2026年8月3日
寅のために泣いてくれた唯一無二のマドンナ 坪内夏子さん

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もうだいぶ15年以上前、
昔、お世話になっている寅さんファンのT. Sさんから面白いメールを頂いた。
T.Sさんは毎回面白い発見をしてはメールで知らせてくださり、私を唸らせてくれていた。
その時の内容は坪内夏子さんとその新郎さんのことだ。
佐藤オリエさん扮する坪内夏子さんは、テレビ版「男はつらいよ」からの寅のマドンナだ。
テレビ版の時も同じく坪内散歩先生のお嬢さんの坪内冬子さん役だった。
で、直後の映画版では第1作に坪内冬子さんの名前が使われてしまったので、
第2作の今度はテレビ版と同じ設定ながら名前が変わって坪内夏子さんとなったわけだ。
ドラマ全26回を通してただ一人の寅の愛しい憧れのマドンナを演じ通した佐藤オリエさんだった。
寅の自分への恋心に対して真正面から対峙し、寅の気持ちに涙を見せた唯一のマドンナだった。
そして第2作「続男はつらいよ」では胃痙攣で入院した寅の主治医だった藤村薫(山崎努さん)と恋仲になる。
T.Sさんは、この物語のラストで京都に新婚旅行に出かけた夏子さんが
新郎の藤村さんを「努さん」と亡き父親につぶやくように言っているのを今から数ヶ月前に発見された。
実は…、私は、夏子さんが「努さん」と呼ぶことに違和感を感じていなかった。
なぜならば夏子さんがそう呼ぶくらいだから、新郎の名前は「藤村努」だと勝手に決めつけていたからである。
また山崎努さんが演じていらっしゃったことも「努」に違和感を覚えなかった理由の一つだ。
ところがT.Sさんは当時の松竹の設定が「藤村薫」だということを公式ホームページでご存じだったのだ。
不思議に思われたT.Sさんはなんと松竹にメールでこのことを直接聞かれたのだ。
そして待つこと1ヶ月、松竹さんから遅まきながらT.Sさんに回答のメールがあり、
「当時の台本では設定同様「藤村薫」となっていた」
「ラストのシーンではおそらく佐藤オリエさんがつい「努さん」と言ってしまったのを、
当時のスタッフは誰も気づかず、OKを出してしまったのではないか…」
という内容が送られてきたそうだ。
もちろんこれらは「あくまでも推測で、当時のスタッフが残っていないので正確なところはわからない」
ということらしい。
これは私にとっては実に面白い推測で、当時の映画作りの在り方からしていかにもありそうなことだ。
T.Sさんのメールに刺激され、私は第2作のラストにある夏子さんのセリフを確かめたくなった。
そこで、私の持っている当時の『キネマ旬報』に載った『脚本第2稿』でさきほど見てみると
夏子「そうなのよお父さん、私今京都にいるの。薫さんと二人でね。」
となっている。
このように脚本でも設定でも「薫」なので、あきらかに現場で名前が変わってしまったのは間違いないだろう。
山崎努さんが演じる藤村薫さんを、つい「努さん」と呼んでしまった佐藤オリエさんって、私は大好きだなあ(^^)。
あ、山田洋次監督にこの真相を聞いても無駄ですよ。
あの方、そういうこと何も覚えてない&興味無いですから(^^;)
「へえ、そうだったっけ〜〜」ですから(((^^;)
追記 2026年8月5日
僕の長年の寅さん友達の名古屋の中島さんがネット上で調べられた。
それによると、人名辞典の中には「薫」と書いて「つとむ」とも読むと記載されていることがあるそうだ。
いわゆる「名のり読み」というやつだ。
ただし、「名のり」にのみ一部で使われているので、
現在の役所での戸籍担当では出生届の時に説明を求められることがあると思われる。
中島さんのこの推測はとても説得力がある。
そうなると佐藤オリエさんの「つとむさん」セリフは間違っていなかったということになる(⌒∇⌒)
きっと、これが正解だ!
もちろん、それらこれらとは関係なく、この時の寅を見つめる佐藤オリエさんのあの瞳こそが
最も『マドンナ』の名に値するものであることは揺るがない。
この長いシリーズのマドンナの中で、
寅に心配してもらい、寅に愛を注いでもらった「乾いた心に寅の愛を渇望するマドンナ」は、リリーをはじめ、千代さん、ぼたん、綾さん、
早苗さん、ふみさん、光枝さん、かがりさん、朋子さん、りん子さん、聖子さん、蝶子さん、葉子さんなど、それはもうたくさんいるが、
坪内夏子さんだけが唯一、寅を心から心配し、寅をずっと見守り、愛を寅に向けて差し出した母なるマドンナだったのだ。
もちろん夏子さんは寅に男性としての愛情はないが、一緒に遊んだ幼馴染として、父親の大事な教え子として親しみを強く感じているのだ。
そして優しい声で寅のことを「寅ちゃん」と呼ぶのだった。
このシリーズで、
相手に惚れるということと、親しい相手に無償の愛を豊穣に注ぎ込むこととは別物だと僕は思っている。
寅に助けられ、寅に愛をもらいたがる「困ったちゃんマドンナ」「助けて寅さん」ばかりが溢れるこのシリーズの中で、
唯一寅のことを愛の目で真正面から見つめたマドンナが夏子さんだった。
京都のラブホのグランドホテルで寅のために泣いた夏子さんを僕は忘れないし、忘れたくない。

そしてあの、京都三条大橋袂でのこの映画のラストシーン。
寅が母親の菊と仲睦まじく歩いていくその後ろ姿を見つけ、そして声をあえてかけないで寅を見つめ続ける夏子さん・・・
あんな深い慈愛の目で寅の背中を見つめた女性は、肉親は別として、あとにも先にも夏子さん以外誰もいないのである。
寅は夏子さんにあんなふうな眼で彼の背中を見つめられて本当に幸せ者だと僕は思うのだ。

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