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イノさん と オグリキャップ


    


 田中 邦衛さんといえば俳優座が作った「若者たち」のあの長男。

 そして、生涯の代表作は「北の国から」の主人公の一人、純と蛍の父親の黒板五郎さんだ。
 何度見たかわからないほど見た。
 全話何度も見た。


 そして

 この男はつらいよシリーズで2回出演されている

 第7作奮闘編で、花子の母校でもある、津軽の田野沢小学校の教師福士先生
 そして第48作紅の花で、奄美の水上タクシー「デイゴ丸」の船長さん。



   





 しかし山田洋次映画の中では、

 ■映画「学校」でのイノさん。

 ■映画「息子」でのタキさん。

 この2役が出色だった。

 特に「学校」でのイノさん役は中邦衛さんの当たり役だったと言えよう。

 イノさんは東北の貧しい家庭に生まれ、妹が死んだことに責任を感じて東京に出てきた。
 日雇いの仕事を繰り返し、50歳を過ぎてようやく社員となったが、
 文字を知らないために車の免許も取れない状態だった。
 ある出会いをきっかけに夜間中学校を紹介され、クロちゃんに指導されながら

 文字を勉強するのだった。

 そして、夜間中学に通うようになって田島先生(竹下景子)にほのかな恋心を抱く役でもあった。


 そのイノさんがクロちゃんの授業で
オグリキャップと言う文字を書くチャンスを与えられたのだ。
 俄然目が輝くイノさん。もんの凄く力強いカタカナ文字「オグリキャップ」を黒板に書くイノさん。

 イノさんの競馬好きは筋金が入っている。


 そしてクロちゃんに「オグリキャップ」のことでしゃべらせてくれと願い出て
 ここからがイノさんの独壇場だった。




     
   




「年の瀬も迫った平成2年12月23日ー。

 夕闇迫る中山競馬場ー。

 第35回有馬記念。  


 パッパラッパアーー。



 さあ、最後の一頭がはいった。


 ゲートが開いた。


 一斉に飛び出す16頭のサラブレッド。


 第1コーナー・・・。


 第2コーナー・・・。 


 各馬 たて一列の長ーい展開だ。



 オグリキャップは6頭目の外。


 先頭はオサイチジョージだ。


 スロー・ペースに落としているーーー。



 第3コーナー・・・。


 第4コーナー・・・。




 いよいよ直線だ。 


 行けええー! オグリキャップ!!


 坂を上がったああー。 


 武 豊 のムチがはいった!!


 オグリキャップ出たー!


 出たー! 走れー! オグリキャップ!


 3冠クラッシックに出られなかった無念の名馬、悲運の名馬


 オグリキャップ!!

 各馬 皆 止まったようだ。

 オグリキャップが抜いて行くー。行くー。


 行けええー! オグリ!!  無念を晴らせええー!

 行けええー! 行けええー! 行けええー!


 やったー!! やったー!! 良くやったあああー!!


 オグリ! オグリ! オグリ!オグリ! オグリ! オグリ!」





      




 ようやく文字を覚え、最初に田島先生にラブレターを郵送する。

 恋にやぶれたイノさんは病に侵されていたのだった・・・。



 私は
田中 邦衛さんといえば このサイト的には 花子の福士先生。
 
 なによりも 北の国からの黒板五郎  そして、このイノさんを思い出す。

      




ご冥福をお祈りいたします。

合掌



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