バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第19作 男はつらいよ
1977年8月6日封切り
アラカンさんと渥美さん、奇跡の競演 ザッツエンターテイメント
この第19作「寅次郎と殿様」は渥美さんはまだまだ若く、実によく動き回ってくれる。特にこの作品では目の輝きが強い。
ちょっとしたギャグも目が覚めるように鮮やかだ。
そしてもちろん、この作品はなんといってもアラカンさんこと嵐寛寿郎さんと渥美さんの共演である。
世紀のスーパースターのアラカンさんの可笑しみと純情がこの作品のメインだ。
アラカンさんを『心の師』と尊敬してやまない渥美さんにとってこの競演はどんなに嬉しかったか。
渥美さんの少年時代、青年時代はこのアラカンさんの映画と共に歩んだといっても過言ではないのだ。
アラカンさんと共演している時の渥美さんは実に目が輝き、嬉しそうだったし楽しそうだった。
浮世離れした二人がかもし出す御伽噺。そして超現実主義の執事である三木のり平さん。
こののり平さんが上手すぎるくらい上手い。あのアクはのり平さんならでは。
しっとりとした伊予大洲の町で繰り広げられるヤンチャな最高の3人の絡みである。
見事なザッツエンターテイメント。
とにかくアラカンさんは何を演じても絵になる。
甘露じゃの〜っとラムネを飲むアラカンさん。三木のり平さん相手に刀振りかざして大立ち回りを演ずるアラカンさん。
手品使いのような格好でとらやに訪ねてくるアラカンさん。リヤカーでとらやに連れてこられるアラカンさん。
さくらのことを「ムスメ!聞いておりますか!」と呼び捨てにするアラカンさん。鞠子さんと二人、涙をハラハラと流すアラカンさん。
そして、風吹く夕暮れの江戸川土手を鞠子さんと二人して歩いていくアラカンさんの後姿。
特に私が好きなシーンはラムネを不思議そうに眺めながら中のビー玉をコロコロと転がして喜んでいるあの目だ。
アラカンさんは少年の目をしたスーパースターなのだ。
人生で遅すぎることはない和解の時
今回のマドンナ鞠子さんは、そんなアラカンさん演じる伊予大洲の殿様(藤堂家)の一族の末の息子さん(藤堂克彦)と恋愛結婚をした。
鞠子さん自体はそのようなことを若くして亡くなった夫から少しだけ聞かされていただけで、別段なにも心をかけることもなくつつましく
二人して東京で生きていた。しかし、殿様の方は、身分が違うと考えたのか結婚時に猛反対し、勘当し、息子の生前はこの夫婦と一度も
会わなかったのだ。そのせいで、鞠子さんは、全く藤堂一族のことを知らずに今日まできてしまった。殿様はこの若い夫婦の結婚に
反対したまま、彼女の夫である息子は亡くなってしまったのだ。そのことを殿様は後悔して、人目会って鞠子さんに謝りたいと願い、寅に
彼女を探してくれるように頼む。そしてその願いが奇跡的にかなってふたりはとらやで初めて対面する。
殿様「一目お会いした時から、わたしにはよく分かりました。
あなたがそばにいてくださって、克彦はどんなにしあわせ…」泣き続ける殿様
鞠子「お父様、あたくしもね、...あたくしも幸せでしたよ」と涙を流す。
短い言葉の中にお互いの心のふれ合いが急速に広がりお互い感慨の涙を流すのであった。
もっと早くこの二人が出会っていたら…と思ったのは私だけではないだろう。
夕暮れの中、江戸川土手を歩いて去っていく二人の姿は、
なんとも美しく人生に『遅すぎる』ということなどないのだと私に教えてくれた
印象深いシーンだった。視覚的にもこのシリーズ出色の美しいカットだったと言えよう。
この場面こそがこの作品のクライマックスであることは疑う余地が無い。
人間の出会いを通して、人生での懺悔と和解のチャンスはいつでもどこでもあることを殿様も
鞠子さんも、そして見ている私たちも思い知ったのだった。
ただ、この第19作はアラカンさんと寅の色を崩したくないために、マドンナと寅の緊張感が弱い。
真野響子さんは若くとても美しいが、ちょっと渥美さんとの空気が違いすぎる。
ここが惜しい。実に惜しい。
ちなみに「鞠子」と言う名前は第15作「寅次郎相合い傘」で早乙女愛さんが先に使っている。
もちろんパパの娘さん役。
冴え渡るダブル騒動
またこの第19作は序盤に大笑いネタ「こいのぼり」「犬のトラ」騒動がある。
季節を絶妙に捉え広がりを持たせながらこれでもかと騒動に巻き込んでいく。
山田渥美コンビのテンポのいいコント作りはすでに名人芸の域に達している。
そのあと、アラカンさんが手品使いの格好で登場してからもさらに笑いの連続である。
柴又に再び寅が戻ってからもアラカンさんとの絡みで三度四度笑いの渦が沸き起こるのである。
特に鞠子さんを寅が探す場面はこのシリーズでも最高級の抱腹絶倒ギャグだ!
美しい鞠子のテーマ曲
この第19作の鞠子のテーマがなかなか優しく美しい。このテーマ曲は第35作「恋愛塾」の若菜のテーマとして
アレンジされることになる。
十作台最後の作品、物語も芝居もギャグも冴えに冴えた佳作である。
マドンナとの繋がりが成功していれば間違いなく私はベスト24に入れただろう。
それほどにも渥美さんは表情も動きもこの作品では抜群である。
それでは本編をどうぞ。
松竹富士山
今回も夢から
もちろん本編の夢は寅の鞍馬天狗!!
時代劇 江戸幕末 京都
寅の活弁
徳川三百年、太平の夢ようやく破れ、
倒幕の志士相次いで集う京洛の地に、
忽然と現われし、熱血の士あり。
その名を鞍馬天狗。
鞍馬天狗が「国民」の前に姿を現したのは、関東大震災の翌年、
大正ロマン華やかな大衆文化の時代。
鞍馬天狗は大衆の支持をうけ続け、すべてのマスメディアで登場し、
まさに「国民」的ヒーローとして活躍した。
『鞍馬天狗』シリーズは戦後の高度成長期のただ中の1965年まで、
四十二年の長きにわたって書き継がれ、全四十七作品が誕生している。
舞台は幕末維新期、
天狗は倒幕派の志士である。
鞍馬天狗は反権力を貫き、体制を変革しようとする
最先端の個人主義者・自由主義者だった。
按摩(座頭)の笛の音。
橋の向こうから杉作が走ってくる
杉作「おじちゃーん!」
鞍馬天狗(寅)「おお!」
杉作「天狗のおじちゃーん」
鞍馬天狗、杉作を抱きしめ
鞍馬天狗「杉作、よかった…。
どんなにおじさんは心配していたかしれないんだよ」
杉作「うん」
さくら、紫の頭巾をかぶりながら、提灯を持ち鞍馬天狗に近寄る。
鞍馬天狗「どなたかは存ぜぬが、杉作の危ういところをお助けくださって
礼を言いますぞ」
さくら、鞍馬天狗を見ながら、静かにお辞儀。
鞍馬天狗「ではこれで…」
さくらは寅を見て長年探していた兄だとピンと来る。
さくら「もし、…」
鞍馬天狗「なにか」
さくら「もしやあなたは、江戸は葛飾柴又の生まれではございませんか?」
寅「え?そういうそなたは?」
さくら「妹のさくらでございます」
寅「さくら…」
さくら「兄上様、お会いしとうございました」と泣く。
寅「さくら」
山岳党の一味、按摩(座頭)に扮して聞き耳を立てている。←タコ社長(太宰さん)
にやっと目を開けるタコ社長。
さくら「お許しくださいまし、
それとは知らずに兄上様はもう、山岳党の罠に」
山岳党は京都の秘密結社。
鞍馬天狗「なに!?」
振り向くと、橋の向こうから大勢の山岳党の輩が歩いてくる。
さくら「早くお逃げください、あとは私が…」
鞍馬天狗「さくら、杉作をしっかり抱いていなさい」
さくら「はい!」
ボス「フフフフ!鞍馬天狗、今夜こそ、君には死んでもらうぞォ」
夢の悪役でお馴染み吉田義夫さん。
吉田義夫さんの整理箱
第8作 「寅次郎恋歌」 四国 雨の日の 坂東鶴八郎座長
ラストでも甲州路で再会
第9作 「柴又慕情」 夢のシーン 昭和 悪徳借金取り
第10作 「寅次郎夢枕」 夢のシーン 昭和初期 地元の高利貸しの親分
第11作 「寅次郎忘れな草」 夢のシーン 江戸後期 柴又村の寅の父親
第12作 「私の寅さん」 夢のシーン 大正 柴又村 悪人の、だあ様
第13作 「寅次郎恋やつれ」 寅の横に座る電車の乗客
第15作 「寅次郎相合い傘」 夢のシーン 奴隷船の奴隷商人のボス
第16作 「葛飾立志篇」 夢のシーン 西部劇の中、悪人ガンマン
第18作 「寅次郎純情詩集」 夢のシーン 北アフリカにアラビアのトランスを
捕まえに来た男。
A信州別所温泉での坂東鶴八郎座長
『不如帰』の武夫役
第20作「寅次郎頑張れ!」 夢のシーン 大金持ちになったとらやの執事
Aラストで寅と軽四トラックで再会する坂東鶴八郎座長
『ああ無常 レ.ミゼラブル』のジャン.バルジャン役
第22作「噂の寅次郎」 夢のシーン 江戸時代 目の悪いさくらの親父さん。
第24作「寅次郎春の夢」 京都での坂東鶴八郎座長 『蝶々夫人』のピンカートン役
第26作「寅次郎かもめ歌」 夢のシーン 天狗のタタリと偽ってさくらをせしめようと
鞍馬天狗「わたくしもあなたを斬るでしょう。
それがお互いの宿命というものです」
上條さん「生意気なことを言いやがる!」
源ちゃん「かめへん!いてまえー!!」
と一同刀を抜く。
いきなり斬りかかって行った一人がやられる。
「うわあああ」
寅「諸君、来たまえ。
ここが地獄の門です」
鞍馬天狗ってこういう言い回しなんだろうな(^^;)
軽快な音楽に乗りチャンバラがくりひろげられる。
寅の活弁
東山三十六峰、草木も眠る丑三つ時、
たちまち起こる剣劇の響き、
次々にやられていく山岳党の輩。
「やられたー」
時々頭巾が顔にかぶさり目が隠れる鞍馬天狗。ちょいギャグです。
山伏風の大男役の上條恒彦さん、槍を橋の欄干に
突き刺してしまって、
そのまま欄干ごと引っこ抜き、自分の頭に当たって倒れていく。自滅(TT)
源ちゃん鎖鎌を持ちながら
源ちゃん「くそお…」
鎌を飛ばそうとして、自分の首に絡まりつき 自爆…バカ(TT)
源ちゃん「しまったー…」
またもや鞍馬天狗の頭巾が顔にかかって
必死で取り外しては闘い続ける。続ちょいギャグです。
タコ社長の座頭、
気合とともに射合い抜き。
しかし…
タコ「間違えて自分切っちゃった…」と、同じく自爆… ほんとバカ(TT)
鞍馬天狗、タコの頭小突いて
鞍馬天狗「バカめ!!」ほんと(^^)
タコ「あ〜〜〜」と倒れる。
音楽、突然シリアスに流れ始め、
鞍馬天狗「さくら…、杉作は無事か」
さくら「大丈夫よ」
さくら、鞍馬天狗の足からモモヒキが見えているのを見て
さくら「それより、どうしたのお兄ちゃん、モモヒキなんかはいて」
鞍馬天狗情けない顔で
鞍馬天狗「ちょっと風邪ひいてんだよ」としょぼくれる。
その直後、顔が一変し、
鞍馬天狗「来い!!」と刀を構える。
緊張するさくら。
山岳党ボス「おおお!!」
太鼓が速く鳴り響く。
お互い一太刀で胴切りを狙い、
ボスの切っ先は、払うように下から弧を描くが、
間合いが遠く切先が僅かに鞍馬天狗に及ばない、
半呼吸後に、間合いを詰め、
踏み込み、片手胴でボスの胴を斬る鞍馬天狗。
勝負あり!
寅「杉作!馬を呼べ馬を!」
駆ける馬(何かのフィルムからの転用だね)
穴が開いたモモヒキ。
馬に乗っている最中にいよいよ頭巾の前がずり落ちて、
寅「さくら!」
さくら「え!?」
寅「目が見えない!目が見えない!」
さくら「え!?」
寅「眼が見えない!目が見えないぞ!…」
さくら「え!?なに!?」
寅「眼が見えない!目が見えない、さくらァ!…」
国鉄(JR)予讃線 下灘駅
通称「海線」にある双海町(ふたみ)の下灘駅(しもなだ)
ホームのベンチで寝ている寅
寅の腕を叩く駅員さん。
「お客さん。お客さん」
寅、「ん、んん…」と呻きながら、はっと目を開き、駅員を見る。
駅員「上り(のぼり)が来ますよ」
寅「え??」
駅員「上り(のぼり)が来ますよ」と、指を刺す。
起き上がって両手を広げて伸びをする寅。
背広を肩に掛け、かばんを持って海の見えるホームを歩いていく寅。
ホームをゆっくり歩く寅と駅に入ってくる汽車を
高台からカメラが望遠で撮っている。
ホームから国道を挟んですぐ伊予灘の海が広がっているので
ホームからは広い海を眺めることができる。
駅のホームのベンチで、うなされている寅。
(このベンチは青春18きっぷのコマーシャルでお馴染み)
【1998年・冬】
『駅に着いた列車から、高校生の私が降りてきた。』
【1999年・冬】
『思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。』
【2000年・冬】
『前略、僕は日本のどこかにいます。』
タイトル 男はつらいよ 寅次郎と殿様
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
今作品も17作、18作同様、♪あてもないのに〜と、3番も歌う。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴
わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような
偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪あても無いのにあるよな素振り
それじゃあ行くぜと風の中
止めに来るかとあと振り返りゃ
誰も来ないで汽車が来る
男の人生一人旅 泣くな嘆くな
泣くな嘆くな影法師 影法師♪
寅がひさしぶりに柴又へ帰ってきた。
向こうのほうに鯉のぼりが泳いでいる。
五月初旬なんだね。
お馴染みオープニングコントの王様津嘉山正種さんがコントの中心。
モデルを使った写真家の役。
江戸川河畔で、津嘉山さんがモデルさんを使って、写真を撮っている。
通りかかった寅が、コロッと落ちたフィルムを全部ビロ〜ンと取り出して
一笑いした後、危険を察知してさっさと去っていく(^^;)。
怒ったカメラマンたちがお互いに当たって、大喧嘩。というコント。
とらや 庭
五月の風に泳ぐ本物のこいのぼり。
満男とさくら「♪屋根より高い鯉の〜ぼ〜り〜」
やねより たかい こひのぼり
おおきい まごいは おとうさん
ちいさい ひごひは こどもたち
おもしろさうに およいでる
緋鯉などの残りの2匹も子供たちであって、お母さんではない(^^;)
端午の節句は男子の節句だからね。
お母さんは吹流し??(TT)
博が大きな本物のこいのぼりを買ってとらやの庭でみんなで揚げている。
満男は大喜び。さくらの足元で犬のトラが遊んでいる。
さくら「あー、泳いだ泳いだ」
満男「♪大きい真鯉はおとうーさーんー」
さくら「おいちゃん、おばちゃん、来てご覧、鯉のぼり揚がったわよ」
おいちゃんたち庭にやって来て
おいちゃん「どれどれ、あー見事見事」
おばちゃん「あらあ、よかったねえ、満男ちゃん」
空高く泳ぐ鯉のぼり
おばちゃん「学校行ったらさ、家にはね、
こんな大きな鯉のぼりがあるってえばってやんな」家はアパート((^^;)
犬のトラを抱っこするさくら。
満男「うん!」
博「満男の家じゃありませんよ、残念ながら」
おばちゃん「え、フフフ…」
さくら「そーよー、アパートじゃ鯉のぼり揚げられないかえら
おばちゃんち借りたんじゃないのよ。ねー、そんなに
威張れないわよ…こら、こら」
トラはさくらに懐いていて、さくらの頬をペロペロなめる。
(トラっていったい…(^^;))
おいちゃん「威張れるほどの庭でもねえな、俺んちもォ…」
おばちゃん「ほんとだねえ…、これじゃあ鯉のぼりも可哀想だねえ」
さくら、頬のポチの唾液を手で拭いている(^^;)
さくらお客さんが「ごめんください」と、店にやってきたので
さくら「はいはい」と、店に行く。
トラは勝手に茶の間に上がって遊んでいる。
さくら「こら!おいちゃん、トラがまた上に上がってる」スタッフが餌置いたからだよな、トラ(^^;)
おいちゃん「えー…、トラ!しょうがネエヤツだなおまえは…下へ行ってろ」
と、下へ置く。
なんだか可愛いねトラのおなかって(^^)
おばちゃん「ねえ、ポチにしょうよお〜、
寅ちゃんが帰ってきたら怒るよぉ〜」そら怒る(^^)
おいちゃん「下行ってろ、ほら」
博「誰がつけたんですかトラなんて」
おばちゃん「源ちゃんだよ、決まってるじゃないか。」だろうね(−−)
おいちゃん「あいつが拾ってきた犬をなんで家で飼わなきゃならねえんだ」
おばちゃん「だってしょうがないじゃないか家にばっかり来るんだもの」
誰かが最初に餌付けしちゃったんだね。
博、トラを持ち上げながら
博「トラ、おまえな、ポチという名前に変えるからな。
いいか、トラじゃないぞ、ポチだぞ、ん」
この後数時間後に博はこの犬を「トラ」とまだ呼んでます(−−;)
おいちゃん思い出したように…
おいちゃん「そういやそろそろ帰ってくる時分だなあ…」
おばちゃん「ポチかい…」(ノ_-;)ハア…
おいちゃん「そ?」
おばちゃん「あ、違った、寅ちゃんかい?」間違うか、それ ヾ(^^;)
おいちゃん「んん…」
博「そうだなあ…もう五月だなあ…」
おいちゃん、タバコをくわえてライターで火をつけながら ライターなんだねえ…(−−)
おいちゃん「なんにも言わないけど、心配してんじゃねえのかさくら」
みんな、店先で掃除をするさくらの後姿を見ている。
みんな、ちょっと心配している。
おばちゃん「なんてったってたった一人の兄妹だからねえ…」
そんな時、必ずといっていいくらい寅は帰ってくるのだ。
さくら、題経寺方面を見て、急に顔色が明るくなる。
さくら「おばちゃん、お兄ちゃん帰って来た」
おばちゃん「え!!」
とらやを見ないように
ひょうひょうと知らぬ顔で駆けて行こうとする寅。
この渥美さんのとぼけた芝居は絶品だ。
なんせとらやの本当の跡取りがいつまでもふらふらしているのだから
毎度入りにくいのは当たり前かも。
さくら「お兄ちゃん、家はここよ!」
寅、わざとらしく振り向いて、照れ笑いをしながら
寅「あははは、そうかー、
あんまり長い間留守にしちゃってたんでね、忘れちゃったよ」
みんな「はははは!」
本当なら、このとらやで7代目主人となって
働かなくてはならない自分の立場を考えると、
ヤクザなこの身の上では入りづらくなるのは当たり前なのかもしれない。
寅「よ!おいちゃんおばちゃん、達者でいるか?」
おばちゃん「元気だよ、おかえり」
おいちゃん「今噂してたんだ」
寅「あ、そうかい、んー」
博「兄さん、おかえりなさい」
寅「よよ、博、どうだ工場のほうは相変わらず低賃金か?」
いいねえ〜このキツさ加減が(^^)
博「はい」
おいちゃん「あー、よかったよかった。さくら、お茶でも入れろ。
みんなで柏餅でも食べるか、え」
おいちゃんほっとしている。
やっぱり、旅先でなんかあったんじゃないかって思っちゃうんだよね。
寅も若くはないからね。
さくら「そうね」
寅「あ、満男いるか?」
さくら「いるわよ」
寅「ちょっと呼べ、お土産買ってきた」
さくら「あらー」
おいちゃん「へえー」
寅ニコニコ顔でかばん開け始める。
さくら手招きして
さくら「満男、ちょっとおいで、伯父さんがお土産だって」
おばちゃん「よかったねー」
博「いつも、気を使ってもらってすいません」
寅「いやいや、汽車の窓から見たらね、
鯉のぼりがすーっと上がってさ、
そうだ、オレも伯父さんの真似事を
ひとつさせてもらおうかなと思ってな」
みんな興味津々。
寅、かばんを開ける。
さくら、満男に
さくら「ねえ、なんだろうね」
寅、かばんからおもちゃの小さな鯉のぼりを
取り出して、泳がせながら
寅「ほら、これよ、たいして高いもんじゃないんだ」
一同真っ青
第11作「忘れな草での」ピアノ事件のレンジ版だね。おもちゃVS本物
寅「本来なら、こんな立派なこいのぼり、本物勝ってこようと
思ったんだけどよ、ま、それはいずれ寅おじさんが
大金持ちになってから、はいよ、ん」と、満男に渡す。
満男「こんな小さいの?」(((((  ̄ ̄ ̄ ̄ ▽  ̄ ̄ ̄ ̄ ;)
もうすでに10倍以上大きいホンモノ持ってるからね(^^;)
さくら「何言ってんの!お礼言いなさい」
中村はやとくんマジで笑ってます。
変だよねえ〜、大人たちの芝居って(^^)
博は、いち早く庭に行く。
おばちゃん「ほんとこんな立派なのちょうだいしちゃって」
おばちゃん…強調しすぎ(TT)
さくら「ありがとう」
寅「なに、礼を言われるほどのこたあねえよ、なあ、博」
博は、いち早く、庭のほうに行って、本物を片付け始めている。
寅「おい、博どうした?」
さくら「あ、ほら今日工場が忙しいんじゃないかしら」うそ(^^;)
とらやのお品書きが見える。
茶めし 150
くづもち 150
あんみつ 200
みつ豆 200
ソーダ水 100
サイダー 100
ラムネ 100
ジュース 100
今回冷蔵庫は雪印
博、庭で必死で鯉のぼりを下ろしている。
満男、寅からもらったおもちゃの鯉のぼりを博に見せている。
満男「ねえねえ、お父さん…」
とらや 店
寅「あーあ、貧乏暇なしってやつね」
さくら「そうそう」
寅「よし、社長にちょっと挨拶にしてこよう、うん」
と、工場へ行きかけるが…
おいちゃん必死で追いかけてきて
おいちゃん「寅」
寅「ん」
おいちゃん「社長、出かけたんじゃないかな」
おばちゃん「そうそう、税務署へ行くってそう言ってた」また税務署かよありえないって(−−;)
なんとか庭へ行かせないようにする二人だった。
おいちゃん、話題を変えて
おいちゃん「こっち上がって柏餅でも食べよう。つね、お茶持ってこい」
おばちゃん「あ、はいはい」
さくら、チラチラ庭を見ている。
おいちゃん「さ、寅」
と、二人して茶の間へ。
茶の間
寅「はーあ、あ」と腰を下ろし、
寅「どうだいおいちゃん」
おいちゃん「ん?」
寅「庭のツツジは?」脚本では「さつき」
と、庭のほうを振り返ろうとする寅。( ̄□ ̄;)!!
おいちゃん、間髪を入れず
おいちゃん「咲かない咲かない!
今年はダメだ」と必死。(TT)
寅「ほー…」
さくら「なにしろ、ほら、日当たりが悪いでしょ」さくらまで…(TT)
おいちゃん「あーあ、風通しも悪いしなー、見たってしょうがない!」
と、強調しまくる。
おばちゃん「本当に狭い庭だからね、さっきもそう言ってたんだよ、
『あれじゃ、鯉のぼりが可哀相だって…」
あああ…((((( T ▽ T ;)
ダメだダメだ、やっぱりおばちゃんだ…┐(-。ー;)┌
おいちゃん、手でダメだし。
さくら、寅を凝視。
おばちゃん「は…!!!!…いけない」
寅「なんかおかしいな…、
おばちゃん今なんて言ったんだい」
こういう勘だけは超鋭い寅。
と、薄ら笑いを浮かべながらも疑いの目
庭から、博の声
博「満男邪魔だ!あっち行ってなさい!」
あ〜あ〜あ、そんな大きな声出すと、寅じゃなくても振り返るよ(^^;)
一同真っ青
寅「…」
遂に庭を振り返る寅。
博「邪魔だって!」
。
寅の耳ダンボ
満男「ねえ、揚げてよー」だよね〜(^^;)
寅、ずっと見ている。
博「明日は揚げてあげるから、今日は我慢しなさい」
博、明日揚げたら明日バレルよ(−−;)
台所にまだ寅がいると思い、台所を遠目で見る博。
いきなり寅が茶の間から覗いているのを発見し、背筋が硬直する。
鬼のように怖く冷静な目で博を睨んでいる寅。
あわわわわわ…この目は鬼だ…Σ(|||▽|||
)
一同、絶体絶命のピンチ。
おいちゃん目をつぶって下を向く。
そんなときに限ってやっぱりこの人、
お約束のタコ社長が庭に登場。
社長「どうしたんだい、
せっかく揚げたのに、雨でもきそうかい」
社長「満男ちゃん、どうしたの?このちっちゃいの」と寅のお土産を指す。
ダメ押し…(TT)
満男の声「たいやきィ〜」…うますぎ…座布団3枚((((TT)
ダメダメ押し…(TT)
一同目を見開いて固まる。
寅、鬼の顔 ((((((TT)
たいやき〜〜〜〜
社長「ハハハハ!上手い上手い、
ハハハ!たい焼きかあー!」
寅むすっと、柏餅を手にとる。
社長、たい焼きを、
いや、鯉のぼりを手で振りながら台所に入ってきて、
社長「さくらさん、たい焼きだって、ハハ…」
一同、真っ青
さくら、必死で何かを社長に言おうとするが…
社長「お、寅さんおかえり!しばらくだったねえ。
見たかい?庭のこいのぼり。いくらしたと思う?」
社長、指を4本出す(4万円か)
ああいうの相場いくらするんだろうね。
鯉の大きさに比例するのかな…。
結構大きかったので4万円はお買い得だったのかも。
さくら「社長さん…」
寅、限界が近い。かなりブスウ〜…
社長「なんだい、どうかしたの?」察してくれよ社長(−−;)
博、畳んだ鯉のぼりを持ってきて、
博「毎年五月になると、満男が買ってくれ、買ってくれってせがみましてね、
庭のある家に引っ越したら買ってやると我慢させてきたんですけど、そうは言っても
いつアパートを出られるか分からないし、思い切って買ってやったんですよ」
さくら「でもね、買ってから後悔してたのよ、
もっとちっちゃいのにすればよかったって…」
寅、シラケた顔をして
寅「結構だよ、おまえたちの言い訳なんか聞きたかないよ。
どうせ腹の中じゃ、
おもちゃしか買ってこれなかったオレのことを
バカにしてるんだろ」
さくら「ちがうわよ、そんなこと誰も考えてやしないわよ」
寅「だったら、なぜオレがトランク開けてこいのぼり出した時に
スウ〜っとおまえ言ってくれなかったんだ?え?
『あら、お兄ちゃんせっかくだけども、
私たち昨日、思い切ってバーゲンセールで、
本物のこいのぼりを買ってきたのよ。ほら見て御覧なさい』
おまえにそう言われりゃオレが、
『どれどれ、あー、こりやあ立派なこいのぼりだ。そうか、
じゃあ、こんなおもちゃみたいなものはとってもいらねえや、
なあ、よし、うらの社長ところのハナッタレガキに
くれてやるか、ほらよ』
こう冗談で済んだでしょ」
済まない済まない絶対済まない ヾ(−−;)
心からバーゲンセールと決め付ける寅でした(^^;)
この第19作の時点ではまだまだ社長に「息子」がいることになっている。
さくら、下を向いて沈んでいる。
博「言おうと思ったんですよ、ですけどねー…」
寅「悪くて言えなかったんだろ」
さくら「そうよ、お兄ちゃんの気持ちを傷つけちゃいけないと思ったの」
寅「そうかいそうかい
貧乏な伯父さんが安物のおもちゃみたいな
鯉のぼりを買ってきた、
本物のこいのぼりを見せちゃ
あいつが僻むから、隠しちゃえ!隠しちゃえ!」
それじゃ第15作のメロン騒動だよ ヾ(ーー;)
見え透いたお世辞使いやがって、えー。
お前たちはオレを哀れんでるのかぁ?
それほどおまえたちは大金持ちかぁ!ケ!
田へしたもんだよかえるのションベン、
見上げたもんだよ、屋根屋のふんどしだい!」
きつううう〜〜〜〜(−−;)
おばちゃんチャルメラ泣き(第28作参照)しながら
おばちゃん「あんまりだよ、
そんなに言わなくたっていいじゃないかぁ…うううう」
第11作「わすれな草」の『ピアノ騒動』を思い出したよ。
社長「お互い貧乏人なんだから、
いがみあうのはよそうよ、な」
寅、呆れたように社長を見て
寅「へえ〜、どこをつつくとおまえそんなセリフがでるんだ?
え?オレが貧乏なのは
オレのせいだよ、
博が貧乏なのは
経営者のおまえのせいだぞ!」真実(^^;)
寅って凄いこというなあ…。ある意味正しい。
こういう演出が山田監督の懐の深さだ。
社長、何か言いたげだが
「ぁ…」とたじたじ…。
博、チラッと社長を見る。
なかなかシビアな場面だ。
博も寅と同じことを考えてるんだね、心の隅では。
博の社長を見る目に注目(TT)
寅「へ!なにが社長だこのやろう、
あんな凸凹工場潰してなあ、
どっか僻地へこせ!」これは脚本にはないセリフ
キツイ…(TT)
社長あまりのキツサについに泣いてしまう(^^;)
おいちゃん「寅…」
さくら「せっかく半年ぶりに帰ってきたのに…
そんなこと言わなくたって…」
さくらも泣いてしまう。
寅。スッと立ち上がる。
さくら、また旅立ってしまうかと恐れながら
さくら「どこいくの?」
寅、雪駄履きながら
寅「え?二階行ってちょっと休んでくるよ」おっと…
ほっ…旅立つパターンでなくてよかった…。
と、この時はそう思ったのだが…甘かった…。
寅、博を見て
寅「それ、揚げてやりゃあいいじゃねえか。
せっかく買ってきたんだ…」
寅、ぎりぎりではまだ冷静さを保っているんだね。
博、こいのぼりを買ってきたことを後悔する。
博「買うんじゃなかったな…、こんなことなるんじゃな」
夕方 題経寺の鐘の音
参道を豆腐屋のラッパが鳴る。
パープー
さくら出てきて
さくら「お豆腐屋さーん」
豆腐屋「はい」
夕方 とらや 二階
二階で寅がぼんやり庭の鯉のぼりを見ている。
豆腐屋のらっぱの音 パープー
寅のちょっとした後悔がそこはかとなく演出されていていいシーンだ。
下でさくらの声
さくら「おばちゃん、お豆腐、やっこでよかった?」
おばちゃんの声
おばちゃん「ああ、さくらちゃん、お芋見てよ」
いい演出だねェ、このさりげなさはありそうでない。
絶妙の間と声だね。このようななんでもない演出が秀逸。
う〜んこれぞ山田映画だねえ。
寅「はー…」と小さくため息をついて…
下にゆっくり下りて来る。
台所
さくら、芋の煮っ転がしの味見をして
さくら「もういいじゃない」
おばちゃん、犬のトラに餌を与えようとする。
おばちゃん「トラ!ご飯だよ!トラ!」
懲りないねえおばちゃん(−−;)
さくら、またまた真っ青になって二階を見上げると、
ちょうど下りてきたばかりの寅と目が合う。
寅、不満たっぷりの顔で
寅「おばちゃん、どうでもいいけどさあ、
犬の名を呼ぶようにしてオレのこと呼ぶなよ。…」
おばちゃん、あわてて
おばちゃん「ごめんよ、あんまり親しいもんだから
つい呼び捨てにしちまって、
悪気はなかったんだから勘弁しておくれよね。」
凄い言い訳(^^;)
寅「いいんだよ、別にオレは怒ってるわけじゃねえんだから。
ただいきなりなもんだからね」
おばちゃん「ハハ…悪かったよ」と愛想笑い。
犬の寅が台所に入ってこようとするのを、おばちゃんが
微妙に後ずさりして餌を隠しながらもやる。
うーん細かい演出(^^)
犬のトラ君もなかなかスタッフからの指示通り。聞き分けがいいぞ。
さくら、なんとか挽回しようとして
さくら「お兄ちゃん、今日はご馳走よ。
お芋の煮っ転がしとガンモドキの煮たの」
寅は昔からこればっか…
寅「あー、ん…」と、少し平常心。
おいちゃんニコニコしながら
おいちゃん「おい、美味そうだろ、鯉の洗い」わざわざ…(〜〜;)
寅、ビク!
寅「鯉?なんだか嫌味みたいだな…」
おいちゃん「違う違う、丸甚のオヤジが
江戸川で釣れたってさっき持ってきてくれたんだよ」
寅「…」
おいちゃん、カチンときて
おいちゃん「嫌ならやめろよ」と、お膳から片付けようとする。
寅、止めて
寅「いいんだよいいんだよ、
別にオレは怒ってるわけじゃないんだからさ。
ただ、さっきの今だろ…」
おいちゃんふくれっ面
おばちゃん「さ、ご飯にしよう」
さくら「満男ー、おいで」
満男茶の間にやって来てきて
満男「♪屋根より高いこいのぼお〜り〜」
Σ(|||▽||| )
おいちゃんおばちゃん「うわー」っていう顔
おばちゃん「あ、ほかの歌にしよう、ほかの歌にね」かえってその発言嫌味(TT)
寅「いいんだよ、何の歌歌ったって」まだギリギリ冷静(((^^;)
おいちゃん「いやでも、もうご飯だから」
さくら「さあ、食べましょう」
いち早く芋の煮っ転がしを食べる満男。
寅「博はどうしたんだ博は」
さくら「もう…、帰ってくるでしょ」
寅「だったら待っててやれよー。亭主だろ、おまえのー」
さくら「うん…」
博の声「お疲れ様ー」
振り返るさくら。
博、工場の階段で
博「パチンコか、フフ」
工員「はい、フフ」
さくら「あ、帰ってきた」
寅「おまえたちのためにああやって真っ黒けになって働いてるんだから
えー、大事にしてやれよさくら」
さくら「はい」
庭で博の声
博の声「トラ!」
寅「はい…」反応するよネエ(^^;)
博の声「なんだこんなところに糞してぇ!!」
出た〜〜〜〜ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
寅、つい自分の股を見る(^^;)
最高の演出!山田演出に座布団三枚!
博怒りながら戻ってくる。
博「何べん言ったらわかるんだよ、トラのやつは!」
博、寅を見てガーンと青ざめる。( ̄□||||!!
寅「博、オレがいつ庭で糞をした?」オイオイ…ゞ( ̄∇ ̄;
博「ち、違います!」そら違うわな(〜〜;)
寅「第一な、いくら親戚でも、
おまえとオレとは血の繋がらない他人だぞ、え!
そのおまえにオレは呼び捨てになんかされたくねえな」
博「冗談じゃない、兄さんのこと呼び捨てにするもんですか。
あ、あの犬ですよ。あの犬トラって言う…」
博、さっき「今日からポチだぞ」って自分で言ってたろ┐(-。ー;)┌
寅「……」
周りを見渡して睨みつける。
庭で犬の鳴き声 ワンワン
おばちゃん、超わざとらしく寅から目線をそらして
おばちゃん「あら、同じ名前だね、
私ちっとも気がつかなかったわ」
確実に逆効果 ヾ(^^;)
さくら、寅を見ながら困っている。
おいちゃん「でも、おまえ犬のほうはカタカナだろう」
意味ねええー ヾ(^^;)
おばちゃん「あ、そうねえ、寅ちゃん漢字だものねえ」
悪あがき…ヾ(^^;)
おいちゃん「そうそう、と.ら・じ.ろ.う…」
もう地雷踏んでるって…ヾ(ーー;)
と無意味にお膳に指で字を書く。
寅「ヘタな芝居見たかねえよ!」
びびり顔が引きつるおばちゃん。
時が一瞬止まる。
寅「わかったよ、オレと同じ名前を犬につけて
トッゥリャ!トゥラ!
ぶったたいたり、蹴っ飛ばしたりしてたんだろ!」
完全な被害妄想((((^^;)
さくら「お兄ちゃん違うのよ」
寅「なにィ!」
さくら「寅ってつけたのは私たちじゃないのよ」
さくらいろいろ言い訳。
寅「誰だ!どこのどいつなんだ!そいつは」源ちゃん源ちゃん(^^)
さくら「誰だかわかんないのよ」源ちゃんをかばうさくらでした。
さくら「お寺でうろうろしてるのをね、
誰からともなくトラトラって呼び出してね、
そのうちなんとなく家で
飼わなくちゃいけなくなっちゃったのよ」
おいちゃん「もう捨てちゃえその犬」
おばちゃん「そうだよね。そんな犬飼わなくたって、
ウチには寅ちゃんという犬が…、
…いえ、人間がいるんだもんね…」
おばちゃんって…Σ(|||▽||| )
と、下を向きシュンとなる。
おいちゃん「そ〜うそう」と、言って寅をチラッと見る。
→
普通この場面では絶ッ…対間違わないよおばちゃんん(TT)
寅「……」
寅、おばちゃんを睨む目が超怖い。
寅「…おばちゃん、
おばちゃん「はい…」と小さくなっている。
寅「今なんて言ったんだい?えー、
よっぽど人をバカにしてなきゃ言えないぞそのセリフは」正しい(^^;)
一同沈んでしまう。
おばちゃん「どうしてだい…」たじたじ…((((−−;)
寅、ぶすっ
今日はおばちゃんのボケ
「鯉のぼり」「トラ」「犬」の3連チャン大活躍。
タコ社長に並ぶ勢いだ。(^^;)
さくら「ねえ、もういいかげんにして、ご飯食べない?
おつゆが冷めちゃうから、ね」
寅、ぶすー。。。
そこへ、お約束のタコ社長やっぱり登場(((((((( ̄▽ ̄;)!!
ああ…万事休す
チ〜〜〜ン…(T人T)
社長「トラ!いるかい?
トラ!トラトラァ!
魚の頭持ってきてやったぞぉ!」
寅、プッツン切れて、
猛然と台所に下りていく、
おいちゃん咄嗟に止めるが間に合わない。
寅、社長を押しのけて
おばちゃん「ちょ…」
寅「てめえまでオレのことバカにしやがるのか!このヤロウ!」
押された社長、怒って
社長「なにしゃがんだよ!」
タコ社長、なぜ寅が怒っているのか分からないまま
とりあえず体が反応して応戦(^^;)
寅野菜やジャガイモを投げまくる。
社長、なべの蓋を盾にして受ける。
凄まじいまでの大喧嘩になってしまう。
博「社長やめてください!」
さくら「お兄ちゃん!」
みんな「やめて」と叫んでいる。
寅「ちきしょー!」
シリーズ中でもかなり激しい喧嘩。っちうか、
寅が一方的に野菜を投げて攻撃していた。
最後は何もあたってもいないのに
なべの蓋がパーンと後ろに吹っ飛ぶ。念力じゃ!( ̄▽ ̄;)!!
寅「ちきしょう!このやろー!!
バカ!タコ!てめえまでこのオレのこと
バカにすんのか!!」
ここは、前と寅のセリフがダブっているね。
おいちゃん「やめろ寅!お前が悪い!」
ひょえ???なぜ(OO;)
寅、おいちゃんを睨みつけて
寅「なにい!?
どうしてオレが悪いんだ!!」うん(−−)
おいちゃん「悔しかったらな、もっと尊敬される人間になれ、
そうすりゃ誰もあの犬にトラなんて名前つけやしねえ。
それをなんだ。いい年をして、嫁ももらわねえで
フラフラフラフラしてりゃ、
まるで野良犬じゃねえか」
さくら「!!」
おいちゃん…言いすぎ…(−−;)
さくら、その厳しい言葉に驚き、おいちゃんを見る。
いつも心配している身内しかいえない切ない言葉でもある。
寅、悔しくて悲しくて…
寅「…、そうか…、
それを言っちゃおしまいよ」
さくら「…」
寅「オレは出て行くぜ。さくら、あの犬っころに
せいぜいうまい餌でも食わしてやってくれ」
かばんを持って外へ出て行く寅。
かばん二階に持って上がってなかったんだね。
さくら追いかけて店先へ
なぜか犬のトラもついてくる。
店先で犬のトラをなでている寅。
さくら「お兄ちゃん…」
さくら「お兄ちゃん…満男にお土産まで持って帰って来てくれたのに,
こんなことになっちゃって…」
寅「今度の節句にもし帰ってくるようなことあったら、
こんなでっかい鯨みてえな鯉のぼり勝ってくるよ」
メインテーマが緩やかに流れる。
出て行く寅。
なすすべもなく見送るさくら。
トラをだっこしているさくら。
ああ…今回も一泊もしなかったね寅のヤツ…。
おばちゃんしくしく泣きながら
おばちゃん「だからポチに変えた方がいいって
言ったんじゃないか、うううう」
今日からポチにするって、
昼間博が宣言していただろおばちゃん。そして博君も。
転げているジャガイモを博に手渡しするおばちゃん。
今回もまたまた寅は悪くない。
寅の普段のいい加減な言動やフーテン気質を
苦々しく思いながらも抑圧していたおいちゃんの
深層心理が回帰したのだった。
第16作「葛飾立志篇」でもおいちゃんのこの手の発言があった。
身内と言うのは自分ごとのように心配し、愛し、執着するがゆえに、
時として他人な絶対言わないようなとても残酷なことを言うものだ。
瀬戸内海 連絡船
穏やかにこの作品のテーマ曲が流れる
寅と一緒にお遍路さんたちが連絡船に乗っている。
近くでお遍路さんたちが世間話。
遍路さん「今度な、天台宗の和尚さんと一緒におまいりに行きます」
伊予の小さな港町で連絡線から降りる寅。
丘の上の神社 海の祭り
奮闘努力の甲斐もなくこの神社の名前が分かりませんでした。
ご存知の方メールいただければ幸いです。
啖呵バイ
今回、寅が売るのは『長靴』
寅「赤い赤いは何見て分かる。赤いもの見て迷わぬものは
木仏、金仏、石仏、
千里旅する汽車でさえ、赤い旗見てちょいと止まるっていうじゃないか。
さ!最新は最後のマケじまい、赤い靴から、白い靴、黒い靴から、黄色い靴、
色とりどり全部負けちゃおう!ね!どう
物の始まりが一ならば、国の始まりが大和の国、
島の始まりが淡路島、 泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、
助平の始まりが小平の義雄と!
さあ、どうだ!ね!
今日はうんとマケちゃうよ!ね!
本来ならば高いものだけどそんな高いこと言わない。
さー!四つマケちゃおう!
いったいこんな片田舎で長靴なんてかさばるバイネタ、
誰がどうやって寅に渡したんだ!???
それを言っちゃあおしめえよってか…(^^;)
花火が上がっている。
港に大漁旗を掲げた漁船が何隻も停泊し、日章旗も掲げている。
桜井の倉庫
★小平義雄
昭和21年。のべ10人に及ぶ婦女暴行殺人を犯した。
当時世間は震撼した。「男はつらいよ」で寅が切る啖呵バイに
使われていることからも社会に与えた影響の大きさが窺える。
小平は昭和24年10月5朝9時49分、宮城刑務所で死刑となった。
執行直前には饅頭を3つ食い、念仏を唱えていたという。
愛媛 伊予大洲
大洲の亡き夫の墓参りを終えて
明治の町並みが残る町の『お花はん通り』を歩く鞠子さん。
昭和41年のNHK朝のテレビドラマ「おはなはん」のロケが
行われたことからこの名前がついた。
もちろんヒロインは考古学を研究する筧礼子さん!
鞠子のテーマが流れる。
肱川河畔
夕闇迫る肱川河畔で鵜飼舟を見ている鞠子さん。
日本三大鵜飼のひとつ
肘川河畔 伊洲屋旅館
帳場の電話に出る寅
寅「はいはい、こちら伊洲屋(いずや)旅館でございます。
女将「すんません」
寅「はいはい、はい京都の玉木さん?」
女将さん「今夜は鵜飼(うがい)に出かけてなさるけんど」
寅「今夜は『うがい』で…でかけてま…す。はい、はい」
電話切って。
寅「またあとで、電話するってさ」
女将「まあ、悪いねえ、気安く使うてからに」
寅「いいよ」
って笑いながら、館内の電話回線を上に上げる。
寅は不思議がって女将にこう言うのである。
寅「『うがい』か…。しかし変わってるね、その客は、えー、
わざわざ『うがい』しに表に出かけて行くなんてさ。
そこの洗面所の奥でもってガラガラってやればいいじゃねえか、ねえ」
寅ギャグ出ましたヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
女将さん「その『うがい』じゃのうて、ほら川に舟浮かべて…」
寅曰く「あーあーあー!浦島太郎みたいな格好して、
アヒルの首にあのゴムテープくっつけて
この引っ張ってるやつか」
女将さん「ハハハ!」
寅「あれだろ」
女将さん「ハハハ、アヒルじゃのうて、鵜という鳥ぞな」
寅「あ、ウって鳥か、あれは」
女将さん「アハハ、アハ!」大うけ(^^)
寅「あ、なるほど、大きな魚飲み込むから
つっかえて『ウー!!』って言ってるわけだ」
一生バカ言ってろよ┐(- ー;)┌
女将さん「ハハハ」と笑いが止まらない。
とまあ、こういうバカなギャグなのだが…。
ここからちょっと脱線。
先日の「寅次郎な日々」にも書いたが、
実は、本編よりずっと前の
脚本第2稿の段階では「鵜飼」と「うがい」を間違えるのはなんとさくらなのである。
つまり寅がとらやにいるさくらに伊洲屋旅館から電話するのである。
しかし、さくらが「鵜飼」のことを聞き間違えるのも無理はないのだ。
それは伊予では鵜飼(うかい)のことを「うがい」とも発音するために
余計に混乱してしまうからなのだ。
脚本第2稿ではこうである↓。
伊洲屋旅館 帳場
寅さくらに電話をかけている。
寅「この間のこと謝っといてくれよ。オレもつまんねえことにこだわってさ」
とらや 店
さくら「いいのよ、そんなこと。気にしてないわよ、誰も。
ねえ今どこなの?遠い所?オオズ?オオズってどこ?」
伊洲屋旅館 帳場
寅「伊予の大洲だよ、四国だ、四国。
いい所だぞ、おまえ。
宿の前に川が流れててな、
座敷から鵜飼見ながら一杯やろうってとこさ。
え?鵜飼だよ、鵜飼」
とらや
さくら「『うがい』?どうしたの、風邪でもひいたの?」
伊洲屋旅館 帳場
寅「バカ!その『うがい』じゃねえんだよ、
ほら、浦島太郎みたいな格好して、アヒル泳がしてるのがあるだろう。
あれよ。―おい、電話代高いから切るぞ。分かった分かったそのうち帰る」
受話器を置いてため息をつく。
寅「まったく物を知らない女だなあ…」
女将「あんた、アヒルじゃのうて、鵜という鳥ぞな」
寅「あ、鵜って鳥か、あれは。
あ、なるほど、大きな魚飲み込むからつっかえて『ウー!!』って言ってるわけだ」
女将さん「ハハハ!」
そのあといろいろあって―。
夜、殿様の屋敷から再度今度はさくらのアパートに電話している寅。
その時もさくらはまだ分かっていないらしく
さくらのアパート
さくら「何言ってんのか分かんないわよ、
『うがい』だの『トノサマ』だのって…」
と、首をかしげているのである。
ひょっとしたらさくらは根本的に「鵜飼」を知らないのかもしれない…。
もちろんあんな特殊なもの知らなくたってちっとも恥ずかしくはないのだが、
ちょっと意外だったことも確かだった。
結局、山田監督は現場で試行錯誤の後に、
やはり寅が鵜飼ギャグの『ボケ』を一気に全部引き受けたほうが面白いと思ったのである。
こうして本編ではさくらに鵜飼ギャグでのボケの役は回らなかったというわけだ。
ちなみに伊予の肱川鵜飼は日本三大鵜飼のひとつ。
さて、長く脱線してしまった。
物語に戻りましょう…。
そんなバカ話を寅がしているところへ…
同じ旅館に泊まっている鞠子さんが墓参りから帰ってきた。
鞠子「ただいま」
女将さん、鞠子さんに
女将「お客さん」
鞠子さん「はい」
女将「お食事はお風呂の後になさるかな?」
鞠子さん「はい、そうします」
と、二階へ上がっていく。
どことなく元気がない。
寅、階段のほうを見て
寅「ありゃ、一人旅かい?」
女将「ええ、男の人ならええけんど、女の、それも若い娘さんの一人は
なんか、気になってなあ…」
寅「ん…」
寅「さっき、川っぷちでちょっと見かけたけどなあ…」
女将「ほう」
寅「ありゃあ、なんかわけありだなあ…」
女将「はあー」と頷いている。
寅「女将さん、せいぜい優しくしてやんなよ」
女将「はいはい」と頷く。
実は脚本の第2稿では、寅が小船に載せてもらうシーンや、
河畔で鞠子さんとすれ違うシーンがあるのだ。
寅「さて、じゃ、オレも飯にするか」
と、立ち上がる。
女将さん、谷よしのさんを呼ぶ。
谷よしのさんは今回は「おふみさん」という女中さん役。
第27作「浪花の恋の寅次郎」のマドンナと同じ名前(^^)
おふみさん「はーい!」
女将さん「車さん、お食事よ」
馴染み客にしては、寅さんと言わないで、車さんと言う女将さん。
親しき仲にも礼儀ありって感じなのかな。
おふみさん「へえ」
おふみさん廊下に出てきて
おふみさん「お客さん、鮎は別料金になりますけどどうしますか?」
寅「そうだね、せっかくだからもらうか」
おふみさん「へえ」
寅「あ、女将」
女将「はい」
寅「あの娘にも鮎を一皿やってくんねえか。オレからだって言って」
女将「…はい」
寅「旅先じゃ、なんでもねえ親切でも心にしみるもんだからよ。頼むぜ」
女将「ありがとございます」と、お辞儀。
女将さんおふみさんに
女将「萩の間にも鮎をつけてな」
おふみさんの声「へえ」
萩の間
おふみさんが夕食時、萩の間の鞠子さんに鮎とお吸い物を持ってくる。
蛙の鳴き声が遠くから聞こえる。
おふみさん「失礼します」
と、ふすまを開けて
鞠子さん「はい」時刻表を書き写している
おふみさん「お待ちどうさん」
鞠子さん「すみません」
鮎の塩焼きをお膳に置いて、
おふみさん「この鮎はお隣のお客さんが召しあってくれと言われまして」
鞠子さんは「あらー…、どなた?」と戸惑いながら聞く。
谷さん「寅さん言うて、年に一度くらいはみえる方です」
谷さんが、「寅さん」というセリフを言った
記念すべき最初で最後のシーン。
鞠子さん「どうしよう…」
なんの脈絡もなくいきなりだもんなあ…ちょっとねえ…(^^;)
カメラは窓の外から隣の寅の部屋に移動していく。
寅、耳がダンボになって声を聞いている。
鞠子さん「ちょっとお礼に行ってくるわ…。こっちのお部屋?」勇気あるね(^^;)
おふみさん「へえ、そうです」
寅、急いでお膳の前に座り、なにげにお酒を杯に注ぐ。嬉し恥ずかしで緊張するね寅(^^;)
鞠子「ごめんください」
寅「…はい!」と、キップよくパーンとしゃべる。
寅「どうぞ」
と窓のほうを向いたまま。
鞠子さんふすまを開けて
鞠子さん「失礼します」
寅「あ、さ、どうぞ、お入いんなさい」
鞠子さん「はい」
と言って、部屋の中に少しだけ入る。
鞠子さん「あのー今女中さんに伺ったんですが、
知らない方にあんなことしていただいて…わたくし…」ほんと。
と、戸惑っている。
寅、ちょっと照れながら
寅「いやいいんだよいいんだよ。
さっき、玄関で見かけたらね、
なんだかお疲れのようだったから
名物の鮎でも食べて精つけてもらおうと思ってね。
遠慮するこたあねえんだよ、食べなよ」
と、さらりと言う。
鞠子さん、ちょっとリラックスして
鞠子さん「そうですか、ご親切にありがとうございます」
寅、笑いながら頷く。
寅「どっから来なすったね」
鞠子さん「東京です」
寅「オレも東京だよ。へー、東京のどこ?」
鞠子さん「堀切です」
寅「菖蒲園の?」
京成の「堀切菖蒲園」駅だね。
大川弥太郎のアパートがある「京成関屋」の隣の駅。
そこから下って「高砂駅」で乗り換えたら柴又。
鞠子さん「ええ、あそこのすぐ近くの団地に…」青戸団地
寅「ああ、じゃあオレんところの近くだ。
オレ京成でずーっと下ってきてね、
柴又という駅で降りて」
鞠子さん「はい」
寅「ずっとまっすぐ行くと帝釈天っていうのが」
鞠子さん「ええ!行ったことあります。
参道があって、お団子屋さんがずらーっと並んでて」
寅「フフ、オレんとこ団子屋だよ」決まったね、ストライク(^^)
鞠子さん、表情が柔らかくなって
鞠子さん「えー」
寅「とらやってんだ。
オレ、寅次郎ってんだけど、
また行くようなことあったら寄んなよ。
オレに聞いたって、な。
まあ、もうろくじじいと歯抜けばばあで、
ろくな挨拶もできねえ連中だけど、気はいいからさ」
鞠子さん「ありがとうございます、
今度きっと寄らせていただきます」
寅「うん」
鞠子さん「じゃあ、失礼いたします」
寅「うん元気出してな」
鞠子さん「はい」と言ってふすまを閉める。
寅、思うことあって帳場に電話をする。
寅「おう、オレだけどね、
あの、ここの名物の川魚の佃煮ってあったろう。
あれをな、隣の娘さんに土産に
持たせてやりてえんだけどさ、ん、
いや、適当にみつくろってやってくれ、
うん、じゃあ頼んだぜ、ん」
電話を置いて寅「よし…っと」と言う顔。
満足気に酒を注ぐ寅。
蛙の鳴き声。
それにしても過剰とも思える親切は、どうしたことだろうか。
確かに少し沈んでいる娘さんは気になるところだが…。
マドンナが美人だからと言ってしまえばそれまでだが、
そういうところが寅のいいところかもしれない。
人の悲しみや淋しさを察知する人生の玄人なのだろう。
鞠子さんが隣の部屋に戻った後、
窓の外を蛍が舞っている。
寅、ハッと気づいて、
壁向こうの鞠子さんにそっと呼びかける。
寅「娘さん、外見てごらん…。蛍だよ」
鞠子の声「あらあ、ほんと…」
窓にすわり蛍を追いかける寅。
涼しい風を受けながら、しみじみ蛍を眺める寅だった。
なんでもないような、
それでいて心が柔らかくなるような
そういうちょっとした出会いがあったのだ。
寅は色恋がらみの下心だけで
いつも動いているわけではない。
やっぱり人の心というものを知っているのだ。
翌朝 朝霧にけぶる肘川
小学生たちが古い町並みの中を登校していく。
伊予大洲駅
国鉄 予讃線(よさんせん)
ごろう 五郎駅
いよ ひらの 伊予平野駅
予讃線 松山行きのディーゼルが止まっている。
出発を告げる汽車のベルが鳴る。
アナウンス「次の停車駅は五郎五郎でございます」
東京へ戻る堤鞠子さんだった。
窓から外を見ながら物思いにふけっている。
寅との一期一会を思い出しているのかもしれない。
大洲城址 肘川を見下ろす眺めのいい場所
宿からの伝表を見ながら財布の中を確かめている寅。
宿で鞠子さんに鮎(600円)&お土産の佃煮(1500円)をご馳走したり、
お土産を持たせたりと散在したので
財布の中身がスッカラカンになって困ってしまう寅だった。
寅「鮎の塩焼き六百円!?
そんな高いんだったら最初から言えやいいんだ。
上手くもなんともありゃしない」ぶつぶつぶつ
とぶつぶつ。
寅「あ!佃煮千五百円!…、あの女将も気が利かないなあ、
もっと安いものにしてくれりゃあいいのに…
金がいくらあったって足りない…」ぶつぶつぶつ
小銭が財布の中から地面に転がり落ちる。
寅「あ。あー、五百円一枚か…」
しかし、山田監督って五百円好きだねえ(^^;)
寅「まいったなあ…こりゃあ。あと小銭ばかりだよ…」
と、かばんの上に財布と五百円札を置いて、小銭を拾う寅。
その時不運にも一陣の風。
三味線の音
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺン
お札はひらひら飛んでしまう。
寅「あああああ!!おい!あ…」
そのまま石垣の下へ。
寅「あ、チクショウ!」と走って降りていく。
走って追いかけて下っていく寅。
石垣の下で500円札を持って歩いている老人(殿様)とすれ違う。
出ました名優 嵐寛寿郎さん!
寅「お!おじいちゃんよ!」
殿様「ん?」
寅「ひょっとしたらその金拾ったんじゃないのか」
殿様「天から降ってきたんじゃ」正しい(^^;)
寅「オレんだよ、オレ上でな銭勘定してたら、
風が吹いてきて、パーッと飛ばされちゃったんだ。
どうもありがとう、うん」
と、五百円札を殿様の手から取り上げる寅。
寅「あ、そうだ、お礼にご馳走しよう、な」
と、茶店のおばあちゃんに
寅「おばあちゃんよ、そのラムネくれよ、な、2本」
フジカラーの箱
ラムネの旗
おばあちゃん「はい」
おばあちゃん、ポン!とビー玉を落とす。
寅「はいごくろうさん」
寅は礼を言い、金もないのに
お礼にラムネを奢ってやるのだった。
殿様「いやいや、左様な高価なものを」安い安い ヾ(^^;)
脚本では一本60円。
おばあちゃん、もうひとつ ポン!
寅「いいんだい、いいんだい拾ったら礼するのは決まりだよ」いい言葉だね。
寅「ん!。さ、飲みな」と、ラムネのビンをカチンと当てて乾杯。
ビー玉がコロコロと鳴る。
殿様のテーマが流れる。
寅、一口飲んで
寅「あー、うめ。どうだおじいちゃんうめえか?」
殿様「んー、なかなか甘露じゃのお〜」カンロって…(^^)
寅「甘露?フフ、おじいちゃん面白いこというなあ
昔の殿様みたいな口きくじゃねえか」寅鋭いね。
殿様、子供のようにラムネをコロコロ転がしている。
なんか面白いよねえアラカンさんって(^^;)
寅「アンパンでも食うか?」金なくなるって ヾ(^^;)
アンパン食べる?って聞くと
『麦秋』の杉村春子さんと原節子さん思い出しちゃった(^^;)
寅「よう、おばあちゃんよ、
そのアンパンくれや、いくらだ」
殿様、不思議そうにビー玉を見ながらまた一口飲む。
うまいと無声音で言っている殿様
脚本第2稿ではアンパンは遠慮する殿様。
本編ではしっかり二つももらっている(^^;)
大洲城の周りを歩く二人。
町の人が丁寧に挨拶する
おじさん「こんにちは」
寅「あ、こんにちは、精が出るね」
寅、すたすた歩く殿様に追いつきながら
寅「ねえ、おじいちゃん、この町の人っていうのは
みんな行儀いいねえ。こら、殿様がよっぽどしつけが
厳しかったんだよな、」
おばあちゃん、お辞儀。
寅「こんにちは」
寅「な、ほら、しつけがよかったんだよ」
鵜飼料理承ります
分かれ道で
寅「えーっと、それじゃおじいちゃん、オレこれでな」
と、スタスタ街のほうへ歩き始める。
殿様「あーこれこれ」
寅、戻って
寅「フフフ、なんだよおじいちゃん」
殿様「このような高価なものをいただいたゆえ、
お返しに粗餐(そさん)を差し上げたい」
寅「なんだいソサンて?」わからんよねえ(^^;)
殿様「粗末な食事と言う意味です」
寅「はあー…たくあんに茶漬けかなんかか?」
兵頭食堂
手打ちうどん
定食
中華そば
コカコーラ
司法書士 杉江安雄 事務所
サルビア
殿様「ついてきなさい」
と、スタスタ歩いていく。
寅「おいおい、ちょっと待ってよ」
寺尾聡さん扮するおまわりさんとすれ違う。
おまわりさん、殿様に敬礼。
寅をじろじろ見て不思議がる。
おまわりさん「…」
寅「あ、ごくろうさん」と敬礼。
寅、追いつきながら
寅「よ、おじいちゃん、ちょっと待ちなよ、よ」
寅歩きながら
寅「ごちそうになるのはいいけどよ、あとで意地の悪い嫁さんに
怒られても知らねえぞ、おい」
殿様「嫁はおらん」
寅「一人暮らしか…うん、そりゃ淋しいなあ…」
大洲城三之丸南隅櫓の敷地内
殿様城の中へ自宅へ入っていく。
ロケは加藤家
殿様の家は、江戸時代、大洲を治めた旧大洲藩主『加藤家』の住宅で、
大洲城三之丸南隅櫓の敷地内に建つ。
桁行12m、梁間9mで木造二階建、寄棟造。
玄関は南面に切妻造で突出。
この作品では殿様は加藤ではなく藤堂。
この、藤堂の名前はおそらく江戸初期、大洲城を建てた、
あの名武将藤堂高虎の苗字から取ったものだろう。
寅「よ、おう、おじいちゃん、どこ行くんだよ、おじいちゃん、ダメだよ、
そんな人の家入ってったら怒られるぞ、よお!」
おまわりさん、自転車で後ろからついてきて、不振な顔をする。
寅、気まずくなり
とりあえず殿様についていく。
寅「おじいちゃん!よお!」
切妻造で突出した殿様の屋敷 玄関
殿様「吉田!」
執事の吉田が玄関に出てくる。
出ました三木のり平さん!
吉田「はい!お帰りなさいませ」
殿様「ご来客じゃ、ご案内しなさい」
吉田「はい」
吉田、ぞうりを整えながら、寅をじろじろ見て、
驚いた顔をする。
もうのり平さんの顔見ただけで、一癖も二癖もあるのがわかる。
吉田「どうぞ、お上がりください」
寅「いいのかい入って」
吉田「はい、どうぞどうぞ」
応接間
吉田「どうぞ」
後ろからビビッてついてくる寅
寅「よお、あれ誰だい、この家の主人か?」
吉田「あなたご存じないんですか」
寅「うん、知らないんだよ」
吉田「こりゃ驚いた、
あのお方は伊予大洲五万石、
藩祖宗康様より十六代目の当主、
藤堂久宗様、世が世であれば、
大洲の殿様であらせられますぞ」
寅「殿様!ほお〜〜〜、そうかァ、
頭にチョンマゲでも乗っけて
出てくりゃわかんだけどな。へえ〜〜〜」
寅の友達で頭にチョンマゲしてる男がいるらしい。
第38作「知床慕情」参照(^^;)
吉田不思議そうに
吉田「あなた、どういうご用件でいらっしたんですか?」確かに(^^;)
寅「オレ、用件?そんなものないよ。
あのー、城の下でもってさ、
じいちゃんと会ったんだよ。
で、オレがラムネおごってやったらね、
『お礼にソサンを進ぜたい』、
なーんて言うからさ、
オレのこのこついて来ちゃったい、フフ」
吉田「あのですね」
寅「え」
吉田「お殿様は世間知らずなんで
時々そういうことがあるんですよ。
お引取り願いませんか、すいませんけど」
とニコニコ愛想笑いをしながら玄関を指し示す。
寅、カチンと来て
寅「…帰れ?」
吉田、ぎょっとする。
寅「あ、いいよー、
別にこんな堅苦しいとこいたって
面白くもなんともねえんだからさー、
だけどなんだい、そっちで呼びつけといてよー」と、ごねる(^^;)
吉田そわそわ立ち上がり、
寅になんと千円札を掴ませようとする。
吉田「あの、これでひとつおビールでも」
寅、パッと手から札を離して
寅「なんだいこりゃ!
おりゃ、ゆすりたかりじゃねえんだぞ!」ごねたからだよ(−−;)
吉田「大きな声を出さないで」
と愛想笑いを繰り返しながら千円札をまたもや渡そうとする吉田。
ちょっと嫌なヤツ(−−;)
寅「なんだい!」
そこへ、殿様が入ってきて
殿様「吉田!」
吉田、起立して
吉田「はい!」
殿様「昼食の支度をしなさい」
吉田「かしこまりました」なんでいこいつ…(−−)
吉田、寅をチラッと見ながら後ずさりして出て行く。
寅「おい、オレいちゃまずいんだろ?」
吉田、殿様が横にいるのでコロッと意見が変わって
吉田「なにをおっしゃいます、
ごゆっくりあそばして、ただいますぐにお食事を」
ほー…裏表のある人間だね(−−;)
と、すごすごと戸を閉めて出て行く。
寅「何言ってんだろうね、あいつ」だよね(^^;)
同じように廊下に出て行く寅。
寅「おい、おい、どうなんだよ、残るのか、帰るのか」
吉田「あの、それじゃ、
昼ごはんを食べたらすぐ帰ってくださいよ。すぐですよ」
と、そそくさ歩いていく。
メインテーマがテンポよく流れる。
小道具の露木さん、今回は大洲の仕出し弁当屋
自転車乗って屋敷の勝手口へやってくる。
戸の中からなんと大空小百合ちゃんで御馴染み岡本茉利さんが
同じくなにか料理を届けて表に出てくる。
岡本さん「あ、こんにちはー」
露木さん「ん、こんちは」
岡本茉利さんの整理箱
第8作 「寅次郎恋歌」 四国 雨の日の 坂東鶴八郎一座の花形 大空小百合
ラストでも甲州路で再会
第16作「葛飾立志篇」 ラストでの西伊豆の連絡船ガイド さん
第17作「寅次郎夕焼け小焼け」 池ノ内青観の家のお手伝いさん(とし子さん)
第18作「寅次郎純情詩集」 夢のシーン 北アフリカのカスバの女性
A信州別所温泉での坂東鶴八郎一座大空小百合
『不如帰』の浪子役
第19作「寅次郎と殿様」 大洲城での料理屋の店員(出前) ほんの一瞬だけ(^^;)
第20作「寅次郎頑張れ!」 夢のシーン 大金持ちになったとらやのお手伝いさん(なかなか可愛い)
Aラストで寅と軽四トラックで再会する坂東鶴八郎一座 大空小百合
『ああ無常 レ.ミゼラブル』のコゼット役
第21作「寅次郎わが道をゆく」 肥後の田の原温泉に住む留吉の元彼女(春子) 「あんた何くれた!?」
第23作「翔んでる寅次郎」 寅に便秘薬と水を渡した日下部医院の看護婦さん
第24作「寅次郎春の夢」 京都での坂東鶴八郎一座大空小百合『蝶々夫人』
の蝶々夫人役
「ミーバタフライ!ミーバタフライ!」
夕暮れ時
鐘の音 ゴーン
殿様の屋敷内
寅、吉田の言ったことすっかり忘れて
厚かましく風呂まで入ってしまっている。
おまけに長距離電話で
柴又のさくらのアパートに遊び電話している始末。
廊下の電話口
寅、股と言う字のついたタオルを頭に乗せながら
寅「さくら、どこにいると思う。フフ、わからねえ?
フフフ、わからねえだろうね、へへ。
いいか驚くなよ、殿様のお屋敷。トノサマ」
さくらのアパート
さくら電話に出ながら
さくら「トノサマ??どこの??」
さくら「オオズ??オオズってどこ??、四国??
何言ってっか分からないわよ」
わかんないのは「トノサマ」というところだけだろさくら。
あ、さくらは大洲って知らないんだよね。
大洲 殿様の屋敷内 電話口
カメラは上から寅を映している。
寅「わからねえだろうね、
おまえにはいくら説明したって、…んー?
でっかいお屋敷だよ、んー、
オレ今風呂入った、んー、
えー、風呂だってね、
おまえのアパートよりずっとでかいぞ」
アパートと風呂比べるなよ。実も蓋もないぞ…(^^;)
寅「あー、手ぬぐいが五本あんだよ、
なんだか分かるか?、え」
それなあ、
顔と 胴と 手と 股と、
それだけあんだよ、うん。
オレ間違えてさ、
股で顔ふいちゃったよ、
股で、ハハハ!!」
今も股を頭に乗せている。
吉田、怒ってやって来て
吉田「あんた」
寅びっくりして壁に頭ぶつける
寅「イテ、なんだ、なんだよおめえ」
吉田「困りますよ、昼ごはん食べたらすぐ帰るって約束だったでしょう」
寅「だって殿様が引きとめるんだものしょうがないじゃないか」
寅よ、頼むから電話切ってからもめてくれ(−−;)
吉田「ですから、そこんところをうまくやっていただかないと、
仕事があるとかなんとか言って」
さくらのアパート
電話の向こうのもめているやり取りを
複雑な気持ちで聞いているさくら。
濃い水色の受話器カバー。
寅の声「わかったよ、じゃあ、夕飯食ったらすぐ帰ってやるよォ」
吉田の声「今度こそ本当ですよ」
寅の声「さくら、そういうわけだ、じゃあまたなー!ガチャ」
さくら「ん、。。。もしもし、も…」
さくら「…」
不安げな表情。
博たちは夕食を食べている。
博「四国だって?」
さくら「うん」
夕飯を終えた満男
満男「ごちそうさまー」
さくら「はい」
さくら、ため息をついて
さくら「何してんだろ…」ほんとにねえ(^^;)
大洲 殿様の屋敷 居間
カメラは天井から3人を撮っている。
食事が終わって
寅がお茶を飲んでいる。
寅「あー…」と、満足気
寅「いやあー、ハハハ、なんだかこりゃあ、
晩飯までご馳走になっちゃって、
申し訳なかったね」
殿様「いやいや苦しゅうない。
わしもいろいろ面白い話を聞かせて
もらって愉快であったぞ」
寅「そうかい、フフフ、」
吉田に向って
寅「じゃあ、吉田さん、オレそろそろ」
吉田「あ、さようでございますか、
お忙しいお体お引止めいたしまして
申し訳ございませんでした」
寅「うん、いやいや、忙しい体じゃないから」おいおい ヾ(^^;)
吉田「でもなにか、ご予定がおありとか」
寅「ご予定はないよー」
吉田「でも、奥様がご心配でございましょう」と愛想笑い。
吉田も懸命に追い出しにかかる。
寅、眠い顔して
寅「いないいないそんなものは、うわ〜あああ、あ」
と、これ見よがしにあくび(^^;)
寅「なんだか、こりゃ、眠くなってきちゃったなァ〜…」
殿様「吉田!」
吉田「はい、お車のご用意を」先走りすぎ(^^;)
殿様「バカモノ!!」
寅、目が眠っている。
殿様「お泊りになる。寝間の用意をいたせ」
吉田「…はい、かしこまりました」
と立ち上がって、立ち去りながら
吉田「ったく…ちっ」と、ぶつぶつ。
寅「殿様、なんだかすっかりいい気持ちに酔っ払っちまったな
ちょっとこう、横になっていいかい?」
殿様「苦しゅうない、楽にいたせ」
寅「いたしちゃおう、ね、へへへへ」
と横になって、肘をつく。
殿様「寅次郎君」
寅「はいよ」
殿様「確か、東京と聞いたが、ひとつものを尋ねてもよろしいか?」
寅「苦しゅうないよ。ハハ、それはそっちの言いぐさだな。なんだい言ってみな」
殿様「鞠子という女を知らんかね?」
寅「マリ子???、うーん、知らないな、聞いたこともないな」
殿様「さようかぁ…。もはや東京にはおらんのかのお…」
東京にはマリ子さんはゴマンと... (^^;)
寅「おらんのじゃないの…、なんだ、おばあちゃんか?」
殿様「確か二十五か六…」
歳を聞いてすくっと起き上がり、 ゲンキン(^^;)
寅「捜したらいるかもしれないよ、
何してるんだいその子?」
殿様「末の息子の嫁じゃ」
また急に興味無くなって寝転んでしまう寅だった。 これだよ露骨…(^^;)
急に興味無くなってまた寝転んでしまう寅だった(^^;)
寅「他人のカカアか…。
だったら末の息子に聞きゃあわかるじゃん」
殿様「その息子は一昨年の秋死にました。
生きておればかれこれ三十…」
寅、後家さんだと知ったらまた勢いづいて起き上がり
寅「ほう…後家さんかァ、死んだ倅の嫁で、行方不明…、
うん…、こりゃあ、わけありだなあ…」
殿様「私はその結婚に反対だった。
どうしても結婚するなら勘当すると申した」
寅「ところが一緒になっちゃったんだろう」
頷く殿様
寅「身分の違う娘と。
相手は喫茶店の女給か近くの工場の女工だ。
偉かったね、あんたの息子は、オレ感心しちゃうよ。
親父に何か言われてヘイヘイと引き下がるようじゃ男として終わりだよ。
第一民主主義だから今は」
相変わらず女性の職業を勝手に決め付ける寅でした(^^;)
殿様「あれは嫌いじゃ」あれ=民主主義(^^;)
寅「あんたが嫌いでもしょうがないんだよ、
息子は好きだったかもしれないんだから。
で、あれかい、
今になってその息子の嫁のマリ子って女に
会ってみたいと、そういうことなんだな」
殿様「老い先短いわが身を思うにつけ、
心に浮かぶはそのことばかり…、
一度会いたい。
会って一晩ゆっくり息子の思い出話などを…ううう」
と、絶句し、ハンカチを取り出して涙を拭く。
寅「よお、殿さんよ、泣くなよ、え」
頷く殿様。
寅「大丈夫だよ、
オレ今度東京行ったらな、
きっと探し出して会わせてやるから」
殿様、寅のほうをあらためて向いて
殿様「さようか」
寅「え、大丈夫大丈夫、きっと会わせてやるから」おいおいおい ヾ(^^;)
マリ子の漢字とか、結婚前の苗字とか聞いておけよな寅。
彼女の苗字は殿様の長男がたぶん知ってると思う。
ひょっとしたらNTT(電信電話公社)で番号わかるかも。
殿様、感極まり
殿様「うう…ありがとう、かたじけない」と深々とお辞儀。
寅もつられてお辞儀しながら
寅「いえ、どういたしまして、ま、ま、ま」
そこへ吉田がやって来て、
吉田「お寝間の用意ができました」
殿様「吉田」
吉田「はい」
殿様「寅次郎君がの…」
吉田「あ、お帰りでございますか、それはそれは残念なことでございます」決めつけ(^^;)
と近くまでやって来る。
吉田「お気をつけあそばして、お帰りはこちらでございます」
と、微笑みながら手で廊下を指し示す。
殿様「たわけィ!!!」
吉田「わしの客とみれば片端から追い返さんとする
おのれの魂胆、もはや勘弁あいならん!!」
吉田、頭を下げながら
吉田「お許しくださいませ。みな、お殿様の身を案じてのこと」
殿様、激情して、立ち上がり、
殿様「黙れ!黙れ!黙りおろう!!」
と、飾ってあった日本刀の脇差を鞘から抜き、
吉田につきつけようとする。
アラカンさん、刀持たせたらやっぱり渋い!
びっくりした寅、お尻を畳みにつけてひっくり返りそうになる。
脅える吉田
吉田「は、はああああああ」
寅「ほ、ほんとかお殿さん、よしなよ、よしなよ」
殿様「それになおれィ!!」と刀で場所を指し示す。
吉田、寅の背中に回って背中を押しながら、
吉田「お、おお、御とりなしくださいませ」
寅、殿様のお腹に顔がぶつかりながら、腕にしがみついて
寅「ちょっと、やめなよ、やめ、やめ、やめなさい」ちょっとふらついて危ない(^^)
殿様「離されィ、」
寅「やめなさい」
殿様「離されィ!」
吉田の元に足を踏み込もうとする殿様を、
寅は後ろから羽交い絞めで止め、
よく見ると、足腰の渥美さん、
アラカンさんをちょっと前に押してやる感じで
フォローして後ろに回り、羽交い絞め。
寅「殿!殿中でござるぞォー!!」
忠臣蔵の見すぎだよ(^^;)
吉田、腰が抜けかかっている。
殿様「武士の情け!お放しくだされい!!!」
寅「しかし殿!!」
殿様、それでもツツツと吉田に斬りかかろうとする。
吉田、お尻を畳みに付けたまま、尺取虫のように
廊下まで逃げ去る。
吉田「お出合いめされー!!!お出合いめされー!!」
と、お尻を床に付けたまま逃げていく。
殿様「御離しくだされ〜!」
寅「殿中でござるぞ〜〜〜〜」
殿様「おのれ吉田ァー!!!」
吉田「お出合いめされー!!
殿ご乱心でござるぞォー!!」
誰に言ってるんだろ(((((^^;)
ひょろっと立ち上がり、ため息をつきながら
吉田「宮仕えはつらいね…」とすごすご立ち去っていく。
部屋ではまだ殿様が盛り上がっている(^^;)
殿様お声「おのれ(吉良)上野介ェー!!」
おいおい関係ないぞ完全に浅野内匠頭になりきってる ヾ(^^;)
寅の声「殿中でござるぞォ!!」
世間知らずで未だに殿様気質の殿様と、
老獪な執事吉田。絶妙なバランスですね(^^;)
例の、元禄14年3月14日(1701年4月21日)、
江戸城内松の廊下で、赤穂藩主浅野内匠頭が
吉良上野介に突然斬り掛かる(松の廊下事件)の
再現をこの時殿様は吉田に向ってしたわけだ。
あの事件は事件が東山天皇の勅使を饗応する直前だったので、
将軍・徳川綱吉は殊のほか激怒し、勅使饗応役であった浅野内匠頭に即日切腹を、
赤穂藩にはお取りつぶしの断を下した。
一方の相手の吉良上野介に対しては、手向かいしなかったため何のおとがめもなし。
まあ当然と言えば当然で、
いろいろ事前に姑息な意地悪が吉良からあったにせよ一方的に斬りつける
というのは浅野内匠頭のキャラクターにそもそも問題があったとしか言いようがない。
この裁きを片手落ちと考えた家老の大石内蔵助以下の赤穂藩の藩士たちは激怒。
無抵抗で城を明け渡すも、吉良上野介に対して密かに仇討ちを計画し、
元禄15年12月14日(1703年1月30日)、
大石以下47人の赤穂浪士が吉良邸に侵入、
吉良を討ち取って主君の仇討を果たした。
柴又 題経寺 ニ天門前
後ろのほうにチラッと喫茶店ロークのピンクの文字が見える。
まだまだ健在!
さくらが、満男のランドセルを見つける。
あああ、どこでもここでも夢でもみんなチャンバラ(^^)
本堂への渡り廊下
源ちゃん「えい!やー!」
満男「えい!やー!!」
源ちゃん「やられたー…」
御前様やって来て、怒り心頭
御前様「こらああ!!」
源ちゃんのお尻を斬りつけている満男
源ちゃん、見つかったので急におとなしくなっている。
満男はおかまいなしに切りつけている。
満男「えい!やー!」
御前様カンカンに怒ってやって来て
御前様「なんだおまえたちはこんなところで!」
で、源ちゃんいきなり、
姑息にも廊下の手すりを雑巾で拭くふり バレバレやでえ〜 ヾ(−−;)
満男勢い余って御前様の頭を刀でポカッ!!
御前様「あいた!」
さくら、下の境内から走ってきて
ランドセル落としながら叫ぶ
さくら「満男ー!!」
満男逃げていく。
さくら「ほんとにもうー!しょうがないわねえ!」
と、源ちゃんを睨みながら追いかけて行く。
さくらは分かっているんだね、源ちゃんが諸悪の根源だということを。
dから源ちゃんを睨むところがなかなかいい演出(^^;)
源ちゃん、満男指差しながらヒヒヒ笑い(〜〜;)
それにしても笠さん、
ちゃんと中村はやとくんが叩きやすいように
一瞬頭を止めてあげたように見えるのは
私だけだろうか(^^;)
帝釈天参道
満男とらやに戻されながら
満男「ねえ、アイス買ってェー!」
さくら、さっきのことがあるので怒りながら、
満男を振り払うようにオーバーアクションで、
さくら「だめだったら!あんたなんか大嫌いよ」
とらや 店
さくら「ほんとにいやになっちゃう」
おばちゃん水撒き。
おばちゃん「どうしたんだい?」
さくら「満男ったら本堂でチャンバラなんかして、御前様に叱られてんのよォ」
と、かなりご機嫌ななめ。
おばちゃん、怒りながら
おばちゃん「源ちゃんだよ、あいつがそう言う悪いこと教えるんだよ、
今度酷い目にあわせてやるから。」
で、満男のほうはまったく反省せずに、さくらのエプロンの紐を解いて、
ススッと台所へ行ってしまう。
悪戯なガキだねえ(^^;)
この『必殺エプロン外し』は現場で決めたものなのだろう。
決定稿にも書かれていないからだ。
この悪戯はなかなか面白かった。
お母さんにこういう悪戯ってこの年頃の男の子やるんだよね(^^;)
このように第19作「寅次郎と殿様」の満男は結構ヤンチャだ。
本編では↑のように本堂の渡り廊下で源ちゃんとチャンバラごっこをして御前様に叱られるばかりか、
その御前様の頭をなんとおもちゃの刀でパコッと叩いてしまうのである。
このシリーズで御前様にそんな無謀な罰当たりなことしたのは満男だけ(^^;)
これにはさすがのさくらもびっくりしていた。
ここでちょっと脱線
ところで、このギャグのシーン、実は脚本の決定稿では本編どおりなのであるが、
『第2稿』の時点まで戻ると、まったく違うエピソードになっている。
第2稿をそのまま書き写してみよう↓
さくらが満男のランドセルを題経寺ニ天門の前で見つけるところまでは本編と一緒。
境内から聞こえる太鼓の音と、
子供がお題目(南無妙法蓮華経)を唱える音。
さくらいぶかしげに山門の中を覗き込む。
山門の裏側に満男と源公が立ち、団扇太鼓を叩きながら南無妙法蓮華経を唱えている。
二人の前に怖い顔をした御前様が立っている。
遠巻きにして見物している子供たちニ、三人。
さくら「どうも申しわけありません。またこの子がなにかやったんですか」
御前様「源と二人で本堂の裏で小便をしてました」
さくら「まあ!どうも申しわけありません。満男なんでそんなことするの」
御前様「近頃だんだん寅に似てきたねえ。
血続きだからやむを得んが。
―満男君は帰ってよろしい」
満男、太鼓を放り出し、さくらの傍へ駆け寄る。
さくら「満男、ごめんなさい、って言うの」
「ごめんなさい」と叫びながら駆け出していく満男。
一礼してさくらもあとを追う。
御前様「源!!お前は、あと百回!」
泣きべそをかきながらお題目をまた唱え始める源公。
と、まあ凄いことをする満男なのだ。
これはこれで面白いし、御前様が寅と血続きだからキャラが似てきたと言っているのも笑える。
満男が逃げた後、源ちゃんが残されて半泣きでお題目を唱えるのも見たかった(^^;)
まあ、この脚本が没になったのは、二人で立ちションはさすがにえげつないと思ったのか、
神聖なお題目を「罰」で唱えさせるのは御前様らしくないと思ったのか、真相はよく分からない。
本編で満男が御前様の頭をポカッと叩くのもうやはり笑えるので本編でOKである。
そういえば第17作「夕焼け小焼け」で御前様が源ちゃんにホースの水かけまくるスーパーギャグがあるが、
あの時の笠さんは、必死で蛾次郎さんに当たるように集中して狙っていた。
私は、何度も蛾次郎さんが撮り直ししなくていいように、笠さんはがんばって一発で決めてあげたのだと思っている。
笠さんは優しいのだ。
さて物語に戻ろう。
なんと、店先に背広に蝶ネクタイをした殿様がすくっと立っている。
寅を訪ねてきたのだ。
おそらく鞠子さんが見つかったかどうかを聞きにきたのだろう。
三味線の音色
おばちゃん「なんだろう?」
さくら「変なおじいさんねえ」
おばちゃん「手品使いじゃないかい?」これ笑いました。座布団一枚(^^;)
殿様は中をキョロキョロしている。
さくら「え?フフ?」
さくら「おじいさん、なんか御用?」
殿様、店に入ってきて、
殿様「卒爾(そつじ)ながらちとものを伺いたい」
そつじながら【卒爾ながら】 (連語)
人に声をかけたり、物を尋ねたりするときに言う語。突然で失礼だが。―
さくら「はい」
殿様「寅次郎殿はご在宅ですか?」
おばちゃん「あのね、おじいちゃん
寅ちゃんまだ旅から帰ってこないんだけど
おじいちゃん、寅ちゃんの知り合いなの?」
殿様「はい、左様!」
おばちゃん「は、どうぞ、今お茶でも
殿様「寅次郎君はいつごろお帰りになりましょうか!?」
おいちゃん「なんだいあれ?」
おばちゃん「まるで時代劇みたいね」
おいちゃん「寅のやつは、いったん旅に出ると、糸の切れた凧みたいに
どこにいったかわからないんだ」
と言ってやる。
殿様「左様か」
おばちゃん「気の毒にねえ、おじいちゃんどっから来たの」
殿様「伊予の大洲」
おいちゃん「伊予…、?伊予と言うと四国だ」
おばちゃん「まあ…はるばる四国から」
さくら「そういえば、ほら先月の末、お兄ちゃん大洲って所から電話してきたじゃない。
あの時の知り合いじゃないかしら」
おいちゃん「まさか金でも借りたんじゃないだろな、
この年寄りに…」
さくら、はぁー…とため息。
おばちゃんぞ〜〜〜っと殿様を見る。 ちゃうちゃうヾ(^^;)
もっとも、第27作「浪花の恋の寅次郎」では、
大阪の「新世界ホテル」から
宿のオヤジが寅が貯めた宿代をほんとうに取りに来ていた。
殿様、立ち上がって
殿様「では、ご無礼しました」
と、帽子を脱ぐ。
おばちゃん「いいんですよ」
さくら「疲れたでしょう、遠くから」と、お茶を置く。
おいちゃん「まあ、畳の上でゆっくりしていきな。」
さくら「そうね」
おいちゃん「え、ひょっとしたら寅のヤツ…」
殿様手で制して
殿様「お控えなされい!」 その言葉遣いなあ… ヾ(^^;)
殿様「皆様方のご親切まことにありがとうございます」
さくら「いえ」
寅「しかし、ちと、人を待たせております。これにて退散いたします。
寅次郎殿がご帰還なさいましたら…」
と、その時、なんと寅が店先まで帰ってくる。
と、同時に、さくらたち、店先で寅を見つける。
さくら目を大きく開けて、口あんぐり。
おばちゃんに無声音で「お兄ちゃん…」
殿様「寅次郎君がご帰還になりましたら…」
さくら、店先にいる寅を見つけびっくりしている。
殿様、さくらを指差し
殿様「娘!」ひょえ!((((^^;)
さくら「はい」
殿様、さくらを指差し
殿様「聞いておりますか!」いいねえ〜!(^^)
さくら「あ、…あの…」
おいちゃん「帰りました」と店先の寅を指差す。
おばちゃんもつられて指差す。 いいねえ〜このボケ(^^;)
さくら「ええ」と照れ笑い。
殿様「どこにいますか?」
振り向く殿様
おいちゃん「ほら!」
源ちゃんの背負った荷物の後ろに隠れてダメ出ししている寅。
例のごとく店に入りづらいんだろうね。
さくら「お兄ちゃん」
寅照れながら「よ!」
さくら、殿様を手で指し示す。
寅、店の中に踏み込んで、殿様に焦点が合う
寅「よ!殿様!」
殿様「寅次郎君!」と近寄り手を固く握る。
寅「ん!」
殿様「鞠子は見つかりましたか!?」
探してない探してない(^^;)
情報提供少なすぎ…。マリ子だけじゃなあ…。
寅「マリ子って?誰だい、それ」
殿様「わしの息子の嫁ですよ」
寅「はあはあはあー、例の!、
うん!―え!??」
寅、さくらをチラッと見て
寅「なんだ、それで殿様、ここに来たのか?」
殿様「三日もすれば見つかると君は言った」と寅を指差す。
殿様の知能子供以下か?「マリ子」だけでは無理だってば。 ヾ(^^;)
殿様「あれからもう十日経ちますよォ!!」と、すさまじい気迫で迫る。
寅「んー…、あ、マリ子さんねえー、ん…、」
寅はそんなことすっかり忘れていたが、
見栄を張って見つけているふりをついしてしまう。
寅「一生懸命探してるんだよ。もう見つかる。
意外と手間がかかちゃって、うん
あの、見つかるんじゃないかな、こうなったら、うん」
適当〜。その場しのぎ。嘘八百(^^;)
殿様、怖い目つきでにじり寄り
殿様「しかと左様か!?」
寅「しかとさよう、しかとさよう、うん、へへ」と腕を叩いてやる。
殿様の長男は間違いなく鞠子さんのフルネーム知ってるはず。
どうしてそれを寅に言ってやらないんだ。
そして長男は末の息子の葬式の当日か、前後におそらく会っているのだから、
間違いなく旧住所も聞いているはず。
そこに訪ねていけば新しい鞠子さんの住所のヒントが分かると思うんだが…。
寅は苗字も住所も何にも知らないんだから無理だよ。
せめて漢字くらい教えてやってほしい… ヾ(^^;)
ちなみに「鞠子」と言う名前は第15作「寅次郎相合い傘」で早乙女愛さんが先に使っている。
もちろん船越パパの娘さんで兵頭鞠子さん役。
さくら「お兄ちゃん」
寅「え?」
さくら「どなた?このおじいさん」
寅「あ、このおじいいちゃんなあ…!!」
さくら「うん」
寅、急に殿様だったことを思い出して、
あらためて殿様を見つめる寅。
真顔になった寅は、
寅「…」
水戸黄門のスケさんカクさん調で、
寅「さがれ!」
みんな ビクッ!!
寅「おじいちゃんとはなにごとだ!!!」
寅、半歩下がって こういうちょっとしたところが憎い演出(^^)
寅「無礼者!」
みんな一歩後ろずさり。
寅、手で指し示しながら
寅「畏れ多くもこの方をなんと心得る!
伊予は大洲五万石の城主
藤堂久宗様であらせられるぞ!!」
寅よく覚えてたねフルネーム(^^;)
みんなびびる。
寅、指でみんなを指図しながら、
寅「頭が高い!
団子あきんど頭が高い!
プアアア!!タアー!!」
団子あきんどは笑いました(^^)
こけそうになるおいちゃん。
寅の大声も手伝ってすっかりみんな恐縮する。
殿様「もうよい」
寅「はい」
みんな頭を下げる。
タコ社長、間が悪く、
ヘルメット被って店にやってくる。
社長「よう、寅さん」
寅「社長、頭が高い!」
社長「は!」
社長とりあえずビビッて、ヘルメットを脱ぐ。
みんなでとりあえず深々とお辞儀〜。
殿様「大洲の藤堂であります」
寅「ハァハハアー」寅って過剰演出(−−;)
一同またとりあえず深く頭を下げる(^^;)
殿様「年寄りの切ない願い事叶えていただけますよう、
ご家族の皆様方、どうかよろしくおたの申します」
と、帽子を取り、お辞儀。
それだったらもっと情報やれってば ヾ(^^;)
寅、頭を下げながらもどこかで茶化しているので
↑のような茶目っ気のある顔になっている(^^;)
殿様「では」
寅も一緒に茶目っ気顔で頷く。 しょうがないやつだ(−−;)
と、店先へ出て行く。
寅「なんだいもう帰っちゃうのかい?」
殿様「はい、田園調布に長男がおります。そこへ戻ります」
第23作「翔んでる寅次郎」ではひとみさんの田園調布の住所を
田園地帯のお嬢さんって言っていた。
おばちゃん「あら、お駕篭(かご)か何かで」
おばちゃんこれはさすがに確信犯的なギャグ。わざとだね(^^;)
さくら、おばちゃんをたしなめる。
おばちゃん、さくらを見る。
殿様「いいえ、孫の自動車で帰ります、―御免」まじめに応えてやる殿様
とらや 店先
寅「そうかい、今晩泊まってもらおうと思ったけどそうもいかないかい。
おい、源公、
『下にー、下にー』、早く早く、露払い露払い」これまた確信犯的ギャグ(^^;)
見送る源ちゃん「下にィ〜!下にィ〜。下にィ〜!下にィ〜」
源ちゃんは本気か?(^^;)
そんなことやっても変人扱いされるだけだってば ヾ(^^;)
高木屋さんの前で孫の車に乗り込みながら
殿様「寅次郎君、吉報を待っていますよ」
寅「大丈夫大丈夫、
2、3日したらきっと見つかるからよ」100パーセント無理(−−)
寅「お孫さんかい」
孫「ええ」
寅「ごくろうさん」
殿様「これが倅の電話番号です。待っておりまするぞ」
寅、名刺受け取って、
寅「うん、うん」
さくら「失礼いたします」
殿様「頼みますよ」
多摩57 た 33−00
スバル.レオーネ1600ハードトップGFT
SEEC-T 53年度 排気ガス規制適合車
1977年(昭和53年度のビッグマイナーチェンジ)
富士重工(スバル)は、後処理装置を使わない排気ガス対策システムSEEC-Tが
高い評価を受けて販売も好調だったが、排気量のわりにボディサイズが小さくなったことや、
デザイン的にも古さが目立ったことから、この際、従来のデザインをベースにプレスラインを一新、
同時にサイズアップを果たすことになった。
内装もFF車の居住性の良さをアピールするべくデザインを全面変更し、
また、メカニズムでは従来のSEEC-Tをさらに改良してレオーネに搭載。
“53年排気ガス規制1番乗り”を大々的にアピールすることによってシェアの奪還を目指したらしい。
こうして日本初の全車53年度排気ガス規制適合を達成した。
立ち去った車を見送る寅とさくら、そして一応源ちゃん。
重い荷物を担いで、露払いをしたので、
疲れてしまい地べたに尻餅をついてしまう源ちゃん。
すぐに見つかるわけもないのに
殿様の真剣なまなざしに、
つい見栄を張ってしまった寅。
殿様が立ち去った直後、
急に襲ってきた虚脱感にさいなまれ、
深くため息をつき、肩を落とし、
しょぼくれて下を向きとらやへ戻っていく寅った。
ああ…寅はいったいどのようにして鞠子さんを探すのであろうか、
男寅次郎の運命やいかに。
ここで前半の終わりとさせていただきます。
続く
次回第19作「寅次郎と殿様」完結編は8月初旬頃になると思います。