必ず自分の居場所に戻るであろう紅奈々子。
第21作「寅次郎わが道を行く」 紅奈々子

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時としてこの世にはコーリング(CALLING)と言ってもいいような天からの仕事を言い渡された人が存在する。
紅奈々子はさくらの幼馴染、同級生。若い時から才能が開花し、今やSKDの花形だ。
しかし、そんな順風満帆に見える彼女も結婚のことで悩んでいる。
長い間付き合っている恋人の宮田隆が、結婚を迫っているのだ。
隆は同じSKDのスタッフ(照明係)。奈々子はこのままSKDを続けるか、結婚して引退するかで悩んでいる。
結婚するとSKDを辞めるというSKDの過去の先輩方の慣例に順ずるのだろうが、
私にはどうしてこの二つのどちらかを奈々子が選ばなくてはならないのか当時もそして今も理解できない。
隆は子供が欲しいのだろうか?まさか奈々子さんに家に納まって家事をして欲しいなんて思っているのだろうか…。
いや、そんなことを隆は思わないだろう。
結婚するとSKDを辞めなくてはならないのなら、結婚という形式を取らないで同居をし続けるなり、違う劇団かソロでテレビ
を舞台にするとか、歌と踊りの道はひとつではないと思う。
もし私が隆ならいいアイデアがある。
同居しても(籍は入れない)奈々子にSKDの舞台を続けてもらう。
彼女の踊りを見ていろいろな人たちが明日も生きていこうと勇気づけられたり、元気づけられている、と
寅が言うように、どんなことをしても彼女のためにもみんなのためにも彼女には踊りを続けてもらいたいからだ。
たとえ踊りに切れがなくなってもSKDから出て、ソロで活動するという道もある。
そして隆が家庭に入って『主夫』をする。
もし万が一、実際の隆が仕事を辞めることを嫌がるなら奈々子さんだって嫌がればいいのだと思う。
この世界に彼女の代わりはいないのである。
まさか、隆は奈々子が舞台を捨てて家庭に入ることを望んでいるのだろうか?
もしそうだとするなら、いったい奈々子のどんなところが気に入って恋に落ちたのだろうか…。
奈々子はおそらく数年以内に、リリーのように家庭を捨て、歌と踊りをもう一度選ぶと私は
確信している。自分の才能を易々と捨てるわけがない。必ず後悔し再起を賭けるに違いない。
もうSKDには戻れないだろうからやっぱりテレビのドラマや違う舞台のミュージカルなどなど…。
女優の倍賞千恵子さんなんか2回結婚しているが、女優は当たり前のように続けている。
だから寅の言うことはもっともなのだ。自分が神様から与えられた才能は完全に開花させて
人生を終わらせなければならない。これは配偶者であり、奈々子さんをもっとも大事にしたいであろう
隆の人生における使命でもあるのだ。

本編
雨 奈々子の部屋
奈々子「私、後悔してるんじゃないの。これでいいとおもっているの。
だって私から踊りを取ったら何が残るの?一日踊りを休んだら体がうずうずしてくるのよ。
私ってそんな女なのよ。結婚なんかできる訳ないじゃないの、ねえ寅さん」
寅「分かるよ、あんたの気持はよく分かる」
奈々子「恋なんかするんじゃなかった・・・どうして私なんかに惚れたんだろうアイツ」
寅「男が女に惚れるのは、理屈なんかじゃねえよ」
奈々子「好きだったら何でそっとしておいてくれないのさ・・・どうしてこんなに苦しめるのさ・・」
寅「もう忘れろい、え、すんだことだよ。な、あんたには踊りがあるじゃねえか」
奈々子「大した踊りじゃないよ…」
寅「そんなこたないよ、あんたの踊りがどんなに素晴らしいか、あんたは分かんないだろうけども
大勢の人が、オレだってそうだよ、あんたの踊りを見て大勢の人がうっとりして、苦しい思いや、
つらい思いを忘れようとするんだい踊りを続けろよ、な、そのうちその男もきっと分かってくれるよ」

それでもやはり奈々子さんは隆を諦められずに結婚をすることに決め、引退を決意する。
寅は失恋し、旅に出る。さくらに旅立ち際にこう言うのだ。
夜 とらや 店
寅「さくら、オレはちょっと…商売思い出したんで旅に出るよ」
さくら「今…、奈々子から電話あった。お兄ちゃんにとっても悪いことしたって…」
寅「なに言ってんだい、どうってことないよ。あの子が幸せになればそれでいいんだから」
寅「ただ…」
さくら「ただ…、なあに?」
寅「踊りを止めたりしたら後悔するんじゃねえかなあ…、オレだったらそんなことさせねえ…」

さくら「………」

「寅次郎わが道を行く」のタイトルの通り、寅も私も奈々子には
『わが道』を『天から与えられた道』を生涯を通して歩んで欲しいと、切に願っている。
奈々子が踊りを選ぶのではない。踊りが奈々子さんを選んだのだから。
隆もきっと応援するはずだ。
上にも書いたが、
奈々子は必ず歌や踊りや芝居の世界に戻って来る。
私にはそれが目に見えるようにわかるのだ。
リリーが歌姫の世界に戻っていったように、紅奈々子も必ず自分の居場所に戻ると私は確信している。
