かべている。



             



寅、地べたに座って下を向き考え込んでいる。


博が抱き起こそうとするのを振り切り、座り続ける。



             




そして、みんなが家に入った後、

そっと後を振り向く寅…



寅「バカヤロが…、このやろ…

と、言いながらも、おいちゃんの気持ちを知った寅は目に涙を貯めるのだった。



             



このシーンは博の意外な強さと気迫が表に出たシリーズでも貴重な場面だ。
このあらくれる寅と博こそがこの作品の特徴。
このシ―ンは暴力シーンでは決してなく、
人間のバイタリティと人の深い情を感じさせる実に清々しい演出だったと思う。


        



寅が涙で潤んだ目で見た風景をカメラは映し出している。

               
 ↓


             



この長いシリーズで、寅はほとんどまともに誰とも
殴りあいの喧嘩をしていない。
啖呵のきりあいはあっても、生々しい殴り合いは
避けるのが山田監督のセンスなのだ。
そういうことは実際の世の中にはたくさんあっても、
この映画の中では表現したくはないのだろう。
そういう意味では、この第3作の喧嘩は、珍しい貴重なシーンともいえる。
もちろん、脚本にも、この喧嘩のシーンは書かれているので、
山田監督も了解しての演出だと思われる。




江戸川土手 朝もや



気まずくなった寅は次の朝旅に出てしまう。


このシーンでようやくさくらがちょこっと出てくる。
倍賞さんの出番が少ないのは倍賞さん側のスケジュールの関係も
あったのかもしれないが、それ以上に森崎監督が、
『旅先のリアルな寅』というテーマにこだわったことがあげられる。
森崎さんにとって、第1作で兄妹の物語は
ある程度納まりがついていると思ったのだろう。



寅は相変わらずベージュのトレンチコートを着ている。


寅をかばうさくら。



さくら「だってさあ、お兄ちゃん、
   別に悪いことしたってわけじゃないんだもんね



寅「そうかい


さくら「そうよ、もともとお兄ちゃんのお見合いだったんだもんね。
  それが、仲人役にまわっちゃったらお兄ちゃんだって辛いわよね。

  お兄ちゃんだってさ、ひょっとしたらいいお嫁さんに
  会えるんじゃないかって…、気がしたんでしょ?

  悲しいわね、お兄ちゃんだって…



さくら、寅の傷ついた心と、宴会&ハイヤー費用とらや持ちとは別問題だよ(−−)
寅は可哀想だから費用をとらや持ちにしてもいいという道理はない。




             




メインテーマが静かに流れ始める。


寅、涙を潤ませてしんみりしている。

さくら「どうしても行っちゃうの?

寅「うん

さくら「止めても無駄ね

寅「ああ



             



博「兄さーん!と向こうから走ってきて



博は昨晩のことを謝る。


博「兄さん、昨日はどうもすいませんでした


博の寝癖の髪の毛がなんともいいねえ〜(^^)



             



寅「いいってことよ

博「あの…、その、何て言うか、上手くいえませんけれども…

寅「何も言うない、分かってるよ

博「

寅「オレは行くぜ。 あばよ

博「兄さん!

寅振り返り

寅「さくらを頼むぜ

博「はい!

さくら「さくら、幸せになるんだぞ。これから寒くなるからな、
  赤ん坊には風邪ひかすんじゃねえぜ


さくら「うん

寅「あばよ



そのとたん、ステンと転んでしまう寅。


寅「あ!!


             


さくら「お兄ちゃん

寅、照れながら、

寅「あははは、すべっちゃった。…あばよ!


さくら「お兄ちゃん!もうすぐ冬なんだから、温かくしなきゃだめよ。

  もう素足じゃ寒いわよーッ




寅、土手を歩きながら、ちょっと振り向いて、笑って去っていく。



             




土手に上がり、後姿の寅を見送るさくらと博。



             



そっと博と手を繋ぎながら、兄の行く末を案じる妹だった。



こういうおしゃれな寅もたまにはいいではないか。
トレンチコートは第18作の夢「アラビアのトランス」でも登場。


ところで、私はこの時の寅を見送るさくらと博の姿が好きだ。
全48作中、私が最もさくらと博にリアリティを感じたのが
このシーンだ。

私はこのシーンの二人の立ち姿が、そのあり方が好きなのだ。

          
 ↓
        





一ヶ月後、柴又帝釈天参道



             





とらや 店


タクシーがやって来る。


おいちゃんとおばちゃんが、このシリーズ最初で最後の
夫婦水入らずの旅行に出かけるのだ。


先日の寅による大散財にもかかわらず、夫婦そろって旅行しようってんだから、
とらやはかなり景気がいいのかも(^^;)
それも電車を使わずタクシーだなんて。



みんな見送りのために店先に集まっている。
(博、源ちゃん、社長、女店員の友ちゃん)



社長「いいねえ、二人で温泉に行くなんて、ちょっとした新婚気分だね


おいちゃん「冗談じゃねえよ、今更新婚気分なんか出せるかよ、考えてみろよ、え、
     見てくれ、この
ババアだぜ

社長「フフフ

おいちゃん「こいつと二人っきりで旅行するんだよ、気分が出るかよ

おばちゃん「そりゃ、こっちの言うセリフですよ

みんな大笑い。

社長「まあまあまあ、ゆっくり骨休めしといでよ、いろんなことがあったからね。
  寅さんのことやなんかでさ


なに言ってんだ、あの宴会一緒になって盛り上がってたくせに(−−)

おいちゃん「ほんとだ



ここで、おいちゃん予言めいたことを言う。

おいちゃん「これが旅先で寅さんにばったり会ったってなあたり(^^)

源ちゃん、大笑い。

おばちゃん「悪い冗談だよ


一同「ハハハ


この手のギャグは、第32作「口笛を吹く寅次郎」でも、
備中高梁に法事に行くさくらたちに、御前様が使っていた。

    

御前様「ぱったり、寅と会うたりしてえ…
おいちゃん「は…
御前様「いや、冗談冗談、ハアア!ハアア!ハアア!といつもの御前様笑い(^^;)




               



社長「寅さんじゃないけどね、ひとつ万歳三唱といくか

おばちゃんたち照れる。

社長「車竜造夫妻の壮途を祝して、それ!
  バンザァーイ!バンザァーイ!バンザァーイ!



みんなも一緒に万歳をする。



             





二人とも四日市で汽車を降りて、

『三重交通』のバスに乗り、一路『湯の山温泉』へ

ビリヂァンとホワイトの組み合わせは懐かしいあの
三重交通バス

両親の田舎が伊賀上野なので、夏休みに遊びに行った時によく乗ったなあ…。




             





三重県 湯の山温泉



終点『湯の山温泉』



             




バスの車掌さん「ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした。
         ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした



おいちゃんたち、バスを降りてくる。

おいちゃん「はいどうも

バスの車掌さん「ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした。
         ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした



おいちゃん「えーっと、えーっと…

と、『紅葉荘』を探すが…

おいちゃん「あのちょっとお姉さん

車掌さん「はい

おいちゃん「紅葉荘ってどこだい?

車掌さん「えーっと…、あの番頭さんです。おじさーん!

朴全さん「あ〜いよォ〜 
左 卜
全さんタバコをぷかあ〜っとふかしている(^^;)

出迎えないんだね、この人は。
こののんびりやる気ない姿は、映画『七人の侍』で、あの『与平』を演じた
ひょうひょうとした朴全さんを思い出します(^^)




             




送迎バス 湯の山ホテルのバスが朴全さんの背後を通っていく。





湯の山温泉 『もみじ荘』 梅の間



おいちゃん「オレ、こういうとこ来るとホッとしちゃうよ

おばちゃん「だけどさあ、あの番頭!

おいちゃん「あははは!ありゃ酷かったなあ、あの爺さんはァ

おばちゃん「ん〜

おいちゃん、こたつに入りながら

おいちゃん「寒いなおい、このこたつ切れてるのと違うか?

と、スイッチをカチカチさせている。


そこへ、女中さんが入ってくる。

女中「ごめんください

おいちゃんおばちゃん「はい


女中「いらっしゃいませ」とお茶を持ってくる。

おばちゃん「お世話になりますよ

女中「宿帳お願いいたします。それと貴重品がありましたらこれに

おばちゃん、財布を取り出し、貴重品入れに入れる。
おいちゃんは宿帳に記入している。


おいちゃん「姉ちゃん、姉ちゃん、あんたいくつ?

女中「あ、フフ…二十一です、フフ

おいちゃん「二十一

女中「フフ



             



おいちゃん「いいなあ、若えのは

おばちゃん「いやらしいね、この人は

部屋の外から女将さんの声


志津さんが入ってくる。


志津さん「ごめんくださいませ

おばちゃん「はい

女中「女将さんです

おばちゃん「へえ

志津さん、部屋に入って、丁寧にお辞儀をし



             



志津さん「いらっしゃいませ。ようこそおいで頂きました。
    行き届きませんが、どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ



おいちゃん「へえ


女将さんが直接挨拶。すげ〜美人。
新珠三千代さん登場。



         

志津さん「おコタ 温まってますかしら?関西の人は「おコタ」と言う(^^)。

手を入れて

志津さん「あら?冷たいわよ

おばちゃん「切れてるみたいなんですよ

志津さん「まあ…、気がつきませんで、すぐに番頭をよこしますから

おいちゃん「いえいえ、もう、へへ

志津さん「あの、なにかございましたらご遠慮なく申し付けてくださいませ。
   長らく手を入れておりませんので、
   近頃の新しい旅館に比べますと、
   お客様にご不自由をおかけいたしておりますの。
   (では、)すぐに




             



おいちゃん「いやどうも


と、番頭を呼びに部屋を出て行く。

おいちゃん、見とれてお口半開き(^^;)



             



おばちゃん「へえ…、ちょいと

おいちゃん「ん?


おばちゃん「丁寧な旅館だね〜、女将さんが出てきて、
     あんた挨拶するなんて、なかなか出来ないことだよ



おいちゃん「まったくだなあ、しかし驚いたなあ…

おいちゃん、女中さんに


おいちゃん「姐さん、姐さん、あの人旦那いるの?
     と、親指突き出す。
 下品…ヾ(^^;)



女中さん「え?亡くなったそうですよ

おばちゃん「へえ…

おいちゃん「亡くなったの。じゃ、さだめしモテるだろうな、おい

女中さん「そりゃあ、モテるなんてもんじゃないわね!

おいちゃん「ほー…

女中さん「なにしろね、お客さんで、女将さんの魅力に取り付かれてね、
    そのまま居ついて番頭になったって人もいるくらいなんですよ!




             



おばちゃん「あら

おいちゃん「へー、そんなヤツいるの?

二人して「ハハハ



             



おいちゃん「しかしそいつの気持ちわかんねえこともねえな。
    オレだってなりてえくらいだもん
血続きだねえ(^^;)


おばちゃん「バカだね


おいちゃん「へへへへ

女中さん「じや、ごゆっくり」

おいちゃん「はい、フフ

女中さん「あ、あのね、今その番頭さん、コタツ直しに来ますから

おいちゃん「うん

女中さん「よーく顔見といてください

おいちゃん「バカ面を!ハハハ

みんなで「ハハハ



             



女中さん、廊下に出て大声で番頭を呼ぶ。


女中さん「寅さァーん!!


おいちゃんたち「!!!!!


寅の声「おーい!!



おいちゃん、饅頭くわえたまま唖然。

おばちゃん、お口ポカン。




             




なんと寅はこの「もみじ荘」で番頭をやっていたのである。
これまたいつもどおり天文学的確立で鉢合わせ(^^;)



これは、ただじゃすみませんよォ。


女中「コタツ壊れてるの梅の間よ−


寅「ホイ来た梅の間、
 
そーかそーか。草加越谷千住の先だと!


これは江戸期の将棋や祭の地口、へらず口、無駄口、付け足し言葉
ふつう世間に行なわれている成語に語呂を合わせたことばのしゃれ
草加、越谷、千住の先よ、幸手、栗橋まだ先よ 


おいちゃん「おい、つね、なんかオレは悪い夢見てるんじゃねえかな…



寅登場!



寅「どうもお客さん、御不自由おかけしますねと、とことこやって来る。

おいちゃんとおばちゃんささっと散らばるどーせ、ばれるってヾ(^^;)


寅「せーのっと

と、こたつの布団をまくって