第38作 男はつらいよ


1987年8月15日封切り










北の大地に謳う『青春の復興』       『恋の物語』の面目躍如





今言わなかったらな、一生死ぬまで言えないぞ。





「今言わなかったらな、一生死ぬまで言えないぞ」

これは、北の大地知床で、寅が獣医の上野順吉に愛の告白を勧めるシーンである。
自分が生涯叶わぬ夢を、順吉に託す寅。
この時の順吉はもうひとりの寅でもある。そしてこのシーンを見た全ての観客の夢の実現でもあるのだ。


順吉「よし!…、言ってやる…。言ってやるぞ!

寅「よし!!いけええー!!





この画像を見て欲しい。



             




初期のやんちゃな頃ならいざ知らず、後期の寅で、後期の渥美さんで、ここまで高ぶった表情がほかにあっただろうか。
見ている私たちは、この寅の「いけええー!!」の声にこのシリーズの「恋の物語」のひとつの帰結を期待するのだ。
私にとって寅がこのシリーズ後期でもっとも頼もしく思えた瞬間だった。

そして見事に恋は成就する。『恋の物語』の面目躍如。
こんな心が高揚する瞬間は、このシリーズの後にはもうない。

これはまさに「青春の復興」だ。

広大な知床の自然と、二人に潜む内なる高揚のなんという絶妙のコントラスト。こんなさわやかな
「男はつらいよ」はめったにない。この大人の恋の成就は、寅の人生の行く末への賛歌とも言えるだろう。
そしてそんな爽やかで力強い作品にピッタリなシンプルなタイトル『知床慕情』。
このシリーズでも第32作「口笛を吹く寅次郎と」並んで後期作品の双璧といって間違いないだろう。
物語の広がりとしては後期作品群では間違いなく傑作だ。








役者というものの凄み




それにしても三船敏郎さんと淡路恵子さんの存在感の凄さ。う〜んと唸ってしまった。
演技はもちろん上手いのだが、そんなもの以上に彼らの世界観が見事にスクリーンに広がっていた。
当時映画館で観た私は、ひさしぶりになんとも幸福な気持ちになれたことを今思い出している。


愛の告白を受けた時の淡路恵子さんの少女のような表情…、久しぶりに役者の凄みを見せてもらった瞬間だった。
彼女のひとつひとつの表情を見ていると、説明的な物語は不要、とまで思えてくる。彼女の目、表情、口跡が、
このふたりの長い歴史を物語り、それだけで、深い感慨に胸が熱くなるのだ。
やはりそうなのだ。あれが役者というものだ。人は一生懸命の演技を見せるのではなく、その人そのものの
生き抜いてきたその姿を、その背中を見せるのだ。やはりいつも書いているが、役者はもう芝居をする前からその
結果は決まっているのだ。生身の体をさらけ出してこの世界の成り立ちを語ると言う人間が成し得る最も直接的で
かつ最も困難な仕事、それが役者だ。全部自分の過去と現在が露出する。


三船さんは、絵になる。もう文句なしに『役者』だ。渥美清と三船敏郎。これを見ないで何を見る。
確かに野良犬や用心棒、七人の侍などの三船さんは目がギラついて出色だが、「知床慕情」の三船さんは、私たちの
世界に棲む住人だ。そんな親しみやすい三船さんをスクリーンで見ることが出来たこと自体が嬉しい。
私は三船、淡路のお二人の姿をスクリーンで見た日のことを今でも覚えている。それはなんとも晴れやかな、
心に涼やかな風が吹き抜けた時間だった。

あのお二人がスクリーンに出られているだけで、この物語は格調が高くなる。
あの第17作「夕焼け小焼け」の宇野さんと岡田さんをも、ふと思い出す。あの時私たちは彼らの生きてきた道を
演技の背後で見ていたはずである。役者というのは正に築き上げてきた「世界観」が全てなんだとあらためて心に
刻ませてもらった。






                   







北の果てに住み着いた寅次郎。



第32作「口笛を吹く寅次郎」では寅は、備中高梁に住み着いてしまう。そして住み着いた家寺の
娘さんがマドンナ。

この第38作「知床慕情」でも寅は北の果て、知床の町にふとしたことで住み着いてしまう。
頑固者の獣医、上野順吉が寅を気に入り、奇妙な友情が生まれていくのだ。なんとそれがあの
三船敏郎さんなのだから、これはたまらない魅力だ。


そしてこれまた、住み着いた家に帰って来た娘さんがマドンナ。それも第32作と同じ竹下景子さん。それも同じく出戻り娘。

あきらかに、この第38作は、第32作のコンセプト「その町の住人となり、集団の中で華やぐ寅次郎」を
踏襲している。こういう場合、得てして2番煎じ的なものになりがちだが、まったくそんなイメージを湧かせないのは、
知床の大自然と、かの地にもうひとつの大らかで純粋な大人の恋が花開いたからであろう。また知床の仲間たちも活きのいい
大らかで快活な気質を持っている。この土地には広がりがあるのだ。この仲間はもともと「りん子ちゃんの純潔を守る会」の
メンバー。今はもちろん名前を改め「知床の自然を守る会」になってはいたが(^^;)





           







寅の『とらや.一日店主さん』




ところで、この物語は、寅が知床に行きつくまえに、柴又で一悶着あるのだが、この序盤に
思いっきり笑いのツボが待ち構えている。

寅はあれでも本来ならとらや7代目の店主である。
(おいちゃんは、その昔『ふるさとの川江戸川』というテレビ番組で江戸時代から続く老舗の六代目と言われていた)

第38作「知床慕情」で病気入院中のおいちゃんに代わって店主を引き受けた寅だった。
寅曰く「やるっていうとオレはなんでもやる!」と、決意表明。

そのわりには、団子丸めるのは痒くなる、串は目に突き刺しそう、アンコは匂いがダメ、配達は股ずれ、
帳簿は無理(当然)、お茶だしは、茶坊主みたいでイヤ(^^;)


で、「帳場にじっと座ってたら」というさくらの提案で、帳場で座っていて、電話を受けたり、
仕事全体を見渡すだけという仕事をすることになった。



まずは寅のアリアでシュミレーション。

「あ、コレ、姉や、お客さんがお勘定だよ。
オババ、オババ、あくびなんかしてる暇があったら店先に水でも撒きなさい。
お天気続きで埃が立ちます。」

あ、お客様、もうお帰りでございますか、またのおいでをお待ち申しております。

コレコレおなご衆、暇なうちに御膳を済ませてしまいなさい。
無駄なおしゃべりなどしないで、さっさと食べてしまうこと。
昔から早飯早糞芸のうちと言って、わたくしなど、座ったと思ったらもうケツを拭いて
おります。こないだなどは糞をする前にケツを拭いてしまって、まあ、親戚中で大笑い。
ハハハハハハ…、ウォッホン!」





で、本番

座っては見たものの、暇で暇で…あくびなんか出っ放し…。
虫眼鏡で遊ぶ寅。電話で団子の注文を受けても、相手の名前を
聞くのを忘れる。客の前でマンガ読んでヒンシュク買ったり、
なにかあるとすぐトイレ。



         



寅「ションベン」
おばちゃん「さっき行ったばかりじゃないか」
寅「さっきはウンコ」(^^;)


極めつけは、居眠りをしてしまって障子戸にもたれてガタン!バタッて仰向けに
ひっくり返って、寝ぼけながらだれも客がいない店に向かって「いらっしゃいませ…」


挙句の果ては、店を飛び出して、備後屋や源ちゃん引き連れて遊びに行ってしまう。


この徹底した、役に立たなさが痛快で、かえって気持ちがいいのである。ここまで役に立たないと、
明るく爽やかな気持ちになれるから不思議だ。もちろんおばちゃんは、跡取りの寅がそんな体たらくなので、
怒って店を売ってしまうと言い出す始末、結局寅は旅に出るハメに…。
この一連のシーンはこのシリーズでも屈指の騒動だ。何度見ても笑える。




            








           

          イラスト龍太郎


この騒動以外でも、後半のあけみの「偽札騒動」もなかなかの切れ味だった。詳しくは本編で(^^)



このように第32作同様、この第38作も「恋の物語」だけでなく笑いが満載なのである。
やはりいい作品は感動と笑いのバランスとリズムが抜群!これは本当。






北の大地で羽を休め、そして羽ばたいて行くりん子さん


船長は、こう言う。

アキアジが生まれた川に戻ってくるようにりん子ちゃんが帰って来たことと、

オジロ鷲がシベリアから飛んできて、この知床半島に羽を休めるように、寅さんという
色男が仲間に入ってくれたこと、

そのことが何より嬉しかったと。

りん子さんはこの地でのみんなの憧れのマドンナだったのだ。


りん子さんは、東京の結婚生活に破れ、心傷ついて、故郷の知床に羽を休めに帰って来た。
第32作同様、一緒の屋根の下同居する家族のような存在となっているので、見ている私たちに
とってぐっと身近な存在となる。

肝心の恋の方は、微妙に相思相愛。 そして例のごとく、寅は逃げる。

しかし第32作と違って、恋が消えてしまうことに対して私が淋しく感じないのは、大きな別の恋が見事に花開いている
からであろう。順吉とはまなすのママの恋の成就にすべての悲しみは吸収され、消え、清々しさだけが残る。
それくらい、あの恋は力を持っていた。

りん子さんは、ラスト付近で、結局東京に戻って、再出発を誓うが、このあたりは賛否両論あるところである。
知床を舞台として、過疎や離農、自然破壊、の問題を背景に物語を見てきた私たちにとって、てっきりりん子さんは、
知床で再出発を計ると思っていた。だから、羽を休めただけの知床であったのかと、淋しくもある。

しかし、考えてみれば、父親ははまなすのママと結婚するのである。彼らにとっては青春が復活したのだ。
ならば、りん子さんも、もう一度、地に足をつけて、自分の道を歩むことを決意し、父親の元を去っていくのも
生き物として自然な行動とも言える。東京には彼女はもう幻想はない。ないからこそもう一度かの地で
働いてみようと決意したのであろう。人はみな旅人であり、修行者なのだから。住むも良し、行くも良し、なのである。




            



それにしても、ちょっと心残りだったのは、りん子さんがとらやに2度も訪問するのにもかかわらず、
寅がとらやに一緒にいないことである。物語上もちろんいなくていいのだが、ファンとしてはとらやの人々、
マドンナ、そして寅が合わさってこそひとつの物語である。
このようなないものねだりをしてしまうのが観客の性なのかもしれない。あ〜でも見たかった。




              









スクリーンに広がる知床の岬  正に『知床慕情』


食べ物は美味い。人情は厚い、なによりも大自然が美しい

これは寅がさくらに出した手紙の一文である。いや全くプリミティブで美しい。
本州には無い、ダイナミックで荒削りな激しさが特に印象深かった。
この日本も地球という惑星の一部なんだと実感できる。そういう自然だった。
ついに寅も日本の果て、このような荒々しい自然の中で暮らしているのかと、見ているこちらまで
ウキウキしてくるから不思議だ。順吉とはまなすのママの恋も、このダイナミックな自然を背景として
初めて誕生することが分かるような初々しくて荒削りでおおらかな結びつきだった。

とにかくこの作品の「知床慕情」というタイトルがいい!このシンプルさがたまらない。
もともとはこのシリーズのタイトルはシンプルだった。この漢字四文字がいいねえ。




                     






爽やかな知床の寅たちをを息子がイラストにしてくれた。



         

         イラスト 龍太郎

                  













本編






今回は『琴の音』から。




松竹富士山




                







みちのく小京都 秋田 角館



桧木内川堤防


春 『みちのくさくらまつり』


武家屋敷の枝垂桜とともに「さくらの名所百選」にも
選定されたのが桧木内川の堤防の2キロにも
つづく見事としか言いようのないソメイヨシノの
桜のトンネル。

昭和8年救農土木事業によって完成した堤防上に、
現天皇陛下の御誕生を記念して昭和9年に
植えられたのがこの桜。


          




寅「さまざまな、事思い出す桜かな。

 昔の人は味のある事を
 言ったものでございます。

 満開の桜を眺めておりますと
 私のような愚か者でも
 さまざまな事を思い出します。

 思い起こせば
 親父と大喧嘩をした十六の春。
 これが見納めかと涙をこぼしながら
 江戸川の土手は一面の
 桜吹雪でございました。





特製 味・・・ お好・・・

味じまん 焼鳥 寿しよし

おでん



『みちのく小京都』 さくらまつりの看板



通行人が珍しそうに芸者さんを振り返り見る。


     



寅「今では一本も残っておりませんが
 私がガキの自分江戸づつみは桜の
 名所だったのでございます。



花見の席で先ほどの芸者さんが舞っている。



寅「毎年春になると両親に連れられ、
 妹さくらの手を引いて、
 花見見物に出かける時の



土手を駆け下りる人


寅「あのわくわくする楽しい気持ちを
 今でもまざまざと思い出します。




楽しんでいる花見客。



寅「あ、申し送れました。

 私の故郷と申しますのは
 東京は葛飾柴又、
 江戸川の辺にございます。







少年期の寅の生活が偲ばれる貴重な証言だ。
寅は育ての親であるさくらのお母さんに大切に
育てられたのが、この言葉の中からも分かる。
寅の少年期は私たちが思っているよりも
幸せだったのかもしれない。



やや離れた岩瀬橋近辺が映り、


汽車(秋田内陸線)玉川に架かる玉川鉄橋を通っていく。

R105が線路と並行して走っている、角館に入るときに
通過する岩瀬橋が近くにある。
現在はこの玉川鉄橋は秋田新幹線が通っている。

(この鉄橋の場所は親子で精力的にロケ地巡りを続けられている子連れ寅
の『
ちびとらさん』が教えてくださいました)


つまりあの玉川鉄橋の川(玉川)と桜まつりの川(桧木内川)は違っていたのだ。
あのあと下流でこの二つの川は合流し玉川という名前一本に統合される。




秋田内陸線は、
秋田県の内陸部であるギネス大太鼓の町「鷹巣町」と
小京都の町「角館町」を縦貫する
秋田内陸縦貫鉄道

運営する鉄道。



秋田内陸線(あきたないりくせん)

旧国鉄の特定地方交通線である阿仁合線(あにあいせん)、
角館線(かくのだてせん)及び日本鉄道建設公団建設線
(鷹角線、ようかくせん)を引き継ぎ、昭和59年に
秋田内陸縦貫鉄道を設立、昭和61年11月秋田内陸北線(阿仁合線)、
秋田内陸南線(角館線)として転換・先行開業。

この花見の撮影はおそらくその直後の翌春に行われたと思われる。
ちなみに全通は平成元年(1989年)4月である。
現在は赤字が続き存続が危ぶまれている。





                 






タイトル


はつらいよ 知床慕情 映倫112451






                 





メインテーマ




矢切の渡し







口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。





   
   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪





江戸川




江戸川を矢切の渡しに乗って帰郷する寅。


いつ見ても矢切の渡しを渡る寅はいいなあ。

寅はこのシリーズで6回矢切の渡しに乗っている。



            






       第1作では柴又へ20年ぶりに帰る時も、柴又からから立ち去る時にも両方使っている。     第11作「忘れな草」でも帰郷の際乗っている。

             



              第42作「ぼくの伯父さん」でも帰郷の際乗っている

               



               第13作でも冒頭で矢切の渡しに乗っている。

              






柴又の岸に着いて、


寅、綱を取る。


移動トイレ


土手の上の道


『柴又早起きマラソン』

マラソンで給水のコップをくばっている。




今回のミニコントは、
柴又早起マラソン会開催中に
土手の道を通りかかった寅が、
ランナーのための給水を、
売り物の飲料水と取り間違えてしまい、
飲み干した後お金を払いさっそうと立ち去る。
あわててお金を返そうと奮闘する職員。
しかし、職員は土手でひっくり返ってしまう。



           


この中の小太りの職員は、
後で物語の中で寅にビールをおごってもらう参道の
亀家さん近くの店員さん。この前後数作品で出川哲朗さんと
一緒によく登場する。







題経寺 境内 



御前様、子供たちと一緒。

シャボン玉で遊んであげてる。




良寛さんみたい。いいねえ〜(^^)



             



御前様「どうだ、うまいだろう?




さくらがやって来る。


さくら「御前様、お早うございます。

御前様「あ、さくらさん

さくら「先日はお見舞いのお花、
  有難うございました
  おじが大変喜んでおりました


御前様「いかがですか?具合は?

さくら「はい、すっかり良くなりまして、
  今週の末には退院の予定でございます


御前様「あ〜それは良かった


さくら「ま〜、おばが大げさに騒ぐ
  もんですから、みなさんに
  ご心配かけてしまいまして




源ちゃん、ほうきを持ちながら見ている。



御前様「こう言う大切な時に
  何をしているんですかねえ、跡取りの寅は



さくら「兄のことはもう諦めてますから


御前様「いかん、諦めちゃいかん。
  寅もいつかは気がつく日がきます。




           



さくら「あ、ありがとうございます
 おじたちにその言葉を伝えます。
 あ、ごめんくださいませ



と、立ち去るさくら。





御前様「諦めちゃいかん・・・と、独り言


源ちゃん、御前様を見る。

御前様、源ちゃんを指差し、


御前様「お前は諦めた!

    

  諦めたァ!



と、手を広げて、お手上げのポーズ。(^^;)


おいおい、御前様、
さっきと言ってることと違いますよ…ゞ( ̄∇ ̄;)



源ちゃん怒ってほうきでジャッっと砂をかける。


あんなこと言われて源ちゃんちょっと可哀想…(TT)



           










とらや 店のガラス戸


貼り紙

『勝手ながら当分の間休業致します とらや』


             



さくら「あ、おばちゃん、まだいた?


さくら独り言を言いながら台所へ。

上手いねえ〜、この独り言の演出。


さくら「あらあ、お昼食べてんの?

博「おばさんが作ってくれたんだ

さくら「悪いわね、忙しいのに

さくら「これ、病室の皆さんに食べてもらって


サクランボをタッパーに入れてある。


おばちゃん「ありがと

さくら「今、御前様にお会いしたから
  お礼言っといた、お花の


おばちゃん「なんかおっしゃってた?

さくら「こんな大事な時に跡取りの寅は
  何をしているんですかって



おばちゃん「本当にねえ、あの男が
    しっかりしてくれればねえ


博「そう言えば、そろそろ兄さん帰ってくる
 時分だなあ、つばめも飛んでるし



なんのこっちゃ(^^;)
第9作「柴又慕情」、題経寺山門での御前様とさくらの会話を思い出す。
第11作「忘れな草」でも法事の時に御前様とおいちゃんたちがつばめと
寅を重ね合わせて「とらやさんの四角い顔をしたつばめはどうしてますか?」
と話していた。そういえば寅はつばくろの話好きだもんなあ(^^;)



おばちゃん「やだよ、もうちょっと後に
    してもらいたいね、おいちゃん
    一人に手がかかってしょうがないのに
    その上あの男の面倒まで見切れないよ




寅って完全に戦力外。ただのごくつぶし(^^;)


               



さくら「ほんとね

おばちゃん「じゃ、留守番頼むよ

さくら「いってらっしゃい

おばちゃん「はい、行ってきます

さくら「おいちゃんによろしくね

おいばちゃん「はい

さくら「明日、満男と顔出すから

おばちゃん「はいよ




おばちゃん、店を出て参道へ。





博「しかしいつまでも店閉めとく
 わけにはいけないだろう


さくら「日銭商売って本当ねえ、
  あっという間にお店のお金なくなっちゃって
  明日から開けようかなあ


博「まあ、一番大変なのは君だけどね

さくら「仕方ないわ恩返しよ。
  お世話になったおじさまとおばさまに



清掃車の音



寅が心細そうに店を覗いている。


       


さくら覗き、気づいて


寅「お兄ちゃんだ




                  さくら、嬉しそう(^^)
                



さくら、喜んで店先まで駆けて行く。

さくら「開いてるわよ


寅、入ってくる。

さくら「帰ってきたの?と喜ぶ。


寅「うん


さくら、寅の土産とかばん持つ。


博「お帰りなさい


寅「フフフフ


さくら「フフ


寅「なんだ、おい、え?
 当分の間休業いたしますなんてよ、
 とらやは不景気でもって
 とうとうつぶれちゃったか?
 それとも老人夫婦は温泉旅行ですか?




              



さくら「なんてこと言うのお兄ちゃん

しょうがないよ。寅はまだ知らないんだよさくらヽ(´〜`;)



博「おじさん入院してるんですよ

寅「え〜入院?



さくら「風邪こじらせて肺炎なってね

 一時は大騒ぎだったのよ



寅「……


博「万一の時はどうやって
 連絡しようか、新聞に尋ね人の
 広告を出そうか、そこまで考えたんですよ




             



寅「で、今、具合どうなんだ?


さくら「あ、ずいぶん心配したんだけどね、
  もう峠はこしたの



博「来週あたり退院だそうです


寅「あ〜そうかァ〜
 あ〜そら良かった〜。
 いや〜、ちっとも知らなかったもんだからさ〜



寅「あ、その病院の院長ってのはさ、
 酒飲めるほうか?



さくら「どう言うこと?


寅「これから俺見舞いに行くんだろォ?


さくら「うん


寅「だから院長先生になにか手土産を
 もっていこうってことよ




               



さくら「そんなこと失礼よ


寅「お前も世間知らずだねえ。
 いいか、
 ああ言う病院なんてところはねえ、
 こっちが心を込めておれいをすれば、
 むこうもそれなりの事はちゃんと
 してくれるもんなんだ な?
 その、担当のお医者さん名前なんて言うんだ?
 何さんって言うんだ?名前



さくら「…知らない

寅「知らない?

さくら「うん


寅「じゃ、看護婦何人ぐらいいるんだ?
 大体その、いろいろ世話してくれる
 看護婦は?何人ぐらい



さくら「さあ


博「分かりませんねえ

寅「分かりませんね・・・。
 お前たちは何にも
 知らないんだねえ




              



寅「ったくもお、間に合うよ、まだ。 
 しかしオレが帰ってきてよかったよったく


寅「看護婦もたくさんいるんだろうし、
 なにか、ガサがあって、こう、いっぱいあって、
 こう、やるもん・・・さくらんぼだとか、せんべいだとか、
 そ・・・あ!おじちゃんと同室の患者もいるんだな、
 よし!じゃ、ちょっと、ともこかくオレ、病院行ってくる


と走っていく。



さくら「ねえ、ちょっと

博「はあ

さくら「あら!病院聞かないで行っちゃった

博「あは、しょうがないなあ、兄さん〜!


このパターンは、第17作「夕焼け小焼け」で、
「鬼頭」の家を聞かないでとらやを飛び出すシーンや

第25作「ハイビスカスの花」でリリーの病院を聞かないで
飛び出すシーンのアレンジ版。



おいちゃんの入院したのは、
かつてあの第14作「子守唄」で京子さん!が
勤めていた柴又にある
吉田病院だ。
京子さんはいないのかなもう…。





柴又 吉田病院


懐かしいねえ〜。



             


注意桁下高さ1.7メートル



           これは第14作京子さんの職場だった頃の吉田病院

             





病室


おいちゃん、コンピューターゲームをしている。


ビッビッビ・・・ピッピッピッピッ・・・ピービッビッピーピー

おばちゃん「なんだい?それ?

おいちゃん「満男が持ってきてくれたんだよ、
    コンピューターゲームだってさ


おばちゃん「はあ

おいちゃん「なんと事やらさっぱりわからねえな

ピッとゲームを切る。


おばちゃん「あら?妹さん?と同じ部屋の患者さんと会話。




寅、突然廊下を早足でやって来て、顔を出す。


寅、おばちゃんと目が合い、

寅「こんにちは(^^;)


おばちゃん「こんにちはっ???(^^;)


寅「いないな、ここには

と言って、なぜか向こうへ去っていく。


              



よく見ろよ、あんたが挨拶したのは
おばちゃんだよ ヽ(´o`;)




おいちゃん「寅じゃねえのか?今のは?

おばちゃん「帰ってきたんだよ!
   さくらたちと噂してた!



寅、また戻ってきて


寅「おばちゃん、あ、
 この部屋だったのか、あ、はあ〜〜




渥美さん、上手いよなあ〜、
こういうオトボケギャグ。

第25作「ハイビスカスの花」でもリリーを
見舞いに行くなり、きっちり人間違いをして
「ボケ」をかましていた(^^)



おいちゃん「寅・・



              




寅「おいちゃァ〜ん


近づいて


寅「ちっともしらなかったよ〜


おいちゃん「帰ってきたのか


寅「うん


寅「びっくりしてすぐすっ飛んできたんだ、
 いや〜大事にならなくてよかった



おいちゃん「ありがとうよ、もうすっかりいい


寅「よかった、よかった


おいちゃん「んんん



             




おばちゃん「さくらちゃんたちが良くして
    くれてねえ



寅「そうか、おばちゃんも大変だったろう、
 なにかとご苦労さん、な、



病室中の人々がこのやり取りを見ている。


寅「あ、そうだ 、そうだ、これはこれは、
 御一統さん、どうも



御一統さんたち、目が点・・・(^^;)


寅「この度はあたしの叔父貴が大変お世話になりまして
 有難う御いざいます。えー、何分、田舎者でございます
 なので、引き立って、おたの申します!



みんな、つられて、お辞儀。


寅「おばちゃん、チョッと、あの、
 これなこの部屋の人たちにオレから
 だっつって
一本ずつくばって




                



おばちゃん、腐りかけのバナナなので
どうしていいのか分からない。


おばちゃん「悪いねえ、気を使ってもらって


と、とりあえず口だけでも感謝。





おっとー!、
イッセー尾形さん登場!!



おばちゃん「あ、先生

先生「車さん、どうですか?食欲は?

おいちゃん「おかげさまで、今朝全部食べました。

先生「あ、食べちゃった、

おいちゃん「はい

先生「点滴やめようか

おいちゃん「そうですか


先生、おいちゃんの目をベーッとさせて、

先生「うん、うん、うんうん顔色も
 良くなってきたしね、
 うん、はいはいはい



この素早いリズムはイッセーさんの独壇場(^^)



              



寅「先生、伯父貴が大変お世話に
 なりまして、有難うございます



先生「あ、ご親戚の方ですか、
 良かったですねええ〜

  この言い方なあ(^^;)



と言いながら忙しく動くイッセーさん(^^)


寅「はい、いや、これも先生の
 おかげでございます。

 つきましては、これは、あの、
 名刺代わりでございます。
 お一つどうぞ



先生「…!!とんでもない、こんなものは
  受け取れませんよ、
  うちの病院の方針としては
  こんなものは受け取れないんです


    と人目を気にする。


寅「
まあ、まあ、お固いことを
 おっしゃらずに




、寅がパッと手を離して、先生が持ってしまう。

SUNTRY OLD

後ろのおっちゃん、面白そうにやり取りを見ている。




先生「これ、こういう付け届けをね、持って
  患者さんを差別するってのは
  僕は無いんですよ!



と、周りを見ながら必死で言う(^^;)



            



寅「いえいえいえ


先生「これ!!と、ウィスキーをすぐに返す。


先生逃げ出す。


寅「え?先生!ちょっと、
 待ってくれよ、先生!



おいちゃん、情けないって感じで、あきらめ顔。




廊下


寅「先生、ね、ね、ね、オレもせっかく
 出したもんだからさ、
 引っ込めるわけにはかない、ね



先生「いや、ダメなものはダメですってばぁ


寅「今誰も見てないから、
 
…チョッと一杯気持ちだけと、小声で寅、面白がってる


先生大声で

先生「君! ! ! 


寅「え?


先生「ずいぶん無礼な事言うじゃないか!


患者たち廊下を覗く。


寅「いや、そういうけど、
 これ気持ちだからさ、



ウイスキー手から離れて


ダン!とウィスキーが
寅の足に落ちる。


寅「ア!イタタタ!アイ!あいたぁ!
 あは、っツ〜!てめえ、




              



看護士も患者もみんな覗き見(^^;)


先生「え??


寅「いま狙ってやったな!?
 このやろおお、チキショウ!


やってないやってない ゞ( ̄∇ ̄;)


と、寅、医者の足をきつく踏む。


先生「は?アタ!イタァ〜、いたあ!
  なんで君はそんな事をするんだ!



と、自分も寅の足を踏もうと応戦(^^;)



寅、思いっきり避けて


寅「よけちゃうよ、オレは



             



先生「なんでよける・・よけるって、そら(^^;)



寅、間髪を入れず、
全体重かけて、両足でのっかる(^^;)



先生「君、あたたた、あたたた


寅「ハハハハ!



            




寅またしゃがんでのっかる(^^;)


寅「こうやってやっちゃう!ハイ!

先生「アタ!



            



先生「何をやってんだね君はぁ!
 何者なんだね君は!



いやもう、まったくそのとおりで(^^;)


寅「なにい!


先生「誰かぁー!!


と悲鳴を上げて必死で逃げる医者


寅「あ!よ!おい!


と、追いかける寅。


看護婦「大丈夫ですか!と、追いかける。




いやもうこの凸凹コンビは、

★第39作「寅次郎物語」でも、
 大阪天王寺派出所のお巡りさんVS子連れの寅。

★第42作「ぼくの伯父さん」でも
 電車に乗った頑固ジジイVS席を譲ろうとした寅。

で繰り広げられる。

イッセーさん単独でも第41作「心の旅路」で、寅の
笑い顔のパスポート写真見て大笑いの旅行代理店の社員
で怪演していた。







工場



ゴ〜〜ン・・・



中村君「はア〜終わった


あけみ「労働者諸君、ご苦労、ご苦労、よく働いた


一同「フアハハ・・・ヒヒヒ



            



あけみ「博さん、明日からお店開けるんだって?


博「稼がなきゃ食えないからなあ〜


あけみ「あたし、手伝おうか?




中村君「ゆかり、今夜付き合え

ゆかり「タァコッ

中村君「どこが!


と、物を投げる。


ゆかり「キャ!





豆腐屋 プゥ〜〜








とらや  夕暮れ時 



おばちゃん、表の戸開けて帰ってくる。


冷蔵庫 サントリービール〈純生〉


おばちゃん「ただいま、ああ、やれやれ





台所


あけみ「おかえりっ!病院行ってたの?


おばちゃん、大きなビニール袋持ってきている。


さくら「何その荷物?


おばちゃん「シーッ。寅ちゃんは?



さくら「ニ階


おばちゃん「困っちゃったよ〜



               



おばちゃん「先生に無理やりウィスキー
   渡そうとしたんだよ。
   先生怒っちゃってさ、この人を
   二度と病院によこさないで下さいだって、



さくら「ええ?


あけみ「あはは


おばちゃん「これみんな返されちゃったんだよ。
   本当にはずかしいったらありゃしないよ。
   あ〜あ、




おばちゃん、ビニールを覗いて、


おばちゃん「腐ったようなバナナ(^^;)



病室のみんなにさくらのタッパーに入ったさくらんぼは配っても、
寅のバナナは配らないおばちゃんでした。
ちょっとしたクオリティで決まるんだねこういうことって(^^;)

もっとも寅も第34作「真実一路」では富永課長のスタンダード証券に、
きちんとしたハリのあるバナナをこんもり持っていってみんなに喜ばれ、
むしゃむしゃ食されていた。




二階から寅の鼻歌


おばちゃん「あけみちゃん、これ、ちょっと隠しといて


あけみ、風呂場の近くに隠す。

寅二階から下りてくる。


寅「ふ〜ん・・

寅「やあ、おばちゃん、なんだい、
 遅かったじゃないか、
 今日は、え?疲れたろ?



あけみ、必死で隠してる。


おばちゃん「今日はどうもありがとう


寅「いえいえいえ


寅「あ、あのバナナ食ってくれたろうね、
 あれ〜
黒いシミがちょっと
 ついてるけれども、今が
 一番食い時でうまいんだから、うん




              



あけみ、ニカニカ


あけみ「おかえり〜寅さん


寅「お、あけみ、どうだ?
 亭主と仲良くやってるかお前



あけみ「いや、単身赴任だからさ、別居と同じよ。
  だからね、明日からとらやで働くことにしたから





寅「…店開けるのか?




              



博「ええ


おばちゃん「わるいねえ、さくらちゃんたちには
    迷惑ばっかりかけて、



あけみ「あたし何時に来ればいい?


さくら「職人さんが8時にきて最初のお団子が
  ふけるのが10時だからその頃きて、



あけみ「うん


博「昼休みは工場のゆかりちゃんが、
 手伝いに来るってさ




さくら「あたしね、3時まで保健所で
  用事があるから、病院にいくなら
  おばちゃん、その後にしてね




寅だけハブ(^^;)

寅、ブス〜…。



                 

               



おばちゃん「そういうわけでね、寅ちゃん、
    あした忙しい日なんだよ、


寅、またもやブスーーッ




              



おばちゃん「
 寅ちゃんの面倒見てらん無いからね、
    お金上げるから、お昼にラーメンでも
    何でも好きなもん食べにいっとくれ



    子供か(^^;)



寅「そうかよ、オレが邪魔なんじゃねえか!
 だったらハッキリ言ってくれよ、
 最初っから!オレは旅に出るからよ!



博「いえ、違いますよ、
 疲れてると思って遠慮してるんですよぉ



さくら「だって、旅から帰ってきた
  ばっかりでしょ、お兄ちゃん



博「うん


寅「疲れてるのはお互いだろう。
 どうしてそう言う水臭いことを言うんだよ。

 大黒柱のおじちゃんが倒れて、家中で力を
 合わして働かなきゃならないんじゃねえか。

 どうしてオレ一人ブラブラしてなきゃ
 ならねえんだい?え?

 まがりなりにもオレはこの
 家の
跡取りなんだよ、おまえ口だけ(^^;)



             



本当にまがりなり。
おばちゃん、過去のデーターにより、
不信感で顔が曇ったまま。

正しい(^^;)



博「
うんうん


さくら「そりゃさ、お兄ちゃんが働いて
  くれるのはうれしいけど、ね、おばちゃん



おばちゃん「もちろんだとも口だけ。まるで信じてない(^^;)


あけみ「なにやんの?とらさん

いやまったく本質的な質問(^^;)




寅「何でもやるよ、やるったら何でも
 やるからな、うん。

 
あ、ただしね、その…、
 団子こう丸めんのだめなんだ。
 あれ、手のひらでグジュグジュ
 やってる間に体中痒くなっちゃってさ、
 あれ以外の仕事ないかな?なんか




              



博、すでに流れを読みきった表情(^^;)


あけみ「丸めるんじゃなくて、串に刺す仕事は?


寅、あけみの「刺す」に敏感に反応(^^;)



寅「はぁ…、串ねえ・・・オレあの
 とんがった串見るとね、
 スーっと自分の目ん玉プッーっと
 突き刺しそうなきがするんだけど…



うわっ(((((><;)



               




博つられて薄目になって目をぱちくりさせる。



寅「はあ〜…、どう言うのかな、そういうのって。
 ほかになんか無いかねえ・・・



さくら、微妙に笑っている。


さくら「いくらだってあるわよ、
  アンコ練る仕事だってあるし



さくら、あんこ練るマネ(^^)


寅「アンコかあ・・・アンコね、
 オレ匂いかいだだけでね、
 吐きっぽくなっちゃうんだよ




               



寅「なんかこう、ぱあ〜っと
 風通しのいいような所で働けねえかなあ…




あけみ「じゃあ、配達は?


寅「ん?


さくら「あ、それはいい


あけみ「ね、自転車でパアーと走んの



寅「自転車?

さくら「うん


寅「
漕ぐの?
      
漕ぐの?
     


あれ駄目なんだ。
オレすぐ
股ずれしちゃってな、

     

博、やっぱりな…の顔(^^;)


スーッ・・・何か他にねえかなあ…


渥美さんの、漕ぎ真似上手すぎ〜!




実は寅は第5作「望郷篇」や
第20作「寅次郎頑張れ!」では、
マドンナのためにセッセと自転車で配達をしている。
マドンナがらみだと股ずれにならない不思議な体(^^;)




博「じゃあ、ここで帳簿でもつけてたら
 どうですか?
収入とか支出とか・・・

あぁ、無理か・・
(ーー;)




寅「無理でしょう・・・



己を知っている寅でした(^^;)



あけみニッカニカ(^^)

                   あ…                             無理か…

                     




お後がよろしいようで…(^^;)



ちなみに、第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」で、
寅は、旅先の旅館でその日のバイの帳簿をつけてました。



おばちゃん「だったらさ!掃除をするとか、
    お茶を出すとか、何だってあるだろう!?



おばちゃんさすがに怒ってる(^^;)



寅「おばちゃんよ。
 
オレはなあ、
かりそめにもこの家の跡取りだぞ?
 なんでオレが
茶坊主みたいな
 真似しなきゃいけないんだい!



あけみ、ククク笑い(^^)

マヨネーズをサラダにつけている。


おばちゃん「何でもするって言ったじゃないか!


寅「茶坊主をするとは言わなえじゃねえか

茶坊主って…(^^;)



              



博「まあまあ、大きな声を出さないで下さいよ



さくら「そいじゃあ、お兄ちゃん、
  帳場にじっと座ってたらどお?



寅「座っててどうするんだよ?


さくら「金庫番。お金の出し入れしたり、
  電話を受けたり、




               




寅「そんな事で働いた事になるのかい?


さくら「大事なことよ〜。
  お客さんがお店に入ってきて、
  帳場にその家の主人がデンと座ってるのを見たら、
  ああ、ここはちゃんとしたお店だなって
  そう思うでしょう?

  おいちゃんだっていつもそうしてるじゃない。

  俺はここに座っているのが仕事なんだって
  いつかもそう言ってたわよ



博「なるほどね…


あけみ「寅さん、きっと絵になるよ、
  デーン!と座ってたら



と、炒め物の料理を博に渡す。


寅「そうか!絵になるかな?


あけみ「なるなる


寅「そうかあ!


寅「ああ、これ、姐や、
 お客様がお勘定だよ


「ねえや」って…何時代だ(^^;)



寅「…こんなふうにか!?



               





あけみ「そうそう

寅「へへへ

おばちゃん「アハア〜・・・

ばっかばかしくてアクビ?(^^;)



寅「おばば、おばば。
 アクビなどしてる暇があったら、
 店先に水でもまきなさい。
 お天気続きでほこりがたちます。

 あ!お客様、
 もうお帰りでございますか、
 またのおいでをお待ち申しております





おばちゃん、ブスッ〜


寅「これこれ、おなご衆、


あけみ「ハイ、旦那様、乗せるなって(^^;)


寅「暇なうちに御膳をすませてしまいなさい。
  無駄なおしゃべりなどをしないで、
 さっさと食べてしまうこと。

 
昔から早飯早糞芸のうちと言って、

 
私など座ったとな思ったらもうケツを
 ふいております。

さくら「なあにを、フフフ

 こないだなどは糞をする前に
 ケツをふいてしまって、
 まあ、親戚中で大笑い、フハハハ





                



一同「アハハハハ


おばちゃん、情けなそうな顔を
しながらも半分笑っている(^^;)




寅「ハハハ、ン、ンンー!


       


 こんなもんで
 いいのかな?さくら



        

さくら「いいわよと、ちょっと笑う。



              



あけみ、親指を立ててOKのサイン。


博「フフフ


寅「よし!それじゃあ、
 明日から帳場に座るか、ナッ!




柱時計が8回鳴る。


おばちゃん「どこへ行くんだい?


寅「ションベンだい


さくら「できるのかしら


と博に手ぬぐいで拭いた冷えたビールを2本渡すさくら。


博「どれぐらい持つかだな


寅の声「おい、労働者諸君、相変わらず
  不幸せな毎日を送っているか?ハハッ!



栓抜きを博に渡すさくら。

             


●おばちゃん、寅のこと最初から相手にしてない。
 でも…、ほんとうは手伝ってくれることを
 一番願ってもいる( ̄ へ ̄)

●さくら、寅が手伝うと言ってちょっと嬉しそう(´−`)

●博、冷静に時間の問題だと割り切っている(-_-)

●あけみ、ただただ面白がってるだけd(⌒o⌒)b








翌日  とらや 店



清掃車の音



あけみ「いらっしゃいませ!出来立ての
  草団子はいかがですかア




              



さくら「ありがとうございました〜



あけみ「いらっしゃいませ出来立ての
  草団子はいかがですかア




さくら、店先で団子の箱詰めしている職人さんの市川さんに、


さくら「市川さん、お茶置きます


あけみ「いらっしゃいませ、どうぞ〜


お使い途中の源ちゃん、
店の前から覗き、寅が座っているのに気づいて笑っている。


さくら「いらっしゃいませ


おばちゃん「いらっしゃいまし あ、
    あけみちゃん、これ向こうに


箱のフタを渡す。

さくら「なんになさいますか?

お客「草団子もらおうかな


あけみの声「美味しい美味しいとらやの
    草団子はいかがですかあ〜?

 

あけみ「いらっしゃいませ

客A「これにしよう・・・おねえさーん



寅「はい・・


あけみ「ハーイ!



客A「えーっと草団子一つに、磯乙女二つ



寅、あくび




               



あけみ「ハイ!草団子一つに、
  磯乙女二つ!




寅「ん〜〜
と、虫眼鏡であそぶ。




              



あけみ「おいしいとらやの草団子〜
  いかがですかあ〜




電話 チリリリーン!



寅「はい!はいはい、ハイ、
 とらやです。はいはい、え?お団子の
 注文?はい、いいですよ、はい」

さくら、やって来て聞いている。


寅「
500円、500円のね、はい、
 30箱、サンジュッ…パコね、はい、
 分かりました、はい。
 え?午後一時までにお届け。
 はい、いいですよ!はい、
 はい結構です。ハイ、
 有難うございました、はい




とメモをしながら応対。


            




電話を切る。ガチャン・・



寅さくらに胸を張って、

寅「どうだい?ちゃんとメモしたよ、
 やりゃできんだい、ヘヘヘ




さくら「相手はだあれ?



             



寅「…いや、オレ知らないよだよねえ(^^;)



さくら「どちら様ですかってどうして
  聞かないのよ



と、さくら、とテーブルの方へ。


さくら「ご注文は?


客「今しました。あ、ジュースください


さくら「はい




寅、ブスーっとして


寅「向こうが言わなかったんだ・・。
 言いたくないんだろ?
 そこまで立ち入ること無いじゃないか






               





ポヨョオ〜〜ン・・




確かに名前を言い忘れた客も悪い(^^;)
たぶんお馴染みさんなのだろう。
ま、午後一時過ぎにもう一度かかってくるとは思う。
押さえとして15箱ほど作っておいてもいいかも。




時間が経って…



寅、雑誌の4コマ漫画を見ている。



さくら「はい、400円のおつりです。
  ありがとうございました


あけみ「ありがとうございました〜


寅「プハ!ハハハハ・・教養ねえなあ、
 こいつ、アハハ・・・あけみ



あけみ「うん?


寅「これ、おまえ、おまえと、指差す。




               




あけみ「あ、(バシッ!)
  お店の中でね、新聞読んだり雑誌読んだり
  したらいけないっておばさんが言ってた
よッ!



と、雑誌を取り上げるあけみ。



寅「そうですかー!!



さくら、寅を不満げに見ている。


寅「新聞見ながらなんか
 こいちゃいけませんって
 言ってた
ーッ!根に持つタイプ(^^;)


っと、捨てゼリフを吐いて、台所へ。


客「???」ちょっと笑う。



おばちゃん「どこいくの?



寅「ションベン



おばちゃん「さっき行ったばっかりじゃないか




寅、大きな声で

寅「さっきはウンコ!




                




おばちゃん「…!!チッ、なっ…

とお客さんを気にして、悔しがる。
(^^;)




ポヨョオ〜〜ン・・・






時間が経って…、客がひいた午後




寅、遂に戸にもたれて寝てる(^^;)



寅「グゥ・・・…




台所で、遅い昼ごはんを食べているさくらたち。





おばちゃん市川さん

おばちゃん「どうぞ召し上がってください





寅のもたれていた戸が
パタッっと横にずれて、



        



寅、カックンと後ろへ。

寅、仰向けにひっくり返って、

起き上がりばなに寝ぼけて…

寅「いらっしゃいませ・・・




誰も店内にいない。



寅「……



        スローモーションアニメでお楽しみください。

            







渥美さん、この『間』、この声、この姿、
天才です!名人芸!




一同、台所から、『なんかあったのかな?』的表情。
このちょっとしたリアクションがたまりません(^^;)



一同「????


市川さんって方は役者ではなく
本物の職人さんなんだろうね。気がとてもいい。
おいちゃんのいない中、彼の存在は大きいね。




              



あけみ「いいの?食べさせなくて


さくら「目が覚めるまでほっとけばいいのよ


あけみ「かわいそうよ〜。
 もう放してあげたら?
 どこでも好きなところ
 走り回っておいでって
わ(^^;)


さくら「ウフフフみたいもろ((^^;)


おばちゃん「犬のほうが利口だよわわっ((((^^;)




寅「ん!ぐぐ!!!耳ダンボで、怒っている。



                 ぐぐ…
              




寅、スタスタと店を出て行く。



さくらたち気づいて、


おばちゃん「ちょっと、どこ行くの?


さくら「お兄ちゃん



寅、店の前で源ちゃんつかまえて、


寅「おい

と売り物の団子をわしずかみにして
源ちゃんの口に押し込む。
源ちゃん…(TT)





             




源ちゃん、口から出して、
店番のゆかりちゃんの方へそれを投げる。


ゆかり「あ、いやと嫌がる。








帝釈天参道



備後屋「いよ!とらやの若旦那


寅「ヨ!、不良!
 みんなでビール飲みに行こう





             




備後屋「いいね


寅「ああああ!


備後屋「ビールだ ビール



寅「ばーっといこう!



「抱かれたくない男N0・1」の出川哲朗さんも
参道の料理職人さん役でちょっと出演。
寅にビールに誘われていた。この38作は
ほとんどちらっとしか映らない。鉢巻して
自転車押しているのが出川さん。

彼は第37作、そしてこの38作、第39作、第40作、第41作でも出演。
第37作では「ニュースだ!ニュース!上海軒に寅さんの
恋人がいるぞ〜!」のセリフあり。露出が最も高かったのは
第39作で秀吉の出発のシーン。かなり長い間出ていた。
全ての作品で鉢巻しているから分かりやすい。当時は
まだ痩せていた(^^;)
第40作はオープニングで小諸での祭りの若い衆。
第41作もオープニングでポンシュウの仲間、テキヤの若い衆。




源ちゃん「兄貴のおごりや、生ビールや!


満男自転車で、すれ違う。


寅「満男!一生懸命勉強しろよ!


備後屋「寅みたいになんなよ!


寅、備後屋の頭を押す。


ポヨヨン〜〜・・・ボヨョオ〜〜ン・・・



             



とらや




職人さん「ほなぁ


さくら「ご苦労様でした、また明日よろしくお願いします


市川さん関西の方かな?



豆腐屋 プゥ〜パァ〜


あけみが掃除をしている。


あけみ「あ〜よし、片付いた


さくら「どうもありがとう。
  家じゃこんなに働かないんでしょう?



あけみ「は〜ウフフ、


あけみ、ほんとよく働いたよね。立派。




おばちゃん「さくらちゃん!
  カギ閉めちゃいな!!
  あの男が帰ってきたってね、
  入れてやんないんだから!!
  
ギュッと閉めちゃうんだよ!!」」


このおばちゃんの仕草、笑えます。
こんな声を荒げたおばちゃんは久しぶり。
よ〜っぽど腹立ってるんだね(^^;)
それだけ密かに寅に期待してたってことだ。
やっぱりどこかで頼りにしたいんだね…(TT)

        
         
  ギュッと
             



社長「アハハ子供のせっかんじゃあるまいしさ、
  そんなことしたってしょうがないよなあ、さくらさん



さくら「どうせお酒でも飲んでくるんだから
  先にご飯食べちゃおう。
  あけみちゃん、一緒に食べて、天丼取ったから



あけみ「あ〜美味しそう


社長「気持ちは分かるけどね、もともと
  寅さんに期待するのが間違いなんだよ。

  そりゃ彼なりの魅力はあるよ、
  しかし地道に働くなんてこととは
  一生縁の無い男だね、悪いけど





寅、そっと入ってくる。


あけみ「そこがいいところなんだよ、寅さんの


社長「お前は黙ってなさい




働かないからって、それがその人の
いいところのわけないが、
あけみが何を言いたいかは分かる気がする。





               




おばちゃん「やめよう!おっと切れた(−−;)


さくら「え?



おばちゃん「さくらちゃん店やめよう!
  つくづく嫌んなっちゃったよ。
  あたしね、この店みんな
  売っ払っちゃってね、



       
 ウッパラッちゃってね!
       


 
 おいちゃんと
  小さいアパートに住むよ!
  そうしよう!




おばちゃんのオーバーアクションで、手から水が飛び散って
タコ社長の顔にかかる。





そういえば、テレビ版の最終回ではとらやは
キッチャ店になってたなあ・・。




さくら「おばちゃん、それは言わないって
  約束でしょう?



そんな約束しないといけないくらいギリギリなのかな…。



おばちゃん「だって、バカバカしくなっちゃったんだよ、
   あたしたちが一生懸命働いたって
   肝心の跡取りがあの様じゃない!
   ウアア!アアアア・・ウウウウ


と、お馴染みチャルメラ泣き(^^;)


やっぱり、おばちゃん、
どこかで寅のことまだ諦めてなかったんだねえ〜(TT)





               





店先


おばちゃんの言葉を聞いていた寅、
中に入らないで、すごすごとそのまま出て行く…。

              



               




台所


さくら「やめるのは簡単よ、ねえ?社長さん?



社長「そうだよ、この界隈で店や工場を
  やってる奴は一日に一度やめようかと
  考えるんだ、

  しかしそれで本当に
  やめてしまったら日本の中小企業はどうなる!



なんのこっちゃ(^^;)



あけみ「もしもし、父ちゃんの話し
   してんしゃないでしょうが今!
んだ(^^;)



社長「しかし、やめるって言葉だけは
  言わないでほしいよ


社長、おまえも言ってるよなあ毎回(−−)



                



おばちゃん「分かったよ、もう言わないよ、悪かった

素直なおばちゃんっていいねえ(^^)

            
さくら「あら?帰ってきたのかな?




店先


満男が戸を開けて入ってくる。




台所


あけみ「なんだ、満男君か

さくら「おかえり

おばちゃん「おかえり

あけみ「どこのおじさんかと思っちゃった

さくら「ねえうまいねえこの合いの手。

あけみ「大きくなって




満男「ちょっとごめん・・



と、二階に行こうとする。





               





あけみ「どこいくの?


さくら「なに?おじさんの部屋に
  用事があるの?


満男「かばんと上着とってきてくれって言うんだよ


さくら「え?どこにいるの、おじさん

満男「駅で待ってるって

満男「まいったなあ、こっそり持って来いって
  言われたんだけどなあ



さくら「……



               




鐘の音 ゴオ〜ン・・ゴオ〜ン



二階の寅の部屋

薄暗い。


満男が、道具を適当にかばんにつめこむ。









京成柴又駅  ホーム



寅「これがね、これがね、コレ・・・

と、源ちゃんの髪の毛で遊ぶ寅。


女性のお客さんに向かって源ちゃん

源ちゃん「あ、お姉ちゃん、ここあいてるよ

源ちゃん「かわいい

寅「そういうこと言ってんじゃねえよお前


源ちゃん「ヘヘへかわいい、ハハハ





満男カバンと背広、帽子を持ってやって来る。

さくらもちょっと後から歩いてくる。

さくら、駅員に挨拶

           


源ちゃんベンチで寅の足持ちながら


源ちゃん「アハハ、満男来た満男



               




寅「おう、ご苦労、

  …!

 何だよお前、
 内緒で持って来いって言ったのに
 言いつけたのかぁ?



満男「違うよ、みつかっちゃったんだよ

寅「ちっ


源ちゃん「アホかいなあ〜


寅「しょうがねえな。いや…、

 挨拶しようと思ったんだけどねェ、
 また引き止められると面倒だからさ、

 なんだお前、怒ってんのか



さくら「お兄ちゃんがあんまりにも
  頼りないんでお店なんかやめてしまうって、
  おばちゃん泣いてたわよ




              



貸テープ2000 VTR ビデオセンター 六二八 - 一六二八


寅「本当に店やめちゃうのか?



電車の警笛 パア〜〜〜


さくら「お店やめたらお兄ちゃん帰ってくる家
  なくなっちゃうじゃない。
  それとも、ある日帰ってきたらとらやが
  無くなって新しいビルが建ってたら
  どうするの?




寅「頼むよ、それだけはやめてくれよ



             



さくら「だったら、どうして、まじめになって
  働いてくれないの?



あれはあれで、ちょっとは真面目に
働こうとしたんだけどねえ…。
堪え性がないんだね。
そこんとこわかってやってほしい…。






寅「すまねえ



             



海老原医院 カット&パーマはしざ(き?)き たなかや 秋葉原電気まつり 北野医院 金子家

吸いがらは吸いがら入れに





テーマ曲が静かに流れる。




電車のドアが開く。寅が入る。
中に客はほとんどいない。&
片側開きドアなのに…、
          ↓
       


で、寅が入って振り向いた時、
いきなり電車の人数が激増!&
両側開きドアに変わった!
          ↓
       

おいおい、オカルトじゃあ!(^^;)


さすがにこれは無理があります、監督(^^;)

ちなみに、第25作「ハイビスカスの花」でも、リリーと柴又駅で
別れる際に両開きドアが乗った後、片開きドアに変わっていた。




寅「ちょっと来いお前な、一生懸命勉強して
 立派な人間になって
 お母さん安心させろよ、うん?



満男少し頷いて


満男「
おじさんも少しは反省しろよ



         



あー!遂にこの日が…、

満男ぉぉ……( ̄ー ̄)






寅「何イ?なんだお前、チッ!偉そうに、
 この、こないだまでお前こんな
 ガキだったんだ、こいつ。生意気なんだよ




さくらも半ば驚いている。




              




さすがの寅も、油断している時に、
いきなりパンチを食らってタジタジ(^^;)

さくら何か言いそうになる。

ドアが閉まってからも、寅満男やさくらを睨みながら
ぶつぶつ…動揺は納まっていない感じ。





ガクンと、電車が動いて、

寅の体が少しよろける。



過ぎ去っていく電車。



電車を見送るさくらと満男。




             




博「あんなこと言ってわるかったかな


さくら「ん、いいのよ、よく言ってくれたわ


と、満男のお尻をポンと叩くさくら。



             




ほんとほんと成長したね満男(^^)


満男はもう高校生だもんね。


満男は、第1作(69年)で誕生。
第17作(76年)で小学校入学。
そして第33作(84年)で中学校入学(^^;)
なんと小学校を8年も行っている。
で、3年後の第38作(87年)のこの作品では
おそらく葛飾高校1年の夏。そしてこのあと
第41作(89年)「心の旅路」で浪人生となっている。

おっと待てよ〜…、あれェ?…満男は(89年)の
第41作「心の旅路」ではやくも浪人しているってことは、
高校は2年間で卒業したってこと??
以前書いたように
泉ちゃんは高校4年間行ってるし、
満男は2年しか行ってない…。うーん困ったぁ〜(^^;)
まあでも「それを言っちゃあおしめえよ!」という寅の声
が聞こえてくるようなので深追いは今日はやめましょう。







駅員、ひっくり返って寝ている源ちゃんに


駅員「お客さん、お客さん、大丈夫ですか?



源ちゃん「あ?寅さんは?と、きょろきょろする源ちゃん


源ちゃんはいつものまんま。
ほん〜と成長しないね。だから大好き(^^)

御前様は源ちゃんを「諦めた」って言ってるけど、
あの人もたぶん源ちゃんが好きなんだと思う。






        



この映画が始まったのは1969年(昭和44年)、第1作の
ラストで満男は産声をあげた。

あれから18年。高校生になった満男は遂に寅を
客観視できる年齢となったのだ。
私は満男のあの「伯父さんも反省しろよ」の言葉に
胸を打たれた。あの満男が、あの満男が、である。
うーん感慨深い…。

まあもっとも、それまでも満男は寅の言うことに
よくクレームをつけてはいた。
「小学校は誰でも卒業できるんだ」、とか、
「死んだら目が覚めないよ」
などと、こまっしゃくれたことは前々から言っていた。

しかし、今回ばかりは満男は本質的な発言をしている。
寅も満男に面と向かってズバッと説教をされて、
タジタジと蒼ざめていた。
さすがの寅もこれは反省せざるを得ないだろう。

それにしても、今回の寅はほんとに見事に役に立たなかった。
あそこまで役に立たないとかえって気持ちがいいくらいだ。

あけみがまたこう言いそうだ。

そこがいいところなのよ、寅さんの。」って(^^)


チャンチャン。










札幌


大通り公園


啖呵バイ


寅が、複製の絵画(額付き)を売っている。




                   




寅「焼けのヤンパチ日焼けのなすび、
 色が黒くて食いつきたいが、
 あたしゃ入れ歯で歯がたたないよときた!

 ね!?どう、お客様!
 これだけある、芸術の中で、さあ〜て、
 どれにするか!ね、これなんかどう?んん?

 角は一流デパートでお願いしまして
 2万や3万はくだらない品物、
 きょうはそれだけ下さいとは言いません!ね!
 北海道のお客さんとお近づきのしるしだ!




キ〜ン、コ〜ン、カ〜ン、コ〜ン・・・


寅「ただ同然のお値段で差し上げます!
 さあ!どう!
ゴッホさんのひまわり!ね!
 え!ほら!4700円でどうだ!




客「フハハハ…


寅「ほら!



この映画が作られている最中の昭和62年3月30日、
ゴッホの絵「ひまわり」をロンドンのオークションで
安田火災が約53億円で落札。当時の絵画の世界最高値段。
三越もピカソの「軽業師と若い道化師」を47億円で購入。
バブリーな時代でした。




                   








柴又 帝釈天参道




御会合 御宴会 御食事 草団子 亀家本舗




                   




さくら、自転車に乗ってとらやにやって来る。


さくら「こんにちは〜


備後屋水を撒いている。

備後屋「あ、こんちは〜

やっぱり備後屋さんって亀家さんなのかな…。


庚申のポスター

川千家







とらや 茶の間



快気祝いの、のし紙をおいちゃんが起きて
筆で一枚一枚丁寧に書いている。


『快気祝 車竜造』


テレビ「午後からは2時半と5時からの、それぞれ15分間の通行止めが繰り返して行われています。
    今朝も特に渋滞はありません」

ビルの映像がテレビに流れてる。



さくら「ただいま

おばちゃん「おかえり

さくら「病院の支払いすませてきた。
  これ、保険証とおつり


おばちゃん「どうもありがとう

さくら「いいの?おいちゃん、いいの?仕事なんかして

おいちゃん「ん〜肩慣らしにな、のしを書いてんだよ、快気祝いの

さくら「ああ、こんなにたくさん

おいちゃん「ん〜

おばちゃん「お見舞いもらったり、お返ししたり、
    どうして日本人はこんなめんどくさい事すんだろうね





                   




おいちゃん「貧乏人がわずかなものをやったりくれたりな〜

さくら「うちはいらないからね

おいちゃん「う〜ん


おいちゃんは、たぶんさくらたちにも
最後に「あまったからもってけ」何て言って上げるんだろうね。
中身はタオルかな?








テレビの番組




さくら「あら?北海道




北海道の阿寒国立公園が映し出されている。


さくら「あ〜いいとこね〜


実は、さくらは、なんと第11作「忘れな草」で
網走に行った事がある。あれは長く辛い旅だったね。


テレビ

アナウンサー「一月に沖縄を出発した、桜前線。北へ北へ北上を続けて、
      ようやく五月、この北海道東部まで
      たどり着きました。道東は今まさに新緑の季節、観光シーズンの幕開けです。こちらは
      毬藻で有名な阿寒国立公園の中にあります、川湯温泉




おばちゃん「北海道のどこだろう


さくら「阿寒だって


おばちゃん「ふ〜ん・・・へぇ・・・


たまたまテレビの上に北海道の
みやげ物である「熊の彫り物」がある。





                   




おいちゃん「北海道あたりにいるのかな、寅のやつあたり(^^)


おばちゃん「本当は欲が無くて、気持ちの
   優しい男なんだけどねえ・・、
   どうして、顔あわせるとああ
   憎たらしくなっちゃうのかねえ〜
わかるわかる(^^;)




テレビでは


北海道阿寒 川湯温泉が映っている。



阿寒国立公園内の、屈斜路湖の東、摩周湖の西に
位置する川湯温泉は、今も活動を続ける硫黄山を
泉源とし、源泉の多さと豊富な湯量を誇る。
日本全国からも多くの人が訪れる名湯で、
古くから万病に効くといわれ、幅広い効能が人気の
理由となっている。






アナウンサー「そして、川湯温泉と言いますと、なんと言っても有名なのが、この、硫黄山です。
        今日も真っ白い煙がいきよいよく立ち上っていますね〜。硫黄山の駐車場は
        毎回観光バスでご覧のとおり一杯になっています。

        では、ちょっと、観光客の方にお話しをうかがってみましょうか〜



アナウンサー「あ、おじさんおじさん



寅「え?と、爪楊枝を口にしながら、寅が食堂から出てくる。

アナウンサー「こんにちは〜

寅「こんちは

アナウンサー「今日は観光ですかあ〜?

寅「オレかい?




                   



アナウンサー「ええ


寅「そんなもんじゃないよ、ずっと商いでもって旅して



さくらたち、寅が映っているので唖然。
お口ポカン…( ̄0 ̄;)




                        ポカン
                   




アナウンサー「あ、いろいろ、じゃ道東の方を回られたんですねえ〜

寅「あれテレビかい?


アナウンサー「え、テレビです


寅「あ、全国放送?

アナウンサー「ええ、あ、そうなんですよ。ちょっと、じゃあ、ちょっと、
      テレビのほうを、はい。あの〜どちらからですか、今日は?




寅、テレビカメラへ近づき、

寅「おいちゃん、おばちゃん、見てるかい?

おいおい公共の電波を私物化… ゞ( ̄∇ ̄;)



アナウンサー「



おばちゃん、頷きながら

おばちゃん「ああ

つい返事をするおばちゃん、いいねえ(^^)





アナウンサー「ど、どちらからですか?寅聞いてないってゞ( ̄∇ ̄;)


寅画面いっぱいに映って

寅「今凄く反省してるからな!


アナウンサー「あ、すみません、はい


寅「さくらいるか?よ!おい!と指でピース・・・

反省しとらんがな ヾ(- -;)





                   





アナウンサー「あ、すみません、どちらからですか?無駄無駄(_ _)


スタッフたち大慌て


スタッフ「2カメいけいけ!


2番カメラを持っていたスタッフ
「きたきたきたきたきた!おい!」
と、いきなりの画面切り替えに
カメラマンやスタッフががあせっている。



アナウンサー「あ、もう結構です。どうもありがとうございました!
     なんか、とても、
ユニークな観光客の方でしたね



ほんとユニークですわ、あの方…┐(´-`;)┌

     


おいちゃん「は〜情けなそうに深くため息


さくら「はーと、驚いたと言う感じで胸に手を当てる。


おばちゃん「はぁ・・・しょうがないねえ〜、って言う顔



とにかく一同虚脱状態。


おいちゃん「心配なんかすることねえんだ、
   あ〜あ、
損した

   ちょっと横んなるぞ〜よいしょ


と布団に横たわる。



                   



客「くださいな〜

さくら「はい

おばちゃん「いらっしゃい



おばちゃん、テレビを切る。



おいちゃん「あ〜あ、ヤダヤダ



おばちゃん「さて!働かなくちゃ


さくら「いらっやい


第3作「フーテンの寅」でもそうだったが
寅がテレビのインタビューでなんかしゃべると、
とらやのみんなはげんなり(^^;)












北海道 知床

(本来、シリエトクとも言う)




アイヌ語のシリエトクという言葉が語源、「地の果つる所




                   





ロケは知床の方ではなく標津郡中標津町俣落地区



この場所は私の寅さん友人である越後の滝沢さんからの情報によりわかりました。






農場で牛を診察し、帰ろうとする順吉。



順吉「心配することは無い


牧場の人「どうも


順吉「うん



ドキュルルル・・・ドキュルルル



順吉「おい、ちょっとフェンダーけっとばしてくれ



牧場の人「いきますよ



順吉「おお



キュルルルル・・バン!・・ババン!ババン!


とエンジンがかかり走って行く順吉のライトバン。




テレビに映った『川湯温泉』から2つ目の駅



牧場がある農道横の札弦駅前公衆トイレ。

札弦駅(さっつるえき)は、北海道斜里郡清里町札弦町にある、
JR北海道の釧網本線の駅。



この場所は私の寅さん友人である越後の滝沢さんからの情報によりわかりました。




電車の音が聞こえてくる。



寅、トイレから出てくる。








寅「さ〜てと・・・




順吉の車が走ってくる。




手を上げて車を止める寅。



寅「おじさんよ、どっか宿屋のあるところまで
 乗せてってくれっか?




                   





順吉「早く乗れ

寅「え?

順吉「エンジンが止まるんだ!早く乗れ!


寅「おお、そうかい、ほ、よ、


カバンを車の上に乗せ、


寅「よいしょと!


バボボボ・・・


順吉「あ〜あ、ダメだ


キュルルル・・・キュルルル・・・とエンジンが止まる。


順吉「あ〜


寅「どうした?壊れちゃったか?


順吉「あ、ちょっと降りてフェンダー蹴っ飛ばしてくれ


寅「蹴っ飛ばして?

順吉「ああ、思い切ってやってくれ


寅、外に出て

寅「
これ、本当に蹴っ飛ばしていいのか?

順吉「ああ

寅「よし!ぺッ



足で蹴飛ばす寅。



                   




寅「ッツ!お〜痛て、あ〜

順吉「早く乗れ!

寅「え〜?

順吉「早く

寅「乗ったり降りたり
 どうなってんだよ、この車は





                   





順吉の長靴に、牛の糞がべったり(^^;)



寅「臭えなあ 何の臭いだよおじさん、こら





                  





順吉「牛の糞のにおいだ


寅「え?


順吉「神聖なる香りだぞ


寅「はあ〜こりゃ神聖な車に乗っちゃったなあ・・・


バババ・・・

寅「おじさん、お百姓さんか?


順吉「牛飼いじゃない 獣医だ


寅、器具をカチカチさせて、眺めながら、

寅「獣医・・・はあ〜そりゃあ、大変な仕事だ
 ご苦労さんだね、おじさん



ウトロの町を行く順吉の車。


巨大なオロンコ岩が見える。地球が惑星であることを実感、



                   







ドバビビビビ・・・

44 つ 61-28


ガシャ・・・バタン・・・



この自宅ロケは斜里、ウトロの町ではなく羅臼町。

この場所は私の寅さん友人である越後の滝沢さんからの情報によりわかりました。


目梨郡羅臼町本町

順吉の自宅



現在のロケ地↓



順吉「ついたぞ




寅「はあ〜はあ、ついたか、あ・・・あ〜あ、
 よく寝た、あ〜っつ〜はい、は、
 それじゃ、おじさん、世話になったな






                  





犬、キャンキャン・・

順吉「ちょっと寄ってかんか?

寅「え?

順吉「茶を入れる


寅「そうか・・じゃ、ま、一杯だけよばれるか、な







家の居間



順吉、茶の用意 カチャカチャ・・


寅「おかみさん、いねえのか?


順吉「死んだ、十年前だ


寅「どおりで機嫌悪いと思ったよ。

 昼間牛のツラ見て働いて、
 夜は一人っきりで酒くらって寝るんじゃ
 
何〜にも楽しいことはねえだろおじさん




                   




順吉「ないドン…とカップを置く。

正直な人だね(^^;)




寅「どうして後添いももらわないんだよ、え?
 年だとかさ、器量だとか、そんな贅沢いわねえで、
 よくあの〜茶飲み友達って言うじゃねえか、な?
 白髪頭のババアでももいいからもらいなよ、その方がいいぞ




順吉「君は日本の農政についてどう考える?


寅「え?目ぱちくり、きょとん(^^;)




                   





順吉「牛や馬は人間の仲間なんだ。
 何百年もの間、人間と動物は深い愛情で結ばれてきた。
 病気の牛を家族中で一生懸命看病して、
 ようやく元気になって草を食べだした時の喜び。

 長年働いてくれた牛をついに屠殺場に送るときの悲しみ。
 それが農民の心なんだ!

 今はどうだ!牛は経済動物だ。
 乳量が月に300キロすぐ屠殺場行きだ。
 駄目な牛は殺してしまう!




ムギュ・・ボム!!と、ワシ掴みでちぎった
カステラを皿に無骨に置く。 
食えないよ(^^;)


順吉「恐ろしい思想だとは思わないか?

寅「思う思う・・

順吉「人間に当てはめればどう言うことになると思う?

順吉「役に立たたんやつは切って捨てろ!というんだぞ!


寅「オレなんか切られちゃうな、すぐ…
と、ビビル寅。





                   



順吉「こんなことでいいのか日本の農業は




『はまなすのママ』である悦子さんが入ってくる。



ママ「こんにちは、お客さん?

寅「だれだ

順吉「近所の女だ

寅「ほ〜

ママ「あーひどい坂道、こんちは


寅「こんちは

ママ「はい、洗濯もん。自分で取りに来ればいいのに、
  いちいちめんどくさい、ねえ?


寅「ふふん・・・



              




電話 リリリーンリリリーン・・・

順吉「はーいあーあんたか、どうした?えー?逆子?
 あーそりゃいかんな、あー、
 あーじゃあ、すぐ行こう、あ?はいはい、はい
ガチャ・・

順吉「ちょうどよかった。
  オレ牛のお産で出かけるから、
  あんたこの人の店で飯食っててくれ



寅「お姐さん店やってんの?


ママ「雇われてるだけよ

寅「あ〜

順吉「どうせロクなもの食わさんがな、
 銭ばっかり高くとりやがって



ママ「気に入らなきゃ来なきゃいいだろ


と、怒りつつも、順吉の靴下の洗濯物を
エプロンに入れる。優しいね。




順吉「ああ、きみは今夜ここへ泊まれ

寅「え?

順吉「話しの続きをしよう

寅「あ、いいよ

順吉「ゴホン・・ゴホン・・




順吉出ていく。



寅「あれ少し変わってんな

ママ「少しどころじゃないわよ、大変わりよ(^^;)

寅「あ〜、後妻の口なんてな無理だね

ママ「誰が来るもんか(^^;)


ママさきほどのカステラを臭う。


寅「うん、あ〜汚い汚い汚い汚い!
 
ウンコつかんだ手でピシャーって
 やったんだから
ウンコ掴んだままじゃないだろ (^^;)




                 







順吉、エンジンをかける。

調子よくかかる。

ドウゥ〜ンドラバババ・・

順吉「ああ、かかった、フフフフ…

ガッコン、ドババババ・・・


ママ、部屋の干し物を見たり、あれこれ片付けをしている。

寅「他に家族はいねえのかい?


ママ「娘さんが一人いるけど東京嫁に言ってる。…この子

と写真を持って指でさす。

寅「へえ〜。たまに帰ってくるの?

ママ「全然

寅「喧嘩してるのか?

ママ「あの男が悪いんだよ。東京の男なんか信用できるかって
  頭ごなし反対なんだから



順吉はそんなにバカじゃないと思う。
たぶん、その姿を見て判断したと思うんだが…。




寅「ふ〜んじゃ、駆け落ちしたんだ

ママ「可哀想に りん子ちゃん

寅「り、りん子ちゃん?

ママ「あの娘の名前だけどね



ママ「ど?あたしの店いこうか?



                   





寅「行こう行こう早く行こう



                   





この寅の発言は、同じく淡路恵子さんが
ウイーンのマダム役で出演した第41作「心の旅路」でも出てくる。


マダム「ウチ来る?」
寅「行こ行こ、すぐ行こう!」

大船のシネマワールドのコマーシャルにもこのカットが使われていた(^^)


                     第41作「心の旅路」より
                 










離農者の見送り。



中標津町西竹


この場所は私の寅さん友人である越後の滝沢さんからの情報によりわかりました。



女A「気をつけてね〜またね〜さいなら〜」



順吉の車通りかかる。



離農をする男「あ、上野獣医さん、いやいや、
    挨拶にいかねばなんねえと思ってたんだけど


順吉「いやあ、今日だったのか・・

男「はい・・・

男「いろいろお世話になりました。もう二度とあえんかも分からんけど
 どうか獣医さんもお元気で



順吉「あんたも良くがんばったなあ



                  





男「離農だけはしたくねえと 
 精一杯やってきたんだけど ありがとうございました



車の中には娘さんが座っている。


男「おい

妻「お世話になりました

順吉「いや









スナック『はまなす』


北海道斜里郡斜里町ウトロ東



知床旅情を歌っている。



店の奥にあるポスター『いま、ドラマが始まる知床』


婿養子が歌っている。
♪今宵こそ君を〜、抱きしめんと、岩陰に寄ればピリカが笑う


船長「へえ〜あのへんくつ親父が客ば家さ泊めるなんて
  珍しいことがあったもんだなあ



マコト「よっぽど気に入られたんでないかい?この人




                




ママ「そうそう

寅「そんなに嫌われてんのかい?あのおじさん

ママ「うん、フ!

文男「あれを好きなやつはいねえな〜

婿養子「誰の話だ

マコト「上野の親父の話しだよ〜

婿養子「やめれ、酒まずくなる

船長「おめえの歌の方がまずくなる

マコト「ほんだほんだ


文男、婿養子のマイクをとる。

婿養子「

文男「おれ百円払うから


文男、『知床旅情』の3番を歌う

「♪

♪別れの日は来た
 羅臼の村にも
 君は出てゆく
 峠を越えて
 忘れちゃいやだよ、きまぐれガラスさん
 私を泣かすな、白いかもめよ」

本当は「しろいかもめを」である。


寅「しかし、オレはあの手の人間は
 そう嫌いじゃないね、


船長「え?


ママ、少し頷く。


寅「そりゃ変わってはいるよ

船長「ええ・・

寅「でもな、オギャーと生まれたときから
 ああ言う顔をしてたわけじゃない
してたら怖い(^^;)



             




婿養子、ビールをおかわりする。


船長「え〜そりゃそうったけどよ


寅「長い人生苦労してな、その挙句の果てに
 かわいい一人娘を東京のノッペリした男に
 フッとさらわれた。
 それ以来見るもの聞くもの腹立たしいことばっかりだ



船長「ん〜・・


寅「それであんな顔になっちゃったんだとオレは思う


ママ「うん、あたしもね、
 それを考えるから可哀想になるんだよ




船長「なるほどな


寅「おお、船長さんも、何かかわいい娘さんが
 いるそうじゃないか、うん?


船長「これがとんでもねえアッパラパーでなあ

寅「イヒヒヒヒ




船長「あれかい?寅さんも子供じゃ苦労したか?






寅「う〜ん、


      



最初から苦労することは分かっているから、


      



所帯は持たずにきました、オレ〜

       
    オレ〜
      



一同
……



船長「…、賢いひとだな・・



            


                   



婿養子「ウン・・そこまで徹底できないもんねえ〜


船長「ああ、できねえ



結局徹底しているわけではないんだけどなあ(^^;)
でも、途中から『得恋的失恋』が増えていったので、
結婚や家族を持つことをどこかで避けている、というのは
意外にも正しいかもしれない。

それにしてもあの渥美さんの
オレ〜」には笑ったね。
すまけいさんとの絶妙な、あの「間」
ふたりとも名人芸だ。



マコト「しかしー、それではがねえんでねえかな

するどい指摘!(^^;)


寅「夢か〜、お兄ちゃんは独り者?

寅、微妙ぉ〜に復讐(^^;)


婿養子「へ、ふられっぱなし。ヘヘへ

寅「ハハハ

マコト「何だよ婿養子〜。
  女たらしこめばいいってもんじゃねんだぞ


婿養子「オメ!オレがいつたらした?

マコト「お前な、女ばっかり…




ママ大きな毛蟹を蒸して皿に乗せる。


ママ「ほら、出来た出来た船長さんのおごり

寅「お〜

船長「毛蟹

寅「ほ〜毛蟹!
 結構けだらけ猫灰だらけ
 お尻の周りは糞だらけときた



一同大爆笑ハハハハハ!





                   



船長「ウハ〜ハハハハ!
 面白、面白い事いう人だな、ハハハ、
 
糞の周りは猫だらけ・・
 あれ?違ったっけ?ウハハハハ



上手いねえ!すまけいさん!(^^)
猫が群がってるの想像しちゃったよ。

一同またもや大爆笑ハハハハハ!



寅「アハハハハ寅手をたたく。


船長「わかんねくなってしまっただ


寅「いや〜いやいや、フフフ




                   










一夜が明ける




知床五湖


朝霧の中、知床二湖に映る薄紫の羅臼岳




                   





ウトロ灯台の見える岬(知床自然センター付近)



                   






船長、マコト、文男、婿養子たちの
働く姿がそれぞれ映し出される。




船長とマコトはもちろん漁業。

文男は漁協の管理職。

婿養子は「海洋ホテル」の接客。




                 




海上で

船長「こちら知床丸どうぞー

和栄丸「和栄丸(かずえい)です。知床丸どぉ〜ぞ。ズッ

船長「潮流の具合どうだね?どうぞ〜

和栄丸「今日は潮あんばい よさそうですよ どぉ〜ぞ

船長「了解〜

マコト、綱をまいている。


和栄丸の人の『どぉ〜ぞ』は最高に面白い(^^)



           




漁協と魚市場付近

文男が働いている。


           


文男「お〜い、来るぞ〜








知床海洋ホテルの玄関

婿養子がツアーのバスを見送っている。
「ありがとうございましたあ〜」

ハンテンには 知床 知床ウトロ温泉 知床海洋ホテル
と書かれている。


『知床五滝カムイワッカ湯の滝
オシンコシンの滝 知床秘境ツアー 
道東旅の友旅行会』



知床は滝が結構多いからねえ。


           



歓迎

福住東中工農業組合
北郵政監督室
屈斜路長寿会
美川農業組合
寿水産漁業



只今空室ご在居ます

13,000円
10,000円
8,000円











斜里駅

実家に電話をかけるりん子

日本レンタカー

3,3,2、2、7。。。


電話の呼び出し音 プルルルルル…プルルルルル・・ブッ

 電話が取られる


順吉「ン!んん・・もしもーし・・



りん子緊張しながら言葉を出す。


りん子「父さん あたし、 もしもし、りん子ですけど



                   





順吉「……、分かってる・・



                   





りん子「あの・・しばらくね。

  今、斜里の駅なの 
  突然だけど帰りたくなってしまって。

  これから帰ってもいいでしょう?

  もしもし聞いてるの?





順吉「聞いてる。


りん子「じゃ、今からタクシーに乗るから



順吉「お前ひとりか


りん子「もちろんよ


順吉「何かあったのか 

りん子「…、それは…、会ってから話す。じゃあね


順吉「あ!もしもし!もしもしッ!っち。ふ・・・




ソファーで寝ている寅の元に行って、


順吉「おい、寅さん・・おいと揺り動かす。


寅「おう??おう?何だおじさん

順吉「起きないか





                   




寅「ふあ・・今はちょっと眠いな。
 眠いんだオリャ・・あ。
 あ〜牛の診察だったら一人で行ってくれよ。
 専門家だろ?頼むよ な頼むわ






ウトロに向かうタクシーの中




斜里駅からウトロまでは約20キロほど。
りん子の場合はタクシーかバスしかない。







                  




運転手「あれが有名なオシンコシンの滝よ。
    降りて見るかい?



りん子、少し照れながら

りん子「あたし知床の人間なの


運転手「ああそう。また内地から来た観光客かと思った。ハハハ…

国道334号 をタクシーが通っていく。


オシンコシンの滝が見える。



          




「オシンコシン」という名前は、
アイヌ語で「エゾマツが群生するところ」
という意味だそうだ。

普通の滝のように、水が垂直に落ちてくるのではなく、
岩肌を白糸のように伝って流れ落ちていく。
途中から流れが二つにわかれることから
「双美の滝」とも呼ばれている。

「日本の滝100選」にも選ばれている。








順吉の自宅



おそらく何日かぶりでヒゲをそっている順吉


ゴシゴシ・・ジージー





                   






タンスをあけて、Yシャツを出す。
ガタ!ガタガタ…ガサゴソ ばん! 

床のゴミやちりを庭先にはきだしている。
この前のカステラの箱を捨てる。 


ザ、ザア ザザ!ガガ!バサバサ…


実際の三船さんは、実はとても綺麗好きで、整頓好き。


寅起きて、

寅「
っち、なんだいおじさん。
 朝っぱらからバタバタバタバタ
 なにが始まるんだい?誰かくんのか?


と帽子にブラシをかけている。

寅もあれでも一応清潔好き(^^;)


順吉「ああ

寅「だれだい?

寅「お!ヒゲそって新しいシャツ着て!はァ!女か?

順吉「ああ確かに(^^;)




                   




寅「こりゃ驚いたねえ まだ他にいるの?
 なんだオリャ、夕べのママがそうかと思ったんだよ
 わかんねえもんだねこんな面でもてんのか?
 じゃ、オレいたら邪魔だな。


順吉「勝手にべらべら喋るなそんな!
 そんな
の女じゃない

寅「う〜ん、じゃあ、どんな類なんだい?

順吉「娘だ

寅「りん子ちゃん帰ってくるのか?


名前を知っているので順吉驚いて

順吉「何で知ってる?





                   





寅「う〜ん。みんな聞いちゃったよ、ゆうべ。 
 東京嫁行ってるんだろ?何で帰ってくるんだ?


順吉「知らん

寅「そうか。ひさしぶりに娘さんに
 会えるんでおしゃれしてるんだ。
 よかったなあ、おじさん。なあ?
 何年ぶりかの親子対面だ。やさしく迎えてやんなよ。
 間違ってもなあ『何しに帰ってきた!』
 なんて言っちゃいけねえぞ
 いいな? じゃ、オレはこれで行くからよ



順吉「帰るのか?


寅「うん。親子水入らずの所に
 他人がいちゃ邪魔だよ。あばよ


順吉「おい、寅さん

寅「えー?…、なに?


順吉「う〜ん、娘に会っていかんか?


寅「美人かい?やだねえ、またチェックだよ┐(-。ー;)┌

『高梁の朋子さん』に瓜二つな人だよ寅(^^;)



順吉「ふん…大したもんじゃぁない





                   




寅「ん、じゃ、またお邪魔します。まあ、
 幸せになれよ なあ?



美人って言ったなら、すぐに手の平返して
留まるんだろうなあ〜(^^;)






出て行く寅。

入ってくるりん子。

ご対面。




りん子「あら!!


寅「こんにちは・・



                 





りん子「あ こんにちは


寅「あ、どうぞ お上がりください さ、
 ご遠慮なく どうぞ どうぞ


あんたの家じゃないってば ヾ(-_-;)



りん子「はい。 失礼します




寅「どうぞ どうぞ…


順吉、黙々と掃除をしている。


寅「おじさんよ、何してんだよ。 
 りん子さん帰ってきたんだぞ、挨拶してやれよ



順吉「

順吉、椅子に腰掛ける。



りん子「……


                   








りん子「ただいま。老けたわね、父さん



順吉「何しに帰ってきた!?そのまんま(ーー;)






寅「クァ〜…っち…



                   







順吉「謝りに来たのか?




りん子「いけないの?帰ってきちゃ


と、ワナワナ震えるりん子。



                   







順吉「黙って家を飛び出して、 
  何の連絡も無く突然帰ってきて
  それで俺に『よく帰ってきたな』って
  そう言えって言うのか!






                   








寅「いいかげんにしろよ!おれがあれほど言ったろう!
 やさしく迎えてやれよって


りん子さん泣き始める。

寅「
ほら見ろ 泣いちゃったじゃないか 
 あんなきれいな人が 
 ッチ!しょうがない男だなあ本当に


寅「勘弁してくださいね




                   





りん子「


寅「困った性格だよ 
 いや、根はね悪い人間じゃねえんですけども
 たった一人の娘に裏切られてから
 すっっかり根性曲がっちまったんだ。

 元はと言えばその娘が一番悪いんだよ。
 親の心子知らずって ねえ



りん子、うつむいている。


りん子「……




寅「あれ? りん子さんなの? あんたの事だね…




                   





りん子「はい…


                   



寅「は… どうもすみませんだしたぁ…

ったく、超バカだねえ〜、おりゃ知らねえよ ┐( - -)┌



りん子「ハ…いいえ…グスン




電話 チリリリリーン!


順吉「はい?ああ、玉井さんか 
  ああ、すぐ行く
  あー、ちょっと取り込みがあってな、
  あ〜30分くらいで着くから
  はい はいはい アイ



寅「なんだい、出かけちゃうのか?

順吉「往診の約束があるんだ 寅さん、
  今夜用事はあるか?


寅「ん?ないよ

順吉「じゃあ もう一晩泊まってくれ
 うまい肉買ってくるからジンギスカンでもやろう


寅「うん




                  





帽子が落ちる


りつ子「あ、あら




犬キャンキャン…キュン…





外で車に乗り込む順吉

順吉「は…あ〜!寅さんが
  いてくれてよかった!は




しかし、よくまあ、たった一日でここまで寅を信用するね。
それだけ、このころの寅にはある種のオーラが
出ていたってことかな。
初期の頃の寅じゃ考えられないね。




ドルルル エンジンがちゃんとかかる。



順吉「よ〜し、一発でかかったぞ〜



ドパパパパパ…





家の居間


りん子のテーマが流れる。





寅「なんだい出かけちゃったのか
 せっかく娘さん帰ってきたって言うのに


仕事だってばヽ(´〜`;)




りん子「あのう…

寅「は?

りん子「失礼ですけど…


寅「何でしょうか?


りん子「あなたは?





                   





寅「あ、あ、こりゃどうも ご挨拶が遅れまして

 私 寅と申します





                   





りん子「寅さん


寅「はい


りん子「どちらの


寅「はい、エ、柴又のそうくるかあ〜(^^;)


りん子「は?


寅「あ、柴又ご存じありませんか。

 えーっと 葛飾柴又、 

 葛飾もご存じありませんか。

 え…、 

 東京は知ってるでしょう?






                   





りん子「フ、知ってます



寅「はあ、そりゃよかった。え、
 東京は葛飾柴又の、わたくし寅です





りん子「りん子です。

  父がお世話になっております




                   




寅「



                   





りん子「あ、どうぞ



寅「はい




りん子「今お茶でも

りん子「ちらかして」お茶の道具をさがす。

りん子「」とヤカンを見つける。


台所にいるりん子をまぶしく見る寅。


ハイ、これで完全に惚れました(^^;)




                   









ウトロ港



ママと船長、それに文男が魚のケースを前にはしゃいでいる。

ママ「船長さん」と魚が船長に似ているとちゃかす。

船長、応えてわらかす

船長「このやろ!このやろ!って

文男「アハハ!

ママ「本当に似てるね

文男「アハハ



船長、りん子さんを遠くに見つける。


船長「なんだ?りん子ちゃん・・でないかい!?


船長の船に書いてある番号HK-218994

海洋ホテル

手前の車 TOYOTA 『・1 98』




ママ「あら



りん子「おばさん、しばらく



ママ「帰ってきたの?






                   





りん子「ごめんなさい。おばさんには一番心配掛けて



                   


りん子「あ、船長さん、こんにちは

船長「いやあ、久しく見ねえうちに一段ときれいになって


婿養子「すっかりもう女だなんちゅう表現(ーー;)


船長「んだ!ちょこっと疲れたところが
  また色っぽくて、のオ〜 フフフ


りん子「いや


みんな、デレデレ三日月目で
ニヤニヤジロジロ(^^;)





                 





ママ「いやらしい男たちだねえ 
  そんな助平ったらしい目でジロジロ見て



ほんとにねえ、そのマンマだねえ(^^;)


ママ「さ、ウチでコーヒーでも飲むか

船長「おう マコト お前魚もってこい

ママ「お父さんにあった?

ママ「どうだった?喧嘩しなかった


りん子「なりそうにだったけど
  寅さんって人がいてくれたからね





               




船長「あ〜!!あれがいたか!そりゃいかった〜

婿養子「んだんだ

文男の着てるジャージのししゅう 『三浦』

文男「寅さんがいたら安心だ

りん子「知ってるの?

文男「知ってるも何も、ハハハ



立看板 『関係車以外の…ウトロ…』

自販機 POKKA

『漁協婦人部食堂』の前を通る。


ウニ丼といくら丼が絶品らしい。

『食事所』 ラーメンの暖簾。



婿養子「なーんせりん子ちゃんが親父と
  会うなんてもんは何年ぶりのぐらいのもんだな




船長「結構毛だらけ猫灰だらけ

りん子「アハハ


マコト、魚を落とす。


マコト、緊張とあせりで魚の箱こぼしてしまう。






夜 順吉の家





ジンギスカンを食べながら、酒を飲み、歌を歌っている寅。




寅「♪じいさん酒飲んで
 酔っ払って死んじゃった。
 
 ばあさんそれ見て
 びっくらして死んじゃった…



ほんま、どうしょうもない歌です ┐(-。ー;)┌



                   



「男はつらいよ」の大ファンで、ただ今、スイスに単身赴任中のKさんからの
情報提供によりますと、黒澤監督の「酔いどれ天使」の中で、医者の志村喬さんが
酒を飲みながら、診療所の「ばあさん」を目の前にして
♪じいさん酒飲んで酔っ払って転んだ。ばあさんそれ見てびっくらして転んだ
と同じような調子で同じように箸で手遊びしながら歌うシーンがあるそうです。
ばあさん曰く、「あたしゃびっくりなんかしませんよ」(^^;)

知床慕情は三船さん出演ということで、山田さん、渥美さんが意識して
「演出」したのではないかとKさんは、
おっしゃっておられました。
まったく同感です。

Kさん、貴重な情報ありがとうございました。
実は、僕は『酔いどれ天使』は志村さんの芝居が好きで2度ほど
学生時代に銀座の並木座にわざわざ見に行ってるのに、
そのシーン忘れちゃってました。バカだねえ…(^^;)ゞ






順吉「寅さんよ


寅「
うん?何だ?


順吉「
君少し変わってるな




                   






寅「んん、オリゃ変わってないよ

寅「そっちが変わってるから
 そう見えるんじゃないかな?



順吉「ええ? 俺変わってるか?


寅「ああ、変わってるよ


順吉「そうかなあ


お互い自分が全く見えていない二人でした ┐(^^;)┌



りん子「クフ…




電話番号

役場     3-3131
三井地区農村??センター 3-1417 
海洋センター 3-6411
営林農    3-4161
漁村センター 3-2911
斜里農協   3-6281
共済組合   3-6868
斜里運送   3-2668
郵便局    3-2090
電話局    4-1055
白井薬局   3-1233
はまなす   3-2247
海洋ホテル  4-2344




寅「でもな 悲観することは無いよ
 オレの仲間なんかにはもっと変わったのいるから



りん子「どんな風に?真面目に聞いちゃダメだってヾ(-_-;)


寅「え?そりゃなあ、あれだなあ、あの、頭・・
 
ちょんまげ結ってるやつがいる


いるわけないって ゞ( ̄∇ ̄;)





                   






りん子「あらああらあって(^^;)



寅「うん もっと変わったのいるよ、
 歯磨きが大好きで、
 これ、歯磨き。
 一日にチューブ一本ぺロッと食っちゃう





                   




りん子「うそオうそだって ヾ(- -;)



寅「本当だよ あ、それからね、
 いつでも好きな時に屁がこけるやつがいるんだ





                   



りん子「いやだァ相変わらずいい合いの手(^^)


寅「どこでも屁がだせんだよで、みんなで面白がってさ 
 風呂屋へそいつ連れてって、


りん子「はあ

寅「湯船ん中へつけてさ 屁こいてみろっつて

りん子「は!笑っている。

寅「そしたらポコポコポコポコポコポコ
 あっちこっち泡が出てね




                   







りん子「アハハ



寅「みんな面白がってわいわい笑ってたんだよ。
そのうちふっと気がついたら 顔が真っ青になって 
慌ててみんなで引き上げてみたらね、
腹がぺッチャンコになってんの。
 
つまり酸素って言う酸素が全部出ちゃって 
あれは
酸欠ですね う〜ん

一生言ってろよ(_ _;)



りん子「イヤ ハハハ







                   




寅「アハハ

順吉「フフフ…


りん子「フフフ いやァ ん?


寅、順吉が笑っていることに気がつき、
りん子さんに知らせる。



寅「おじさん笑ってる



                   





順吉「そんな 馬鹿な フフフ



                   




りん子「……



                   



父親が笑っている姿を初めて見て、
心が和むりん子さんだった。




犬 キャンキャン…

外に船長が来ている。

船長「よしよし、よしよしよしよし…、
  分かった分かった分かった
 

船長「お晩です!

りん子「あ、いらっしゃい船長さん

船長「寅さん、夕べはどうも

寅「アハハハハ

ママ「は〜あー。ア、ご飯食べちゃった?

りん子「え?

ママ「お料理作ってきたんだけど…

と大きな器にたくさん持って来ている。

りん子「わあ〜




船長、オヒョウを持ち上げて

船長「ほれ!オヒョウカレイの仲間

りん子「うわ

寅「お〜



船長が持ってきたオヒョウはまあまあ大きい。
70センチくらいはあったかも。
オヒョウはカレイのなかでも大型。
大きいものは120センチにもなるらしい。
冷たい水を好む北極海の生息種。





りん子「すごーい

船長「今刺身にしてやっから

りん子「はい

寅「おお

船長「ほれ!ほれ!」と順吉に見せる。




                   




船長「うわ〜生きてるみてえだ


りん子「おばさんどうぞ

ママ「あ、ありがと



ママ、寅に

ママ「りん子ちゃんがお世話になったって

寅「いやあ〜とんでもねえとんでもねえ 
 オレはただここでバカ言ってるだけだよ





台所で


船長「いやいやいやいや、
  台所すっかりきれいになっちまったなあ


りん子「あらあ、その包丁で大丈夫かしら?

船長「いやあ?
 あ、大丈夫大丈夫、腕いいから
んだ(^^;)

船長「うわ。錆はえてる

りん子「すみません」 

船長「いやいや




居間


ママ「先生うれしいでしょう 久しぶりに娘に会えて




                   




順吉「家出娘の面見て何がうれしいんだ?

ママ、寅と顔を見合わせながらニカニカ・・


船長「りん子ちゃん

りん子「ん?

船長「大々的にあんたの歓迎会
 やるべやって言ってるんだけど 
 いつまでいるんだ?



りん子、ビールを冷蔵庫から出しながら、

りん子「…、そうねえ…


ママ「ゆっくりしなさい、久しぶりなんだから


船長「旦那さん連れてくれば良かったのに
  なあ、かあさん?



ママ「んー


順吉、立ち上がって離れてしまう。
庭への戸を開けて一人で飲んでいる。



寅「ひねくれた性格だねえ

ママ「困った男

船長「はやく子供作れや 
 孫の顔見たらどんなガンコ親父でもイチコロだあ〜!


りん子「…。座って

ママ「最後の手紙もらったの去年の秋だったかなあ

りん子「あ…

ママ「悩みがあるような事が書いてあったでしょう?
  心配してたのよ


りん子「すいません

ママ「うまく行ってるの?


りん子、首を横に小さく振る。

ママ「



                   


寅「



台所で、船長、オヒョウを下ろしながら鼻歌。


船長「♪晴ァーれた空ァ〜
 (包丁カンカンカン!)そォ〜よぐ風ェ〜 
 港ォ出船のお〜ドラの音楽しい〜



第20作「寅次郎頑張れ!」でマドンナのために
平戸で自転車で買い付けに行く寅が歌っているのが
この「憧れのハワイ航路」




順吉「フン!無神経なやつだ



寅「そういう事を言う資格は無いんだよあんたに な? 
 今難しい話してんだから
 ほら、おとなしく酒のんでろ な?







                   




「憧れのハワイ航路」

石本美由紀作詞、江口夜詩作曲 (昭和23年)
歌 岡晴夫


1 晴れた空 そよぐ風
  港 出船の ドラの音(ね)愉(たの)し
  別れテープを 笑顔で切れば
  希望はてない 遥かな潮路
  ああ 憧れの ハワイ航路

2 波の背を バラ色に
  染めて真赤な 夕陽が沈む
  一人デッキで ウクレレ弾けば
  歌もなつかし あのアロハオエ
  ああ 憧れの ハワイ航路

3 常夏の 黄金月(こがねづき)
  夜のキャビンの 小窓を照らす
  夢も通うよ あのホノルルの
  椰子の並木路 ホワイトホテル
  ああ 憧れの ハワイ航路

  




順吉「ンー…

船長の声「♪別れェテープをォ…



りん子「父さん…


順吉「なんだ?





                   




りん子「あたしね




りん子「結婚に失敗しちゃったの


ママ「!!……



驚いてママ振り返る。



                   






順吉「


                   





寅「




                   





船長の声「♪笑顔で聞けばァ〜




ママ「別れたの?



船長の声「こりゃ!ほりゃ!こんに!



頷くりん子。


ママ「いつ?



りん子「三ヶ月前。

  しばらく一人で暮らしてたの





                   






船長「♪望みはてない〜遥かな潮路船長…ってば、地雷踏むよ ヾ(^^;)



ママ「やっぱりね、会ったときから
 何かあるんじゃないかなって思ってたよ



船長「♪ああああ…あこオがれのォ…ハワイィーやばいよ ヾ(^^;)



順吉「うるさい!!



船長「♪航ゥ…?



順吉「歌なんか歌うな




                   




船長「????


寅「おじさん、八つ当たりはよしな。みっともない




順吉「あんな情けない男と一緒になるからだ!
  お前がバカなんだ。





                   





りん子「


ママ「先生!何てこと言うの?
 黙って聞いてあげなさい、りん子ちゃんの話



順吉「っち、黙ってろと言うのか


ママ「こう言う時は親父は黙っているもんだよ






                   





順吉「なんでオレがしゃべっちゃいかんのだ


りん子「


順吉「娘が親の許しも無く、くだらん男と一緒になって、
 勝手に別れて帰ってきて。
 それで俺に、知らん顔してろって言うのか!




りん子「ごめんさない。謝ればいいんだしょう ウウウ…



ママ「かわいそうに…クソ親父 行こう



と、りん子ちゃんの肩を抱きながら立ち上がる。



                   





りん子「ウアアアア…と泣きながら
一緒に向こうの部屋へ行く。





船長、ようやく気づいて


船長「いやあ…気の毒なことだったなあ


寅「まあ、船長ちょうど酒もねねえし、
 ひっとっ走り行って買ってこいや な!





                   




船長「了解了解 すぐ行く。ついでにワサビも持ってくるから

寅「

船長「ちょうど良かった

と、出て行く。

犬キャンキャン

船長の声「あ〜よしよし





寅「まあ 気持ちは分かるけどよ、
 自殺もしねえでこうやって親元へ
 帰ってきたんだから、
 良かったじゃねえか え?



                   


寅「ん!飲もう飲もう


サントリービール


寅「はい あ〜はい、はい、はいはい



と、順吉にビールを勧める寅。









翌日



母親の墓がある草原の墓地

母親の墓参り

墓前に座り手を合わせるりん子。

居心地が悪そうな順吉。



               








ウトロ港


オロンコ岩やゴジラ岩や三角岩が見える。

ウトロには奇岩が多くローソク岩・亀岩(ガメラ岩)
・帽子岩・ゴジラ岩・オロンコ岩・三角岩・げんこつ岩などなど。
そもそもウトロはウトロチクシが語源で「奇岩の多い所」という意味







船長「亭主が浮気したとか、
 りん子ちゃんに好きな男ができたとか
 そういうことで離婚したんではねえんだ



文男「じゃ、なにが原因だ?


船長「まあ、要するに…、
 どう説明すればいいんだ、寅さん



寅、釣りをしながら


寅「はァ…、愛が冷めたのよ…




             






一同「




船長「そういうことだ。なにしろおめえ、
 いがったのは最初の半年くらい
 で、あとはお互い顔を見るのも
 嫌になって、しまいには家さも帰って
 こなかったってよ、りん子ちゃんの亭主



婿養子「何ですぐに別れて帰ってこなかったんだべか?


マコト「2年も、3年も我慢することねえべよぉ〜、
 腹くそ悪いなあ!
と憤慨。





               






船長「オレも、そう思うんだけれどもなあ、寅さん…


寅の釣り糸から餌がなくなっている。マコトが取り付けてやる。


寅「まあ、こういう豊かな自然の中で
 暮らしている君たちには、ちょっと分かりにくい
 かもしれないけれど、東京のインテリの中では
 ひとかけらの愛情がなくても夫婦の形を
 とってる者もいるんだよ。

 えー…、貧しいねえ…



三角岩が見える。



                  









とまた釣り糸を垂れる。


マコト「はあ…ああと頷くマコト。


寅「ある日そのことにりん子ちゃんも
 ふと気がついたんじゃないかな


マコト「なるほどなあ…

寅「うん

船長「去年の暮れ、亭主と別れて、
  一人でアパート暮らししてて、
 ある日テレビ見てたら知床半島が
 映っててなあ、したら矢も盾も
 たまらなくなって帰ってきたんだと。

 いやいやいや、あの子がそんな
 不幸せな目に会うだなんてな




向こうに大きなオロンコ岩が見える。




                





婿養子ニヤついて


婿養子「マコト、おめえに再び可能性が
  出てきたわけでないの。
  ケッパレ、へへへ



一同「ハハハ


マコト「黙れこの婿養子!


マコト、怒って石を投げる。


婿養子「あ、いて


船長「やめれ、フフ


寅の釣竿に大物が!


寅「おい、ちょっとなんだこれは!?
 なんだなんだなんだこれは!?






                  







マコト「おおお!でけえぞ、タモタモタモ

船長「あ、慌てねえくていいからって

マコト「あー、サメだサメだ


みんなで大慌て


船長「待て、待て、待てって


文男がマコトに乗かっかって、押してしまい
マコトが海に落ちる。


マコト「あ〜〜!




                 







ドブン!


一同「あー!!


必死で泳ぐマコト。


寅「おい!どこ行くんだおまえ!

これは笑いました(^^)


渥美さんのこのセリフはアドリブかもね、
脚本にしては上手すぎる。




一同「ハハハ


マコト寅が釣った魚獲るのに大慌て。

船長「そこ!

寅「どこ!?どこだ!?


てんやわんや





寅の声 


手紙





寅の声「さくら、元気か?
オレは今、知床に来ている。
知床はいいとこだ。
食べ物がうまい、人情は厚い





柴又 とらや台所 



手紙の続き


さくら「そしてなにより大自然が美しい




                





おいちゃん「大自然てツラか、あいつが


おばちゃん「そういうことを言うときはね、
   必ずなんかあるんだよ


おばちゃん、するどい!年季がはいってるねえ(^^)



         



満男、リボンシトロンオレンジを横に置き、焼きそば食べながら



満男「犯罪の影に女あり

今回の満男はまあ本当に生意気です(^^;)



さくら「こら

おばちゃん「なんて書いてあるんだい、その先



さくら「このあいだの日曜は、友達の船で
  はまなすの咲き…みだれる、
  知床岬の航海をした




さくら、遠くを見る目で


さくら「まあー、羨ましい…




おばちゃん、シラー。。。(^^;)




              










快晴の知床岬



森繁久弥さんの歌う


知床旅情が流れる。

原曲はさらば羅臼よ



♪知床のぉ〜岬にはまなすの咲くころ〜、

思い出しぃ〜ておぉ〜くれ、俺たちのことを

飲んでさわい〜で丘にのぼればぁ〜、

遥か国後に白夜は明ぁ〜ける〜。




見事な森繁節!
この歌は森繁さんに限るね。
なんせ彼は当事者だったからね。
こんな強いことはない。







雄大な知床岬が広がっている。



            


船長の船でクルーズしている寅とりん子




            




            






りん子「素敵ねえ


双眼鏡を覗く。








寅、上空のかもめを指差し、


りん子ちゃん、もう笑っている(^^)

NGですね(^^)





          
    おっとっとととと
          







寅「おとっとっとととととと、指で落とす(^^;)



寅「あ、落っこった落っこった、ハハハ!



りん子「あー!フフフ!



                  落っこった落っこった
              





寅「フフフ

上手いなあ、この辺はアドリブかなあ(^^)




白い波を蹴って船は進んでいく。





              









東亜造船株式会社


船長マイクで



船長「寅さん、見ているか、
  あれがカムイワッカの滝だ。見事なもんだべえ






知床旅情3番


♪別れの日は来た
 知床の村(羅臼の村)にも
 君は出てゆく
 峠を越えて
 忘れちゃいやだよ、きまぐれガラスさぁ〜ん
 私を泣かすな、白いかもめを





りん子「ほら!あれがカムイワッカの滝!

寅「カムチャッカ?うんうんよく間違うよなこれって(^^;)

りん子「
ううん、カムイワッカ、ほら


寅、雄大な滝を眺めている。


寅「あ、そうかそうか

りん子「ねえ!




            





マコトがちらっとりん子ちゃんを見ている。

りん子「私も初めて見たの

寅「こんな近くにいてかい?

りん子「フフ、そんものよ




              





カムイワッカの滝(カムイワッカ湯の滝)


アイヌ語で「神の水」

カムイワッカ湯の滝は、知床半島の中央にある
活火山の硫黄山から流れる出る温泉の川で、
海岸までの連続した滝になっている。
知床秘境の旅のメインである。

水温が40〜43℃ある強酸性の地下水が流れて
川になっており湯滝となって海にそのまま注ぐ。
滝つぼで温泉風に浸かれるが、強酸性なので、肌には
ちょっときついかもしれないそうだ。
世界遺産登録後観光客が激増し、立ち入り禁止区域
が増えた模様。世界遺産はいいことばかりではないのだ。








寅頷く

りん子さん、船の揺れでふらつく。


りん子「あっ


寅「おっとと


りん子「あ、」と微笑んで頷く。



             





ちなみに2番の歌詞はこうである。

旅の情
(なさけ)か 酔うほどに さまよい
浜に出てみれば 月は照る波の上(え)
君を今宵こそ(今宵こそ君を) 抱きしめんと
岩かげに寄れば ピリカが笑う







「知床旅情」は、森繁さんが、映画ロケの際の羅臼への想いを歌った歌である。

昭和35年、久松静児監督の映画「
地の涯(はて)に生きるもの」(原作戸川幸夫のオホーツク老人)の
ロケが羅臼で行われた。森繁久弥主演のこの映画に、当時の羅臼の人々は全面的に協力。
彼らの美しい姿に感激した森繁さんがお礼にと、ロケの最終日、泊まっていた旅館で夜を徹して
作り上げたのがさらば羅臼よ」だ。後に「知床旅情」となっていく。




        



配 給/1960年 東宝・森繁プロダクション
 監 督/久松静司
 出 演/森繁久彌・草笛光子・山崎努・船戸順・司葉子
 カラー 125分/TAPE=東宝



春が来て再び猟師たちが知床を訪れるまでの
長い冬の間、たった独り、番屋で漁具を守るため
ネズミ避け用の10匹の猫たちに餌を毎日やりながら、
時には思い出のなかで孤独に過ごす森繁さん演ずる
彦市老人の厳しく静かな生活を追った映画。

流氷に乗って流されて行こうとする猫を
救おうと、足を踏み外し氷の間から海に落ち、
誰にも知られず命を落としてしまう。



ロケの前年4月、羅臼の海に知床連山から吹き下ろす突風で
出漁中の漁船13隻と89人の犠牲者が出た『4・6突風』があった。
ロケでも暴風雨によるその遭難のシーンが再現され、
エキストラとして参加したなかには前年に夫や
親兄弟を亡くした人もいて、涙した人もいたそうだ。



ちなみに、この歌の歌詞の最後に『白いかもめ』とあるが、この場合『白いかもめ』とは、
この歌の中の『私』だ。つまり『私を泣かすな、白いかもめであるところのこの私を』
となると思う。私を泣かすのはもちろん『旅人の気まぐれカラスさん』である。

もしこれが、巷で時々間違われて歌われるような『白いかもめ
』だったら、
私を泣かせたのは『気まぐれカラスさん』ではなく『白いかもめ』になる。
つまりカラスさんとの別れの際、空を飛ぶ白いかもめを見て私が泣いてしまったのである。
こうなると私=白いかもめではなくなる。この解釈も決して悪くは無い、これはこれで美しい。
しかし、森繁さんが作られたのは、「白いかもめ
」である。


ところで―

地の涯(はて)に生きるものといえば、
なんと、まだブレイクする前の渥美さんが登場するのである!

渥美さんは森繁さんを、若い頃から尊敬し、
その芸に憧れてきた。
森繁さんとのからみがもう少しあれば、
物語に奥行きが出てさらにこの作品は名作に
なったであろう。
さすがに森繁さんは、セリフひとつひとつに人を引き込む魅力がある。

森繁さんは渥美さんを無名時代からずいぶん評価して来た。
それを知っているから渥美さんは一層森繁を慕うのだ。

かつて強く「社長シリーズ」に渥美さんを起用する事を提言したとも聞く。
しかし、会社の幹部が渥美さんを嫌がってそれを許さなかったらしい。

そして、それより前、まださほどブレイクしていない頃の渥美さんを森繁さんの
プロダクション映画で起用して渥美さんの良さをかなり引き出している。
東宝と森繁プロダクション製作で、渾身の力をこめた映画
「地の涯(はて)に生きるもの」だ。

実はこの映画は観たことがなかったのだが、
寅さん仲間の相模原に住むT.Sさんがプライベートで録画したDVDを
送ってくださったのだ。


          




北の果て、若き日を漁師として過ごした第2の故郷の国後が
すぐそこに見える「知床半島の羅臼」で


   
     



北洋漁業の番屋の守りをするためにネズミ捕り用の
多くの猫と一緒に毎年越冬する村田彦市老人の話だ。

アイヌ語で、知床は
"地の涯て" "大地の尽きる所" を意味する。

人々の去ったあとの番小屋の中には、
漁網が残されるが、それが飢えた鼠を呼んだ。
その網を鼠から守るために猫が必要とされ、
猫に餌を与えるために守り役が必要なのである。
誰もいない冬、言葉では言えない孤独は、
彦市老人に過ぎ去った人々を回想させていく。


生まれたばかりの子猫は自分のかつてのわが子にだぶっていく…。


         


彼はかつては漁師の才能に恵まれ、独立して舟を持ち、よき奥さんに恵まれ、
よき子供たちに恵まれるが、


          



戦争や海の事故や病気は非常にも彼から次々に妻や子供たちを
奪っていく。

長男の与作は流氷にさらわれて死に、
二男の弥吉は戦争に招へいされ南方で倒戦死した。
妻のおかつも、急性肺炎で寝込み網走搬送への途中で死んだ。
彦市は東京の工場で働いていた三男の謙三を呼びよせて船を与えた。


     


その船で漁に出て行った謙三は、嵐に会って帰ってこなかった。
彦市は謙三の死をその後も信じることができなかった。
国後島の見える番小屋の留守番さんを続けているのも、
謙三の帰りを待つためでもあった。

ある夏、網走から来た美しい娘がこの羅臼を訪れた。
謙三の恋人だった。
謙三が死んだ場所を一度見たかったという。
しかし、彦市老人はあえて自分のことを明かさず、
彼女の心を謙三へのしがらみから開放させてやるのだった。


     



森繁さんは、30歳代から始まり、最後老人になり、
厳しい自然の中で海に落ちて凍えて死んで行くまでを
完璧に演じきっている。

当事森繁さんは47歳。


     


森繁さんの演技を見るためだけにその映画はあると言っても過言ではない。

無駄の無い、しかも大きな演技、なんともいえない眼の輝き。
渥美さんが生涯森繁さんを慕っていたのがよくわかる。

渥美さんの出番はほんの数分だ。


     


酔っ払いで怠け者の漁師仲間のハチ役の渥美さんが、
まんまと森繁さんを口先で騙して、
森繁さんの家族への手土産のタラバガニを
全部ぶん取ってしまう
ずる賢くて、それでいて憎めない役。

人の良さも感じさせるちょっとした遊び人は渥美さんの十八番だった。


     


渥美さんの類稀なあの溢れるような才能がよくわかるように、
森繁さんは渥美さんにじっと見入ったり、上手に控えめに合いの手を
入れられていたのがさすがだなあと唸ってしまった。


         



渥美さんに翻弄される時の森繁さんのあの絶妙の「間」は
もう誰もかなわないだろう。
森繁さんの絶妙なつっこみの中で思いっきり元気にボケる渥美さん。
最高のコンビだった。


     


森繁さんがあの当事から渥美さんの才能を心底認めていたことが
あの二人の演技でよくわかった。そんな映画、そんなシーンだった。

渥美さんが野村監督の「拝啓天皇陛下様」で大ブレイクするのは、
その数年後である。

メリハリがあり、絶妙の「間」あり、誰も真似出来ない滑舌の良さがある。
そして歌もかなり上手い。

同じ共通点を驚くほど持つこの二人は、
共に天才と言い切って間違い無いだろう。






話が長くなった。

本編に戻ろう↓




りん子ちゃん達とのバードウォッチングから





優雅なクラシック音楽が流れる


この曲名は奮闘努力の甲斐もなく
ついに分かりませんでした。
どなたか分かる方おりませんか?
メールください(^^;)





エゾスカシユリの花



             




エゾスカシユリ

(蝦夷透百合、Lilium maculatum subsp. dauricum)

ユリ科ユリ属の植物。

海道斜里郡小清水町の町の花


日本では北海道に多く分布する多年草。
花期は6月中旬〜7月頃。
草丈は20〜90cm程度で花色は主にオレンジ。
花弁は6枚ほどで構成され、濃橙色の斑点が内側にある。
また、花弁の根元部分が細くなっており隙間があり、
このことが和名にあるスカシの由来だそうだ。








知床の山々が見渡せる草原


羅臼岳も見える。

バードウォッチングをしている婿養子と文男。


寅「一昨日は友達のホテルの若社長と漁協のボスが
バードウォチングというわけのわからない遊びに
連れて行ってくれた




         



婿養子「
あ、あそこだ
と指を指す。



文男、ハスの葉っぱで身を隠しながら、双眼鏡で見ている。
婿養子に気づかず後から倒れ掛かる。



スクリーンには2羽の鳥が映る。




ノビタキ(野鶲)夏羽

スズメ目ツグミ科


(学名)Saxicola torquata (英名)Stonechat

あの真っ黒な顔、胸のちょっとした赤みが特徴。
背中と尾が黒い。


       






もうひとつ

ニュウナイスズメ(入内雀)


スズメ目ハタオリドリ科


(学名)Passet rutilans (英名)Russet Sparrow

頬に黒斑がないのでスズメと区別できる。
雌は目のところに白い帯がある。


        




私の気の許せる友人で、「男はつらいよ」の大ファンである
神奈川県のYさんは、実はバードウォッチングが趣味。
仕事のちょっとした合間にほとんど毎日どこかで鳥を見つけては
カメラに収めているくらいだ。
で、今回もこの2羽の鳥は何か?という私の質問に
すぐさま答えてくださった。いやもうさすがである。






婿養子「あー…

ふたりとも倒れてしまう。

婿養子「バカァ!

文男「いてて




草原でりん子さんとママと寅が座って話しをしている。


りん子「流氷がねえ、びっしり海を埋めてしまうのー、
  寒いわよォ寅さん





               




寅体震わせて、


寅「ち、フフ、なんだか話し聞いただけで
 寒くなっちゃったよ、へへ


りん子、ママ「フフ



寅、立ち上がり、三脚に備えてある双眼鏡を覗く。





ママ「ねえと、りん子さんに。



ママ「子供のころなにしてた?長い冬の間


りん子「毎晩ストーブのそばでテレビ見ながら、
  東京行きたいなあって、

  東京行ったらどんなに楽しいだろうなあ…、って
  …そう思い続けてた





              




ママ「そして、東京行ったんだよね



りん子「…フフ、そういうわけ…





寅「ヘヘへと双眼鏡を彼女たちのほうに


寅「あ!鳥がいた2羽


りん子さんとママのこと(^^)


りん子「あ、フフフ



寅「ほらほらほら、ほーほー


と、おいでおいでの手招きをする。



             




りん子「いや、ハハハ

と顔を手で覆い笑う

ママは日傘で顔を覆い笑う。



寅、鳥の羽ばたくまねをする。

寅「こっちいらっしゃいこっちいらっしゃい




             






寅のナレーション


寅の声「かといって、オレは毎日面白おかしく
  暮らしているわけじゃない。

  大自然と共に生きる人々の
  厳しい生活も体験している。






畜産農家の牛舎


カッコーが鳴く中、牛のお産が始まっている。



順吉がリードしながらお産をしている。

農民「せーの」

順吉「イテテ



                






農民「何やってるんだおまえら」

順吉「ちょっと待てよー

寅、顔を出す。

順吉「あ、出てきた出てきた!

寅見ている。

順吉「おい!寅さんも手伝え!



寅、自分のことを棚に置いて

寅「しっかり手伝えよ!とみんなに言う。(^^;)



               




農民「せーのー

順吉「よーし、その調子、よーし



              




バサッっと子牛の産まれ落ちる音。


寅のほっとした顔。


農民たち駆け寄る。




外で寅に背中を揉んでもらっている順吉。



寅「シッ、カッ、へーッ。どうだ、おい、
 少し治ったかおい、えー
 いヤア驚いたなあ、医者ってなあ、
 聴診器と注射器扱ってりゃいいって
 思ったけど、大変な重労働だなあ。

 無理なんじゃねえかその年じゃ





              





女の人「寅さ〜ん、お茶が入りましたから、どうぞ



寅「はい、はいはい

寅歩きながら、順吉に「おい、いこいこ


寅「一生懸命働いたんでね、すっかり喉渇いちゃった、ハハハ!


女性、クスクス笑っている。




寅の手紙


寅の声「厳しい労働の一日が終わって、
   一風呂浴びて海岸に出る。
  オホーツク海に沈む赤い夕日を見ていると、
  なにかしみじみとした気持ちがオレを包むのだ。
  そういうわけで、オレは毎日元気で過ごしているから
  安心しろ。


オホーツクに沈む夕日を見ている寅とりん子さん。
素敵の一言に尽きる。
いやはや恋愛映画の一シーンみたいだね。
あ、これも恋愛映画か(^^;)ゞ


       







とらや 台所



手紙の続きを読むさくら


さくら「なお、知床名産の昆布を
  送ろうと思っ…たが、
  りん子さんが上京すると言うので…
  言付けることにした。



一同シーン




               




さくら「高いものだから大事に食え。
 それではみんなによろしく言ってくれ。

 兄より



『羅臼こんぶ』だねきっと。



おいちゃん「とうとう出たぞ、
  
知らねえぞおりゃ



懐かしい…森川おいちゃんの十八番だったね。


別に何か嫌なことが起こるわけではないんだけれど、
最後に起こる寅の失恋だけは見たくないんだよね、みんな。




               




おばちゃん「もうすぐ来るんだよ その美人

おいちゃん「美人って書いてあるんのか

おばちゃん「きまってるじゃない常識だよな(ーー)


満男 ニヤリ…。
また来たよ満男 (((^^;)



満男 トントンとさくらの肩をたたく。



さくら「うん?


満男「予想通りの展開ですね


         






さくら「こら!


と、満男の頭を叩くさくら。


         






満男「あ!イッテ!…


と後ろ向きに一回転ゴロリとなる。



           



満男、もう止まりません(^^)






突然、あけみが工場から走って逃げてくる。



社長「こらァ!このヤロ…

あけみ「いやあ!もおお!

あけみ「なんだ!タコ!

社長「タ、タコ!親に向かってタコとは何だ…


社長追いかける。



      




あけみ「なんだよ、こんなことでえ〜

社長「言ってもわかんないからこんな事に


さくら「やめなさい


おばちゃん「およしよ


さくら「どうしたの〜?何が原因なの?


あけみ「会社辞めたいだの首くくりたいだの
  愚痴ばっかり言うからさあ
  そんなにお金ほしかったらね、
  そこの機械で
ガシガシガシガシ
  
偽札刷ったらいいじゃないか
 
ってそう言ったのよ


凄まじい重犯罪の提案(^^;)
さすがロールキャベツをマッチ棒で刺した話は
ダテじゃない。大物だ。





                 ガシガシガシガシ
             




社長「ばっか!

あけみ「うるせえな


さくら「なんてこと言うの〜

あけみ「いや、だから冗談よ


社長「あけみ!印刷屋の娘が
  そんな冗談をいって良いんですか!
確かに(^^;)




あけみ、暖簾をくぐりながら、

あけみ「まあ、父ちゃんの刷った
 一万円じゃねえ。
 すぐバレちゃうでしょうけどねえ〜、
 
あの技術じゃこれまた確かに(^^;)




             




社長、殴りかかろうとする。



おばちゃん「あ!チョッと!早くお逃げ!


あけみ「さようなら〜


社長「あけみ!待て!このやろ!
  あけみ!待て!あけみ!





参道に走って出るあけみ。

雨がかなり降っている。




あけみ「ウワァ!凄い降ってるゥ〜

と、走っていく。


社長「おい!あけみ!


呆然と立ちつくす社長。


社長「あ〜あ、何にも
  分かっちゃいねえんだよな、本当に



脱力した社長、丸めていたポスターを落としてしまい、
拾い上げて汚れを取る。


              




ストリップ劇場 『草津ルック座』のポスター


無休入れ替えなし
日米対戦
ストリップ合戦

草津ルック

金髪ヌードダンサー一斉出演

大島スーパー横



裸のダンサーの写真



             





暖簾を上げて二人のやり取りを見ているさくら。



満男後から眺めて、



満男「貧乏はヤダねえ〜…


        





さくら、唖然として満男を睨む。



満男「
伯父さんの真似しただけだよあちょ(^^;)


と、スゴスゴ後に退く満男。



           







この第38作の時点でも工場を閉鎖することを
考えなくてはいけないくらい追い込まれているということは、
第32作「口笛を吹く寅次郎」での博の莫大な投資
(それによりオフセット印刷機購入)は、焼け石に水
だったのかもしれない。オフセットを入れたからといって
それで注文が殺到したりするわけはないのは当たり前。

これでは博の投資したお金は返還さえ
危うい状況にあるのかもしれない(TT)

社長が最後に広げていた『草津ルック座』の
オレンジのポスターを見る限りは、かなり技術的に改善の余地が
あるなあ。営業努力よりもまずは、デザインも含めた印刷物の
質の向上が第一に求められる。
質のいい仕事ができないと、営業も難しい。


それにしても、満男は言いますねぇ。
まったくろくな影響を与えない寅伯父さんだ(^^;)
満男はもういよいよ大人に近づいているんだね。

あけみも言いますねえ。
おっと、これは誰の影響?社長さん。






小田急沿線




列車の汽笛 バァー ガタンガタン…



クリーム地に青の小田急電車
通勤型車両
4000型初代が走っていく。




           




りん子さん、座って外を見ている。





りん子さんのアパート



りん子さん、引越しの作業

おそらく、知床に送るのかな。


運送業者A「ヨッ

業者A「もういいかなあ?

業者B「はい

業者A「持って行っていいよ

業者B「はい


ガコ!!と2階に上がってきた大家の頭に当たる。


出ました笹野高志さん!


業者B「すみません すみません


りん子さん新聞を使って物を包んでいる。



大家「上野さ〜ん

りん子「はい

大家「それじゃあ、これ、ここに明細書いてあるけど、
 契約解除する時は一ヶ月前に予告していただくって
 言いましたよねえ?だから来月分までもらいますよ。


りん子「いいですよ

大家「で、電気、水道、ガス代引いた残りが、これ、2万8千円

りん子「はい

大家「そこに名前とハンコお願いします。

大家「まあ、きれいに使ってもらったからね、破損料もおまけしましょう。
  あ、この掃除機どうすんの?



りん子ちゃんは去年の暮れからだから半年しか住んでないのに
よく言うよ。当たり前だろ。どこも破損してないって。


りん子「え?

大家「もし要らなかったら、もらって良いかなあ?
  息子が、自動車掃除するのにこう言う
  小型のがほしいって言ってたから


りん子「どうぞ

大家「いい?これ、もったいないけど そーしょうがないもんね、これ
  捨てるしかないんだから あー こりゃいいや、こりゃいい。
  はー。粗大ゴミしかないんだからこれ


言ってることは正しいけど、セコイ大家だねえ、つくづく(−−;)


りん子さんのエプロン 『ZASHIKI BUTA』 座敷豚(^^;)


小田急線がアパートの近くを通る。







柴又  帝釈天参道


りん子さんがとらやのほうへ歩いてくる。


源ちゃん、美しいりん子さんをジッと見ている。



『木屋老舗 草団子 柴又名物』


りん子「あの、ちょっと伺いますけど・・・
  とらやさんっていうお店は…




源ちゃん、向こうを指す。



           



りん子「あっち…どうもありがとう。


源ちゃん「今おらん。寅今おらん。うんうん(^^;)


さすが源ちゃん達人の域。柴又界隈で
美しい女性は全て寅がらみだもんね(^^;)


りん子「分かってます。…だよな。寅は知床。

と歩いていく。






とらや  店


おばちゃん「ありがとうございました。

りん子「ごんめんください

おばちゃん「はい、いらっしゃいまし〜


りん子「おたく、とらやさんですね?

おばちゃん「はいそうですけど


りん子「私、北海道の知床から参りました
  上野りん子と申しますが・・・




おばちゃん「あ〜ら!あなたが!

すでに噂はとらやではピークに達していたと思われ…(^^;)



              




おばちゃん「ちょっとさくらちゃん

さくら「はい

おばちゃん「もう、おいでになる頃じゃないかってね、
     さっきも話しをしていたところなんですよ



寅の手紙以外にもりん子さんから
アポイントあったんだねたぶん。


おばちゃん、さくらに、

おばちゃん「ほら、この方、りん子さん。

さくら「あらあ〜

りん子「あ、さくらさんですね

さくら「はい まあ、兄が大変お世話になりまして

おばちゃん「本当に良くいらしてくださいました。
    さあさあ、どうぞ、奥へ


さくら「どうぞ

おばちゃん「どうぞ

さくら「どうぞ


おばちゃん「あ、博さん呼んだら?

さくら「はい

おばちゃん「すいません





工場の塀



社長たち工場の塀から覗いている。



おいちゃんたち何か話している。


おいちゃん「あははは

りん子「実はね

おいちゃん「うん

りん子「お知り合いの方から安くゆずってもらったっなんて。

おいちゃん「なあるほど


社長「本当に寅さんの恋人かね、あんな美人が

中村君「博さんがそういってましたよ。


博も寅の手紙だけでよくそこまで断定するなあ(^^;)



             





ゆかりちゃんやって来て、

ゆかり「社長

社長「うん?

ゆかり「電話ですよ税務署から

社長「お!そうそうそう

ゆかりちゃん、中村君を追い立てて


ゆかり「仕事仕事!



しかし、相変わらず社長は税務署に呼ばれているんだね。
普通1年中税務署にこれだけ呼ばれるってありえないよ。


縁側に立って庭を眺めるりん子さんとさくら。


りん子「へえ〜この家で育ったんですかあ…寅さんは

さくら「あんまり変わってないんじゃないかしら?私が子供のころと

りん子「へえ〜

さくら「まわりはすっかり変わっちゃったけどねえ〜

りん子「いいわねえ〜。生れた家が残ってるなんて


りん子さんは、あの知床の父親の家で生まれた訳じゃないんだね…。
小さい頃引っ越したのかな?
ちなみに、寅は産みの親の菊が赤ん坊の頃にこの家に置いていった
ので、厳密に言えば生まれた家は寅もとらやではないのだ。



              




りん子「寅さんがね、

さくら「うん?

りん子「古いだけがとりえの店だっておっしゃるから、
   いつごろ建てたのって聞いたら、


さくら「うん

りん子「たぶん…鎌倉時代じゃないかって



               





さくら「やだあ〜


博「アハハ…


第27作「浪花の恋の寅次郎」では、ふみさんに
「奈良時代」だって嘘八百言ってたね(^^;)



りん子「あたしびっくりして、
  え〜そんなに古いのって言ったら
そんなわけないだろ(^^;)

さくら「うん

りん子「弁慶が団子食ってる写真があるよですって

おいちゃん「ばっかだな

おばちゃん「あ〜、ほら、あれだよ、
    羽黒山の山伏が来ただろ、終戦後


と、襖の上に目をやる。


さくら「ほら、この写真のことよ

りん子「え?

さくら「フフフ



           



りん子「あ!本当に弁慶が写ってる

さくら「ねえ

博「なるほど弁慶か、アハハハハ…

あの羽黒山の山伏以外に貼ってあった写真に
写っていたのは「相撲取り」「水兵さん」「芸人」など。
いろんな人が来るんだね、ここには。




ちなみに山伏の横に額つきで飾ってあったこの下の写真は、
なんと店先で座った寅を囲んでさくらおばちゃんおいちゃんが
『家族写真』を撮った時のものだ。これはなかなか貴重な写真。

ひょっとして第16作「葛飾立志篇」で、寒河江の順子ちゃんに
あげるために撮った写真のひとつかな?


          





さくら「それで、毎日何をしているんですか?兄は

りん子「なにしろ人気ものだから、あっちこっちで引っ張りだこで、
  私の家なんかにはあんまり泊まってくださらないんですよ


りん子さん、それじゃさくらの質問に答えてませんよゞ( ̄∇ ̄;)



おばちゃん「困ったもんだねえ〜


おいちゃん「本来ならあなた、この店の跡をついであの帳場に
    デーンと座ってなきゃいけない男なんですよ





            




おばちゃん「それがよそ様の家にフラフラ居候なんかして

さくら「ねえ〜、みなさんに
  ご迷惑かけてるんでしょうねえ〜


おいちゃん「う〜情けない、あ〜

おいちゃん立ち上がって、
おいちゃん「あ〜」と店に行く。


りん子「でもね、知床っと言う土地は夏には昆布

さくら「うん


りん子「秋は秋アジ、冬はスケソウダラ、
  季節季節にいろいろな人が全国から
  仕事をしに来るから、よその人が1か月や2か月
  滞在していてもちっとも不思議じゃないんですよ



サケは産卵のため生まれた川に遡上するが、
その時期の近海で捕ったサケを
秋アジ(秋鮭とも言う)と呼ぶ。脂が乗っていてまことにうまい。


さくら「へえ〜

りん子「いえ、寅さんてもともとそう言う疑問を
  抱かせない人なんです。
  つい昨日会ったばかりなのに
  ずっと昔から一緒にいる人のような



わかるわかる、うんうん。( ̄ー ̄)




             





羅臼昆布を見ている博。



博「なれなれしいからな、兄さんそれは言える(^^;)



りん子「自由なんですよ、考え方がそう... とも言える(^^;)



            


りん子「みんな言ってますよ、
  寅さんとしゃべっていると、
  あくせく働くのが嫌になるって フフフ


おいおい、そりゃ困った(^^;)



おばちゃん「そういう悪影響
   他人に与えるんですよ、あの男は
と草団子を博に渡す。


そう言えばそうかも…( ̄ー ̄;)




           




りん子「いえ、そうじゃないんです。
 寅さんはあの、人生にはもっと
 楽しい事があるんじゃないかなって
 思わせてくれる人なんですよ


なるほどね(´ー `)


博「へえ 優しい見方ですね


さくらちょっと嬉しそう。




          




おいちゃん「おい、団子二箱

おばちゃん「あいよ



さくら「でもね、それも程度問題じゃないかしら。
  ほら、イソップにそんな話があったじゃない



博「どんな?



          



さくら「暑い夏に汗水たらして働くのがアリで
  それをバカにして歌ばっかり歌っていた
  キリギリスが寒い冬になると凍えて
  死んでしまった話


りん子「あら?じゃあ寅さんがキリギリス?


さくら「そう


さくら「小学校のとき学校の先生にその話聞いてね
  涙が出てしょうがなかったのお兄ちゃんの事
  思い出して




博「キリギリスか…



りん子「……




            




おばちゃん「そういえばあの男、
   キュウリとナスビが大好きだもんねえ


出たおばちゃんのボケ!座布団一枚(^^)


りん子「フフ!と、お茶をこぼしてしまう。


博「アハハ 何考えてんだろう
と、おばちゃんの方を見ながら呆れる。



さくら「大丈夫ですか?

りん子「はい

さくら「今頃くしゃみでもしているんじゃない?

博「ハハ



さくらの言ったアリとキリギリスの物語は、随分昔のストーリー。
最近の若者たちが考えた「アリとキリギリス」の話はこうだ。

食べ物をしっかり貯えたアリは、ずっと今まで働いてばかりいたので
歌も歌えないし楽器も演奏できない。
一方歌を歌いながら楽器を演奏してばかりいたキリギリスは
冬の食べ物を全く貯えていない。
それで、アリたちはキリギリスに唄や楽器を演奏してもらい、
その代わりに食べ物をそのたびに分け与え、アリはアリで心が
潤って満足し、キリギリスも飢え死にしなくてすんだ。ということだ。
この話のほうが今の社会に照らして現実的だし、
聞いて相互扶助の意味があるのでためになる。




江戸川土手


緩やかに風が吹く夕暮れ時

薄紫の雲



土手でりん子さんを見送るさくら。




さくら「
兄によろしく伝えてください




りん子「はい、伝えます





りん子「それじゃ


と、お互い手を振って別れていく。


土手のこの場所、このアングルは
別れのシーンでしばしば使われる。


さくらは「兄によろしく伝えてください」と言い、
りん子さんは「はい、伝えます」と言う。

うーん、いいねえ。とらや以外に寅の居場所が
確定していて、今から寅と仲のいい美しいマドンナが
そこに戻っていくのだ。

そういうことはこのシリーズでも初めてのパターン。
この短い二人のセリフに、この物語での「設定の勝利」が見える。



           



なぜか江戸川土手を歩いて帰って行くりん子さん。
りん子さんは、JR金町に行くのかもしれないが、やはり柴又駅から
行った方が時間的に羽田空港へは早いのでは?(^^)
ま、固いことは言わないでおきましょう。この映画でこの土手を
JR金町の方に帰っていった人はゴマンといるわけだから(^^;)









知床 ウトロ 

順吉の家 夕暮れ時


はまなすのママが湿布薬を背中につけてあげる。



順吉「あ!イテテテテ…

ママ「寅さんはどうしたの?

順吉「キノコ狩りとか言って、大勢で出かけた

順吉「あ〜イテテ

ママ「え、何べんも言うけど、
  もうこの仕事は先生には無理なんだよ、
  りん子ちゃんも戻ってきたことだし、
  都会へ出て、小さな犬猫病院でも開いたら…



順吉「そんなママゴトみたいなこと俺ができるか!


シャツを下ろして

ママ「でもそろそろ老後のことを
  考えなきゃならない年なんだよ。
  どうするの?体がきかなくなったら…



順吉「鉄砲に弾こめて、羅臼岳に登って、
  銃口を口にくわえて、
  足の親指で引き金を引いて、ズドーンだ。
  死骸は熊にでもくれてやるさ



なるほどね…(−−)

             




ママ、順吉の背中を押して

ママ「勝手にしなさい

順吉「イテ、テ

ママ「人がまじめに話しをしてるのに

と、立ち上がる。


順吉、腰が痛そうに、ソファーに寝る。


順吉「イテテテテテ…、ハアー




ママ、タバコを取り出しながら、

ママ「私、引き上げる決心したからね


順吉、はっと驚いたように悦子ママを見る。


ママ、タバコに火をつけて

ママ「オーナーがあの店売っちゃったんだよ


ママ、座って

ママ「お金かけてお店改装したけど売り上げは
 ちっとも上がらないしさ、
 網走で炉端焼きやってるからそっちの方
 手伝ってくれないかって言われれてんだけど


フーっと、煙を吐いて、タバコを消しにいく。


ママ「もう北海道はたくさん



ママ、順吉の間近へ座って、
ちょっと甘えた声に変わって、



ママ「もともと地元の人間じゃないんだし、
  それに冬が寒くって…




           





ママ、順吉の方を向き

ママ「私も年だもんね

順吉、ママと至近距離なので緊張して起き上がる。


ママ、ソファの隣にピタッと座って


ママ「妹が新潟で芸者しているから
  一緒に暮らすの


   先生とはずいぶん長い付き合いだったねえ




           





ママ「手も握ってくれなかったけどね


と、腕を組んで、頬を肩につける。


順吉、極度に緊張して、タジタジになり、
思わず席を離れてしまう。



順吉「いかん。いかん…


ママ「……


そんな意気地の無い順吉を
少し淋しく思ってしまう悦子ママだった。




「いかん」って、なにがいかんのだ?お互い独身で、堅気で、
なにも障害はないじゃないか、そんなに逃げてちゃ
しまいにゃ寅になっちゃうよ。困った人だ。┐(~ー~;)┌




            




6月のカレンダー


電話 リーン…リーン…


ママ「はい、上野です。

ママ「あ!あ、りん子ちゃん?わたし。
  東京から?うん それだけでいいの?うん、はい分かった
  じゃ、気をつけてね、さようなら



順吉「……

ママ「りん子ちゃん、あしたの1時の飛行機で帰るって
  さ、あたしも店へ戻ろう あの連中が来てるだろう





             




と、帰っていくママ。


帽子が落ちる。


順吉「……


ママがたたんでくれた服を見ている順吉。


ママが知床を去ってしまうことを聞いて、どうして言いか分からず
黙ってしまう順吉だった。


ママの店『はまなす』は順吉の店から歩いていける距離なんだね。






ウトロ中心部 

スナック  はまなす


【おみやげ・お食事・お酒 はまなす】

北海道斜里郡斜里町ウトロ東


悦子ママと店員の女の子が
店の前でみやげ物を売っている。




バックパッカーの二人連れなどが歩いている。


バイクが行く。
看板 手彫… …品・海産物 観光みやげ 今井商店

旗 かにラーメン お食事処 おみやげ
バス 9-05 
看板 北大民芸 しれとこカルぺ 
知床観光みやげ 郷土民芸品 クロネコヤマト 宅急便

旗 フジカラー




ママ「客はみんな素通りだ。
  買い物はホテルで済ましちゃうし



従業員「本当ですね

彼女のエプロンの柄 くまがでるぞー!!





           









斜里駅



駅のアナウンス「斜里〜斜里〜車内に
        お忘れ物なさらぬようおおり下さい 斜里到着です。


マコト手を振る。

マコト「りん子ちゃん迎えに来ました!

りん子気づいて「はい」と答える。


りん子「悪かったわねえ 忙しいのに


マコト「今日漁休みだから暇なんだ


車の看板見て

りん子「あら。なにこれ?

マコト「オレたちの組織した会



知床自然 TEL4-2344


りん子「いつできたのこんな会

マコト「5年前までは『りん子ちゃんの純潔を守る会』だったんだけど

凄い名前…(−−;)
いやはや、本人の前でよく言うよまったく┐('〜`;)┌



りん子「!! …りん子さん、口を手で押さえて唖然。(*/∇\*)


マコト「りん子ちゃん結婚したからこの名前に変えたんだ

りん子「もお〜だよな(^^;)



            



歓迎 ようこそ 斜里駅 秘境知床へ

ポスター 『感動良好、ナイスミディ』




車の運転中


マコト「りん子ちゃんが留守の間こまった事が起きてなあ

りん子「なあに?

マコト「ァ、寅さんとりん子ちゃんのお父さん喧嘩して口もきかねえんだ

りん子「あら、どうしたの?

マコト「う〜ん。りん子ちゃんと寅さんが
  仲がいいのが原因じゃねえかなって
  みんな言うんだけど・・・



りん子「…!…バッカねえ、
  そんなこと…あるわけ無いでしょう…


             

マコト「んだ!あるはずねえッ うん。とても嬉しそうなマコト(^^;)




と、言ったものの、真剣な顔でうつむくりん子さん。



りん子「………



              








ウトロ港



ウトロ港から出航する観光船を見ている寅



船から『知床慕情』が流れている。


ボオ〜〜




            




りん子さん、遠くから手を上げて


りん子「寅さん、ただいま〜


寅「おかえり、あ、




マドンナが「ただいま」
寅が「おかえり」

この関係って理想だね。
う〜ん、いつまでも続くといいんだが…



りん子「
行ったわよ、とらやさんに

寅「行ったか

りん子「うん

寅「さくらに会ったか?

りん子「お会いしたわ

寅「うん

りん子「
さんざん御馳走になってお土産まで頂戴して


当然です。そもそもまず最初に寅が知床で
ご厄介になっているわけだから(^^;)




            




りん子「あ!!と、こけそうになる。

寅「あ、おっとっと!そうか、よかったよかった!なあ!うん






一方…

ウトロの町

マコトの車が走る。



北キツネの花子デス ひやかし歓迎


マコトのアナウンス

マコト「観光客の皆さん自然を大事にしましょう

バス 知床秘境ツアー

つくだ花

フジフィルム

自動販売機 オロナミンC ポカリスエット POCARISWET COCACORA コカコーラ


マコト「こちらは知床の自然を守る会です。
  ちょっとおねえさん、はなかんだティッシュなんか
  捨てちゃイヤ!おねがい

   別に彼女捨ててないぞマコト(^^;)




          



TOYOTA 58-38

マコト「知床の自然は日本人の財産です。
  ほら、そこのバイク!空き缶すてるでねえよ!



ゴジラ岩が映る。ほんとゴジラにそっくり。






再び…、

ウトロ港

寅とりん子さん



第十一幸福丸 第二十三みくに丸

YAMAHAのエンジン


りん子「父さんと喧嘩したって本当?

寅「誰に聞いたい?

りん子「マコト君

寅「ハハハハ

りん子「まったく頑固な父さんの事だから
   なにか気に入らない事でも言ったんじゃないかしら



寅「いや、そうじゃねえんだよ うん

りん子「でも怒ってるんでしょう?


寅「いや、怒っちゃいねえよ。
 ただね、オレあのおじさんの事
 可哀想でしょうがねえんだ


りん子「どうして?

寅「えー?

寅「いや、こっちは冗談のつもりで言ったのにさ、
 向こうは真に受けて急に怒り出しちゃったろう?
 オレ驚いちゃってなあ はは


りん子「何を言ったの?


寅「本当に惚れてるんだったら、
 オレが、一肌縫いでもいいぜと、
 こう言ったのさ





            




りん子「惚れてるって誰に?



寅「他にいますか?はまなすのかあさんだよ



りん子「まさかあ 父さんが恋してるなんてそんな…、
  …悪い冗談よ本当に




寅「え〜?? あれ?りん子ちゃん知らなかったのか、
 オレなんか最初あの二人見た時から
 ピーンと来てたぞぉ





             




りん子「だって父さんもう年よ



寅「男が女に惚れるのに年なんかあるかい

寅が言うと実感だなあ…( ̄ー ̄;)


りん子「でもぉ…


寅「なによりの証拠にねオレがおじさんに
 そのこと言ったら、真っ赤になって怒ってさ、
 しまいには鉄砲持ち出して
 オレ撃ち殺されそうになったよ




りん子「じゃあ、本気かしら



寅「本気も本気、今おじさんの胸のうちはね、
 恋の炎でもって、もうジリジリジリジリ
 焼肉みたいになっちゃってる





             



りん子「まあ


りん子「…もしそうだとしたら、どうすればいいのかしら



寅「仕方が無いなあ、こりゃ。
 いずれふられて失恋てことになるんだ。
 可哀想な男だよ。
 なんとか未然に防げなかったかね、こういうことは


勝手な結末考えてよく言うよまったく┐(~ー~;)┌



りん子「もし、おばさんにその気持ちがあっても?



寅「5年も10年も面つき合わせていてだ。
 愛の言葉ひとついえないような男に
 あのおばさんが惚れるかい?


 よく言うよ寅(−−;)



りん子「そうねえ…そうねえ…って、りん子ちゃんまでゞ( ̄∇ ̄;)



寅「せめて自殺でもしねえように、
 りん子ちゃんが見張ってるこったな






りん子「…恋って…そんなに激しいものかしら?




            




寅「そうだよ





りん子「寅さんも経験があるの?




            






寅「これでも、フッ、男の端くれだからな
 



             



カッコつけたはいいが、足が滑ってこけそうになる。


寅「…お…ヘヘヘ…ケヘヘヘ




              
 



寅、りん子さんに微笑みながら、
お腹をペッコンペッコンとさせておどける。

            ↓

          



このギャグは渥美さんのユーモアとなんともいえない可愛さが出て大好き。


りん子「クフフフ…





船長が自転車でやって来る。


船長「りん子ちゃん!帰ってきたか〜!ちょうど良かった

りん子「え?

船長「いまみんなで相談したんだけどよ、
  あした灯台の原っぱでバーベキューやるべや


寅「バーベキューってのはどんなことして遊ぶんだ?

船長「え?肉焼いて食うんだ

寅「それじゃ焼肉じゃねえか

社長「アハハ、英語でしゃべれば
  そうなるわな、ならまた後で










順吉の家


犬に餌をやっている順吉


ワンワン

りん子「父さん、ごはんよ


遠くで船の音

犬の餌鍋と箸を無造作にテーブルに置く順吉。

りん子、すぐに取り除き、テーブルも拭く。

順吉座って、メガネをかけ、新聞を広げる。

りん子「明日、昼、船長さんたちのグループがね、
   私の歓迎の意味も含めて、バーべキュウやるんだって



りん子ちゃん、冷蔵庫開け、ビールを持ってくる。


りん子「父さんもぜひ参加してくださいって言ってないぞ船長は(^^;)


順吉「バーべキュウ?そんなもの行くかい



            



りん子、やっぱりっていう顔して

りん子「私疲れたから先に寝る

と、向こうの部屋に行く。

りん子「おつゆお鍋に入ってるから


新聞を置き、メガネをはずして
ビールを開けようとする。






翌日

フレペの滝 ウトロ灯台の見える原っぱ

知床自然センターのそば


軽快なアコーデオンの演奏が流れる。


黄色いエゾカンゾウの花が咲き誇っている。

灯台の原っぱの絶壁から写真を撮っている婿養子。



            



エゾカンゾウ 蝦夷甘草(エゾカンゾウ)

ユリ科の植物
Hemerocallis middendorffii
ヘメロカリス属

北海道に多い。
6月下旬〜7月中旬 に開花

和茎の先端に黄色のラッパ状の花をつける。

知床の緑の高原に黄橙色の花が映える。ニッコウキスゲの仲間。





            



この方、どうやら写真が好きなんだね。

はまなすの店員さんがやって来て

店員さん「専務さーん、専務さーん、焼肉のタレどこにあるの?


婿養子「今、行くから

店員さん「はーい

婿養子、またカメラのフレームを覗き、写真を撮る。

店員さん、みんなのもとに戻りながら

店員さん「今来るってー

文男「来る?

店員さん「うん」




寅、遠くの車を見て


寅「あ、来た来た、おい、りん子さん来たぞ


順吉の車が止まる。

運転していたりん子さん降りて手を振る。


寅たちも手を振る。

船長「よう遅かったでねえかぁー
と、もうすでにビールを飲んでいる(^^;)




             




りん子「すいませーん」と帽子を振り、


助手席の順吉を叩いて、外に出させる。

船長、文男、マコト、唖然…。

マコト「なぁーんだよ、親父は来なくていいのになあ

ふて腐れた顔。

船長「あれ来たら楽しくねからなあ…

文男「りん子ちゃんが誘ったんだべ




             




マコト「面白くねえなあ〜


はまなすのママ、順吉のほうを見る。


婿養子、カメラの三脚を仕舞いながら、

婿養子「
みっちゃん

みっちゃん「はい

婿養子「そのケースの中にタレ入ってるから出して


みんなで肉や野菜、ともろこしなどを焼いている。

りん子ちゃんは、お弁当を作ってきたようだ。

寅の前でふたを開けている。




婿養子「船長、そろそろ始めよう

船長「ああ

飲もうとして

マコト「ダメダメダメ、挨拶挨拶

船長「なにそれ



女の子が順吉にビールを持って行ってあげる。

みんな拍手。



           




船長立って「えー…、本日はお忙しいところ…、別に忙しくねえか…

一同「フフフ




          





船長「知床の自然を守る会もぉー、3周年をここに迎えました。


近くにもエゾカンゾウが咲いている。


船長「しかし、その間、俺たちの北海道には、不景気の風が
 吹きまくってる。魚は獲れねえ、牛飼いは離農する。
 炭鉱は廃坑になる。この上、この美しい自然が汚されるようでは
 たまったもんでねえ、
 俺たちに残された最後の財産を守るために、
 この会は、発足したというわけだ


ママ「なあに言ってんのよ、あんたが一番自然を破壊してんのよ漁師だからね。

一同「ガハハハ

文男「アザラシ食ったヤツは誰だ?

船長「あれはトドだってば、トドは禁漁でねえんだ

マコト「肉食ったの、共食い

一同「ハハハ

りん子さんと寅も笑っている。

船長「
脂っこくて、うまくねえんだ〜


一同「ハハハ

カッコウが鳴いている。

船長「
そんなゆるくない話ばかりの中で、
   俺が嬉しかったことは、
   秋アジが生まれた川に戻ってくるように、
   りん子ちゃんが、帰ってきてくれたということであり、

   尾白鷲がシベリアから飛んできて
   この知床半島に羽を休めるように
   寅さんという色男が仲間に入ってくれたことだ



巧いね〜船長さん!りん子さんが秋アジってのは分かるが、
寅が
尾白鷲ってのはカッコ良すぎないかい?
まあ、よくてアマツバメでしょう。




一同パチパチ

マコト「そんだそんだ

婿養子「意義ナシ!


意義ナシと言えば、
第11作「忘れな草」の工場の水原君騒動を思い出したよ(^^)



みんなで拍手。

りん子さんも拍手。


寅、軽くお辞儀。




             




船長「寅さん、いつまでもこの町にいてください


船長「それから、りん子ちゃん


りん子「はい



            




船長「…、もうどこさも行くな…。

  俺たちとずっと一緒に暮らすべえ…。
  この町は住んでみれば
  決して悪い町なんかじゃないと思うよ






りん子さん、深く共感して、下を向く。




             




りん子ちゃんに想いを寄せているマコト、感極まって


マコト「実に…、感動的なご挨拶でしたぁ!



一同大きな拍手。




             




寅、タイミングよく


寅「よーし!それじゃあみんなで乾杯といこう!


それぞれ、ビールを開けて


「はい」「はい」


寅「それじゃあ、カンパーイ!!



一同「カンパーイ




             




船長、口からこぼして笑っている。

りん子「フフフ

婿養子「えー、本日の飲み物は
   スナックはまなすさんの提供です



とママの方に手を差し出す。

一同拍手

おー」と拍手。


みんなも拍手。


マコト「さあ、食うべ、食うべ!

婿養子「これタレつけて食えよー

文男「俺、これ塩


文男、りん子さんに料理を渡す。

りん子、順吉のほうを振り向く。


マコトたち向こうで

「あー墨になってるデねえかこれ、お前食えこれオレは食べないから」
何て言ってワイワイガヤガヤ笑っている。



寅、りん子さんに

寅「おじさんの面倒見てやれや、ちょっと

りん子「世話の焼ける男ね…

寅「ん…


りん子さん、順吉に持っていってあげる。

大きな岩に座っている順吉


りん子「
はい、父さん




           




りん子ちゃん、順吉に、向こうに行くことを勧めている。

店員さん「油がないな油どこ?」

女の子「こっちー」

店員さん「はーい」


婿養子「母さん静かだなあ今日…


ママなにか話があるというようなことを言う。


船長「俺とのことか…、ハハハ!!

一同「ハハハ!

寅、何を笑っているのか興味を持つ

マコト「このー、オレのことかあ、ハハハ


寅「なんだ?どうした?




             




婿養子「母さんがね、みんなに話したいって言うんだ


マコト「そしたら船長が俺とのことかぁ!ハハハ!!

一同「ハハハ!

船長テレにテレまくる(^^;)


寅「どんな話何だい?母さん


ママ「あんまり楽しい話じゃないんだよ



マコト「なんだよ、金のことかあ。何ぼ溜まってんだアレ?

ママ、立ち上がって




                 





ママ「どーせ、いずれわかってしまうことだから、
  思い切って言うけど、
  …、この夏いっぱいで、
  私あのお店辞めることにしたの





りん子のテーマが流れる マンドリン


りん子「ほんとう…?」と、呆然としている。




             






後の岩で順吉がママを見ている。




             




肉をかじる順吉。



ママ「ごめんね、こんな話して、
 せっかく楽しい時なのに…



文男「辞めてどうすんだ?


ママ「新潟帰る。
  あんた方と別れるのが一番辛いんだよ



焼き肉をひっくり返しながら、


ママ「私に子供でもいれば、がんばろうって気持ちに
  なるのかもしれないけど



寅、順吉のほうに何かを言おうとするが、躊躇。


マコト「しかし、みずくせえな母さんも
決心する前に何で相談しねえの?


と不機嫌そうにビールを飲む。



ママ「すみません…」と小さく頭を下げる。


婿養子「突然言うんだもんな




ママ「こないだ、先生にはちょっと話したんだけどね




一同、順吉のほうを見る。




             




順吉、ブスっとしたまま、遠くを見ている。

寅「ん…、そんなことがあったのかい

船長「で、なんて言ったあの先生

ママ「仕方ないって言ってくれた


順吉、遠くから


順吉「俺は言わんぞ、そんなことは!


ママ「だって、黙ってたでしょ


順吉「反対だから黙っていたんだ


ママ「どうして反対なの?んだ(−−)


順吉「理屈なんかあるか




順吉の独りよがりな言葉に、
ママはちょっと怒ってイスを立とうとする。



寅、手を伸ばして合図し、ママを座らせる。




            





寅、りん子さんをちょっと見て、

そして順吉の方を見る。




寅「いいかい、おじさん。
 反対なのはみんな同じなんだよ。
 ただ、ママさんは店辞めて、田舎へ帰らなくては
 ならないっていう理由があるんだよ。

 あんたが子供みたいに
 駄々こねたってしょうがねんだよ





マコト「ほんだ、ほんど


順吉「おまえは黙って肉焼いてろ!!


マコト「はい…とスゴスゴ肉焼く(^^;)



順吉「とにかく行っちゃいかん。俺が許さん



ママ「なーんて偉そうな口、利くのぉ。
  私がどうしようと私の勝手でしょ



船長「そんだよ


マコト「ほんだほんだ


ママ「私は先生の女中じゃないんだよ


りん子「そうよぉ、おばさんの言う通りよ…



みんなで、ママをかばう。




            




順吉「うるさい!

と横を向く。


ママ「まあ…、呆れた…


寅、ムキになっている順吉を見て、




            






寅「…、ヒヒヒと笑う。




            




空笑いして、立ち上がる。


すべてお見通しの寅、順吉のほうへゆっくり歩いて


寅「
なあ、おじさんよぉ、

 あんたがそこまで反対してるってのは
 それなりの訳があるんだろ?

 だったらその訳をちゃんと言ってみな





            




順吉、寅になにか言おうとするが、

フト我に帰り、気を変えて、




順吉「言えるかそんなこととアゴの汗を拭う。




           





寅「…ほおー…と言って、みんなのほうを向き、



寅「言えませんと




           





順吉、寅を見て、悦子ママを見る。



寅「言わなきゃおしまいだ。
 ママは新潟へ帰っちゃうもんなぁ



順吉、ちょっと焦って、


順吉「だから俺は反対だと言ってるじゃないか

と、コブシで力説する。

この態度だけでも、惚れてると言ってるようなものです。(^^)




           





寅「だからその訳をちゃんと言えって、
 言ってるんだ男らしく!





           



順吉、おろおろする。


寅「みんなもそう思うだろ!



男ども「んだんだ!」と頷く。



船長「頑張れ!


船長は、本当に順吉を応援してるんだね。
彼らの友情が伝わってくる。



この場面からは、
みんなの『悦子ママ』から
一人の女性である『悦子さん』と
呼び方を変えます。




             




悦子さん、下を向いてしまう。



寅「勇気を出して言え。

 今言わなかったらな、おじさん。

 一生死ぬまで言えないぞ






              





順吉、後を向いたまま肩で大きく息をして





              






振り向き、

目に力をこめる。





順吉「よし!


と悦子さんの方を見て






              





順吉「言ってやる!



寅「うん!




順吉、気合が入ってきて



順吉「言ってやるぞ!!




寅「よし!





ドシドシと大またで悦子さんに近づいて行く。






寅「行けえーへへへ!!!





とコブシを突き出し、
満面の笑みで順吉を送り出す。






                 いけえええーへへへ!!!!

              





順吉の歩きに圧倒されて、
男どもバタバタ自らひっくり返って逃げ出す。



マコト「
あああ!」と思いきり転ぶ。


ずんずん悦子さんに近づく順吉。

りん子「父さん!なにすんの?




              






順吉、悦子さんの目の前まで来て、

肩で息をする。





マコト、婿養子、船長ら
順吉の表情を見ながら、一緒に緊張。


マコト、緊張しながらも目がワクワクしている。


悦子さん、順吉を見ている。





              





口を引き締め、悦子さんを見る順吉。




              




船長、順吉に合わせて息をする。



悦子さん、真剣に順吉を見ている。




              








順吉「俺が行っちゃいかんという訳は、

 …俺が、俺が…、

 ハアハア…






              








順吉、言葉に詰まり、…ウイスキーのビンを見て、




              








後を振り向き寅を見、




             








もう一度悦子さんを見つめ。





             






順吉「俺が、惚れてるからだ!

 …悪いか…






              








順吉、悦子さんから
目をそらさないで力を込めて見つめる。






              






りん子のテーマが大きく流れる。






悦子さん、震えながら

順吉を見つめ続けている。




             









順吉を見つめる悦子さんの表情が崩れていき、





             








見る見る涙が浮かび、



大きく震え、





             






悦子「は…








涙があふれ…




手で顔を覆い、泣いてしまう。




             






遂には目を瞑り、


大きく嗚咽しながら下を向いていく。






            





悦子さんのメガネに映る順吉の姿。








寅、呆然と立ち尽くし、








寅「はあ…、

本当に言っちゃったよぉー…







            






感動で心が打ち震え、

まぶしく二人を見て、

目が潤んでいくりん子さん




            






みんな時が止まったように静か。



誰一人動かない。








順吉はずっと悦子さんを見つめている。




            





やがて、順吉、くるっとひるがえり、

また歩いて岩まで戻っていく。







立ちつくす一同。



そして…我に帰り、






            





船長「言っちゃった…ハハ




マコト「ウワアアアアアアア!!!!と叫びまくる。




婿養子とマコト抱き合い気持ち爆発。




             




文男と女の子たち手を取り合って

「キャー、やったー!!」

みんな感動で胸が熱くなり全員狂気乱舞。


船長「聞いたかぁ!言っちゃったぞー!



マコト、動き回って

マコト「ワアアアア



みんなそれぞれ涙を流し、
拍手をしながら抱き合い、手を取り合い喜び合う。



マコト「実に!感動的な光景でありました!







りん子「寅さん…



と、感動のあまり寅の腕を取るりん子さん。




             







寅「ほんとに言っちゃったよ…





            






みんな口々に「言っちゃったよ」「言っちゃったよ!」


船長「あのヤロウ!ハハハ言っちゃったよ



拍手が続いている。




順吉、背中を見せて、
肩で息をし、汗を拭っている。



下を向き泣き続ける悦子さん




            







船長「惚れてる!悪いか!ハハハハ口真似(^^;)


マコトと婿養子転げまわっている。





そして、

突然、船長直立不動で「知床慕情」を歌いだす。



船長「♪しれとこおーのーみさきにー…



            





みんなも後に続く、


♪はまなすーのさくころー



マコト、手でリズムを取りながら歌っている。

渥美さんの付き人の
篠原さんも友人役で出演、
一緒に後で歌っている。


♪思い出しておくれ、オレたちーのこーとーをー


大合唱になる。



りん子さん、寅の手を取って、
小さく手を振って歌っている。





           




父親の愛の告白に
心底感動しているのである。





寅は手を握られているので
ドギマギして歌どころではない。





            


 

手を見て、

りん子さんを見て、

前を向く。





            





♪飲んでさあーわいーいーでー、

丘に登ればあー、

はるかくーなーしーりにー白夜はーあけるー






みんな、高揚した狂わんばかりの心を
せいいっぱい歌と踊りに託していくのだった。




            






美しい岬の風景と共に


りん子のテーマに曲がゆっくり変わっていく。








            




寅は一世一代の大きな仕事をやり遂げたのだ。
いつもは瓢箪から駒という感じでいろいろなカップルの恋が成就するが、
今回の寅は最初から最後まで意志的に貫いた。
偶然や成り行きでなく、自分で決意し、自分で仕掛け、見事に恋の花を
咲かせる手伝いをしたのだった。これは頼もしい。

しかし、順吉は最後は自分の独力でその未来の扉を押し開けたのだ。

そして、そんな愛の告白を死ぬまで言えない哀しい寅の人生が
その背後に見え隠れして、同時に胸が詰まりそうにもなってしまった。






夜 スナック はまなす


           



手拍子が聞こえてくる。

カメラは外から撮っている。


中で声がし、盛り上がっている。

みんな手拍子

マコトの声が聞こえてくる

マコトの声「子供は何人くらいの予定ですか!?

マコトの声「ハハハ!5人!5人ですと!(^^;)

一同の声「ハハハ!」「キャキャ






順吉の家の居間


寅がやって来る。


寅、庭の戸を開けて、


寅「りん子ちゃん?寅だけど



            




りん子奥で「はーい


風呂場の戸を開ける音がして


りん子さん、パジャマ姿で髪の毛を拭きながら出てくる。

寅、ちょっと恥ずかしがって、顔を引っ込める。



りん子「あー!、そんなとこ!フフ

りん子「ごめんなさい、こんなカッコウで

寅「いやいや



            




りん子「どうしてる?父さんたち?


寅「ん、みんな母さんの店でね、
 飲めや歌えやの大騒ぎですよ、フフフ


りん子「そうだろうね、フフフ

寅「ん、ちょっと座っていいかい

りん子「なあに?入ったら?と戸を全開する。

寅「いやいや、すぐまた戻らななきゃなんねえから、ん

りん子「あー、…そう…


寅「ん、ヘヘヘ


りん子さん、座布団を持ってくる。

りん子「どうぞ

寅「あ、いや、結構、へへへ

寅、座って

りん子さんもそばに座る。


りん子「ん?」と微笑む。


寅「大丈夫かい?




             




りん子「なにが?

寅「あんなことあってさ

りん子「フフ、ちょっと不思議な気持ち…、嬉しいのよでも、フフ


寅「そうかい、そりゃよかった、フフ、へへへ、
 いや、今もね、母さんの店でおじさんと
 大喧嘩しちゃってさ



りん子「あら、また?


寅「んー、こんなことならね、
 もう、早いとこ結婚式挙げたほうがいいって、
 みんなでそう言ったんだよ。、
 そしたらおじさんカンカンになって怒り出してなー、
 『俺みたいに、その、出戻りの娘を抱えた男が、…



りん子さん、下を向いて微笑んでいる。


寅「いや、なんていうかその…始末のついていない娘を
 抱えた男が結婚式なんかするのはおかしいって
 そう言うんだ。うん…





              




りん子「


寅「『だったら、りん子さんの気持ちをオレが聞いてくる』
  つって、ここへやって来たんだけどねえ


りん子「あーら…」と微笑んでいる。


寅「かまわねえだろ、おとっつあん結婚しても



寅は優しいね。こんなお祭り騒ぎのさなかにも
りん子さんの淋しさを考えているんだね。


りん子さん、笑みながら深く頷く。



りん子「ええ




               




寅も、小さく頷く。

りん子「
それはちょっぴり淋しいけど、
   何て言うか…、父さんをおばさんに
   取られちゃったような気がして…フフ




寅「……


寅、さっと気を変えて


寅「フフフフフ


りん子「フフフ


寅、立ち上がり、

寅「
それじゃあ、りん子ちゃんは、
  喜んで賛成してましたと、伝えるよ。な、フフ





               




立ち去ろうとする寅。



りん子「もう行っちゃうの?りん子さんの気持ちが出た言葉。




              




寅「うん、どっちにしてもね、
 今日は夜明かしになっちゃうから。
 あの、早めにこの戸を閉めて寝た方がいいよ




りん子「……


寅、微笑んで


寅「じゃ



と、出て行こうとする。



りん子「寅さん…




               





寅くるっと振り返って




寅「ええ?



静かにりん子のテーマが流れる。



りん子さん立ち上がり。



りん子「あのね



寅「え?



りん子、恥ずかしがって、ちょっと言い出せないでいる。



りん子「あの…どう言えばいいのか…





              





寅「……目をパチクリして緊張する。





              





りん子「……




下を向き、そして寅を見つめて




潤んだ目で寅に言う。




りん子「ありがとう…、いろいろと…






              






寅「…、いえいえ、え




             




ちょっと緊張しながらも照れて



寅「あ、んん、それじゃ




と背中を見せて立ち去っていく。




その後姿を見ているりん子さん。





             




そっと戸を閉める。


このシーンは
第32作「口笛を吹く寅次郎」の、あの夜と同じ設定だね。








朝霧の知床五湖と知床の山々



りん子さん庭の飼い犬に餌をやっている。

りん子「まだあるよー、はい




2人乗りのバイクが前で泊まる。


文男の運転で後に二日酔いのきつい船長がフラフラで乗っている。




             




りん子「おはよう

船長「お、おはよう

文男「おはよ…


りん子「朝まで飲んでたんでしょ、ひどい顔して



船長「寅さんから頼まれたんだ、これ渡してくれって



手紙を渡す船長。




             




渡して垣根にうつ伏せになり、しゃがみ、落ち込んでいる。

りん子「え?


りん子さん手紙を開く。





りん子 様


渡り鳥は南に帰ります。

あなた様の幸せ祈りつつ


       車寅次郎




             



りん子「……




りん子さん、かなり動揺して…




             




りん子「どうしたの寅さん


船長「急に用ができたって、今朝早くマコトの車で…

りん子「えー……、でも…、夕べあったときは私には
  なんにも言ってなかったわよ。
  あれからなんかあったの?



船長「酒に酔った勢いで俺が、
 『
寅さん、もしかしたらりん子ちゃんに
 惚れてるんでねえのか?

 そうやって言ったら、
 寅さん真っ赤になって怒り出してなぁ…




りん子さん、わなわな震えている。



船長、立ち上がりながら



船長「
いやあ、冗談のつもりだったんだぁ。
 なにもあんな真面目に受けなくても、なあ


と文男を見て笑いながらごまかそうとするが、
りん子さんのただならぬ表情に気づき、おののく。




船長「!……




             




りん子「船長さん…、なんてこと!…




             




堪えきれないで、
泣き出しながら家に駆けて行く。



             




シリアスな音楽が流れる。


きつく戸を閉めてしまう。


船長呆然…


文男「りん子ちゃんまで怒らせてしまってぇー

とため息。




             




船長、下を向きながら沈んでおろおろする。




りん子のテーマが哀しく流れる



居間

イスに座って、哀しみにくれるりん子さんだった


寅の手紙を広げてもう一度眺めている。




               







一方


斜里駅に向かうマコトの車の中


マコト、長い大きなあくびをしながら運転している。


寅「おまえは恋をしたことがあるか?


マコト、ちょっと笑いながら


マコト「いつだってしてますよ


寅「本当に愛しているんだったら、
 昨日のおじさんのように愛してますと、
 大きな声で言わなくちゃいけねえぞ





            




マコト「言ったことありますよ、それぐらい



寅、驚いて


寅「ほー、おまえ言ったことあんのか?




           




マコト「10年前ですけど



寅「ほー…、同級生の女の子か




マコト「りん子ちゃんです!

と顔を微妙に引きつらせて緊張している。





寅「…!!…たいしたもんだな、おまえ…。
 で、りん子ちゃん、なんて言ったんだ?



マコト「一字一句、覚えています。
 『
あなたのこと、決してきらいじゃないけど、でも、
 愛しているとは、言えないの。
 いつまでも、友達で、いようね




寅、ちょっと安心して微笑んでしまう。


寅「うん…




             




マコト「あん時のこと思い出すと俺…、ウウウウ

と目をつぶって涙ぐむ。





             




前の対向車、クラクション


プープー!!


マコト「あ、いけね


寅、あせって

寅「わかったわかったちゃんと
 前向いて運転しろ、前向いて



マコト「はい、ううう…




りん子のテーマが静かに流れる。



マコトの気持ちを思い、この青年の純情と気高さに
胸を打たれて行き、しだいに神妙になっていく寅だった。
自分には生涯できそうにないことなのだ。




            









夏 入道雲





帝釈天参道


日傘を指してとらやに向かい歩くさくら。


暑い日、アイスクリーム屋の自転車が通っていく。


かき氷の旗。


商店街のプラスチックの葉っぱ


蝉の鳴き声





            






とらや 店



さくらやって来て、おいちゃんに


さくら「あー、暑いわねえー

おいちゃん「あ、いらっしてるよと奥を指差す。



さくら「あら!りん子さん


りん子、お辞儀

りん子「フフ、どうも


博「よかった、今電話しようと思っていたんだよ




            




さくら「まあ、よく来てくださったわね、いつ東京に?


りん子「昨日



博「東京で仕事が見つかったんだって




            





さくら「あ、そう。じゃあ、いずれお父さんもご一緒に?




りん子「いいえ、それが…結婚するんですと照れる。




            




さくら、驚いて、微笑みながら




さくら「りん子さんが?



そう思うよね、普通は(^^;)





            





博「いや、お父さんがだよ



さくら「…??




          





りん子「フフフ」と下を向き照れる。



りん子「そのことですっかりお世話になりましてね、
  父が会って、改めてお礼を
  言いたいと言ってるんですけど





          





さくら「…?どなたに?(^^;)




          





りん子「寅さんに




        




さくら「…??どうして?(^^;)




満男すかさず割って入って



満男「頭から順番に説明しろよ、父さんがぁー




        




博「あ、そうだな、ハハ


さくらのさりげないミニギャグでした。
こういう演出はなかなか味があって楽しめる。
倍賞さんはこういう味も出せるのだ。



お客さんが来る。


おいちゃん「いらっしゃい



おいちゃん「とにかく奥へ入ってもらえよ、
    こんなとこでごちゃごちゃ話してないで、な


さくら「あ、そうね、さ、どうぞ

おいちゃん「どうぞどうぞ、どうぞ

さくら「まあ、汗びっしょり


おいちゃん、おばちゃんに

おいちゃん「あ、風呂沸かして、汗流してもらえ

さくら「そうね





★今回第38作のとらやのお品書き
全体にこのあたりになると物価が高くなってきている。

 冷蔵庫はサントリービール

 草だんご300円
 焼だんご300円
 磯乙女300円
 茶めし200円
 お赤飯200円
 こがね餅200円
 おでん 400円
 くず餅300

 あんみつ300円
 ところてん300円
 ジュース200円
 ラムネ150円
 ビール300円





ここでちょっと過去の作品の値段と比べてみよう。
例えば…



★第32作 「口笛を吹く寅次郎」では
ところてんは第38作と比べて半額
 大福餅   150円
 豆大福   150円

 お赤飯   200円
 ところてん 150円
 あんみつ  280円

 くず餅    250円
 草だんご  150円
 焼きだんご 150円
 磯乙女    200円

 三色だんご 200円





★第25作 「ハイビスカスの花」では
 冷蔵庫は『サッポロビール』
 お赤飯 200円
 豆大福 150円
 大福餅 150円
 三色だんご200円
 焼きだんご150円
 草だんご150円
 くず餅  250円
 磯乙女  200円
 ジュース200円
 ラムネ150円
 ミルクコーヒー200円




★第18作「純情詩集」では
 草団子    100円    
 焼き団子   100円
 こがねもち  100円
 おでん     200円
 ところてん  150円
 みつまめ   200円
 あんみつ   200円

 サイダー   100円
 ラムネ     100円
 ジュース    100円





★第15作 「相合い傘」では
 茶めし    150円
 おでん    150円
 赤飯     150円
 あんみつ   150円
 磯おとめ   100円
 草だんご   100円
 くず餅     100円
 こがね餅    70円
 焼きだんご  100円





★第10作 「夢枕」では
 茶めしは第38作と比べて半額。
 しかし草団子はなぜか第32作のほうが安い。
 これはおそらく数が違うのだろう。

 コーラ 60円
 サイダー 50円  
 ジュース 50円
 団子一折 300円

 おでん100円
 茶めし100円 
 焼き団子60円
 草団子200円





★第9作「柴又慕情」では
 磯乙女50円
 茶飯100円
 焼き団子50円  
 アイスクリーム50円
 赤飯100円 
 黄金餅50円
 あんみつ100円





★第8作「恋歌」では
 サイダーは第8作の方が第10作より高い。

 コーラ60
 サイダー60
 ジュース50




第7作では焼きだんごは60円
 第7作で焼きだんごは上記のように60円に値上がりしたが、
 第9作で、なぜかまた50円になった。



第2作ではあんみつ70円。(第13作では第15作と同じ150円)




さて、話を物語に戻そう。



おいちゃん、店のお客さんに

おいちゃん「いらっしゃい

暖簾をくぐって台所へ入り

りん子「おじゃまします

博「そうだ、今晩江戸川の花火大会だ


さくら「そうそう、見物していかない?浴衣着て




             







りん子「えー

おばちゃん「それやぁいい

りん子「わあー、楽しそう

さくら「さあ、どうぞ

さくら、居間に上がって、

さくら「おばちゃん、私の浴衣どこ?

おばちゃん「2番目の引き出し


そういえば第35作の若菜さんもさくらの浴衣を着て涼んでいた。




            




さくら「あ、はい

と座敷に落ちていた「ハガキ」を御膳に置く。




テーマ曲(さくらのテーマ)が流れる。




りん子「いいかしら、寅さんいないのに


おばちゃん「そんな、ご遠慮なさらないで


博、お辞儀をして


博「じゃあ、後ほど


と、工場に戻っていく。


りん子「ごめんくださいとお辞儀


おばちゃんの切った西瓜を見て


りん子「まあ、おいしそう


おばちゃん嬉しそう。

おばちゃん何かを言って、りん子さんを笑わせているようだ。




          





寅の暑中見舞いのハガキ



寅「暑中 御見舞い申し上げます。
 
(しょちゅう……、おんみまい申し上げます)

 私 反省の日々を過ごしつつ、
 とらやの御繁栄を心より祈っております。

 長良川のほとりにて。

                   寅次郎拝


この渥美さんの言葉「しょちゅう……、おんみまい申し上げます」
この言い回しがなんともカッコよくて、いつか自分も使ってみたいと
思いながらもう20年近くが経ってしまった。いつか絶対言ってたい。






岐阜  長良川祭り



神明宮 西鵜青年 中鵜臼

岐阜 第一高校

岐阜長良川まつり



ドイツのマーチ「旧友を演奏する
岐阜第一高校ブラスバンド部のみなさんが寅の前を行進していく。


マーチを100曲以上作ったドイツのカール.タイケが作曲
『旧友 Alte Kameraden』と名づけられたこの曲は
彼が25歳の時、1889年の楽曲。

行進曲《旧友》は、タイケの代表作であるだけでなく、
世界的に最も有名なドイツの軍隊行進曲だ。
日本でも野球中継や、パレード、コンクールなどで頻繁に使用される。





             





寅「あい、ごめんなさいよ

…鵜屋 神明宮


    
ポンシュウがこの暑さで
ヘロヘロにくたばっている。




岐阜グランドホテル

寅「へへへ


寅、ポンシュウの足を引っ掛ける。

寅「アハハハ

ポンシュウ「なにすんだよ!

寅「なんだよ、このやろう、だらしのねえ面しやがって
 女の夢でも見てたのか?





               




ポンシュウ「なんだ 寅かぁ、 女どころじゃねえよ、
   こう暑くっちゃ あ〜死んじゃう死んじゃう…



             ◎◎◎
正しく遊んで 楽しい花火 大特価!!

寅「まったく だらしのねえ野郎だなあ。いいか、
 こっちは涼しい北海道でなたっぷり休養してきたんだ、 
 おい!どけどけ!おい!
 さあ、もう〜、ヤケだ!




寅「どう!はい!もってけ泥棒!
 はい!ほい!全部タダ!…と言いたいところだが、



       



 家には病気のかあちゃんと
 腹をすかした子供が待っている。ね!
 少しだけ持って帰りたい!ハイ!
 500円でどうだ!500円!
 どう!はい!



ポンシュウ「もう一声


寅「よ〜し、四つ 四ッ谷赤坂麹町 
 チャラチャラ流れる 御茶ノ水 粋な姉ちゃん立小便
 白く咲いたかゆりの花 四角四面は豆腐屋の娘
 色は白いが水臭い!

 いりますか!ハイ!
 お父さんいい買い物をしました! ハイ!



と2個1000円をサクラのポンシュウに売る。


花火 ボン! ボンボン!




              




奉納 神明宮 西鵜青年


長良川で泳ぐ子どもたち。


寅のハリのある声が空に広がっていく



さあ!どう、ねえ!これだけの品物、
 角は一流デパート赤木屋白木屋…




テーマ曲大いに盛り上がって



               





岐阜城のある金華山からのカメラが、
遠く寅のいる長良川を映していく。





               






今回も寅は得恋的失恋、つまり敵前逃亡で終わってしまったが、
前回アップした第32作「口笛を吹く寅次郎」の後味以上に、
順吉と悦子さんの清々しい恋の成就がそれらの哀しみを全て覆いつくし、
なんとも爽やかな後味に仕上がっている。

このシリーズでも映画を見た後こんなすがすがしい気持ちになれる
映画は滅多にない。特に第25作「ハイビスカスの花」以降の
作品ではこの第38作「知床慕情」の後味の良さは突出していると
言っても過言ではないだろう。

今回、この作品の主人公は寅であり順吉であるのだ。
寅ができない恋の果ての『覚悟』と『決意』を、寅より年上の順吉が
見事に果たしてくれた。

寅は想いを託す。

「行けえええー!!」


人は年齢で青春が決まるのではない。
時として青春はその最晩年にやってくるかもしれないのだ。

生き様によっては、寅にも、りん子さんにもこの先、
青春の日々はまだまだたっぷり用意されているに違いない。

それにしても、りん子さんは幸せだ。あのはまなすのママ、悦子さんが、
これからは運命共同体として、家族として自分を見守っていてくれるのだ。
この幸せもラストの清々しさの要因の一つであることは間違いない。

心から信じれる人が家族になることは人生の究極の至福である。







出演


渥美清 (車寅次郎)

倍賞千恵子 (諏訪さくら)

竹下景子 (上野りん子)

下絛正巳 (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟 (諏訪博)
吉岡秀隆(諏訪満夫)
太宰久雄 (社長)
佐藤蛾次郎 (源ちゃん)
美保純 (あけみ)

笠智衆 (御前様)


すまけい (漁船の船長)
赤塚真人 (船員・マコト)
冷泉公裕 (ホテルの二代目婿養子)
油井昌由樹 (漁協理事・文男)
イッセー尾形 (病院の医者)
マキノ佐代子 (ゆかり)

関敬六 (ポンシュウ)


笠智衆 (御前様)

淡路恵子 (悦子)


三船敏郎 (上野順吉)




スタッフ


監督 : 山田洋次
製作 : 島津清 /深澤宏

脚本 : 山田洋次 / 朝間義隆
企画 : 小林俊一
撮影 : 高羽哲夫
音楽 : 山本直純
美術 : 出川三男
編集 : 石井巌
録音 : 鈴木功 / 松本隆司
スチール : 長谷川宗平
助監督 : 五十嵐敬司
照明 : 青木好文



公開日 1987年(昭和62年)8月15日
上映時間 107分
動員数 207万4000人
配収 14億2000万円




今回2007年3月10日で第38作「知床慕情」は完結です。

次回は
第40作「サラダ記念日」です。
雲白く遊子悲しむ、さすらいの旅人、寅次郎が
早稲田の杜にやって来ます。
第1回目のアップはだいたい3月24日頃です。


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