バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第19作 男はつらいよ 
1977年8月6日封切り

![]()
アラカンさんと渥美さん、奇跡の競演 ザッツエンターテイメント
この第19作「寅次郎と殿様」は渥美さんはまだまだ若く、実によく動き回ってくれる。特にこの作品では目の輝きが強い。
ちょっとしたギャグも目が覚めるように鮮やかだ。
そしてもちろん、この作品はなんといってもアラカンさんこと嵐寛寿郎さんと渥美さんの共演である。
世紀のスーパースターのアラカンさんの可笑しみと純情がこの作品のメインだ。
アラカンさんを『心の師』と尊敬してやまない渥美さんにとってこの競演はどんなに嬉しかったか。
渥美さんの少年時代、青年時代はこのアラカンさんの映画と共に歩んだといっても過言ではないのだ。
アラカンさんと共演している時の渥美さんは実に目が輝き、嬉しそうだったし楽しそうだった。
浮世離れした二人がかもし出す御伽噺。そして超現実主義の執事である三木のり平さん。
こののり平さんが上手すぎるくらい上手い。あのアクはのり平さんならでは。
しっとりとした伊予大洲の町で繰り広げられるヤンチャな最高の3人の絡みである。
見事なザッツエンターテイメント。

とにかくアラカンさんは何を演じても絵になる。
甘露じゃの〜っとラムネを飲むアラカンさん。三木のり平さん相手に刀振りかざして大立ち回りを演ずるアラカンさん。
手品使いのような格好でとらやに訪ねてくるアラカンさん。リヤカーでとらやに連れてこられるアラカンさん。
さくらのことを「ムスメ!聞いておりますか!」と呼び捨てにするアラカンさん。鞠子さんと二人、涙をハラハラと流すアラカンさん。
そして、風吹く夕暮れの江戸川土手を鞠子さんと二人して歩いていくアラカンさんの後姿。
特に私が好きなシーンはラムネを不思議そうに眺めながら中のビー玉をコロコロと転がして喜んでいるあの目だ。
アラカンさんは少年の目をしたスーパースターなのだ。

人生で遅すぎることはない和解の時
今回のマドンナ堤鞠子さんは、そんなアラカンさん演じる伊予大洲の殿様(藤堂家)の一族の末の息子さん(藤堂克彦)と恋愛結婚をした。
鞠子さん自体はそのようなことを若くして亡くなった夫から少しだけ聞かされていただけで、別段なにも心をかけることもなくつつましく
二人して東京で生きていた。しかし、殿様の方は、身分が違うと考えたのか結婚時に猛反対し、勘当し、息子の生前はこの夫婦と一度も
会わなかったのだ。そのせいで、鞠子さんは、全く藤堂一族のことを知らずに今日まできてしまった。殿様はこの若い夫婦の結婚に
反対したまま、彼女の夫である息子は亡くなってしまったのだ。そのことを殿様は後悔して、人目会って鞠子さんに謝りたいと願い、寅に
彼女を探してくれるように頼む。そしてその願いが奇跡的にかなってふたりはとらやで初めて対面する。
殿様「一目お会いした時から、わたしにはよく分かりました。
あなたがそばにいてくださって、克彦はどんなにしあわせ…」泣き続ける殿様
鞠子「お父様、あたくしもね、...あたくしも幸せでしたよ」と涙を流す。
短い言葉の中にお互いの心のふれ合いが急速に広がりお互い感慨の涙を流すのであった。
もっと早くこの二人が出会っていたら…と思ったのは私だけではないだろう。
夕暮れの中、江戸川土手を歩いて去っていく二人の姿は、
なんとも美しく人生に『遅すぎる』ということなどないのだと私に教えてくれた
印象深いシーンだった。視覚的にもこのシリーズ出色の美しいカットだったと言えよう。
この場面こそがこの作品のクライマックスであることは疑う余地が無い。

人間の出会いを通して、人生での懺悔と和解のチャンスはいつでもどこでもあることを殿様も
鞠子さんも、そして見ている私たちも思い知ったのだった。
ただ、この第19作はアラカンさんと寅の色を崩したくないために、マドンナと寅の緊張感が弱い。
真野響子さんは若くとても美しいが、ちょっと渥美さんとの空気が違いすぎる。
ここが惜しい。実に惜しい。
ちなみに「鞠子」と言う名前は第15作「寅次郎相合い傘」で早乙女愛さんが先に使っている。
もちろんパパの娘さん役。また、堤という苗字はタコ社長の第6作「純情篇」での苗字だ。
冴え渡るダブル騒動
またこの第19作は序盤に大笑いネタ「こいのぼり」「犬のトラ」騒動がある。
季節を絶妙に捉え広がりを持たせながらこれでもかと騒動に巻き込んでいく。
山田渥美コンビのテンポのいいコント作りはすでに名人芸の域に達している。

そのあと、アラカンさんが手品使いの格好で登場してからもさらに笑いの連続である。
柴又に再び寅が戻ってからもアラカンさんとの絡みで三度四度笑いの渦が沸き起こるのである。
特に鞠子さんを寅が探す場面はこのシリーズでも最高級の抱腹絶倒ギャグだ!

美しい鞠子のテーマ曲
この第19作の鞠子のテーマがなかなか優しく美しい。このテーマ曲は第35作「恋愛塾」の若菜のテーマとして
アレンジされることになる。
十作台最後の作品、物語も芝居もギャグも冴えに冴えた佳作である。
マドンナとの繋がりが成功していれば間違いなく私はベスト24に入れただろう。
それほどにも渥美さんは表情も動きもこの作品では抜群である。
それでは本編をどうぞ。
松竹富士山

今回も夢から
もちろん本編の夢は寅の鞍馬天狗!!
時代劇 江戸幕末 京都
寅の活弁
徳川三百年、太平の夢ようやく破れ、
倒幕の志士相次いで集う京洛の地に、
忽然と現われし、熱血の士あり。
その名を鞍馬天狗。
鞍馬天狗が「国民」の前に姿を現したのは、関東大震災の翌年、
大正ロマン華やかな大衆文化の時代。
鞍馬天狗は大衆の支持をうけ続け、すべてのマスメディアで登場し、
まさに「国民」的ヒーローとして活躍した。
『鞍馬天狗』シリーズは戦後の高度成長期のただ中の1965年まで、
四十二年の長きにわたって書き継がれ、全四十七作品が誕生している。
舞台は幕末維新期、
天狗は倒幕派の志士である。
鞍馬天狗は反権力を貫き、体制を変革しようとする
最先端の個人主義者・自由主義者だった。
按摩(座頭)の笛の音。
橋の向こうから杉作役の中村はやと君が走ってくる。
杉作「おじちゃーん!」
鞍馬天狗(寅)「おお!」
杉作「天狗のおじちゃーん」
鞍馬天狗、杉作を抱きしめ
鞍馬天狗「杉作、よかった…。
どんなにおじさんは心配していたかしれないんだよ」
杉作「うん」
さくら、紫の頭巾をかぶりながら、提灯を持ち鞍馬天狗に近寄る。
鞍馬天狗「どなたかは存ぜぬが、杉作の危ういところをお助けくださって
礼を言いますぞ」
さくら、鞍馬天狗を見ながら、静かにお辞儀。
鞍馬天狗「ではこれで…」
さくらは寅を見て長年探していた兄だとピンと来る。
さくら「もし、…」
鞍馬天狗「なにか」
さくら「もしやあなたは、江戸は葛飾柴又の生まれではございませんか?」
寅「え?そういうそなたは?」
さくら「妹のさくらでございます」
寅「さくら…」
さくら「兄上様、お会いしとうございました」と泣く。
寅「さくら」
山岳党の一味、按摩(座頭)に扮して聞き耳を立てている。←タコ社長(太宰さん)
にやっと目を開けるタコ社長。
さくら「お許しくださいまし、
それとは知らずに兄上様はもう、山岳党の罠に」
山岳党は京都の秘密結社。
鞍馬天狗「なに!?」
振り向くと、橋の向こうから大勢の山岳党の輩が歩いてくる。
さくら「早くお逃げください、あとは私が…」
鞍馬天狗「さくら、杉作をしっかり抱いていなさい」
さくら「はい!」
ボス「フフフフ!鞍馬天狗、今夜こそ、君には死んでもらうぞォ」
夢の悪役でお馴染み吉田義夫さん。
吉田義夫さんの整理箱
第8作 「寅次郎恋歌」 四国 雨の日の 坂東鶴八郎座長
ラストでも甲州路で再会
第9作 「柴又慕情」 夢のシーン 昭和 悪徳借金取り
第10作 「寅次郎夢枕」 夢のシーン 昭和初期 地元の高利貸しの親分
第11作 「寅次郎忘れな草」 夢のシーン 江戸後期 柴又村の寅の父親
第12作 「私の寅さん」 夢のシーン 大正 柴又村 悪人の、だあ様
第13作 「寅次郎恋やつれ」 寅の横に座る電車の乗客
第15作 「寅次郎相合い傘」 夢のシーン 奴隷船の奴隷商人のボス
第16作 「葛飾立志篇」 夢のシーン 西部劇の中、悪人ガンマン
第18作 「寅次郎純情詩集」 夢のシーン 北アフリカにアラビアのトランスを
捕まえに来た男。
A信州別所温泉での坂東鶴八郎座長
『不如帰』の武夫役
第20作「寅次郎頑張れ!」 夢のシーン 大金持ちになったとらやの執事
Aラストで寅と軽四トラックで再会する坂東鶴八郎座長
『ああ無常 レ.ミゼラブル』のジャン.バルジャン役
第22作「噂の寅次郎」 夢のシーン 江戸時代 目の悪いさくらの親父さん。
第24作「寅次郎春の夢」 京都での坂東鶴八郎座長 『蝶々夫人』のピンカートン役
第26作「寅次郎かもめ歌」 夢のシーン 天狗のタタリと偽ってさくらをせしめようとたくらむ悪人
鞍馬天狗「わたくしもあなたを斬るでしょう。
それがお互いの宿命というものです」

上條さん「生意気なことを言いやがる!」
源ちゃん「かめへん!いてまえー!!」
と一同刀を抜く。
いきなり斬りかかって行った一人がやられる。
「うわあああ」
寅「諸君、来たまえ。
ここが地獄の門です」
鞍馬天狗ってこういう言い回しなんだろうな(^^;)

軽快な音楽に乗り、チャンバラがくりひろげられる。
寅の活弁
東山三十六峰、草木も眠る丑三つ時、
たちまち起こる剣劇の響き、
次々にやられていく山岳党の輩。
「やられたー」
時々頭巾が顔にかぶさり目が隠れる鞍馬天狗。ちょいギャグです。
山伏風の大男役の上條恒彦さん、槍を橋の欄干に
突き刺してしまって、
そのまま欄干ごと引っこ抜き、自分の頭に当たって倒れていく。自滅(TT)
上條さん友情出演なのでノンクレジットです。

源ちゃん鎖鎌を持ちながら
源ちゃん「くそお…」
鎌を飛ばそうとして、自分の首に絡まりつき 自爆…バカ(TT)
源ちゃん「しまったー…」
またもや鞍馬天狗の頭巾が顔にかかって
必死で取り外しては闘い続ける。続ちょいギャグです。
タコ社長の座頭、
気合とともに射合い抜き。
しかし…
タコ「間違えて自分切っちゃった…」と、同じく自爆… ほんとバカ(TT)
鞍馬天狗、タコの頭小突いて
鞍馬天狗「バカめ!!」ほんと(^^)
タコ「あ〜〜〜」と倒れる。
音楽、突然シリアスに流れ始め、
鞍馬天狗「さくら…、杉作は無事か」
さくら「大丈夫よ」
さくら、鞍馬天狗の足からモモヒキが見えているのを見て
さくら「それより、どうしたのお兄ちゃん、モモヒキなんかはいて」
鞍馬天狗情けない顔で
鞍馬天狗「ちょっと風邪ひいてんだよ」としょぼくれる。

その直後、顔が一変し、
鞍馬天狗「来い!!」と刀を構える。
緊張するさくら。
山岳党ボス「おおお!!」

太鼓が速く鳴り響く。
お互い一太刀で胴切りを狙い、
ボスの切っ先は、払うように下から弧を描くが、
間合いが遠く切先が僅かに鞍馬天狗に及ばない、
半呼吸後に、間合いを詰め、
踏み込み、片手胴でボスの胴を斬る鞍馬天狗。

勝負あり!
寅「杉作!馬を呼べ馬を!」
駆ける馬(何かのフィルムからの転用だね)
穴が開いたモモヒキ。
馬に乗っている最中にいよいよ頭巾の前がずり落ちて、
寅「さくら!」
さくら「え!?」
寅「目が見えない!目が見えない!」
さくら「え!?」
寅「眼が見えない!目が見えないぞ!…」
さくら「え!?なに!?」
寅「眼が見えない!目が見えない、さくらァ!…」

国鉄(JR)予讃線 下灘駅
通称「海線」にある双海町(ふたみ)の下灘駅(しもなだ)
ホームのベンチで寝ている寅

寅の腕を叩く駅員さん。
駅員「お客さん。お客さん」
寅、「ん、んん…」と呻きながら、はっと目を開き、駅員を見る。
駅員「上り(のぼり)が来ますよ」
寅「え??」

駅員「上り(のぼり)が来ますよ」と、指を刺す。
起き上がって両手を広げて伸びをする寅。

背広を肩に掛け、かばんを持って海の見えるホームを歩いていく寅。
ホームをゆっくり歩く寅と駅に入ってくる汽車を
高台からカメラが望遠で撮っている。

ホームから国道を挟んですぐ伊予灘の海が広がっているので
ホームからは広い海を眺めることができる。
駅のホームのベンチで、うなされている寅。
(このベンチは青春18きっぷのコマーシャルでお馴染み)
【1998年・冬】
『駅に着いた列車から、高校生の私が降りてきた。』
【1999年・冬】
『思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。』
【2000年・冬】
『前略、僕は日本のどこかにいます。』

タイトル 男はつらいよ 寅次郎と殿様

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
今作品も17作、18作同様、♪あてもないのに〜と、3番も歌う。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴
わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような
偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪あても無いのにあるよな素振り
それじゃあ行くぜと風の中
止めに来るかとあと振り返りゃ
誰も来ないで汽車が来る
男の人生一人旅 泣くな嘆くな
泣くな嘆くな影法師 影法師♪
東京 柴又 江戸川土手
寅がひさしぶりに柴又へ帰ってきた。
向こうのほうに鯉のぼりが泳いでいる。
五月初旬なんだね。

お馴染みオープニングコントの王様津嘉山正種さんがコントの中心。
モデルを使った写真家の役。
江戸川河畔で、津嘉山さんがモデルさんを使って、写真を撮っている。

通りかかった寅が、コロッと落ちたフィルムを全部ビロ〜ンと取り出して
一笑いした後、危険を察知してさっさと去っていく(^^;)。
怒ったカメラマンたちがお互いに当たって、大喧嘩。というコント。

とらや 庭
五月の風に泳ぐ本物のこいのぼり。
満男とさくら「♪屋根より高い鯉の〜ぼ〜り〜」

やねより たかい こひのぼり
おおきい まごいは おとうさん
ちいさい ひごひは こどもたち
おもしろさうに およいでる
歌によると、
緋鯉などの残りの2匹も子供たちであって、お母さんではない(^^;)
端午の節句は男子の節句だからね。
お母さんは吹流し??(TT)
博が大きな本物のこいのぼりを買ってとらやの庭でみんなで揚げている。
満男は大喜び。さくらの足元で犬のトラが遊んでいる。
さくら「あー、泳いだ泳いだ」
満男「♪大きい真鯉はおとうーさーんー」
さくら「おいちゃん、おばちゃん、来てご覧、鯉のぼり揚がったわよ」
おいちゃんたち庭にやって来て
おいちゃん「どれどれ、あー見事見事」
おばちゃん「あらあ、よかったねえ、満男ちゃん」
空高く泳ぐ鯉のぼり
おばちゃん「学校行ったらさ、家にはね、
こんな大きな鯉のぼりがあるってえばってやんな」
アパートも自分の家だし、とらやも自分の家、満男君いいねえ〜(^^)

犬のトラを抱っこするさくら。
満男「うん!」
博「満男の家じゃありませんよ、残念ながら」
おばちゃん「え、フフフ…」
さくら「そーよー、アパートじゃ鯉のぼり揚げられないかえら
おばちゃんち借りたんじゃないのよ。ねー、そんなに
威張れないわよ…こら、こら」
厳密に言えば、ここはもともと寅やさくらの家であって
おいちゃんおばちゃんは別の家に住んでいた。
だからさくら、「自分の家」って言ってもいいんだよ。
トラはさくらに懐いていて、さくらの頬をペロペロなめる。
(トラっていったい…(^^;))

おいちゃん「威張れるほどの庭でもねえな、俺んちもォ…」
おばちゃん「ほんとだねえ…、これじゃあ鯉のぼりも可哀想だねえ」
さくら、頬のポチの唾液を手で拭いている(^^;)
さくらお客さんが「ごめんください」と、店にやってきたので
さくら「はいはい」と、店に行く。
トラは勝手に茶の間に上がって遊んでいる。
さくら「こら!おいちゃん、トラがまた上に上がってる」スタッフが餌置いたからだよな、トラ(^^;)
おいちゃん「えー…、トラ!しょうがネエヤツだなおまえは…下へ行ってろ」
と、下へ置く。
なんだか可愛いねトラのおなかって(^^)

おばちゃん「ねえ、ポチにしょうよお〜、
寅ちゃんが帰ってきたら怒るよぉ〜」そら怒る(^^)
おいちゃん「下行ってろ、ほら」
博「誰がつけたんですかトラなんて」
おばちゃん「源ちゃんだよ、決まってるじゃないか。」だろうね(−−)
おいちゃん「あいつが拾ってきた犬をなんで家で飼わなきゃならねえんだ」
おばちゃん「だってしょうがないじゃないか家にばっかり来るんだもの」
誰かが最初に餌付けしちゃったんだね。
博、トラを持ち上げながら
博「トラ、おまえな、ポチという名前に変えるからな。
いいか、トラじゃないぞ、ポチだぞ、ん」
この後数時間後に博はこの犬を「トラ」とまだ呼んでます(−−;)
おいちゃん思い出したように…
おいちゃん「そういやそろそろ帰ってくる時分だなあ…」
おばちゃん「ポチかい…」(ノ_-;)ハア…
おいちゃん「そ?」
おばちゃん「あ、違った、寅ちゃんかい?」間違うか、それ ヾ(^^;)

おいちゃん「んん…」
博「そうだなあ…もう五月だなあ…」
おいちゃん、タバコをくわえてライターで火をつけながら
この頃はもうライターなんだねえ…(−−)
おいちゃん「なんにも言わないけど、心配してんじゃねえのかさくら」
みんな、店先で掃除をするさくらの後姿を見ている。
みんな、ちょっと心配している。
おばちゃん「なんてったってたった一人の兄妹だからねえ…」
そんな時、必ずといっていいくらい寅は帰ってくるのだ。
さくら、題経寺方面を見て、急に顔色が明るくなる。
さくら「おばちゃん、お兄ちゃん帰って来た」

おばちゃん「え!!」
とらやを見ないように
ひょうひょうと知らぬ顔で駆けて行こうとする寅。
この渥美さんのとぼけた芝居は絶品だ。

なんせとらやの本当の跡取りがいつまでもふらふらしているのだから
毎度入りにくいのは当たり前かも。
さくら「お兄ちゃん、家はここよ!」
寅、わざとらしく振り向いて、照れ笑いをしながら
寅「あははは、そうかー、
あんまり長い間留守にしちゃってたんでね、忘れちゃったよ」
みんな「はははは!」
本当なら、このとらやで7代目主人となって
働かなくてはならない自分の立場を考えると、
ヤクザなこの身の上では入りづらくなるのは当たり前なのかもしれない。

寅「よ!おいちゃんおばちゃん、達者でいるか?」
おばちゃん「元気だよ、おかえり」
おいちゃん「今噂してたんだ」
寅「あ、そうかい、んー」
博「兄さん、おかえりなさい」
寅「よよ、博、どうだ工場のほうは相変わらず低賃金か?」
いいねえ〜このキツさ加減が(^^)
博「はい」
おいちゃん「あー、よかったよかった。さくら、お茶でも入れろ。
みんなで柏餅でも食べるか、え」
おいちゃんほっとしている。
やっぱり、旅先でなんかあったんじゃないかって思っちゃうんだよね。
寅も若くはないからね。
さくら「そうね」
寅「あ、満男いるか?」
さくら「いるわよ」
寅「ちょっと呼べ、お土産買ってきた」
さくら「あらー」
おいちゃん「へえー」
寅ニコニコ顔でかばん開け始める。
さくら手招きして
さくら「満男、ちょっとおいで、伯父さんがお土産だって」
おばちゃん「よかったねー」
博「いつも、気を使ってもらってすいません」
寅「いやいや、汽車の窓から見たらね、
鯉のぼりがすーっと上がってさ、
そうだ、オレも伯父さんの真似事を
ひとつさせてもらおうかなと思ってな」
みんな興味津々。
寅、かばんを開ける。
さくら、満男に
さくら「ねえ、なんだろうね」
寅、かばんからおもちゃの小さな鯉のぼりを
取り出して、泳がせながら
寅「ほら、これよ、たいして高いもんじゃないんだ」そらそうだ(^^;)
一同真っ青
第11作「忘れな草での」ピアノ事件のレンジ版だね。おもちゃVS本物

寅「本来なら、こんな立派なこいのぼり、本物買ってこようと
思ったんだけどよ、ま、それはいずれ寅おじさんが
大金持ちになってから、はいよ、ん」と、満男に渡す。
満男「こんな小さいの?」(((((  ̄ ̄ ̄ ̄ ▽  ̄ ̄ ̄ ̄ ;)
もうすでに10倍以上大きいホンモノ持ってるからね(^^;)

さくら「何言ってんの!お礼言いなさい」
中村はやとくんマジで笑ってます。
変だよねえ〜、大人たちの芝居って(^^)
博は、いち早く庭に行く。
おばちゃん「ほんとこんな立派なのちょうだいしちゃって」
おばちゃん…強調しすぎ(TT)
さくら「ありがとう」
寅「なに、礼を言われるほどのこたあねえよ、なあ、博」
博は、いち早く、庭のほうに行って、本物を片付け始めている。
寅「おい、博どうした?」
さくら「あ、ほら今日工場が忙しいんじゃないかしら」うそ(^^;)
とらやのお品書きが見える。
茶めし 150
くづもち 150
あんみつ 200
みつ豆 200
ソーダ水 100
サイダー 100
ラムネ 100
ジュース 100
今回冷蔵庫は雪印
博、庭で必死で鯉のぼりを下ろしている。
満男、寅からもらったおもちゃの鯉のぼりを博に見せている。
満男「ねえねえ、お父さん…」
とらや 店
寅「あーあ、貧乏暇なしってやつね」
さくら「そうそう」
寅「よし、社長にちょっと挨拶にしてこよう、うん」
と、工場へ行きかけるが…
おいちゃん必死で追いかけてきて
おいちゃん「寅」
寅「ん」
おいちゃん「社長、出かけたんじゃないかな」
おばちゃん「そうそう、税務署へ行くってそう言ってた」また税務署かよありえないって(−−;)
なんとか庭へ行かせないようにする二人だった。
おいちゃん、話題を変えて
おいちゃん「こっち上がって柏餅でも食べよう。つね、お茶持ってこい」
おばちゃん「あ、はいはい」
さくら、チラチラ庭を見ている。
おいちゃん「さ、寅」
と、二人して茶の間へ。

茶の間
寅「はーあ、あ」と腰を下ろし、
寅「どうだいおいちゃん」
おいちゃん「ん?」
寅「庭のツツジは?」脚本では「さつき」
と、庭のほうを振り返ろうとする寅。( ̄□ ̄;)!!

おいちゃん、間髪を入れず
おいちゃん「咲かない咲かない!
今年はダメだ」と必死。(TT)
寅「ほー…」
さくら「なにしろ、ほら、日当たりが悪いでしょ」さくらまで…(TT)
おいちゃん「あーあ、風通しも悪いしなー、見たってしょうがない!」
と、強調しまくる。
おばちゃん「本当に狭い庭だからね、さっきもそう言ってたんだよ、
『あれじゃ、鯉のぼりが可哀相だって…」
あああ…((((( T ▽ T ;)
ダメだダメだ、やっぱりおばちゃんだ…┐(-。ー;)┌

おいちゃん、手でダメだし。
さくら、寅を凝視。
おばちゃん「は…!!!!…いけない」
寅「なんかおかしいな…、
おばちゃん今なんて言ったんだい」
こういう勘だけは超鋭い寅。
と、薄ら笑いを浮かべながらも疑いの目

庭から、博の声
博「満男邪魔だ!あっち行ってなさい!」
あ〜あ〜あ、そんな大きな声出すと、寅じゃなくても振り返るよ(^^;)
一同真っ青

寅「…」
遂に庭を振り返る寅。
博「邪魔だって!」
。

寅の耳ダンボ
満男「ねえ、揚げてよー」だよね〜(^^;)
寅、ずっと見ている。
博「明日は揚げてあげるから、今日は我慢しなさい」
博、明日揚げたら明日バレルよ(−−;)

台所にまだ寅がいると思い、台所を遠目で見る博。
いきなり寅が茶の間から覗いているのを発見し、背筋が硬直する。
鬼のように怖く冷静な目で博を睨んでいる寅。
あわわわわわ…この目は鬼だ…Σ(|||▽|||
)

一同、絶体絶命のピンチ。
おいちゃん目をつぶって下を向く。
そんなときに限ってやっぱりこの人、
お約束のタコ社長が庭に登場。
社長「どうしたんだい、
せっかく揚げたのに、雨でもきそうかい」
社長「満男ちゃん、どうしたの?このちっちゃいの」と寅のお土産を指す。
ダメ押し…(TT)
満男の声「たいやきィ〜」…うますぎ…座布団3枚((((TT)
ダメダメ押し…(TT)
一同目を見開いて固まる。
寅、鬼の顔 ((((((TT)
たいやき〜〜〜〜

社長「ハハハハ!上手い上手い、
ハハハ!たい焼きかあー!」
寅むすっと、柏餅を手にとる。
社長、たい焼きを、
いや、鯉のぼりを手で振りながら台所に入ってきて、
社長「さくらさん、たい焼きだって、ハハ…」

一同、真っ青
さくら、必死で何かを社長に言おうとするが…
社長「お、寅さんおかえり!しばらくだったねえ。
見たかい?庭のこいのぼり。いくらしたと思う?」
社長、指を4本出す(4万円か)
ああいうの相場いくらするんだろうね。
鯉の大きさに比例するのかな…。
結構大きかったので4万円はお買い得だったのかも。
さくら「社長さん…」
寅、限界が近い。かなりブスウ〜…
社長「なんだい、どうかしたの?」察してくれよ社長(−−;)
博、畳んだ鯉のぼりを持ってきて、
博「毎年五月になると、満男が買ってくれ、買ってくれってせがみましてね、
庭のある家に引っ越したら買ってやると我慢させてきたんですけど、そうは言っても
いつアパートを出られるか分からないし、思い切って買ってやったんですよ」
さくら「でもね、買ってから後悔してたのよ、
もっとちっちゃいのにすればよかったって…」
寅、シラケた顔をして
寅「結構だよ、おまえたちの言い訳なんか聞きたかないよ。
どうせ腹の中じゃ、
おもちゃしか買ってこれなかったオレのことを
バカにしてるんだろ」

さくら「ちがうわよ、そんなこと誰も考えてやしないわよ」
寅「だったら、なぜオレがトランク開けてこいのぼり出した時に
スウ〜っとおまえ言ってくれなかったんだ?え?
『あら、お兄ちゃんせっかくだけども、
私たち昨日、思い切ってバーゲンセールで、
本物のこいのぼりを買ってきたのよ。ほら見て御覧なさい』
おまえにそう言われりゃオレが、
『どれどれ、あー、こりやあ立派なこいのぼりだ。そうか、
じゃあ、こんなおもちゃみたいなものはとってもいらねえや、
なあ、よし、うらの社長ところのハナッタレガキに
くれてやるか、ほらよ』

こう冗談で済んだでしょ」
済まない済まない絶対済まない ヾ(−−;)
心からバーゲンセールと決め付ける寅でした(^^;)
この第19作の時点ではまだまだ社長に「息子」がいることになっている。

さくら、下を向いて沈んでいる。
博「言おうと思ったんですよ、ですけどねー…」
寅「悪くて言えなかったんだろ」
さくら「そうよ、お兄ちゃんの気持ちを傷つけちゃいけないと思ったの」
寅「そうかいそうかい
貧乏な伯父さんが安物のおもちゃみたいな
鯉のぼりを買ってきた、
本物のこいのぼりを見せちゃ
あいつが僻むから、隠しちゃえ!隠しちゃえ!」
それじゃ第15作のメロン騒動だよ ヾ(ーー;)
見え透いたお世辞使いやがって、えー。
お前たちはオレを哀れんでるのかぁ?
それほどおまえたちは大金持ちかぁ!ケ!
田へしたもんだよかえるのションベン、
見上げたもんだよ、屋根屋のふんどしだい!」
きつううう〜〜〜〜(−−;)
おばちゃんチャルメラ泣き(第28作参照)しながら
おばちゃん「あんまりだよ、
そんなに言わなくたっていいじゃないかぁ…うううう」

第11作「わすれな草」の『ピアノ騒動』を思い出したよ。
社長「お互い貧乏人なんだから、
いがみあうのはよそうよ、な」
寅、呆れたように社長を見て
寅「へえ〜、どこをつつくとおまえそんなセリフがでるんだ?

え?オレが貧乏なのは
オレのせいだよ、
博が貧乏なのは
経営者のおまえのせいだぞ!」真実(^^;)

寅って凄いこというなあ…。ある意味正しい。
こういう演出が山田監督の懐の深さだ。
社長、何か言いたげだが
「ぁ…」とたじたじ…。
博、チラッと社長を見る。
なかなかシビアな場面だ。
博も寅と同じことを考えてるんだね、心の隅では。
博の社長を見る目に注目(TT)

寅「へ!なにが社長だこのやろう、
あんな凸凹工場潰してなあ、
どっか僻地へこせ!」これは脚本にはないセリフ
キツイ…(TT)
社長あまりのキツサについに泣いてしまう(^^;)

おいちゃん「寅…」
さくら「せっかく半年ぶりに帰ってきたのに…
そんなこと言わなくたって…」
さくらも泣いてしまう。
寅。スッと立ち上がる。
さくら、また旅立ってしまうかと恐れながら
さくら「どこいくの?」
寅、雪駄履きながら
寅「え?二階行ってちょっと休んでくるよ」おっと…
ほっ…旅立つパターンでなくてよかった…。
と、この時はそう思ったのだが…甘かった…。
メインテーマが静かに流れる。
寅、博を見て
寅「それ、揚げてやりゃあいいじゃねえか。
せっかく買ってきたんだ…」
寅、ぎりぎりではまだ冷静さを保っているんだね。
博、こいのぼりを買ってきたことを後悔する。
博「買うんじゃなかったな…、こんなことなるんじゃな」
夕方 題経寺の鐘の音
参道を豆腐屋のラッパが鳴る。
パープー
さくら出てきて
さくら「お豆腐屋さーん」
豆腐屋「はい」

夕方 とらや 二階
二階で寅がぼんやり庭の鯉のぼりを見ている。
豆腐屋のらっぱの音 パープー
寅のちょっとした後悔がそこはかとなく演出されていていいシーンだ。

下でさくらの声
さくら「おばちゃん、お豆腐、やっこでよかった?」
おばちゃんの声
おばちゃん「ああ、さくらちゃん、お芋見てよ」
いい演出だねェ、このさりげなさはありそうでない。
絶妙の間と声だね。このようななんでもない演出が秀逸。
う〜んこれぞ山田映画だねえ。
寅「はー…」と小さくため息をついて…
下にゆっくり下りて来る。
台所
さくら、芋の煮っ転がしの味見をして
さくら「もういいじゃない」
おばちゃん「そうかい」
おばちゃん、犬のトラに餌を与えようとする。
おばちゃん「トラ!ご飯だよ!トラ!」
懲りないねえおばちゃん(−−;)

さくら、またまた真っ青になって二階を見上げると、
ちょうど下りてきたばかりの寅と目が合う。
寅、不満たっぷりの顔で
寅「おばちゃん、どうでもいいけどさあ、
犬の名を呼ぶようにしてオレのこと呼ぶなよ。…」

おばちゃん、あわてて
おばちゃん「ごめんよ、あんまり親しいもんだから
つい呼び捨てにしちまって、
悪気はなかったんだから勘弁しておくれよね。」
凄い言い訳(^^;)

寅「いいんだよ、別にオレは怒ってるわけじゃねえんだから。
ただいきなりなもんだからね」
おばちゃん「ハハ…悪かったよ」と愛想笑い。
犬の寅が台所に入ってこようとするのを、おばちゃんが
微妙に後ずさりして餌を隠しながらもやる。
うーん細かい演出(^^)
犬のトラ君もなかなかスタッフからの指示通り。聞き分けがいいぞ。
さくら、なんとか挽回しようとして
さくら「お兄ちゃん、今日はご馳走よ。
お芋の煮っ転がしとガンモドキの煮たの」
寅は昔からこればっか…
寅「あー、ん…」と、少し平常心。
おいちゃんニコニコしながら
おいちゃん「おい、美味そうだろ、鯉の洗い」わざわざ…(〜〜;)
寅、ビク!
寅「鯉?フ…、なんだか嫌味みたいだな…」
おいちゃん「違う違う、丸甚のオヤジが
江戸川で釣れたってさっき持ってきてくれたんだよ」
寅「…」
おいちゃん、カチンときて
おいちゃん「嫌ならやめろよ」と、お膳から片付けようとする。
寅、止めて
寅「いいんだよいいんだよ、
別にオレは怒ってるわけじゃないんだからさ。
ただ、さっきの今だろ…」
おいちゃんふくれっ面
おばちゃん「さ、ご飯にしよう」
さくら「満男ー、おいで」
満男茶の間にやって来てきて
満男「♪屋根より高いこいのぼお〜り〜」
Σ(|||▽||| )
おいちゃんおばちゃん「うわー」っていう顔
おばちゃん「あ、ほかの歌にしよう、ほかの歌にね」かえってその発言嫌味(TT)
寅「いいんだよ、何の歌歌ったって」まだギリギリ冷静(((^^;)
おいちゃん「いやでも、もうご飯だから」
さくら「さあ、食べましょう」
いち早く芋の煮っ転がしを食べる満男。
寅「博はどうしたんだ博は」
さくら「もう…、帰ってくるでしょ」
寅「だったら待っててやれよー。亭主だろ、おまえのー」
さくら「うん…」
博の声「お疲れ様ー」
振り返るさくら。
博、工場の階段で
博「お疲れ様ぁー…パチンコか、フフ」
工員「はい、へへ」
さくら「あ、帰ってきた」
寅「おまえたちのためにああやって真っ黒けになって働いてるんだから
えー、大事にしてやれよさくら」
さくら「はい」
庭で博の大声
博の声「トラ!」
寅「はい…」反応するよネエ(^^;)

博の声「なんだこんなところに糞してぇ!!」
出た〜〜〜〜ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
寅、つい自分の股を見る(^^;)

最高の演出!山田演出に座布団三枚!

博怒りながら戻ってくる。
博「何べん言ったらわかるんだよ、トラのやつは!」
博、寅を見てガーンと青ざめる。( ̄□||||!!

寅「博、オレがいつ庭で糞をした?」オイオイ…ゞ( ̄∇ ̄;
博「ち、違います!」そら違うわな(〜〜;)
寅「第一な、いくら親戚でも、
おまえとオレとは血の繋がらない他人だぞ、え!
そのおまえにオレは呼び捨てになんかされたくねえな」
博「冗談じゃない、兄さんのこと呼び捨てにするもんですか。
あ、あの犬ですよ。あの犬トラって言う…」
博、さっき「今日からポチだぞ」って自分で言ってたろ┐(-。ー;)┌

寅「……」
周りを見渡して睨みつける。
庭で犬の鳴き声 ワンワン
おばちゃん、超わざとらしく寅から目線をそらして
おばちゃん「あら、同じ名前だね、
私ちっとも気がつかなかったわ」
確実に逆効果 ヾ(^^;)
さくら、寅を見ながら困っている。
おいちゃん「でも、おまえ犬のほうはカタカナだろう」
意味ねええー ヾ(^^;)
おばちゃん「あ、そうねえ、寅ちゃん漢字だものねえ」
悪あがき…ヾ(^^;)
おいちゃん「そうそう、と.ら.じ.ろ.う…」
もう地雷踏んでるって…ヾ(ーー;)
と無意味にお膳に指で字を書く。
寅「ヘタな芝居見たかねえよ!」
びびり顔が引きつるおばちゃん。
時が一瞬止まる。
おばちゃんひきつっているね(^^;)

寅「わかったよ、オレと同じ名前を犬につけて
トッゥリャ!トゥラ!
ぶったたいたり、蹴っ飛ばしたりしてたんだろ!」
完全な被害妄想((((^^;)
さくら「お兄ちゃん違うのよ」
寅「なにィ!」
さくら「寅ってつけたのは私たちじゃないのよ」
さくらいろいろ言い訳。
寅「誰だ!どこのどいつなんだ!そいつは」源ちゃん源ちゃん(^^)
さくら「誰だかわかんないのよ」源ちゃんをかばうさくらでした。
さくら「お寺で…うろうろしてるのをね、
誰からともなくトラトラって呼び出してね、
そのうちなんとなく家で
飼わなくちゃいけなくなっちゃったのよ」
おいちゃん「もう捨てちゃえその犬」
おばちゃん「そうだよね。そんな犬かわいがらなくたって、
ウチには寅ちゃんという犬が…、
…いえ、人間がいるんだもんね…」
おばちゃんって…Σ(|||▽||| )
と、下を向きシュンとなる。
おいちゃん「そ〜うそう」と、言って寅をチラッと見る。
チラッ…
→ 
普通この場面では絶ッ…対間違わないよおばちゃんん(TT)
寅「……」

寅、おばちゃんを睨む目が超怖い。

寅「…おばちゃん、
おばちゃん「はい…」と小さくなっている。

寅「今なんて言ったんだい?えー、
よっぽど人をバカにしてなきゃ
言えないぞそのセリフは」正しい(^^;)
一同沈んでしまう。

おばちゃん「どうしてだい…」たじたじ…((((−−;)
寅、ぶすっ
今日はおばちゃんのボケ
「鯉のぼり」「トラ」「犬」の3連チャン大活躍。
タコ社長に並ぶ勢いだ。(^^;)
さくら「ねえ、もういいかげんにして、ご飯食べない?
おつゆが冷めちゃうから、ね」
寅、ぶすー。。。
そこへ、お約束のタコ社長やっぱり登場(((((((( ̄▽ ̄;)!!
ああ…万事休す
チ〜〜〜ン…な〜む…(T人T)
社長「トラ!いるかい?
トラ!トラトラァ!
魚の頭持ってきてやったぞぉ!」
博、ガクッとこけてしまう。
めったにない前田吟さんのギャグ。
寅、プッツン切れて、
猛然と台所に下りていく、
おいちゃん咄嗟に止めるが間に合わない。
寅、社長を押しのけて
おばちゃん「ちょ…」
寅「てめえまでオレのことバカにしやがるのか!このヤロウ!」

押された社長、怒って
社長「なにしゃがんだよ!」
タコ社長、なぜ寅が怒っているのか分からないまま
とりあえず体が反応して応戦(^^;)
寅野菜やジャガイモを投げまくる。
社長、なべの蓋を盾にして受ける。
凄まじいまでの大喧嘩になってしまう。
博「社長やめてください!」
さくら「お兄ちゃん!」
みんな「やめて」と叫んでいる。
寅「ちきしょー!」

シリーズ中でもかなり激しい喧嘩。っちうか、
寅が一方的に野菜を投げて攻撃していた。
最後は何もあたってもいないのに
なべの蓋がパーンと後ろに吹っ飛ぶ。念力じゃ!( ̄▽ ̄;)!!
釣り糸作戦成功

寅「ちきしょう!このやろー!!
バカ!タコ!てめえまでこのオレのこと
バカにすんのか!!」
ここは、前と寅のセリフがダブっているね。
おいちゃん「やめろ寅!お前が悪い!
」
ひょえ???なぜ(OO;)

寅、おいちゃんを睨みつけて
寅「なにい!?
どうしてオレが悪いんだ!!」うん(−−)

おいちゃん「悔しかったらな、もっと尊敬される人間になれ、
そうすりゃ誰もあの犬にトラなんて名前つけやしねえ。

それをなんだ。いい年をして、嫁ももらわねえで
フラフラフラフラしてりゃ、
まるで野良犬じゃねえか」
さくら「!!」
おいちゃん…言いすぎ…(−−;)

さくら、その厳しい言葉に驚き、おいちゃんを見る。
いつも心配している身内しかいえない切ない言葉でもある。
寅、悔しくて悲しくて…
寅「…、そうか…、
それを言っちゃおしまいよ」
さくら「…」
寅「オレは出て行くぜ。さくら、あの犬っころに
せいぜいうまい餌でも食わしてやってくれ」

かばんを持って外へ出て行く寅。
かばん二階に持って上がってなかったんだね。
さくら追いかけて店先へ
なぜか犬のトラもついてくる。
店先で犬のトラをなでている寅。

さくら「お兄ちゃん…」
さくら「お兄ちゃん…満男にお土産まで持って帰って来てくれたのに,
こんなことになっちゃって…」
寅「今度の節句にもし帰ってくるようなことあったら、
こんなでっかい鯨みてえな鯉のぼり勝ってくるよ」

メインテーマが緩やかに流れる。
出て行く寅。
なすすべもなく見送るさくら。
トラをだっこしているさくら。
ああ…今回も一泊もしなかったね寅のヤツ…。
おばちゃんしくしく泣きながら
おばちゃん「だからポチに変えた方がいいって
言ったんじゃないか、うううう」
今日からポチにするって、
昼間博が宣言していただろ、
忘れたねおばちゃん。そして当の博君も。
転げているジャガイモを博に手渡しするおばちゃん。
今回もまたまた寅は悪くない。
寅の普段のいい加減な言動やフーテン気質を
苦々しく思いながらも抑圧していたおいちゃんの
深層心理が回帰したのだった。
第16作「葛飾立志篇」でもおいちゃんのこの手の発言があった。
身内と言うのは自分ごとのように心配し、愛し、執着するがゆえに、
時として他人なら絶対言わないようなとても残酷なことを言うものだ。
瀬戸内海 連絡船

穏やかにこの作品のテーマ曲が流れる
寅と一緒にお遍路さんたちが連絡船に乗っている。

近くでお遍路さんたちが世間話。
遍路さん「今度な、天台宗の和尚さんと一緒におまいりに行きます」
伊予の小さな港町で連絡線から降りる寅。
丘の上の神社 海の祭り
私は本編をアップした後もこの啖呵バイの場所が分からなくて弱っていたが、
昨日(7月14日)、4年来の深いお付き合いをさせていただいている
三重県にお住まいのK.Nさんからの貴重なロケ地情報が入った。
この啖呵バイをしている神社が
『愛媛県松山市の興居島の厳島神社』だということがわかられたのだ。
K.Nさんは、以前松山市周辺を写真撮影でご旅行されたことがあるため、
土地勘が働き、効率よく探されたとのこと。
そのあとなんと長距離電話で現地の役場で確かめていただき確実なものと
なったらしい。このロケ地探しの顛末は
7月16日アップの『寅次郎な日々367』で紹介します
興居島(ごごしま)
愛媛県松山市の興居島の厳島神社
啖呵バイ
今回、寅が売るのは『長靴』

寅「赤い赤いは何見て分かる。
赤いもの見て迷わぬものは
木仏、金仏、石仏、
千里旅する汽車でさえ、
赤い旗見てちょいと止まるっていうじゃないか。
さ!最新は最後のマケじまい、
赤い靴から、白い靴、黒い靴から、黄色い靴、
色とりどり全部負けちゃおう!ね!どう
物の始まりが一ならば、
国の始まりが大和の国、
島の始まりが淡路島、
泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、
助平の始まりが小平の義雄と!
さあ、どうだ!ね!
今日はうんとマケちゃうよ!ね!
本来ならば高いものだけどそんな高いこと言わない。
さー!四つマケちゃおう!
いったいこんな片田舎で長靴なんてかさばるバイネタ、
誰がどうやって寅に渡したんだ!???
それを言っちゃあおしめえよってか…(^^;)
花火が上がっている。
厳島神社の下 興居島 泊港
港に大漁旗を掲げた漁船が何隻も停泊し、日章旗も掲げている。
興居島 泊港
倉庫 【共撰】 柑橘の共同撰別倉庫
★小平義雄
昭和21年。のべ10人に及ぶ婦女暴行殺人を犯した。
当時世間は震撼した。「男はつらいよ」で寅が切る啖呵バイに
使われていることからも社会に与えた影響の大きさが窺える。
小平は昭和24年10月5朝9時49分、宮城刑務所で死刑となった。
執行直前には饅頭を3つ食い、念仏を唱えていたという。
愛媛 伊予大洲
肘川の見える小高い丘の墓地

大洲の亡き夫の墓参りを終えて
明治の町並みが残る町の『お花はん通り』を歩く鞠子さん。
昭和41年のNHK朝のテレビドラマ「おはなはん」のロケが
行われたことからこの名前がついた。
もちろん「お花はん」のヒロインは考古学を研究する筧礼子さん!
主題歌を歌うは諏訪さくらさん!

鞠子のテーマが流れる。
肱川河畔
夕闇迫る肱川河畔で鵜飼舟を見ている鞠子さん。
日本三大鵜飼のひとつ

肘川河畔 伊洲屋旅館
帳場の電話に出る寅

寅「はいはい、こちら伊洲屋(いずや)旅館でございます。
女将「すんません」
寅「はいはい、はい京都の玉木さん?」

女将さん「今夜は鵜飼(うがい)に出かけてなさるけんど」
寅「今夜は『うがい』で…でかけてま…す。はい、はい」
電話切って。
寅「またあとで、電話するってさ」
女将「まあ、悪いねえ、気安く使うてからに」
寅「いいよ」
って笑いながら、館内の電話回線を上に上げる。
寅は不思議がって女将にこう言うのである。
寅「『うがい』か…。しかし変わってるね、その客は、えー、
わざわざ『うがい』しに表に出かけて行くなんてさ。
そこの洗面所の奥でもってガラガラってやればいいじゃねえか、ねえ」
寅ギャグ出ましたヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
女将さん「その『うがい』じゃのうて、ほら川に舟浮かべて…」

寅曰く「あーあーあー!浦島太郎みたいな格好して、
アヒルの首にあのゴムテープくっつけて
この引っ張ってるやつか」
女将さん「ハハハ!」
寅「あれだろ」

女将さん「ハハハ、アヒルじゃのうて、鵜という鳥ぞな」
寅「あ、ウって鳥か、あれは」
女将さん「アハハ、アハ!」大うけ(^^)
寅「あ、なるほど、大きな魚飲み込むから
つっかえて『ウー!!』って言ってるわけだ」
一生バカ言ってろよ、…ったく ┐(- ー;)┌
女将さん「ハハハ」と笑いが止まらない。
とまあ、こういうバカなギャグ。
ところで、「男はつらいよ」が取り持つ縁で
親しくなった神奈川県に住む友人のT.Y氏と
先日メールのやり取りをしている中で
彼が教えてくれたのだが、鵜には、河鵜、海鵜、姫鵜と3種類あり、
鵜飼の鵜というのは川鵜ではなく、多くは海鵜を使うらしいのだ。
一番体が大きい海鵜が大きな魚を飲み込みやすいからということらしい。
ここからちょっと脱線。
先日の「寅次郎な日々」にも書いたが、
実は、本編よりずっと前の
脚本第2稿の段階では「鵜飼」と「うがい」を間違えるのはなんとさくらなのである。
つまり寅がとらやにいるさくらに伊洲屋旅館から電話するのである。
しかし、さくらが「鵜飼」のことを聞き間違えるのも無理はないのだ。
それは伊予では鵜飼(うかい)のことを「うがい」とも発音するために
余計に混乱してしまうからなのだ。
脚本第2稿ではこうである↓。
伊洲屋旅館 帳場
寅さくらに電話をかけている。
寅「この間のこと謝っといてくれよ。オレもつまんねえことにこだわってさ」
とらや 店
さくら「いいのよ、そんなこと。気にしてないわよ、誰も。
ねえ今どこなの?遠い所?オオズ?オオズってどこ?」
伊洲屋旅館 帳場
寅「伊予の大洲だよ、四国だ、四国。
いい所だぞ、おまえ。
宿の前に川が流れててな、
座敷から鵜飼見ながら一杯やろうってとこさ。
え?鵜飼だよ、鵜飼」
とらや
さくら「『うがい』?どうしたの、風邪でもひいたの?」
伊洲屋旅館 帳場
寅「バカ!その『うがい』じゃねえんだよ、
ほら、浦島太郎みたいな格好して、アヒル泳がしてるのがあるだろう。
あれよ。―おい、電話代高いから切るぞ。分かった分かったそのうち帰る」
受話器を置いてため息をつく。
寅「まったく物を知らない女だなあ…」
女将「あんた、アヒルじゃのうて、鵜という鳥ぞな」
寅「あ、鵜って鳥か、あれは。
あ、なるほど、大きな魚飲み込むからつっかえて『ウー!!』って言ってるわけだ」
女将さん「ハハハ!」
そのあといろいろあって―。
夜、殿様の屋敷から再度今度はさくらのアパートに電話している寅。
その時もさくらはまだ分かっていないらしく
さくらのアパート
さくら「何言ってんのか分かんないわよ、
『うがい』だの『トノサマ』だのって…」
と、首をかしげているのである。
ひょっとしたらさくらは根本的に「鵜飼」を知らないのかもしれない…。
もちろんあんな特殊なもの知らなくたってちっとも恥ずかしくはないのだが、
ちょっと意外だったことも確かだった。
結局、山田監督は現場で試行錯誤の後に、
やはり寅が鵜飼ギャグの『ボケ』を一気に全部引き受けたほうが面白いと思ったのである。
こうして本編ではさくらに鵜飼ギャグでのボケの役は回らなかったというわけだ。
ちなみに伊予の肱川鵜飼は日本三大鵜飼のひとつ。
さて、長く脱線してしまった。
物語に戻りましょう…。
そんなバカ話を寅がしているところへ…
同じ旅館に泊まっている鞠子さんが墓参りから帰ってきた。
鞠子「ただいま」
女将さん、鞠子さんに
女将「お客さん」
鞠子さん「はい」
女将「お食事はお風呂の後になさるかな?」
鞠子さん「はい、そうします」
と、二階へ上がっていく。

どことなく元気がない。
寅、階段のほうを見て
寅「ありゃ、一人旅かい?」
女将「ええ、男の人ならええけんど、女の、それも若い娘さんの一人は
なんか、気になってなあ…」
寅「ん…」
寅「さっき、川っぷちでちょっと見かけたけどなあ…」
女将「ほう」
寅「ありゃあ、なんかわけありだなあ…」
女将「はあー」と頷いている。
寅「女将さん、せいぜい優しくしてやんなよ」
女将「はいはい」と頷く。
実は脚本の第2稿では、寅が小船に載せてもらうシーンや、
河畔で鞠子さんとすれ違うシーンがあるのだ。
寅「さて、じゃ、オレも飯にするか」
と、立ち上がる。
女将さん、谷よしのさんを呼ぶ。
谷よしのさんは今回は「おふみさん」という女中さん役。
第27作「浪花の恋の寅次郎」のマドンナと同じ名前(^^)
おふみさん「はーい!」
女将さん「車さん、お食事よ」
馴染み客にしては、寅さんと言わないで、車さんと言う女将さん。
親しき仲にも礼儀ありって感じなのかな。
おふみさん「へえ」
おふみさん廊下に出てきて
おふみさん「お客さん、鮎は別料金になりますけどどうしますか?」
寅「そうだね、せっかくだからもらうか」
おふみさん「へえ」

寅「あ、女将」
女将「はい」
寅「あの娘にも鮎を一皿やってくんねえか。オレからだって言って」
女将「…はい」
寅「旅先じゃ、なんでもねえ親切でも心にしみるもんだからよ。頼むぜ」
女将「ありがとございます」と、お辞儀。
女将さんおふみさんに
女将「萩の間にも鮎をつけてな」
おふみさんの声「へえ」
萩の間
おふみさんが夕食時、萩の間の鞠子さんに鮎とお吸い物を持ってくる。
蛙の鳴き声が遠くから聞こえる。
おふみさん「失礼します」
と、ふすまを開けて
鞠子さん「はい」時刻表を書き写している
おふみさん「お待ちどうさん」
鞠子さん「すみません」
鮎の塩焼きをお膳に置いて、
おふみさん「この鮎はお隣のお客さんが召しあってくれと言われまして」
鞠子さんは「あらー…、どなた?」と戸惑いながら聞く。
谷さん「寅さん言うて、年に一度くらいはみえる方です」
谷さんが、「寅さん」というセリフを言った
記念すべき最初で最後のシーン。

鞠子さん「どうしよう…」
なんの脈絡もなくいきなりだもんなあ…ちょっとねえ…(^^;)
カメラは窓の外から隣の寅の部屋に移動していく。
寅、耳がダンボになって声を聞いている。
鞠子さん「ちょっとお礼に行ってくるわ…。こっちのお部屋?」勇気あるね(^^;)
おふみさん「へえ、そうです」
寅、急いでお膳の前に座り、なにげにお酒を杯に注ぐ。嬉し恥ずかしで緊張するね寅(^^;)
鞠子「ごめんください」
寅「…はい!」と、キップよくパーンとしゃべる。
寅「どうぞ」
と窓のほうを向いたまま。

鞠子さんふすまを開けて
鞠子さん「失礼します」
寅「あ、さ、どうぞ、お入いんなさい」
鞠子さん「はい」
と言って、部屋の中に少しだけ入る。
鞠子さん「あのー今女中さんに伺ったんですが、
知らない方にあんなことしていただいて…わたくし…」ほんと。
と、戸惑っている。
寅、ちょっと照れながら
寅「いやいいんだよいいんだよ。
さっき、玄関で見かけたらね、
なんだかお疲れのようだったから
名物の鮎でも食べて精つけてもらおうと思ってね。
遠慮するこたあねえんだよ、食べなよ」
と、さらりと言う。

鞠子さん、ちょっとリラックスして
鞠子さん「そうですか、ご親切にありがとうございます」
寅、笑いながら頷く。
寅「どっから来なすったね」
鞠子さん「東京です」
寅「オレも東京だよ。へー、東京のどこ?」
鞠子さん「堀切です」
寅「菖蒲園の?」
京成の「堀切菖蒲園」駅だね。
大川弥太郎のアパートがある「京成関屋」の隣の駅。
そこから下って「高砂駅」で乗り換えたら柴又。
鞠子さん「ええ、あそこのすぐ近くの団地に…」青戸団地
寅「ああ、じゃあオレんところの近くだ。
オレ京成でずーっと下ってきてね、
柴又という駅で降りて」
鞠子さん「はい」
寅「ずっとまっすぐ行くと帝釈天っていうのが」
鞠子さん「ええ!行ったことあります。
参道があって、お団子屋さんがずらーっと並んでて」
寅「フフ、オレんとこ団子屋だよ」決まったね、ストライク(^^)
鞠子さん、表情が柔らかくなって
鞠子さん「えー」

寅「とらやってんだ。
オレ、寅次郎ってんだけど、
また行くようなことあったら寄んなよ。
オレに聞いたって、な。
まあ、もうろくじじいと歯抜けばばあで、
ろくな挨拶もできねえ連中だけど、気はいいからさ」
鞠子さん「ありがとうございます、
今度きっと寄らせていただきます」

寅「うん」
鞠子さん「じゃあ、失礼いたします」
寅「うん元気出してな」
鞠子さん「はい」と言ってふすまを閉める。
寅、思うことあって帳場に電話をする。
寅「おう、オレだけどね、
あの、ここの名物の川魚の佃煮ってあったろう。
あれをな、隣の娘さんに土産に
持たせてやりてえんだけどさ、ん、
いや、適当にみつくろってやってくれ、
うん、じゃあ頼んだぜ、ん」

電話を置いて寅「よし…っと」と言う顔。
満足気に酒を注ぐ寅。
蛙の鳴き声。
それにしても過剰とも思える親切は、どうしたことだろうか。
確かに少し沈んでいる娘さんは気になるところだが…。
マドンナが美人だからと言ってしまえばそれまでだが、
そういうところが寅のいいところかもしれない。
人の悲しみや淋しさを察知する人生の玄人なのだろう。
鞠子さんが隣の部屋に戻った後、
窓の外を蛍が舞っている。
寅、ハッと気づいて、
壁向こうの鞠子さんにそっと呼びかける。
寅「娘さん、外見てごらん…。蛍だよ」

鞠子の声「あらあ、ほんと…」
窓にすわり蛍を追いかける寅。
涼しい風を受けながら、しみじみ蛍を眺める寅だった。

なんでもないような、
それでいて心が柔らかくなるような
そういうちょっとした出会いがあったのだ。
寅は色恋がらみの下心だけで
いつも動いているわけではない。
やっぱり人の心というものを知っているのだ。
翌朝 朝霧にけぶる肘川

小学生たちが古い町並みの中を登校していく。
伊予大洲駅
国鉄 予讃本線(よさんほんせん)
現在は予讃線。
予讃線(よさんせん)は、
瀬戸内海と宇和海に沿って香川県高松駅から愛媛県松山駅を経て、
愛媛県宇和島駅に至る四国旅客鉄道(JR四国)の鉄道路線(幹線)。
向井原〜内子間、新谷〜伊予大洲間の支線を持つ。
ごろう 五郎駅
いよ ひらの 伊予平野駅
予讃線 松山行きのディーゼルが止まっている。
出発を告げる汽車のベルが鳴る。
アナウンス「次の停車駅は五郎五郎でございます」
東京へ戻る堤鞠子さんだった。
窓から外を見ながら物思いにふけっている。
あの寅とのささやかな一期一会と
夜空に飛び交う蛍を思い出しているのかもしれない。

大洲城址
肘川を見下ろす眺めのいい場所
宿からの伝表を見ながら財布の中を確かめている寅。
宿で鞠子さんに鮎(600円)&お土産の佃煮(1500円)をご馳走したり、
お土産を持たせたりと散在したので
財布の中身がスッカラカンになって困ってしまう寅だった。
寅「鮎の塩焼き六百円!?
そんな高いんだったら最初から言えやいいんだ。
上手くもなんともありゃしない」ぶつぶつぶつ
とぶつぶつ。

寅「あ!佃煮千五百円!…、あの女将も気が利かないなあ、
もっと安いものにしてくれりゃあいいのに…
金がいくらあったって足りない…」ぶつぶつぶつ
小銭が財布の中から地面に転がり落ちる。
寅「あ。あー、五百円一枚か…」
しかし、山田監督って五百円好きだねえ(^^;)
寅「まいったなあ…こりゃあ。あと小銭ばかりだよ…」
と、かばんの上に財布と五百円札を置いて、小銭を拾う寅。
その時不運にも一陣の風。
三味線の音
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺン
お札はひらひら飛んでしまう。
寅「あああああ!!おい!あ…」