バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第1作 男はつらいよ

1969年8月封切り








   こんこんと涌き出る豊穣な水源    − 私の心のふるさと車寅次郎−



 『男はつらいよ』は、1969年8月27日に記念すべきあの第1作が産声をあげた。

 フジテレビ系の同名テレビドラマ(26回)で人気をはくしたことがきっかけになたのだ。
 テレビ版では最終回で寅次郎が奄美大島でハブに噛まれて死んだことになってしまい、その直後から視聴者からの
 テレビドラマ続編での復活の要望が相次いだ。そういうこともあって山田監督が今度は映画を作って寅次郎を
 復活させようとしたらしい。当時テレビドラマの続編を映画で作ることを松竹経営側嫌がり、反対をした。

その時のすったもんだを山田監督は『男はつらいよ.寅さん読本』の中でこう書かれている。

テレビの最終回に寅さんを殺してしまうというような、そんなドラマの作り方は間違っていたのかも
しれない。そういう気持ちが、僕に、もう一回映画の中で寅さんを復活しようと思わせた動機でした。

スクリーンで元気な寅さんをみれば、きっと皆さんも納得してくれる。そういう気持ちでこの企画を会社に
持っていったのです。しかし、会社はなかなか納得しませんでした。『テレビでやったものをまた映画でやって
お客さんがくるのか』というのが会社の言い分だったのです。でも僕は『そうじゃない。テレビであんなに大勢の
視聴者が寅さんの死を悔やんでくれたのですから、きっと映画になっても観に来てくれる』散々論争を
繰り返しました。『もしこの映画に失敗したら、僕は責任を取って会社を辞める。』と大見得を切りましたし、
「この映画化に反対するあなた方は、この映画がヒットしたら、責任を取って辞表を出せますか!」という
啖呵まで切りましたから。結局最後には、『そこまで言うならやってみなさい』程度のことで、またそういう
雰囲気の中でこの映画はクランクインしたのです。




但し、役者側の予定の調整が合わずおばちゃん役の杉山とく子さんが出れなくなり、三崎千恵子さんに
変わったり、松竹映画ゆえさくら役が、慣れ親しんだテレビ版のさくらの長山藍子さんではなく倍賞千恵子さんに
なったり、配役が、テレビ版と同じではなかったことはテレビ版に慣れ親しんだ人にとっては戸惑いがあったかも
しれない。

このように反対を押し切ったり、役者が変わったりで作ったこの「映画版男はつらいよ」は、しばらくのお蔵入りのあと
 1969年8月に封切られた。
 そして、この映画版第1作がなんと大いに当たったのである。そして思いもよらないシリーズ化への道を猛烈な
 スピードで進んでいく。
 上記のように、この第1作は、人気を博したテレビ版の下地があることもあって、最初にしてすでに相当の
 傑作であり、ほぼ完成されていた。映画として未熟な場面はほとんど無い。長い歴史の第1歩であり、
 常にこの作品が羅針盤でもあった。

 それゆえ、この第1作の物語、構成、登場人物の関係が、このあとの作品全てに反映され、生かされていく。
 この後の全ての作品はこの記念すべき第1作のバリエーションだといっても過言ではないほど、この第1作は
 非常に完成度が高い。私のベストの中でも間違いなくかなり上位に入る名作だ。



最高のオープニング

テンポのよい曲と同時に松竹富士山が現れ、その直後のオープニングで、なんとモノクロの映像が流れる。
そして寅次郎を演ずる渥美清さんのナレーションが始まるのである。48作品の中でもっとも叙情的で、
もっとも心が温かくなる最高のスタートだ。

このとき流れるBGMがなんとも美しい。そして次々とモノクロで紹介される柴又の日常風景。
寅次郎はこの町で生まれ、そして今、正にこの町へ帰ろうとしている。この映像は日本人のふるさとを
代表するような安らぎを感じるものだった。山田洋次監督ならではの温かみのある、奇をてらうことのない
優しい助走だ。



凝縮された物語  ー 6つのエピソード ー

山田監督は、上にも書いた通り、松竹経営陣の反対を押し切って、この映画制作にこぎつけた。
それゆえ、もうこの作品1本で全て自分の思いを出し切ろうとしたのだと思う。だから、この第1作には
普通の映画3本分くらいの内容が凝縮されてしまっている。


まずは、『寅次郎の柴又への20年ぶりの帰郷とさくらとの再会』である。これはとりもなおさず、すべての人々との
再会であり、全ての風景との再会に他ならない。とにかく猛烈になにもかもが懐かしいのである。そして叙情感
たっぷりの兄妹の再会が序盤のメインだ。倍賞さんがとにもかくにもひたすら美しい…。

そのあと間髪入れずに『さくらの見合い』と話は進んでいく。これは大いに笑わせ、大いに悲しませる、
起伏の激しい、ダイナミックな展開だ。特に見合いが失敗に終わったあとのとらやでの大喧嘩は
48作中もっとも激しいものであり、その時のお互いの啖呵も冴えに冴えている。こんな感動的な喧嘩のシーンは
48作中この第1作を置いて他はない。もうそれはブッチギリだ。それは、とりもなおさず登場人物が実に躍動的で、
輝いているということでもある。さくらも寅次郎もおいちゃんも殴りあい、掴み合う。それぞれの表情がとても素敵で、
スッタッフもキャストも高揚していたことが手にとるように分かる。誰もがみんな目が生きている

そして3番目の物語。寅次郎は反省し旅へ。『旅に出る寅次郎とマドンナとの出会い』である。
ここにこの長いシリーズの特徴であるロードムービーの萌芽が見られる。そして遂に、旅先でマドンナに出会う
のである。このマドンナがこともあろうに御前様のお嬢さんである冬子さんだ。寅次郎のことを「寅ちゃん」と
呼ぶほどの昔からよく知っている幼馴染なのだ。面白おかしく旅をし、テンポよく、ギャグも散りばめられて
華やいだ気分にしてくれる。そして、御前様たちと一緒に、寅も一緒に柴又へ戻ってくる。

帰ってきてすぐに、4番目の物語。この作品の大きなメインである、『さくらと博の恋愛』だ。
寅は当初反対するが、やがて博を手伝うことになり、それがまた裏目になって、すったもんだの挙句、
博は柴又を出て行く。事情を知ったさくらは追いかけに追いかけて柴又駅で博に追いつくのだ。
とらやにもどったさくらは、すでに博との結婚を決めていた。さくらは目を輝かせながら寅に報告する。


「お兄ちゃん、私、博さんと結婚する…。

決めちゃったの。

いいでしょ、お兄ちゃん、いいでしょ…。」



驚きながらも、喜び頷く寅次郎。そしてまた同時に寂しげな表情を隠せない寅次郎でもあった。

このさくらと寅次郎のやりとりは、この長いシリーズの原点であり、もっとも二人が輝いたシーンでもあった。
すべての物語はこの夜のさくらの決意から始まったのだ。あの時のキラキラしたさくらの目の力がこの
シリーズの長編を予言していたかのようだった。しかし、なんという緩急だろう。なんというテンポだろう。
そしてなんとみんな若々しく輝いているのだろう…。

そして、そのまま、物語は5番目へなだれ込む。
『さくらと博の結婚式』である。これも凄まじいテンポで話は進み、ギャグもポンポンと盛り込まれていく。
そしてここでも見事な緩急の妙が使われる。
博の両親の登場である。あの時の志村喬さんの想いを込めたスピーチは、この物語に、品格をあたえ、
博の背後にある複雑な家庭環境を予測させ、そして今、それが雪解けを迎えようとしているのだと
私たちに知らしめてくれるのである。

また、下世話ではあるが、さくらの、角隠しやウエディングドレス姿が見れるのもなんだか嬉しい。
さくらは48作中ほとんど地味な格好しかさせてもらえず、僅かに寅次郎の夢の中で、華やかに登場はするが、
それとて、一瞬のこと。そういう意味では、この第1作の結婚式のさくらは実に綺麗で華やいでいて、地味なさくらの
中では、貴重な映像であるといえよう。

普通はこれで終わりである。もう十分密度は濃い。
しかし、この第1作はこのあと、もうひとつのメインに突入する。すなわち6番目の物語、『寅次郎の恋』である。
これは、冬子とオートレースにでかけ、焼き鳥屋で飲んだ後、題経寺で冬子を送り届けるところで恋の
最高潮を迎える。あの夜の寅次郎のなんとも嬉しそうな顔。夜の柴又参道を「喧嘩辰」を口ずさみながら、踊っていく
寅次郎は至福だった。あの夜の渥美さんの爽やかな、しかし内に秘めた高揚を隠し切れない演技は絶品で、
このシリーズの中でも名シーンとして語り継がれていくだろう。

しかし、その直後の、どん底に突き落とされるような手痛い失恋、と追い討ちをかけるようなとらや一同との
辛い駆け引き。そして上野駅でラーメンをすすりながら号泣する寅。物凄い落差である。

この第1作の寅次郎は、まだまだとても愚かで、目がギラギラしていて、行動が直接的である。物凄く生々しいのだ。
そして、なによりこの第1作の寅次郎は実にいとおしい。私の心のふるさとだといっていいくらいに彼から
溢れ出るもの全てに郷愁を感じる。

この密度が異様に濃い第1作は、実は駄目押しで、7番目の物語も手短に触れているのだ。
それは最後の最後に満男が生まれたことである。第1作ですでに満男が誕生したと言うことは、
もうこの作品だけで第48作まで繋がっていくのだ。

そしてこの第1作が凄いのは、これだけ詰め込んでも、テンポが実にいいということだ。喜劇ならではの
軽快な展開がよどみなく続き、あれよあれよの91分だ。いかに脚本がこなれていたかが窺い知れるできばえだ。
この大成功の裏には、あの大人気をはくしたテレビ版「男はつらいよ」の存在があり、それらの小さな物語の集積が
この映画版第1作をしっかり後押ししたことは忘れてはならないことだと思う。

ともあれ、この「男はつらいよ」という作品は産声を上げたその第1作にしてすでに完成度の高いものだったと
言ってよいだろう。この第1作という豊かな水源に当たったスタッフとキャストたちはこのあと48本もの作品を
作り上げていくのである。それにしても、なんと豊かな水源なんだろうか。この水の埋蔵量は空前絶後である。





 第1作のオープニングの曲はあのおなじみの曲とは違い、
 とても優しい美しい曲だ。
 最初の松竹の富士山マークの時からすでに
 曲が始まり本編へそのまま流れていく。



 まず出てくるのは江戸川の桜、土手、帝釈天参道…。
全てモノクロ映像。「寅次郎の心の風景というべき演出だ。

 
テレビ版を彷彿させる懐かしい映像ともいえる。
スクリーン全体を涼しげな風が吹いている。
人々の表情が実にみんな美しい。


 タイトルが出るまでのシーンの中では48作中私が最も好きな演出である。

 
この記念すべき第1作にふさわしい爽やかな映像だ。

この短い時間の中でキャストとスタッフを
全て紹介してしまう方法を使っている。
これもこの第1作だけの特徴だ。



これ以降、寅次郎のことを便宜上『寅』と呼びます。ご了承ください。







                   






桜が咲いております。



                   







懐かしい葛飾の桜が
今年も咲いております。




                   







思い起こせば20年前
つまらねえことで
おやじと大喧嘩、



                   




頭を血の出るほど

ぶん殴られてそのままプイっと
家(うち)をおん出て、
もう一生帰らねえ覚悟で
おりましたものの、







花の咲く頃になると決まって
思い出すのは、故郷のこと、



ガキの時分ハナタレ仲間を

相手に暴れ回った水元公園や
江戸川の土手や帝釈様の境内の
ことでございました。




                 




                 

風の便りにふた親も秀才の
兄貴も死んじまって、
今、たった一人の妹だけが
生きてることは知っておりましたが、







どうしても帰る気になれず、
今日の今日までこうしてこうして
ごぶさたに打ち過ぎてしまいました。





                       





今、江戸川の土手に立って
生まれ故郷を眺めておりますと、
何やらこの胸の奥がぽっぽと
火照ってくるような気がいたします。
そうです。私の生まれ故郷と
申しますのは葛飾の柴又でございます。







                     
 



全文は以下の通り

 「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております。思い起こせば20年前つまらねえことで
 おやじと大喧嘩、頭を血の出るほどぶん殴られてそのままプイっと家(うち)をおん出て、もう一生帰らねえ覚
 悟でおりましたものの、花の咲く頃になると決まって思い出すのは、故郷のこと、ガキの時分ハナタレ仲間を
 相手に暴れ回った水元公園や江戸川の土手や帝釈様の境内のことでございました。
 風の便りにふた親も秀才の兄貴も死んじまって、今、たった一人の妹だけが生きてることは知っておりました
 が、どうしても帰る気になれず、今日の今日までこうしてこうしてごぶさたに打ち過ぎてしまいました。
 今、江戸川の土手に立って生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がぽっぽと火照ってくるような
 気がいたします。そうです。私の生まれ故郷と申しますのは葛飾の柴又でございます。」







 メインタイトル

「男はつらいよ」背景はなく真っ青な色。単純だがそれゆえインパクトは相当強い。

「男」は赤色、「つらいよ」は黄色

後の作品では洗練されて「男」だけが赤くなる。
 

                     



 「わたくし、生まれも育ちも
葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」





 この仁義の名文句はその後第32作以外繰り返し使われることになる。
 第32作→大道三間 軒下三寸 借り受けましての渡世、
わたくし、野中の一本杉でございます




♪俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ
分かっちゃいるんだ妹よ、
いつかおまえがよろこぶような
偉い兄貴になりたくて、

奮闘努力の甲斐もなく、
今日も涙の、
今日も涙の陽が落ちる
陽が落ちる。





 土手に寅次郎が座り江戸川の対岸を見ている。
なんと
ワイシャツにネクタイ、靴という
極めて珍しい服装である。帽子はいつものものを被っている。



                   




背広もこのオープニングは柄や色がこの後のものと若干違う
まだ寅次郎の服装が定着しきっていない過渡期
であること
 が観てとれる。というか、この時点ではこれ1本で終ろうとしているので
これでもいいわけだ。ちなみに、この背広はテレビ版でよく使われていたもの。
テレビ版から知っている観客たちに違和感を感じさせない心使いを感じる。



 
そのあと「矢切の渡し」を渡るところをみると、
千葉の方
から柴又のほうへ渡っているようである。
大人30人。小人20円



 2003年現在渡るだけなら100円程度
ぐるりと遠くを回ると500円以上するそうだ。





                    




 矢切の地名の由来は、平和に暮らしていた
この辺りの人々が度重なる戦争の苦しみを味わい、
戦いで使われた弓矢を呪い
「矢切り」「矢切れ」「矢喰い」を
悲願
して矢切の地名となった。




                    





そのままとらやへ直行したければ京成電鉄で
「柴又駅」で降りれば早い筈であるが、
あえて江戸川を渡ることによってこの二十年ぶりの
寅次郎の柴又への帰還を感動的なものにしている。
この方法はその後もしばしば採用されることになる。

もちろん旅に出るときは逆に急ぐように「柴又駅」の方へ行くことが
圧倒的に多いのだが。その際「第6作純情篇」に代表されるような
プラットホームでのさくらとの別れの名場面が
数多く生まれることにもなっていくが、それは作品ごとに追々書いていく。


 川を渡りきった寅次郎がゴルフの邪魔をしたりして、
すでにこの作品がコメディであることを直印象付けている。
このパータンはその後もいろいろ手を変え品を変えて
いろいろな江戸川土手でのミニコントが繰り広げられる
のである。靴がアップになる。


(なんと、雪駄でなく白黒の靴!)


このゴルフ靴あたりも、着ている背広同様、これらはテレビ版で使っていた
もの。テレビ版を踏まえて懐かしき寅次郎が復活したのだということを
アピールしているのかもしれない。




                          白黒靴
                   





 ところでバックに流れる歌は作詞家星野哲郎さんと作曲家山本直純さんの名曲「男はつらいよ」であるが、第1作の出だし
 でははまださくらが結婚していないので、「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、分かっちゃいるんだ妹よ、いつかおまえが
 気に入るような偉い兄貴になりたくて…」
となっている。これ以降はすでにさくらは結婚してしまっているので「どーせおいら
 はヤクザな兄貴、分かっちゃいるんだ妹よ…」となっていく。

★例外は第3作で第1作の歌詞を使用



  ちなみに第2作は
  ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
  意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
  目方で男が売れるなら こんな苦労も
  こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪

  これは第2章節としても、第9作から第47作まで採用される
 

   第4作は
   ♪どおせおいらは底抜けバケツ わかあっちゃいるんだ妹よ
   入れたつもりがスポンのポンで 何もせぬよりまだ悪い
   それでも男の夢だけは 何で忘れて
   何で忘れているものか いるものか♪


   第5作から48作までは
  ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
  いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
  奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
  今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる


  17、第18作、第19作だけ2番目の歌にこれが挿入されている。

 ♪あても無いのにあるよな素振り それじゃあ行くぜと風の中
  止めに来るかとあと振り返りゃ 誰も来ないで汽車が来る
  男の人生一人旅 泣くな嘆くな
  泣くな嘆くな影法師 影法師♪

これ以外でも歌詞が他の作品と若干違う第3作、第7作などもある。
(個々の本編完全版でお読みください)







山本直純さんは、このシリーズのほとんどの曲を担当し、
『リリーのテーマ』『歌子のテーマ』『千代のテーマ」をはじめとして
数々の名曲を紡ぎだしていった。
彼の名曲がこの作品群に
何ともいえない品格を与えていることは間違いない。



 歌のあとすぐ帝釈天の庚申の日にちなんだ祭りが映る。

帝釈天経栄山題経寺きょうえいざんだいきょうじ)は、開創は今から三百年程前、
 寛永年間であって、ここには昔から日蓮聖人の親刻になる
帝釈天の板本尊
あると伝えられていたが、一時所在不明となっていた。しかし今から二百年前の本堂修理の際、
板本尊が発見された。安永八年の春、
庚申の日であったという。

この本尊、庚申の日に出現したというので「庚申」を縁日と定めた。当時の代の日敬上人は自ら
この板本尊を背に負い、飢饉、疫病になった江戸の人達に拝ませて、不思議なご利益をさずけたという。
とまあ、そういういわれのあるありがたいお寺さんだ。その上寅さん人気も手伝って四季を通じて参拝者が
絶えない。現在においても「庚申待」の民間信仰と結びついて、宵庚申の参詣が盛んになり茶屋の草だんご等
は今に至っている。 とらやもこのような背景の中で参道に店を出している、ということだ。


山田組と親しく、ロケ時の本拠地にもなっている「高木屋」がしょっぱなから映る。
このあとどの作品でも高木屋は必ずスクリーンに登場する。

(この当時「とらや」と大きく看板の出している店はまだない。
初期の頃の作品で、軒下当たりのロケ場所を貸していた柴又屋が
後に本当に大きく「とらや」という看板を出し始めて問題となるのだが
そのこと『柴又屋騒動』はまた後日第40作の時に…)










この映画は庚申の日の祭りからはじまる。




題経寺 庚申の縁日



          



参道をまといを回す若い衆たち

ちょい、ちょい、ちょいやさっさ、
ちょいやさっさぁ!





ちょい、ちょい、ちょいやさっさ、
ちょいやさっさ





寅、高木屋から鉢巻を巻いて出てきて、

寅「兄さん、ちょっと変わろう」と纏を持つ。

手に唾をつけて、


寅「いいから、貸してみろい!おら!


                      
                       



寅「さあ!じいちゃんもばあちゃんも
 調子合わせて叩いてくれよー!!

 ここは柴又題経寺とくりゃい!



纏を回し始める寅


               





 ちょい、ちょい、ちょいやさっさ、
ちょいやさっさ!とくりゃ!

ちょい、ちょい、ちょいや
さっさ、
ちょいやさっさ!と威勢がいい。



実は行列の最後になんととらやのおばちゃんがいる!
この時点で寅に気づかず。行進している。






寅、題経寺の山門をくぐり、境内へ入っていく。

源吉(源ちゃん)登場!ここではニアミス。



山門のちょうちんに、川千家、川甚、亀家、などの大棚の名前が並んでいる。



 纏の棒を指先でバランスを取ったりしてなかなかのものである。
 

おばちゃんもすぐ近くまで来ているがまだ寅に気づかない。



                        



ちょい、ちょい、ちょいやさっさ、
ちょいやさっさ!とくりゃ!

ちょい、ちょい、ちょいや
さっさ、
ちょいやさっさ!

寅「ちょちょい、ちょいと!!



                   



近所の人a「誰だい?あの飛び入りは?
近所の人b「見たことのないツラだなあ…
このご近所さんaは後にタコ社長の娘、あけみの仲人をする。
時々向かいの江戸家さんのご主人もこなす(^^;)


 この近所の人役で谷よしのさんはやくも登場! 

八百満(近所の八百屋さん)のおかみさんもいっしょに出ていた。


寅のことを土地の者かしら?


八百満のおかみ「誰だろう?
谷よしのさん「土地のものかしら?
記念すべき谷よしさんの初セリフ



                       




アクロバテックな芸で近所の人々を魅了している。




御前様初登場!


御前様「ほー、なかなか見事な…



                        


と言いつつ、どこかでみた顔だと…



寅、御前様に気づいて、「はっ」とする。



                        





源ちゃんを押しのけて、



寅駆け寄り、



寅「御前様!御前様でしょ!おひさしゅうござんす。
あっしですよ!
寅ですよ!車平造の倅寅でござんす!」




寅、御前様の足元まで駆け寄って、


寅「ほれ、あのー、庭先に入り込んじゃ
トンボ取して御前様に怒鳴られた不良の寅でござんす。



                   



御前様「あー、覚えとる覚えとる

      
                       









寅「ほんとですか覚えてますかありがとうございます


後にいろいろな場面で寅と深い縁を持っていく御前様も
この時は「あー、覚えとる…」程度の縁だったんだね。


 
 車つね(おばちゃん)ようやくここで寅次郎だと気づいて、
駆け寄って来る。


おばちゃん 「寅ちゃん!

おばちゃん走ってきて、

おばちゃん「寅ちゃんじゃないかい!



                      

寅「よー!おばちゃん、生きてたかい!、
おじちゃんはどうしたおじちゃんは?


おばちゃん「生きてるよ、ぴんぴんしてるよ!とおばちゃん泣く。


寅「おばちゃあん!!と抱きついて喜び合う二人。




                       




おばちゃんはこのとき「寅ちゃん」と叫んでいる。
おばちゃんはこのあと第8作あたりまで

「寅ちゃん」と呼んだり「寅さん」と呼んだり
呼び方が安定しない。
10作目を過ぎたあたりからは「寅ちゃん」に絞られた。

 
そういえば博でさえ、初期のころには時々「兄さん」と呼ばずに
「寅さん」と呼んでいる
シーンが数箇所あった。
 



 源ちゃんは初登場からすでにいきなりころばされてかわいそう…。
このあたりの源ちゃんはまだ
東京弁を使っていてあの独特の大阪弁
まるだしのキャラはない。テレビ版では弟役をしていたけれど、映画では
全くの他人で、職業も寺に雇われているのか、とらやに雇われているのか
はっきりしない状態が続く。寅と一緒に京都あたりまで長旅をしたりもする。
第5作「望郷篇」あたりからは、かなり
地の大阪弁も出てきて、キャラが
立ってくる。




この第1作では源ちゃんは寅次郎ともそんなに仲は良くない。

第2作では、いきなり京都までバイをする寅に付き合ったりして
急速に仲良くなっていく。


 松竹最後の大部屋女優と言われ、
演技のうまさでは定評のある谷よしのさんも、
この場面で近所のおばさん役で出演。このあと男はつらいよの
ほとんどの作品で旅館の仲居さん役や
花売り、近所のおばさん役
などで出てきてはセリフを少しもらっていた。
第9作ではちょっとした長ゼリフもこなした。



このあたりの場面、本来、20年ぶりの寅の帰郷なので、もっと含みを
持たせて、じっくり盛り上げたいところではあろうが、シリーズ化を
もくろんでいなかったため、沢山の物語を入れざるを得なかった。
それゆえ、話はいきなりとらやへ飛ぶ。




夜の柴又参道





とらや  茶の間


 
このあと夜のとらやで車竜造(おいちゃん)、車つね(おばちゃん)に
バカ丁寧に
仁義を切る寅次郎の姿がある。

近所の人たち店の中で、野次馬をしている。


            



ちなみにテレビ版からそのままおいちゃん役を受け継いだ
森川信さんは第8作まで出演。(打ち上げパーティの直後に急死)

 
森川信さんのあとは、

 松村達雄さん・・・第9作〜第13作 
 ↑キップのいい、ちょっとスケベでパチンコ好きのおいちゃん。

 下條正巳さん(下條アトムのお父さん)・・第14作〜第48作

↑中庸で生真面目なおいちゃん


 森川さんと渥美さんのドタバタや掛け合いが絶妙だった。
 私はご両人とも
天才だと思っている





物語に戻って…



とらやの茶の間


この第1作ではなんと店から直接茶の間に
行けない構造になっている。
いったん台所に回って、横から入るのだ。




おいちゃんおばちゃん頭を畳につけている。


 寅「おいちゃん、おばちゃん、ただいま帰ってまいりました。
 さ、お手を上げなすって。それじゃ、挨拶になりません。さ、さ、
 お上げなすって


おいちゃん、おばちゃん頭を上げる。




 寅「十年一昔の勘定でいきゃあちょうど二昔。
 父母もさぞかしご迷惑をお掛けしたことでございましょう。



 おいちゃん、おばちゃん恐縮している。近所の人たちもぞろぞろ店の中まで
入ってきて見ている。
←いい時代だったんだなあ…(^^)

おいちゃん「いや、め、迷惑だ何て、そんなあ…


              


 

弟(てい)の身持ちまして、いちいち高声(こうせい)に発します
 あいさつ失礼さんです。ここに改めて厚く今までの
 ご無沙汰のお詫びとお礼を申し申し上げる次第でございます。




          



おいちゃん「へ、へいへい、どうも

おいちゃんおばちゃん共々また深々とお辞儀。
 

寅「 なお、たったひとり残りました愚かなる妹が無事に成長
 しましたのも、ただただひとえに、
 お二人の御訓育の賜物と誠に兄としては
 お礼の言葉もございません。
 おいちゃん、ならびに、おばちゃん。

 本当にありがとうございました。


と、寅深々とお辞儀。

おいちゃんおばちゃん、またまたまた深々とお辞儀。(^^;)


           





 と続いていく。見物に来ていた近所の人たちに対しても、

寅、土間で聞いている近所の人々に向かって。

 
寅「これはご近所の御一統様、
 長らくごぶさたいたしました。以後お見知り置かれまして、
 よろしく引き立っておたの申します。
」と続いていく。




               




谷よしのさんたち、深々とお辞儀(^^;)

店員の女の子もお辞儀


 まあ、この頃の寅次郎はとにかく『仁義を切る』のが好き。
 まだしっかり若かったんだねー!!


 このときとらやにはみつ編をした若い女の子が店員として働いている
ほとんどセリフは貰っていない。この作品の後半部分で1セリフ「おかえりなさい」だけがある。

この女店員さんは第2作から役者さんが変わり、
その後もその人は第5作あたりまで毎作出ていた。


 寅「さ、カタッ苦しい挨拶はこのへんでお仕舞いにして、
 さ、楽にして、おばちゃんも楽にしてさ、さ、さあさあさあ!




                   





おばちゃん、泣きながら

おばちゃん「ほんとうに、立派になってお帰りになって…


寅、ニコニコ

おばちゃん「父ちゃんや母ちゃんが見たらどんなにかね…

おいちゃん「まあ、いいやな。さ、何もねえけど一杯いこうじゃねえか


と、ビールの栓を抜く。


寅「あいよ

おいちゃん、「これはどうも失礼。町内の方、どうぞ、上がってください。

おばちゃん「一杯やっていただいて

寅「何にもないですけどね、さあさ、どうぞどうぞ

おばちゃん「どうぞ上がってくださいよ、




寅「ところで、ナニはまだかい?

おばちゃん「
さくらちゃんかい?今日は残業なんだよ

寅「へえ、残業なんかやってんの?近所の、紡績の女工でもやってんのか

 と、みんなで、さくらの勤め先である
オリエンタル電気のキーパンチャー)の話題を始める。


おいちゃん「とんでもねえ、さくらはキーパンチャー、だぜ、おい


寅、分かんなくてキーパン?なるほどねえ…???」
なんとなく頷く。(^^;)


おいちゃん「ほら、オリエンタル電気って会社知ってるだろう?

ほう

おいちゃんあそこの電子計算機係なんだよ

寅は女の人が働いていると言えばすぐ「紡績工場の女工」と思う癖がある。
第11作「忘れな草」でも夜汽車の窓から
見える明かりの話で寅はやっぱり「紡績工場」出していた。


 

寅「
電子やってんの。そりゃたいしたもんだよ!
今の世はなんたって電子
だからねえ
 
ってよく分からないこと言っている。(^^;)



寅「
お!忘れた忘れた、ね!こりゃね土産ってほどのことじゃねえけどね。

と、自分のお得意芸であるバイのことに振り、「電子応用のヘルスバンド」
 おいちゃんやおばちゃんに土産がわりにあげるためにトランクを開ける。


紫の腹巻や黒の靴下がきちんとたたまれて!入っているのがわかる。
寅次郎はこうみえても整理整頓が上手なところもあるのだ。全作を通して寅次郎はずぼらだが清潔好きな感じではあった。
 結構きちんとしているのだ。

それにしてもこのトランクちょっと小さめ!



                   



寅「
おばちゃん、ちょっとこれはめてみてくれねえか、え
「電子応用のヘルスバンド」
ってやつだ。
ね、こりゃ電子の力でもってね、体中の毒素と言う毒素が
全部追い出されて新陳代謝がすーっとよくなちゃうんだ。
さ、おいちゃん手にとってよく見てやって

 おばちゃん「いいのかい?こんな立派なもんを立派って(^^;)

寅「ああ、いいよお
 おいちゃん「これだろ?←そんなわけないよ、おいちゃん。ヾ(-_-;)


おいちゃんたちって、騙されるタイプ?


 寅「冗談言っちゃいけねえ。
こちらさんがもし金だったら十万や
二十万でォ買い求めれるシナモンじゃない。

断っとくけど、これはただしガセネタ

じゃないよ。論より証拠、はめてみりゃ
わかる!つまり、
電子のつぶつぶみたいなものが、
手首の血管からすーっと体内に入って

五臓六腑
とかけめぐるんだ。

つまり
血行をよくするんだよ!
おばちゃん、どうだい?なんだか、

体が楽〜になっただろ?






                      





 おばちゃん「うん、うん、」と妙に納得!!!!?←ほんとかよ…ヽ(´〜`;
 
 さすがバイで慣れてるだけあって専門用語がバンバン出てくる。

 
さ、ご近所の方、こっちに入ってずっと見てやってくださいよ」




その時、待っていた櫻(さくら)が帰ってくる




 まだ結婚していないのでである
第2作以降は当たり前だが諏訪櫻である
 だからこのときはまだ当然戸籍は 車櫻(くるま さくら)である。
漢字で書くとかたいので普段はひらがな( 車 さくら )
を使っていることがこの後のお見合いの席での会話で判明!





物語に戻って




寅、さくらに気づく。



みんなも、さくらに気づく。



                






おばちゃん「さくらちゃん、お帰り




寅「さくら…



                     




さくら、戸惑いながら




さくら「ただいま…





                     




寅、立ち上がって


寅「さくら…


お膳をまたいで

上がり口まで来て




寅「へえ〜…



                           





もっと近づいて



おまえ、ほんとにさくらかい?」

土間にドン!と、降りて

寅「ほらほらほら俺だよ、この顔に見覚えねえのかい?」

さくらあの…


さくら!と両手を差し出す。




                  




さくら、逃げて、恐がる。


さくら「ねえ、この人誰なの?

って言ってまだ分からない。



                    




おばちゃん「
やだよ、まだわかんないのかい

おいちゃん「
よく見ろよ!


寅「いいんだ、いいんだ、無理はねえ。
 五つや六つのちっちゃいガキの頃にほっぽりだして
 それっきりだ、フッ、親はなくても子は育つっていうが、
 でかくなりやがった




別にもともと寅がさくらを育ててたわけじゃないんだが(^^;)



                   



さくら
あ…!


寅、さっとさくらの方を振り返る!





さくら「お兄…ちゃん?


            



第1作のテーマ曲が美しく流れる。



寅「そーよ!お兄ちゃんよ!



                    





さくら生きてたの…喜ぶさくら





                      





寅「んん!!



さくらお兄ちゃん!!




                   





 一同しんみり



寅 苦労かけたなぁ…。

 ご苦労さん…








                 








 二十年ぶりの再会を喜ぶ


 とにかく倍賞さん若い!!そして綺麗!!




この第1作の倍賞さんと第48作の倍賞さんを見比べると
「歳月」というものを実感できて、しみじみしてしまう。




寅「
ションベンしてくらぁ…
やっぱりコメディだ!抜け目のない演出。



                      





頷くさくら(^^;)

庭に出て行く寅

おいちゃん「おいおい、便所こっちだよ

寅「いいんだいいんだ立ちションだな…(^^;)

おばちゃん「よかったね」と泣いている。



 山田監督は絶対感動的な場面のあとにオチをもってくるのだ。
 これぞ喜劇の醍醐味。(^^;)





 裏庭で立ちションしながら人生の並木道」を歌う。

♪なあくなあ〜いもとよお、
いもとおよおなくなあ〜、なあけばおさなあい〜、
ふたりぃ〜しいて〜故郷を〜、
すうてえた〜かいがあなあい、とくらぁ
』 






ゴーンと寺の鐘

 


 この歌を歌っている間にさくらは
2階の自分の部屋に上がる。

普通もう少し二人で再会の感動とともに下にいるはずなんだけどなあ、
20年ぶりに会ってまだ5分も経っていないのに、
もう2階に上がってしまうなんて…



                 




2階のさくらの部屋



さくらの部屋(後に寅がいつも使う部屋)の構造がこの時はちょっと
違う。庭側に廊下が見当たらない。これは初期の不具合だ

さくらが2階に上がっている間、ちょっと向こうの窓から諏訪博が見える
博初登場
の場面である。


                 




自分たちが
まだ小さい頃の父母兄弟で撮った額に入った

白黒記念写真を見る。←出た〜!!




                






             


            




異母兄弟の寅だけ爪弾きっぽく横目で睨んでちょっと舌を出している。
マニア必見これが最初で最後の
少年期のさくらや寅の姿だ。


 
父親の横で賢そうに写っているのがその後まもなく
亡くなってしまった
長男の顔
もちろんさくらのお母さんも写っている。
↑後にも先にもみんなこのときだけの登場。

 この父親は女道楽が凄くて親戚一同を困らせてたそうだ。
寅も酒飲んだときに芸者「きく」に生ませた子である。きくはまだ赤ちゃんだった
寅をとらやに置いて行方をくらましてしまう。寅の生い立ちには哀しい物語がある。
このことは第2作でしっかり
出てくる。

 




ちなみに、フジテレビのドラマテレビ版『男はつらいよ』でも、
第1話の冒頭で、これに似た家族写真が映り、
具体的なさくらの家族の様子がさくらによって語られるのだ。↓

具体的には、

★あの家族写真を写した直後、
お母さんが病気でなくなった。
(つまりテレビ版では寅がまだ家にいたころ亡くなっている)

★お父さんは、お母さんが亡くなった後、
仕事がことごとくうまくいかなくなり、
酒の無茶飲みがたたりさくらが中学校に入ったころ亡くなっている。

★お兄さんの『竜一郎』は大学を途中でやめて働いていたが、
さくらが高校を卒業した歳に好きな釣りに出かけてなんと時化に遭って
なんとんなんと不慮の死を遂げてしまった。

★おいちゃんとおばちゃんがさくらの面倒を見始めたのはお母さんが
亡くなってからすぐだということ。
つまりお父さんがまだ存命だった頃から、生活が荒れて
お父さんは家族の面倒をあまり見なくなったのかもしれない。



                  テレビ版の中で使われた家族写真

             








このあと作品には出てこないが深夜まで
おいちゃんと寅は飲み明かしたらしい。
翌日は二日酔いで苦しむ羽目になる。







 序盤はここまで。




 このあとさくらのお見合いからはじまって博との
結婚まで、と御前様の娘の冬子とのからみの2本立ての
本題に入っていく。
なにしろこの第1作は中身がぎっしり詰まっているのだ。
息つく暇もない!







 まずはさくらの見合い。




京成電鉄の踏み切りの音

早朝、柴又参道



さくら、2階の窓から座布団を叩いて、埃を取っている。




下でおばちゃんの声

おばちゃん「さくらちゃん!

さくら、身を乗り出して

さくら「はい

おばちゃん「ちょっと来てちょうだい

さくら「はい




            





博が工場の寮の窓から見ている。何かあるたびに
さくらを気にしている博。




                 






そしてなんとこの第1作は朝日印刷でなく、なんと共栄印刷KKになっている。
工場の壁に描かれた大きな文字

 この共栄印刷KKは第4作まで続き第5作から
突然「
朝日印刷」になっている。
 この朝日印刷はその後も株式会社になったり
有限会社になったりいろいろ揺れ動く。

 工場の創業は「拝啓車寅次郎様」のタコ社長の話に
よると昭和21年夫婦で始めたらしい






とらや 縁側


さくら「いいわ、私ひとりで行くから
おばちゃん「とんでもない!ダメだよ、そんなことできるわけないじゃないか。
むこうさんは、ご両親から妹さんまでみえるんだよ


寅、庭で浴衣のまま、話を耳ダンボにして聴いている。





さくら「しかたないじゃない。いまさらおいちゃんが
 二日酔いだからって、日延べしてもらうわけにも
 いかないでしょう?


おばちゃん「でもさあ、一人でなんか行ったら、
    この話、だめになっちまうよ


さくら「いいわよ。どうせ無理やり
  部長さんが押し付けた話だもん


おばちゃん「まあた、そんなこと言ってエエ。
    今までにこんな言い話があったかい?


さくら「じゃあ、どうすればいいのよ

おばちゃん「どうすればいいって、困ったねえ、
   ほんとにバカだったらありゃしないわ!
   夕べあれほど私がほどほどにしなって言ったのにい!




                 




寅「よよよ、おばちゃんよ、いったいどうしたんだい?

と縁側に腰を下ろす。

おばちゃん「いえね、今日はさくらちゃんのお見合いの日なんですよ〜

寅「へえ!!〜、さくらが見合いかあ

寅「で、これのこと欲しいって野郎は、どこの誰なんだ?

おいちゃん、布団から出てきて

おいちゃん「ん、あのな…
寅「

おいちゃん「あの、さくらの会社のな…

おばちゃん「うるさいね!お前さん、黙っといで!
    なんだい、出来損ないの酔っ払い!!


おいちゃん「そうおめえ、ガンガン怒鳴るなよ、
    頭に響いてしょうがない…


おばちゃん「なに言ってんだよ!

寅「まあ、いいからおばちゃん、喧嘩はいいからさ、
 いってえそれからどうなってんだよ


おばちゃん「とってもいい話なんだよお〜、

寅「ほお

おばちゃん「オリエンタル電気のね、下請け会社の社長さんがね、
  さくらちゃんのことを見初めて、自分の倅の嫁にぜひって、
  部長さんを通じて言ってきてくださったんだよ



ある意味凄い玉の輿


寅、頷いている。


おばちゃん「そいでね、今日は、おいちゃんが付き添いで
  見合いに行くはずが、ゆんべ飲みすぎちゃってこの有様だろう、
  さくらちゃんはさくらちゃんで一人で行くなんて言い出すし、


さくら「だって私は最初から乗り気じゃない、って言ってるでしょう

寅「さくら、それじゃおまえなにかい、
 お見合いってのは
フウケン主義だと、
 こう言うのかい?
封建だろ(^^;)

さくら「…え??(^^;)

寅「そりゃあ、ちょっと考え違いじゃないかなあ

おいちゃん「そ、そうなんだよ、いや、オレたちも
   今、それ言ってたんだよ

おいちゃん「なあ、寅さん、おめえ、オレの代わりに
行ってくれねえかな…



さくら「


寅、はっとして

寅「オレがぁ〜?




               




おばちゃん「ほんと、そうしてくれると助かるんだけどねえ

おいちゃん「実を言うとなホテルなんだよ。

ホテルにビビルおいちゃん。



おいちゃん「ホテルなんてそんな立派なところ、
   オレ、苦手だろ…。かえってさくらに恥かかせちゃ
   悪いもの。そりゃあ、おめえ、寅さんが一番いいよ。
   第一、実の兄貴なんだからな。頼むよ〜〜


と、またヘナヘナと布団に倒れこむ。


さくらの結婚式も、なんとおいちゃん出席してないので
本番に弱いタイプかもしれない(^^;)




寅「

さくら「お兄ちゃん、忙しいんじゃない?
寅「…んん…ま、忙しいってたって、
 今、歯磨いてるだけなんだけどね…




              



まだ昨日20年ぶりに帰ってきたばかりで、寅がどれだけ
危険な人物かを把握できていないとらやの人たちは、
無謀にも寅にさくらの付き添いを頼むのだった。



ということで、付き添いを引き受けた寅は
さくらと一緒に、ホテルへ向かう。









タクシーの中


ホテル(ホテルニューオータニ
に向かうタクシーの中。


↑そういえばこのホテル、後に「人間の証明」
に使われたなあ…

寅「さくらよ、ホテルなんて英語にいちいち驚いちゃいけねえよ、
当節はな、ちょいとした
連れ込み旅館だって
生意気にホテルだ。ホテルなんかに脅かされてたまるもんかい



                    

さくら「それ、それがホテルよ
 

寅「あえ!!!?ビビル寅(−−;)



                       







ホテルの見合い会場


ワインが運ばれてくる。





見合いの席でスープを音を立てて皿を持ちながらすする寅。 
見合い相手の家族、皆、露骨にいやがっている。



                     





 寅も無作法だが、いやがる人々も表面的なことに
 こだわる鼻持ちならない人たち、という感じの演出。




                     



さくら、止める

寅「なんだ?

部長「しかし、車君、お兄さんが帰ってみえて嬉しかっただろ?

さくら「はい

部長「20年ぶりとはねえ

相手の父親「あのー、今お仕事の方は…?

寅、パンの穴から顔を覗かせて遊んでいる。
人の話聞けよゞ( ̄∇ ̄;)



さくら、寅に注意

さくら「お兄ちゃん

寅「え、わたくし?は、え…、
 
セールスの方やっています。



                     



相手の父親「どういう御種類のセールスを?

寅「えー、主に…ですね…

くら、なぜか驚いて寅を見る。

この時点ではさくらは昨日20年ぶりで、寅に再会したばかりで、
寅がどのような仕事をし、なにを売っているかまでは詳しくは
会話していないはず。


相手の父親出版関係の?


寅「ええ、出版といいますか、まあ、法律とか、統計とか…

さくら、また驚く。

父親「ほう、それはそれは意味ねえ納得(^^;)


                     




 寅その他、英語、催眠術、灸点方、夢判断、
 メンタルテスト、諸病看護方、
染み抜き方、
 心中物、事件物、
と、
まあいろいろなんでもやってますけど…なんのこっちゃ(^^;)

寅「なんてこたあないんですよ


ビールを飲み干して、ふっと息を吹き、
寅「どうぞ、お近づきのしるしに」と、グラスを差し出す。

寅「
さ、どうぞ、やってください

寅、みんな堅気なんだからさ…(^^;)

さくら、どうしていいのやら困って笑うしかない…


                




時間が過ぎて…


部長が話題を振り撒いている。

一同「ハハハ!

部長「毎年、3月人事異動の時期が近づくと
各課の間でさくらさんの争奪戦が始まります



                   


一同「ハハハ」


部長「
それをね、人事部ではストーブリーグっていいましてね

一同「ハハハ」

部長「
さくらの花が咲く頃にその辞令が下りる。というわけです

            




寅、必死で肉を切っている。

さくら、心配そう…



見合いの相手(広川太一郎)レタスを飛ばし、おでこに当ててしまう。
これは渥美さん何度もやり直ししたんだろうなあ凄い命中率!だ。


      レタスがビヨ〜〜〜〜ン!と飛んで、見合い相手のおでこに見事命中!

            

それにしても上手く当たったよなあ…
リハーサル何回やったんだろう?(^^;)


寅「あ、ああ、あ、飛んじゃった…

見合い相手、困った感じで、寅にレタスを返す。



さくら、唖然



父親だが珍しいお名前ですな「さくら」さん、というのは…お父さんのご趣味ですかと話をそらす(^^;)

1969年当時は珍しい名前だったんだねえ。
今じゃ、2004年で日本で一番多くつけられてる
名前になっちゃったよ(^^)



さくら「は、はい。でも、戸籍では漢字なんです

部長「あ、そうそう、漢字だったね

父親「桜の花のさくら…

さくら「はい

寅「ええ、車 櫻 なんて書きますとね、
誰も名前なんて思わないんですよ。


ほう、くるま桜なんてのがあるのかい?なんてね




                     


部長「なるほど、ハハハハ

寅「へへ…、いやこの「さくら」って字がね、
 面白ございましてね。えー、


へんに貝2つでしょ、それにですから、ええ

2階の女が気(木)にかかるとこう読めるんですよ!



                     





一同「こりゃ面白い、ハハハハ


寅「面白いでしょ!しかし漢字と言うのは
面白ろうございますね。えー、




嫌〜な予感…(__;)





寅「尸(しかばね)に水と書いて尿つまりしょんべんだ。
尸(しかばね)に米と書いて
(ふん)つまりくそですね。



                     



寅「尸(しかばね)にヒを2つ書いて
 つまり、
なんですよね。
 どうしてへがヒか?つまりおならは「ピー!」って
 しゃれかなっと思って…へへへ


↑山田監督とことんまで言わせます。
 いやーキツイです。この状況…(^^;)



ちなみに渥美さんは第1作、第2作あたりではでいろんなアドリブを試みたようだ。
しかし山田監督は渥美さんがあまりにもアドリブを連発するので心底困ったらしい。
第3作。第4作を自身が担当しなかったのも、「家族」などのほかの映画制作に
没頭していただけでなく、ひょっとして、そういう不和もあったためかもしれない。

しかしその後、渥美さんも、自分の出た映画を観て山田監督の感覚を理解し、
無駄な動きが少なくなり、第5作あたりからは息もぴったりな関係になったようだ。




                  




さくら、止める。

さくら「
お兄ちゃん…

寅「
さくら、ビール飲むか、

さくら、怒って「
結構よ

寅「
あ、そうか、結構ね、結構毛だらけ猫灰だらけと、
きやがった…


見合い相手の妹には受けて彼女は吹いて笑っている
寅「ははは、笑ってる、笑ってるよ!お嬢さん面白い、そう、これまだ続くんだよ!
尻の周りは糞だらけってね!」こりゃちょっときたなかったか!えー!




                     



一同  シーン…。

寅を睨んでいる。



寅「ヘヘ…へ…へ……」
               

          



見合い相手のお母さん寅を睨んでいる。

見合い相手もだめだコリャと
いう顔で下を向いている。



寅、気まずくなって、ビール飲み干し
おう、酒!」とおかわりの催促。




                      



さくら、もうこのへんで、寅連れて帰っても
いいと思うよ。もう無理だよ…。





時間が経って


寅、ベロンベロンに酔っ払っている。


このあと寅の出生の悲しみに
寅自らが触れ、憤る場面は物悲しい。



寅、セロリをかじりながら


寅「ねえ、不思議でしょ?

と、相手に向かって尋ねる。


寅「こんな美人の妹に、ぶっ壊れたツラの兄貴が
いるってことは不思議でしょ?お兄さん


見合い相手「いえ、…そんなことは

部長「そんなことはありませんよ

寅「いやー、それもそのはずよ
これとオレとではね種違いなんだよ
いやー違う!ハハ、
腹違いなんだよ


一同唖然…。

さくら「お兄ちゃん、酔っちゃったの?と止める。



最悪のムード



                     



寅「うるせえな


部長「おおお、お兄さん、
 そういう話は、また別の機会にね


部長さん、もう何を言っても言わなくても一緒だって(ーー)


寅「いや、そんなことないよ、こういうことは、
 はっきりさせとかなきゃさくら可哀想だからね



ある意味、それは正しい。あとで、
そのことで問題が起こるより、
ここで起した方がいいかもしれない。




寅「あたしの親父ってのはね、大変な女道楽
私のお袋ってのは芸者なんですよ、
えー、その親父が言うにはね
親父がへべれけの時私を作ったんだとさ…





さくら、下を向いている。


給仕がメインディシュを下げようとすると
寅「
食うんだよ!」と払いのける。


親父はね、あたしのことをぶん殴る時いつも言ってたね。
 『おまえはへべれけの時つくった子供だから生まれつき
 バカだ』とよ!あんちゃん悔しかったなあ!…酔っ払って
 つくったんだもんなぁ…オレのこと…。


さくら「お兄ちゃん…


寅「
真面目にやってもらいたかったよ
 オレは!本当に!



             



これは寅の心の傷であり、癒されることのない
寂しい生い立ちなのである。

第2作、第7作でもこのことが大きく浮き彫りになっていく。


見合い相手の母親、
我慢できなくて立ち上がり帰ろうとする。

母親「私、失礼致します


あは、かあちゃんどちらへ、あ!お便所!
 あー、いってらっしゃいいってらっしゃい。
 
出物腫れ物ところ嫌わずってね。
 我慢しちゃいけねえや。爆発しちゃうからな!」
 寅、立ち上がって

寅「あ!そうだそうだ!よおし、
 オレも行こ、オレも行くぞ、オレも行こ。大丈夫だ
 心配すんなすぐ帰ってくるから!






最後の駄目押しは



あっ!みなさん私は早いんだよ!
早飯早糞芸のうちってね!
見せたいくらいだね!
座ったなっと思ったらぺロっと
ケツ拭いちゃうの!


↑このエグイギャグは
第38作「知床慕情」
でも使っていたな。ちなみに知床慕情では
こないだなどは糞をする前にケツを拭いてしまって、
まあ、親戚中で大笑い。ハハハハハハ…、ウォッホン!

と、なっていた。


寅「母ちゃん!?そっち行ったの〜?ねえ、ねえ?

さくら、呆然として、ガックリ…イスに座る。
寅、遠くで「よお?」

さくら、泣きそうになって、下を向いている。


これでお見合いはぶち壊し。


しかしまあ、そのおかげで博とさくらはその後結婚し、
満男が誕生するのだからこれでよかったとも言える。
所詮、住む世界も、価値観も違う相手とはそうは
長続きしなかったと思う。






夜の京成電鉄の踏み切り


とらや 


寅が、「人生の並木道」を酔っ払いながら
    歌って帰ってくる。


寅「おら、おいちゃん、おばちゃんただいま!!




さくらが肩を貸している。


           


寅「んん〜!!上手く行ったよォー!

寅、なだれ込むように、上がり口に座り

「ヘヘ、ハハハ、よう、おいちゃん!よう、
 安心しろよ、なあ!大成功だよ!
 オレがついてったんだから、
 上手くいったよな!?



          






さくら、疲れた表情で頷く。

寅「済んだよ、うん。フハハハ、よーし、よしよしよし、
 ちょっと行ってくらァ、うん


と庭のほうへ

おいちゃん「ほんとかい?上手くいったのかい?見合い?

さくら「さあ、だめなんじゃない…と、半泣き(TT)


おばちゃん、呆然


おばちゃん、メガネかけてる


さくら、泣きながら階段を上がっていく。


寅、庭で立ちションベンしながら、
人生の並木道」を、また歌っている。


寅を行かせたことを
後悔するおいちゃんたち。



タコ社長「誰だー!俺んちの塀に
   ションベンひっかけるやつは!!

初登場タコ社長!まずはちょっとだけの出演


寅「なんだい!この親父!チキショウ!てめえとここそなんでえ!
朝から晩までガタガタガタガタうるせえ音させやがってよ!えー!
オレんちにはな、まだ嫁入り前の娘がいるんだ!
知らねえのかよ!おい、ちょっと来いよ!おまえちょっと来いってんだよ。

朝から晩まで仕事してりゃいいってもんじゃないよおまえ!
お天道さんが沈んだらねー早めに寝てもらいてえな、貧しいねえー!君らは



                     





さくらは自分の部屋に戻って、机に向かって泣いてしまう。


悲しんでいるさくらを向かいの工場の寮の部屋から
博が見て心配している。



             


何度も言うが、
一応カーテン閉めろよな、さくら(^^;)




翌朝 柴又駅


翌朝、さくら、柴又駅から通勤している。


満員電車で通勤している姿が映る。

昨日のことがあったので元気がない。



       



月島  川沿い



テキヤの親分の家。



                



部屋の中でその筋のおあ兄さん達にバイを始めるに
当たっての仁義を切る寅(寅ってほんと仁義切るの好きだ)
月寄りの廻り面通

「仁義」を博徒内では、「チカヅキ」(近づきの仁義)、
テキヤ仲間では「メンツー」(面通)とか「アイツキ」と言う。



子供たちが窓から覗いている。
母親、すぐにそこから離れさせる。



わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。

皆様ともどもネオン、ジャング(ズ)高鳴る大東京に
仮の住居まかりあります。
不思議な縁持ちましてたったひとりの妹のために
粉骨砕身、バイに励もうと思っております。

西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地の
おあにいさん、おあねえさんに御厄介かけがちなる
若造でござんす。

以後見苦しき面体お見知りおかれまして、
恐惶万端引き立って、よろしくお頼み申します。



         




ジャンズとはジャズのこと。





丸の内 オリエンタル電気


他の女子社員に混じってキーパンチャー室で計算機を打っているさくら。



              





女子社員、さくらを呼びに来る。



さくら、部長室をノック

コンコン




部長、暗い顔で「ハイ、どうぞ」

さくら「失礼します

さくら「昨日は、大変ご迷惑をおかけいたしました
と、深々と謝罪のお辞儀。

部長「あ、いやいや、さあ、座んなさい

さくら「はい

部長「いやあ、大変だったろ、あれから



                 



さくら「あ、はい

部長「うん…、実は、今まで鎌倉さんが見えててね、
あんたに会えないが、くれぐれもよろしくって、


さくら、頷く。

部長「それでね、つまり、結論から言うと…

さくら「分かっています。お断りに見えたんですね

部長「うん…

部長「君にはすまないが…、いえ、いいんです

さくら「いいんです。あたりまえなんですから

部長「そう…悪かったねえ…

さくら「あ、いいえ

部長「

さくら「

あのさくらが速攻で断られたなんて悲しい(TT)

                           




このあと寅はバイをしている舎弟のと再会する。


この登も最初の作品群では第10作くらいまでちょくちょく顔を
見せて寅とは絶妙のコンビだったが、そのうちに源ちゃんの
キャラが目立ってくるに従い、役がかぶるので登場しなくなったのかも。

第33作で久しぶりに岩手の盛岡で登場。その時はすっかり堅気になって
言葉も変わってしまって今川焼屋(食堂)をしていた。
ちょっと昔の覇気がなかったのが残念。




寅、つまようじを口にくわえ、
紙で作った傘を指先でクルクル回しながら、

鼻歌で「喧嘩辰」を歌って歩いていく。


       


沿道でロケを見ている人たちが映る。

(おおらかな時代だったんだねえ)


             




巣鴨とげぬき地蔵


登 本のバイをしている


全くやる気ないバイ

登「雑誌ですよ〜、雑誌、大安売り、大バーゲン
たくさんありますよ。あ〜〜


やる気ねえ〜〜(^^;)


寅、登の本を足で蹴って

寅「タコ

登、驚いて寅を見る。

寅、つまようじを「プッ」と吐き出し、

寅「なんでえ、なんでえ、情けないタク並べやがって
もっとましなバイができねえのか!まぬけ!!


登「あ!兄貴!

登立ち上がって




                  




寅の背広を掴みながら

登「寅の兄貴じゃないか!どこ行ってたんだよ、
 探したんだぜ、おりらあ!


寅、頭こつきながら

寅「てめえみたいなグズはなあ、田舎へ帰って
 肥溜めでも担いで親孝行しろって言ったのが分からないのかよ


寅「さあ、どけどけどけ!

登「ハハ!


空気がガラっと変わって


ここから寅のバイ


さあ、チキショウ!!
さあ、どうだい!さあ、もうやけだ!
捨てちゃうぞ!このやろう!
持ってきやがれ!さあ!好きなもんもってけ!

バシッ!!

どうだこの乞食!もう!やけだぞちきしょう!



劇画本.死線に立て



寅「
ね!やけのやんぱち日焼けのなすび
 色が黒くて食いつきたいが
 あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ!ときやがった。

 ね!かどは一流デパート赤木屋さん黒木屋さん
白木屋さんで紅白粉付けたおねえちゃんから下さい、
ちょうだいでいただきますと500や600はくだらない
品物ですが、今日はそれだけ下さいとは言いません!

なぜかと言いますと、神田は六法堂という書店が
わずか30万円の税金で、泣きの涙で
投げ出したシナモンです!!バシッ!!

400、300、!200!どうだ!バシッ!!
100両だ!どうだ!!
これでも買わない?ちきしょう、

……もうこうなったら浅野内匠頭じゃないけれど
腹切ったつもりだ!どうだい、こう負けて、こう負けて、
おばやん、これ持ってけ、ダメ?
帰れババア、よし!こうなったら、オレは死んだつもりだよ!
チキショウ!火つけちゃうぞ!おい!おじさん持ってけ!!




        







夜  とらや





寅ちょっと、酔っている。

登を一緒に連れてきている。



寅「今帰ったよ!

さくら、おいちゃん、おばちゃん、落ち込んでいる。


店と茶の間の間に壁!テレビがこの位置!
第1作だけの特別バージョンの茶の間(^^)




寅「妹いるか!?

さくらたち、びっくりして、店の方を見る。



              



寅「あ、いたいたいた、おい、てめえ、いいから
 遠慮しないで入れ、こっちへよ!


寅「ここ、オレんちだから、な、妹紹介するからよ!

台所まで来て


寅「早くこっち来いてんだ、この野郎

寅「ヘヘへ、おい、おい、これ見ろ、え?
 綺麗だろ、な、
丸の内でもってBGやってんだい、
 本来だったらおめえなんかと話できないしろもんだよ、
 おまえ、ほんとだよ


BGって、今のOLのことか。
昔はビジネスガールって呼んだんだろうね。


さくらたち、ブスッと下を向いている。


おいちゃん、寅を睨んでいる。

寅「あ、おいちゃん、これね、オレの舎弟で、登っていうんだよ。
うん、お見かけどおりバカなやつだけどさ、身寄り頼りのない
可哀想なヤツなんだ。うん。これからずっと、オレんちで持って
一緒にアレするから面倒見てやってくれよ。な、おう、
おい、登、おい、こっちこい


さくらたち、寅を睨んでいる。

寅「おまえ、腹すいたろ、食え食え、
 食べろ食べろ、ハハハ!



一同、睨んだまま


寅「
なんだい?どうしたい、
 不景気なツラして、どうしたい?



おいちゃん、お膳を「ガン」と叩いて


おいちゃん「よ、よ、よくも平気でいられるな!
   謝ったらどうなんだ、謝ったら!




            



寅「...



寅「何、おいちゃんカーカー頭に来てんだよお



おいちゃん「さくらはな、断られたんだよ、縁談を!



            


さくら「...

寅「...、あ、そお、へえ…、断られたのさくら

さくら、頷く。

寅「ヘヘヘ!そりゃかえって好都合だよ!冗談じゃねえよ!
あんな青二才よ!さくらぐらいの女ならね後から後から男が
押しかけてきちゃうからな、ほんとだよ。
あ、わかった、それでやけ酒飲んでたの?なるほどね、よ!
やけのやんぱち日焼けのなすび!



登「色が黒くて食いつきたいが登、空気が違うだろうが(−−;)

寅「アタシャ入れ歯で歯がたたないよ!ときやがった、ヘヘ!!

さくら、怒る。

おいちゃん「よさねえか!バカ!


おばちゃん「ちょっと私に言わせておくれ!
   いいかい寅さん!
   断られたのは、あんたのせいなんだよ!




              



寅「!...



              



おばちゃん「こんないい縁談、めったにありゃしないんだよ、
  そう言っちゃ何だけどね、両親もいなけりゃ、
  財産もないさくらちゃんだよ、
  いくら本人次第と言ったって、縁談となりゃ、
  今まで人に言えないいろいろ辛いことがあったんだよ


寅「なんだよ、はっきりスッと言ってくれよ

寅「つまりオレみたいな、ヤクザな兄貴がいるからさ、
 これが嫁に行けないって、こういうわけか!?


さくら「もうやめて、もういいのよ...。
  私、諦めてるんだから


寅「おう、そうだよ。人間諦めが肝心だよ。
だいたい見合いについてってくれって言ったのは、
自分たちじゃないか、それをなんだ今時、
グダグダグダグダ、グチっぽいババアだねえ、



それは一理あるな。寅の気質をあの時点では
さくらもおいちゃんたちも見抜けていなかったんだよね。





おいちゃん「ババアとは何だ!ババアとは!

寅「おや?ジジイ怒ったねェ

さくら「お兄ちゃんなんて言い方よ、散々世話に
 なったおいちゃんたちにそんな言い方
 ってないでしょ、謝んなさい!



この場合、寅は両親が存命中に早々と家出したので、おいちゃんたちに
世話になったのは妹のさくら。寅はさほど世話になっていないかも。
もっともこのあとず〜っと世話になりっぱなしになるのだが(^^;)




               



おいちゃん「そうだ、謝れ

寅「こんにゃろ、妹のクセにてめえ生意気だぞ!!

さくら「お兄ちゃんこそなによ!
 兄貴面していい気になって、
 昨日から今日にかけて私が
 お兄ちゃんのためにどんな辛い思い
 してるかわかんないの!!??



寅「うるせえ!!


寅、思いっきりさくらの頬をたたく。


バシッ!!


さくら「イタッ!!


と頬を押さえて倒れ、寅を睨む。



          



このあとの作品でもしばしば寅はさくらを
押し倒したり、コツいたりするが

こんなに激しくなぐったのはこの第1作だけだと思う。強烈だった!


さくらも負けないで「お兄ちゃんなんかどっか行っちゃいなさいよ!」

この頃の山田監督の演出は、生々しくてエネルギッシュだ!
倍賞さんの視線も強い。



おいちゃん「てめえ、よくもさくらに手をかけやがったな!!




                  



さくら、寅を掴んで

さくら「お兄ちゃんなんかどっか行ちゃいなさいよ!

おいちゃん「オレはもう我慢できねえ!!


止めようとした登、寅に跳ね除けられる。




おいちゃん「貴様、よくも!このやろめ!!


と、寅の頭を叩く!

バシッ!

寅「アイタァー!!


         




寅「よし!やってやろうじゃねえか!!

おいちゃん「表に出ろ表に!

さくら「ちょっとお兄ちゃん!やめなさいよ!
おばちゃん「およしよ!

と、おいちゃんにしがみついてとめるおばちゃん



共栄印刷の2階から何かあったなと下を見る博






とらや 裏庭


おいちゃんたち庭に出て

おいちゃん「よおし!おもしれえ!殴ってもらおうじゃねえか!



                  




寅「よおし!本気でやってやらあ!

と、おいちゃんを押す。


おいちゃん「やったな!
おばちゃん、おいちゃんに
しがみついて止めている。



さくら「誰かァ!!





博、飛び出してきて

博の初セリフ待て!」


寅を後ろから羽交い絞めにする。
寅「離せ!離せ!くそ!離せよ!登!

暴力はよせ!


寅「なに!?、あれ?てめえ職工じゃねえか!




               




さくら「博さん!と止めようとする。

おいちゃん「ええい!止めるな、止めるな!

おいちゃん「博さん、かまわねえ!



おいちゃん、さくらたちを振りほどく

さくら「きゃあー」と吹っ飛ぶ。      



              
            



おいちゃん「オレが許すぜ!え!かまわねえから
    痛めつけてやってくれ!


寅「このやろう!チキショウ!よおし!
 やってくれえ!チキショウ!もうこうなったら!


寅「オレがいったい何したってんだい!!
 殴れるモンだったら
 殴ってみろい、チキショウ





               



おいちゃん「よおおし、殴ってやる、キサマのようなやつは!


拳骨でガシッ!!と頭を殴る






寅「アイテ!アター!!


                

     

さくら「!!
     

                

  
         
おばちゃん「あんた!いい加減にしなよ!

           



おいちゃん「どうだ...こたえたか


               




寅「離せ!職工!」                   


このへんはすごいドタバタ劇


後期の作品群では絶対お目に
かかれない立ち回りだ。みんな若いんだね。
動きの流れが溌剌としている。





おいちゃんこれは俺が
  殴ったんじゃないぞ!
 
  俺のゲンコじゃねえんだ!こりゃあ!
  こりゃ死んだてめえの
  親父のゲンコだぞ!



上手いねえ森川さん!

          



おいちゃんに対して寅も意地で返す!


  「笑わせやがら!
 親父のゲンコはもっと痛かったィ!!


凄い啖呵の応酬!



          





おいちゃん「てめえ、言いいやがったな!コンチクショウ!!


とまた殴るが、博に当たってしまう。(^^;)



                 



さくら「おいちゃん、やめてえ!!


おいちゃん、何度も何度も座り込んでいる寅を殴る。

寅「アイタ!アイタ!チキショウ!!



          




寅、居直って

寅「おーし!やれってんだ!このやろう!


おいちゃん「てめえがな、てめえが
  家をおん出た時、オヤジはどれだけ心配したか、えー、

    おとついてめえの面見たときはな、ああ、親父が生きて
  たらどんなに喜ぶかと…、

  でもかえって、死んだほうがよかったィ!
  このざま見るくらいならな、死んだほうがましだったと、
  親父は今ごろ草葉の陰で、草葉の陰で…





おいちゃん「さくら...薬をくれ、薬...、はあああ

さくら「おいちゃん!どうかしたの?


           




おばちゃん「あんた、しっかりしておくれ、大丈夫かい?

おばやんとさくらに抱えられて、ヨタヨタと歩いて座敷に
連れられて行く


寅、座って、おいちゃんのほうを見て、ちょっと気にしている。


                     


登、寅を冷ややかに見ている。

寅「なに見てやがんだ、このやろ、ケッ!
と登をはたく。

登「
アタ〜

寅、おいちゃんのことを気にかけている。


優しく音楽「
さくらのテーマ」が流れる。




さくら、戻ってきて、寅の横にしゃがむ。