男はつらいよ/予告篇集

 もうひとつの物語 .

No.1




第45作 













もうひとつの「男はつらいよ」  ― 3分間に賭けた映画人たち ― 




 4日に1作品のペース。全48作、順不同気まぐれ選択でいきます 


松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「2分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告篇も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。

特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。

しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本篇の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私がその『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。

なお、予告篇の雰囲気を壊さないためにも、あえて本篇の物語の補足をここでは入れない。感覚的に見ていただきたい。
予告篇を見る時点では観客は本篇を知らないからだ。予告篇ゆえどんどんカットが飛んでいくがそれを右脳的に感じていただければ、
と思っている。あくまでも予告篇は「抽象芸術」であり「ジャズ」なのだから。

予告篇はたった2分。構成の妙もさることながら、どの予告篇もキラッと光るカットが一つか二つ入っている。短いゆえにかえってそれが
印象深く燦然と輝くカットとなるのだ。
そのそれぞれのキラッと光るカットを中心に本日から9ヶ月ほどで全48作を紹介していくつもりだ。

ただ、予告篇なので、順番に第1作から始めないで、私の気まぐれ的な選択により、ランダムにその日の気分でアップしたい作品を
紹介していこうと思っている。だいたい4日に1作品のペースで更新していく予定だ。これもだいたいで、気分が乗ったら3日に
1作品アップしたり、仕事が忙しい期間は5日になったり、日本滞在中(1ヵ月半)はやたら忙しいので7日に一度になったりすると思うが、
基本的には4日に1作品はアップしていきたい。



それにしても「篇」と「編」。どちらを使おうかいつも迷う。一応最近は「編」の方が圧倒的に多いが、
今回の予告編は、松竹さんの記述を見習って、本来の使い方である「篇」を採用してあえて「予告篇」とした。







本日(2005年7月24日)は、まず1回目





第45作「寅次郎の青春」 予告篇 






この予告篇の一番の見所はズバリ、
一番最初の25秒間。



『松竹富士山』の映像とともに、アカペラで
蝶子さんの美しい歌声だけが聞こえてくる。

その歌は『港が見える丘』。



その昔リリーも歌っていたあの歌が再び蝶子さんによって蘇る。

なんとも美しいスタートだ。


そして、そのあとの寅とのデュエットの映像に重なっていく。
このデュエットが25秒間続く。


この作品の予告篇はこの最初のカットにつきる。
忘れがたいすばらしい編集だ。もうこれだけで胸が熱くなる。









『松竹富士山』の映像


松竹映画





『松竹富士山』の映像のまま、アカペラで蝶子さんの歌声が入っていく。







蝶子「♪あなたとふたりで





                 この時点でもう蝶子さんの歌声が聞えてくる

              






 来た〜丘〜は、…






ここではじめてふたりが映る。


宮崎県串間市 石波海岸の南、

幸島(こうじま)の浜







              




               




寅も歌に入って



寅と蝶子「♪港が見える丘〜…。

  色あせた桜ただひとつ、

  さみしく咲いていた〜






              






寅の涼しい目。





蝶子さんの可愛い日傘。


肌色のカーディガン




お互い目を見て微笑みながら歌っていく。





               


                 





そしてまたふたりとも海を見る。




その向こうの幸島(こうじま)がすぐ前に見える波打ち際で
戯れる満男と泉ちゃんが見える。







はしゃいでいる泉ちゃんを見ている満男。






                 





                  


タイトル 「はつらいよ寅次郎の青春


日傘のアップが入った構図が上手い。


                     


                








ここからいきなりテンポよく、永瀬正敏の歌声が入る。



夜の油津(あぶらつ)みなと祭りコンサート


満男「
魚くさいなあ〜、合わないよ魚の臭いは

泉「いいじゃない、みんな楽しんでるんだから。
  つまらなかったら先に帰ってたら


満男「いや…泉ちゃん、オレそんなつもりじゃ…」 ブツブツ…イジイジ






                







日南海岸


永瀬さんの歌が引き続き流れる


日南海岸を車で走りながら竜介と親しげに話す泉ちゃんを
後ろで見てふて腐れる満男。







                









飫肥(おび)城址

大手門近くの階段





蝶子さん振り返る


寅が、「ああ…アア…

と石段のところで転んでいる。



蝶子、驚いて傘放り投げて、飛んでいく
泉ちゃんも駆け寄ってくる。

蝶子「大丈夫ね!?寅さん

寅「イテテ…

蝶子「痛むとね

泉ちゃん、足にさわろうとする。

寅「あ!ああ―っ!!イタタタ…






テンポよくメインテーマが流れる。




寅、手で泉ちゃんの手を追い払う。
この仕草がなんとも笑える。

寅「今、ここ…折れたかもしれない…
 
ボキィ!!と音がしたから…
 ヾ(- -;)おいおい




蝶子「え〜〜!? (^^;)驚くよねえ、そら。







                








再び最初の石波海岸の南、幸島の浜




寅「何怒ってんだろなー!?何言いてんだか
 さっぱりオレにはわかりゃしないよ。

 オレェ…なにか…悪いこと言ったかな?


泉ちゃん、驚いて



泉「おじちゃま、気がつかないの!?…愛してるのよ




メインテーマが流れ始める。




寅「誰を…?


泉「おじちゃまをよー!


寅「誰が…?


泉「あのおばさんがよー!







                 






蝶子、もう一度車で引き返してきて

手で、車に乗るように合図する。



メインテーマのもと、倍賞さんたち
キャストが紹介されて、







最後は



青島神社でバイをする寅とポンシュウが映り、
警官に止められた後、

、宮崎青島の洗濯岩の弥生橋の上で
スーパーボール(映画の中では
ガッツボール)を
こぼしてしまう寅たち。



カバンが足に当たって痛がる寅(^^;)

その他のキャストもクレジットで紹介されていく。


                 





最新45作のクレジット

          
日南市油津(あぶらつ)の「港祭り」の風景とともに
文化財の堀川橋が映り「原作.監督 山田洋次」のクレジット。






                 








もう一度、青島と鬼の洗濯岩が映って、

はつらいよ寅次郎の青春」のタイトル。

子供たちが遊んでいる。







                 








う〜ん、やっぱりこの予告篇は
出だしの蝶子さんと寅のデュエットが秀逸だ。
日傘の使い方が上手い!


なお、予告篇では出てこなかったが、本篇では
満男と泉ちゃんの切ない別れの名場面がある。








蝶子の住んでいる油津(あぶらつ)は、まぐろ漁の港として、
また、物資が出入りする港町や商人町として栄えてきた。
町を歩くと、赤レンガの倉庫などがあり昔ながらの情緒が残っている。


串間市市木地区の石波海岸は、
見事な孤を描いて長く延びる石波の砂浜。「日本の渚百選」にも選ばれている。
その南にある幸島(こうじま)は日本猿生息の無人島。



飫肥(おび)城は、16世紀から明治初期まで続いた伊東氏5万1
千石の城下町にある城。







「寅次郎の青春」予告篇終わり

予告篇 上映時間:2分06秒 


                 

今回のアップは2005年7月24日でした。
次回作品アップは4日後の7月28日頃です。





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