バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第3作 男はつらいよ

1970年1月15日封切り

















一筋縄ではいかぬ厄介な男への回帰     寅次郎の原点を追い求める旅




夜が冷たい心が寒い、渡り鳥かよ俺等の旅は、風のまにまに吹きさらし。


山田監督の中に温めてきた人間像は、古くは昭和18年に作られた稲垣浩監督の「無法松の一生」を源流として、
自作の1964年の「馬鹿まるだし」の安五郎を経て、自ら脚本を書いたフジテレビのドラマ「男はつらいよ」の寅次郎でひとつの帰結点を作り得たのだ。
これらの人物は現在私たちが知っている車寅次郎よりもかなり煮ても焼いても食えない、文字通り「ヤクザな兄貴」だったわけだ。

そして山田監督は、テレビドラマの成功のあと、遂に失敗は許されないシビアな状況の中で映画版「男はつらいよ」第1作を制作する。
映画になった寅次郎は「馬鹿まるだし」の安五郎や、テレビドラマの寅次郎より洗練され、柔らかくなり、『渡世人』のイメージは小さくなったとも
言えるだろう。それゆえに多くの人々が自分に照らし合わせやすくなり、すぐさま人気を博し始めたのだ。そしてその直後に作られた
第2作「続男はつらいよ」もテレビ版の物語をかなり採用したこともあってまたもやヒットした。気を良くした会社側に、矢継ぎ早に作ることを
指示された山田監督は、さすがにスケジュール的にキツイと感じ、とにかく、第3作は脚本だけは協力するが、監督は他の方にして欲しいと
願い出たのだ。

そこで真っ先にお呼びがかかったのが、森崎東(もりさき あずま)監督だ。

TV版「男はつらいよ」の脚本と、第1作「男はつらいよ」の脚本とに携わった森崎東監督はこの映画を引き継ぐに相応しい人選だと思う。
森崎監督は、山田洋次監督・小林俊一監督と共に『男はつらいよ』をTVドラマから映画版まで育てて来た、もう1人の生みの親にあたる人だ。

ちなみに、森崎監督と言えば私などは『生きてるうちが花なのよ、死んだらそれまでよ党宣言』がとても印象深い。
世の中の泥にまみれてあがき、それでも力強く生き抜く庶民のバイタリティを描いた危ない傑作だった。
近作の「ニワトリはハダシだ」も見たが、これらの作品に共通している、倒れてもまた立ち上がる庶民の底なしのパワーは、
見ていて爽快感すらある。【おっとどっこい生きてるんだよ!ざまあ見ろ!】って感覚だ。それは第1回監督作品である「女は度胸」
から続いてきた『どぶの中に咲く蓮の花』の感覚だ。これが徹底したリアリストであり、同時に大いなるロマンティストでもある彼の世界観なのである。

あの処女作である『女は度胸』という映画は活きが良かった。親子兄弟三者三様ブザマな男たち。(河原崎健三、渥美清、花澤徳衛)、
そしてあたかも人生を諦めたかのようにただ毎日黙々と内職をこなす人生の達人である母親(清川虹子)。
彼らの生々しい人生模様が印象的だった。

『涙と一緒にパンを食べたことのない人には真実というものは分からない』この「女は度胸」で清川虹子さんがゲーテの
『ウィルヘルム・マイスターの修行時代』からの言葉を読むが、あの映画は母親役の清川さんの存在が渋く光っていた。

夜明けの海で結婚を決意した愛子を演じる倍賞美津子さんがラストでこう言うのである。

「私が年を取っておばあちゃんになって死ぬ時になっても私この太陽を忘れないだろうな」

彼女のこのセリフの鮮やかさと泥臭さが第3作「フーテンの寅」へ繋がっていき、人間車寅次郎、渡世人車寅次郎が生き返るのである。

『女は度胸』が公開された当時のキネマ旬報を読んでみると、キネマ旬報の編集長の白井佳夫氏はその年の日本映画のベストワンに
選んでいるほどだ。1969年は「男はつらいよ」「続男はつらいよ」が封切られた年であるのにもかかわらずである。
『完成を意識せず、揺れ動くエネルギーと、底力のあるバイタリティを秘めた映画』だと注目しているのである。



                『女は度胸』の夜明けのシーン
             



ちょうど、この第3作「フーテンの寅」に関しても、森崎監督は、監督を引き受けるのなら、自分の思う生々しく力強い人間寅次郎を表現したい、
そしてちょっと厄介な渡世人寅次郎の片鱗も入れてみたく思ったのだった。山田監督の描くソフトタッチでしっとりとした情緒溢れる寅次郎とは違い、
ギラギラ眼光が鋭く泥の中でもがいている寅次郎を見事に描ききっている。第4作「新.男はつらいよ」の小林俊一監督もそうだが、
山田監督とはまた違ったもう片方の封じ込められかけた「男はつらいよ」が燦然とそこに輝いているのである。キャストも、第1回監督の「女は度胸」
のみなさんが大勢出演されている。


まだまだ演出に荒さが見られるものの、全48作中、寅が最もパワフルで、最も悲惨で、最も打たれ強かったのがこの第3作「フーテンの寅」である。



また、この作品では珍しく、寅は最初だけ柴又に滞在するが、そのあとは旅の空で、独りで自分の世界を作っていくのである。
本来寅は家出をして以来20年間柴又には帰還しなかったわけだし、そのあとも一年の大部分を旅を住処として暮らしているのである。
森崎さんは、そのような寅の人生の大部分をしめる『旅を日常とした渡世人の生活』を描いてみようと思ったのだ。だからこそ、柴又にいる時間が
他の作品と比べて極端に少ないのだ。『旅を日常としてしまった男』としての『人間車寅次郎の日々』に迫ろうとしたわけである。
なんとまっとうな発想だろうか。寅という人間を知るヒントは、みんなが待ってくれていてさくらたちに甘えていられる柴又とらやではなく、
独り淋しく生き抜く旅の空にこそあるのは明白なことなのだから。




とらやの温かさと旅先の寒さ

それゆえ、寅の故郷の象徴であるとらやには長居をせず、旅に出て、湯ノ山温泉に逗留し、恋敗れても柴又には戻らず、そのまま九州は鹿児島に
旅立っていくのである。先ほども書いたが、ある意味、これこそが本来の寅の日常だとも言える。20年間寅はそのように生きてきたのだから。
森崎監督は執拗にそこの旅人としてのリアリティにこだわるのである。

そしてとらやのみんなは、そんな意地っ張りでフーテンで孤独な寅をテレビで垣間見て涙を流してしまうのだ。

…、なにが子供だい…、そんなものどこにいるんだい…ううう…バカだよ、あいつはほんとにバカだよ…

と、テレビ画面を見ながら旅先での寅のことを思い泣いてしまうおいちゃんの心がせつなく伝わる名場面が、こうして生まれる。
寅が柴又へ帰らないからこそ流すおいちゃんの『旅先で独りさすらう寅』を想うつらい涙だった。



             





ふられてもまた立ち上がる不屈の精神


このシリーズで、寅は多くのマドンナに失恋するが、途中第10作からは逆に惚れられてしまうのだ。その後寅が怖気づいて
スゴスゴ逃げるという得恋的失恋が多くなってくる。しかし、よくよく考えてみると、私たちが寅にほんとうに期待するものはマドンナに
惚れられ、求愛される姿だろうか。いやそうではないだろう。寅の凄みが分かるマドンナなどほとんどこの社会にいるわけがないのだ。

私たちが寅に求めていたものはふられても馬鹿にされても、無欲に突っ走っていく寅であり、ステンとこけてしまっても、ニカッと
笑って『どっこいまだまだ生きてるぜ』と啖呵をきる寅なのではないだろうか。寅に両得のスーパーマンを求めてはいけないのである。
威勢が良くて、渡世人で、それでいてブザマで滑稽だが、心優しく美しい女にはもてまくるなんてなんでもありを、期待し始めると、
急に寅から生気が失せ、なにか空々しい作り物のヒーローになっていくのである。そんな人間はありえないのだ。
それはある意味イメージの退廃であり、観客への媚でもあるわけだ。もちろん山田監督がそのような状況に陥りそうになりそうに
なりながら、危ない綱渡りをしつつも、寅から決して生気を失わせることがなかったのは、ひとえにもの作りをする人間としての、
これこそが「才能」というものだろう。


そして山田監督が満州からの引揚者であり、故郷というものを遂に持てなかった人間であること。そして彼が家庭的にもその青春後期には
決して恵まれない道のりを一人歩まねばならなかったことが、常に『飢えたる創作者』として『永遠の漂泊者』としてもの作りの現状に胡坐を
かかなかった、もしくはかけなかった第一要因だったと私は密かに思っている。

しかし、森崎監督は、そのような絶妙なバランスをとり続ける山田監督の中庸さと品格が、かえって寅次郎と言う人間を見えにくくしてしまって
いるのではないかと考えたのかもしれない。この第3作の脚本には森崎監督の名はない。山田洋次、小林俊一、宮崎晃という「続男はつらいよ」と
同じメンバーの三人で書き上げたと言うことになっているが、森崎監督も演出をするリーダーなのだから相当脚本つくりに参加していたのかも
しれない。まあ、どちらにしても森崎監督は演出をした。当たり前だが、現場監督はやはりもっともその作品に活力を与えるのだ。

この第3作「フーテンの寅」を見ると分かるが、もう最初から最後まで『森崎ワールド』が広がっているのである。


実を言うと…、実際、『準備稿』の段階までは、森崎監督は自分で独自の脚本を書き進めていたのであるが、
その内容は、それまでの山田監督の世界とはかなりかけ離れた内容になっていた。

物語的には、寅は、ラストにしか柴又に帰らず、ほとんどは『旅の中』で↓のようなワイルドな物語が繰り広げられるのである。

昔のテキヤ仲間の娘を故郷に届けることになった寅がその娘を親戚のお志津さんに預け、自分は宿屋の番頭に落ち着く。
刑務所から出てきて疎遠になっていたお志津さんの夫を堅気にするべく一芝居打つ。ここでちょっとした行き違いがあり、
マジでこの映画シリーズではあるまじき刃物沙汰になったりヤクザとの抗争に巻き込まれそうになるのだが、
まあ、最後は万事上手くいって志津さんと夫は復縁し、寅は故郷の柴又に帰っていくという物語だったのだ。

しかし、これはもうひとつのリアルな『渡世人』の寅次郎であった。
結局は、今までの世界を崩されたくない松竹と山田監督の『待った』が入り、この物語はお流れになってしまったが、
本編で寅が染子の父親に仁義を着るシーンに森崎監督の片鱗が覗いている。

まあ、ともかく、山田監督の世界を崩すことなく森崎ワールドを入れ込むことを受諾した森崎監督は、脚本に沿いながらも
フーテンの寅をどの作品よりも打たれ強い強靭な男としてスクリーンで暴れさせたのだった。転んでもタダでは起きなかったのである。



とにかくこの作品の寅はやたら打たれ強い。

宴会で「お志津!」と言って客や仲居たちに笑われようが、マドンナに見てみぬふりをされ、利用され、最後にお礼の挨拶さえもされなかろうが、
番頭に面と向かって「バカはおめえよ」と言われようが、ぐっと堪えて立ち上がるのである。不感症なのではない。また、寅という人物を、
お人好しのバカという型にはめて軽く扱っているのでもない。ひたすら寅の心の海が豊穣なのである。
人一倍傷つき、涙を流す寅なのだが、踏まれても起き上がる豊かな清水が心に流れているのだ。この「庶民の精神の逞しさと健康さ」は
森崎監督の世界だ。

すべては最初から最後まで映画を観さえすれば分かることなのだ。

そして逆に、そのような、あまりにも露わな森崎監督の精神の露出表現は、どうしてもニヒルな側面をその青春期に持つ山田監督にとっては
正視できないものだったのかもしれない。それらはあまりにも山田監督にとって『生』であり『愚直』なのだ。

ここに実は山田監督のネックがある。

山田監督がこの第3作と噛み合いが悪いのもそこに原因がありそうだし、この作品が不当に邪険に扱われてきた側面があるのも
同じ原因だと思われる。

この作品の、不完全で荒い演出の向こうに広がっている『揺れ動くエネルギーと、底力のあるバイタリティ』を、
私たちは今こそ両眼で正視し、深く感じ、そして再評価しなければならないのではないかと思っている。



              




ところで、劇中で寅が『旅笠道中』の二番を何度も歌うが、あの歌の一番の歌詞に森崎監督の描こうとした寅の旅先の暮らしがあり、
その自由でかつ孤独な人生の中にこそ、寅の本質が渦巻いているのである。

夜が冷たい心が寒い、渡り鳥かよ俺等の旅は、風のまにまに吹きさらし。



それでは本編をどうぞ、








本編




松竹富士山



             






蒸気機関車が煙を吐き出しながら疾走する。


流れる木曾節


             





披露宴の木曽節が流れる信州の旅館。


木曽奈良井の旅館 『越後屋 (ゑちごや)』 


この宿は実際にあり、創業は寛政年間。

奈良井宿は第10作でも出てくる。登と寅は奈良井駅前の旅館で再会していた。





越後屋二階 披露宴座敷



二階では結婚披露宴の真っ最中。

『伊勢屋』のオヤジが帰ろうとしている。


             



この『伊勢屋』も実はこの奈良井宿の代表的な宿屋のひとつ。

オヤジ「おい伊勢屋!帰っちゃいけねえ」と、二階から叫ぶ声。

無理やりまたもや戻らされてしまう伊勢屋さん(TT)


二階では、木曽節を歌い、踊っている。

神妙な顔つきで座っている新郎新婦。



             



木曽のナァー なかのりさん
木曽のおんたけ ナンチャラホーイ
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
袷ナァー なかのりさん
袷やりたや ナンチャラホーイ
足袋そえて ヨイヨイヨイ

心ナァー なかのりさん
心細いよ ナンチャラホーイ
木曽路の旅は ヨイヨイヨイ
笠にナァー なかのりさん
笠に木の葉が ナンチャラホーイ
舞いかかる ヨイヨイヨイ

木曽のナァー なかのりさん
木曽の名木 ナンチャラホーイ
ひのきにさわら ヨイヨイヨイ
ねずにナァー なかのりさん
ねずにあすひに ナンチャラホーイ
こうやまき ヨイヨイヨイ

三里ナァー なかのりさん
三里笹山  ナンチャラホーイ
二里松林  ヨイヨイヨイ
嫁ごナァー  なかのりさん
嫁ごよくきた  ナンチャラホーイ
五里の道  ヨイヨイヨイ

以下延々と続いていく。



寅は風邪をこじらせ、この部屋の近くで泊まっていたが、あまりにもうるさくて
一階に部屋換えを頼んだのだった。

オヤジ、二階の廊下に出て

オヤジ「おい伊勢屋!くそったれ、はよ上がって来い!

女中役の悠木千帆さんが寅の布団を下に運ぼうとしている。

オヤジ「なんだこの布団は?

女中「おまえらの結婚式で宿替えじゃ!

与太っているオヤジたちのところを風邪を引き、マスクをしたフラフラの寅がすれ違う。

オヤジ「こら!しみったれた顔をすんな!

と寅に絡み無理やり酒を勧める。

オヤジ「貧乏人!飲め、こら!飲め、俺が飲ましてやるからな



             




寅、お猪口を持ちながら大きなくしゃみ。

寅「ハークション!!」と杯の酒をぶっかける。」

酔っ払いのオヤジたち、あたふたと階段を転がっていく。

女中さんもみんなの下敷きになって目がペケ。



             




一階 荷物部屋


部屋が満室なのか、寅の持ち金が切れたのか、
うらびれた荷物部屋のようなところへ引っ越す。

風邪をこじらせ、宿のこたつで寝込んでいる寅は、みなしごだった女中と話しているうちに、
とらやのみんな写した家族写真を見せ、故郷柴又を思い出すのだった。


女中「あんた

寅「ん?

女中「家や親兄弟があんのかね?

寅、帽子をポイっと下に投げて

寅「なにを言ってやがるんだい、人のこと野良犬と一緒にしやがってよ、コホコホ、
 はばかりながらこのフーテンの寅さんな、チャキチャキの江戸っ子よ。
 えー、故郷(くに)に帰りゃあ、ほれ、この通り、れっきとした家族が待ってらァ、
 ちゃんとォ、コホコホ


と、女中にとらやのみんなと写した写真を見せる。


こんなもんいつ写したんだ ヾ(^^;)


女中「へー、これお客さんちの人たち?

寅「そうよォ

女中「ねえねえ、これ、このきれいな人奥さんけ?

寅「え…まあなあ」 おいおいそれはさくらヾ(^^;)

女中「可愛い赤ちゃんねェ、これお客さんの赤ちゃんずら

寅「そ、そら、そうだいおいおいおいヾ(−−;)



             



女中「この人たち誰だね?

寅「おふくろとオヤジだよまあこれは…気持ちは分かる分かる(^^;)


女中「うらやましい…」と、泣いてしまう。

寅「なに泣いてるんだい?あ、…はは、おめえウチ帰りたくなったな?

女中首を振る。

寅「えー?

女中「おら、みなしごの家なしだい

寅「みなしご?そりゃ可哀想だな…。
 元気出せよ。おめえ、きといい婿さんめっけて幸せになれるぞ


女中「けへ…、めっかるかな?」と照れ笑い。

寅「めっかるとも、めっからなかったらオレが婿さんなってやるよ

女中「あ、やだあー、そしたら奥さんに叱られるずら」と照れ笑い。

寅「あ、…そうか、ハハハそうだな

寅、写真にキスをしながら

寅「母ちゃん、ごめんよかんべんな、(チュッ、チュッ)あのな…(−−)



             



女中「あらー

寅もう一度

寅「フフ(チュッ、チュッ)悪乗り(−−;)

女中「フフフ

と、恥ずかしがって出て行く。


このように女中は勘違いしてさくらを奥さん、満男を寅の子供だと間違えてしまう。
寅は見栄を張ってそうだと肯定する。



やはり寅は自分だけの家族が欲しいのだ。


寅「いくら可愛くっても妹じゃしょうがねえや、はああ〜

と、写真を手から離して、我ながら呆れている。



             



みんなにっこにこのとらやのみんなの写真。

中村はやと君かわいい〜(^^)



しかし、いったいいつ撮ったんだよ。第2作ではほとんどそんな暇なかったが、
唯一、時間があるとすれば夏子さんの家に通っているころかな…。



             



ふーっと、淋しく息を吐く寅。


二階からは相変わらず『木曽節』が延々と歌われている。



機関車の汽笛


プォーッ!シュシュシュシュシュシュ!


煙が部屋に入ってきたので窓を閉めるのだが…、親指をつめてしまう。

寅「はあ〜…」

痛がって、指をなめる寅。


その直後くしゃみをして今度は窓が外れる。


寅「へックシュン!


全て裏目(TT)


寅「落ち目だなあ〜…


旅先ではこういう孤独や侘しさはつきもの。
踏んだり蹴ったりでも意地を張って耐え抜く寅でした。ああ…(TT)




             



女中は勘違いしてさくらを奥さん、満男を寅の子供だと間違えてしまう。
寅は見栄を張ってそうだと肯定する。そしておいちゃんおばちゃんも父母だと嘘をつく。

この発言は、巷で時々言われているような、さくらへの兄妹の関係を超えた
特別な愛情ではなく、この話の流れ的には、あきらかに自分を待ってくれている
家族がいてほしい寅なのだ。

そしてラストでも、志津さんやお嬢さんの道子ちゃんを自分の『家族』だと言ってテレビで
嘘をついてしまうのである。

やはり寅は自分を待っていてくれる『家族』が欲しいのだ。






メインタイトル ゆったりとした音楽で


男はつらいよ




                





フーテンの寅



             




わたくし、生まれも育ちも
 葛飾柴又です。
 帝釈天で産湯をつかい、
 姓は車、名は寅次郎、
 人呼んでフーテンの寅と発します。




♪俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、
 分かっちゃいるんだ妹よ、
 いつかおまえ
よろこぶような
 偉い兄貴になりたくて、

 奮闘努力の甲斐もなく、
 今日も涙の、
 今日も涙の陽が落ちる
 陽が落ちる。



♪どぶに落ちても根のある奴は
 いつかは蓮の花と咲く
 意地は張っても心の中

 泣いているんだ兄さんは
 目方で男が売れるなら
 こんな苦労も
 こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪





第3作は懐かしい第1作の「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」の歌詞が
使われている。原点に帰りたいってことだろう。

今回は「おまえが」じゃなくて「おまえ

「心の中じゃ」ではなく「心の中
」と歌っている。






強い風の中、
神社の境内で寅が『ガマの油売り』のバイをしている。


なんとも精悍で溌剌とした渥美さんが風吹く中、きびきびと刀を振りかざすさまは、
見ていてただそれだけで嬉しく気持ちがいいものだ。



             


このバイは、まず、伝家の宝刀で自分の二の腕に切り傷を作り、ガマの油をつけて止血するのだ。
この口上の面白さは、油の効能以上に刀の切れ味を示す部分にあると言われている。

紙を二つ折りに切っていき、「一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚、八枚が十六枚…
と徐々に小さく切っていく。
紙を細かく次々に切ることで、客寄せをし、腕に刃を当てて傷を付けて血が出ることを見せる。
その切り口にガマの油を塗ることで止血作用が明らかなことを示す。この口上に前後して、
ガマの油を塗った二の腕は刃物で切ろうとしても切れず効能があることをも示して、客は馬の油だと
分かっているのだが、口上と実演の鮮やかさにお金を出したくなる。と、まあこういうことだ。

筑波山のガマの油売りが有名。



田舎の阿弥陀堂のような場所で易のバイをする寅が昼ごはんを食べている。
それを村の子供たちがじーっと見ている(^^;)



歌の中のミニコントは、寅が農道を歩いているとテーラーがやって来て
かっこよく道を開けて、どうぞとポーズしたのに、テーラーはその直前で
曲がってしまい間が悪い寅。




             



土手で高校生の自転車通学とすれ違い、ちょっと肩に触ったら、ドミノ倒しで
みんなこけてしまう。




             



最後は海岸で自分のかばんに座ったら寅もこけてしまう。


というミニコント3本立て。




監督   森崎  東




                      










葛飾 柴又 帝釈天参道

飴や団子を作っている様子が映し出される貴重な映像。

一折小が200円、大が300円。

ふたつとも、物凄い分量入っている。

昔は安かったんだねえ〜(−−)


おもちゃ屋

『サスケの射的』と『フェラーリのプラモ』


飴をぐるぐる練り上げる横で、芋飴、や千歳飴をリズムよく包丁で切っていく。飴屋さん。



               




源ちゃんが、とらやの箱を持ちながら参道を帰っていく。






とらや 店


客で大賑わい。


源ちゃん「おかみさん、お寺へ団子届けてきました

おばちゃん「はい、ごくろうさん、今度はね、
     川千家さんにお土産30箱届けておくれ。あそこにできてるからね




              



源ちゃん「はい」と団子製造室へ。

源ちゃん「おかみさん、団子が噴けていますよ

おばちゃん「あ、そうかい、おろしといておくれよ、すまないね

と、言いながらおばちゃん折に団子とあんこを休む暇もなく詰め込んでいる。

源ちゃん今回はこのシリーズで紛れもないとらやの店員さん。
題経寺の手伝いはどうしたのだろうか?




タコ社長入ってきて

社長「おばちゃん、客が来るんだ。団子十箱ばかり作っといてくれよ、200円の


おばちゃん「まいど、ちょいと30分ばかし待ってよね

社長「ああ、いいよ

おいちゃんもずっと包装紙に折を包んでいる。

社長「忙しそうだね

おいちゃん「おう、貧乏暇なしだよ。ウチはがねえからな

社長「どこでもおんなじだよ、こういう時は

女店員さん(友ちゃん)、忙しそうに前を通っていく。

           
  忙しく働いている『友ちゃん』 
           


この店員さん第2作から第5作まで出ずっぱりだが、一切役者さんの名前が
分からないままだ。(第1作は違う役者さん)
第46作から出演した「カヨちゃん」とは扱われ方にかなりの差がある。


このシリーズで第2作から第5作までかなりの長時間スクリーンに映っているにもかかわらず、
さくらにもおばちゃんにも一度たりとも名前を呼ばれることもなく、ただ黙々と働き、
彼女の役者名すら分からないのはあんまりだと思うのだがどうでしょうか。
この女店員さんの女優名が分かる方メールをいただければ嬉しいです。

ただ、この友ちゃんは、カヨちゃんとの共通点もあって、第2作では寅のことを知らないのだ。
ビールの注文を寅から取っていた(^^)
これは遥か、ず〜と後に第47作「拝啓車寅次郎様」で店員のカヨちゃんが同じ間違いを犯し、
寅に団子を出していたことに繋がっていく。


一応第4作ではたった1回だけ『ともちゃん』とおいちゃんに呼ばれていた。
脚本にもこのシーンでは『友ちゃん』という漢字が当てがわれていた。


           
 第5作ではしっかり長い時間映る『友ちゃん』              
              






おいちゃん「こういう時はね、寅でもいいからいてくれるといいと思うよ本当に

社長、タバコに火をつけながら

社長「便り無しかい?


おいちゃん「あるわけねえだろ、おめえ

社長「こないだの縁談ねえ

おいちゃん「

社長「そうとう向こうじゃ乗り気なんだがね


おいちゃん「縁談って、あの、川千家の女中さんの話かい?

社長「相当変わりもんだって、念を押したんだけどね

おいちゃん「うんうん

社長「それでも向こうはいいって言うんだよ

おいちゃん「へー、そりゃそっちのほうも相当変わりもんだなー

社長「こりゃいい話だと思うんだけどねえ…。
  なにしろご本人が行方不明じゃ、話にならないやな、ハハハ


おいちゃん「まったくしょうがねえバカだよ、本当に

店員「おまちどうさま時々セリフがある(^^)

リリリリーン!!

おいちゃん「おい、つね電話だぞ出ろよ

おばちゃん「あんたでておくれよなんだいタバコふかしてるくせに

おいちゃん「フン、オレがタバコ吸ってると電話鳴るんだからなまったく…

おいちゃん「へえ、とらやでござんすが、もしもし?あれ!?お前寅さんかい?

社長「へッ?

おばちゃん「寅さん?

おいちゃん「ちょ、ちょっとまてよお前一体どこから電話してんだい?え?



             



寅はとらやに入りにくくて、わざわざ「とらや」の店先から「とらや」へ電話をかけているのだ。
このギャグは後に第7作「奮闘篇」でも使われる。





おいちゃん「旅先?旅先ってどこだよ?東北方面かい?北陸かい?え?
     どうでも良くないよ、え〜?今も噂してたとこなんだよ。帰っておいでよ。
     みんなで心配してんだぜおめえのこと。


寅「ありがとうよ心配かけてすまねえと思ってるよ


この作品ではトレンチコートを着てマフラーをしている寅、ということになっている。

ちなみに、この寅の背広は『吹けば飛ぶよな男だが』の中で犬塚さんが着ていたものと一緒。



             



おばちゃん「ちょっとちょっと、どっからなんだい?

おいちゃん「知らねよ、旅先だってんだ。
     おい、寅さんよもしもし…もしもし?もしもしィ〜??




寅、道からとらやの店先を見ながら

寅「もしもしじゃないよ、ほら、客だよ。どこにィ〜?、
 後突っ立ってるじゃねえかー。ほら、おばちゃんマゴマゴするんじゃないよ




             



おいちゃん「うん、あいよ おい、つね、

おばちゃん「うん?

おいちゃん「表お客だってよ

おばちゃん「あ、いらっしゃい、どうも

おいちゃん「あ ?? え? おい!もしもし、オメェ一体どっから??気づくの遅いよヾ(^^;)



             



社長「おいおい


寅、店に入って来て、

寅「あ、こらどうもお待たせいたしましてハイ、
 どうもお待たせいたしましたね、お団子でございますか
 ハイハイ、ハイ、ただいま、ハイ。おいちゃんよあんこがないあんこが


おいちゃん「おめえ…

寅「いいんだ、いいんだ話は後だよ。すいませんねえ、お待たせしちゃって、いますぐ
  まいりますからね、どうぞ待っててくださいまし。ね、


客「お茶

寅「お茶ですか?ハイハイ、ハイ。ほら、お茶

店員「あ、はい

寅「ほら、すーっとすーっとと注いで注いで注いで注いで、はい。
 電話待ってるよ、ほら、相手が〜


おいちゃん「あ、もしもし

寅「ハイハイ



              



おいちゃん「失礼しました。

寅「どうぞどうぞ

おいちゃん「は…???

寅「オレここにいるよ

             
寅が電話で接客をあれこれ指示。
森川さんと渥美さんのやり取りが笑える電話ギャグでした(^^)



              






とらや 茶の間   夜


一同「アハハハハ


おいちゃん「本当になー、いくら照れくせえたってさ、おい。
     何も家の前来て電話する事ねえよな、
     おらァてっきり仙台か
富山あたりから電話してるのかと


こういうところで自分の自宅がある富山が出てくると嬉しいね。



              



寅「いや、もうおいちゃんよ、その話はこのへんでおつもりにして

『おつもり』とは『お終い』という意味。

おいちゃん「んー

寅「さ、も、もう一杯いこう、もう一杯いこう

寅「お、おっとこりゃ失礼したかな?失礼したかな?

おいちゃん「ねえじゃねえかおい、つけてるんだろ?酒

おばちゃん「忘れてた忘れてた

おいちゃん「ばかだなあ、もうにたぎっちゃってるぞ、おい

寅「へへへへへ、しかしよ、おいちゃんもおばちゃんも
 相変わらずで、結構結構


おいちゃん「相変わらずでもねえよ、もう年だからな。
     あっちこっち故障だらけだよ


寅「うん

おいちゃん「な〜、電話でも言ったろ寅さんがさ、このへんで腰落ち着けてな、
     店手伝ってくれると大助かりなんだけどな〜


おばちゃん「そうしてくれないかね〜。さくらちゃんだって安心するよ。
     ねえ、博さん


博「僕からもお願いしますよ兄さん。
 もうそろそろ旅がらすの生活にもケリをつけてください。



この作品の博前田吟さんはいつもの自然さがちょっと少ないかなって思う。
森崎監督は活きのいい博にしたかったのかもしれない。



             



おいちゃん「どうだい、寅さん?

寅「ありがとう今のおいらにこんな優しい事言ってくれるのは
 オメェさん方だけだ本当にありがとう


おいちゃん「ま、ハハ、しんみりしちゃったな。ま、一杯いこうや。
     え?アチ、アチチチ熱いなあおめえ え?
     煮たぎっちゃってるじゃねえかよ。新しくつけなおしてこいよ


おばちゃん「あいよ

寅「そりゃあ、あっし、正直言ってもう若くはねえさ

寅「旅から旅へのしがねえ暮らしの明け暮れ田舎の商人宿のせんべい布団で
  くるまって天井の節穴眺めてよ、ふっとああ、オレもそろそろ所帯を持って
  落ち着くところへ落ち着かなきゃいけねえかなあ、なんてね、
  ふ、こう思うことがねえでもねえがねえ…


おいちゃん「そうだろう、そうだろうとも

博「それを聞いてほっとしたんですど、実はですね、兄さん

寅「うーん

博「もし兄さんにその気があったらと思って、縁談を用意しといたんですよ

寅「縁談?だ、誰の?



             



博「兄さんのですよ

寅「オレの?

博「ええ、僕は直接には知らないんですが、うちの社長が前から言ってた話でね、
 もし兄さんが帰ってきたらぜひ勧めてくれって言われてるんですよ
 どうですか、兄さん一度会ってみませんか



やっぱり前田吟さん、今回の演技はちょっと一本調子で固いな…。



              前田吟さんにしては珍しい表情
             



寅「うん?う〜ん…んー…ん、と、緊張して、博に酒を注ぐ。

寅「あああ、ねえや

おいちゃん「お、おい、つね、つね!酒がねえぞ、早くしろよ

おばちゃん「あいよ

おいちゃん「寅さんの事はね

寅「うん

おいちゃん「先方にもちゃーんと話がしてあんだってよ

寅「あ?オレのこと?

おいちゃん「うん

寅「へえ、なんて言った?

おいちゃん「フフ、つまりその、キップが良くてね

寅「アハ

おいちゃん「どことなく粋でさ、頼りがいがあってな

寅「ヘヘ

おいちゃん「この昔の侠客みてえな男だってな

寅「へへへ、そ、それで?

おいちゃん「うん、そしたらな、先方すっかり乗り気になっちゃってんだよ。うん

おいちゃん「そりゃもちろんあれだよ、どこ様の金持ちの娘ってワケにはいかねえよ、
     うん、そりゃ
川千家で女中してな、働いてる娘なんだけれども


寅「いや〜おいちゃん、オレは決して金持ちの娘嫁にもらおうなんて気持ちは
 これっぽっちだってありゃしねえよ。なあ女ってのは少し苦労していた方が
 いい嫁になるって言うからね




             



おいちゃん「あ〜そうそうそうそう そのとおりだよおめえ

おばちゃん「とにかく会うだけ会ってみたら、

おいちゃん「うん

おばちゃん「嫌ならことわりゃいいんだから、ねえ、博さん

博「そうですよ今夜にでも社長に話しましょう急ぐねえ(^^;)

寅「こ、今夜?

おいちゃん「おう、善は急げって言うからな早いほうがいいよ

博「そうですよ

おいちゃん「もう一杯行こう

寅「あ、そうか?

おばちゃん「気に入りゃいいけどね本当に

おいちゃん「そりゃあ、おめえ、寅さんにだっていろいろ注文があるだろうけどな〜?

おばちゃん「ね、どんな人がいいんだい?

寅「え?へヘン、オレなんかに別に注文なんかあるわけねえじゃねえかよ〜

博「だけど、こう、好きなタイプってあるでしょう?

寅「ええ?

おばちゃん「ねえ、どんな人がいいんだい?

寅「別に注文なんかあるわけねえじゃねえかよ」と照れる。

博「だけどこう、好きなタイプってあるでしょう

寅「えー、どうせこっちはしがねえ旅がらすよ、贅沢は言えねえよ。
  フフ、まあ、
ババアじゃなかったらいいってとこじゃねえか、イヒヒヒヒ


みんな「ハハハ

おいちゃん「ほんとうに誰でも言いのかい?ババアでなきゃあ

寅「まあ…、しいて言えばさ、次第に好みが露出していく…。

おいちゃん「うん

寅「気立てが優しいって事ぐれえかな



             




おばちゃん「はー、ね、そりゃ大切だよね、うん」と、頷く。

おいちゃん「そりゃそうだ。そのとおりだ。
     女は気立てが優しくなくちゃいけねえな。ほかに何かねえのか


寅「そおねえ、別に取り立ててねえけどもねえ、
 ま、
寝坊の女はいけないな う〜ん

寅「朝こっちはパチ〜っと目が覚めてもよ、
 隣でもってパカーッと大口あいてイビキかいて
 寝ていられたんじゃたまらねえからねえ


おばちゃん「そりゃそうだよね ヘヘヘヘ

寅「う〜ん

おいちゃん「笑い事じゃねえぞ、お前のことだぞ アハハハハ

と、おばちゃんを指すおいちゃん。

博「アハハハハハ博まで(TT)

寅「それともう一つ、ンン。
  朝起きて亭主に冷っけい水でツラ洗わせるのこれ良くないな、
  
ちゃ〜んと温かいお湯が沸いてるって具合にしなきゃ行けねえ



             



おばちゃん「でもさ、朝忙しいからね、女は

寅「それがいけねえんだよおばちゃん ちょっと来なよ

と、小便に行く寅が、おばちゃんを呼ぶ。


おばちゃん「あ?


寅「いいかい、おばちゃん、いくら忙しくたってツラ洗うのは
 たかだか5分か10分だぜ。
 その間ぐらい
ピターッと亭主のそばにいろってんだよ。

 亭主が洗面器の中にスッと手をいれる。
 
後ろに回って丹前の袖が汚れねえようにスッとこう持ってやる。
 その心遣いがほしいってんだよ。
 粋なもんだよ、まったくなあ!エヘへへ はー、分かるか、おばちゃん。

 おばちゃんよう、突っ立ってないでこっち来いよ。

 ええ?覗けって言ってんじゃないんだよ、ほら、
 ちょっとやってみろ、練習してみろ。持ってみろ持って。ええ?


おばちゃん「んー…と、しぶしぶ持ってやるおばちゃん。

おばちゃん可哀想…なんでこんなことを…(TT)


寅「赤ん坊のおしめ取り替えてんじゃねえよ。
 いっ、ったくもう!しょうがねえなあっ」



         



寅「はあ〜あ、おらおら、ほれ

と、水で濡れた手をおばちゃんのエプロンで拭く寅。

おばちゃん「あ、やだよお!いやだよねえ(^^;)

おばちゃん、可哀想すぎ…(TT)

            
ここは、とらやのお手洗いが見える数少ない貴重なシーン。
第2作では、小便をする寅が窓の外から撮られていた。


寅「デリカシーがないなあ〜それは、あんただよ(−−)


この作品では寅は『デリカシー』という言葉を自分の言葉として使っている。
第11作「忘れな草」では


博「なんでデリカシーの欠けたこと言ってくれたんですか!」
寅「なに
デリカシカケタって?」
博「つまり無神経だってゆうことですよ」

というように、博の使う『デリカシー』という言葉がわからなかった。
作品によって違うんだね(^^)




おいちゃん「それじゃ、あの、そのほかに何かあんのか、おい

寅「ま、贅沢言っちゃきりがないよ、んー

おいちゃん「そそそ、そうそう

寅「う〜ん、んー

寅「だけどね、男はいったん敷居またいで表へ出りゃ
 7人の敵ありって言うようなもんだからな、
 うん、汗水たらして苦労して稼いで、帰ってくるんだからさ、
女房としちゃやっぱりツッと
化粧して三つ指の一つもついて、
『お帰りなさいまし、お疲れ様でしたでしょ?』
 ぐれえの事はちょっと言ってもらいたいよねえ? 


          



寅「おばちゃんみてえにザンバラ髪でよ、
 『帰ってたのかい?風呂沸かしておくれよ』な〜んてのはダメだよ、う〜ん。


おばちゃん、集中攻撃にあっています(TT)

寅「
亭主が帰ってくる、
 風呂が先か酒が先かスッと
ツラ見て分かるようじゃなきゃダメ
だよ ねえ!

あ、それからもう一つおばちゃん、
酒、ね、こりゃ難しいよ
酒は人肌。熱くもなしぬるくもなしってね。
うん。こりゃね、燗のつけ過ぎでさ、こうやって注ぐだろ 
ここんところまで持ってくる。
目にツーンと
アンモニアみてえになっちゃうぐれえ燗するようじゃ、
こりゃ、女房として落第なんだよ


おばちゃん、さすがに雨あられの集中攻撃で
かなりふて腐れている。(▼▼メ)



        


寅「亭主が最後の一滴を杯に受けて、チュッとやる。
これをちゃぶ台に置くか置かねえかに、
スッと入れ違いに人肌のヤツがもう一本出てくる。


ここらへんの呼吸を、うま〜く飲み込んでもらわねえと、
気分よく酔えねえよなあ。フフー。

歌の一つも口を出る時はさ、
昼間の疲れで…トローッと眠くなるんだ…ハァ…ァア〜。
とかなり眠そうな寅。

あー、横んなりてえなあ〜と思う時にはさ、スッと枕が出るんだよ
 う〜ん、ねえ



           


おばちゃん、かなり嫌々座布団を二つ折りにして差し出してやる


寅「ボカァ、別に注文するのは…

あ、そうだ、もう一つあるよ、うん。

女にはね、たしなみってもんが必要なんだよな、

亭主の前で持ってさ、よくバタバタバタバタ、
『あ、あたしオシッコニ行こう』なんておばちゃん、良くやってるじゃないか、ね?
『あ、わたし、もっちゃうもっちゃうもっちゃう』
そりゃ行っちゃいけないって言わないよ。行ってもいいんだよ。

ただ、男の気がつかねえようにスッと用を済まして帰ってくる。
そういうたしなみが欲しいと言ってる訳だ。

ハア〜〜ま、他に、特別注文て言うのは…も、無いね、うん。じゃ、寝ますか。
ハァ〜ァ、グゥ〜、


と、瞬時にイビキをかいて寝てしまう寅だった。


第9作「柴又慕情」で下宿探しをする寅が、不動産屋のオヤジに、
別に特別注文はないと言いながらも、理想の『大家さんの気質』について
長々としゃべるシーンは、このあたりのアレンジ版だと思う。



             

               



みんな呆れて「」 心の中で、だめだこりゃ ┐(-。ー;)┌


結局寅は、自分の夢の中で遊んでいるだけで、
現実と何もシンクロさせていないのだろうね。
こんな女性がいたら、さぞかし男は幸せだろう、と、
思えるような作り物の女性像だったわけだ。
このような話はまじめに聞くだけ損。





翌日 とらや 茶の間



2つの鳥かごに鳥がいる。文鳥とセキセイインコ
おいちゃんは文鳥が好きそう。


社長「冗談言っちゃいけないよ、今時そんな女はね、
  日本中、鐘や太鼓で探したっていやしないよ。
  なに言ってるんだよ!
2階の寅に聞こえないように若干小声。



              



博「僕もちょっと贅沢だと思うんですよ

社長「贅沢なんてもんじゃないよ!てめえの事考えてみろってんだよ
  悪いけどね、
体のいい失業者だよ、おめえ

キツイね相変わらず。あんたも体のいい倒産工場じゃないのかい。(−−)




おいちゃん「そう言うなよ、その辺が分かってないのが
     あいつのバカなところなんだから


社長「いくらバカだっ…!

寅が二階から下りて来る。

寅「おはよッ!はー、おいちゃん、

おいちゃん「おう

寅「オレ、ダチ公とこ行ってね、

おいちゃん「うん

寅「ヨウラン借りてくるよ

おいちゃん「何だい、ヨウランって?

寅「え?見合いの洋服よ

おいちゃん「洋服?

寅「へへ、きのうお見合いするって言ったじゃないか へ、何時っからだい?

社長「一時だよ一時

寅「一時かあー、じゃ、だいぶんあらァへへっ

寅「なあ、おいちゃんよ

おいちゃん「うん?

寅「鳥もツガイで温めあってるじゃねえか へへヘヘへ!
 は〜、めんどくせえな〜。ちょっと行ってくら


と、凄い乗り気の寅だった。



             






午後一時 川千家


社長「大将!大将〜った…あ、とと、寅さんたち来てるかい?
   じゃあ、すぐ始めるからね、へへ部屋はどこだい、部屋!部屋は!?




             



キャッシャーのカウンターで川千家のご主人登場。

大将「二階ですアフレコで吹き替えですね(^^;)



社長「あ、そうかいそうかい




二階

社長「いや〜、申し訳ない、いや、きょ、今日はね、
  手形の期限
なのコロッと忘れちゃってね、
   今ご本人来るからね あ〜、汗かいちゃった


さくらの結婚式にも同じ理由で遅れた懲りないタコ社長(−−;)


寅、緊張して座っている。


おいちゃん「な、なんだよ、うまくまあ、お前の注文にあった人ならいいんだけどな

寅「いえ、ぼかあ別に注文なんてありませんよ

場の空気に呑まれてかなり、緊張し、謙虚になっている寅。




             



おいちゃん「ええ?夕べいろいろ言ったじゃねえか

寅「いえ、そんな事は言いませんでございましょう?
 僕はただ、気性がおとなしければ、それで充分ですよ
 いや、かえって、気の強いほうが気が合うかもしんない。うん


社長「そ!そそそ、そうだよな!

駒子「ごめんください

社長「あ、どうぞ、あ〜ささこっちこっちささ


寅、緊張で目が宙を回っている。


社長「ほら、ほら は、

おいちゃん「どうも

社長「こちらがね、あの、いつか話した寅次郎さんだよ。(こちらが)おじさんだ

おいちゃん「はあ

社長「こちら駒子さん


寅「あ、どうも


駒子「どうも



なんと、緊張する寅の前に現れた見合い相手は
寅次郎の仙台の知り合いのお駒さんだったのである。


音楽高まって


駒子「あら

             




寅「おー!確かあんた仙台の狸小路の焼き鳥屋のお駒さんじゃねえか



             



駒子「寅さん!


この後第14作「寅次郎子守唄」で、
春川ますみさんと渥美さんは再度共演することになる。
あの佐賀の呼子港での一期一会は、
このシリーズの名シーンのひとつとして輝いていた。



寅「なんだよ、おい、ええ〜?お駒さんとはオレも気がつかなかったよなあ〜
  あ、おいちゃんよ、よく知ってんだよ!おら知ってんだよ。


寅「あ〜、昔から懇意な女だよ な

寅「アハハハハ!

寅「あれ?なんだい?お前亭主いたじゃねえか。
 あれどうしたい?


おいちゃん、驚いて目が点。

寅「札幌ラーメンの店でもってよ、
 コックやってたじゃねえか サーッと、え?



駒子「ウウウと、急に泣き始める駒子さん。



             



社長、亭主がいると聞いて顔が青ざめ、オロオロし始める。


社長を睨む寅。


社長「あ、そうだ、コロッと忘れてたよと必死で逃げる理由を考えている。

おいちゃん「何を?

社長「え、ほれほれ…、ちょっと手形の期限なんだ!え、ヒヒ…
その問題片付いたんじゃないの(−−)


と、一目散に逃げていく社長。


おいちゃん「おい、おいおい


おいちゃん「フフ〜、そうだ!おれもコロッと忘れてたよ!
    ちょ、ちょっと失礼すらあちょっとちょっと失礼な
と、あたふた逃げようとして

廊下の仕切りに顔が当たって『バコ!』
 痛!(TT)

おいちゃん、鼻を押さえながら

おいちゃん「ゴホゴホ・・コロッと忘れてた、ちょっと失礼な


と、スタコラ退散するおいちゃん。


腕を組んで怒っている寅。


泣き崩れている駒子さん。


向こうに見える『だんご本家 亀家本店』の看板。



             





そのあと、延々と駒子さんの身の上話が続いていく。


寅、大あくび(TT)


駒子「二人で仙台を逃げ出してさ、四畳半のアパート借りて
  これでやっと二人っきりの新生活ができると思った矢先…、

  あいつったらさ、新しい勤め先のラーメン屋の娘と出来ちまってさ、
  ウウウ!



酒の追加に現れた女中さん、駒子さんの身の上を興味本位の目で聞きながら、
ニヤついている。



泣きながら飲みまくる駒子さん。


寅「分かった分かったよ よ、そう飲むなよ

駒子「ごめんね寅さん

寅「いいんだよ

興味本位の女中さんを手で追い払う寅。


駒子「でもさ、こんな事話できるのあんただけだもんね

寅「そりゃそうだ、そりゃそうだ

駒子「寅さんならさ、私の気持ち分かってくれるわよね

寅「よく分かるよよく分かるよ

駒子「あんまり悔しいからさ、
  男はあいつだけじゃない!って所見せてやろうと思ってさ、


寅「うん

駒子「あたしも他の男にくっついてやろうと思った矢先よ
 あの印刷屋さんがさ、見合いしないかって言うからね、
 どんな人だって聞いたらさ、『
あまりおつむは良くなくて
 オオボラ吹きで下駄みたいな顔してる
けど、
 根はいい人間だから』って言うからさ、
 まあ、こうなったら、
下駄であろうとサンダルであろうと
 かまやしない。と思ってさ、


もうめちゃくちゃ言われてたんだねえ〜(^^;)


寅「あのタコの野郎そんな事言いやがったのか!

駒子「そう言っただよ

寅「チクショウ、ぶっ飛ばしてやらあムカムカしている寅。

駒子「それがまさかさ、寅さんだとは思っても見なかったからさ、
  本当にごめんね


寅「いいんだよ、いいんだよ、何も謝ることはないやね

お酒をがぶ飲みしようとする駒子さんを止めて、

寅「よせよせよせよせ よせよ、ほら え?お前身体に毒だからよ

駒子「ウ!ウウ〜つわり(((^^;)



寅「ほら、吐きっぽくなったんだろ、
 おい、大丈夫か、大丈夫か。え?


駒子「大丈夫、何でも無いの、私ね、今つわりなの

寅「今つわりか

寅「…!!今つわりい〜? それじゃ何か、おい、
 お前もう、
仕込んであったのかおいおいヾ(^^;)



             



駒子「寅さああああん〜〜ううう、 オエ〜〜


寅「ウオ〜ウオ〜ゴエ… ああ〜気持ちわりい(((〜〜;)



             







とらや  店


冷蔵庫 森永



源ちゃん店の前から走って入ってきて

源ちゃん「今こっち来ますよ!

おいちゃん「怒ってるか?

源ちゃん「すごい顔してますよ



             



おいちゃん「本当か、おい〜

おいちゃん「カ、カアちゃん。と、とにかくね、裏の社長が悪いんだから、
    
 ォ、オレは知らないよ

おいちゃんが、おばちゃんのことを『カアちゃん』と呼ぶのは珍しい。

おばちゃん「あたしだって知らないよ!


一目散に、逃げていく、源ちゃんとおばちゃん。

おいちゃん「だって、かあ…おりゃ、あわああ…」とおろおろ。

寅、勢いよう帰ってきて、

寅「おいちゃんよお!

おいちゃん「はい?ハイ、ハイ、ハイ…超逃げ腰(((((^^;)

森川さん上手いねえ〜(^^)森川さんしかこの味は出せませんよ。



メインテーマが軽快に流れていく。

寅は、勢いで、とらやのピンク提灯をヘディングで飛ばして

寅「オレはちょいと千住の方へ行くからな、
  タクシー代按配してくんないかい?


おいちゃん「ああ、うんうん…

寅「早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ早いとこ!
  数えることはねえんだよ!よし。



寅、また戻ってきて、


おいちゃん「わあああ!とビビる(((^^;)

寅「ひょっとしたらよ

おいちゃん「うん

寅「こん晩、結婚式になるかもしれねえぜ!そのつもりでな。



             



寅「借りとくぜ!

ある意味、凄まじい行動力だ(^^;)


このあたりの、弱気な逃げ腰は森川さんの独壇場だ。上手すぎ!(^^)






夜 とらや


寅、当事者たちを連れてきて、

寅「さ、入れよ、ほらなあ、なにぐずぐずしてんだよ。遠慮すること
 無いよ、スッと入れよ、すっとここはオレの家だからなあ、うん。
 こっち来い、座れ座れ座れよ、うん


寅「なあ、あんまりオレに世話焼かせるなよ。ええ?為さんとか言ったな

亭主「え?へえ晴乃ピーチクさん

寅「オメェさん良くねえぜ。こんないい女房がありながら
 浮気するなんてその
了見(料簡)がいけねえよ。

 お駒さん身ごもってるんだぜ?オメェさんの子供だろう?




了見(料簡)って、いい言葉だねえ。人の世の機微に触れて、叩かれ、褒められ、
その人その人の了見(料簡)ができる。



亭主「へえ?…ぜんぜん知らなかったです。

友人「とぼけんじゃねえや、バカどうも晴乃パーチクさん

寅「お駒さん、おめえさんもだぜ、
 この男に惚れてるんだろ。
 だったとしたら、一度や二度の浮気はだまって
 目をつぶってやんなよ 浮気は男の甲斐性よって、
 女に持てねえような男じゃつまらねえじゃねえか。


 ともかく、縁あって所帯持った二人だい。
 それが離れるなんて事はよかねえ、
 そらいいてえことはお互いに山ほどあるだろう。しかしな、
 ここは一番、この寅さんの顔を立てて、どうかひとつ、
 元通り仲良くやってくれ頼むよ




             




駒子「あんた、ごめんよ



亭主「うううん、オレが悪かったよ



             



第1作のテーマ曲が流れる。



寅「よ〜し、できた!めでてえめでてえ、
  これで万事めでたしだ! なっ


駒子「寅さん

寅「え?

駒子「本当にありがとう

駒子「あたしはもう、なんてお礼を言っていいか わか…

寅「うん

亭主「どうもありがとうございました。ご親切に

寅「いいのよ、いいのよ。オレの事なんかかまわねえんだ
 おめえたち二人が幸せになってくれればオレはそれでいいんだよ。
 良かったなあ!



おいちゃんたちの後ろからドッドっとタコ社長が走ってくる。

社長「寅さん、なんだい、もう結婚式だって、
  えらい手回しがいいじゃないかあ〜ハハ…
適当なヤツ…(−−)


寅「オレが結婚するわけねえじゃねえか、このタコ!え〜?

 ささ、何もねえけどね、まずこちらへ 兄さんもどうぞ。

 よ、おばちゃん、したくできてるな?



おばちゃん「いいや



寅「何にもできてねえのか?
 俺だから言ったろ?ったく、モーロクしてやんなあ。

 しょうがねえや、源公、おめえちょっとな、仕出し屋行って、な、
 料理を15〜16人前至急届けてくれ、そう言ってくれよ


源ちゃん「へい!

寅「あ、それからな、どうせお祝いだ、
 パーッと何か明るいめでてえ名前の酒を
 5、6本注文しとけ


寅「あ、それからな、検番へ行ってよ、粒よりの芸者5〜6人いいの
 至急届けてくれって


源ちゃん「へい!


検番とは、芸妓組合やお茶屋組合の事務所を指す言葉である。
昔はお茶屋の取り締まりをする場所をそう呼んだため「検番」と言う。
芸舞妓の稽古場が「検番」と呼ばれることもある。



寅「あ、それからな、近所の衆に帰りに声かけるんだ
 とらやでもって祝い事がございます。もしお手すきでしたら
 ご一緒していただいて、祝っていただけたらありがとうござんすそう言え。

 
あ、それからな、…もういい、行け



             




夜 茶の間


当事者と柴又のご一統さんたち、宴会で盛り上がっている。

柴又芸者さんも3人ばかり来ている。


縁もゆかりもないのに、よく参加できるねみなさん(−−;)


「♪でためでた〜の若松様よ〜枝ァも〜…、あ、ちょいちょい

花笠音頭

めでためでたの若松様よ

枝も (ちょいちょい)

栄えて葉もしげる

(はあ やっしょうまかしょのしゃんしゃんしゃん)


花笠音頭の歌詞は150種類以上あるのでこのへんでご勘弁を(^^;)




             



おいちゃん「博さん、さくら呼んで来いよあれにでも止めさせないと
     えれえ事になっちまうぜ


博「それが子供が熱を出しちゃいましてねえ〜手が離せないんですよ〜


満男が熱出してるなら、おばちゃんが今まで知らないわけないよ。
ちょっと無理があるね、その設定は ヾ(^^;)



おいちゃん「弱ったねえ〜

おばちゃん「はー…



             



ハイヤーがやって来る。

      
運転手「こんばんは、とらやさんはこちらでございますか?

おばちゃん「はい


運転手「葛飾交通でございますがハイヤーのお迎えにあがりました


と、大きな外車がとらやの前に横付けされている。


寅「さあ、さあさあさあ乗ってくれ乗ってくれよ


源ちゃん「これ、外車だねアハハ・・・でかいなおい


おお!GM(ゼネラルモーターズGeneral Motors)の
シボレーのインパラ.1968年式』だ!


シボレー・インパラ(Chevrolet Impala)は、ゼネラルモーターズのシボレーブランドによって販売されている自動車の車種名。


1958年型シボレーの最上級グレード「ベルエア」に「インパラ・スポーツ・パッケージ」という名のスペシャルパッケージが設定された。
1959年からは最高級グレード名となり、下から「デルレイ」「ビスケイン」「ベルエア」「インパラ」の4グレードとなった。
1965年にインパラ・カプリスに改称、1966年にカプリスとして独立する。一般的には2ドアが多い。


               



シボレー インパラ 1968年式   







ワーグナー作曲 歌劇『ローエングリーン』より「婚礼の合唱」が流れる。

ウィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー Wilhelm Richard Wagner
(1813 〜 1883)ドイツ
 

ウィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー( 1813 〜 1883 )の歌劇「ローエングリーン」にふくまれるこの曲は、
「ワーグナーの結婚行進曲」ともいわれている。“歓喜の動機”で有名な「第 3 幕への前奏曲」にみちびかれた第 1 場の冒頭で、
白鳥の騎士ローエングリーンとブラバンドのエルザの結婚式に演奏される。しかしこの二人、一晩で別れてしまうので、ほんとうは
縁起が悪い曲なのだが…(^^;)



駒子「寅さん

寅「ん?

駒子「本当に何から何までなんとお礼を行ったらいいんだか

寅「何を言ってんだよ さあ、早いところ乗れよ
 お前さんがたはよ、生活が貧しいから新婚旅行なんかもした事ないっしょ
 ひとつ、頭っからいっぺんやり直したらどうだ?はい、乗った乗った


寅「おい、運ちゃん、一つたのむぜ


駒子夫婦と一緒に来たなぜかその友人まで一緒に乗り込んでしまう。
新婚旅行のためのハイヤーなのになぜ?



運転手「そどちらまででございますか?

寅「そうよなあ、どうせならいっそ景気のいいところ、
 熱海までバーッとぶっ飛ばしてもらおうか


運転手「熱海

寅「そうよ

運転手「かしこまりました

寅「あいよ

運転手「あの〜、お支払いの方は?

寅「銭か?銭はこのとらやへ伝票回しといてくれ

寅「ああ


それ聞いておいちゃんたち、ドキッとしている。


寅「では諸君、中村為吉妻駒子 両人の前途を祝して、
 ここで、ささやかながら、万歳を三唱させていただきます!



社長「ワ〜!社長まで一緒に飲んでどうするんだよ(−−)

寅「そ〜れ

一同「ばんざ〜い!ばんざ〜い!ばんざ〜い!



             



寅「な、おいちゃん、な、おばちゃんよかったな、おい

源ちゃん「良かったな兄貴!

寅「良かったよかったよかった!


おいちゃん、おばちゃん、かなり怒っている。




タクシー
 カローラなどの小型車がほとんど。
 ○○タクシー、○○交通、などのシンボルがルーフに付いてて、ボディは一般にカラフル。
 窓にクレジットカードのシールが貼ってあったり、何となくなんでもありで雑然としている。
 乗降の際、運転手は乗ったままでドアは自動で開く。
 運転手は制服はあまり着ていない場合が多い。
 
 メーターに表示された料金を自分でを払って降りる。
 たいていの場合、自分で見つけるか予約する。
 呼んでおいて待たせると、普通は第48作のOK無線の犬塚さんのように運転手は怒る。


ハイヤー
 大型車(セルシオ、シーマ)、輸入車(キャデラック、ベンツ)などの高級車が多い。
 ルーフには何も付いていない。黒塗りが一般的。

 乗降の際、ドアは自動では開かず、運転手が降りてきて開けてくれる。
 運転手は白手袋、帽子、制服を着けている。

 降りるときに料金を払わない。。
 予約して半日とか1日とか使う以上、何時間待たせても文句は言わない。



タクシー業務適正化臨時措置法という法律の定めでは、

ハイヤーとは“営業所のみ”でお客さんをとることになっており、
それ以外のものをタクシーと呼ぶと定められている。


料金面では、タクシーを呼んだ場合、車庫〜乗車地〜目的地の料金を支払うが、
ハイヤーではさらに目的地〜車庫までも課金の対象になる。


ハイヤーは、英語の hire (賃貸)から来ている。英語で rent a car と言えば車だけを借りることだが、
hire a car だと、運転手付きで車を借りる意味になる。私の住んでいるバリ島では「チャーター.カー」
と言えば、運転手付になる。


お客さんを乗せている時間で料金を計算するのがハイヤー。
お客さんを運んだ距離(道のり)で料金を計算するのがタクシー。という考えもある。




話は戻って…


おばちゃん「あたしゃね、みんな先方が払うもんだとばっかり思ってたんだよ!
     だから黙ってたんだよ
ほんとそうだよ(−−)

源ちゃん、そーっと聞き耳立てて聞いている。

駒子さんたちも、いくら寅経由と言ったって、縁もゆかりもないとらやの人たちに
全額払わせちゃいけないよ。寅はああいう自分しか見えない男だからあれで
完結してしまっているが、駒子さんたちは、それに乗っかかりっぱなしじゃおかしい。
堅気なんだから、あとで半分くらいはローンでもいいから払わないとね(−−)



おばちゃん「なんでウチで払わないといけないんだよ!ええ?
     ハイヤーの料金まで!
     言いたかないけどね、あたしゃタクシーだって年に数えるほどしか
     乗ったことがないんだよ!ハイヤーなんて生まれてからいっぺんだって
     乗ったことないんだよ!なんでそんなお金まで



いったいいくら使ったんだ??ガクガクブルブル(((((^^;)


寅「金金言うなよおめえ、みっともねえまったくう…。祝い事じゃねえかよォ、
 少しぐらいの金でおってガタガタ言うなよ
と酒を飲む。


おばちゃん「ああ、そうかい!そんなら自分で払ってみろってんだ!

本当に全うなご意見です(^^)





             



寅、カチンと来て

寅「なにいー!なにいって、おばちゃんは当たり前のことを言っただけだよヾ(^^;)



             



おばちゃん「そうじゃないかァ!

おいちゃん、おばちゃんを止めて、

おいちゃん「つね、待て。いいか寅、そもそものおこりはな、
     おまえの幸せを願ってやったことなんだぞ。
     オレたちゃなァ、たった一人の甥っ子の結婚式なら
     どんな贅沢だってさせてやらあ!


おばちゃん「そうよォー

おいちゃん「それがだなあ、なんで赤の他人の祝い事に
     こんな散財をしなくちゃならねえんだァ!


寅「あー…、あ、そうかい!じゃあおいちゃんは、
 オレだけが幸せになりゃ、それでいいってのかよ!


おいちゃん「そうよ!そうだよ!

寅「あー、そうかい、それじゃあの二人はどうなったってかまわねえって言うのか!?
 はあー、おいちゃんはそんな人間かよ!


費用は当事者と言いだしっぺが払うのが当たり前だろ寅(−−)


おいちゃん「このやろう!



              



と、わなわな震えながら立ち上がり、

おいちゃん「てめえ、脳みそ足りねえくせに、文句ばっかり言いやがてこのやろう!

寅「なにい!?」と、寅も立ち上がる。

おいちゃん「なんだ!やるか!てめえ!

博、おいちゃんを止めて、

博「おじさん!僕が言う!

博、寅を睨んで

博「兄さん、あんた、さいぜんから言葉が過ぎるよ!


寅「職工、てめえ誰にもの言ってんだ、このやろう

博「おじさんたちはなにもあの二人の再婚を
 祝福しないと言ってるんじゃない!
 そのために、芸者を呼んだり料理を取ったり、
 そんな費用まで払う義理合いはないと
 言ってるんだ!そんなことが分からないのか!


寅「分からないよ!!


こういう場合、幸いにもまだおいちゃんたちは払っていないんだから
ハイヤー会社への支払いは駒子さんたちにまわせばいいと思うんだが…。
上にも書いたが、駒子さんたちも、寅が全額払うのはおかしいことくらい
分かるはず。
いくら、寅が一人で勝手に手はずしてしまったこととはいえ、自分たち
夫婦を祝ってくれるための宴会であり、ハイヤーなんだから、
半分くらいは自分持ちにしてもらってもとらやの人たちは罰が当たらないと思う。
これは、笑えない相当の額だと思うので、きちんとしたほうがいい。



             



寅「てめえも同じ人間か、そんな心の冷てえ男がオレの親戚かよ!
 そうとわかってたら、てめえなんかに妹のさくらをやるんじゃなかったよ!


と、博の頬を小突く。


博「表へ出ろ!


こんな荒々しい博は第3作だけ。
第1作でさえ、博は寅にはこんな言い方はしなかった。




寅「このやろう上等だよ!やってやろうじゃねえか!

と、博の額を小突く寅

おばちゃん「ちょっと、ちょっとちょっと…」と、止めに入るが、

寅「黙ってろ!ババァ!

おばちゃん「博さん、およしよ、あんた、ちょっと

おばちゃん、おいちゃんに

おばちゃん「およしったら

おいちゃん「黙ってろ!ババァ!おいおいゞ(^^;)

おばちゃん「ちょっとあんた

源ちゃんや、タコ社長が恐る恐る覗いている。

庭に出て、今にも殴りかからんとしている二人。


おいちゃんも外に出て


おいちゃん「いいか寅、オレももうちょっと若かったらな、
     オレの拳固で張り倒してやるところなんだ、ええ!
     博の拳固はオレの拳固だと思えよ!



第1作では、おいちゃんは、
オレの拳固はおまえの親父の拳固だと思え。と、言っていた。
今回は、博の拳固はオレの拳固。


寅「なに言ってやがんだこのやろう!
 そんな拳固でおれのこと殴れると思ってんのか!バカ!チクショウ!



と、博を突き放す。



             



倒れる博。

おいちゃん「博さん!

寅「やってやろうじゃないか!来い!このヤロ!


博、寅を睨んで


博「兄さん!殴るぞ!

おばちゃん「誰か来てえ!!

源ちゃんもタコ社長も怖がる。


博思いっきりストレートパンチを寅に浴びせる。


バシッ!!



             



衝撃で後ろに倒れこむ寅。


おいちゃん「それでいいんだ!それでェ!


倒れた寅、こめかみあたりを押さえながらながら


寅「あれえ?このヤロ!本気でやりやがったてめえ!



             



寅、起き上がって、博に掴みかかる。

寅「チキショー!!


うわああああ!


博、叫びながら

そして間髪おかずに一本背負い


思いっきり地面に叩きつけられる寅。


びびる源ちゃん。



             



寅「お!く…くそ!…


それでも起き上がろうとするが、博に後ろから腕を押さえられ、
地面に這い蹲るしかない寅だった。




             



おいちゃん「どうだ寅、こたえたろ、こたえたら謝れ!
    私が悪うございましたって謝れ!!



寅、何も言わないで、表情を硬くし、博に抑えられている。



             



おばちゃん「博さん

博、押さえていた手をそっと離す。



さくらのテーマが流れる。


おいちゃん、涙を浮かべながら、しゃがみこみ


おいちゃん「みんなで、心配して…、こんど帰って来た時は…、
    今度はなんとかしてえ…、嫁さん見つけてと、
    ううう…本気でそう思ってたのに…、
    よくも、心が…冷てえ人間だなんて言ってくれたな…ううう、
    オレによくもそんなこと言ってくれたな、うううう



おいちゃん、自分の心が伝わらない寅が情けなくて、おいおい泣いてしまう。
第1作の大喧嘩のアレンジ版だ。




おばちゃん「あんた、うううう…とおばちゃんも涙を浮かべている。



             



寅、地べたに座って下を向き考え込んでいる。


博が抱き起こそうとするのを振り切り、座り続ける。



             




そして、みんなが家に入った後、

そっと後を振り向く寅…



寅「バカヤロが…、このやろ…

と、言いながらも、おいちゃんの気持ちを知った寅は目に涙を貯めるのだった。



             



このシーンは博の意外な強さと気迫が表に出たシリーズでも貴重な場面だ。
このあらくれる寅と博こそがこの作品の特徴。
このシ―ンは暴力シーンでは決してなく、
人間のバイタリティと人の深い情を感じさせる実に清々しい演出だったと思う。


        



寅が涙で潤んだ目で見た風景をカメラは映し出している。

               
 ↓


             



この長いシリーズで、寅はほとんどまともに誰とも
殴りあいの喧嘩をしていない。
啖呵のきりあいはあっても、生々しい殴り合いは
避けるのが山田監督のセンスなのだ。
そういうことは実際の世の中にはたくさんあっても、
この映画の中では表現したくはないのだろう。
そういう意味では、この第3作の喧嘩は、珍しい貴重なシーンともいえる。
もちろん、脚本にも、この喧嘩のシーンは書かれているので、
山田監督も了解しての演出だと思われる。




江戸川土手 朝もや



気まずくなった寅は次の朝旅に出てしまう。


このシーンでようやくさくらがちょこっと出てくる。
倍賞さんの出番が少ないのは倍賞さん側のスケジュールの関係も
あったのかもしれないが、それ以上に森崎監督が、
『旅先のリアルな寅』というテーマにこだわったことがあげられる。
森崎さんにとって、第1作で兄妹の物語は
ある程度納まりがついていると思ったのだろう。



寅は相変わらずベージュのトレンチコートを着ている。


寅をかばうさくら。



さくら「だってさあ、お兄ちゃん、
   別に悪いことしたってわけじゃないんだもんね



寅「そうかい


さくら「そうよ、もともとお兄ちゃんのお見合いだったんだもんね。
  それが、仲人役にまわっちゃったらお兄ちゃんだって辛いわよね。

  お兄ちゃんだってさ、ひょっとしたらいいお嫁さんに
  会えるんじゃないかって…、気がしたんでしょ?

  悲しいわね、お兄ちゃんだって…



さくら、寅の傷ついた心と、宴会&ハイヤー費用とらや持ちとは別問題だよ(−−)
寅は可哀想だから費用をとらや持ちにしてもいいという道理はない。




             




メインテーマが静かに流れ始める。


寅、涙を潤ませてしんみりしている。

さくら「どうしても行っちゃうの?

寅「うん

さくら「止めても無駄ね

寅「ああ



             



博「兄さーん!と向こうから走ってきて



博は昨晩のことを謝る。


博「兄さん、昨日はどうもすいませんでした


博の寝癖の髪の毛がなんともいいねえ〜(^^)



             



寅「いいってことよ

博「あの…、その、何て言うか、上手くいえませんけれども…

寅「何も言うない、分かってるよ

博「

寅「オレは行くぜ。 あばよ

博「兄さん!

寅振り返り

寅「さくらを頼むぜ

博「はい!

さくら「さくら、幸せになるんだぞ。これから寒くなるからな、
  赤ん坊には風邪ひかすんじゃねえぜ


さくら「うん

寅「あばよ



そのとたん、ステンと転んでしまう寅。


寅「あ!!


             


さくら「お兄ちゃん

寅、照れながら、

寅「あははは、すべっちゃった。…あばよ!


さくら「お兄ちゃん!もうすぐ冬なんだから、温かくしなきゃだめよ。

  もう素足じゃ寒いわよーッ




寅、土手を歩きながら、ちょっと振り向いて、笑って去っていく。



             




土手に上がり、後姿の寅を見送るさくらと博。



             



そっと博と手を繋ぎながら、兄の行く末を案じる妹だった。



こういうおしゃれな寅もたまにはいいではないか。
トレンチコートは第18作の夢「アラビアのトランス」でも登場。


ところで、私はこの時の寅を見送るさくらと博の姿が好きだ。
全48作中、私が最もさくらと博にリアリティを感じたのが
このシーンだ。

私はこのシーンの二人の立ち姿が、そのあり方が好きなのだ。

          
 ↓
        





一ヶ月後、柴又帝釈天参道



             





とらや 店


タクシーがやって来る。


おいちゃんとおばちゃんが、このシリーズ最初で最後の
夫婦水入らずの旅行に出かけるのだ。


先日の寅による大散財にもかかわらず、夫婦そろって旅行しようってんだから、
とらやはかなり景気がいいのかも(^^;)
それも電車を使わずタクシーだなんて。



みんな見送りのために店先に集まっている。
(博、源ちゃん、社長、女店員の友ちゃん)



社長「いいねえ、二人で温泉に行くなんて、ちょっとした新婚気分だね


おいちゃん「冗談じゃねえよ、今更新婚気分なんか出せるかよ、考えてみろよ、え、
     見てくれ、この
ババアだぜ

社長「フフフ

おいちゃん「こいつと二人っきりで旅行するんだよ、気分が出るかよ

おばちゃん「そりゃ、こっちの言うセリフですよ

みんな大笑い。

社長「まあまあまあ、ゆっくり骨休めしといでよ、いろんなことがあったからね。
  寅さんのことやなんかでさ


なに言ってんだ、あの宴会一緒になって盛り上がってたくせに(−−)

おいちゃん「ほんとだ



ここで、おいちゃん予言めいたことを言う。

おいちゃん「これが旅先で寅さんにばったり会ったってなあたり(^^)

源ちゃん、大笑い。

おばちゃん「悪い冗談だよ


一同「ハハハ


この手のギャグは、第32作「口笛を吹く寅次郎」でも、
備中高梁に法事に行くさくらたちに、御前様が使っていた。

    

御前様「ぱったり、寅と会うたりしてえ…
おいちゃん「は…
御前様「いや、冗談冗談、ハアア!ハアア!ハアア!といつもの御前様笑い(^^;)




               



社長「寅さんじゃないけどね、ひとつ万歳三唱といくか

おばちゃんたち照れる。

社長「車竜造夫妻の壮途を祝して、それ!
  バンザァーイ!バンザァーイ!バンザァーイ!



みんなも一緒に万歳をする。



             





二人とも四日市で汽車を降りて、

『三重交通』のバスに乗り、一路『湯の山温泉』へ

ビリヂァンとホワイトの組み合わせは懐かしいあの
三重交通バス

両親の田舎が伊賀上野なので、夏休みに遊びに行った時によく乗ったなあ…。




             





三重県 湯の山温泉



終点『湯の山温泉』



             




バスの車掌さん「ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした。
         ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした



おいちゃんたち、バスを降りてくる。

おいちゃん「はいどうも

バスの車掌さん「ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした。
         ご乗車ありがとうございました。どうもお疲れ様でした



おいちゃん「えーっと、えーっと…

と、『紅葉荘』を探すが…

おいちゃん「あのちょっとお姉さん

車掌さん「はい

おいちゃん「紅葉荘ってどこだい?

車掌さん「えーっと…、あの番頭さんです。おじさーん!

朴全さん「あ〜いよォ〜 
左 卜
全さんタバコをぷかあ〜っとふかしている(^^;)

出迎えないんだね、この人は。
こののんびりやる気ない姿は、映画『七人の侍』で、あの『与平』を演じた
ひょうひょうとした朴全さんを思い出します(^^)




             




送迎バス 湯の山ホテルのバスが朴全さんの背後を通っていく。





湯の山温泉 『もみじ荘』 梅の間



おいちゃん「オレ、こういうとこ来るとホッとしちゃうよ

おばちゃん「だけどさあ、あの番頭!

おいちゃん「あははは!ありゃ酷かったなあ、あの爺さんはァ

おばちゃん「ん〜

おいちゃん、こたつに入りながら

おいちゃん「寒いなおい、このこたつ切れてるのと違うか?

と、スイッチをカチカチさせている。


そこへ、女中さんが入ってくる。

女中「ごめんください

おいちゃんおばちゃん「はい


女中「いらっしゃいませ」とお茶を持ってくる。

おばちゃん「お世話になりますよ

女中「宿帳お願いいたします。それと貴重品がありましたらこれに

おばちゃん、財布を取り出し、貴重品入れに入れる。
おいちゃんは宿帳に記入している。


おいちゃん「姉ちゃん、姉ちゃん、あんたいくつ?

女中「あ、フフ…二十一です、フフ

おいちゃん「二十一

女中「フフ



             



おいちゃん「いいなあ、若えのは

おばちゃん「いやらしいね、この人は

部屋の外から女将さんの声


志津さんが入ってくる。


志津さん「ごめんくださいませ

おばちゃん「はい

女中「女将さんです

おばちゃん「へえ

志津さん、部屋に入って、丁寧にお辞儀をし



             



志津さん「いらっしゃいませ。ようこそおいで頂きました。
    行き届きませんが、どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ



おいちゃん「へえ


女将さんが直接挨拶。すげ〜美人。
新珠三千代さん登場。



         

志津さん「おコタ 温まってますかしら?関西の人は「おコタ」と言う(^^)。

手を入れて

志津さん「あら?冷たいわよ

おばちゃん「切れてるみたいなんですよ

志津さん「まあ…、気がつきませんで、すぐに番頭をよこしますから

おいちゃん「いえいえ、もう、へへ

志津さん「あの、なにかございましたらご遠慮なく申し付けてくださいませ。
   長らく手を入れておりませんので、
   近頃の新しい旅館に比べますと、
   お客様にご不自由をおかけいたしておりますの。
   (では、)すぐに




             



おいちゃん「いやどうも


と、番頭を呼びに部屋を出て行く。

おいちゃん、見とれてお口半開き(^^;)



             



おばちゃん「へえ…、ちょいと

おいちゃん「ん?


おばちゃん「丁寧な旅館だね〜、女将さんが出てきて、
     あんた挨拶するなんて、なかなか出来ないことだよ



おいちゃん「まったくだなあ、しかし驚いたなあ…

おいちゃん、女中さんに


おいちゃん「姐さん、姐さん、あの人旦那いるの?
     と、親指突き出す。
 下品…ヾ(^^;)



女中さん「え?亡くなったそうですよ

おばちゃん「へえ…

おいちゃん「亡くなったの。じゃ、さだめしモテるだろうな、おい

女中さん「そりゃあ、モテるなんてもんじゃないわね!

おいちゃん「ほー…

女中さん「なにしろね、お客さんで、女将さんの魅力に取り付かれてね、
    そのまま居ついて番頭になったって人もいるくらいなんですよ!




             



おばちゃん「あら

おいちゃん「へー、そんなヤツいるの?

二人して「ハハハ



             



おいちゃん「しかしそいつの気持ちわかんねえこともねえな。
    オレだってなりてえくらいだもん
血続きだねえ(^^;)


おばちゃん「バカだね


おいちゃん「へへへへ

女中さん「じや、ごゆっくり」

おいちゃん「はい、フフ

女中さん「あ、あのね、今その番頭さん、コタツ直しに来ますから

おいちゃん「うん

女中さん「よーく顔見といてください

おいちゃん「バカ面を!ハハハ

みんなで「ハハハ



             



女中さん、廊下に出て大声で番頭を呼ぶ。


女中さん「寅さァーん!!


おいちゃんたち「!!!!!


寅の声「おーい!!



おいちゃん、饅頭くわえたまま唖然。

おばちゃん、お口ポカン。




             




なんと寅はこの「もみじ荘」で番頭をやっていたのである。
これまたいつもどおり天文学的確立で鉢合わせ(^^;)



これは、ただじゃすみませんよォ。


女中「コタツ壊れてるの梅の間よ−


寅「ホイ来た梅の間、
 
そーかそーか。草加越谷千住の先だと!


これは江戸期の将棋や祭の地口、へらず口、無駄口、付け足し言葉
ふつう世間に行なわれている成語に語呂を合わせたことばのしゃれ
草加、越谷、千住の先よ、幸手、栗橋まだ先よ 


おいちゃん「おい、つね、なんかオレは悪い夢見てるんじゃねえかな…



寅登場!



寅「どうもお客さん、御不自由おかけしますねと、とことこやって来る。

おいちゃんとおばちゃんささっと散らばるどーせ、ばれるってヾ(^^;)


寅「せーのっと

と、こたつの布団をまくって中を見て、

寅「
あーあ、こりゃ温かいわけゃねえわね

寅「よいしょっとと言いながらコードを抜いて、コタツに潜り込む寅。

なんでドライバー一本で素早く故障が直せるのだろう?



                   



寅「ええっと、あ、お客さん、すいませんがね、
 この上のヤツ取り外していただけませんか?
 はやくはやくはやく。よいしょっと…
と、ゴトゴトやっている。



そーろりと気づかれないように、
こたつの御膳を運ぶおいちゃんとおばちゃん。


おいちゃんは、口に饅頭くわえたまま 早く食えよヾ(^^;)


寅「お客さん、東京だそうですね、
 私もね、東京は、葛飾の、柴又ってとこに住んでんですけど、
 ご存知ですかあんなところ。へへへ、
 今でもそこに叔父き夫婦が団子屋やってるんですけどね、
 えーっと、これがだいぶもうもうろくしましてね、
 もう
棺おけに片足入れてるんですよ


おいちゃんとおばちゃんむかついている。


                   



寅「淋しいから帰って来い帰って来いなんてよく言うんですけどね、
  へへ、なかなか忙しくってそうもいけねえや。
 あ、お客さん、度々お使い立てしてすいませんがね、
 そこのソケットこっちに、ちょっと入れてみてください。上のほうにね



ソケットを差し込むおいちゃん。


寅「はい、はい、できました。えー、できました

と、起き上がって、おいちゃんの顔を見て驚く寅。


おいちゃん、お膳持ちながら


おいちゃん「寅さん…


寅「いよー!おいちゃん!



                   




とにじり寄ろうとして、コタツにつまづき、転んでしまう。


寅「あいたたたた…

畳に転がってかなり痛がりながら


寅「久しぶりだな、おい、あ痛て…


絶対会うわけがない天文学的確率の再会でした(^^;)





夜  梅の間


食事が出ている。

みんなで笑っている。



寅「オレもおいちゃんには、迷惑のかけっぱなしでよ、
 できるだけはええとこ金も作って
 返さねえといけねえなと、気にはしてたんだ

返したこと無いくせに ゞ(ーー;)



                   




おいちゃん「そんなこたあ、どうでもいいんだよ。
    おめえさえまともな暮らししてりゃあよ


寅「ありがと。まあ、おいちゃん一杯やってくれよ

おいちゃん「ありがと、ん、んと酒を注がれるおいちゃん。

寅「
おばちゃんも干しなよと酒を注ぐ。

寅「
いや、おいちゃんが、いつもオレに散々言ってた通りよ、
 オレもこのへんで、堅気の暮らしに入ろうかと、思ってるんだ


おいちゃん「そら結構だ、結構だよ。
    で、なにかい、どうして、ここの番頭になるようになったんだ?


寅「え?へへ…。そりゃまあ、言ってみりゃあ、人助けってとこかなあ…

おばちゃん「人助け??

寅「ああ、ごらんの通り、町からは奥まった古くせえ旅館よ、
  なあ、それでなくたって、客足が遠いんだよ。
  女将ってのはね、元お嬢さんの素人だ。
  番頭といやあおめえもうガタガタでもって老いぼれだ。
  男手が余りねえさみしさにね、お願いします、お願いしますと、
  泣いて頼まれちゃあ、まさかこの寅ちゃんイヤとは言えねえ性分
  じゃねえか、そうだろう?


おいちゃん「うん

寅「
じゃあ、まあ、ほんの二、三日手伝ってやるかと、
  いいえお願いしますあと十日、いえ五日と、
  泣いて頼まれているうちに半月よォ。どうでえ、
  今じゃもう、寅さん寅さんとね、夜も日も明けねえありさまよ。ヘヘへ


女中お酒持ってきて、寅それ見て

寅「ごくろうさん、うん。おいちゃん、うん、おいちゃん、
  一杯いこう、さあいこうさあいこう



館内電話が鳴る。


寅に余興の内線が入る。


女中さん、電話に出て

澄「はいはい、は、はいはいはい

澄「
寅さん

寅「はい

澄「
雪の間で余興頼むってさ

寅「
冗談じゃねえよ、誰にもの言ってんだ、オレは余興なんかしてまわる
  軽薄な男だと思ってんのか!



澄「気が進まないんですって、寅さんは。お嬢さん…ええ…

寅、『お嬢さん』キーワードに過剰に反応し、
赤ランプ点滅でいきなり電話口に吹っ飛んできて



寅「
あ、女将さん、ハイ雪の間ですね!
 ハイ了解!ただ今直行!どうぞ!

 これだよ、ったく ┐('〜`;)┌




                   



寅「おいちゃん、ごゆっくり

寅、目がハートになって階段転げて、
女中にぶつかって、あわてて駆けて行く。


おいちゃん「知らねえよ、オラァ…

おばちゃん「

女中さん「
お客さん、御存知なんですか?寅さんを

おいちゃん「え、えー、別に、な?な?

おばちゃん「うん

澄「そうですかあれがね、元テキヤだったんですよ。ええ。
 半月ほど前でしたかねヒョッとやって来て、あの、電子の力でなんとかって…、
 
健康バンドってインチキなものを売りに来ましてね

 第1作ではおいちゃんやおばちゃんに勧めてたね(^^;)
 おばちゃん、心当たりがあるので、おいちゃんに合図。

 
おいちゃんも頷く。

澄「そいでまあ、自分が腹下しちゃって、
 何べんも何べんも便所を借りに来るんですよ。
 ここの女将さんがすっかり同情しちゃって宿に泊めたんですけどね。
 そのまあ、宿代も持ってないんですよ。
 自分じゃ、薪割りでも、風呂たきでも何でもするって、
 そのまま
捨て猫みたいに居ついちゃったんですけどね。
 それでまあ、人助けのために番頭してんだなんて、へへ、
 知らないお客さんにまで吹聴するんですけどね。

 いいえね、毎日ここの
女将さんの顔見たさに番頭してるって
 町中の評判なんですよ、
 知らないのは自分だけなんですけどね、可哀想に、フフフフフ



そうとうバカにしてなきゃ出てこないよ『捨て猫』って言葉は。
寅がこの旅館でどう思われ、どう扱われているかがよく分かるね。
柴又のとらやでは、それなりに大事に扱われている寅も、旅先では
このようにからかいと差別化の対象となることもしばしばあったことは、
想像に難くない。世間の風は生ぬるくは無いからね。だからこそ、
ほんの時おり、受ける人の世の情けが人を成長もさせるのだ。




                   




おいちゃん、ダメだこりゃの顔 ((((-。−;)

おいちゃん「はあ〜…




                   




澄「余興の最中に夢中で
  女将さんの名前を叫んでしまうくらいなんですよ。
  
お志津〜!って




おいちゃんおばちゃん「オシズ〜!?

ああ…もう誰も止めれないよ ヾ( ̄◇ ̄;)



                   






雪の間


寅と染奴が余興をしている。




花笠道中 三番の歌詞



客たち「♪亭主〜、持つなら堅気をお持ち〜、
  とかくヤクザはぁ〜苦労の種よ〜、
  恋も人情も旅の空〜…





                   




客「大統領!

客「似合うぞご両人!




                   





客、横の女中に

客「よ、姉ちゃん、本当に言うんだろうな

大きく頷く女中の千代。

染奴「
それじゃどうあっても行くのかえ?

客「ご両人!

客「いよお〜〜〜!!

寅「とめてくれるな、そこが渡世人のつれえーとこよぉ〜

客「よよー!!


女中の千代が説明している。

千代「ねね、お客さんお客さん、これから

と、「お志津〜!」の声が間近に迫っていることを告げる。




                   




染奴「銀平さん!

障子を開けて


寅、見栄を切って、



千代の声「ここよ



寅「お志津〜!! ああ…(|||▽||| )




                   




客たち、「いやあああああ!!!

みんな大爆笑!

客一同に「言ったねえ!!言った言った言った!!



                   



みんなに酒の肴にされているのだが、
寅だけ自覚症状無し(TT)


この無残なまでの寅の滑稽の上にたった
力強い笑いがこの作品の核だ。

笑っている方は寅の岡惚れをバカにしているのだが
寅にはやましいところは一点もない。
心は高嶺の花のマドンナに憧れる純粋な少年なのだ。




寅、お酒を注いでもらいながら、
なぜこんなにもうけているのか分からないまま
愛想笑いをふりまく。



しかしまあ、それじゃ、本物のバカだよ。
普通自分の発言くらい自分で自覚あるって(TT)







湯ノ山温泉  バス停


寅、バスの外から、窓に向かって
ぴょんぴょん跳ねながらしゃべっている。



寅「おいちゃん、開けろ、開けろ、開けろよ。
 なんだい、もう二、三日はゆっくりしていくかと思ってたらよ、
 もう帰んのかよ、残念だな、フフ


あんたがいるから逃げるんだってばゞ( ̄∇ ̄;)
おいちゃんとおばちゃんは、寅がバカにされ失恋してしまうのを
やっぱり見たくないんだろうね。





                   




おばちゃん「ほんとに、残念だね

おいちゃん「あのな寅さん、堅気になったのはいいけどよ、
    その、なんだよ、あんまり高望みしないで、地道に、な



寅「エヘヘへヘ、他人のこと心配するなよ、
 自分のこと考えたらよ、もう老い先長くねえんだからよ、
 老夫婦、一つ仲良く暮らすこと考えたほうがいいぜ、えー、
 そうあまりオレに心配かけんな、おい


おいちゃん「ああ、わかったよわかった

バスの車掌さん「寅さん、発車しますよ

寅「年寄りが乗ってんだい、ゆっくりやってくれよ

おいちゃん「ふん、年寄りだってと嫌がっている。


おばちゃんもふくれている。


バスの車掌さん「お待たせしました。発車


寅「よ、よ、よ!、さくらに来いってよ、こんど。
 あ、来年になったら一緒に来てくれってよ、
 さくらの花が咲く頃にはね、
 あんちゃんの日本一の晴れ姿見せてやるからよ。
 あばよ!おいちゃん、ぼんやりしてっと危ねえぞ、
 気をつけて行けよォー!いいかー!



と手を振っている寅。


そこへ信夫の乗ったバイクがスレスレに乱暴に走り去っていく。

寅「
おう、危ねえ、危ねえ、危ねえ!危ないおい!

と後ろに下がり転んでしまう。



おいちゃんたち、寅の転んだ様子をバスの最後部の窓から見ている。


おいちゃん「あ、あ、あ、あーあー、知らねえよおりゃ…

今日も出ました決め台詞(^^;)




                   








餃子の店  ラーメン屋 

(ロケは旅館翠月一階)


店長はあの第18作でお披露目した『お掃除芸』の大杉侃二郎さん!


オートバイが急停車し、信夫が入ってくる。


『旅笠道中』が流れている。


中では芸者の染奴(本名は染子)が、仲間とラーメンを食べている。

染子は信夫を見て驚き、少し顔がほころび


染子「あ、信夫さん…


信夫、ポケットから手紙を取り出し、顔の前につきつける。



                   




信夫「これはどういうことだ!手紙をよこすなってのはどういうことだよ!

染子「手紙のやり取りしたからってどうなるの?と、わざとそっけなく振る舞う。

信夫「君、あの噂は本当か?君が芸者やめて妾になるっていう噂
染子「

染子、黙っている。

寅の声が外でする「おい、オヤジよ」


信夫、反応しない染子に怒って、彼女の腕を掴む。




そこへ寅が入ってきて

寅「あれ?」と信夫のヘルメットを叩き、


寅「なんだ、てめえ、さっきのヤツじゃねえか、
 なんだい昼間っから女の手なんか
 握りやがって、どけよ、ほら




                   



信夫、寅を押しのけて


信夫「うるさいな!とにかく外へでよう、話があるんだ

と無理やり彼女を立たせようとする信夫。



染子その手を振り解いて



染子「話す事なんかなんもあらへん。
  なんで今ごろ出てきてガタガタ言わなならんの、
  東京で毎日のんびり大学に通ってたらええやんか



信夫「大学なんかやめたよとっくに!


染子、少し驚くが、知らん感じで、そっけなく


染子「そっか、そらええ身分やな、
  うちから授業料送ってもらって遊びまわってたんやろ



信夫、染奴のハンテンを寅にぶつけて、彼女を睨み続ける。


寅「
あいた!なんだこのヤロウ、
 おい!垢抜けないよおまえは、いやだって言ってるだろ、
 帰れ帰れ帰れよ、おう、染奴よ


染奴「うん?

寅「どうだい、気分直しによ、
 お宿に帰って寅さんとオイチョカブでもやんねえか


染奴「やろやろ、今日は負けへんでェ〜

寅「何言ってんだい、おめえたちが逆立ちしたってよ、
 はばかりながら猪鹿蝶はどんとこいだい!
 ヘヘへ、あ、行こう


染子「うん



                   




信夫、ぶちきれて寅の腕を取って引き止める。



寅「なんだよ、嫌いだよ、
 お前は、あれ?ははあ、そうか、お前横恋慕してんね、
 その顔に書いてあるよ。

 何だよ!、
 おまえみたいな腐れインテリはな、染奴は嫌いだってよ、
 オレみてえな男が好きなんだい、
 な、そうだろ


染奴「うん、…

寅「ほらみろい


信夫いきなりコップの水を寅にかける。

渥美さんの左頬スレスレを水が飛んでガラスに当たっていった。
上手い!河原崎建三さんの神業(^^)


信夫「表に出ろ!



                   





寅「オッ、あ、そうか、僕が会話でいこうというのに、
 君は暴力で解決しようとういのか、
 上等じゃねえかよ、血の雨降らしてやるよ!



第2作「続男はつらいよ」でも、入院中に医師の藤村に↓のように喧嘩を売っていた。
君はに喧嘩を売ろうと言うのか、よーし、それがいやしくも患者に対する
医者の態度か、僕ら患者は…!

この時と同じパターン。


信夫いきり立ってドアを乱暴に開け外へ出る。

寅、信夫が開けたドアに頭をぶつける。古典ギャグです(^^)

ゴッ!

寅「チキショー!アア!

染奴「やめて!寅さん


寅「あのやろう、不意打ち食らわしやがったよ、
 チキショウ!待ってろい!







橋の上 (ロケは蒼滝橋) 中之島公園



シリアスな音楽


寅、欄干に足を乗せて、ハンテンを脱ぎ捨て、


寅「そっちから勝手に仕掛けた喧嘩だ、しきたり通りいきゃあ、
 ゴロ面通ははぶかせてもらうところだが、
 あんさんとは、縁もゆかりもない初対面。
新面通(あらめんつ)だけは
 通させてもらうぜ。



「仁義」を博徒内では、「チカヅキ」(近づきの仁義)、
テキヤ仲間では「メンツー」(面通)とか「アイツキ」と言う。
最近では、仁義をきらず名刺を用いて普通にやり取りしているようだ。




半身に身構えて仁義を切る。


寅「お控えなすって、さしつけました仁義失礼さんでござんす、手前、
 生国と発しますは関東にござんす、関東関東と申しましても
 あんさん関東いささか広うござんす。西に富士、東に筑波





                   





信夫、折りたたみナイフをパチンと出して、
いきり立っている。


                   


このシリーズで刃物沙汰の喧嘩はこの時だけ。
山田監督はこういう喧嘩は嫌がるが、森崎監督は平気。


寅、ぎょっとしながらも

寅「北に、北に…


信夫、ナイフを突きつけながら震えている。


寅、ナイフの先を見ながら、震え、

寅「ネオン、ジャンヌ高鳴る大東京、

 注意一秒怪我一生、
 危ないことはやめましょう、ねえ、へへ
と苦笑い。
おいおい交通標語だよ…ゞ( ̄∇ ̄;)

ジャンヌとは「ジャズ」のことらしい。


啖呵きって、カッコつけてるわりには、ナイフ一つで、
タジタジの逃げ腰になるなんて
だらしなって言うか、口ほどにもないね、相変わらずこの男は(^^;)




                   




志津さん「待って!


志津さんが道子を連れて走ってくる。


寅「あ、お志津さん!


寅、橋の欄干に上りながら

寅「危ねえ危ねえ!来ちゃいけねえ!お志津…あああ!!

と、足を踏み外して橋の下に落ちていく寅。


シリアスな効果音


ザブーン!と大きな音。



                   




志津さん「寅さん!







もみじ荘   志津の部屋



志津のテーマが美しく流れる。



おでこに濡れタオルをのせた寅、モーローたる目を開く。

部屋を見渡していくと、

お琴や羽子板、着物が置いてあるので、そこが女性の部屋だと分かる寅。

そのままぐるりと見渡すと、そこに志津さんが、涙を潤ませて横を向いている。



寅「…!恥ずかしくて横を向く寅。




                   




志津さん、気づいて

志津さん「お目覚め?、寅さん


寅「え…へ、へい


志津さん「よかった…。お医者様はね、
    軽い脳震盪おこしただけだから
    大丈夫だとおっしゃってくださるんだけど、
    私、心配で、心配で…



寅って医者に結構かかっているんだよね。

若い頃は盲腸で手術したり、
第2作では救急車で入院したり、
第3作ではこのように脳震盪で医者に来てもらったり
第22作でも救急車で連れて行かれてガスだまり。
第23作では便秘の薬をもらいに病院に行ったり、
第25作では行き倒れで、医者に来てもらっていた。
第29作では恋煩いで医者に2回もかかり、
2回目は鎮静剤を打ってもらっていた。
第45作では足を捻挫して救急車でまたもや病院へ。





寅「ありがとうござんす。
 あっしみてえなヤツにそれほどまでに…





                   


志津さん「私こそ、なんとお詫びしたらいいか…


寅、感極まって


寅「お志津さん!



そこへさっき喧嘩した弟の信夫が現れる。


怯えて、緊張する寅。ナイフ…(((((^^;)


志津さん「あ、弟の信夫なんです。
    信夫さん、ちゃんとお詫び申し上げなさい。
    この方、うちのために一生懸命働いてくだすっている人なんですよ



信夫、寅を目で睨み、スッと二階に行ってしまう。



志津さん「信夫さん!



志津さん「寅次郎さん、申し訳ございません


寅、正座して小さくお辞儀。


志津さん「昔はあんな子じゃなかったんですけど、
    母が亡くなってから急にぐれはじめて、
    今ではたった一人の肉親の私にさえ、
    口もきいてはくれないんですのよ。
    大学も行ってるのか行ってないのか…、
    いったい、何を考えてるんだか…。

    私ね、あの子が自殺でもしやしないかと思って心配で…




寅「自殺を〜?



                   




志津「(信夫の)日記に『自殺とは、人間だけが取り得る最も英雄的な行為である』。
   なんて書いてあるんです


寅「ははあ〜、それは完全なイロノーゼですよ。

寅「ええ。尻っぺたの青いインテリが、
 とかくかかりがちなイロノーゼってヤツですね。
 
つまり色気って言うのは頭に上っくるんで、
 それでイロノーゼです。

 これはすぐ治るんじゃないですか。
凄い理屈(^^;)


このあたりも途中の『ええ、尻っぺたの…』から寅の声質が変わる。
繋がりがギクシャクしてちょっと流れが悪い。もったいない。



                 



志津「治るかでしょうか…寅に聞くなって ゞ( ̄∇ ̄;)


ンテリというのは自分で考えすぎますからね、
 そのうちオレは何を考えていただろうって、
 分かんなくなってくるんです。

 つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、
 配線がガチャガチャにこみ入っているわけなんですよね、
 ええ。

 その点私なんかが線が一本だけですから、
 まァ、いってみりゃ空っポといいましょうか、
 叩けば
コォォーーンと澄んだ音がします。
 なぐってみましょうか




なにかめちゃくちゃ言ってるんだけど、
本質的な部分は、きちんと言えてるとも思う。
この世界の生命存在としてどちらが強いか、
どちらが生き物として輝いているか。


1992年の東京大学の国語の入学試験の小論文にこの↑部分に関する
自分の意見を述べよという問題が出たらしい。




                   




志津さん「いえいえ…、寅さん、
   本当にいろいろと心配していただいて
   ありがとう、これからも力になってくださいね



志津さんもよくこんなバカ話、
真面目な顔で聞いてるね、ご苦労様(^^;)







もみじ荘 部屋


信夫がぽつんと座っている。


寅は信夫を呼んで究極の口説きテクニック
隠し剣こたつの恋
を伝授。(^^;)


染子も寅に呼ばれてもうすぐここに来るようだ。




相変わらず機嫌が悪い信夫。


寅「なんでなんでい、仏頂面しやがってよ。

寅「いいか、おう、良く聞けよ。若い男がだ、
 たった一人の女のことでもって、
 もたもたしているなんてのは
 衛生上良くねえよ。なぁ。

 だから頭に血が上ってよ、ヒューズが飛んじまって
 人のことぶっつり殺したくなるんだ。

 こういう恋愛ってのはね、
 
ベテランに任せておけよ、悪いようにはしねえからさ。
 いいか、(小指を立てて)相手はシャーゲだよ。
 芸者は芸者らしく座敷で口説いたらいいんだ。

ベテランて誰のことや(−−;)


志津さんとのカットからこの座敷への繋がりが
どうも悪い。この辺の流れがスムーズにならないと
映画がギクシャクしてくる。もったいない。




                


良く見てろよ、オレがこれからどんないい女でも
イチコロで口説く方法を教えてやるからな。

オレが口説くって言うのは口で口説くんじゃねえぜ。
じゃあ何で口説くんでしょ。
お手手」で口説くのよ





                   



信夫「お手手???


 お手手をこたつの中に入れてるわけだ、ね。
 お互いの手と手がスッスッと当たるわけよ。
 その内相手も、気の付かないフリをして
 すっと手を引っ込めようとする!
 しっかりその手を握るんだ。
 言っとくけどな、
 決して目を見ちゃいけねえよ、お手手だけ。
 これが
こたつの恋





                   



もうどうしょうもない方法だね。
頼むから、こんな寅の言葉を信じるなよ信夫(−−)


ちなみに博には第1作で「目でくどく」方法を伝授してたね。(^^;)


志津さんの声「ごめんなさい


寅は、染子が来たと思っている。

寅「はええじゃねえか、おい、な、
 じゃオレちょっと座外すからよ
 うまくやれ、いいか、うまくやれよ。
 いいか、さりげなくだよ、さりげなくな



信夫、半信半疑で、小さく何度も頷く。 信夫、マジかよ( ̄_ ̄ i)


志津さんの声「入ってもいいかしら

寅「え、え?へえ

志津さんが入ってきて

志津さん「
フフ、おもしろそうなお話が
    聞こえたのでお茶でもと、思って



寅、染子と思ったら、意外な人が入って来て、ニコニコ顔で

寅「あ、そうですかと座る。

志津さん座って

志津さん「お邪魔だったかしら

寅、照れながら、

寅「お邪魔だなんてとんでもねえ

志津さん「何の話してたの?こたつの恋(^^;)

信夫「失望している。

寅「え、ええ、今、その、日本の経済についてちょっと、な

志津さん「そうんなわけないでしょ面子を見ろよ ヾ(^^;)



                   




そこへ染子が入って来る。



染奴「こんばんは

志津さん「あら、染ちゃん、あなたも呼ばれてたの?
    さ、どうぞ、こっちいらっしゃい


寅「さあ、さあ、お入んなさいお入んなさい。
 はい、今日は特別、はい、お入んなさい、さあ、どうぞ


と、染子を信夫の真向かいに座らせて、
自分は志津さんの真向かいへ座る。


寅「さしむかいさしむかい、
 あれ?、みんなさしむかいさしむかい、フフフ
と喜ぶ。

志津さん「フフフ

志津さん「ね、染ちゃん、お父様の具合どう?

染子「ええ…まあ

志津さん「あの、信夫ね

寅「はい

志津さん「染ちゃんと幼馴染なの


染子、信夫をチラッと見る。



志津のテーマが流れる。


信夫は寅に言われたこたつの恋作戦が頭をよぎっている模様。


寅「あー、ふたりは幼馴染ですか


志津さん「ええ




                   




寅「ほー、二人は幼馴染ですか、そりゃ手間がはぶけていいや。
 えー、そうか、じゃかえって手間がはぶけていいや。
 
幼馴染はカモの味ってな、フフフ


幼馴染は、甘くておいしい鴨の肉のように、
心に馴染んで好まれる、と言う意味。




素早く寅は信夫の手をこたつに入れる。

やめろって ヾ(−−;)


                   



一方で染子の手もこたつに入れる。



マジかよ ヾ(−−;)


                   


寅「ハイ、あったかいあったかい、
 あったかい、はい、ぬっくいぬっくいぬっくい



志津さん「染ちゃんも一緒に昔こうして、
    よくトランプなんかして遊んだわね、フフフ



寅「あ、ああー


染子も笑っている。
チラッと信夫を見る染子。


志津さん「あの子…今ごろどうしてるかしら…

寅「ねえ、…え?誰が?

志津さん「え?ああ、私の幼馴染。

   私ね、近頃寅さんの顔を見ると、
   なぜだか、その、幼馴染を思い出すの


寅「へえ…、あっしに似てますか

志津さん「ええ、そっっくり。
   元気がよくて、男気があって、
   その上優しくって、
   私が腕白坊主にいじめられて泣いてると、
   飛んできてかばってくれたわ


あ〜あ、志津さん、そんなこと言ったら、
寅がますますくっついてきちゃうよ。

第10作で千代さんも同じこと言ってたなあ…。


染子、下を向いたままの信夫になにか話しかけようとするが、
信夫はそれに気づいていない。


染子は、信夫から話があるから来てくれと
寅に言われて来たのだろう。何もしゃべろうとしない信夫に
ヤキモキしている。




                   




染子は黙って下を向いてしまう。とても不満げ。


一方寅は、志津さんにそう言われて喜んで

寅「
そうですかあー、女将さんほど美しきゃあ、
  誰だってそうしますよ


志津さん「ほんと?

寅「ええ、たとえ火の中水の中、いいえ、
 飛び込めと言えば
ウンコダメ
 中だって。。。


急に志津のテーマが止まって…



寅「
フヒヒー…


と急に手をもぞもぞしながら
顔を真っ赤にして照れまくり。




寅「入っちゃうもん…フフと下を向く。

やめろってシモネタは…ヾ(−−)


志津さん「まあ、どうもありがとう、
    じゃあ、一本つけなくっちゃね



志津さん立ち上がる。


寅、何を勘違いしたのかまだ照れまくって


寅「ほんとに入っちゃうもん

しつこい(−−;)


志津さん「寅さんと言いながらお酒を取りに行く。


寅「
ヒヒ…入っちゃうなオレな、ヒヒヒずっと真っ赤になっている。

これだけずっと照れてるところを見ると、
コタツの中で何かおこってるな。



染子「ンン!と咳ばらいして。

染子「信夫さん

寅「ハイ」 ちゃうってヾ(^^;)

染子「あんた、ウチに話があるんやないの

寅「いいえ」 ちゃうってばヾ(^^;)


あせった信夫、目を見開いて、染子を見つめる。




                   




信夫、必死の形相でなにか力んでいる。

寅も照れながらなぜか力んでいる。


染子、そんな信夫に呆れて立ち上がり、部屋を出て行ってしまう。

信夫必死で立ち上がろうとするが、何かに引っ張られて立てない。


ようやく信夫も寅も自分たちが手を
握り合っていた事に気づき真っ青になる。


寅、信夫の手をしっかり握っている自分の手を見て



                   




寅「
バカ野郎!おめえもな ヾ(−−;)

と、信夫の頭を畳に押す。


ひっくり返る信夫。

寅「なんでてめえ、コタツの中でオレの手を
 握ってやがんだい!
 うすッ気味悪い野郎だな、
 この色キチガイ!


よく見ろよ、寅が握ってんだろうがヾ(−−;)



信夫「どっちが色キチガイだい!


寅「なんだ、このチカン!
 何で人の手握ってやがんだい!
 この変態!ぶっ飛ばすぞ!



信夫「だって君だって僕の手グッと
  握り返したじゃないか



寅「てめえの手だとは思わねえから
 握り返したんじゃねえか!



信夫「じゃあ誰の手だと思ったんだ?

座布団一枚(^^;)

寅「……

信夫「フン、なるほどね


信夫にもすぐに見破られ、
これでこの町で寅の岡惚れを
知らない人はいなくなった ┐('〜`;)┌





                   




信夫、怒って出て行く。

寅「おい、待てっていうんだよ

と、追いかけるがこたつに足を引っ掛けてこけてしまう。


寅「あ、いたたった…おい、待てよ







数日後


三滝川の流れる 大石橋



勇壮な僧兵祭の行列


三重県菰野町湯の山温泉にある三岳寺の祭りで、
「僧兵まつり」が毎年10月8日〜10日の3日間、湯の山温泉あげての祭りとして行われる。
「僧兵まつり」のおもなイベントは、600kgにもなる大きな樽みこしを僧兵姿の人々が
かつぎ松明百本ほどつけて練り歩く「火炎みこし」が有名。



その中を信夫が走り抜けていく。

停めてあるオートバイに乗って出て行こうとする。


ここも、前のシーンとの繋がりが悪く、
物語の流れが悪い。





志津さんが、気づいて追いつき

志津さん「
信夫さん


信夫「ほっといてくれよ!
  オレこの町にはもういたくないんだ。
  姉さんにももう一生会わんし、迷惑もかけん、
  今後一切姉さんとは関係ないんだ。
  それでええやろ



信夫「オレは姉さんの期待通り、
  あの旅館を継ごうなんて気はもともとなかったんだ。
  売るなりぶっ壊すなり、
  姉さんの好きなようにしてくれていいんだぜ。


志津さん「それであなた、どうしようって言うの?
    本当にやりたいことあるんなら、
    それを言って、本当にやりたいことするんだったら
    姉さん、猛反対しないわ



寅「いよう信夫さん、どこいくんだよ

志津さん「あ、寅さん

志津さん「理由も行き先も告げず、二度と帰ってこないと言うのよ


寅「はぁ、またイロノーゼが出やがったな。
 おい理由も行き先も告げずに、
 プイと飛び出すなんてはテキヤ風情のやるこったぜ。
 大店の若旦那のするこっちゃねえ。

 女将さん、ここは一番私に任せてくださいよ。
 必ず一度はここに帰ってくるようにさせますからね





                   




志津さん「お願いします志津さん寅を信用していいのかい(−−)


寅「おい、じゃ行こうか

寅、信夫のオパトバ.イのうしろに乗る。

信夫「どこへ行くんだ

寅「どこへ行こうって、
 お前の腹は読めてらあな、さあ、発車だよ、ホラ



と、ヘルメットを叩く。


この辺はさすが人生の玄人だね、寅は。
染子を諦めきれない信夫の心が読めるんだね。



                   




オートバイ、スタートする。



寅、振り落とされそうになりながらも
志津さんに向かって手をふる。



寅「行って来ますよ


うわ!道の前はロケの見物人でいっぱい(^^;)







四日市のコンビナートの見える漁村

三重県四日市塩浜2860 付近

2012年、友人の京都の寅増さんが場所を発見され、現地で調査されました。


    


現在の鈴鹿川越しに見える風景。

        


この塩浜付近は当時から四日市喘息の中心地。

遠くに煙突から煙。



染子が魚を干そうとしている。

寅を乗せた信夫のオートバイが来て停まる。


染子「信夫さん!



                   




染子の前に信夫と寅が降り立つ。

テーマ曲が流れる。

寅、ぐるりと村を眺めて


寅「庶民の暮らしは貧しいなあー…



深い感慨にかられている。





                   





染子の家



傾きかかった家の中で、父親の清太郎が
染子たち三人に背を向げて不機嫌な顔をしている。



寅「へえ、なるほどねェ、聞くも語るも涙の種たァこのことだよ。
 そうか、ヨイヨイのお父っつあんをほったらかして
 自分だげいいメを見るわけにはいかねえ、
 だったらいっそ妾になって、お父っつあんの惜金も払い、
 好きな焼酎も一生飲ましてやろうじゃねえか、はああ〜、

 見上げたもんだ屋根屋のフンドシ、
 田へしたもんだ蛙のションベンてやつだい、ねえ、
 文都省も何でしかしこんな孝行娘を文部省選定にしねえのかなァ…。
 まったくなあ、ねえ、お父っつぁん



不機嫌に寅を睨み、横を向く清太郎、グイと焼酎をあおる。


寅「おう、若旦那、お前も染子のことあきらめろい、
 せっかくの美談を何もこわすこたァねえんだ。

 染子もよ一、こんなグータラのバカ旦那なんかに
 惚れてるこたぁねえんだ……さっさと妾になっちまえ



何かを考えてわざと、きつく言っている感じの寅。



信夫「オレはイヤだ。オレはあきらめない、
  オレだってその気になりゃ借金だって返せるし、
  このくそ親爺に焼酎ぐらい飲ませることが出来るんだ





                   



寅「やめろよ、ムダだよ。
 お前みてえなグータラにゃ出来る話じゃねえよ



信夫「そんなことはない!
  あの旅館を叩き売りゃ、そんな金ぐらい何とでもなる!




寅「バカヤロー!

いきなり信夫の頼を張りとぱす。



染子、ころがった信夫にとびついて、寅に

染子「何するの、あんた!



.寅「そのバカ旦那には、そのくらいのことして
 やんなきゃ分からねえんだよ。

 見てみろ、このヨイヨイの父っつあんを、ええ。

 貧乏人ってものはな、一番つらくっておめえ淋しい時はよ、
 金持に札束でほっぺたぶったたかれる時だい。

 金がねえんだよ、こりゃ。
 だから孝行娘を妾に出さなきゃたらねえんじゃねえか、
 なぁ!その辛さ悲しさにじっと堪えてるんだい。
 おめえみてえにケツの青い若僧にその悲しさが
 分かるかいバカヤロ



染子下を向いて沈んでいる。



信夫、寅の襟髪をつかむ。


寅「何だよォ


信夫「(涙がにじみ)オレだって分かる、
  オレだって……
  染ちゃんを金で無理矢理奪いとられるんだ……
  畜生!畜生ォー!ううう




                   




染子「……



染子土間で呆然と立ち尽くしながら、
座敷で泣いている信夫を見て、
押し殺していた気持ちが溶け出し、
寅を押しのけ、父親に直談判する。



寅、頭を障子の角で打って、


寅「アイテ、アイテ、アイテーッ


染子、清太郎に向かって叫ぶように、


染子「お父ちゃん…、ウチ妾なんか行きとうない、
  信夫さんのお嫁さんになりたいんや!
  ね、お父ちゃん!




遂に抑圧していた本音を
父親にぶつけたね、染子さん。





                   





清太郎の眼に満眼の涙。

清太郎、回らぬ舌で、

清太郎「アアアアアイイイイ……

と意味のとれない片言を言いながら泣き始める。。



染子「何!?何言いたいの!?


清太郎「アアイイアアアイ……




                   




寅「染ちゃんよ、分からねえか、
 お父っつあんはな、『嬉しい』と、
 こう言いなすってるんだ、
 そうだな、お父っつあん





                   




清太郎.「……


涙とヨダレを垂らしたがらうなずく。


染子「ほんとう?お父ちゃん


清太郎「アアイイ…アイイイ…


染子「何?何よ、はっきり言ってよ、え?




                   




寅「よし、オレが分かるように言ってやろうじゃねえか、
 お父っつあんはこう言ってるんだよ。

 『染子、お前が妾に出る時も、芸者になると言った時も、
 黙っちゃいたが腹の中じゃ悔しくって泣いてたんだぜ、
 今は嬉しくて泣いてるんだ、それが分かるか染子』

 お父っつあん、こう言いなすってるんだね




清太郎、泣きながら何度もうなづく。



寅「
そうよ、へへ!オレにゃ分かるんだ凄すぎ…。



                   




清太郎、涙顔で何度もうなずく


染子「………


寅.「さ、二人とも!
 いつまでモタモタしてるんだい、
 お互いにしっかり手に手を握りあって
 一刻も早く駈落ちしろい!





                   




清太郎「(うなずく)……



清太郎、感極まり、涙ぐみながら、
染子の手を何度も握って、頷く。

早く行けと、手で合図。



染子「お父ちゃん…と涙ぐむ。



寅「染ちゃんよ、お父っつあんのことは心配するない。
 東京は浅草の観音様の境内に、お父っつあんみてえに
 テキヤのナレの果てばかり引きとってな、
 ゼニもとらないで治療してくれる奇特な医者がいるんだよ。

 お前たちが東京でメシが食えるようにたったらよ、
 そこへ引きとりゃそれでいいんだ、なぁ



そんな医者いないよ普通は…。
フーテンで旅人の寅が一緒に浅草についていって
そこまで面倒見れるとは思えないけどなあ…。
この親父さんを誰が東京まで連れて行くんだろ。
調子のいいこと言ってるけど責任取れるのだろうか?

これはちょっと都合よすぎる話のような気が…。



                   





信夫「寅さん!すみませんっ!と頭を下げる信夫。


寅「バカヤロ!オレに礼する奴があるかい、
 こんなものとってよ、
 お父っつぁんのほう向いて
 畳に頭すりつげて礼言いな
と信夫の頭を押さえる。




信夫、首のギブスをむしり取って
頭を深く下げる。


清太郎は、手で、早く行けと合図。

花沢徳衛さんの渾身の演技が光る
この作品の名場面。


そして、意を決して染子の手を
ひいて逃げるように去る信夫。
頷き信夫と一緒に飛び出していく染子。



このあたりの演出は実に森崎さんらしいリズムだ。
映画「女は度胸」の花沢、渥美、河原崎の男3人組が、
この「フーテンの寅」でも再登場!感慨も深い。





                   




激情のあと

静かに取り残される寅と清太郎。




窓の外はもうとっぷり暮れている。


オートバイの発車音が聞こえ、
窓から二人が去っていくのが見える。



清太郎「ア……ア……と、神棚を指差す清太郎。



寅「分かっておりますよ、
 アンさんご同業でござんしょう。
 長の年月、稼業お疲れさんでございました



と頭を下げる寅。



清太郎、神棚から一枚の紙片をもって来て寅に示す。


心の中で仁義を切る


寅、それを広げ、読む。



メインテーマが静かに流れる。



寅「『勢州朝日家十二代目新居六兵衛
 実子分田代熊吉、舎弟、坂口清太郎
』」



勢州とは昔の伊勢地方の呼び名。




                   




寅、マフラーを取り、かしこまって、


寅「遅ればせの仁義、失礼さんでござんす



半身に構えて仁義を切る。




                   




寅「私、生まれも育ちも関東、葛飾柴又です。
 渡世上故あって、親、一家持ちません。

 カケダシの身もちまして姓名の儀、
 一々高声に発します仁義失礼さんです。

 姓は車、名は寅次郎、
 人呼んでフーテンの寅と発します。

 西に行きましても東に行きましてもとかく土地土地の
 おあ兄さんおあ姐さんにご厄介をかけがちたる若僧です。
 以後面体お見しりおかれまして、
 恐惶万端引き立って、よろしく、おたの申します




うなずきながら聞いている清太郎も感無量になっている。



この染子の家でおこる激情の物語の脚本は、
おそらく山田監督ではないだろう。
山田監督は、このような激情的で直接的な脚本はまず書かない。
これは森崎監督の筆が入り込んでいると思われる。

そして、山田監督は、このような過激ともいえる、
渡世人寅の演出は嫌がるところだろう。実際に、後にそのような発言を
されているのを読んだ事がある。

このような演出は、あまりにも生々しすぎるし、そのような渡世人映画なら
わざわざこのシリーズで演出しなくても他にもあるからである。

しかし、このシーンの存在があったおかげで、この先のシリーズで、
どのように寅がモテモテになり、聖人君子に近づいていこうが
頭の隅で、旅先で寒風に吹かれ小馬鹿にされ、笑われながらも
逞しくキップよく人助けに励む渡世人寅を思い出すことができるのである。

それにしても寅にマフラーは似合わないね。胸元はスッキリさせた方が
すがすがしいとは思う。






大石橋のたもと 夜  三岳寺の行事



憎兵祭の
火炎神輿の行列が大きな掛け声とともにゆく。



僧兵たち「わっしょいわっしょいわっしょい


一隅で恋人の吉井と志津さんが
肩を並ぺて行列をみている。



そこヘオートバイに乗って信夫と染子が
やって来て二人の前に停車する。



志津さん「信夫さん!




                   




信夫「姉さん、オレ、これから染ちゃんと一緒に東京で働くよ

志津さん「……

信夫「これで理由も行先もはっきりしたから、
  もういいだろう。
  じゃ行くぜ



志津さん「信夫さん、荷物なんかは?


信夫「荷物?
 荷物はうしろに乗ってらア、
 こいつを担いでオレ一生歩くんだ。なっ



信夫、一世一代の啖呵だねえ。
そして愛の告白でもあったんだね。
染子さんは、この言葉一生覚えてるよきっと。



力強くうなずく染子。


染子「うん



                   



志津さん「(染子に)おめでとう。
   信夫のことお願いしますね



染子「はい


真摯な顔でうなずく。



                   







信夫「姉ちゃんたちも
  早いとこはっきりしたほうがいいよ、
  でないと…罪作りだぜ


志津さん「……


この発言からすると、たぶんこの吉井さん、
何年も待ってるんだろうねえ…。





信夫と染子、爆音を残して僧兵の歩く間を去って行く。

おいおい行事の迷惑だよ、それじゃ ヾ(^^;)



無言で見送る志津。


吉井「これであなたもあの旅館という大きた荷物を
  一生背負って歩くことになったわけですね…



と、吉井は小さくため息…。


志津、はっと顔を上げて、

志津「いいえ…、わたくし決心しました

と、強い目をする。




                   




吉井、志津を見る。

吉井「



黙って行列を見つめている志津、







もみじ荘・志津さんの部屋


志津さんとお澄、徳爺の三人が重苦しい沈黙の中に坐り込んでいる。


澄「よく分かりましたよ、いいえ、お嬢さまがよくそこまで
 ご決心なさったもんだと思うんですよ。
 売り払うか、旅館を引き続きするか、
 なんてそんた大事なことは
 ご主人のお嬢さましか決められないことたんですよ。

 実はね、信夫さんのことがあった時、
 この徳さんと話したんですよね……
 いずれはこういうことになるかも:…。

 だって、旅館をお続けになる限り、
 お嬢さま吉井様とご結婚できないんですからね




志津さん「そう……知ってたの、吉井さんのこと。
   実はね…今年中に
仮祝言をって、
   向う様では言ってらっしゃるの



澄「そうですか、フフフ、それは、おめでとうございます

志津さん「ありがとう……

志津さん「それで……心配なことが

澄「私達のことなんですか?

志津さん「ええ




                   




澄「あたしは娘のところへ行きますよ。
 お嬢さんのいらっしゃらないもみじ荘には未練ありません。
 私もね、正直言って疲れましたしね、
 のんびり孫の世話でもして暮らしましょう


志津さん「そう……。で、徳さんは?

徳爺「ああ…、わしはもう隠居だ、ハハ、あー……

志津さん「……あと、お千代さんや板前さん達のことね


やっぱりというか、そんな…と言うか…
寅は志津さんの心の数に入ってないんだね…(TT)



澄「そりゃ、明日にでも私から話しましょう。
 残るのもいいし、他所へ行くのもいいし、
 あの人達はひっぱりだこですよ、人手不足なんですからねェ


徳爺「うん

志津さん「……じゃ、そういうことにして貰って……


徳爺「もう一人おるぜェ

澄「誰が?

徳爺「寅だよォ


澄と志津さん、顔見合わせる。




あれだけこの旅館につくしても、
寅はやっぱり数に入ってないことが、
ハッキリ分かるキツイ場面。








鈴鹿山脈のメイン  御在所山(御在所岳)


湯の山温泉から標高1212mの御在所岳を結ぶロープウェイ。
窓からは湯の山温泉街や四日市市街、伊勢湾を一望。


三重郡菰野町と滋賀県東近江市の境にある標高1,212mの山。
正式名称は御在所山。鈴鹿国定公園の中に位置し、






ロープ・ウェイ  ゴンドラの中


寅と道子が乗っている。

二人手を振りはしゃいでいる。



道子「鳥がとんでる、鳥がとんでる、鳥がとんでるよ


寅「へへへ、面白いね!へへ、こりゃ




                   



美しい紅葉を下に見ながらゴンドラが御在所岳に向かう。






御在所岳・山上公園 朝陽台広場


初冬の鈴鹿山脈が美しい。

真正面に美しい形の鎌ヶ岳が見える。


寅が道子を抱いて美しい透き通った景色を見ている。
道子は寅の背広をかけてもらっている。


寅「空気が澄んで気持がいいや、なあ、ウーム

寅「へァクション!


クシャミを立て続けにする。


道子「おじちゃん、大丈夫


寅「なによ、尻のカッパよ、
 へクション!へクション!へクション!ハァクション!



どうらや風邪をひいてしまったらしい。



                   



道子、心配そうに寅を見る。








もみじ荘・廊下  夜



志津さん、玉子酒をのせた盆を手に廊下を来る。


志津「ごめんなさい




もみじ荘・寅の部屋


寅、咳込みながら寝ている。


入口の戸をあげて志津さんが顔を出す。


寅「あ--…女将さん


あわてて起きようとする。


志津さん「ああ起きなくていいのよ、
    そのまま休んでいてちょうだい
」」

寅「へえ、どうもすみません


志津さん、寅の身体を寝させてやり、蒲団をなおしてやる。



志津さん「ごめんなさい、道子のためですってね、風邪ひいたの。
    玉子酒、熱いうちに飲んでちょうだい




                   



寅「ありがとうございます、お世話かけて

志津さん「早くよくなってね

寅「へえ……



志津のテーマが流れる。


志津さん、旅館閉鎖の事を言い出しにくそうに切り出そうとする。

志津さん「実は、…ね、寅さん

寅「へえ

志津さん「とても…言いにくいことなんですげどね


寅「(ギヨッとして)へえ…
 何でもおっしゃっておくんたさいまし



志津さん「あのね……」.


寅の思いつめたようた表情を見てふと口を閉じる。


寅「……


何かを期待している顔。


おいおいおいおい、寅、あんた何を期待してるんだいヾ(ーー;)




                   




志津さん「いえ…ごめんなさい…また後で言うわ


寅「………目を宙にうかせて期待度満点((((^^;)


志津さん「…お大事にね



                   




逃げるように去ってゆく志津さんだった。


寅、ボーツとなっている。


つぶやくように

寅「お志津さん……

起き上がり、熱い玉子酒をおしいただく寅。



寅「
いただきます


一口、感動をこめて飲む。

寅「かああ…

この時がこの作品で寅が一番幸せだった瞬間だった。



悲しいねえ、一人相撲で舞い上がっている寅を見るのは辛いが、
これも彼の人生。本人はその時々に幸福な気分になれるのだから、
それはそれで幸せなんだろう。



                   






帳場


お澄と志津さんが話をしている。


志津さん「(首をふる)駄目、私には言えないわ

澄「ええ?……どうして


志津さん「何だか気の毒になってしまって
   …-お願い、お澄さんから言って


澄「仕方ありませんね……子供じゃあるまいし

志津さん「すいません

澄「やれやれ、手のかかること




                   




お澄、スタスタ寅の部屋へ行く。


志津と徳爺が立っている。



しばらくたって



お澄、死にかけの熊のような顔で戻ってくる。

志津さん「言ってくれた?

お澄、志津さんと目を合わせず首をふる。




                   



志津さん「どうしたの?


澄「どうもこうもありませんよ、
 私には言えませんよ


おいおいおい、話が違うぞ…ヾ(^^;)



志津さん「……



徳爺、ヘラヘラ笑う。

澄「何がおかしいのよ、
 あんたが言って来たらどうなの



徳爺「じゃそうするか、ええ、アハハハ……

ノソノソ歩いて行く。



二人、不安げに見送る。






寅の部屋


志津のテーマがゆっくり静かに流れる。


寅、いびきをかいて眠っている。

ハイライトのダンボール箱。


徳爺「まあまあ、幸せそうた顔をして


徳爺が入って来て、眠っている寅を見て、肩に手をかけてゆする


徳爺「おい、寅さんよ、寅さんよ

寅「グーグー

徳爺「おい、話があんだがなぁ



寅、いぴきをやめ、夢うつつに、


寅「お志津さん…


徳爺の手を握りその手を自分の頼にもっていく寅。


ああああ…よりによって徳爺の手を…ああ…(TT)



                   



徳爺「よ、おい!!



                   



徳爺、腰がぬげるほど驚いて、
手を渾身の力で引き抜きざま、
身の危険を感じ(^^;)
とび出してゆく。

全員玉砕(TT)





翌朝 ケープルが行く峡谷





もみじ荘・志津さんの部屋


道子、澄に手伝ってもらって洋服を着て廊下を歩いてくる。

澄「はい、いいたア、はい、よいしょっと


隣室から外出姿の志津さんが出てくる。



千代「はい、いいなあ〜

千代が道子を玄関に連れて行く。



澄「吉井様にお会いになりましたら
 どうぞよろしくおっしゃってください


志津さん「ありがとう

出て行きかけてちょっと戻る。

志津さん「お澄さん・…:寅さん、昨夜あれから何も……


澄「そりゃそうですよ、お嬢さまがはっきりおっしゃらないから、
 
妙な誤解までしてしまって困ってしまいますよ



                   





志津さん「誤解〜…何のこと知らないわけないだろ…(−−;)


澄「お嬢さまには、お気がおつきにならないんですか、寅さんの態度


志津さん「:…


困惑に思わず言葉を失う。




                   




澄「お嬢さんの口からはっきりおっしゃっていただくのが
 せめてもの思いやりかと思ったんですよ


それは正しい。労働力だけ利用して、やめて欲しい時だけ
人に言わせるものではない。寅も寅だが、志津さんもタチがよくない。



志津さん「困るわ、そんなこと言ったって……

迷惑ならそれでいいんだけれど、
それなら一ヶ月も旅館を手伝わせちゃいけないよ。



澄「ま、仕方ありません、
 私からちゃんと話しときますから、さアお出かけください








もみじ荘・玄関

志津、困り切った顔で玄関に出て来る。



澄「ささ、お帰りは夕方頃ですか

志津さん「そうね、だいたい

澄「は、行ってらっしゃいませ



志津さん「あの、お澄さん…

澄「分かってますよ、大丈夫ですよ

志津さん「お願いしますね

澄「はい、いってらっしゃいせ

志津さん「じや

徳爺「いってらっしゃいまし


みんなでいってらっしゃい。


志津さんと道子、出て行く。




その直後、


寅が、歯ブラシを片手に、鼻唄まじりでくる。

寅「♪亭主もつなアらァ〜。姐さんさん、おはよう、ん!

千代「おはようございますこわごわ去っていく。

寅「おはよう

澄「風邪いいの?

寅「おかげ様で治ってな、ユンベの玉子酒でもってイチコロだよ、ヘヘ……

澄「ヘヘヘ……

寅「大したもんだなぁ、
 そうだ、おかみさんにちょっと、
 ゆんぺの玉子酒のお礼いってくるかな



一奥へ行きかげる寅。


澄「あーッ、ちょっとお待ち!

寅「何だよ

澄「話がある

寅「話?


徳爺、後ろで二人のほうを眺めている。



ロピーの一隅に腰を下ろした澄と寅。

寅「あ、何だい、相談てのは、
 金か、金だったらだめだぞ、オレ無いから
まあまあヾ(−−)

澄「違うよ

寅「あ-、ハハ!お前、男が出釆たね人の話聞けよ ヾ(−−;)

澄「冗談じゃないよォ

寅「じゃ、何んだい、早く言えよ、
 オレはいろいろ忙しいんだから今日


澄「そいじゃ言うけどね

寅「うん……ああ、言ってみなよ

澄「つまりね

寅「うん

澄「ここにきれ〜いな優しい女の人がいてね

と、歯磨きチューブを女将さんにたとえる。


寅「ハハハハァ、嫁さんの話か、駄目だ駄目だ、
 あたし
独身主義だから、ヘヘ…

澄「違うよ、最後まで聞きなよ!

寅「ハイハイハイハイ」.

澄「

寅「ええ

澄「この女の人は亭主に死に別れて子供がいるんだよ、子供が

脚本では生き別れになっている。


寅「ほうコブつきか、可哀想だね、それでどうした

澄「ところがね、この人をぜひほしいっていう男の人がいてね、
 大学の先生で立派な人なんだよ立派な


寅「ホウ、そりゃまた、結構な話じゃないかい、
 で何かい、こっちが嫌だっていってんのかい


澄「いいや、女のほうも好きたのさ、この相手が

寅「じゃ何も言うこたあねえじゃねえか

澄「黙って聞きなよ!……ところがね、
 その女の人に
岡惚れしてる男がいてね、
 お嫁に行くのも知らないでつきまとうんだよ、これが。
 女のほうは困っちまってね、
 何とかあきらめてもらおうと思うんだげど
 なかなか言い出しにくくてね



寅「簡単だよ。『お前はあきらめな』
 (歯ブラシで磨きチューブをタンタンタンと叩く)と、
 そうひとこと言ってやりゃいいんだよ、ええ何も悩むこ
 たアねえじゃねえか、そうだろ、へへ。

 ははぁ分かった、
 オレにその役をやってくれってんだろ、




                   


またもや、歯ブラシにチューブをつけて
歯を磨きだす寅。
二回も磨くなんて変な男だね(^^;)


おやすいご用ですよ、どこのどいっだい、
どこにいる馬鹿だい、
そいつは、オレの知っている奴かい



澄「困っちゃうよ、あたしゃア

トホホな気持ちになっている澄さんでした。




徳爺も首をふっている。


この勘違いパターンは、後に第6作「純情篇」でも使われ、
この時は、本当に寅が勝手に思い込んだスケベ医者の所まで
行ってしまうというお粗末。


                   



寅「何だい、ナァ、何もそう困るこたあねえじゃねえか。
  誰だ、板前か……だけどあのヤロー
  女房いるじゃねえか。誰?誰だ




澄「すぐそばにいる奴なんだよ


寅「だから誰だって言ってるだろ、誰なんだ


澄「分かるだろ!そんたこと言わなくたってヤケクソ気味(^^;)


寅、歯ブラシに歯磨き粉つけ磨きながら


寅「ハハァ、何もそうヒステリーになることねえじゃねえか、えー,

 その子づれの女ってのはお前一体:…・

 (気づいて)…
女将さんのことか



澄「そうだよ!


寅「そんたらオレにすぐ言えよ、ええ、
 そうすりゃオレがな、すぐにでも
そのバカによ…


近くの湯のみ茶碗を、うがい代わりに、口に含み、
口をゆすぎながら、

歯磨くの早すぎ、まったく磨けてません。



口にお茶を入れながら考える寅。



ふと顔色を変える。




                   




澄、そっとその顔をうかがう。


寅、ゴクリとうがいしかげた水を飲み、
青くなってす-…っと立ち上がる。



寅「ゴク…うはッ…うェ…



シリアスな音楽が流れる。



                   




澄、寅の顔色が一変したので恐がって、後ずさりしながら


澄「あ、あたしゃなにも……、そんなバカだなんて、
 そんな、い、言いやしないさ
こわごわ((((−−;)


逃げごしになる。




寅、ようやくすべてが飲み込めて…


寅「その…バカっていうのは…


徳爺後ろから


徳爺「そうよ、バカは、お前よォ

あああ…徳爺ぃ…もともこもないことを…。

                   


徳爺、それってそのまんまだよ〜(TT)
でもそのまんま言ってやらないとわからないのが
寅だからしょうがないか…。



寅「……!

ショックで頭が真っ白になってしまう寅。




斜めに歩いてしまってイロリのヤカンが足に当たる。



シュワアアアア


灰神楽がもうもうとたつ。



澄「いやだね寅さん!!ワー、寅さん!

徳爺「おう!おい!

澄「寅さん、こぼしちゃって!


と戸を開け、湯気と舞い上がった灰を追い払うみんな。

やって来る千代。




寅、幽霊のような足どりで歩き出し、
廊下のほうへ去ってゆく。




メインテーマが静かに流れる。


もみじ荘・寅の部屋


薄暗い部屋の中に丸いちゃぶ台。

その上に広告の裏に描いた書き置きが一つ。

黒マジックで


みなさんおせわになりました
 さようなら、とら




この字体はもう少し工夫してほしかった。
みんなひらがなだがあまりにも字体が整いすぎている。

寅の字はもっと下手だし、もっと味がある。
こういうところはこだわらないといけない。
字はその人を表すからだ。

こういうこだわりの甘さ、荒さがこの作品には見られる。
ちょっとしたところのイメージが弱いのだ。






                   










もみじ荘・志津さんの部屋


澄と千代と徳爺が集まって古い帳簿の整理をしている。

千代「ふーん、あ、そう……

徳爺「うん

千代「そんじゃ、寅さん可衰想ね

徳爺「なあに、二、三日もすりゃケロリッと忘れちまってさ、
  大体ああいう男の頭っちゅうものはな、
  同じことを五日とは考えておれんも。んじゃよ、
えーえと…



さすが徳爺は、年の功だ。
寅は恋の病にはよくなるが、いったん失恋すると、
頭を切り替えられる気質。明日には元気になっている。
悪く言うとノーテンキなヤツだが、
だから時として寅は失恋より得恋のほうが悩むのだ。
言い換えれば、皮肉にも得恋にこそ
寅の人生の悲しみがあるのである。





千代「あら!見てよ!

徳爺「う-ん?

干代「寅さん、こっちへやって来るよォ



一同、障子をあけて見る。



旅支度をしてやって来る寅、
しきりにあたりをキヨロキヨロとうかがう。

千代「
何しているのかしら、あんなところで

徳爺「オレたちが見ていないか捜してるんだ

千代「どうして……

徳爺「女将さんにな、
  一言別れを言おうと思ってるんだ、あのバカ



さすが得爺見抜いてるね。
それにしても寅への惜別の思いがまったくないんだね、
この人たちは…。


千代「じゃ、こっちへ来るんじゃないか


と部屋の中にあとずさり。


案の定、寅は、渡り廊下の下をくぐり
こっちへやって来る。




                   




部屋の中でじっと息をひそめてかがんでいる三人。


そっと障子のかげから中の気配をうかがう寅。




                   




澄、思い切って、んー
上ずった声で女将さんの声の真似をする 
おいおいヾ(^^;)




寅、ピクッと体を震わせるが、
思い切って中へ声をかける。




寅「何もおっしゃらずに
 寅の別れの一言を聞いてやっておくんなさい。

 いえ、何もおっしゃらずに……




澄「………





                   



寅「ありがとうござんす。

 いろいろと考えては来ましたが、
 いざここへ来てみるてえと、
 もう胸がいっぱいで、何も言えません。

 このひと月、寅は……
 寅は幸せもんでございました……。

 ただその一言が言いたくって、
 人目を忍んでこうやって参ったのです。

 お志津さん、お達者で…





すっと去っていく。




                   





澄たちホッとして障子に近づく。


千代、そっと、のぞこうとしているが、
澄がそれを止め、大急ぎで屈む。
障子にまたもや寅の影が戻って来たのだ。




                   





志津のテーマが流れる。





寅「……もし………、十年、二十年経って、

 雪の降る寒い夜、寝つかれぬままに
 昔のことをお想いになることがございましたら、

 『はぁぁ、その昔、湯の山に寅というバカな男がいたっけなぁ』
 とでもお想いになってください……」


寅、今まさに障子にゴトッと手を触れ、
開けようとするが、やめて




                   



寅「
ご免なすって



風のように去る。


澄たち、ホーツと大きな息をつき、
障子を上に上げて、ガラスから外を見る。。



こんな哀れで、ある意味滑稽な寅はこの作品だけ。
当のマドンナ志津さんもいないのに、切々と自分の気持ちを
訴える寅。強烈な一人相撲である。
その滑稽な告白にも似た最後の言葉を聞いた澄たちが、
その後、ホッとしながらも神妙な顔をしていたのが
救いかもしれない。

しかし、この作品はこのあともうひとつ
大きなパンチが待っている。



ところで、急に出ていった寅は、染子の親父さんを
浅草のお医者さんのところに連れて行かないのだろうか?
親父さんの病気の具合から考えて、
寅が付き添っていかなければ東京へも行けないし、
医者と話も出来ないだろうに。

それともあれは、染子を駆け落ちさせる方便だったのか。
もしそうだとしたらあの親父さんは今どうして暮らしているのだろうか…。

志津さんはこの後大学の教授と結婚し、東京にいるのだから、
自分の義理の妹のお父さんのことを少しは
面倒見てやればいいと思うのだがどうだろうか。

私はどうも染子のお父さんのその後が気になる。







湯の山街道 大羽根園駅近く

背後には御在所岳



夕暮れが近い。



.道端の枯すすきが冬の風にゆらいでか汰しげな音をたてている。

トレンチコートを羽織り、マフラーをした寅が
湯の山温泉を後にし、歩いていく。


道の向うから吉井の車がやって来て、寅とすれ違い、行き過ぎる。


メルセデスベンツ羽根ベン

おそらく
1966年あたりの230Sタイプ。渋い。
なぜか三重ナンバー(三 3 せ.6−19)。
ひょっとして吉井は名古屋や東京じゃなくて三重県の大学の先生かも。




                   





吉井が運転していたものと同じ、メルセデスベンツ230S 1966年

                







車の中


志津さん、寅に気づく。


志津さん「あ、ちょっと !

吉井「,・……

寅、ススキの茂みの中に入り、立ちションベンをする。



脚本では、志津さんは一応車から降り立って、寅を遠めに見るのだが…。
本編ではこのように車の窓から見るだけ。



窓を開けて寅を見る志津さん。


志津さん「……


吉井「どうかしましたか

志津さん「

吉井「何か…


志津さん「…いえ、別に…。…どうも



いえ別にじゃないだろ、志津さん(−−)



                   





車、走り出す。



窓から、寅を見つめ続ける志津さん。



                   


           
道子ちゃんがずっと完全なカメラ目線!
可愛いNGだ!いいねえ〜(^^)




何も知らない寅、小便を終えて歩き出す。


近くに咲いていた赤い山茶花の花を摘んで匂いをかぐ。

そんなとこに咲いてないって ヾ(^^;)




『旅笠道中』を口ずさむ寅。



                   






寅「♪亭主〜、持つなら




                   





堅気をお持ちィ〜ってね





                   



車中



志津さん、寅にどのような言葉を
かけていいかわからないまま
想いをこらえている。





                   




寅、何も知らずに歌い続けながら歩く。


メインテーマがかぶさっていく。

 とかくヤクザはぁ〜、

 苦労の種よ〜
とくりゃあ、スー…


 
恋も人情お〜も、旅の空ぁ〜…



メインテーマが高まる。


車にひかれそうになり、こけてしまう寅。

しかし、また立ち直って、

きっぱりと歩いていくのである。




                   





散々もみじ荘に奉仕し、余興にも参加し、弟の面倒も見、
染子の父親の面倒も見、子供の道子の子守も散々した挙句、
無残にふられ、最後に告白した時も志津さんはおらず、
それも知らずに自己満足し、旅立った寅は見事に惨めである。
このシリーズ最高の悲劇。まさにスッテンコロリンコロリンよだ。

しかし…、心が貧しいのはどちらであろうか。

無残にふられ旅立った寅か?
寅の気持ちに気づきながら、人手不足により、
寅を利用するような行為を続け、
最後に優しい言葉さえかけれなかった志津さんか?

社会的には志津さんはもちろん全く悪くない。
寅の勝手な岡惚れであり、完全に一人相撲である。

しかし、それとは別に、あのシーンで言葉をかけれないのは、
人間として美しい生き様とは思えない。

もちろん自分が原因で失恋をしてしまったであろう寅に、
どう声をかけていいのか分からなくて戸惑ってしまうのはわかるが、
寅が旅館をもり立ててくれていたのは確かな事実である。
それはそれ、これはこれなのだ。

もう一生会うことはないのだ。
志津さんには人として言わなくてはならないことがあるはず。

ああいうギリギリのところで、苦労をねぎらう優しさを出せない人は、
この後の人生でも人の絆の上に立った本当の幸せは掴めないような気がする。

寅はいわゆる岡惚れだが今でいう『ストーカー』ではない。
無欲で献身的でそしてさっぱりした男である。
引き際も心得ている。
だからこそ志津さんの心よりの短いねぎらいの言葉が欲しかった。

しかし、一つ救いがあるとすれば、志津さんがその後、
車の中で、寅にしてしまった自分の仕打ちを自覚し、
悩むカットが映し出されることである。
彼女もやはり当然良心の呵責があるのだろう。
当たり前である。それが人間というものだ。




                   


そんな志津さんの葛藤とは全く関係なく、
悠々と一点の曇りもなく歌を歌い去っていく寅。
わが道をゆく寅次郎なのだ。うーんカッコいい!


森崎監督は、一見、寅を突き落とし、突き放し、
酷く扱っているように見えるが、
寅はお花畑に咲く花ではないのである。
真っ暗な泥の中からしぶとく咲く蓮の花だ。

私には森崎監督がいかにこの人間寅次郎を
いとおしく思い、寄り添っていたかがよく分かる。

どんなにバカだ、惨めだ、滑稽だと言われようとも、
寅の心には一点の曇りも無い。

安易なメルヘンを嫌う森崎リアリズムの真髄が
この失恋に滲み出ていて爽快でさえある。

そう、寅は渡世人であり、旅人(たびにん)なのだ。





旅笠道中

藤田まさと 作曲 大村能章 昭和10年.


夜が冷たい 心が寒い
渡り鳥かよ 俺等の旅は
風のまにまに 吹きさらし


風が変れば 俺等も変る
仁義双六 丁半かけて
渡るやくざの たよりなさ


亭主もつなら 堅気をおもち
とかくやくざは 苦労の種よ
恋も人情も 旅の空











題経寺(大晦日みそかの夜)



すでに初詣の人々で賑わっている境内や参道。



数人の僧侶達にかこまれ、御前様が鐘楼に登ってくる。



                   



すでに初詣の人がチラホラと見える。


参道






とらやの前を初詣の人々が行く。


とらや  店


店内で団子の箱詰めをしている駒子夫婦や
源ちゃんと女店員トモちゃん。




さくら、出て来て


さくら「お待ちどおさま、おそぱが出来たわよ

おいちゃん「おい、みんな一休みしようや、早く食べな。
    駒ちゃん、上がっといで上がっといで



駒ちゃんと言うほどに、駒子と仲良くなったんだね。


一同、茶の間にあがる。
テレピが『行く年、来る年』をやっている。



おばちゃん「さあさあ、遠慮しないで、どうぞ、ささ、こっちへどうぞ




駒子「すいません

おばちゃん「まあ助かったわよ、あんた達に来てもらって

駒子「いいえ、どうせブラプラしてんですから

おばちゃん「あ、さくらちゃん

さくら「はい

駒子「さくらさんたちも、お正月はこっちで

博「ええ

さくら「里帰りみたいなもんね」.

すぐそばに住んでるから、里帰りも何もないよ ヾ(^^;)

おいちゃん「ああ、そうだよ、正月ぐらいね、
    ゆっくり家にいて親孝行してもらわなくちゃ


おばちゃん「ヘヘ

博「叔父さん孝行でしょ


確かにね(^^;)
でもさくらの育ての親だからやっぱり『親孝行』だよ。

一同、笑う。



                   




おいちゃん「ヘヘ、ああ、そうだったそうだった


一同、席につく


おいちゃん「じゃまア、来年も一つよい年を


と箸をとる。



さくらの号令。


さくら「いただきます



一同「
いただきます

と、お辞儀して食べ始める。


源ちゃんとトモちゃんはなぜ座敷に上がれないんだろう。
つめれば座れるのに…。
映画だから、それを言っちゃあおしめえよ。なんだけど、
やっぱりあれは気になるなぁ…。もりそばの入れ物も、
源ちゃんとトモちゃんのザルはプラスチックで、おいちゃんたちは
竹だったような気がする。





テレビのアナウンサーが

アナウンサー一九六九年はあと数秒で去ろうとしております。
     一九六九年よ、さようなら



ピ、ピ、ピ、ピー…



テレピは銀座の
服部の大時計をうつし出し、その針が重なる。



題経寺 除夜の鐘

ゴォォーン


除夜の鐘をついている。



アナウソサー「あけましておめでとうございます。
    輝かしい希望にみちた飛躍の年、
    一九七〇年がやって参りました


大晦日から年明けまでが演出されたのはこの第3作だけ。




                   




おいちゃん、ハチマキをとってかしこまる。



おいちゃん「じゃ、ま、何だよ、
   とりあえず、おめでとうございます




一同「おめでとうございます


みんなでお辞儀。


おいちゃん「本年も一つよろしくどうぞ



一同「よろしくおねがいします



おいちゃん「ま、ま、やってよ、フフフ




                   





駒子さん、それはそうと
ちゃんとあの宴会代と熱海までの
ハイヤー代の半分くらいは返したんだろうね。
いい大人なんだから、とらやの老夫婦が
許可していないことくらいわかるはず。





題経寺の除夜の鐘「ゴォーン




テレビの画面に霧島神杜の情景が映し出される。



アナウンサー「はいはい、こちらは霧島神杜でございます。
      九州の南の端とはいえ、この辺り深い山々仁
      かこまれているだげに、冬の訪れもかなり早く、
      先ほどから、ごらんのように白いものが
      チラチラと舞っていますます。しかしこの寒さは早く新しい…




おいちゃん「しかしまあ何だよな。こうやって何とか年が越喧たのはさ、
    世間にゃもう、ソバも食べられねえ人達がいるんだぜ


おばちゃん「毎年同じこと言ってるよ、この人は

おいちゃん「本当だからしようがねえよな、さくら

さくら「そうね


アナウンサー「さきほどからご覧のように境内はかなりのお客さんで混雑しております。
       ところで、この霧島は霧島国立公園の中心で南の方に大きく視野が開けまして、
       遠く桜島、開聞岳、付近には豊かなお湯が湧き出る静かな温泉郷でございます。
       熱いお湯、そして整備された施設、理想的な温泉郷でございます…




駒子「あのォ…、寅さんどうしてるでしょうねえ

おばちゃん「ほんとだね、どうしているかしらね……

おいちゃん「あの温泉場で長つ続きしてるとは思えねえしなぁ


博「今頃、どっかの吹きさらしのホームかなんかで…:


おいちゃん「そうかなア、そんたとっかなア、
    バカだね、あいつは本当にバカだねえ


勝手に決めつけて、嘆くおいちゃんでした(^^;)




                   





一同、しんみりする。

しばらくの沈黙。





編集のミスで、ここでおいちゃんの
「バカだねえ」の「
バカッ」という声が残ってしまっている。


アナウンサー「ごらんのように参道の両側には
      昔懐しい裸電球の列がズラリと軒を並べまして、
      参拝客が足を止めております。…



露天商がずらりと並んでいる。



                   




なんと!テレビの画面に映るアナウンサーの後ろを寅が横切る。


なんとなくテレピを見ていたさくらが叫ぶ。


さくら「あら!お兄ちゃんじゃないかしら



                   





おいちゃん「え!?と、さくらを見、テレビを見る。



                   



アナウンサー「最前から、あちらの店の方が
     どうしても何かしゃべらせてほしいと
     おっしゃっておりますので早速何か伺ってみましょう





中部日本放送の
山内光男アナウンサーご苦労様です(^^)




さくら、目を大きく見開いて、
テレビに食い入るように見入っている



アナウンサー「どなたでしたっけ?


寅の声「オレだよ、ん


寅がマイクの前に出る。


アナウンサー「あ、どうもどうも、新年早々ご精がでますね



                   



とらや一同、目を白黒。


一同、息をつめて見ている。


寅「ええ、これいいのかい、ね、あ、そう


                   




おいちゃん、身を引きながら驚き、


おいちゃん「へええ…


さくら「お兄ちゃん…:




一同、画面に見入っている。





テレビの画面




                   




寅「アーア、ええ、日本の国民の皆さん、
 新年明けまして…おめでとうございます。
 え、テレビを通じてご挨拶申し上げます



アナウンサー「はあはあ、どうも結構なご挨拶でございます

寅「いえ、いえ


帽子の形を気にしたりして、カッコをつけている。


アナウンサー「え、一ところで、あた方も大変ですねえ、
     ま、普通だったら家でこたっにあたりながらですね、
     年越しソバでも食べている食べているんでしょうけど、
     こんな寒い風に吹かれて


寅「ええ、お前さんだって同じじゃねえか、アハハハ

なるほど、そらそうだ。さすが寅だね、うまいこという。座布団一枚(^^)

アナウンサー笑いながら。


アナウンサー「まあそりやそうですけれどもね、
    でも、
家族の方も淋しいでしょう






テレビ・画面


寅「家族?……ウーン、
 でもオレァこういう稼業だからね、皆馴れてるよ




アナウンサー「お子さんは?


寅「子供…ええ、ええ、子供二人、
 いや、三人になるか、な、フフ、
 オレに似てかわいいよ、フフ


おいおいおいおい ヾ(−−;)


アナウンサー「そうですか、それじゃこの画面を通じて
     お父さんの姿を見てらっしゃるかも知れませんね



寅「ええ、ええ





                   






とらや・茶の聞



おいちゃん、たまりかねたように顔をそむげる。.


おいちゃん「何が子供だい…
   そんなものどこにいるんだい……
   バカだよ、
   あいつは本当にバカだよ…ううう



と、涙を抑えることが出来ない。





                   



おばちゃんも泣いてしまう。


一同「……

さくら、ハンカチを出して眼をふく。




テレピの画面



アナウンサー「それじや、奥さんやお子さんに
     この画面から、新年の挨拶をしてください


寅「奥さんや子供に、いいよいいよ、いいよ、

アナウンサー「どうぞどうぞ


寅「
そうかい、こっちへ映ってんの、こっちか

アナウンサー「ええ

寅「どっちでもいいの

アナウンサー「どうぞどうぞ



目を潤ませながら兄を見つめるさくら。



                   




寅「…お志津よ、
 元気でやってるかい、

 新年おめでとう






                   



あああ…寅…(TT)




志津さんの新居


居間。



台所のほうではエプロンをかけた志津さんが
忙しく年越しそばの後片付けをしている。

ソファでは道子が眠っている。

それを見て、志津さんも、吉井も微笑んでいる。







そしてそこでもテレビで同じ番組が流れている。


アナウンサー「どうもどうもありがとうございました。
     じゃ今度は参詣の方に伺ってみましょう



アナウンサーは、参拝の女性客に
インタビューを切り替えようと、寅の元を去る。



アナウンサー「初詣にどんなことお祈りになりました

女性客たち「やーだぁ」と、笑っている。






寅、なんと、アナウンサーににじり寄って、
まだ何か言おうとしている。


横からマイクに口をつけ、、、



寅「よ、もう一言あんだよ。

 道子、あの、お前ね、



アナウンサー「はい、わかりました。わかりました


スタッフの声「だめだよ!下がって下がって!


寅「
小便したら早く寝ろよ意味ねえ〜((−−;)



アナウンサー「わかりました


スタッフの声「おい!おい!


アナウンサー、寅から逃げようとする。


スタッフの声「もういいから、ちょっとすみません


マイクを離さない寅


寅「必ずお土産を買って帰るから


スタッフの声「こっちへ来て!映ってますから、申し訳ないけど




大きなカラーテレビの中の寅が、
架空の家族に今も語りかけている。




テレビの中でもめているアナウンサーと寅。



                   





その前に置いたソファで道子がうたた寝をしている。



                   




テレピの画面


テレビに映ろうとしている寅。

連れて行こうとするスタッフたち。


寅「
なんだよ!


アナウンサー「東京の中島さん、東京の中島さん、
     こんな状況ですから、マイクを東京にお返しいたします。
     東京どうぞ、東京どうぞー



寅「自分がしゃべっていいって…、いや、

 
もう一言だよ、よう!とアップになってぶつぶつ。




アナウンサーが東京に助けを求めている。


アナウンサー「東京の中島さん、どうぞ-


寅「もう一言…





                   



アナウンサー「東京どうぞ、東京どうぞ、お願いいたします



うるさく感じた吉井がテレビのスイッチを切る。


寅の超アップが思いっきり映っている。

そしてそれを消す吉井。
ああ…なんちゅうタイミング ┐(T T)┌




                   




寅…(TT)
在りもしない家庭の話をしなくちゃいけないほど、
家庭が欲しいのかな…。
オープニングの旅館でも、
さくらや満男の写真を見せながら、
自分の妻と子供だって
言ってたけど、家庭と言うものに対して
かなり憧れと飢えがあるのかもしれない。





それにしても、
最後の最後さえ、大晦日にテレビカメラに向かって
「お志津」と呼びかける寅の姿。
いやもう、ここまで泥臭くバイタリティ溢れる
懲りない鉄人寅を描かれると拍手をしたくなる。







そして…正月  朝





鹿児島から種子島行きの連絡船



汽笛「プーーッ!!



                   




朝日をうけてキラキラと輝く冬の海を、
小型の蒸気船が水しぶきをげって進む。
小さたマストにしめ飾り、
そして甲板の上の荷物に初荷の旗がひるがえっている。





                   




後方のデッキ


帰郷を急ぐ出稼ぎの若者や老人。晴着姿の娘たち、家族持ち。
自衛隊の隊員等が笑い転げている。





                   






一同の中心になって、自分の商いの行方を
得意げにしゃべっているのは行商の途上
の寅である。

   
寅「今度鹿児島に帰ってくるのは三月頭かな、
 桜の花もぼちぼち咲こうかって頃よ。それから、熊本、
 小倉、尾道。ずっと下がって四月は関東、
 五月は東北、六月は北海道。
 オレ達の旅は桜の花と一緒よ。花見の旅だい。ヘヘへヘ

 まあ、オレッチのような粋なバイニンになるには
 タクがマブくなくっちゃ駄目だ。

 うん、よーし、ひとつさわりだけやってやろうか





今から3ヶ月間も、種子島から奄美群島を回って行くのかな…、
沖縄はこの時は行かないんだよね。
第25作「ハイビスカスの花」で初めて沖縄に行くんだからね。




                   




四角四面は豆腐屋の娘、
色が白いが水臭い。

四谷赤坂麹町、
ちゃらちゃら流れるお茶の水、

粋な姐ちゃん立ちションベン、ってなどうだ。



女性たち「やーだーハハハ



一同大笑い。



                   





寅「四谷赤坂麹町



                   





みんな「四谷赤坂麹町




                   




寅「ちゃらちゃら流れるお茶の水



みんな「ちゃらちゃら流れるお茶の水




                   




寅「そうそう、粋な姐ちゃん立ちションベン!



一同「
粋な姐ちゃん立ちションベン!




寅「上手いよ自衛隊おまえ、フハハハ。
 おまえ自衛隊なんかやめてオレの弟子になれよ



          




一同大笑い。




                     





田へしたもんだよ蛙のションベン
見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ。
結構毛だらけ猫灰だらけ、
お前のケツはクソだらけ。ハハハ!!





                   





一同「田へしたもんだよ蛙のションベン
 見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ。
 結構毛だらけ猫灰だらけ、
 お前のケツはクソだらけー!





メインテーマ大いに高まって






錦江湾



寅達を乗せて勢いよく進む連絡船。

その向うに朝日をうけた桜島が噴煙を青空高
く吐き上げている。

本日も快晴である。



                   




第3作「フーテンの寅」の寅次郎は、
失恋ごときではへこまないのである。
踏まれても踏まれても伸びる麦のように
不死身なのだ。ある意味凄くカッコいい。
私はこの泥臭い作品の持っているある種の
パワーにいつも圧倒されている。

誰かが決めた常識にとらわれ社会のしがらみの中で
自分をしだいに見失い、
今やもがくことさえ萎えてしまった人間よりも、
一人相撲であろうが、せせら笑いをされようが、
自分の美学を生涯見失うことなく突き進む
純でバカな寅次郎の方がこの世の生命体としては強いのだ。

全48作品の寅次郎の中で
もっとも生命体として強靭だったのは
この第3作の寅次郎だったかもしれない。

森崎監督の処女作『女は度胸』が公開された当時の
キネマ旬報の編集長の白井佳夫氏の言葉どおり、
この第3作「フーテンの寅」も、演出の荒さ、未熟さ、
繋ぎの悪さがかなりあれども、
完成を意識せず、揺れ動くエネルギーと、
底力のあるバイタリティを、
私達の前に見せつけてくれたのだ。

私達は今こそ、この森崎監督の捨て身の行為に真摯に応え、
この映画を真っ白な心で感じ取らねばならないのだと思う。






   丸いフーテンの寅マーク






渥美清 車寅次郎
倍賞千恵子 諏訪さくら
新珠三千代 志津
森川信 車竜造
三崎千恵子 車つね
前田吟 諏訪博
香山美子 染子
花沢徳衛 父・清太郎
河原崎建三 信夫
悠木千帆 旅館の女中
晴乃ピーチク 為吉
春川ますみ 駒子
晴乃パーチク 友人
左卜全 徳爺
佐藤蛾次郎 源吉
太宰久雄 梅太郎(社長)
笠智衆 日奏(御前様)





スタッフ
監督 森崎東
製作 上村力
原作 山田洋次
脚本 山田洋次
小林俊一
宮崎晃
企画 高島幸夫
撮影 高羽哲夫
音楽 山本直純
美術 佐藤公信
編集 杉原よ志
録音 鈴木正男
スチール 梶本一三
照明 青木好文


公開日 1970年1月15日
上映時間 89分
動員数 52万6000人
配収 1億2000万円





2007年12月17日に
第3作「フーテンの寅」本編完全版は
完結しました。
次回小林俊一監督の傑作

4作「新男はつらいよ」本編完全版(前篇)は
2008年1月中旬頃アップの予定です。
のんびり気長にお待ちください。












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