『男はつらいよ おかえり寅さん』 を鑑賞してきました。






     







10月28日 六本木 EX THEATER ROPPONGI


東京国際映画祭 オープニング映画 『男はつらいよ おかえり寅さん』を
寅友の芥(あくた)さんのお誘いで鑑賞してきた。






     





まず、最初に40分ほどの舞台挨拶があった。
舞台挨拶の最後に私たちが撮影しても良い時間を与えてくれたので
このように撮影ができた。

もちろんホームページへの掲載もOKだそうだ。


     




舞台挨拶のメンバーは豪華だった。



この初日のレッドカーペットのメンバーがそのままこのスクリーン会場にやって来た感じだった。

山田洋次監督をはじめ、倍賞千恵子さん、吉岡秀隆さん、後藤久美子さん、浅丘ルリ子さん、前田吟さん、夏木マリさん、が舞台挨拶に登壇。
すい臓がんのため、10月24日に88歳で亡くなった女優・八千草薫さんの訃報を受け
山田監督は「先ほど聞いたばかりで、とても驚いています。僕ら世代の日本人にとっては、若い頃から憧れであり続ける方でした」と語っていた。

八千草さんは第10作「男はつらいよ 寅次郎夢枕」(1972)にマドンナ役で出演。
今回の「男はつらいよ お帰り 寅さん」にも当時の八千草さんの姿が2回も登場しており
「47年前の美しい八千草さんのクローズアップも入っていますから、それを通して、お別れを言ってください」と、監督は観客に呼びかけていた。
また、倍賞千恵子さんも「びっくりしました。とても残念ですけど、本当に優しい方でした」と淋しそうだった。

また、イズミ役で23年ぶりに女優復帰を果たした後藤久美子さんは
「こんな風に、自己紹介する日が来るなんて、夢にも思っていませんでした。とても光栄です」としみじみ。
クランクインを前に、山田監督に不安を伝えたといい「監督が私に『大丈夫、大丈夫だから。任せなさい』とおっしゃってくださって。
監督に委ねれば、作品に見合った芝居が生まれるんだと思いました」と全幅の信頼を寄せていた。

あこがれの後藤と久しぶりに再会した吉岡秀隆さんは「いつもいつも、きれいな方だと思っていましたけど…、今回も恋をしていました。
やっぱり満男は寅さんの甥っ子ななんですよ」と照れていた。
後藤は「吉岡くんと一緒に仕事するのは大きな喜び。満男くんがいなかったら、撮影を楽しめなかったと思う。
今日は公式の場所で感謝の気持ちを伝えたかったので、この機会を活用させてもらいます」と吉岡さんへの感謝を伝えていた。







       抽選に当選し、お誘いくださった芥さん↓

      









さて肝心の本編だが、↓に思いつくままにつらつら書いてみた。
ここから下↓は、しっかり本編のネタバレが含まれるので
映画をまだ観ていない方はこの下からは申し訳ないが読まないでいただきたい。



映画祭や試写会などですでにご覧になった方、もしくは
12月の公開日以降すでにご覧になった方などはどうぞ読んでください。








まず、分かっていることとは思うが、
この「男はつらいよ おかえり寅さん」は、
この長いシリーズ全48作品の完結編ともいえるまとめと回想の部分が大きな割合を占めている。

それゆえ、全48作品をあまり観ていない人にとってはなにがなにやらわからない進行が多いので
単体映画としてこの映画だけを観る事はあまりお勧めできないことは言うまでもない。

今までこのシリーズを観てこなかった人はまず事前に48本全部とは言わないが、
第1作や4作品のリリーシリーズ、第42作以降の満男シリーズなどは一度は観ていてほしいのだ。

言い換えると、あたりまえとはいえ、この最新作の構成は過去の48作品ありきの最新作であって、
やはり1本の独立した映画ではない。
確かに設定をマイナーチェンジしているし、満男の中に複数の新しい物語も芽生えさせているが
やはりせめて第1作、リリーシリーズ、満男シリーズあたりを知らないと、
意味はわかっても、なぜこの作品がこのシリーズの最後に来るのか、その深淵まではたどりつけず、
表面的には淡白な恋愛ともいえないような3日間の満男とイズミの恋愛作品になってしまう。
大河ドラマの回想を含めた最終回だけ観てもなうわっつらをなぞる感じになりがちになるのと同じ過ちになる。



それはそれとして、以下↓↓物語の中身に入ろうと思う↓






ここから↓↓は、
確実にネタバレが含まれるので映画を観ていない人はご遠慮ください。

実際に映画を観られてからお読みください。






車寅次郎に一番大きな影響を浮けたのはこのシリーズでは
さくらでも博でもなくやはり甥っ子の満男なのだ。

そして実際のキャストの中で役者自身としても、おそらく渥美清さんにもっとも大きな影響を受けたのは
少年期から多感な青年期を渥美さんの芝居を間近で見た吉岡秀隆さんだと言って良いだろう。

満男が少年期から大人になるまで伯父さんに幾度も救われ、大きな影響を受け、
伯父さんを想ってきた心が彼を会社を辞めさせ、無茶とも思える物書きにし、
伯父さんを主人公にした物語を書き下ろすことを遂には最後決意させるのだ。

その満男の万感の想いが、ラストの数分の満男の表情と流れていく涙に託されて行く。





「寅の現在」のことは当然なにも語られないが
上にも書いた自分の書斎での満男のラストのあの大きな涙の中に
寅がもう帰って来ないこともはっきり読み取れる。

生きている人間に対してああいう涙は見せない。

山田監督は、このシーンの満男の演技に全48作品の想いをこめたのだろう。
この映画は山田監督以上に、渥美清さんに影響を受けた吉岡秀隆さん自身の強く深い思いが露出し、私たちの胸を打つ。
演出だけではあの表情はできない。あの表情と涙はある意味渥美清さんを今もなお想い続ける素の吉岡秀隆さんそのものだった。
この美しいラストシーンを観るために遠く映画館に行ってほしい。

そう言う意味では、あのラストシーンの吉岡秀隆さんの表情が過去の膨大な48作品を全て背負っているのかもしれない。
あの涙は満男の涙であり、吉岡秀隆さんの涙であり、全てを観て来た私たちの涙だった。



    








それと、もうひとつの物語


満男と泉(イズミ)の恋とは言えないけどやはり恋。

今回は漢字の泉ではなく、カタカナのイズミとすることで、
今までとは違う時空の話だと山田監督は言いたいのかもしれない。

実際、過去の満男シリーズは当然下敷きにはなっているし、回想がバンバン出てくるが
基本この作品のイズミは
第42作、第43作、第44作、第45作、第48作の泉とは
時空が違うと思わないとあまりにも不自然。
少なくともあの第48作の段階では結婚間近なのは確実だったわけだから。


第48作の公開が終わって後に、幻の作品となってしまった「寅次郎花遍路」の話が進んで行ったが、
この作品を山田監督が作るにあたって梗概(あらすじ)をすでにあの当事書き終わっている。

メインの物語が高知での西田敏行と田中裕子兄妹の葛藤と田中裕子さんへの寅の恋。
サブが東京での満男と泉の結婚式

すでにこのふたつを本編に入れることにしていたのだ。

つまり山田監督はあのあと「寅次郎花遍路」で、やはり満男と泉を結婚させようとしていたのだ。



私と息子が2004年に制作した「寅次郎花遍路」のポスターのなかでも満男と泉の結婚式の衣装が出てくる。

     



で、このたびの「おかえり寅さん」では、なぜかこの二人は結婚しないでお互い離れ離れになってしまっていた。

(新しい物語の起伏がほしいとは言え、いくらなんでもそこいじりますか山田監督!(T-T))


昔の男はつらいよは寅の「夢」から始まる作品が多かったが、このたびは引き裂かれた満男の悔恨の「夢」から始まる。

もちろんそれなりの理由は二人とも本編の中で語ってはいた。
満男は泉の海外の大学留学という突然降って湧きだした熱い思いを優先し、
結婚間近と言うことを切り札に彼女を引き止めることはできなかったのだ。
第48作までを観ている私にとってはそんな理由はあり得ないのだけどね。
そんな後からとってつけたような話ではまったく納得できない。

まあ、しかし、山田監督も昔から語っているように、
このシリーズ映画はそれぞれ続いているようで、実は独立した1本もの。
山田監督のこの『続き物のようで実は物語も独立した作品』という手法に私たちはもうついて行くしかない。





物語に戻って、


もう何年ぶりかで国連系の仕事がらみでヨーロッパから日本の東京に滞在しているイズミ。
満男とサイン会で再会し、くるまやに行き、歓談し、その日くるまやの二階に宿泊もする。
こういうくるまやの茶の間歓談シーンは往年のファンには嬉しいところだろう。

満男とイズミの満男シリーズの回想シーンもたくさん次々に出てくる。


     





     老人用の手すりがいたるところに取り付けられていて、妙にリアルだった。

     




20年以上前に結婚寸前で突如別れた二人

それゆえにお互い別の人と結婚しても心の奥底にまだ不完全燃焼の想いがくすぶっている。
ましてや満男は奥さんに6年前に死に別れているからなおさらだ。ちなみにイズミは夫も子供もいる。


このように、かつてはお互い好きだったのに、本当に結婚寸前で無理やり別れてしまったそのせつなさが
後半の成田空港での別れのクライマックスの二度のキスに表現されていた。
満男は別れの瀬戸際まで、自分の妻が6年前に亡くなっていることをイズミに言わなかったのだ。
それは20年以上前、満男を残し、引き裂かれるように海外へ行ってしまった彼女の心の負担になると思ったから。
そして最後の最後にイズミへの思いからか、どうしても妻の死を告白してしまう満男。
そのような満男の心遣いと今も消えない自分への気持ちに胸が熱くなるイズミ。
イズミには現在夫も子供もいるがそれでもなお、別れのキスをしてしまう彼女の気持ちが
なんともやるせなく悲しくそしてせつなく私の心を震わせた。

イズミは満男と過ごした時間はわすか3日間。
満男は3日間過去の青年時代の恋に戻り、タイムスリップのように時空を彷徨ったのだろう。

ラスト付近で、娘さんからこの3日間はパパがどこか別の世界へ行ってしまっているようだったと言われたように
20数年前の恋が蘇った3日間だったわけだ。
そのクライマックスが上記の成田空港での別れ。






それ以外にも

泉ちゃんの老いた父親の哀れな変貌。(なぜか父親は寺尾聡でなくなんと橋爪功)


今も続く、業の深いイズミママの自業自得的な苦しみ。


などがイズミの現在も変わらない人生の暗い重荷を表現している。



まあいずれにしても、またもや満男はイズミに去られたのだ。
しかし満男は失意の沼に沈んでいるだけではない。
満男と娘さんの新しい未来を強く予感させる
池脇千鶴演じる編集者の担当さん高野節子と満男の関係の進行が後半を通して地味に描かれるのだ。
この二人まだまだ仕事の関係どまりで恋にはなっていない空気ではあるが、何度か満男の家に来て満男の仕事の催促がてら、
娘さんの英語の勉強を観てあげたりもしている。
娘さんが「節子さんなら良い」的なことを言うので未来をなんとなく予感はさせる。



       




       節子さんが満男と仲良くなることは、娘さんも公認だ。

       





     あ、そうそう、寅の最愛の女性 リリーもちょろっと出てくる。
     満男たちに自分と寅の歴史と寅のどこを気に入っていたのかを語る。


     




上にも書いたが、
新しい物語以上に48作品を全て観た人にとっては
走馬灯的な懐かしさを強く感じられる作品なのは間違いない。

さくらも博も寅もマドンナたちも満男も泉もバンバン回想シーンがはめ込まれている。
全部でほぼ2時間の作品だが、30分以上回想シーンが組み込まれている。
往年の渥美さんの輝きが4Kリマスターで蘇って来たのだ。

語り継がれてきた数々の名シーンを鮮やかに観ることができるのはやはり嬉しく、なによりもひたすら懐かしい。




それともうひとつ

歌手の桑田佳祐さんがOPの最初の歌でスクリーンに映りすぎで、
歌は彼でもまあ良いが、さすがになぜ彼自身がこんなにも映らないといけないのか?
大人の事情なのか・・・桑田佳祐ファンへの取り込み?なのだろうか・・・
本編でなにも出て来ない歌手さんがこうも長くスクリーンに映り続けることに幻滅気味だったが
ラストのエンドロールで渥美さんのあの歌声がしっかり流れて来てほっとした。
あの渥美さんの歌声が最後に聴ける。そこがなによりも嬉しかった。









以下、さらにもう一つ私ごと↓↓ 
本編とは関係ないので。


なんと参道シーンで私のジャンパーの背中の一部とダークグレーのリュックが映ってた!

本編始まって冒頭の10分くらいで
満男の妻の7回忌法事があるのだが
その時に御前様が時間間違えて遅れて来る。
しょうがないので女店員さんが帝釈天方向に
迎えに行くのだが、その時の映像は
「とらや」の店前にカメラがあって帝釈天方向を3〜4秒ほど映すんのだが
僕のジャンパーを着た背中とグレーのリュックサックが右の店で2秒映る。


エキストラさんたちも手前でいろいろ動いているので
私の背中とリュックは最後の2秒くらいしか見えないが2秒は映るのではっきりわかる。



本編の冒頭10分ほど。御前様を待つ満男たち。
このカットの直後、帝釈天方向にカメラが変わる。その時の数秒の中の2秒だ。

    



「とらや」から3軒ほど帝釈天寄りに
「みょうがや」という仏具店があるが
そのまたとなりに「カエル」の置物ばかり置いている店がある。
ロケ撮影の時たまたまそこでカエルのガラス細工を買っていた。


こんなふうにリュックを担いで店の品物を観ていた。
映っているのはこのように背中のこのグレーのリュックの部分↓↓



     







以上「男はつらいよ おかえり寅さん」の、感想でした。

11月6日に仕事でバリ島に行きます。その直前に即興で書いたレビューゆえ、いろいろ読みにくいところがあると思いますがお許しを。
帰国は11月27日になります。